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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】鋳物への刻印方法及び刻印装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/00 20060101AFI20230920BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20230920BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B22D29/00 Z
B22D46/00
G05B19/418 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019101879
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2019209378
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018104162
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 道太
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092474(JP,A)
【文献】特開2001-205423(JP,A)
【文献】特開2016-203195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 29/00 - 31/00
B22D 33/00 - 47/02
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の鋳物を備えた構成を有する鋳造物の前記鋳物に対して刻印を行う鋳物への刻印方法であって、
前記鋳物に正規の刻印場所を設定すること、
前記鋳物に代替刻印場所を設定すること、
前記鋳物の型データと該鋳物とを比較して該鋳物の前記正規の刻印場所について異物の有無を検出すること、
前記正規の刻印場所に異物が検出されないときは前記正規の刻印場所に、前記正規の刻印場所に異物が検出されたときは前記代替刻印場所に刻印すること、
前記鋳物についての機械加工前には前記代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし、前記機械加工後には前記仮の刻印をした鋳物の前記正規の刻印場所に正規の刻印をすること、
を特徴とする鋳物への刻印方法。
【請求項2】
前記鋳物についての機械加工前には前記正規の刻印場所への刻印及び前記代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし、
前記鋳物についての機械加工後には前記正規の刻印場所へ正規の刻印をすることを特徴とする請求項1に記載の鋳物への刻印方法。
【請求項3】
鋳造設備で順次生産される各鋳物について前記異物の検査を行い、前記異物の検出数が一定の回数又は一定の割合を超えたときに前記鋳造設備の不良対策信号を発することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳物への刻印方法。
【請求項4】
1以上の鋳物を備えた構成を有する鋳造物の前記鋳物に刻印機構により刻印を行う鋳物への刻印装置であって、
鋳物の型データと実際に製造された鋳物とを比較して鋳物外面の異物を検出する異物検出装置と、
正規の刻印場所に異物が検出されないときは、前記正規の刻印場所が、機械加工が必要な面であるかどうかを確認し、前記正規の刻印場所が、機械加工が必要な面でない場合、前記型データに設定された前記正規の刻印場所に刻印をなし、前記正規の刻印場所が、機械加工が必要な面であると判断された場合は、前記正規の刻印場所に仮の刻印をなし、前記正規の刻印場所に異物が検出されたときは代替刻印場所を設定して、前記代替刻印場所が、機械加工が必要な面であるかどうかを確認し、前記代替刻印場所が、機械加工が必要な面でない場合、前記代替刻印場所に刻印をなし、前記代替刻印場所が、機械加工が必要な面である場合、前記代替刻印場所に仮の刻印をなすよう前記刻印機構を制御する刻印制御装置を備えること
を特徴とする鋳物への刻印装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物への刻印方法及び刻印装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物の製造ラインにおいては、鋳型の造型、注湯、冷却工程を経て得られた鋳物に刻印を施し、各鋳物に識別機能を付与してトレーサビリティが可能となるようにすることが行われている。
【0003】
従来、この種の鋳物に刻印を施す装置としては、例えば特許文献1に、鋳片の端面の位置を画像処理によって検出し、それによってマーキング装置(以下、刻印装置という)または鋳片の位置を微調整した後にマーキング(以下、刻印という)を施すことが開示されており、また更に鋳片を搬送する工程において、複数の鋳片をギャザリング装置により束ね、各鋳片を所定の位置に位置合わせして刻印を施すことが開示されている。
これらの鋳片に対する刻印方法は、鋳片と刻印装置との位置合わせに係る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-233572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に開示された刻印方法は、位置合わせにより正確な位置に刻印を行うことができる。
しかしながら、刻印の対象である鋳物は、刻印場所が常に刻印に適した状態にあるとは限らないので、常に適切な刻印が行えるとは限らない。
すなわち、鋳型ばらし後に得られた鋳造物及び鋳物の表面にはバリや残砂、焼付き等の異物が存在していることがあり、鋳物の刻印場所に前記異物が付着していた場合には刻印が行えないことも生じる。
上記の異物の付着の発生は予測することが不可能であり、事前対策が困難である。また、鋳物の製造ラインのレイアウト上、刻印のタイミングが鋳物と堰の分離等をする前のため、異物の除去後の刻印が困難であるという事情がある。
鋳物に異物が付着したまま刻印すると、刻印装置の破損や不十分な刻印となり、トレーサビリティ性が失われるという問題がある。
したがって、従来、鋳物への刻印装置としては、鋳物の表面に異物が付着していた場合に刻印を有効適切に行うものが提供されていないのが実情である。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、刻印対象となる鋳物に異物が付着していた場合にも、当該鋳物に有効適切な刻印を施すことのできる鋳物への刻印方法及び刻印装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、鋳物に対して刻印を行う鋳物への刻印方法であって、前記鋳物外面の異物を検出すること、刻印場所を設定して該刻印場所に刻印すること、を特徴とする。
本発明によれば、刻印対象となる鋳物に異物が付着していた場合にも、当該鋳物に有効適切な刻印を施すことができる。
【0007】
本発明の一態様では、前記鋳物に正規の刻印場所を設定すること、前記鋳物に代替刻印場所を設定すること、前記鋳物の型データと該鋳物とを比較して該鋳物の前記正規の刻印場所について異物の有無を検出すること、前記正規の刻印場所又は前記代替刻印場所に刻印すること、を特徴とする。
本発明によれば、正規の刻印場所に異物が存在した場合にも、代替刻印場所に刻印が行われるので、刻印装置の破損や不十分な刻印を防止して、鋳物に有効適切な刻印を施すことができる。
【0008】
本発明の一態様では、前記正規の刻印場所に異物が検出されたときは前記代替刻印場所に刻印することを特徴とする。
本発明によれば、刻印対象となる鋳物に異物が付着していた場合にも、当該鋳物に有効適切な刻印を施すことができる。
【0009】
本発明の一態様では、鋳造物は1以上の前記鋳物を備えた構成とされ、前記鋳造物について、機械加工前には前記代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし、前記機械加工後には前記仮の刻印をした鋳物の前記正規の刻印場所に正規の刻印をすることを特徴とする。
この一態様では、鋳物と堰が分離される前に、鋳物にそれぞれ刻印が施されるので、それぞれの鋳物のトレーサビリティ性を確保することができる。また、代替場所に仮の刻印(簡易な刻印)をすることで、作業時間が短縮された効率の良い刻印を施すことができる。
【0010】
本発明の一態様では、鋳造物は1以上の前記鋳物を備えた構成とされ、前記鋳造物について、機械加工前には前記正規の刻印場所への刻印及び前記代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし、前記機械加工後には前記正規の刻印場所へ正規の刻印をすることを特徴とする。
この一態様では、鋳物と堰が分離される前に、鋳物にそれぞれ刻印が施されるので、それぞれの鋳物のトレーサビリティ性を確保することができる。また、機械加工前には、すべて仮の刻印(簡易な刻印)をすることで、作業時間が短縮された効率の良い刻印を施すことができる。また機械加工後に正規の刻印を施すことで、異物の存在しない清浄な表面へ刻印を施すことができ、刻印の質が向上する。
【0011】
本発明の一態様では、鋳造設備で順次生産される各鋳物について前記異物の検査を行い、前記異物の検出数が一定の回数又は一定の割合を超えたときに前記鋳造設備の不良対策信号を発することを特徴とする。
この一態様では、刻印と同時に異物の検出数を鋳造工程管理のデータベースに取り込むことができるので、異物検出数が異常であるという警告を発することができるとともに、異物検出数により鋳造工程を管理することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、鋳物に刻印機構により刻印を行う鋳物への刻印装置であって、鋳物の型データと実際に製造された鋳物とを比較して鋳物外面の異物を検出する異物検出装置と、前記型データに設定された正規の刻印場所に刻印をなし、又は代替刻印場所を設定してこの代替刻印場所に刻印をなすよう前記刻印機構を制御する刻印制御装置を備えることを特徴とする。
本発明によれば、正規の刻印場所に異物が存在した場合にも、代替刻印場所に刻印が行われるので、刻印装置の破損や不十分な刻印を防止して、鋳物に有効適切な刻印を施すことができる刻印装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、刻印対象となる鋳物に異物が付着していた場合にも、当該鋳物に有効適切な刻印を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である刻印装置を備えた鋳造設備の模式的な平面図である。
図2】上記刻印装置の刻印の対象となる鋳物を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3】上記刻印装置のブロック図である。
図4】(a)は刻印の対象となる鋳物に異物が付着している状態を示す平面図、(b)は鋳物に設定する正規の刻印場所と代替刻印場所の例を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態である鋳物の刻印場所と刻印の制御を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態である鋳物の刻印場所と刻印の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態である刻印装置を備えた鋳造設備1の模式的な平面図である。
鋳造設備1においては、鋳物を鋳造するに際し、造型工程、中子設置工程、冷却搬送工程、注湯工程、後処理工程、及び砂処理工程を含む、複数の工程が実行される。鋳造設備1は、これらの各工程に対応する、造型設備2、中子設置設備3、冷却搬送設備4、注湯設備7、後処理設備8、及び砂処理設備10を備えている。
【0017】
造型設備2は、砂処理設備10により処理された鋳型砂から鋳型を造型する。中子設置設備3は、鋳型内に中子を設置する。注湯設備7は、溶湯を製造して鋳型内に注湯する。冷却搬送設備4は、造型設備2において造型された鋳型を注湯設備7へと搬送する。冷却搬送設備4はまた、注湯設備7において溶湯が鋳込まれた鋳型を冷却しながら搬送し、鋳型をばらして鋳造物を取り出し、取り出された鋳造物を更に、冷却しながら後処理設備8へと搬送する。後処理設備8は、鋳物への刻印や鋳物と堰の分離等の後処理を行う。砂処理設備10は、鋳型の造型に使用される鋳型砂を処理する。
【0018】
冷却搬送設備4は、一次冷却搬送装置5、二次冷却搬送装置6、鋳型ばらし装置65、を備えている。一次冷却搬送装置5は、造型設備2により造型された鋳型を受け取って注湯設備7へと搬送し、注湯設備7により注湯された鋳型を冷却しつつ、鋳型ばらし装置65により鋳型がばらされた鋳造物を二次冷却搬送装置6へと搬送する。
二次冷却搬送装置6は、鋳型がばらされた鋳造物を後処理設備8に搬送する。後処理設備8は、ショットブラスト装置82、コンベア83、刻印装置84及び鋳物と堰の分離装置85を備えている。後処理設備8において、ショットブラスト装置82は二次冷却装置6から搬送された鋳造物についてショットブラスト処理を行う。その後、鋳造物はコンベア83により刻印装置84に搬送される。
【0019】
刻印装置84は、後述するように鋳物に所定の刻印を行い、鋳物と堰の分離装置85は鋳物と堰の分離を行う。鋳物と堰の分離の後、鋳物は別の敷地に存在する機械加工設備86に運ばれ、鋳物の必要箇所に異物の除去、切削、研削および研磨等の機械加工が行われて製品となる。
図2(a)、(b)は、刻印装置84に搬送される鋳造物19Fを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
鋳造物19Fは、最終的に製品となる2つの鋳物100、100と、これら鋳物100、100を連結する連結部101、101(堰)と、ハンガー部102、102と、ハンガー部102、102を連結し、連結部101、101に連設される連結部103、103(湯道)と、連結部101、101、103、103の接続部に連接される注湯部104(湯口)と、連結部103、103に設けられた突部105、105とを備えている。
【0020】
連結部101、101は、溶湯が注湯部104を経て鋳物100、100に到るための部分である。
鋳造物19Fの鋳型ばらし時、搬送時等には、この鋳造物19Fを図示されないハンガーフックにより吊り下げるが、ハンガー部102,102は、前記ハンガーフックにより吊り下げるための係止部である。
突部105、105は、鋳造物19Fを図示しないロボットにより工程間で移送する際に、ロボットにより把持される部分である。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態である刻印装置84のブロック図である。
刻印装置84は、異物検出装置110、刻印制御装置111、刻印機構112を備えている。
異物検出装置110には、鋳物の型データ113と撮像装置114の出力が入力される。鋳物の型データ113は、図2に示す鋳物100の形状、方案、重さ等鋳物に関係するデータである。この型データ、すなわち設計された鋳物100の形状の所定位置には正規の刻印場所が設定されている。撮像装置114は、刻印装置84内に設けられて、鋳物コンベア83により搬送される鋳物100を撮像し、その出力を異物検出装置110に供給する。
異物検出装置110は、型データ113と実際に製造された鋳物100とを比較して、鋳物100外面の正規の刻印場所における異物の有無を検出する。
【0022】
図4(a)は、鋳物100に異物が付着している例を示す図であり、この図において符号115は鋳物100に付着した鋳砂、116は鋳物100に発生したバリである。
図3において、異物検出装置110の出力は、刻印制御装置111に送られる。
刻印制御装置111は、鋳物100の異物の有無に応じて刻印機構112を制御する。
刻印制御装置111は、鋳物100の正規の刻印場所に異物があるときに代替刻印場所を優先順位とともに設定する。
図4(b)は、鋳物100の正規の刻印場所118に異物が付着していた場合に、代替刻印場所120-1、120-2を設定した例である。
代替刻印場所は、予め120-1、120-2、…のように複数個所、選択の優先順位を決めて設定しておき、最終的に異物のない優先順位の最も高い場所が選択される。
刻印制御装置111は、鋳物100の異物の有無により、型データに設定された正規の刻印場所に刻印をなし、又は刻印場所を代替刻印場所に設定してこの代替刻印場所に刻印をなすよう刻印機構112の駆動を制御する。予め設定された代替刻印場所にすべて異物を検出した場合には、工程異常と判断して刻印制御装置111により警告が発せられる。
【0023】
刻印制御装置111による刻印機構112の制御は、刻印機構112による刻印方法を各種異ならせて実施できる。図5図6は、本発明の一実施形態である鋳物の刻印場所と刻印の制御を示すフローチャートである。以下この図を参照しながら説明する。
図5図6に示すフローチャートにおいて、S006、S010、S103、S108、S111が機械加工を行うステップであり、これらのステップより前が機械加工前、後が機械加工後である。
まず図5を参照して、S000にて刻印サイクルがスタートする。異物検出装置110は、正規の刻印場所118の異物を確認し、結果を刻印制御装置111に送る。(S001)正規の刻印場所118に異物なしと判断された場合、次に刻印制御装置111は、正規の刻印場所118が機械加工が必要な面であるかどうかを確認する。(S004)正規の刻印場所118が機械加工が必要な面でない場合、刻印機構112により正規の刻印場所118に正規の刻印が行われる。(S009)次に、鋳物と堰の分離装置85により鋳物100と堰が分離され、別の敷地に存在する機械加工設備86に鋳物100を搬送し、鋳物の必要箇所の機械加工を行い(S010)サイクルが終了する。(S008)
【0024】
S004において、正規の刻印場所118は機械加工が必要な面であると判断された場合は、正規の刻印場所118に、正規または仮の刻印を行う。(S005)次に、鋳物100と堰の分離装置85により鋳物100と堰が分離され、別の敷地に存在する機械加工設備86に鋳物100を搬送し、鋳物の必要箇所の機械加工を行う。(S006)その後、正規の刻印場所118に正規の刻印が行われ(S007)サイクルが終了する。(S008)この場合、機械加工前と後で同一の刻印場所118に刻印が行われるが、機械加工前の刻印は、機械加工によって完全に削り取られるため、機械加工後、同一の場所に再度刻印が行われても刻印の識別が可能となる。
【0025】
図5、S001において、正規の刻印場所118に異物ありと判断された場合、刻印制御装置111は、異物のない優先順位の高い代替刻印場所を選択する。(S002)そして、図6、S100から続きのサイクルがスタートする。刻印制御装置111は、代替刻印場所120-1または120-2は機械加工が必要な面であるかどうかを確認する。(S101)代替刻印場所120-1または120-2は機械加工が必要な面であると判断された場合、代替刻印場所120-1または120-2に正規または仮の刻印を行う。(S102)次に、鋳物100と堰の分離装置85により鋳物100と堰が分離され、別の敷地に存在する機械加工設備86に鋳物100を搬送し、鋳物の必要箇所の機械加工を行う。(S103)その後、正規の刻印場所118または、代替場所120-1若しくは120-2に正規の刻印が行われ(S104)サイクルが終了する。(S105)
【0026】
S101において、代替刻印場所120-1または120-2は機械加工が必要な面ではないと判断された場合は、刻印制御装置111は、正規の刻印場所118に正規の刻印が必要であるかどうかを確認する。(S106)正規の刻印場所118に正規の刻印が必要である場合、代替刻印場所120-1または120-2に正規または仮の刻印を行う。(S107)次に、鋳物100と堰の分離装置85により鋳物100と堰が分離され、別の敷地に存在する機械加工設備86に鋳物100を搬送し、鋳物の必要箇所の機械加工を行う。(S108)その後、正規の刻印場所118に正規の刻印が行われ(S109)サイクルが終了する。(S105)
【0027】
S106において、正規の刻印場所118に正規の刻印が必要ない場合、代替刻印場所120―1または120-2に正規の刻印を行う。(S110)次に、鋳物100と堰の分離装置85により鋳物100と堰が分離され、別の敷地に存在する機械加工設備86に鋳物100を搬送し、鋳物の必要箇所の機械加工を行い(S111)サイクルが終了する。(S105)
【0028】
刻印機構112は、刻印制御装置111の指令に基づいて鋳物100への刻印を行う。
この場合刻印機構112は、図3に示すように位置合わせ部125と刻印部126とを備えており、刻印制御装置111の指令に基づき、位置合わせ部125によって刻印部126が鋳物100の正規の刻印場所及び代替刻印場所に対向し、刻印部126が所定の刻印を行う。
上記の各工程において、機械加工(S006、S010、S103、S108、S111)前には代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし(S102、S107)、機械加工後には、仮の刻印をした鋳物の正規の刻印場所に正規の刻印をする。(S104、S109)前記の機械加工前の代替刻印場所への刻印は、その表示方法として、例えば簡単な文字の組み合わせなどで簡略化することができる。
前記の機械加工(S006、S010、S103、S108、S111)においては、代替刻印場所へ仮の刻印がなされていた場合には、当該仮の刻印が削り取られ、また正規の刻印場所は清浄な状態とされる。かくして、鋳物100について正規の刻印場所に正規の刻印を確実に施すことができるので、鋳物100についてのトレーサビリティ性が確保される。
また、鋳造物19Fについて、機械加工(S006、S010、S103、S108、S111)前には正規の刻印場所への刻印及び代替刻印場所への刻印を仮の刻印とし、(S005、S102、S107)機械加工後には正規の刻印場所へ正規の刻印をするようにした場合(S007、S104、S109)には、機械加工前の刻印の表示を、例えば、簡単な文字の組み合わせなどで簡略化できる。
前記の機械加工(S006、S010、S103、S108、S111)においては、代替刻印場所へ仮の刻印がなされていた場合には、当該仮の刻印が削り取られ、また正規の刻印場所は清浄な状態とされる。かくして、この場合も鋳物100について正規の刻印場所に正規の刻印を確実に施すことができるので、鋳物100についてのトレーサビリティ性が確保される。
【0029】
以上説明したように、刻印装置84によれば、鋳造物19Fに対して上記のように刻印を行うことにより、鋳造物19Fの異物の有無に左右されずに確実な刻印が可能であり、各鋳物100についてトレーサビリティ性を確保することができる。また、異物を検出した場合等に代替刻印場所へ目印程度の仮の刻印をすることにより、正規の刻印、例えばQRコード(登録商標)のようなデータ量の多い刻印を施すのに比べて刻印作業時間の短縮が可能であり、効率のよい刻印を行うことができる。
また、鋳造設備1で順次生産される各鋳物100について、刻印装置84の異物検出装置110により異物の検査を行い、異物の検出数が一定の回数又は一定の割合を超えたときに鋳造設備1の不良対策信号を発するように構成すれば、鋳物の表面のバリや残砂、焼付き等の不具合について迅速に対策を講じることができる。
【0030】
上述したように、刻印装置84は、異物検出装置110、刻印制御装置111、刻印機構112を備えることにより、鋳物100に対して刻印を行う鋳物への刻印方法として、鋳物100の外面の異物を検出すること、異物の有無に応じて刻印場所を設定して該刻印場所に刻印する方法を実施することができる。
したがって、刻印装置84、及び上記の刻印方法においては、刻印対象となる鋳物100に異物が付着していた場合にも、当該鋳物100に有効適切な刻印を施すことができる。
また、鋳物100に有効適切な刻印を施すことで、鋳造物19Fの製造条件から機械加工終了までの情報を紐付けることができる。そのため、各鋳物100について確実なトレーサビリティ性を確保することができる。
なお、上記の刻印装置84において、撮像装置114はインラインプロファイル測定器等、各種の形状撮像装置を選択することができる。また、上記の実施形態では刻印場所と刻印の制御は鋳物100に対して行ったが、鋳造物19Fの鋳物100及びほかの部分を含む鋳造物19Fの全体に対して行うことも可能である。
また、上記の実施形態においては、鋳造物19Fが複数の鋳物100を有する場合について説明したが、本発明において鋳物100の数は1個でもよく、本発明は1以上の鋳物が設けられた鋳造物に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 鋳造設備
100 鋳物
101、103 連結部
110 異物検出装置
111 刻印制御装置
112 刻印機構
113 型データ
118 正規の刻印場所
120-1、120-2 代替刻印場所
19F 鋳造物
84 刻印装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6