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特許7351103調光装置、および、調光シートの駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】調光装置、および、調光シートの駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20230920BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/133 580
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019099520
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020194087
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正則
(72)【発明者】
【氏名】大久保 航
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0041020(US,A1)
【文献】特開2002-072978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光シートと、
前記調光シートを駆動する駆動装置と、を備え、
前記調光シートは、
複数の第1端子を備えた第1透明電極と、
第2端子を備えた第2透明電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備え、
前記駆動装置は、
液晶分子の分極方向を変える第1電圧を電極間に印加する第1動作と、
前記第1電圧の極性を反転させた第2電圧を前記電極間に印加する第2動作と、
前記第1透明電極を発熱させる電圧を前記第1端子間に印加する加熱動作と、をそれぞれ所定期間の単位動作として周期的に繰り返し、
周期的に繰り返されるデッドタイムを設定し、
前記単位動作の繰り返しには、前記電極間の電圧が前記デッドタイムで前記第1電圧から前記第2電圧に変わるように前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返す液晶反転動作が含まれ、前記液晶反転動作の終了から前記デッドタイムを経過する前に、当該液晶反転動作から前記加熱動作に切り替える
調光装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、
前回の前記液晶反転動作と今回の前記液晶反転動作との間に前記加熱動作を行う
請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、
前記第1電圧を所定期間だけ出力することと、前記第2電圧を所定期間だけ出力することとを交互に繰り返す駆動回路と、
前記第1透明電極を発熱させる電圧を出力するヒーター電源と、
前記駆動回路と前記ヒーター電源とに接続された切換回路であって、前記駆動回路の出力と前記ヒーター電源の出力とのいずれか一方を前記調光シートに出力する前記切換回路と、
前記切換回路での出力の切り換えを制御するタイミング制御回路と、を備える
請求項1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
調光シートを駆動する調光シートの駆動方法であって、
前記調光シートは、
複数の第1端子を備えた第1透明電極と、
第2端子を備えた第2透明電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備え、
液晶分子の分極方向を変える第1電圧を電極間に印加する第1動作と、
前記第1電圧の極性を反転させた第2電圧を前記電極間に印加する第2動作と、
前記第1透明電極を発熱させる電圧を前記第1端子間に印加する加熱動作と、をそれぞれ所定期間の単位動作として周期的に繰り返し、前記単位動作の繰り返しには、前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返すことが含まれ、
周期的に繰り返されるデッドタイムを設定し、
前記単位動作の繰り返しには、前記電極間の電圧が前記デッドタイムで前記第1電圧から前記第2電圧に変わるように前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返す液晶反転動作が含まれ、前記液晶反転動作の終了から前記デッドタイムを経過する前に、当該液晶反転動作から前記加熱動作に切り替える
調光シートの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートを備えた調光装置、および、調光シートの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、一対の透明電極に挟まれた液晶組成物を備える。液晶組成物は、透明電極間の電圧の変化に応じて、調光シートを透明と不透明とに変える。調光シートの駆動装置は、不純物イオンなどの偏析を抑えるために透明電極間に交流電圧を印加し、それによって、調光層の長寿命化を図る(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
調光シートの型式は、ノーマル型とリバース型とに分類される。ノーマル型では、非通電時の調光層が不透明であり、通電時の調光層が透明である。ノーマル型は、光の遮蔽性を頻繁に必要とするスクリーン等への適用に好適である。リバース型では、非通電時の調光層が透明であり、通電時の調光層が不透明である(例えば、特許文献2を参照)。リバース型は、透明による安全性を非常時に必要とする建材等への適用に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-091986号公報
【文献】特開2000-321562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、調光シートの適用範囲は広がる一途をたどり、これに伴い、調光シートは寒冷地などの低温下での使用も検討されている。そして、低温下での調光シートの使用に際しては、液晶分子の配向が電圧の印加に追従しにくい新たな課題が生じている。
本発明は、調光シートを駆動可能とする温度の下限値を引き下げ可能にした調光装置、および、調光シートの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための調光装置は、調光シートと、前記調光シートを駆動する駆動装置と、を備える。前記調光シートは、複数の第1端子を備えた第1透明電極と、第2端子を備えた第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備える。前記駆動装置は、液晶分子の分極方向を変える第1電圧を電極間に印加する第1動作と、前記第1電圧の極性を反転させた第2電圧を前記電極間に印加する第2動作と、前記第1透明電極を発熱させる電圧を前記第1端子間に印加する加熱動作と、をそれぞれ所定期間の単位動作として周期的に繰り返し、前記単位動作の繰り返しには、前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返すことが含まれる。
【0007】
上記課題を解決するための調光シートの駆動方法は、調光シートを駆動する調光シートの駆動方法であって、前記調光シートは、複数の第1端子を備えた第1透明電極と、第2端子を備えた第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備える。この方法は、液晶分子の分極方向を変える第1電圧を電極間に印加する第1動作と、前記第1電圧の極性を反転させた第2電圧を前記電極間に印加する第2動作と、前記第1透明電極を発熱させる電圧を前記第1端子間に印加する加熱動作と、をそれぞれ所定期間の単位動作として周期的に繰り返し、前記単位動作の繰り返しには、前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返すことが含まれる。
【0008】
上記構成によれば、第1動作と第2動作とを交互に繰り返すことが含まれた単位動作の繰り返しのなかに、第1透明電極を発熱させる加熱動作が、単位動作として含まれる。これにより、液晶分子の分極方向を変える動作を繰り返すなかで、液晶分子が加熱可能となる。結果として、液晶分子の分極方向が電圧の印加に追従しないような低温下に調光シートが置かれたとしても、液晶分子の分極方向が変更可能となる。したがって、調光シートを駆動可能とする温度の下限値が引き下げられる。
【0009】
そのうえ、第1動作、第2動作、および、加熱動作のいずれもが、所定期間に行われる単位動作であって、繰り返される単位動作であるから、第1動作と第2動作との繰り返しのなかに加熱動作を組み込むこと、すなわち、各単位動作を繰り返す制御が容易でもある。
【0010】
上記調光装置において、前記駆動装置は、前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返す一連の前記単位動作を液晶反転動作として、前回の前記液晶反転動作と今回の前記液晶反転動作との間に前記加熱動作を行ってもよい。
【0011】
この構成によれば、前回の液晶反転動作と今回の液晶反転動作との間に加熱動作が行われるため、液晶反転動作が繰り返される期間内で液晶分子の降温を抑制できる。それゆえに、調光シートを駆動可能とする温度の下限値を引き下げることが可能であり、かつ、前回の液晶反転動作で一度駆動された液晶分子が今回の液晶反転動作中に電圧に追従しなくなり得ることを抑制できる。
【0012】
上記調光装置において、前記駆動装置は、前回の前記液晶反転動作と今回の前記液晶反転動作との間で前記加熱動作を繰り返してもよい。この構成によれば、前回の液晶反転動作と今回の液晶反転動作との間に加熱動作が繰り返されるため、液晶反転動作が繰り返される期間内での液晶分子の降温をさらに抑制できる。
【0013】
上記調光装置において、前記駆動装置は、前記第1電圧を所定期間だけ出力することと、前記第2電圧を所定期間だけ出力することとを交互に繰り返す駆動回路と、前記第1透明電極を発熱させる電圧を出力するヒーター電源と、前記駆動回路と前記ヒーター電源とに接続された切換回路であって、前記駆動回路の出力と前記ヒーター電源の出力とのいずれか一方を前記調光シートに出力する前記切換回路と、前記切換回路での出力の切り換えを制御するタイミング制御回路と、を備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1電圧と第2電圧とが交互に繰り返される電圧と、第1透明電極を発熱させる電圧とが、切換回路に入力され続ける。そして、切換回路は、タイミング制御回路の入力に従って、切換回路に入力された上記2つの電圧のうち、いずれか一方を出力する。そのため、第1電圧と第2電圧とを交互に繰り返す電圧の出力と、第1透明電極を発熱させる電圧の出力との切り換えが、切換回路で円滑に進められる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る調光装置によれば、調光シートを駆動可能とする温度の下限値を引き下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】調光装置の一実施形態が備える調光シートの構成を示す構成図。
図2】ノーマル型の調光シートの断面構造を示す断面図。
図3】リバース型の調光シートの断面構造を示す断面図。
図4】調光装置の一実施形態における電気的構成を示すブロック図。
図5】調光装置が備える駆動回路の構成を示す回路図。
図6】調光装置が行う加熱動作の流れの一例を示すタイミングチャート。
図7】調光装置の変更例が備える調光シートの構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図6を参照して、調光装置の一実施形態を説明する。以下、調光シートの層構成、調光装置の電気的構成、および、調光装置が行う加熱動作を、この順に説明する。なお、本実施形態の調光装置は、調光シートが備える第1透明電極を、液晶分子の加熱源とする例であり、液晶分子の分極方向を変えない期間に、液晶分子を加熱する例である。
【0018】
[調光シート10]
図1は、調光シート10を3つの機能層に分解して示す分解斜視図である。各機能層は、単一の層構造を有してもよいし、積層された多層構造を有してもよい。
調光シート10は、例えば、車両や航空機などの移動体が備える窓に貼り付けられる。調光シート10は、例えば、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓、オフィスに設置されるパーティション、店舗に設置されるショーウインドウ、自動ドアなどの移動体などに貼り付けられてもよい。
【0019】
調光シート10が有する形状は、例えば、平面状である。調光シート10が有する形状は、二次元方向に曲率を有した曲面状であってもよいし、三次元方向に曲率を有した曲面状であってもよい。調光シート10が有する外形は、ガラス板や透明樹脂板などの支持体の外形と同じ外形を有してもよいし、支持体の外形とは異なる外形を有してもよい。
調光シート10の型式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか一方である。
【0020】
ノーマル型の調光シート10は、調光シート10の通電時に高い光透過率を有し、調光シート10の非通電時に低い光透過率を有する。ノーマル型の調光シート10は、調光シート10の通電時に透明であり、調光シート10の非通電時に不透明である。
【0021】
リバース型の調光シート10は、調光シート10の通電時に低い光透過率を有し、調光シート10の非通電時に高い光透過率を有する。リバース型の調光シート10は、調光シート10の通電時に不透明であり、調光シート10の非通電時に透明である。
透明は、有色の透明であってもよいし、無色の透明であってもよい。
【0022】
透明とは、調光シート10を通して物体の存否を視覚認識可能とする状態である。不透明とは、調光シート10を通して物体の存否を視覚認識不能とする状態である。透明とは、調光シート10を通して物体の形状や種類を視覚認識可能とする状態であってもよい。不透明とは、調光シート10を通して物体の形状や種類を視覚認識不能とする状態であってもよい。
【0023】
調光シート10は、第1透明電極11、および、第2透明電極12を備える。各透明電極11,12は、別々の透明体に支持される。各透明電極11,12を支持する透明体は、例えば、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明ガラスシート、透明ガラス板である。
【0024】
調光シート10は、調光層13を備える。調光層13は、第1透明電極11と第2透明電極12との間に位置する。第1透明電極11、調光層13、および、第2透明電極12が積み重なる方向は、調光シート10の積層方向である。
【0025】
第1透明電極11と第2透明電極12とは、可視光透過性を備える。可視光透過性は、調光シート10を通した物体の視覚での認識を可能にする。各透明電極11,12を構成する材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0026】
調光層13は、液晶組成物を含む。調光層13は、容量成分と抵抗成分との並列回路として見なされる。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される一種である。
【0027】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備えて、相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を高分子層のなかに備えて、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
【0028】
第1透明電極11は、一対の第1端子11P1,11P2を備える。一対の第1端子11P1,11P2は、第1透明電極11の中心を挟んで、相互に対向する位置に配置されている。第1透明電極11が矩形状を有する場合、例えば、第1透明電極11の上辺に沿って一方の第1端子11P1は延在する。また、他方の第1端子11P2は、第1透明電極11の下辺に沿って延在する。
【0029】
第2透明電極12は、一対の第2端子12P1,12P2を備える。一対の第2端子12P1,12P2は、第2透明電極12の中心を挟んで、相互に対向する位置に配置されている。一対の第2端子12P1,12P2は、積層方向において、一対の第1端子11P1,11P2とは重ならない位置に配置されている。第2透明電極12が矩形状を有する場合、例えば、第2透明電極12の右辺に沿って、一方の第2端子12P1は延在する。また、他方の第2端子12P2は、第2透明電極12の左辺に沿って延在する。
【0030】
図2は、ノーマル型の調光シート10が備える層構造の一例を示す。
図2が示すように、ノーマル型の調光シート10は、第1透明電極11、第2透明電極12、および、調光層13を備える。第1透明電極11、および、第2透明電極12は、切換回路33に電気的に接続されている。
【0031】
切換回路33がノーマル型の調光シート10に電圧を印加するとき、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2には、切換回路33の出力端での電圧レベルである第1出力レベルSIGD1が入力される。また、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2には、切換回路33の他の出力端での電圧レベルである第2出力レベルSIGD2が入力される。第2出力レベルSIGD2は、例えば、接地レベルである。
【0032】
調光層13は、2つの透明電極11,12の間に印加されている電圧を受けて、液晶分子の分極方向を変える。各液晶分子の分極方向は、他の液晶分子と分極方向が揃っている状態、あるいは、無秩序な状態を含む。分極方向の変化は、調光層13に入る可視光の散乱度合い、吸収度合い、および、透過度合いを変える。
【0033】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2とが相互に等しい電圧レベルであるとき、例えば、2つの透明電極11,12が接地レベルに接続されるとき、ノーマル型の調光シート10は、液晶分子の分極方向を無秩序とする。液晶分子の分極方向が無秩序であるとき、ノーマル型の調光シート10での光透過率は、相対的に低い。
【0034】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2との電位差が所定値以上であるとき、すなわち、2つの透明電極11,12間の電圧が所定値以上であるとき、ノーマル型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過するように、液晶分子の分極方向を揃える。液晶分子の分極方向が揃っているとき、ノーマル型の調光シート10での光透過率は、相対的に高い。
【0035】
図3は、リバース型の調光シート10が備える層構造の一例を示す。
図3が示すように、リバース型の調光シート10は、第1透明電極11、第2透明電極12、第1配向膜14、第2配向膜15、および、調光層13を備える。
調光層13は、第1配向膜14と第2配向膜15との間に位置する。第1配向膜14は、調光層13と第1透明電極11との間に位置し、かつ、調光層13と接している。第2配向膜15は、調光層13と第2透明電極12との間に位置し、かつ、調光層13と接している。
【0036】
第1配向膜14、および、第2配向膜15を構成する材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、または、これらの混合物により構成されている。
【0037】
配向膜14、および、第2配向膜15は、例えば、垂直配向膜、あるいは、水平配向膜である。垂直配向膜は、第1透明電極11の電極面、および、第2透明電極12の電極面と垂直になるように、液晶分子の分極方向を配向させる。水平配向膜は、第1透明電極11の電極面、および、第2透明電極12の電極面とほぼ平行となるように、液晶分子の分極方向を配向させる。
【0038】
切換回路33がリバース型の調光シート10に電圧を印加するとき、ノーマル型の調光シート10と同じく、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2には、第1出力レベルSIGD1が入力されて、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2には、第2出力レベルSIGD2が入力される。第2出力レベルSIGD2は、例えば、接地レベルである。
【0039】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2とが相互に等しい電圧レベルであるとき、例えば、2つの透明電極11,12が接地レベルに接続されるとき、リバース型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過するように、液晶分子の分極方向を各配向膜14,15によって揃える。液晶分子の分極方向を揃っているとき、リバース型の調光シート10での光透過率は、相対的に高い。
【0040】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2との電位差が所定値以上であるとき、すなわち、2つの透明電極11,12間の電圧が所定値以上であるとき、リバース型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過しないように、液晶分子の分極方向を揃える。液晶分子の分極方向が揃っているとき、リバース型の調光シート10での光透過率は、相対的に低い。
【0041】
[調光シート駆動装置]
図4は、駆動装置20の構成を機能的に示すブロック図である。
図4が示すように、駆動装置20は、保護回路22、昇圧回路23、駆動回路24、電圧生成回路25、および、タイミング制御回路26を備える。
保護回路22は、電源21と昇圧回路23とに接続されている。保護回路22は、電源21が出力する直流定電圧を昇圧回路23に入力する。保護回路22は、電源21と電圧生成回路25とに接続されている。保護回路22は、電源21が出力する直流定電圧を電圧生成回路25に入力する。保護回路22は、電源21の出力電流が所定値以上であるとき、ヒューズを溶断して、電源21と昇圧回路23との接続、および、電源21と電圧生成回路25との接続を断つ。保護回路22が備えるヒューズは、正常電流のリップルでは溶断されないように、大きな溶断電流を備える。
【0042】
昇圧回路23は、保護回路22が入力する直流定電圧から、液晶分子の分極方向を変えるための電圧を生成する。液晶分子の分極方向を変えるための電圧は、第1電圧の一例である高駆動レベルVHであり、高駆動レベルVHは、例えば25Vである。液晶分子の分極方向を変えるための電圧は、第2電圧の一例である低駆動レベルVLであり、低駆動レベルVLは、例えば-25Vである。高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとの電位差は、常温常圧下での駆動電圧の印加によって液晶分子の配向を変え得る大きさである。なお、常温とは20℃であり、常圧とは1気圧である。
【0043】
[駆動電圧]
駆動回路24は、昇圧回路23が入力する直流定電圧を用いた駆動電圧を生成する。駆動電圧は、液晶分子の分極方向を変えるための電圧である。駆動回路24は、生成された駆動電圧を第1出力レベルSIGD1として切換回路33に入力する。駆動電圧では、第1出力レベルSIGD1が高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとに交互に切り換わる。
【0044】
電圧生成回路25は、保護回路22と接続されている。電圧生成回路25は、保護回路22が出力する直流定電圧から、タイミング制御回路26を駆動するための電圧レベルを生成し、生成された電圧レベルをタイミング制御回路26に入力する。
図5は、駆動回路24の構成の一例を示す回路図である。
【0045】
図5が示すように、駆動回路24は、第1スイッチQ1と、第1スイッチQ1に直接接続された第2スイッチQ2とを備える。第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とが、CMOSトランジスタを構成する。第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続部は、第1出力レベルSIGD1の出力端に接続されている。
【0046】
タイミング制御回路26は、演算処理装置とメモリとを備える。タイミング制御回路26は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、タイミング制御回路26は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。タイミング制御回路26は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成してもよい。
【0047】
なお、以下では、タイミング制御回路26が、読み取り可能な可読媒体に駆動プログラムを記憶し、可読媒体が記憶する駆動プログラムを読み出して実行し、駆動電圧の生成を行う例を説明する。
【0048】
タイミング制御回路26は、各スイッチQ1,Q2のオンオフを同時に制御する。すなわち、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1をオンオフするための信号と、第2スイッチQ2をオンオフするための信号とを、各スイッチQ1,Q2に同時に入力する。
【0049】
タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1をオンするための信号と、第2スイッチQ2をオフするための信号と、を入力し、これによって、第1出力レベルSIGD1として高駆動レベルVHを出力させる。タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1をオフするための信号と、第2スイッチQ2をオンするための信号と、を入力し、これによって、第1出力レベルSIGD1として低駆動レベルVLを出力させる。
【0050】
タイミング制御回路26は、駆動回路24にデッドタイムを設定する。デッドタイムは、高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとの間に貫通電流が流れることを防ぐための期間である。タイミング制御回路26は、高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとを交互に切り換えるときに、デッドタイムとして、例えば、全てのスイッチQ1,Q2を同時にオフする期間を設定する。これによって、タイミング制御回路26は、駆動電圧を生成させるときに、第1出力レベルSIGD1を、高駆動レベルVH、高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとの間の中間レベルである基準レベル、および、低駆動レベルVLの順に切り換えさせる。
【0051】
なお、タイミング制御回路26は、例えば、各スイッチQ1,Q2のオン期間を制御して、電圧パルスの繰り返しである駆動電圧のパルス幅を変更してもよい。パルス幅の変更は、調光層13に印加される電圧の実効値を変えて、調光層13の可視光透過率を多階調化する。タイミング制御回路26は、調光シート10が備える可視光透過率の階調値を、入力部27から入力される操作信号に基づいて決定してもよい。入力部27から入力される操作信号は、例えば、可視光透過率を1段階ずつ上げたり下げたりするための操作ボタンの押下によって生成されたり、調光シート10を透明にしたり不透明にしたりする操作ボタンの押下によって生成される。
【0052】
[加熱電圧]
図4に戻り、駆動装置20は、ヒーター電源32、および、切換回路33を備える。
ヒーター電源32は、電源21と切換回路33とに接続されている。ヒーター電源32は、電源21が入力する直流定電圧を受けて、第1透明電極11を発熱させるための加熱電圧を生成する。加熱電圧は、直流定電圧であって、加熱レベルVMHと基準レベルとの差である。ヒーター電源32は、生成された加熱レベルVMHを切換回路33に入力する。加熱レベルVMHは、例えば12Vである。
【0053】
切換回路33は、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2と、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2と、に別々に接続されている。切換回路33は、調光シート10に入力する電圧を、駆動電圧と加熱電圧との間で切り換える。すなわち、切換回路33は、透明電極11,12の間に印加される電圧、および、第1透明電極11に印加される電圧を切り換える。
【0054】
タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを切換回路33に入力する。切換回路33は、切換信号SIGXの立ち上がりを受けて、調光シート10に印加する電圧を、駆動電圧から加熱電圧に切り換える。切換回路33は、切換信号SIGXの立ち下がりを受けて、調光シート10に印加する電圧を、加熱電圧から駆動電圧に切り換える。
【0055】
切換回路33は、調光シート10に印加する電圧の切り換えを通じて、第1動作、第2動作、および、加熱動作を行う。第1動作、第2動作、および、加熱動作は、いずれも所定期間である動作サイクルCTに行われる単位動作である。タイミング制御回路26は、動作サイクルCT、および、動作サイクルCTで行われる単位動作の種類を定める。
【0056】
第1動作では、動作サイクルCTの間に、第1出力レベルSIGD1が低駆動レベルVLに電気的に接続されて、第1端子11P1,11P2に低駆動レベルVLが入力される。同時に、第1動作では、動作サイクルCTの間に、第2出力レベルSIGD2が接地レベルに接続されて、第2端子12P1,12P2に接地レベルが入力される。
【0057】
次いで、第1動作では、デッドタイムの間に、第1出力レベルSIGD1が基準レベルに接続されて、第1端子11P1,11P2に基準レベルが入力される。なお、この間、第2端子12P1,12P2にも、接地レベルが入力され続ける。
【0058】
すなわち、第1動作では、動作サイクルCTの間に、第1透明電極11に低駆動レベルVLが入力され、加熱電圧の入力は禁止される。これにより、2つの透明電極11,12の間に、第1透明電極11を低電圧レベルとする電場が形成される。そして、動作サイクルCTの間のなかで、液晶分子の分極方向が変わる。
【0059】
第2動作では、動作サイクルCTの間に、第1出力レベルSIGD1が低駆動レベルVLに電気的に接続されて、第1端子11P1,11P2に高駆動レベルVHが入力される。同時に、第2動作では、動作サイクルCTの間だけ、第2出力レベルSIGD2が接地レベルに接続されて、第2端子12P1,12P2に接地レベルが入力される。
【0060】
次いで、第2動作では、デッドタイムの間に、第1出力レベルSIGD1が基準レベルに接続されて、第1端子11P1,11P2に基準レベルが入力される。なお、この間、第2端子12P1,12P2にも、接地レベルが入力され続ける。
【0061】
すなわち、第2動作では、動作サイクルCTの間に、第1透明電極11に高駆動レベルVHが入力され、加熱電圧の入力は禁止される。これにより、2つの透明電極11,12の間に、第1透明電極11を高電圧レベルとする電場が形成される。そして、動作サイクルCTの間のなかで、液晶分子の分極方向が反転する。
【0062】
加熱動作では、動作サイクルCTの全体にわたり、第1出力レベルSIGD1が加熱レベルVMHに接続されて、第1端子11P1に加熱レベルVMHが入力される。同時に、加熱動作では、動作サイクルCTの全体にわたり、第1端子11P2が接地レベルに接続されて、第1端子11P2に接地レベルが入力される。同時に、加熱動作では、動作サイクルCTの全体にわたり、第2出力レベルSIGD2が接地レベルに接続されて、第2端子12P1,12P2に接地レベルが入力される。
【0063】
すなわち、加熱動作では、動作サイクルCTの全体にわたり、駆動電圧の出力が禁止されて、第1端子11P1のみに加熱レベルVMHが入力される。また、加熱動作では、動作サイクルCTの全体にわたり、第1端子11P2に接地レベルが入力される。これにより、加熱レベルVMHと接地レベルとの電位差に準じた電流が第1透明電極11に流れて、動作サイクルCTの全体にわたり、第1透明電極11が発熱する。
【0064】
[駆動方法]
図6は、駆動装置20が行う各動作の流れを示すタイミングチャートである。図6は、スイッチQ1,Q2の状態、第1出力レベルSIGD1、および、第1端子11P1,11P2の電圧レベルの推移を示す。
【0065】
図6が示すように、タイミングt0にて、駆動装置20に電源が投入されると、ヒーター電源32は、加熱レベルVMHを切換回路33に入力する。この際、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態として、切換回路33に待機させる。
【0066】
次いで、タイミング制御回路26は、動作サイクルCTであるタイミングt1からタイミングt2を経てタイミングt3までの全体で、切換回路33に第1動作を実行させる。
すなわち、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態で、まず、第1スイッチQ1をオフするための信号と、第2スイッチQ2をオンするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、第1出力レベルSIGD1に低駆動レベルVLを入力する。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11を相対的に低電圧レベルとして、液晶分子の分極方向を変える。
【0067】
続いて、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態で、第1スイッチQ1をオフするための信号と、第2スイッチQ2をオフするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、デッドタイムを設定し、低駆動レベルVLと高駆動レベルVHとの間で貫通電流が流れることを防ぐ。この間、タイミング制御回路26は、第1透明電極11に基準レベルを入力する。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11と第2透明電極12とをほぼ同じレベルとする電場を形成させて、液晶分子の分極方向を変える。
【0068】
次いで、タイミング制御回路26は、動作サイクルCTであるタイミングt3からタイミングt4を経てタイミングt5までの全体で、切換回路33に第2動作を実行させる。
すなわち、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態で、まず、第1スイッチQ1をオンするための信号と、第2スイッチQ2をオフするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、第1出力レベルSIGD1に高駆動レベルVHを入力する。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11を高電圧レベルとして、液晶分子の分極方向を変える。
【0069】
続いて、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態で、第1スイッチQ1をオフするための信号と、第2スイッチQ2をオフするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、デッドタイムを設定し、低駆動レベルVLと高駆動レベルVHとの間で貫通電流が流れることを防ぐ。この間、タイミング制御回路26は、第1透明電極11に基準レベルを入力する。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11と第2透明電極12とをほぼ同じレベルとする電場を形成させて、液晶分子の分極方向を変える。
【0070】
以降、タイミング制御回路26は、切換回路33に、第1動作と第2動作とを交互に実行させる。第1動作と第2動作とを交互に繰り返す一連の単位動作は、液晶反転動作である。なお、図6では、液晶反転動作のなかで、第1動作と第2動作とが2回にわたり交互に繰り返される例を示す。
【0071】
次いで、タイミング制御回路26は、単一の液晶反転動作が終了すると、タイミングt7からタイミングt9まで、加熱動作を実行させる。タイミングt7からタイミングt9は、4回分の動作サイクルCTに相当する期間である。
【0072】
すなわち、タイミング制御回路26は、まず、タイミングt6に切換信号SIGXを立ち上げる。タイミングt6は、先行する液晶反転動作のなかのデッドタイムの途中である。切換回路33は、切換信号SIGXの立ち上がりを受けて、第1出力レベルSIGD1に加熱レベルVMHを入力する。これにより、タイミングt7には、第1透明電極11の第1端子11P1が、加熱レベルVMHに到達する。
【0073】
また、切換回路33は、切換信号SIGXの立ち上がりを受けて、第1端子11P2に接地レベルを入力する。これにより、タイミングt7には、第1端子11P1,11P2の間に加熱電流が流れ、第1透明電極11が発熱しはじめる。そして、タイミング制御回路26は、タイミングt8に切換信号SIGXを立ち下げるまで、調光層13の液晶分子を、第1透明電極11によって加熱し続ける。
【0074】
このように、4回分の動作サイクルCTが経過する間、タイミング制御回路26は、駆動回路24に、駆動電圧の生成を継続させると共に、生成された駆動電圧を切換回路33に入力させる。すなわち、動作サイクルCTごとに高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとが切り換わる電圧を駆動回路24に生成させて、生成された駆動電圧の出力を切換回路33に禁止させる。
【0075】
そして、タイミング制御回路26は、4回分の動作サイクルCTに相当する加熱動作を終了すると、タイミングt9から、再度、液晶反転動作を実行させる。
すなわち、タイミング制御回路26は、まず、タイミングt8に切換信号SIGXを立ち下げる。切換回路33は、切換信号SIGXの立ち上がりを受けて、第1端子11P1に接地レベルを入力する。これにより、タイミングt9には、第1透明電極11の第1透明電極11が、接地レベルに到達する。
【0076】
続いて、タイミング制御回路26は、切換信号SIGXを立ち下げた状態で、第1スイッチQ1をオフするための信号と、第2スイッチQ2をオンするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、第1出力レベルSIGD1に低駆動レベルVLを入力する。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11を低電圧レベルとして、液晶分子の分極方向を変える。
【0077】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1動作と第2動作とを交互に繰り返すことが含まれた単位動作の繰り返しのなかに、第2透明電極12を発熱させる加熱動作が、単位動作として含まれる。これにより、液晶分子の分極方向を変える動作を繰り返すなかで、液晶分子が加熱可能となる。結果として、液晶分子の分極方向が電圧の印加に追従しないような低温下に調光シートが置かれたとしても、液晶分子の分極方向が変更可能となる。したがって、調光シート10を駆動可能とする温度の下限値が引き下げられる。
【0078】
(2)第1動作、第2動作、および、加熱動作のいずれもが、動作サイクルCTに行われる単位動作であって、繰り返される単位動作である。そのため、第1動作と第2動作との繰り返しのなかに加熱動作を組み込むこと、すなわち、単一のタイミング制御回路26による各動作の繰り返し制御が容易でもある。
【0079】
(3)前回の液晶反転動作と今回の液晶反転動作との間に加熱動作が行われるため、液晶反転動作が繰り返される期間内で液晶分子の降温を抑制できる。それゆえに、前回の液晶反転動作で一度駆動された液晶分子が今回の液晶反転動作中に電圧に追従しなくなり得ることを抑制できる。
【0080】
(4)前回の液晶反転動作と今回の液晶反転動作との間に、例えば4回にわたり加熱動作が繰り返されるため、液晶反転動作が繰り返される期間内での液晶分子の降温をさらに抑制できる。
【0081】
(5)高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとが交互に繰り返される駆動電圧と、第2透明電極12を発熱させる加熱電圧とが、切換回路33に入力され続ける。そして、切換回路33は、タイミング制御回路26の入力に従って、切換回路33に入力された2つの電圧のうち、いずれか一方を出力する。そのため、駆動電圧と加熱電圧との切り換えが、切換回路33で円滑に進められる。
【0082】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・タイミング制御回路26は、加熱動作を実行させる頻度を変更可能にする構成であってもよい。加熱動作が実行される頻度は、例えば、液晶反転動作が実行される動作サイクルCTの数量に対する、加熱動作が実行される動作サイクルCTの数量である。加熱動作を実行させる頻度を変更可能にする構成例を、下記変更例1、および、変更例2に示す。
【0083】
[変更例1]
・例えば、駆動装置20は、利用者の操作を受け付ける入力部27から、加熱動作の頻度が入力される。タイミング制御回路26は、入力部27が入力する加熱動作の頻度を受けて、当該頻度で加熱動作を行う。
【0084】
液晶分子の分極方向が駆動電圧の印加に追従し得る使用温度は、液晶組成物の経年劣化や使用頻度などによって変わりやすい。この点、入力部27からの入力を受けてタイミング制御回路26が加熱動作の頻度を変更する構成であれば、液晶分子の分極方向が駆動電圧の印加に追従していないことを利用者が視覚で認識したときに、液晶分子の加熱が実行可能となる。結果として、液晶分子の分極方向が駆動電圧の印加に追従していないときに、液晶分子を適切に加熱できる。
【0085】
[変更例2]
・例えば、タイミング制御回路26は、調光シート10の状況を示すパラメーターと、加熱動作の頻度とを対応付けた情報を記憶する。そして、タイミング制御回路26は、調光シート10の状況を示すパラメーターの入力を受けて、当該パラメーターに対応付けられた頻度で加熱動作を実行させる。
【0086】
この際、タイミング制御回路26は、調光シート10の使用状況を示すパラメーターから加熱動作の頻度を導き出すための学習結果とアルゴリズムとを記憶してもよい。そして、タイミング制御回路26は、実際の使用状況を示すパラメーターを取得し、当該パラメーターを用いて導き出される加熱動作の頻度で加熱動作を実行させてもよい。
【0087】
なお、調光シート10の状況を示すパラメーターは、例えば、調光シート10が置かれた環境の温度である。この際、駆動装置20は、調光シート10が置かれた環境の温度を測定する測定回路をさらに備えてもよい。測定回路は、調光シート10が置かれた環境の温度を測定する。タイミング制御回路26は、測定回路が入力する測定値を用いて加熱動作の頻度を導き出す。
【0088】
また、調光シート10の状況を示すパラメーターは、調光シート10の形式、調光シート10が置かれる環境での温度の変化量、液晶組成物に照射される紫外線量、当該紫外線量の変化量、および、その環境に置かれ続けた期間などであってもよい。
【0089】
・切換回路33は、タイミング制御回路26の入力に従って、加熱レベルVMHの入力先を、第1端子11P1と第1端子11P2との間で、交互に切り換える構成であってもよい。
【0090】
第1透明電極11に加熱電圧を印加することは、加熱電圧に相当する電位差を第1透明電極11の内部に生じさせることである。そのため、加熱動作の連続的な繰り返し、および、加熱動作の間欠的な繰り返しは、不純物イオンなどの偏析を液晶組成物の内部に生じさせやすくなる。この点、上記変更例によれば、加熱レベルVMHの入力先が第1端子11P1,11P2の間で交互に切り替わるため、加熱電圧の極性が反転可能となる。結果として、不純物イオンなどの偏析が抑制可能ともなる。
【0091】
・加熱電圧が印加される端子の一部分は、駆動電圧が印加される端子とは異なる端子であってもよい。さらに、加熱電圧が印加される端子の全ては、駆動電圧が印加される端子とは異なる端子であってもよい。
【0092】
・加熱電圧が印加される端子数は、駆動電圧が印加される端子数よりも少なくてもよい。調光シート10のサイズが大きいほど、各透明電極11,12での電圧降下は大きい。そこで、調光シート10の面内で駆動電圧がばらつくことを抑えるべく、調光装置は、各透明電極11,12に3以上の端子数を備えて、各端子から駆動電圧が印加されてもよい。これによれば、各透明電極11,12での電圧降下が抑えられる。
【0093】
図7が示すように、第2透明電極12において、第2端子12P1,12P2は、共通する単一の辺に沿って並ぶ構成であってもよい。さらに、第1透明電極11においても、第1端子11P1,11P2は、共通する単一の辺に沿って並ぶ構成であってもよい。
【0094】
・液晶分子を加熱するための透明電極は、第1透明電極11と第2透明電極12とのなかで、液晶分子に対する低温側に位置する電極であってもよい。例えば、冷寒地であって、室内と外気とを区切る窓などに調光シート10が設置される場合、液晶分子を加熱するための透明電極は、液晶分子に対する外気側に位置する電極であってもよい。この構成によれば、液晶分子の分極方向を電圧の変化に追従させるための加熱時間を短縮できる。
【0095】
・加熱動作が繰り返される回数の上限値は、加熱動作が行われていることが視覚で認識されない程度であればよい。加熱動作が行われている期間は、液晶分子の分極方向が第1動作や第2動作とは異なる。この変更例であれば、加熱動作が行われていることが視覚で認識されないため、調光シート10に本来求められる透明性、あるいは、不透明性が十分に保たれた状態で、上記(1)から(5)に準じた効果が得られる。
【符号の説明】
【0096】
CT…動作サイクル、Q1,Q2…スイッチ、SIGD1…第1出力レベル、SIGD2…第2出力レベル、SIGX…切換信号、VH…高駆動レベル、VL…低駆動レベル、VMH…加熱レベル、10…調光シート、11…第1透明電極、11P1,11P2…第1端子、12…第2透明電極、12P1,12P2…第2端子、13…調光層、14,15…配向膜、20…駆動装置、21…電源、22…保護回路、23…昇圧回路、24…駆動回路、25…電圧生成回路、26…タイミング制御回路、27…入力部、32…ヒーター電源、33…切換回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7