(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】インターフェイス回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20230920BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20230920BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20230920BHJP
H01F 19/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H03H7/01 G
H04L25/02 F
H01F17/00 B
H01F19/04
(21)【出願番号】P 2019079190
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】バルグーティ・アシール サミ
(72)【発明者】
【氏名】ダージー・サウル
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-049235(JP,A)
【文献】特表2016-517628(JP,A)
【文献】国際公開第2001/011771(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/036207(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0005965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207795(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00-38/42
H03H1/00-7/13
H04L25/00-25/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線であり、それに沿って画定される信号ノード、補助ノード及び接続ノードを有し、該接続ノードは伝送線路への接続用である、前記信号線と、
前記信号ノードで前記信号線へ接続される信号処理回路であり、該信号処理回路の実効キャパシタンスが前記信号ノードで現れるようにする前記信号処理回路と、
前記補助ノードで前記信号線へ接続される補助回路であり、該補助回路の実効キャパシタンスが前記補助ノードで現れるようにする前記補助回路と、
前記信号ノード
の両側
において、前記信号線上にある
ように前記信号線に沿って直列に接続され
、相互の接続点が前記信号ノードに接続される一対のインダクタと、
前記補助ノード
の両側
において、前記信号線上にある
ように前記信号線に沿って直列に接続され
、相互の接続点が前記補助ノードに接続される補助対のインダクタと
を有し、
前記一対のインダクタは、結合係数kSによって定義される相互結合を有するよう構成され、
前記補助対のインダクタは、結合係数kAによって定義される相互結合を有するよう構成され、
前記インダクタの各対ごとに、当該対のインダクタは、それらのインダクタの一方を通って所与の方向で前記信号線に沿って流れる電流が、それらのインダクタの他方で、正の結合係数
の場合には前記信号線に沿って同じ方向に
又は負の結合係数の場合には前記信号線に沿って逆の方向に流れる電流を誘導するように、配置され、
kSは正の値を有
するよう選択され、kAは負の値を有する
よう選択される、
インターフェイス回路。
【請求項2】
前記補助ノードは、前記信号ノードと前記接続ノードとの間に前記信号線に沿って画定され
、
前記一対のインダクタは、前記補助対のインダクタ
に前記信号線に沿って
直列に接続され
、
前記補助対のインダクタは、前記接続ノード
に前記信号線に沿って接続される、
請求項1に記載のインターフェイス回路。
【請求項3】
前記補助回路は、静電放電保護回路である、
請求項1又は2に記載のインターフェイス回路。
【請求項4】
kS及びkAは両方とも0.1よりも大きい大きさを有し、かつ/あるいは
kS及びkAは両方とも0.1から0.4の間の大きさを有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路。
【請求項5】
前記信号処理回路の実効キャパシタンスは、前記補助回路の実効キャパシタンスよりも大きく、前記一対のインダクタのインダクタンスは、前記補助対のインダクタのインダクタンスよりも大きく、kSの大きさは、kAの大きさよりも大きい、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路。
【請求項6】
前記信号線は、それに沿って画定される終端ノードを更に有し、当該インターフェイス回路は、前記終端ノードで前記信号線へ接続される終端抵抗を有し、
任意に、前記終端ノードは、前記補助ノードから前記信号ノードの反対側で前記信号線に沿って画定される、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路。
【請求項7】
正及び負の前記信号線を有する差動回路であって、
前記正及び負の信号線は夫々がそれ自身の
信号ノード、補助ノード及び接続ノードの組及びインダクタの対を備え、前記正及び負の信号線の前記接続ノードで差動伝送線路へ接続し、
前記正の信号線のインダクタの対の結合係数は、前記負の信号線の対応するインダクタの対の対応する結合係数と同じ極性を有する、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路。
【請求項8】
前記信号処理回路は、
前記信号線上又は前記正及び負の信号線上の出力信号を駆動するドライバ回路、及び/又は
前記信号線から又は前記正及び負の信号線からの入力信号を受けるバッファ回路
である、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路。
【請求項9】
第1端及び第2端を有する伝送線路と、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第1端で接続される第1インターフェイス回路と、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第2端で接続される第2インターフェイス回路と
を有する信号伝送システム。
【請求項10】
デジタル-アナログ変換器回路で使用される出力回路であって、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路を有する
出力回路。
【請求項11】
請求項10に記載の出力回路を有するデジタル-アナログ変換器回路。
【請求項12】
アナログ-デジタル変換器回路で使用される入力回路であって、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路を有する
入力回路。
【請求項13】
請求項12に記載の入力回路を有するアナログ-デジタル変換器回路。
【請求項14】
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のインターフェイス回路、又は請求項9に記載の信号伝送システム、又は請求項10に記載の出力回路、又は請求項11に記載のデジタル-アナログ変換器回路、又は請求項12に記載の入力回路、又は請求項13に記載のアナログ-デジタル変換器回路を有するICチップのような集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェイス回路、例えば、信号処理回路の出力段(ドライバ)及び/又は入力段(レシーバ)の部分又は全てを形成すること、に関係がある。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタル-アナログ変換器(DAC)の、そのような出力段は、伝送線路上で信号(すなわち、アナログ信号)を駆動するよう構成されてよい。例えば、アナログ-デジタル変換器(ADC)の、そのような入力段は、伝送線路からの信号(すなわち、アナログ信号)を受信又は回復するよう構成されてよい。インターフェイス回路は、DAC又はADCの部分をこのようにして形成し得る。DAC及びADCは、当然、単に、信号処理回路の都合のよい例である。インターフェイス回路及びそれらを有する回路構成は、集積回路として、例えば、ICチップ上で、実装され得る。
【0003】
出力段に関連したインターフェイス回路は、よって、伝送線路への接続のための追加回路とともにドライバ回路を有してよい。入力段に関連したインターフェイス回路は、よって、伝送線路への接続のための追加回路とともにバッファリング回路を有してよい。
【0004】
既存のインターフェイス回路は、特に、広帯域性能が重要である高速入出力段に関して、不満足であることが知られている。例えば、DAC及びADCの速度の増大とともに、インターフェイス回路の性能に対する圧力も右肩上がりである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様の実施形態に従って、信号線であり、それに沿って画定される信号ノード、補助ノード及び接続ノードを有し、該接続ノードは伝送線路への接続用である、前記信号線と、前記信号ノードで前記信号線へ接続される信号処理回路であり、該信号処理回路の実効キャパシタンスが前記信号ノードで現れる(例えば、与えられる又は印加される)ようにする前記信号処理回路と、前記補助ノードで前記信号線へ接続される補助回路であり、該補助回路の実効キャパシタンスが前記補助ノードで現れる(例えば、与えられる又は印加される)ようにする前記補助回路と、前記信号ノードに(例えば、直接に)隣接しその両側にある前記信号線に沿って直列に接続される一対のインダクタと、前記補助ノードに(例えば、直接に)隣接しその両側にある前記信号線に沿って直列に接続される補助対のインダクタとを有し、前記一対のインダクタは、結合係数kSによって定義される相互結合を有するよう構成され、前記補助対のインダクタは、結合係数kAによって定義される相互結合を有するよう構成され、前記インダクタの各対ごとに、当該対のインダクタは、それらのインダクタの一方を通って所与の方向で前記信号線に沿って流れる電流が、それらのインダクタの他方で、正の結合係数を前提として前記信号線に沿って同じ方向に流れる電流を誘導するように、配置され、kSは正の値を有し、kAは負の値を有する、インターフェイス回路が提供される。
【0006】
このようなインダクタ配置は、インターフェイス回路を有する回路の広帯域性能を確保するよう(後述されるように、多数の性能指標を一緒に考慮しながら)、信号処理回路の及び補助回路の実効キャパシタンスが補償されることを可能にすることができる。
【0007】
代替の配置では、kS及びkAは他の極性を有してもよい。すなわち、他の配置では、kS及びkAは両方とも正の値を有してよく、あるいは、kS及びkAは両方とも負の値を有してよい。他の配置では、kS及びkAは単にお互いと反対の極性を有してもよい。すなわち、そのような配置では、kSは正の値を有してよく、kAは負の値を有してよく、あるいは、kSは負の値を有してよく、kAは正の値を有してよい。極性のこのような他の組み合わせは、特定の、関連する利点を有し得る。
【0008】
前記補助ノードは、前記信号ノードと前記接続ノードとの間に前記信号線に沿って画定されてよく、かつ/あるいは、前記一対のインダクタは、前記補助対のインダクタに(例えば、直接に)隣接して前記信号線に沿って接続されてよく、かつ/あるいは、前記補助対のインダクタは、前記接続ノードに(例えば、直接に)隣接して前記信号線に沿って接続されてよい。
【0009】
前記補助回路は、静電放電保護回路であってよい。例えば、補助回路は、ダイオードのネットワークを有してもよい。
【0010】
結合係数kS及びkAは両方とも0.1よりも大きい大きさを有してよく、かつ/あるいは、結合係数kS及びkAは両方とも0.1から0.4の間の大きさを有する。性能は、それらの範囲内で特に有利であることができる。
【0011】
前記信号処理回路の実効キャパシタンスは、前記補助回路の実効キャパシタンスよりも大きくてよく、前記一対のインダクタのインダクタンスは、前記補助対のインダクタのインダクタンスよりも大きくてよく、kSの大きさは、kAの大きさよりも大きくてよい。例えば、信号処理回路の実効キャパシタンスは、補助回路の実効キャパシタンスの少なくとも2倍であることができ、一対のインダクタのインダクタンスは、補助対のインダクタのインダクタンスの少なくとも2倍であることができ、kSの大きさは、kAの大きさの少なくとも2倍であることができる。
【0012】
前記接続ノードは、ボンドパッドのような信号パッドとして構成されてよい。
【0013】
前記信号線は、それに沿って画定される終端ノードを更に有してよく、当該インターフェイス回路は、前記終端ノードで前記信号線へ接続される終端抵抗を有してよい。前記終端ノードは、前記補助ノードから前記信号ノードの反対側で前記信号線に沿って画定されてよい。
【0014】
例えば、終端抵抗、信号処理回路及び補助回路は、信号線の関連するノードと接地(例えば、RF接地)との間に夫々接続されてよい。
【0015】
ブリッジングキャパシタがインダクタの各対を橋渡しするために設けられなくても差し支えない。
【0016】
当該インターフェイス回路は、正及び負の前記信号線を有する差動回路であってよく、前記正及び負の信号線は夫々がそれ自身の前記ノードの組及びインダクタの対を備え、前記正及び負の信号線の前記接続ノードで差動伝送線路へ接続する。前記正の信号線のインダクタの対の結合係数は、前記負の信号線の対応するインダクタの対の対応する結合係数と同じ極性を有してよい。
【0017】
例えば、終端抵抗、信号処理回路及び補助回路は、正及び負の信号線の関連するノード間に夫々接続されてよい。
【0018】
前記正の信号線のインダクタの対の結合係数は、前記負の信号線の対応するインダクタの対の対応する結合係数と実質的に同じであってよい。
【0019】
前記信号処理回路は、前記正及び負の信号線へそれらの信号ノードで接続されてよく、前記補助回路は、前記正及び負の信号線へそれらの信号線の補助ノードで接続されてよい。
【0020】
前記信号処理回路は、前記信号線上又は前記正及び負の信号線上の出力信号を駆動するドライバ回路、及び/又は、前記信号線から又は前記正及び負の信号線からの入力信号を受けるバッファ回路であってよい。
【0021】
本発明の第2の態様の実施形態に従って、第1端及び第2端を有する伝送線路と、本発明の上記の第1の態様のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第1端で接続される第1インターフェイス回路と、本発明の上記の第1の態様のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第2端で接続される第2インターフェイス回路とを有する信号伝送システムが提供される。
【0022】
すなわち、前記第1インターフェイス回路は、前記信号線上又は前記正及び負の信号線上、最終的には伝送線路上の出力信号を駆動するドライバ回路を有するインターフェイス回路であってよく、前記第2インターフェイス回路は、前記信号線から又は前記正及び負の信号線から、最終的には伝送線路からの入力信号を受けるバッファ回路を有するインターフェイス回路であってよい。
【0023】
本発明の第3の態様の実施形態に従って、デジタル-アナログ変換器回路で使用される出力回路であって、本発明の上記の第1の態様のインターフェイス回路を有する出力回路が提供される。
【0024】
本発明の第4の態様の実施形態に従って、本発明の上記の第3の態様の出力回路を有するデジタル-アナログ変換器回路が提供される。
【0025】
本発明の第5の態様の実施形態に従って、アナログ-デジタル変換器回路で使用される入力回路であって、本発明の上記の第1の態様のインターフェイス回路を有する入力回路が提供される。
【0026】
本発明の第6の態様の実施形態に従って、本発明の上記の第5の態様の入力回路を有するアナログ-デジタル変換器回路が提供される。
【0027】
本発明の第7の態様の実施形態に従って、本発明の上記の第1の態様のインターフェイス回路、又は本発明の上記の第2の態様の信号伝送システム、又は本発明の上記の第3の態様の出力回路、又は本発明の上記の第4の態様のデジタル-アナログ変換器回路、又は本発明の上記の第5の態様の入力回路、又は本発明の上記の第6の態様のアナログ-デジタル変換器回路を有するICチップ(例えば、フリップチップ)のような集積回路が提供される。
【0028】
これより、一例として、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】インターフェイス回路の及び従来の(又は従前考えられていた)回路の特定の実施について、Sパラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【
図4A】インターフェイス回路の特定の実施について、Sパラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【
図4B】インターフェイス回路の特定の実施について、Sパラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【
図5A】インターフェイス回路の及び従来の回路の特定の実施について、Sパラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【
図5B】インターフェイス回路の及び従来の回路の特定の実施について、Sパラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
導入として、広帯域出力段(ドライバ)及び入力段(レシーバ)において、広帯域伝送利得(S21)及び広帯域リターン損(S22/S11)の両方を達成することが望ましい。ここで、S21、S22及びS11は、当業者によって認識されるSパラメータ(又は散乱パラメータ)である。
【0031】
通常、集積回路との関連で、静電放電(ESD)保護回路が伝送線路への接続に関して設けられ、駆動又はバッファリング回路の寄生キャパシタンスを増大させ、これはS11及びS21性能を劣化させうる。付加的な寄生キャパシタンスを補償しようと試みる既存のインターフェイス回路は、S21及びS22/S11における性能間で強いトレードオフを有している。すなわち、S22/S11を改善することはS21を悪化させ、その逆も同様である。優れた又は改善された広帯域性能がS21及びS22/S11の両方について達成されるインターフェイス回路を提供することが望ましい。
【0032】
本発明の実施形態は、S22/S11とS21との間のトレードオフが弱められるようにする。すなわち、S22/S11及びS21の両方が考慮される場合に、より良いバンド幅性能を可能にする。出力段を例とすれば、本発明の実施形態は更に、回路の伝送特性を“ピークにする”こと(後で明らかになる。)によって、先行する段によって(例えば、DACにおいて)引き起こされる如何なるロールオフも等化する。
【0033】
本発明の実施形態は、S22/S11及びS21の両方が広帯域であることを必要とする広帯域システムの出力段(ドライバ)又は入力段(レシーバ)に適用されてよい。上記のとおり、高速なDAC-ADCシステムは、1つの都合のよい例である。実施形態は、例えば、16nmテクノロジで実装される、半導体回路として提供されてよい。明らかなように、本明細書で開示される実施形態において、回路の利点は、結合されたインダクタを有するパッシブ構造をそれが利用する点である。DAC及びADCの例を続けると、本明細書で開示されるインターフェイス回路は、DAC出力段又はADC入力段の部分を形成してよい。
【0034】
図1Aは、インターフェイス回路100の概略図である。インターフェイス回路100は、例えば、高速DACの出力段(ドライバ)の部分又は全てを形成してよい。
【0035】
インターフェイス回路100は、簡略化された形で、すなわち、実際のインターフェイス回路を表す等価回路として、
図1で提示されていることが強調される。本開示は、然るべく理解されるだろう。
【0036】
インターフェイス回路100は、信号線L、信号処理回路120、補助回路140、及び終端抵抗180を有する。信号線Lは、信号ノード20、補助ノード40、接続ノード60、終端ノード80、一対のインダクタ15及び25、並びに補助対のインダクタ35及び45を有する。
【0037】
図1Aに示されるインターフェイス回路100は、上述されたように出力段(ドライバ)において実装されるべきである。信号処理回路120は、よって、(可変)電流源によってここで表されているドライバ回路124を有する。ドライバ回路124に起因して信号ノード20で現れる又は与えられる(寄生)キャパシタンスは、キャパシタ122によって明示的に表されている。信号処理回路120は、等価回路100において信号ノード20と接地GND(RF GNDを表すとここで考えられてもよい。)との間に接続されて示されている。
【0038】
補助回路140は、先と同じく、補助回路140に起因して補助ノード40で現れる又は与えられる(寄生)キャパシタンスを表すよう、キャパシタによって表されている。補助回路140は、例えば、ESD保護回路であってよいが、補助ノード40でキャパシタンスを与える如何なる回路であってもよい。補助回路140は、便宜上、本明細書では、ESD保護回路140と呼ばれ得る。補助回路140は、先と同じく、補助ノード40でのキャパシタンスの影響を示すよう、補助ノード40と接地GND(RF GND)との間に接続されて示されている。当然、補助回路140に対応するESD保護回路は、当業者に知られるように、信号線Lを接地へ接続するダイオードの対として実装され、電圧源を夫々供給してよい。
【0039】
接続ノード60は、伝送線路への接続用であり、例えば、信号又はボンドパッドであってよい。終端抵抗180は、終端ノード80と接地GND(RF GND)との間に接続されている。通常、終端抵抗180は、50Ω伝送線路及び対応する50Ω入力段と整合するために50Ωの値を有し得る。
【0040】
一対のインダクタ15及び25は、Tコイルとして簡単に記載され得る。一対のインダクタ15及び25は一緒に、信号ノード20に隣接してその両側で信号線Lに沿って直列に接続される。一対のインダクタ15及び25は、結合係数kSによって定義される相互結合を有するよう構成される。
【0041】
同様に、補助対のインダクタ35及び45は、Tコイルとして簡単に記載され得る。補助対のインダクタ35及び45は一緒に、補助ノード40に隣接してその両側で信号線Lに沿って直列に接続される。補助対のインダクタ35及び45は、結合係数kAによって定義される相互結合を有するよう構成される。
【0042】
一対のインダクタ15及び25並びに補助対のインダクタ35及び45は、kSが正の極性を有し(すなわち、正の値を有し)、kAが負の極性を有する(すなわち、負の値を有する)ように、接続及び配置される。この特定の構成は、S21及びS22/S11の両方のための優れた広帯域性能にとって有利である。他の配置では、相互結合係数は、
図3~5を参照して後で説明されるように、異なる組み合わせの極性を有してよい。
図3~5から明らかになるように、kS及びkAの極性の他の特定の組み合わせは、他の懸案事項(すなわち、S21及びS22/S11の両方のための優れた広帯域性能を達成すること以外の懸案事項)に基づき選択されてよい。この意味での極性の意義は、後に説明されることになる。
【0043】
信号処理回路120は、電流を生成し、信号線L及び伝送線路(図示せず。)上で信号を駆動する。
【0044】
補助回路140がESD保護回路を表すところの例において、そのようなESD保護回路は、静電放電によるダメージからドライバ回路120を保護するために設けられる。しかし、補助回路140は、事実上、キャパシタンスとして現れる。従前考えられてきたインターフェイス回路では、補助回路140は、そのキャパシタンスが事実上キャパシタ122と並列に現れるように設けられる(すなわち、ドライバ回路124の実効キャパシタンスを増大させ、性能を悪化させる。)。しかし、対照的に、インターフェイス回路100では、補助回路140は、(信号ノード20でよりむしろ)インダクタ対35、45と並んで補助ノード40で現れ、そのようなものとして、ドライバ回路124及び補助回路140のキャパシタンスは分割及び分配される。これは、ドライバ回路124及び補助回路140の両方のキャパシタンスの影響がより良く補償されることを可能にし、かつ、インターフェイス回路100が組み込まれる回路のより良い性能を可能にしている。
【0045】
インターフェイス回路100のパラメータは、インターフェイス回路(一対のインダクタ15及び25並びに補助対のインダクタ35及び45と、補助回路140と、信号処理回路120と、終端抵抗180とを含む。)が、従前考えられてきた補償技術と比較して、広範囲の周波数にわたる補償効果を、特に、S22/S11及びS21の両方が考慮される場合に、改善されたバンド幅性能、を示すように選択される。すなわち、インターフェイス回路100が組み込まれる回路の性能の劣化は、特定のパラメータ(特に、結合係数kS及びkA)に対して適切な値が選択されるという条件で、インターフェイス回路100の構成要素の相互作用により(広範囲の周波数にわたる許容可能レベルまで)低減され得る。
【0046】
図1Bは、インターフェイス回路101の概略図である。インターフェイス回路101は、
図1Aに示される上記のインターフェイス回路100と同様であるから、繰り返しの説明は、可能な場合に省略される。
図1Aのインターフェイス回路100と同じ構成要素は、同じ参照符号を与えられている。
【0047】
インターフェイス回路101は、入力段(すなわち、伝送線路から信号を受ける段)において実装されるべきである。インターフェイス回路101は、信号処理回路120が信号処理回路121によって置き換えられている点を除いて、インターフェイス回路100と同じ構成要素を有する。信号処理回路121は、信号を受信するよう構成された回路である(例えば、信号処理回路121はバッファ回路を表し得る。)。信号処理回路121に起因して信号ノード20で現れる(与えられる又は示される)キャパシタンスは、キャパシタ123によって表されている。
【0048】
図1Bで破線により示されている回路(代表的な抵抗62及び代表的なドライバ64)は、接続ノード60で接続されるドライバ段及び伝送線路を表すために(例えば、シミュレーションにおいて)使用され得る回路を示す。
【0049】
図1A及び1Bの両方に対応する回路を、すなわち、信号処理回路が信号処理回路120及び信号処理回路121の両方として(例えば、異なる動作モードで)動作することができるトランシーバとして、設けることが可能であり得る。本開示は然るべく理解されるであろう。
【0050】
図1A及び1Bで使用されるドットのルールについて、これより、
図1Aを参照して簡単に説明する。電流が一対のインダクタの一方のインダクタ(第1インダクタ)(例えば、対15及び25の一方)からそのドット付き端子から流れ出るべきであった場合に、その電流から生成される磁界は、その対の2つのインダクタの間の相互結合が、結合係数が正である(すなわち、正の値又は極性を有する)ようなものであるという条件で、その対の他方のインダクタ(第2インダクタ)からそのドット付き端子から流れ出る電流を引き起こすような方向において第2インダクタに影響を及ぼすことになる。代わりに、その対の2つのインダクタの間の相互結合が、結合係数が負である(すなわち、負の値又は極性を有する)ようなものである場合には、第1インダクタからそのドット付き端子から流れ出る電流から生成される磁界は、第2インダクタにそのドット付き端子から流れ込む電流を引き起こすように第2インダクタに影響を及ぼすことになる。
【0051】
明らかなように、
図1A及び1Bで使用されるドットのルールは、いささか任意であり、代替のルールは、インダクタの各対内の結合の全体の極性が保たれるという条件で使用されてよい。例えば、
図1におけるインダクタ15、25、35及び45のドットの夫々は、そのインダクタの他方の側にあってもよく、その場合に、相互結合係数kS及びkAの符号は、同じままであってよい。他の例として、正の極性の相互結合を有するインダクタの対と、負の極性の相互結合を有するインダクタの対とを考えると、両方の対において同じ相対位置でドットを有し、かつ、一方の対について正の相互結合係数を及び他方の対について負の相互結合係数を有するのではなく、各対の相互結合係数は、同じ符号を有してよく、ドットの相対位置は、相互結合の極性が正又は負であるかどうかに基づき一方の対において変更されてよい。
【0052】
図1A及び1Bに示されるドットのルールを用いて、インダクタ15、25、35及び45は、kSが正でありかつkAが負である(上述されたように、他の配置では、他の極性が選択されてもよい。)ように構成及び配置される。
【0053】
正の相互結合係数は、0(すなわち、インダクタ間に相互結合はない。)から1(すなわち、一方のインダクタで生成される全ての磁束が他方へ結合される場合、すなわち、とり得る最大相互結合)までの値を有することができる。コア(すなわち、変圧器と同様)の使用によらず、正の相互結合係数(例えば、本明細書で開示されるTコイルの場合)は、0から約0.5の間の値を有してよい。負の相互結合係数の対応する範囲は、当然同じであるが負である。
【0054】
相互結合係数kS及びkAの選択は、多数の因子に基づく。1つのそのような因子は、ドライバ回路124により信号ノード20で現れる又は与えられるキャパシタンス、及び補助回路140により補助ノード40で現れる又は与えられるキャパシタンスである。一般に、ドライバ回路124(すなわち、キャパシタ122)によるキャパシタンスが大きければ大きいほど、インダクタ15、25のインダクタンスは(このキャパシタンスを補償するために)ますます大きくなければならず、補助回路140によるキャパシタンスが大きければ大きいほど、インダクタ35、45のインダクタンスは(このキャパシタンスを補償するために)ますます大きくなければならない。更に、一般に、より小さいインダクタの場合に、望ましい相互結合を得ることは実際上困難であり得るので、より小さいインダクタの場合に、正の相互結合係数のための値の範囲は、より大きいインダクタの場合(例えば、0から0.5)よりも小さくなる(例えば、0から2.5)。負の相互結合係数の対応する範囲は、当然同じであるが負である。
【0055】
一般に、相互結合係数kSの0.1を上回る値(例えば、0.15)は、S21及びS22/S11の両方のための広帯域性能に関して有利であると知られており、相互結合係数kAの-0.1を下回る値(例えば、-0.15)は、S21及びS22/S11の両方のための広帯域性能に関して有利であると知られている。特に、相互結合係数kSについての0.1から0.4の値は、S21及びS22/S11の両方のための広帯域性能に関して有利であると知られており、相互結合係数kAについての-0.1から-0.4の値は、S21及びS22/S11の両方のための広帯域性能に関して有利であると知られている。更に、相互結合係数kSについての約0.3又は0.35の値は、有利であると知られており、相互結合係数kAについての-0.1又は-0.15の値は、有利であると知られている。特定の配置において、キャパシタ122は、キャパシタ140よりも大きいキャパシタンス(例えば、2倍のキャパシタンス)を有してよいと考えられている。そのような場合に、kSは、(上記のとおり、値の大きさに関して)kAよりも大きくなる。当然、他の配置では、キャパシタ122は、キャパシタ140よりも小さいキャパシタンス(例えば、半分)を有してもよい。そのような場合に、kSは、(値の大きさに関して)kAよりも小さくなる。
【0056】
図2Aは、負の極性を有する相互結合を有しているインダクタの対の例の概略図である。すなわち、
図1A及び1Bで使用されるドットのルールに従って、
図2Aに示されるインダクタの対は、負の相互結合係数を有している。
【0057】
各インダクタは2つの端子を有し、一方のインダクタの一方の端子は、端子Tcenterを形成するよう他方の端子の一方の端子へ接続されている。残りの端子はT1及びT2と標記されている。
図2Aに示される対は、一対のインダクタ15及び25であると見なされてよく、その場合に、端子Tcenterは、
図1A及び1Bにおける信号ノード20と対応する。
図2Aに示される対は、補助対のインダクタ35及び45であると見なされてよく、その場合に、端子Tcenterは、
図1A及び1Bにおける補助ノード40と対応する。
【0058】
図2Bは、正の極性を有する相互結合を有しているインダクタの対の例の概略図である。すなわち、
図1A及び1Bで使用されるドットのルールに従って、
図2Bに示されるインダクタの対は、正の相互結合係数を有している。
【0059】
各インダクタは2つの端子を有し、一方のインダクタの一方の端子は、端子Tcenter′を形成するよう他方の端子の一方の端子へ接続されている。残りの端子はT1′及びT2′と標記されている。
図2Bに示される対は、例えば、一対のインダクタ15及び25であると見なされてよく、その場合に、端子Tcenter′は、
図1A及び1Bにおける信号ノード20と対応する。
図2Bに示される対は、補助対のインダクタ35及び45であると見なされてよく、その場合に、端子Tcenter′は、
図1A及び1Bにおける補助ノード40と対応する。
【0060】
図2A及び2Bに示される例は、網羅的ではなく、明らかなように、正又は負の相互結合極性を有するよう構成されたインダクタ対の多数の他の可能な構成がある。
【0061】
インターフェイス回路100の実施及び関連する利点が、これより記載される。
【0062】
上記のSパラメータは、回路性能の指標である。簡単に言えば、S21は、回路の伝送利得(すなわち、順方向電圧利得)の指標であり、S11は、入力ポート電圧反射の指標であり、S22は、出力ポート電圧反射の指標である。
【0063】
上述されたように、インターフェイス回路100は、出力段(ドライバ)において(すなわち、接続ノード60は、伝送線路に沿って信号を出力するよう、伝送線路への接続用であってよい。)及び/又は入力段(レシーバ)において(すなわち、接続ノード60は、伝送線路に沿ってそれから信号を受信するよう、伝送線路への接続用であってよい。)実装されてよい。いずれの場合にも、出力段(ドライバ)についての関心のある2つのSパラメータはS21及びS22であり、入力段についての関心のある2つのパラメータはS21及びS11である。相反定理に従って、S21の値は、出力段及び入力段の視点から同じである。
【0064】
一般に、広範囲の動作周波数にわたって、S21は高く、S11及び/又はS22は低いことが有利である。現行の例において、広範囲の周波数にわたって、S21は-3dBを上回り、S11及び/又はS22は-12dBを下回ることが有利であり得る。一般に、S21が-3dBを上回りかつS11及び/又はS22が-12dBを下回る周波数の範囲が広ければ広いほど、この現行の例における回路の性能はより良い。
【0065】
インターフェイス回路100が実装される回路が、-3dBを上回るS21の値を有し、更には、-12dBを下回るS22及び/又はS11の値を有している周波数の範囲は、所与の配置での具体的な性能が選択されたパラメータ(例えば、回路部品のキャパシタンス、抵抗及びインダクタンス、並びにkS及びkAの正確な値)に依存するとして、kSが正でありかつkAが負である場合に、従来の回路のそれよりも広いことが知られている。
【0066】
図3は、シミュレーションに基づき、S21及びS22パラメータが信号周波数とともにどのように変化するかを示す2つのグラフを示す。白丸の軌跡は、従来の回路についてのSパラメータ性能を示し、黒丸の軌跡は、インターフェイス回路100の特定の実施について測定された同じ性能を示す。用いられた従来の回路は、キャパシタ140がキャパシタ122と並列に設けられ、インダクタ35及び45が設けられておらず、インダクタ15及び25によって形成されたTコイルが(ブリッジ型Tコイルのように)キャパシタにより橋渡しされた点で、インターフェイス回路100の実装とは異なっていた。S21についての-3dB及びS22(及びS11)についての-12dBのレベルは、グラフに書き記されている。
【0067】
従来の回路についてのS21の値は、およそ60GHzで-3dBを下回り、インターフェイス回路100についてのS21の値は、およそ85GHzで-3dBを下回ることが分かる。同様に、従来の回路についてのS22の値が-12dBを上回る周波数は、少なくとも100GHzであり(それはグラフに示されていない。)、インターフェイス回路100についてのS22の値が-12dBを上回る周波数は、およそ70GHzである。
【0068】
よって、従来の回路についてのバンド幅(-3dBを上回るS21の値及び-12dBを下回るS22の値の両方を有する信号周波数の範囲)は、60GHz(0GHzから60GHz)であり、インターフェイス回路100についての対応するバンド幅は、70GHz(0GHzから70GHz)である。このように、インターフェイス回路100は、従来の回路よりも広いバンド幅を有する。
【0069】
図4Aは、インターフェイス回路100の特定の実施についてのS21パラメータが信号周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
図4Bは、インターフェイス回路100の同じ実施についてのS22パラメータが信号周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【0070】
図4A及び4Bにおいて、三角を有する線は、kSが-0.3でありかつkAが-0.2である(すなわち、kSが負でありかつkAが負である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。白丸を有する線は、kSが-0.3でありかつkAが0.2である(すなわち、kSが負でありかつkAが正である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。四角を有する線は、kSが0.3でありかつkAが0.2である(すなわち、kSが正でありかつkAが正である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。黒丸を有する線は、kSが0.3でありかつkAが-0.2である(すなわち、kSが正でありかつkAが負である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。
【0071】
図4Aには、S21についての-3dBのレベルが書き記されており、
図4Bには、S22(及びS11)についての-12dBのレベルが書き記されている。
図4A及び4Bから分かるように、最も広いバンド幅(インターフェイス回路100の実装を有する回路が、-3dBを上回るS21の値及び-12dBを下回るS22の値を有して動作することができる周波数の範囲)を与える実施は、結合係数kSが0.3でありかつ結合係数kAが-0.2である実施である(この実施は約65GHzのバンド幅を有し、S21パラメータは、およそ90GHzで-3dBを下回り、S22パラメータは、およそ65GHzで-12dBを上回る。)。すなわち、kSが正でありかつkAが負である実施である。
【0072】
インターフェイス回路100はまた、それが実装される回路の伝送特性(順方向電圧利得S21)において(上記の)“ピーク”を生じさせることができる。例えば、
図4Aを見ると、S21のグラフは、降下の前にピークに達する。詳細には、適切なパラメータ(例えば、結合係数、インダクタンス、キャパシタンス、など)を前提として、順方向電圧利得は、順方向電圧利得が落ちる(-3dBの閾値を下回る)周波数の直下の周波数で増大することができる。この“ピーク”は、インターフェイス回路100が実装される段に先行する段によって引き起こされる如何なる“ロールオフ”も等化又は補償するのを助けることができる。すなわち、インターフェイス回路100のピーク効果は、“ロールオフ”によって引き起こされる性能劣化をやわらげるのを助けることができる。
【0073】
図5Aは、従来の回路(上記の従来の回路に対応する。)と比較して、インターフェイス回路100の特定の実施についてのS21パラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
図5Bは、従来の回路と比較して、インターフェイス回路100の同じ実施について、S22パラメータが周波数とともにどのように変化するかを示すグラフである。
【0074】
図5A及び5Bにおいて、三角を有する線は、kSが-0.3でありかつkAが-0.2である(すなわち、kSが負でありかつkAが負である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。白丸を有する線は、kSが-0.3でありかつkAが0.2である(すなわち、kSが負でありかつkAが正である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。四角を有する線は、kSが0.3でありかつkAが0.2である(すなわち、kSが正でありかつkAが正である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。黒丸を有する線は、kSが0.3でありかつkAが-0.2である(すなわち、kSが正でありかつkAが負である)インターフェイス回路100の特定の実施についてのSパラメータを示す。十字を有する線は、従来の回路についてのSパラメータを示す。
【0075】
図5A及び5Bと
図4A及び4Bとの間の相違は、グラフを生成するために使用される実装のためのパラメータ(例えば、信号処理回路120及び補助回路140の代表的なキャパシタンス、インダクタ15、25、35及び45のインダクタンス、並びに終端抵抗180の抵抗)の選択による。
【0076】
図5Aには、S21についての-3dBのレベルが書き記されており、
図5Bには、S22(及びS11)についての-12dBのレベルが書き記されている。
図5A及び5Bから分かるように、最も広いバンド幅(-3dBを上回るS21の値及び-12dBを下回るS22の値を有する周波数の範囲)を与える実施は、kSが0.3でありかつkAが-0.2である実施である(この実施は約80GHzのバンド幅を有し、S21パラメータは、およそ92GHzで-3dBを下回り、S22パラメータは、およそ80GHzで-12dBを上回る。)。
【0077】
図5A及び5Bからは、この実施における従来の回路がおよそ64GHzのバンド幅を有することも分かる。
【0078】
図3から5BにおけるグラフはS22パラメータを示すが、S11を示すグラフは同じようであるから、図示されない。
図3から5Bにおけるグラフは、
図1Aに表されている出力段に関するが、同様のグラフが
図1Bの入力段インターフェイス回路101に基づき得られることが認識されるだろう。
【0079】
シングルエンド回路として実装されるように上述されたが、インターフェイス回路100は、差動回路としても実装されてよい。この場合に、インターフェイス回路100は、
図1AにおけるRF GNDに関して“ミラーリング”されると考えられてよい。同様の考えは、当然、
図1Bのインターフェイス回路101に当てはまる。
【0080】
図6は、差動インターフェイス回路300の概略図である。差動インターフェイス回路300は、第1インターフェイス回路及び第2インターフェイス回路を有する。第1インターフェイス回路は、その信号線Lを正の信号線Lpであるとするとともに、係数kS及びkAをkSp及びkAp(すなわち、信号線Lpに関連する。)であるとして、
図1に表されるインターフェイス回路100であると見なされ得る(差し当たり、インターフェイス回路100の接地を無視する。)。
【0081】
第2インターフェイス回路は、第1インターフェイス回路100の正の信号線Lpと対応する負の信号線Lnを有する。負の信号線Lnは、正の信号線Lpのそれらに対応するノードを有する。第2インターフェイス回路は、第1インターフェイス回路100のそれに対応する回路(すなわち、第2インターフェイス回路は、第2終端抵抗380、第2信号処理回路320、第2補助回路340、結合係数kSnを有する一対のインダクタ215及び225、並びに結合係数kAnを有する補助対のインダクタ235及び245)を有し、その詳細な記載は省略される。
【0082】
第1終端抵抗180は、第2終端抵抗380へ接続されている(集合的に、差動インターフェイス回路300の終端抵抗)。同様に、第1信号処理回路120は、第2信号処理回路320へ接続されている(集合的に、差動インターフェイス回路300の信号処理回路)。更に、第1補助回路140は、第2補助回路340へ接続されている(集合的に、差動インターフェイス回路300の補助回路)。
【0083】
第1接続ノード60及び第2接続ノード260は、差動伝送線路へ接続するためである。
【0084】
破線で示されている回路(代表的な抵抗66)は、第1及び第2接続ノード60及び260で接続される伝送線路の他方の側にある入力段を表すために(例えば、シミュレーションにおいて)使用され得る回路を示す。
【0085】
明らかなように、差動インターフェイス回路300は、入力段での実装のために変更されてよい。例えば、
図1Bに示されるインターフェイス回路101と同様に、第1及び第2信号処理回路120及び320は、差動信号を一緒に受信するバッファ回路を夫々有してよい。
【0086】
本発明を用いるインターフェイス回路100、101及び/又は差動インターフェイス回路300は、上述されたように、DAC又はADC回路のような混合信号回路において及び/又はそれとともに実装されてよい。例えば、本発明を用いるインターフェイス回路100、101及び/又は差動インターフェイス回路300は、
図7A及び
図7Bに表されるように、DAC回路400(又は、他の例では、ADC回路400)において及び/又はそれとともに実装されてよい。
【0087】
要約すると、ドライバの出力ノードでのキャパシタンスを複数のより小さいキャパシタンスに分けることによって、夫々が別個のTコイルによって補償され、広帯域S22及びS21(又はS11及びS21)のために最適化され得る。
図1A及び1Bで見られるように2つのTコイルを使用する場合に、いずれも本明細書で用いられるドットのルールに関して、kSが正でありかつkAが負であることが有利である。この選択は、S21及びS22/S11のバンド幅性能を可能な限り最適条件に近づける。インターフェイス回路100はまた、先行する段によって引き起こされる如何なるロールオフ挙動(例えば、DACのsinc(x)挙動)も等化するようピークを生成することができる。
【0088】
本発明の回路は、例えば、フリップチップのようなICチップ上で、集積回路として実装されてよい。本発明は、上記の集積回路及びICチップ、そのようなICチップを有する回路基板、並びにそのような回路基板を有する通信ネットワーク(例えば、インターネット光ファイバ網及びワイヤレスネットワーク)及びそのようなネットワークのネットワーク設備に及ぶ。
【0089】
上記の実施形態に加えて、以下の付記を開示する。
(付記1)
信号線であり、それに沿って画定される信号ノード、補助ノード及び接続ノードを有し、該接続ノードは伝送線路への接続用である、前記信号線と、
前記信号ノードで前記信号線へ接続される信号処理回路であり、該信号処理回路の実効キャパシタンスが前記信号ノードで現れるようにする前記信号処理回路と、
前記補助ノードで前記信号線へ接続される補助回路であり、該補助回路の実効キャパシタンスが前記補助ノードで現れるようにする前記補助回路と、
前記信号ノードに隣接しその両側にある前記信号線に沿って直列に接続される一対のインダクタと、
前記補助ノードに隣接しその両側にある前記信号線に沿って直列に接続される補助対のインダクタと
を有し、
前記一対のインダクタは、結合係数kSによって定義される相互結合を有するよう構成され、
前記補助対のインダクタは、結合係数kAによって定義される相互結合を有するよう構成され、
前記インダクタの各対ごとに、当該対のインダクタは、それらのインダクタの一方を通って所与の方向で前記信号線に沿って流れる電流が、それらのインダクタの他方で、正の結合係数を前提として前記信号線に沿って同じ方向に流れる電流を誘導するように、配置され、
kSは正の値を有し、kAは負の値を有する、
インターフェイス回路。
(付記2)
前記補助ノードは、前記信号ノードと前記接続ノードとの間に前記信号線に沿って画定され、かつ/あるいは
前記一対のインダクタは、前記補助対のインダクタに隣接して前記信号線に沿って接続され、かつ/あるいは
前記補助対のインダクタは、前記接続ノードに隣接して前記信号線に沿って接続される、
付記1に記載のインターフェイス回路。
(付記3)
前記補助回路は、静電放電保護回路である、
付記1又は2に記載のインターフェイス回路。
(付記4)
kS及びkAは両方とも0.1よりも大きい大きさを有し、かつ/あるいは
kS及びkAは両方とも0.1から0.4の間の大きさを有する、
付記1乃至3のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路。
(付記5)
前記信号処理回路の実効キャパシタンスは、前記補助回路の実効キャパシタンスよりも大きく、前記一対のインダクタのインダクタンスは、前記補助対のインダクタのインダクタンスよりも大きく、kSの大きさは、kAの大きさよりも大きい、
付記1乃至4のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路。
(付記6)
前記信号線は、それに沿って画定される終端ノードを更に有し、当該インターフェイス回路は、前記終端ノードで前記信号線へ接続される終端抵抗を有し、
任意に、前記終端ノードは、前記補助ノードから前記信号ノードの反対側で前記信号線に沿って画定される、
付記1乃至5のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路。
(付記7)
正及び負の前記信号線を有する差動回路であって、
前記正及び負の信号線は夫々がそれ自身の前記ノードの組及びインダクタの対を備え、前記正及び負の信号線の前記接続ノードで差動伝送線路へ接続し、
前記正の信号線のインダクタの対の結合係数は、前記負の信号線の対応するインダクタの対の対応する結合係数と同じ極性を有する、
付記1乃至6のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路。
(付記8)
前記信号処理回路は、
前記信号線上又は前記正及び負の信号線上の出力信号を駆動するドライバ回路、及び/又は
前記信号線から又は前記正及び負の信号線からの入力信号を受けるバッファ回路
である、
付記1乃至7のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路。
(付記9)
第1端及び第2端を有する伝送線路と、
付記1乃至8のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第1端で接続される第1インターフェイス回路と、
付記1乃至8のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路であり、前記伝送線路へその第2端で接続される第2インターフェイス回路と
を有する信号伝送システム。
(付記10)
デジタル-アナログ変換器回路で使用される出力回路であって、
付記1乃至8のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路を有する
出力回路。
(付記11)
付記10に記載の出力回路を有するデジタル-アナログ変換器回路。
(付記12)
アナログ-デジタル変換器回路で使用される入力回路であって、
付記1乃至8のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路を有する
入力回路。
(付記13)
付記12に記載の入力回路を有するアナログ-デジタル変換器回路。
(付記14)
付記1乃至8のうちいずれか一つに記載のインターフェイス回路、又は付記9に記載の信号伝送システム、又は付記10に記載の出力回路、又は付記11に記載のデジタル-アナログ変換器回路、又は付記12に記載の入力回路、又は付記13に記載のアナログ-デジタル変換器回路を有するICチップのような集積回路。
【符号の説明】
【0090】
20 信号ノード
40 補助ノード
60 接続ノード
80 終端ノード
100,101 インターフェイス回路
120,121 信号処理回路
124 ドライバ回路
140 補助回路
180 終端抵抗
260 第2接続ノード
300 差動インターフェイス回路
320 第2信号処理回路
340 第2補助回路
380 第2終端抵抗
400 DAC又はADC
L 信号線
Lp 正の信号線
Ln 負の信号線