(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230920BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230920BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60K35/00 A
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2019124567
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】坂本 かおり
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-015547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60K 35/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車側方の注意喚起物を表す情報を、ステアリングホイールを表すステアリングホイール画像と、ステアリングホイールを握る手を表す手画像とを含む第1画像により出力し、
前記第1画像は、前記注意喚起物が自車の右側に検出された場合に、前記ステアリングホイール画像よりも右側に前記注意喚起物を表す所定画像を更に含み、前記注意喚起物が自車の左側に検出された場合に、前記ステアリングホイール画像よりも左側に前記所定画像を更に含
み、
運転支援制御中は、運転支援制御中であることを表す情報を、第2画像により出力し、
運転支援制御中に前記注意喚起物が検出された場合に、前記第2画像から前記第1画像に切り替え、
前記第2画像は、車両の外形を表す車両画像を含み、
前記第1画像は、車両の外形を表す車両画像を含まず、
前記第1画像が出力されたときの前記ステアリングホイール画像の左右方向の中心位置と、前記第2画像が出力されたときの前記第2画像の前記車両画像の左右方向の中心位置とは、一致する、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記ステアリングホイール画像及び前記手画像は、ステアリングホイールが中立位置で運転者の両手により保持されている状態を表すように描画される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記ステアリングホイール画像及び前記手画像は、ステアリングホイールが中立位置から運転者の両手により所定方向に操舵された状態を表すように描画され、
前記所定方向は、前記注意喚起物が自車の右側に検出された場合は左方向となりかつ前記注意喚起物が自車の左側に検出された場合は右方向となる態様で、前記注意喚起物の検出結果に応じて変化される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記所定画像は、前記注意喚起物が存在する側への操舵の禁止を示唆する補助画像を含む、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記注意喚起物は、自車線上の自車前方に進入しうる移動体、及び、自車の車線変更が予定されている場合に変更先の車線上に存在する移動体のうちの、少なくともいずれか一方である、
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後方車両が自車の後方に存在することを表す後方車両情報を取得し、後方車両情報に基づき後方車両の注意度合いを判定し、判定した注意度合いを表す画像を表示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘッドアップディスプレイ装置で表示できる画像は、インストルメントパネル等に配置される液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置に表示できる画像とは異なり、サイズに比較的大きな制約があり、きめ細かい表示を出力することが難しい。このため、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力することが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、自車側方の注意喚起物を表す情報を、ステアリングホイールを表すステアリングホイール画像と、ステアリングホイールを握る手を表す手画像とを含む第1画像により出力し、
前記第1画像は、前記注意喚起物が自車の右側に検出された場合に、前記ステアリングホイール画像よりも右側に前記注意喚起物を表す所定画像を更に含み、前記注意喚起物が自車の左側に検出された場合に、前記ステアリングホイール画像よりも左側に前記所定画像を更に含み、
運転支援制御中は、運転支援制御中であることを表す情報を、第2画像により出力し、
運転支援制御中に前記注意喚起物が検出された場合に、前記第2画像から前記第1画像に切り替え、
前記第2画像は、車両の外形を表す車両画像を含み、
前記第1画像は、車両の外形を表す車両画像を含まず、
前記第1画像が出力されたときの前記ステアリングホイール画像の左右方向の中心位置と、前記第2画像が出力されたときの前記第2画像の前記車両画像の左右方向の中心位置とは、一致する、ヘッドアップディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施例によるヘッドアップディスプレイの内部構成を上側から示す斜視図である。
【
図2】ヘッドアップディスプレイの車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。
【
図3】ヘッドアップディスプレイの制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)の一例を示す図である。
【
図5】比較例による表示像(虚像表示)の説明図である。
【
図6】注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)の他の一例を示す図である。
【
図7】注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)の他の一例を示す図である。
【
図8】注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)の他の一例を示す図である。
【
図9】制御装置の注意喚起物表示機能に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】運転支援制御中における表示像(虚像表示)VIの遷移態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、
図1等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
[ヘッドアップディスプレイの構成]
図1は、一実施例によるヘッドアップディスプレイ1の内部構成を上側から示す斜視図である。
図2は、ヘッドアップディスプレイ1の車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。なお、
図1では、ヘッドアップディスプレイ1の一部の構成要素の図示は省略されている。
図1には、右手系で、互いに直交する3方向であるX方向、Y方向、及びZ方向が定義されている。以下では、形式上、Z方向を上下方向とし、正側を上側とし、負側を下側とする。
【0011】
ヘッドアップディスプレイ1は、車両のインストルメントパネル9内に搭載される。ヘッドアップディスプレイ1は、
図1のY方向が車幅方向に略対応する向きで搭載されてよい。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ1は、ケース2と、TFT(Thin Film Transistor)パネルユニット3と、ミラー4,5と、バックライトユニット6とを含む。
【0013】
ケース2は、ヘッドアップディスプレイ1の筐体を形成する。ケース2は、ヘッドアップディスプレイ1の筐体の下部を形成するロアケースである。なお、ケース2は、
図1では図示が省略されたアッパーケースと結合される。
【0014】
ケース2は、アルミ等のような伝熱性の高い材料により形成される。ケース2は、
図1に示すように、放熱部位21を含む。放熱部位21は、ケース2の外側表面(外部に露出する表面)に形成される。放熱部位21は、バックライトユニット6から発生する熱を放熱する機能を有する。放熱部位21は、ケース2外を流れる空気に熱を放出する。
【0015】
TFTパネルユニット3は、バックライトユニット6からの光をバックライトとして利用して、表示画像に応じた画像光を出射する表示器である。TFTパネルユニット3は、カラーフィルタ(図示せず)を有する。なお、表示画像は、例えばナビゲーション情報や各種の車両情報等を表す画像であってよい。本実施例では、以下で説明するように、表示画像は、注意喚起物に係る注意喚起用の画像を含む。
【0016】
ウインドシールドガラスWSに画像光が照射されると、
図2に示すように、車両VCを運転する運転者にとっては、ウインドシールドガラスWSよりも前方に、当該照射によって得られた表示像(虚像表示)VIが見える。これにより、運転者は、前方風景と重畳させて表示像VIを視認でき、視線移動の少ない態様で車両情報等を把握でき、利便性及び安全性が向上する。
【0017】
なお、上述では、特定の構成のヘッドアップディスプレイ1が示されるが、本実施例は、任意の構造のヘッドアップディスプレイに適用可能である。例えば、上述では、ミラー4,5が設けられるが、ミラー4,5の一方又は双方が省略されてもよい。
【0018】
[注意喚起物表示機能]
次に、ヘッドアップディスプレイ1における注意喚起物に係る注意喚起用の表示像(虚像表示)VI(
図2参照)を出力する機能(以下、「注意喚起物表示機能」とも称する)を説明する。以下、自車とは、ヘッドアップディスプレイ1が搭載された車両を指す。
【0019】
図3は、ヘッドアップディスプレイ1の制御装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3には、制御装置10のハードウェア構成に関連付けて、周辺機器60が模式的に図示されている。なお、制御装置10の構成の一部又は全部は、ケース2内に収容されてよい。
【0020】
周辺機器60は、TFTパネルユニット3及びバックライトユニット6に加えて、他の車載電子機器を含んでよい。本実施例では、周辺機器60は、自車周辺を監視する周辺監視ECU(Electronic Control Unit)62と、側方レーダセンサ64と、運転支援ECU66とを含む。
【0021】
周辺監視ECU62には、側方レーダセンサ64が接続される。側方レーダセンサ64は、自車の左右側方にそれぞれ搭載され、自車の左右側方の障害物を検出する。周辺監視ECU62は、側方レーダセンサ64からのセンサ情報に基づいて、自車側方における注意喚起物を検出する。注意喚起物は、自車の運転者に注意喚起を行うことが有用な障害物であり、所定の注意喚起条件を満たす物体であってよい。所定の注意喚起条件は、任意であるが、例えば以下のような条件要素(1)~(2)が満たされた場合に満たされてよい。
条件要素(1)自車側方の第1注意喚起領域に移動体が存在すること。
条件要素(2)第1注意喚起領域内の移動体が自車前方(自車の走行車線上)に進入する可能性(すなわち自車前方の比較的近い距離に割り込む可能性)があること。
第1注意喚起領域は、運転者にとって死角となりやすい領域をカバーする態様で規定されてよい。例えば、第1注意喚起領域は、自車の側方及び後方を含んでよい。この場合、隣車線から自車の走行車線に進入してくる移動体の存在を、注意喚起物として運転者に知らせることができる。なお、条件要素(2)に代えて、以下のような条件要素(12)及び条件要素(13)が利用されてもよい。
条件要素(12)自車の車線変更を予定していること。
条件要素(13)車線変更に係る変更先の車線における第2注意喚起領域内に移動体が存在すること。
第2注意喚起領域は、車線変更が実現された場合に移動体との距離が近くなりすぎるような範囲内の領域であってよい。第2注意喚起領域は、移動体の速度(自車との速度差)に応じて可変されてもよい。条件要素(12)は、例えばウインカーレバースイッチの状態に基づいて判定されてもよい。この場合、車線変更を行う際の変更先の車線上の、注意喚起の有用性が高い移動体の存在を、注意喚起物として運転者に知らせることができる。
【0022】
なお、周辺監視ECU62は、側方レーダセンサ64に代えて又は加えて、他のセンサ(例えば画像センサ)を利用して、自車側方における注意喚起物を検出してもよい。
【0023】
運転支援ECU66は、レーダセンサや、画像センサ、LiDAR(ライダー)、車輪速センサ、ステアリングセンサ等のような、車載の各種センサ(図示せず)からのセンサ情報に基づいて、運転支援制御を実行する。運転支援制御は、レーダセンサ等からのセンサ情報に基づいて先行車両に追従する態様で自車の走行状態(車速等)を制御する先行車両追従制御や、画像センサで撮像される画像に基づく車線認識結果に基づいて自車の操舵状態を制御する操舵支援制御等を含んでよい。本実施例では、操舵支援制御は、走行車線から逸脱しないようにステアリングホイール8(
図2参照)に反力や振動を発生する制御であり、自動的に車線変更を実現するような態様の自動操舵制御は含まない。ただし、自動操舵制御が実行されるモードを有してもよく、この場合、注意喚起物表示機能は、自動操舵制御が実行されるモード以外のモードで実現される。
【0024】
制御装置10は、注意喚起物表示機能を実現する。
図3に示す例では、制御装置10は、バス19で接続されたCPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、補助記憶装置14、ドライブ装置15、及び通信インターフェース17、並びに、通信インターフェース17に接続された有線送受信部25及び無線送受信部26を含む。
【0025】
補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
有線送受信部25は、CAN(controller area network)などに準拠する有線ネットワークを利用して通信可能な送受信部を含む。有線送受信部25には、周辺機器60が接続される。ただし、周辺機器60の一部又は全部は、バス19に接続されてもよいし、無線送受信部26に接続されてもよい。
【0026】
無線送受信部26は、無線ネットワークを利用して通信可能な送受信部である。無線ネットワークは、携帯電話の無線通信網、インターネット、VPN(Virtual Private Network)、WAN(Wide Area Network)等を含んでよい。また、無線送受信部26は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)部、ブルートゥース(Bluetooth、登録商標)通信部、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)送受信部、赤外線送受信部などを含んでもよい。
【0027】
なお、制御装置10は、記録媒体16と接続可能であってもよい。記録媒体16は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体16に格納されたプログラムは、ドライブ装置15を介して制御装置10の補助記憶装置14等にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、制御装置10のCPU11により実行可能となる。例えば、記録媒体16は、CD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。
【0028】
本実施例では、制御装置10は、周辺監視ECU62により注意喚起物が検出された場合に、当該注意喚起物に係る注意喚起用の画像(以下、「注意喚起画像」とも称する)(第1画像の一例)を、TFTパネルユニット3を介して出力する。以下では、注意喚起画像や後出の運転支援画像等の、TFTパネルユニット3により出力される表示画像について、その表示像(虚像表示)VIの形態で説明する。従って、以下の説明で「左右」や「上下」は、表示像(虚像表示)VIを見る運転者の目線からの方向に対応する。
【0029】
図4は、注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)VIの一例を示す図である。
図4は、運転者の目線から表示像VIを示す図であり、表示像VI以外の風景(例えば道路上の白線のような、実際の風景)も示される。これについては、後出する同様の図面も同様である。
【0030】
図4では、注意喚起画像G40は、ステアリングホイール8を表すステアリングホイール画像G41と、ステアリングホイール8を握る手を表す手画像G42と、注意喚起物を表す所定画像G43とを含む。
【0031】
ステアリングホイール画像G41及び手画像G42は、自車の運転者の状態を示す態様で描画される。すなわち、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42を見る自車の運転者は、手画像G42があたかも自身の手であり、ステアリングホイール画像G41があたかも自身が握る手であるかのような感覚で、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42を見ることができる。換言すると、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42は、運転者よりも前方に(ウインドシールドガラスWSよりも前方に)、運転者自身の運転位置を模式的に示唆する機能(以下、「運転位置示唆機能」とも称する)を有する。
【0032】
ステアリングホイール画像G41及び手画像G42の表示位置は、好ましくは、運転位置示唆機能を高める観点から、固定である。すなわち、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42は、好ましくは、後出の所定画像G43の表示位置が変化するのとは対照的に、所定画像G43の表示位置とは無関係に、一定の位置に表示される。これは、運転中の運転者自身の運転位置(自車に対する相対位置)自体は、一定であるためである。
【0033】
ステアリングホイール画像G41は、好ましくは、注意喚起度の高い色(例えば赤色)で描画される。これにより、注意喚起画像G40により運転者に高い注意喚起を効果的に促すことができる。
【0034】
所定画像G43は、注意喚起物を表す画像であり、その形態は任意である。例えば、所定画像G43は、注意喚起物を模した画像であってもよい。本実施例では、一例として、
図4に示すように、所定画像G43は、前方に向かう矢印の矢先を模した画像であり、3つの矢先を有する。なお、所定画像G43は、後方から前方に向かう方向の流れを示す態様で、色及び/又は明るさが変化されてもよい。この場合、後方から前方に向かう注意喚起物の移動態様(自車に対する移動態様)を運転者にわかりやすく伝えることができる。
【0035】
所定画像G43は、ステアリングホイール画像G41(及びそれに伴い手画像G42)に対する表示位置が、注意喚起物の存在位置を表す。具体的には、所定画像G43がステアリングホイール画像G41の左側に表示される場合(
図4参照)は、自車左側に注意喚起物が検出されたことを表し、所定画像G43がステアリングホイール画像G41の右側に表示される場合は、自車右側に注意喚起物が検出されたことを表す。
【0036】
所定画像G43は、注意喚起度に応じて出力態様(色、点滅周期等)が可変されてもよい。例えば、所定画像G43は、注意喚起度が比較的高い場合は、赤色で出力されてもよい。また、所定画像G43は、例えば特開2017-138796号公報に記載される車両情報(後方車両の注意度合いを表す車両情報NT)(
図5参照)と同様の態様で出力されてもよい。
【0037】
なお、
図4では、TFTパネルユニット3により出力される表示画像は、注意喚起画像G40に加えて、運転支援情報を表す運転支援画像G50を含む。運転支援情報は、任意であるが、例えば、
図4に示すように、自車の走行速度や、走行道路の制限速度等を表すものであってよい。このように、注意喚起画像G40は、他の画像とともに出力されてもよい。なお、変形例では、TFTパネルユニット3により出力される表示画像は、運転支援情報を含まず、注意喚起画像G40のみを含んでもよいし、運転支援情報を含まず、注意喚起画像G40と他の画像を含んでもよい。
【0038】
運転支援画像G50は、上述のように任意であるが、好ましくは、自車又は先行車両を模した画像(
図5の画像CA2参照)を含まない。注意喚起画像G40の近傍に、自車又は先行車両を模した画像が配置されると、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42による運転位置示唆機能が低下しやすいためである。すなわち、運転者が、自車又は先行車両を模した画像を基準として、所定画像G43の位置(注意喚起物の存在位置)を把握してしまうような混同が生じやすくなるためである。
【0039】
次に、
図5の比較例を参照して、本実施例の効果について説明する。
【0040】
図5は、比較例による表示像(虚像表示)VIの説明図である。比較例では、注意喚起画像は、後方車両の注意度合いを表す車両情報NTの画像と、先行車両を模した画像CA2と、車線を表す画像WR1,WR2とを含む。この場合、車両情報NTの画像は、本実施例の所定画像G43と同様の機能を有し、それ自体は、本実施例の所定画像G43と同様の態様で出力されてもよい。
【0041】
ところで、ヘッドアップディスプレイ1で表示できる画像は、インストルメントパネル等に配置される液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置に表示できる画像とは異なり、サイズに比較的大きな制約があり、きめ細かい表示を出力することが難しい。このため、各表示の中心位置が意味を有する場合、運転者にとって当該中心位置の把握が難しい。従って、比較的緊急度の高い情報の場合、当該情報の意味を瞬時に運転者が把握できるように出力することが有用である。具体的には、自車側方の注意喚起物を表す情報については、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力することが有用となる。
【0042】
この点、比較例では、運転者は、後方車両の注意度合いを表す車両情報NTの画像が、車線を表す画像WR1,WR2に対してどちら側に表示されているかを見ることで、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、把握することができる。しかしながら、車線を表す画像WR1,WR2は、画像CA2との位置関係で、先行車両の走行車線であることを一応把握できるものの、自車の走行車線であるかどうかを瞬時に把握できない場合がある。これは、画像CA2のような車両画像(車両アイコン)が運転支援制御中(ACC(Adaptive Cruise Control)のような先行車両追従制御)にも表示されている場合が多く、かかる車両画像が、どの車両を表しているのかについて混同を招きやすいためである。
【0043】
このように、比較例の場合、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力する観点からは、改善の余地がある。
【0044】
この点、本実施例によれば、上述のように、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42による運転位置示唆機能によって、所定画像G43の位置(すなわち注意喚起物の位置)がわかりやすくなる。すなわち、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42による運転位置示唆機能によって、運転者自身の仮想的な位置が明確になるので、運転者は、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42に対する所定画像G43の位置が、自車(又は運転者自身)に対する注意喚起物の位置であることを、直感的に把握しやすくなる。このようにして、本実施例によれば、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力できる。
【0045】
また、本実施例によれば、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42により運転位置示唆機能が実現されるので、例えばステアリングホイール画像G41のみによって運転位置示唆機能を実現しようとする場合に比べて、運転位置示唆機能を高めることができる。具体的には、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42に代えて、ステアリングホイール画像G41のみを表示する構成では、ステアリングホイール画像G41が、運転支援制御中に表示される画像(例えば操舵支援制御中に表示される同様のステアリングホイール画像、
図10の制御情報画像G1001の車両画像G1002参照)と混同するおそれがある。これに対して、本実施例によれば、ステアリングホイール8を把持する手を表現した手画像G42が追加されることで、運転者自身がステアリングホイール8を握っている状態を想起しやすいだけでなく(これに伴い運転位置示唆機能を高めることができるだけでなく)、操舵支援制御中に表示される同様のステアリングホイール画像との混同を抑制できる。
【0046】
このようにして、本実施例によれば、運転支援制御中に表示される各種画像との関係で混同が生じない態様で、注意喚起画像G40を出力できる。これにより、運転者が注意喚起画像G40から瞬時に、必要な情報(すなわち注意喚起物の存在と、その位置)を把握しやすくなり、運転支援制御中においても注意喚起画像G40の出力の有用性を効果的に高めることができる。
【0047】
次に、
図6~
図8を参照して、注意喚起画像に係る表示像(虚像表示)VIのバリエーションについて説明する。
【0048】
図6では、注意喚起画像G40Aは、ステアリングホイール8を表すステアリングホイール画像G41Aと、ステアリングホイール8を握る手を表す手画像G42Aと、注意喚起物を表す所定画像G43とを含む。
図6では、前出の
図4で示すステアリングホイール画像G41及び手画像G42とは異なり、ステアリングホイール画像G41A及び手画像G42Aは、ステアリングホイール8が中立位置から運転者の両手により所定方向に操舵された状態を表すように描画される。すなわち、前出の
図4で示すステアリングホイール画像G41及び手画像G42は、ステアリングホイール8が中立位置で運転者の両手により保持されている状態を表すように描画されるのに対して、ステアリングホイール画像G41A及び手画像G42Aは、
図6に示すように、ステアリングホイール8が中立位置から運転者の両手により所定方向に操舵された状態を表すように描画される。所定方向は、注意喚起物が自車の右側に検出された場合は左方向となりかつ注意喚起物が自車の左側に検出された場合は右方向となる態様で、注意喚起物の検出結果に応じて変化される。
図6では、所定方向は右側であり、注意喚起物が自車の左側に検出された場合を表す。
【0049】
このような
図6に示す注意喚起画像G40Aによっても、前出の
図4で示す注意喚起画像G40と同様の効果が奏される。特に、
図6に示す注意喚起画像G40Aによれば、注意喚起物を避ける方向への操舵をイメージするステアリングホイール画像G41A及び手画像G42Aが出力されるので、注意喚起物の位置(注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたか)を直感的に把握しやすくなる。
【0050】
なお、
図6に示す例において、ステアリングホイール画像G41A及び手画像G42Aは、静止画で表現されてもよいし、アニメーションで表現されてもよい。アニメーションの場合、中立位置から所定方向に操舵される過程がアニメーションで繰り返し表現されてもよい。
【0051】
図7では、注意喚起画像G40Bは、ステアリングホイール8を表すステアリングホイール画像G41と、ステアリングホイール8を握る手を表す手画像G42と、注意喚起物を表す所定画像G43とに加えて、2つの補助画像G44,G45を含む。
【0052】
2つの補助画像G44,G45は、注意喚起物が存在する側への操舵の禁止を示唆する態様で描画される。具体的には、補助画像G44は、注意喚起物が存在する側への操舵方向を示す矢印画像であり、補助画像G45は、補助画像G44の矢印の先に付された“禁止”を示唆する“×マーク”の画像である。
【0053】
このような
図7に示す注意喚起画像G40Bによっても、前出の
図4で示す注意喚起画像G40と同様の効果が奏される。特に、
図7に示す注意喚起画像G40Bによれば、補助画像G44,G45が追加されるので、注意喚起物の位置(注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたか)を、より直感的に把握しやすくなる。
【0054】
図8では、注意喚起画像G40Cは、ステアリングホイール8を表すステアリングホイール画像G41と、ステアリングホイール8を握る手を表す手画像G42と、注意喚起物を表す所定画像G43Cとを含む。
【0055】
所定画像G43Cは、前出の
図4で示す所定画像G43とは異なり、対応する側への操舵の“禁止”を示唆する“×マーク”の画像である。この場合、所定画像G43Cは、好ましくは、前出の
図4で示す所定画像G43と同様、注意喚起度の高い色(例えば赤色)で描画される。これにより、所定画像G43Cにより運転者に高い注意喚起を効果的に促すことができる。また、所定画像G43Cは、前出の
図4で示す所定画像G43と同様、運転者の注意を効率的に引くように、点滅等されてもよい。
【0056】
このような
図8に示す注意喚起画像G40Cによっても、前出の
図4で示す注意喚起画像G40と同様の効果が奏される。
【0057】
次に、
図9に示すフローチャートに沿って、注意喚起物表示機能に係る制御装置10の動作例について説明する。
【0058】
図9は、制御装置10の注意喚起物表示機能に係る処理の一例を示すフローチャートである。
図10は、
図9に示すフローチャートの説明図であり、
図9に示すフローチャートに関連した表示像(虚像表示)VIの遷移態様を示す図である。
図10には、説明用の中心線L1(表示像の一部ではない)が併せて示される。
【0059】
ステップS900では、制御装置10は、運転支援ECU66からの情報に基づいて、運転支援ECU66による運転支援制御中であるか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS902に進み、それ以外の場合は、ステップS908に進む。
【0060】
ステップS902では、制御装置10は、周辺監視ECU62からの情報に基づいて、注意喚起物が検出されているか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS904に進み、それ以外の場合は、ステップS906に進む。
【0061】
ステップS904では、制御装置10は、注意喚起画像G40を含む表示画像を出力することで、
図10の表示像G1010を実現する。これにより、
図10の場合、運転者は、自車左側に注意喚起物が存在することを瞬時に把握できる。なお、
図10では、注意喚起画像G40を含む表示画像は、
図4に示した表示画像とは、運転支援画像G50が運転支援画像G500で置換された点が異なる。すなわち、
図4では、運転支援画像G50は、注意喚起画像G40の下側に配置されているのに対して、
図10では、運転支援画像G500は、注意喚起画像G40の左側に配置されている。このように、運転支援画像G50のような画像は、注意喚起画像G40の視認性を有意に阻害しない限り、任意の位置に表示されてもよい。ただし、注意喚起画像G40は、好ましくは、ステアリングホイール画像G41の中心位置が中心線L1上に位置するように描画及び出力される。
【0062】
ステップS906では、制御装置10は、運転支援制御の状態を表す制御情報画像G1001(第2画像の一例)を含む表示画像を出力することで、
図10の表示像G1000を実現する。制御情報画像G1001は、注意喚起画像G40とは異なり、先行車両に係る車両の外形を表す車両画像G1002を含む。また、制御情報画像G1001は、操舵制御状態を表す画像G1003と、追従制御状態を表す画像G1004とを含む。画像G1003は、
図10に示すように、ステアリングホイール8を模した画像と、車線を表す画像とを含んでよい。なお、画像G1003のうちの、ステアリングホイール8を模した画像には、手画像G42のような手画像は対応付けられることはない。ただし、ステアリングホイール8からの運転者の手放しが検出された場合には、ステアリングホイール8を把持するように促す手画像が表示されてもよい。制御情報画像G1001は、ステアリングホイール8を模した画像の中心位置(又は車両画像G1002の中心位置)が中心線L1上に位置するように描画及び出力される。
【0063】
ステップS908では、制御装置10は、周辺監視ECU62からの情報に基づいて、注意喚起物が検出されているか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合、ステップS910に進み、それ以外の場合は、ステップS912に進む。
【0064】
ステップS910では、制御装置10は、ステップS904と同様、注意喚起画像G40を含む表示画像を出力することで、
図10の表示像G1010を実現する。
【0065】
ステップS912では、制御装置10は、注意喚起画像G40及び制御情報画像G1001のいずれも含まない表示画像(図示せず)を出力する。この場合の表示画像は、例えば運転支援画像G50のみを含んでよい。この場合、運転支援画像G50のサイズ及び表示位置は、注意喚起画像G40を含む表示画像(ステップS904、ステップS910)に含まれる運転支援画像G50のサイズ及び表示位置と同じであってよいし、異なってもよい。
【0066】
図9及び
図10に示す例によれば、運転支援制御中に、自車側方における注意喚起物が検出された場合に(ステップS902の“YES”)、TFTパネルユニット3により出力される表示画像が、制御情報画像G1001を含む表示画像から、注意喚起画像G40を含む表示画像へと切り替えられる(
図10の矢印R10参照)。その後、自車側方における当該注意喚起物が検出されなくなると(ステップS902の“NO”)、TFTパネルユニット3により出力される表示画像が、注意喚起画像G40を含む表示画像から、制御情報画像G1001を含む表示画像へと切り替えられる(
図10の矢印R11参照)。このようにして、自車側方における注意喚起物の検出状況に応じて、TFTパネルユニット3により出力される表示画像を、制御情報画像G1001を含む表示画像と、注意喚起画像G40を含む表示画像との間で、切り替えることができる。これにより、運転支援制御中においても、自車側方の注意喚起物を表す情報を、注意喚起物が自車に対して左右方向のいずれの側に検出されたかを、運転者が一見して分かるような態様で、出力できる。
【0067】
また、
図10に示す例によれば、制御情報画像G1001を含む表示画像全体のサイズは、注意喚起画像G40を含む表示画像全体のサイズと同じであり、かつ、上述のように、制御情報画像G1001の中心位置(この場合、車両画像G1002の中心位置に対応。中心線L1参照)と注意喚起画像G40の中心位置(この場合、ステアリングホイール画像G41の中心位置に対応。中心線L1参照)とが一致する。これにより、TFTパネルユニット3により出力される表示画像を、制御情報画像G1001を含む表示画像と、注意喚起画像G40を含む表示画像との間で、切り替えることで生じうる不都合を低減できる。すなわち、TFTパネルユニット3により出力される表示画像を、制御情報画像G1001を含む表示画像と、注意喚起画像G40を含む表示画像との間で、切り替えるごとに、制御情報画像G1001の中心位置と注意喚起画像G40の中心位置とが変化すると、注意喚起画像G40を含む表示画像が出力されたときの、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42による運転位置示唆機能が、低下しやすくなる。
図10に示す例によれば、かかる不都合を効果的に低減できる。
なお、
図9に示す処理では、運転支援制御中でない場合も、ステップS910により注意喚起画像G40を含む表示画像が出力されるが、これに限られない。例えば、運転支援制御中でない場合、ステップS910及びステップS912は省略されてもよい。また、
図9に示す処理では、ステップS912が実行されるが、ステップS912は省略されてもよい。
【0068】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0069】
例えば、上述した実施例では、注意喚起物は、主に車両のような、比較的高い速度で走行できる移動体であるが、これに限られない。例えば、注意喚起物は、自車前方を横断しうる歩行者や動物等であってもよい。かかる注意喚起物は、画像センサ(例えば赤外線カメラ)等により検出されてもよい。
【0070】
また、上述した実施例において、制御装置10は、周辺監視ECU62の機能の一部又は全部を実現してもよいし、運転支援ECU66の機能の一部又は全部を実現してもよい。
【0071】
また、上述した実施例において、注意喚起画像G40を含む表示画像の出力は、運転者への注意喚起を高める観点から、音や振動の出力を伴ってもよい。この場合、振動は、シートやステアリングホイール8等に発生されてもよい。
【0072】
また、上述した実施例において、注意喚起画像G40のような注意喚起画像は、インストルメントパネル9のような、ステアリングホイール8の周辺に存在する他の部品を表す画像を含んでもよい。この場合、よりリアルに車両内の運転者の状態を再現でき、ステアリングホイール画像G41及び手画像G42による運転位置示唆機能を高めることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ヘッドアップディスプレイ
2 ケース
3 TFTパネルユニット
4 ミラー
5 ミラー
6 バックライトユニット
8 ステアリングホイール
9 インストルメントパネル
10 制御装置
60 周辺機器
62 周辺監視ECU
64 側方レーダセンサ
66 運転支援ECU