(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ディスクロータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20230920BHJP
F16F 15/121 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
F16D65/12 Y
F16F15/121 A
F16D65/12 B
F16D65/12 T
(21)【出願番号】P 2019117852
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 誠
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-001835(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011116005(DE,A1)
【文献】実開昭53-003391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
F16F 15/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の第一底壁と、当該第一底壁の第一外縁から前記第一底壁と交差する第一方向に延びた筒状の第一側壁と、当該第一側壁の前記第一方向の端部から前記第一側壁の径方向外方に張り出したフランジと、を有したディスクロータと、
前記第一底壁の前記第一方向の内側端面または前記第一方向とは反対方向の外側端面のうち一方である第一面と前記第一底壁と結合される部材の第二面との間に挟まれた状態に固定される円板状の第二底壁と、当該第二底壁の第二外縁から前記第一側壁に沿って前記第一方向に延びるとともに前記第一側壁に少なくとも部分的に接した第二側壁と、を有した減衰部材と、
を備え
、
前記第二側壁に、前記第一側壁の径方向に貫通する開口が設けられ、
前記フランジには、前記第一側壁の周方向に並ぶとともに当該フランジの内縁と当該フランジの第三外縁との間を貫通した複数の空気通路が設けられ、
前記第二側壁は、前記第二外縁から前記第一方向に前記空気通路の反対側まで延び、かつ当該反対側で前記フランジの内縁と接した接触部を有し、
前記開口は前記空気通路と面した、
ディスクロータアセンブリ。
【請求項2】
前記接触部は、前記第二側壁の弾性によって前記内縁に押し付けられた、
請求項1に記載のディスクロータアセンブリ。
【請求項3】
前記第二側壁は、前記開口と少なくとも部分的に隙間をあけて面するとともに前記ディスクロータの車両前進時の回転方向に向かうにつれて前記第一側壁の径方向内方に向かうように延びたフィンを有した、
請求項1又は請求項2に記載のディスクロータアセンブリ。
【請求項4】
円板状の第一底壁と、当該第一底壁の第一外縁から前記第一底壁と交差する第一方向に延びた筒状の第一側壁と、当該第一側壁の前記第一方向の端部から前記第一側壁の径方向外方に張り出したフランジと、を有したディスクロータと、
前記第一底壁の前記第一方向の内側端面または前記第一方向とは反対方向の外側端面のうち一方である第一面と前記第一底壁と結合される部材の第二面との間に挟まれた状態に固定される円板状の第二底壁と、当該第二底壁の第二外縁から前記第一側壁に沿って前記第一方向に延びるとともに前記第一側壁に少なくとも部分的に接した第二側壁と、を有した減衰部材と、
を備え、
前記第二側壁に、前記第一側壁の径方向に貫通する開口が設けられ、
前記第二側壁は、前記開口と少なくとも部分的に隙間をあけて面するとともに前記ディスクロータの車両前進時の回転方向に向かうにつれて前記第一側壁の径方向内方に向かうように延びたフィンを有した、
ディスクロータアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスクロータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底の筒状部とフランジとを有したディスクロータの、制動時における振動および当該振動に基づく音(所謂鳴き)を低減するため、筒状部にリング状の減衰部材が装着されたディスクロータが、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第109642627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のディスクロータアセンブリでは、リング状の減衰部材は、例えば、筒状部に嵌合によって装着される。しかしながら、減衰部材が比較的嵌合力の小さい圧入により筒状部に取り付けられる場合、減衰部材の筒状部からの脱落が懸念される。他方、減衰部材が比較的嵌合力の大きい圧入によって筒状部に取り付けられる場合、減衰部材による減衰効果が低くなってしまうことが懸念される。すなわち、筒状部にリング状の部材が嵌合によって装着される構成にあっては、減衰部材の脱落の防止と減衰部材による所要の減衰効果との両立が難しいという問題が生じる虞があった。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、例えば、より脱落し難いあるいはより減衰効果が得られやすいような、より不都合の少ない新規な減衰部材を有したディスクロータアセンブリを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のディスクロータアセンブリは、例えば、円板状の第一底壁と、当該第一底壁の第一外縁から上記第一底壁と交差する第一方向に延びた筒状の第一側壁と、当該第一側壁の上記第一方向の端部から上記第一側壁の径方向外方に張り出したフランジと、を有したディスクロータと、上記第一底壁の上記第一方向の内側端面または上記第一方向とは反対方向の外側端面のうち一方である第一面と上記第一底壁と結合される部材の第二面との間に挟まれた状態に固定される円板状の第二底壁と、当該第二底壁の第二外縁から上記第一側壁に沿って上記第一方向に延びるとともに上記第一側壁に少なくとも部分的に接した第二側壁と、を有した減衰部材と、を備え、上記第二側壁に、上記第一側壁の径方向に貫通する開口が設けられ、上記フランジには、上記第一側壁の周方向に並ぶとともに当該フランジの内縁と当該フランジの第三外縁との間を貫通した複数の空気通路が設けられ、上記第二側壁は、上記第二外縁から上記第一方向に上記空気通路の反対側まで延び、かつ当該反対側で上記フランジの内縁と接した接触部を有し、上記開口は上記空気通路と面する。
【0007】
また、本開示のディスクロータアセンブリは、例えば、円板状の第一底壁と、当該第一底壁の第一外縁から上記第一底壁と交差する第一方向に延びた筒状の第一側壁と、当該第一側壁の上記第一方向の端部から上記第一側壁の径方向外方に張り出したフランジと、を有したディスクロータと、上記第一底壁の上記第一方向の内側端面または上記第一方向とは反対方向の外側端面のうち一方である第一面と上記第一底壁と結合される部材の第二面との間に挟まれた状態に固定される円板状の第二底壁と、当該第二底壁の第二外縁から上記第一側壁に沿って上記第一方向に延びるとともに上記第一側壁に少なくとも部分的に接した第二側壁と、を有した減衰部材と、を備え、上記第二側壁に、上記第一側壁の径方向に貫通する開口が設けられ、上記第二側壁は、上記開口と少なくとも部分的に隙間をあけて面するとともに上記ディスクロータの車両前進時の回転方向に向かうにつれて上記第一側壁の径方向内方に向かうように延びたフィンを有する。
【0008】
上記構成では、減衰部材は、当該減衰部材の第二底壁がディスクロータの第一底壁の第一面と他の部材の第二面との間に挟まれた状態で、ディスクロータに取り付けられる。よって、より脱落し難くかつより適切な減衰効果が得られやすい減衰部材を有したディスクロータアセンブリを、得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態のホイール、ディスクロータアセンブリ、およびハブの互いに結合された状態での例示的かつ模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のディスクロータアセンブリの例示的かつ模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態のディスクロータアセンブリの例示的かつ模式的な分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のホイール、ディスクロータ、およびハブの一部の、互いに結合された状態での例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0011】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0012】
本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0013】
また、各図において、車両前方を矢印Xで示し、ホイール40の回転中心Axと平行な方向のうち車幅方向外方を矢印Yで示し、車両上方を矢印Zで示す。方向X、方向Y、および方向Zは、互いに直交している。また、以下では、回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。車両への取付状態において、ディスクロータ10の円筒状の側壁12の軸方向は、回転中心Axの軸方向であり、側壁12の径方向は、回転中心Axの径方向であり、側壁12の周方向は、回転中心Axの周方向である。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のホイール40、ディスクロータアセンブリ100、およびハブ30の互いに組み付けられた状態での断面図である。ホイール40は、底壁41と周壁42とを有している。底壁41は、円板状の形状を有している。周壁42は、円筒状の形状を有し、底壁41の外縁から車幅方向内方に突出している。底壁41と周壁42とによって凹部43が形成されており、ディスクロータアセンブリ100およびハブ30は、当該凹部43内に収容されている。また、ディスクロータアセンブリ100に含まれるディスクロータ10の底壁11と側壁12とによって凹部15が形成されており、ハブ30は、当該凹部15内に収容されている。
【0015】
ハブ30は、支持部材31と、回転部材32と、ベアリング33とを有している。支持部材31は、外筒31aと、フランジ31bと、を有し、回転部材32は、内筒32aと、フランジ32bと、を有している。ベアリング33は、外筒31aと内筒32aとの間に位置されている。内筒32aすなわち回転部材32は、ベアリング33を介して、外筒31aすなわち支持部材31に、回転中心Ax回りに回転可能に支持されている。
【0016】
そして、
図1に示されるように、ハブ30の回転部材32のフランジ32bと、ディスクロータアセンブリ100に含まれる減衰部材20の底壁21と、ディスクロータアセンブリ100に含まれるディスクロータ10の底壁11と、ホイール40の底壁41とが、車幅方向に重ねられ、それらを貫通するボルト34の頭部34aと当該ボルト34に結合されるナット(不図示)との間に挟まれた状態で、結合されている。すなわち、ハブ30と、ホイール40と、ディスクロータアセンブリ100とは、ボルト34およびナットによって結合されている。ボルト34およびナットは、結合具とも称されうる。ハブ30は、ディスクロータ10と結合される部材の一例である。
【0017】
図2は、ディスクロータアセンブリ100の斜視図である。
図3は、
図1の一部の拡大図である。
図2に示されるように、ディスクロータアセンブリ100は、ディスクロータ10と、減衰部材20と、を有している。
【0018】
図2に示されるように、ディスクロータ10は、ハット形状を有している。ディスクロータ10は、底壁11と、側壁12と、フランジ13と、を有している。
【0019】
図2,3に示されるように、底壁11は、円板状の形状を有しており、回転中心Axと交差しかつ直交している。側壁12は、円筒状の形状を有しており、底壁11の外縁11aから軸方向に、言い換えると車幅方向内方に、延びている。側壁12は、周壁や筒壁とも称されうる。底壁11は、第一底壁の一例であり、外縁11aは、第一外縁の一例であり、側壁12は、第一側壁の一例である。また、車幅方向内方、すなわち方向Yの反対方向は、第一方向の一例である。
【0020】
フランジ13は、円環状かつ板状の形状を有しており、回転中心Axと交差しかつ直交している。フランジ13は、側壁12の底壁11とは反対側の端部12cから、径方向外方に突出している。フランジ13の軸方向内方の内側端面13cと、フランジ13の軸方向外方の外側端面13dとは、いずれも、軸方向と交差しかつ直交している。内側端面13cおよび外側端面13dは、キャリパによって制動部材(不図示)が押し付けられる制動面である。
【0021】
また、フランジ13には、
図2に示されるように、内縁13aと外縁13bとの間で径方向に貫通する空気通路14が設けられている。すなわち、ディスクロータ10は、空冷式のディスクロータである。空気通路14は、径方向に沿って延びてもよいし、外縁13bに開口する空気通路14の外側端14bが、内縁13aに開口する空気通路14の内側端14aに対して、車両前進時のホイール40の回転方向にずれて位置されるよう、径方向に対して傾斜してもよい。外縁13bは、第三外縁の一例である。
【0022】
ディスクロータ10は、例えば、ねずみ鋳鉄のような金属材料によって作られうるが、これには限定されない。
【0023】
図2,3に示されるように、減衰部材20は、有底筒状の形状を有している。減衰部材20は、底壁21と、側壁22と、を有している。減衰部材20は、ディスクロータ10が振動した際に当該ディスクロータ10と相対的に摺動することにより、振動エネルギ(運動エネルギ)を熱エネルギに変換してディスクロータ10の振動を減衰する。
【0024】
底壁21は、円板状の形状を有しており、回転中心Axと交差しかつ直交している。側壁22は、略円筒状の形状を有しており、底壁21の外縁21aから軸方向に、言い換えると車幅方向内方に、延びている。側壁22は、周壁や筒壁とも称されうる。底壁21は、第二底壁の一例であり、外縁21aは、第二外縁の一例であり、側壁22は、第二側壁の一例である。
【0025】
減衰部材20は、例えば、ステンレス鋼のような金属材料によって作られうるが、これには限定されない。
【0026】
ディスクロータ10の底壁11の、軸方向内方の内側端面11cと、軸方向外方の外側端面11dとは、いずれも、平面状かつ円形状の形状を有しており、軸方向と交差しかつ直交している。また、ディスクロータ10の側壁12の径方向内側の内周面12aは、円筒内面であり、側壁12の径方向内側の外周面12bは、円筒外面である。すなわち、内周面12aと外周面12bとは、いずれも、軸方向に沿うとともに、周方向に沿っている。
【0027】
減衰部材20の底壁21は、ディスクロータ10の底壁11の内側端面11cと、ハブ30の回転部材32のフランジ32bの端面32b1との間に挟まれた状態で、固定される。すなわち、減衰部材20の底壁21は、底壁11とフランジ32bとによって挟持されている。内側端面11cは、第一面の一例であり、端面32b1は、第二面の一例である。
【0028】
ディスクロータ10の底壁11には、貫通孔11bが設けられており、減衰部材20の底壁21には、貫通孔21bが設けられている。ボルト34(
図1参照)は、軸方向に重なった貫通孔11bと貫通孔21bとを貫通している。
【0029】
減衰部材20の側壁22は、第一部位22aと、第二部位22bと、を有している。第一部位22aは、底壁21の外縁21aから車幅方向内方に延びている。第一部位22aは、底壁21と隣接し、第二部位22bは、第一部位22aと隣接するとともに、第一部位22aに対して底壁21とは反対側に位置している。言い換えると、第一部位22aは、底壁21の車幅方向内方に位置するとともに第二部位22bの車幅方向外方に位置し、第二部位22bは、第一部位22aの車幅方向内方に位置している。外縁21aは、第二外縁の一例である。
【0030】
第一部位22aは、円筒状の形状を有しており、ディスクロータ10の側壁12の内周面12aに沿って延びている。第一部位22aの径方向内方の端部において、内周面22cは、軸方向に延びている。内周面22cは、円筒内面である。第一部位22aの径方向外方の端部において、外周面22dは、軸方向に延びている。外周面22dは、円筒外面である。
【0031】
上述したように、ディスクロータ10の振動を抑制するため、ディスクロータアセンブリ100は、減衰部材20の外周面22dとディスクロータ10の側壁12の内周面12aとが相対的に摺動し熱エネルギを生じることができるよう、構成されている。このため、減衰部材20の第一部位22aは、ディスクロータ10の側壁12内に、例えば、或る程度の締め代をもった嵌め合い(しまり嵌め)で挿入されている。なお、外周面22dは、摺動による減衰効果が得られるのであれば、全体的に内周面12aと接する必要はなく、部分的に内周面12aと接してもよい。
【0032】
他方、第二部位22bは、円錐台形状を有している。第二部位22bの直径は、第一部位22aの車幅方向内方の端部から車幅方向内方に向かうにつれて徐々に拡大している。また、
図3に示されるように、第二部位22bは、空気通路14の内側端14aを車幅方向に跨ぎ、当該空気通路14に対して側壁12とは反対側で、フランジ13の内縁13aと接している。第二部位22bは、延部とも称されうる。
【0033】
第二部位22bも、第一部位22aと同様、ディスクロータ10の振動時に、フランジ13の内縁13aと摺動するのが好ましい。このため、例えば、第二部位22bの車幅方向内方の端部22b1が第二部位22bの弾性によってフランジ13の内縁13aに押圧されるよう、内縁13aの内径が、減衰部材20が装着されていない自由状態における端部22b1の外径よりも小さく設定されている。一例としては、使用温度範囲および環境温度範囲における下限値において、内縁13aの内径が自由状態における端部22b1の外径よりも小さくなるよう、設定される。
【0034】
さらに、この場合、端部22b1および内縁13aのスペックは、端部22b1と内縁13aとの接触状態がフランジ13の使用状態における低温から高温までの温度範囲において維持されるよう、設定されている。このため、例えば、減衰部材20は、ディスクロータ10の線膨張係数よりも高い線膨張係数を有する材質で作られてもよい。端部22b1は、接触部の一例である。
【0035】
また、
図2,3に示されるように、第二部位22bには、当該第二部位22bを径方向に貫通する開口22b2が設けられている。開口22b2は、空気通路14の内側端14aと面している。なお、本実施形態では、開口22b2は、貫通孔であるが、これには限定されず、開口22b2は、例えば切欠であってもよい。
【0036】
第二部位22bは、開口22b2に隣接して、フィン22eを有している。フィン22eは、
図2に示されるように、開口22b2と隣接して、開口22b2の径方向内側を隙間をあけて覆うように設けられている。具体的には、例えば、開口22b2は、四角形状の形状を有し、かつ開口22b2の周方向の二つの端縁はそれぞれ軸方向に延びており、フィン22eは、当該二つの端縁のうちディスクロータ10の車両前進時の回転方向CWとは反対側の端縁から切り起こされ、当該回転方向CWに向かうにつれて径方向内方に向かうように延びている。言い換えると、フィン22eは、ディスクロータ10の車両前進時の回転方向CWに向かうにつれて根元部分から徐々に離れるように、周方向かつ径方向に対して交差している。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態では、減衰部材20の底壁21(第二底壁)は、ディスクロータ10の底壁11(第一底壁)の内側端面11c(第一面)と、ハブ30(結合される部材)のフランジ32bの端面32b1(第二面)との間に挟まれた状態に固定され、減衰部材20の側壁22(第二側壁)の外周面22dは、ディスクロータ10の側壁12(第一側壁)の内周面12aと、少なくとも部分的に接している。このような構成によれば、ディスクロータ10が振動した場合に生じる振動エネルギ(運動エネルギ)を外周面22dと内周面12aとの摺動によって熱エネルギに変換し、振動ひいては当該振動に伴う発音(所謂鳴き)を、抑制することができる。また、底壁21を内側端面11cと端面32b1との間に挟持することにより、減衰部材20のディスクロータ10からの脱落を抑制することができる。本実施形態によれば、減衰部材20が取り付けられる部位(底壁21)と、減衰部材20が摺動する部位(側壁22)とが分離されることにより、減衰部材20の脱落の抑制と減衰部材20による減衰効果の向上とが、両立されやすい。
【0038】
また、本実施形態では、減衰部材20の側壁22(第二側壁)に、開口22b2が設けられている。このような構成によれば、例えば、開口22b2が設けられない構成と比較して、減衰部材20をより軽量化することができたり、弾性(剛性)の調整により減衰する振動の周波数を調整しやすかったり、といった効果が得られる。
【0039】
また、本実施形態では、減衰部材20の側壁22(第二側壁)は、底壁21(第二底壁)の外縁21a(第二外縁)からフランジ13に設けられた空気通路14の反対側まで延び、側壁22の当該反対側の端部22b1(接触部)が、フランジ13の内縁13aと接している。このような構成によれば、例えば、ディスクロータ10と摺動する部位が増える分、減衰効果をより高めることができる。また、側壁22には、空気通路14の内側端14aと面した開口22b2が設けられているため、例えば、側壁22によって空気流が遮断され冷却性能が低下するような事態が生じるのを、回避できる。
【0040】
また、本実施形態では、端部22b1(接触部)は、側壁22(第二側壁)の弾性によって、フランジ13の内縁13aに押し付けられている。このような構成によれば、例えば、端部22b1と内縁13aとがより確実に当接することができるため、端部22b1と内縁13aとの摺動による振動の減衰効果をより確実に得ることができる。また、ディスクロータ10が温度上昇に伴って熱膨張したような場合にあっても、端部22b1と内縁13aとが接触した状態を得ることができ、これにより、環境温度範囲および使用温度範囲において、端部22b1と内縁13aとの摺動による振動の減衰効果をより確実に得ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、フィン22eは、開口22b2と少なくとも部分的に隙間をあけて面し、ディスクロータ10の車両前進時の回転方向CWに向かうにつれて径方向内方に向けて延びている。このような構成によれば、例えば、フィン22eが、車両前進時に回転することにより、空気を、開口22b2を経て径方向外方へ向かうように送り出すことができる。よって、フィン22eが無い場合に比べて、空気通路14を通過する空気流量を増大することができ、ひいては、空気通路14を通る空気によるフランジ13ひいてはディスクロータ10の冷却性能を、より高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、減衰部材20の側壁22(第二側壁)がディスクロータ10の側壁12(第一側壁)の径方向内方に位置し、減衰部材20の線膨張係数が、ディスクロータ10の線膨張係数より高くてもよい。このような構成によれば、例えば、制動部材との摩擦によりフランジ13ひいてはディスクロータ10の温度が上昇した場合にあっても、側壁22と側壁12とが接した状態が維持されやすくなり、ひいては、側壁22と側壁12との摺動による振動の減衰効果をより確実に得ることができる。
【0043】
[第2実施形態]
図4は、本実施形態のディスクロータアセンブリ100Aの分解斜視図、
図5は、本実施形態のホイール40、ディスクロータアセンブリ100A、およびハブ30の互いに結合された状態での断面図である。
【0044】
図4,5を
図2,3と比較すれば明らかとなるように、本実施形態では、減衰部材20Aのディスクロータ10に対する装着位置が、上記第1実施形態と相違している。具体的に、減衰部材20Aは、ディスクロータ10に対して車幅方向外方に位置されており、減衰部材20Aの底壁21は、ディスクロータ10の底壁11の車幅方向外方に位置されるとともに、減衰部材20Aの側壁22は、ディスクロータ10の側壁12の径方向外方に位置されている。また、本実施形態では、減衰部材20Aは、第二部位22bに相当する部位を有していない。
【0045】
図5に示されるように、減衰部材20Aの底壁21は、ディスクロータ10の底壁11の外側端面11dと、ホイール40の底壁41の底面41aと、の間に挟まれた状態で、固定される。すなわち、減衰部材20の底壁21は、底壁11と底壁41とによって挟持されている。ホイール40は、ディスクロータ10と結合される部材の一例である。また、外側端面11dは、第一面の一例であり、底面41aは、第二面の一例である。
【0046】
また、本実施形態では、ディスクロータ10の振動を抑制するため、ディスクロータアセンブリ100は、減衰部材20Aの内周面22cとディスクロータ10の側壁12の外周面12bとが相対的に摺動し熱エネルギを生じることができるよう、構成されている。このため、ディスクロータ10の側壁12は、減衰部材20Aの側壁22内に、例えば、或る程度の締め代をもった嵌め合い(しまり嵌め)で挿入されている。なお、内周面22cは、摺動による減衰効果が得られるのであれば、全体的に外周面12bと接する必要はなく、部分的に外周面12bと接してもよい。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態では、減衰部材20Aの底壁21(第二底壁)は、ディスクロータ10の底壁11(第一底壁)の外側端面11d(第一面)と、ホイール40(結合される部材)の底壁41の底面41a(第二面)との間に挟まれた状態に固定され、減衰部材20Aの側壁22(第二側壁)の内周面22cは、ディスクロータ10の側壁12(第一側壁)の外周面12bと、少なくとも部分的に接している。このような構成によれば、ディスクロータ10が振動した場合に生じる振動エネルギ(運動エネルギ)を内周面22cと外周面12bとの摺動によって熱エネルギに変換し、振動ひいては当該振動に伴う発音(所謂鳴き)を、抑制することができる。また、底壁21を外側端面11dと底面41aとの間に挟持することにより、減衰部材20Aのディスクロータ10からの脱落を抑制することができる。本実施形態によっても、減衰部材20Aが取り付けられる部位(底壁21)と、減衰部材20Aが摺動する部位(側壁22)とが分離されることにより、減衰部材20Aの脱落の抑制と減衰部材20Aによる減衰効果の向上とが、両立されやすい。
【0048】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0049】
例えば、減衰部材は、例えば、鉄系材料以外の金属材料で作られてもよいし、エラストマや合成樹脂材料のような金属材料とは異なる材料で作られてもよい。また、ディスクロータと減衰部材との摺動部位(接触部位)のうち少なくとも一方(例えば、互いに接する第一側壁の内周面および第二側壁の外周面のうち少なくとも一方、互いに接する接触部およびフランジの内縁のうち少なくとも一方、互いに接する第一側壁の外周面および第二側壁の内周面のうち少なくとも一方)に、摺動性や潤滑性を調整できる被膜を設けてもよい。このようなコーティングは、例えば、フッ素樹脂塗料のような特殊塗料の吹きつけ塗装や焼き付け等によって施してもよい。
【0050】
また、第二側壁を径方向に貫通する開口の形態は、切欠であってもよいし、当該開口は、第一側壁と隣接した位置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ディスクロータ、11…底壁(第一底壁)、11a…外縁(第一外縁)、11c…内側端面(第一面)、11d…外側端面(第一面)、12…側壁(第一側壁)、12c…端部、13…フランジ、13a…内縁、13b…外縁(第三外縁)、14…空気通路、20,20A…減衰部材、21…底壁(第二底壁)、21a…外縁(第二外縁)、22…側壁(第二側壁)、22b1…端部(接触部)、22b2…開口、22e…フィン、30…ハブ(結合される部材)、32b1…端面(第二面)、40…ホイール(結合される部材)、41a…底面(第二面)、100,100A…ディスクロータアセンブリ。