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  • 特許-研削装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/14 20060101AFI20230920BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20230920BHJP
   B24B 5/35 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B55/02 A
B24B5/35
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019200056
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070135
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩
(72)【発明者】
【氏名】村尾 拓哉
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132089(JP,A)
【文献】実開昭56-089455(JP,U)
【文献】特開平11-188570(JP,A)
【文献】特開昭56-009166(JP,A)
【文献】特開昭56-069076(JP,A)
【文献】特開2013-000807(JP,A)
【文献】特開2018-084491(JP,A)
【文献】特開2019-138464(JP,A)
【文献】特開2010-194641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/14
B24B 55/02
B24B 5/35
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を研削する砥石と、前記砥石を回転駆動する駆動機構と、前記工作物と前記砥石とを相対移動させる移動機構と、前記駆動機構及び前記移動機構を制御する制御部とを備え、研削点にクーラントノズルからクーラントを供給しながら前記工作物を研削する研削装置であって、
前記制御部は、前記研削点から発せられる熱を検出するセンサの検出値に基づいて前記クーラントの供給状態を検出し、
前記センサは、前記クーラントノズルから吐出される前記クーラントの下流側であって前記研削点よりも下方で前記クーラントを受ける受け部材に取り付けられ、
前記研削点から発せられる火花を受ける前記受け部材の表面とは反対側の裏面に前記センサが取り付けられている、
研削装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサの検出値に基づいて前記クーラントの供給量を制御する、
請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
前記センサは、前記受け部材を通過する熱流を検出する熱流センサである、
請求項1又は2に記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転駆動する砥石によって工作物を研削加工する研削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の研削装置は、モータにより回転駆動される工作物と、工作物の外周面を研削する砥石と、工作物の研削点付近にクーラント液を供給するクーラントノズルと、クーラントの温度を測定する温度センサと、研削点におけるクーラントまたは研削点を通過したクーラントの温度を計測する温度計測部としての熱電対と、熱電対で計測された温度に基づいてクーラントの供給量を調整する制御部と、を備えている。熱電対は、研削点の下部であってモータ本体のクーラントが当たる部分に取り付けられている。
【0004】
特許文献1に記載の研削装置では、熱電対で計測された温度が所定温度を超えている場合には、制御部がクーラントの供給量を増加させるようにクーラント供給ポンプを制御する。これにより、クーラントの供給量の適正化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-132089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の研削装置では、研削点から発せられる火花とクーラントの双方が熱電対に直接もたらされると、熱電対で計測される温度の変動が激しくなり、必ずしも適切にクーラントの供給量の適正化を図ることができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、クーラントの供給状態の検出結果の正確性を高めることが可能な研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するため、工作物を研削する砥石と、前記砥石を回転駆動する駆動機構と、前記工作物と前記砥石とを相対移動させる移動機構と、前記駆動機構及び前記移動機構を制御する制御部とを備え、研削点にクーラントノズルからクーラントを供給しながら前記工作物を研削する研削装置であって、前記制御部は、前記研削点から発せられる熱を検出するセンサの検出値に基づいて前記クーラントの供給状態を検出し、前記センサは、前記クーラントノズルから吐出される前記クーラントの下流側であって前記研削点よりも下方で前記クーラントを受ける受け部材に取り付けられ、前記研削点から発せられる火花を受ける前記受け部材の表面とは反対側の裏面に前記センサが取り付けられている、研削装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る研削装置によれば、クーラントの供給状態の検出結果の正確性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る研削装置の全体構成を示す説明図である。
図2図2(a)は、砥石の回転軸方向に沿って見た場合の研削装置の構成を示す模式図であり、図2(b)は、砥石と工作物との並び方向であって、砥石側から見た場合の研削装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、砥石、工作物、及び熱流センサの構成を示す斜視図である。
図4図4(a)は、熱流センサに熱流が貫通する状態を示した説明図であり、図4(b)は、熱流センサの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る研削装置100の全体構成を示す説明図である。
【0013】
図1に示すように、研削装置100は、土台となるベッド1と、軸状の工作物80を研削する円盤状の砥石2と、砥石2を回転駆動する駆動機構としての砥石用電動モータ3と、工作物80に対して砥石2を相対移動させる移動力を発生するX軸モータ41及びY軸モータ51と、砥石用電動モータ3、X軸モータ41、及びY軸モータ51を制御する制御部6と、を備えている。
【0014】
ベッド1には、X軸方向に延びるX軸案内レール10a,10bが設けられ、X軸案内レール10a,10b上にはX軸テーブル40が設置されている。X軸テーブル40は、ベッド1上に設けられたX軸ボールねじ42によってX軸方向に移動され、X軸案内レール10a,10b上を摺動する。X軸ボールねじ42は、ベッド1に設置されたX軸モータ41によって駆動される。
【0015】
砥石2は、円盤状に形成されており、砥石用電動モータ3の出力軸に取り付けられている。砥石用電動モータ3は、X軸テーブル40上に設置されたY軸テーブル20に取り付けられている。
【0016】
Y軸テーブル20は、X軸テーブル40においてY軸方向に延びたY軸案内レール40a,40b上に設置されている。また、Y軸テーブル20は、X軸テーブル40に設けられたY軸ボールねじ52によってY軸方向に移動され、Y軸案内レール40a,40b上を摺動する。Y軸ボールねじ52は、X軸テーブル40に配置されたY軸モータ51によって駆動される。なお、X軸モータ41、Y軸モータ51、X軸ボールねじ42、及びY軸ボールねじ52は、工作物80と砥石2とを相対移動させる移動機構を構成する。
【0017】
工作物80は、その軸方向の両端がベッド1上に設置された主軸台11,12に支持されており、主軸台11,12に内蔵されたモータによって回転駆動される。
【0018】
図2(a)は、砥石2の回転軸O方向(図1におけるX軸方向)に沿って見た場合の研削装置100の構成を示す模式図であり、図2(b)は、砥石2と工作物80との並び方向(図1におけるY軸方向)であって、砥石2側から見た場合の研削装置100の構成を示す模式図である。図3は、砥石2、工作物80、及び熱流センサ7の構成を示す斜視図である。図2(a)及び図3では、砥石2及び工作物80の回転方向を矢印で示している。以下の説明において、「上」「下」とは、鉛直方向の上下をいうものとする。
【0019】
図2(a)及び図3に示すように、研削装置100は、研削点Pにクーラントノズル81からクーラントを供給しながら工作物80を研削する。クーラントノズル81は、研削点Pの近傍に配置され、研削点Pの上部に位置している。また、クーラントノズル81は、Y軸テーブル20に設置された連結パイプ82に連結されている。連結パイプ82には、クーラントの流用を計測する流量計9が配置されおり、この流量計9の計測値に基づいてクーラントの供給状態を監視することが可能である。また、流量計9の上流側には、クーラントを供給するクーラントポンプ90が配置されている。クーラントポンプ90は、制御部6と電気的に接続されており、制御部6によってクーラントの供給量が制御されている。
【0020】
工作物80は、その外周面80aに当接する第1及び第2のシュー13,14によって回転可能に支持されている。第1のシュー13は、その先端が研削点Pよりも下方に位置し、工作物80の外周面80aに当接している。第2のシュー14は、その先端が工作物80の回転軸Oに対して研削点Pと対称となる位置の工作物80の外周面80aに当接している。ここで、研削点Pとは、工作物80の外周面のうち砥石2によって研削される点をいう。
【0021】
また、研削装置100は、研削点Pから発生される熱流を検出する熱流センサ7をさらに備えている。本実施の形態では、研削装置100をXY平面に垂直な方向に沿って見た場合に、熱流センサ7が、クーラントノズル81から吐出されるクーラントの下流側であって研削点Pよりも下部に配置されている。熱流センサ7は、制御部6と電気的に接続されており、制御部6は熱流センサ7の検出値を取得可能である。
【0022】
熱流センサ7は、フレキシブル基板で形成された薄型平板状であり、その測定面7aが、研削点Pから発せられる火花を受ける表(おもて)面70aを有する受け部材としてのプレート70の裏面70bに取り付けられている。プレート70は、クーラントノズル81から吐出されるクーラントの下流側であって研削点Pよりも下方でクーラントを受ける位置に取り付けられている。熱流センサ7は、プレート70を通過する熱流を検出する。
【0023】
プレート70は、例えば金属製あるいはセラミック製の部材であり、研削点Pからの火花に耐えうる耐熱性の高いものであり、熱流センサ7の検出精度を考慮して熱伝導性が高いものが好ましい。また、プレート70は、Y軸方向に対して傾斜して配置されており、研削点Pからの火花を受けやすいように設置されている。これにより、研削点Pで発せられる熱流をより正確に検出することができ、研削点Pでの異常を速やかに検知できる。
【0024】
本実施の形態では、熱流センサ7が、プレート70の裏面70bに取り付けられているので、直接、火花やクーラントが熱流センサ7にもたらされることがない。これにより、火花やクーラントが断続的に熱流センサ7に飛び散ることに起因したセンサの検出値の変動が抑制される。また、熱流センサ7と研削点Pとの間にプレート70が設けられているので、研削点Pから発せられる火花が直接熱流センサ7に飛び散ることがなく、熱流センサ7が損傷することもない。
【0025】
図2(b)に示すように、X軸方向に見た場合に、砥石2の一部と熱流センサ7の一部とが重なっていない。なお、砥石2の回転軸O方向における熱流センサ7の位置はこれに限られるものではなく、例えばX軸方向に見た場合に、熱流センサ7と砥石2とが重なる位置であってもよい。プレート70の回転軸O方向における長さは、砥石2の回転軸O方向の長さよりも大きい。これにより、プレート70は、砥石2の外周面2aと工作物80の外周面80aとの接点である研削点から発せられる火花を受けやすくなる。
【0026】
制御部6は、研削点Pから発せられる熱流を検出するセンサとしての熱流センサ7の検出値に基づいてクーラントの供給状態を検知する。
【0027】
より詳細には、制御部6は、熱流センサ7で検出された熱量が予め定められた閾値を超えた場合には、クーラントポンプ90の供給量を増やすように制御する。例えばクーラントノズル81が所定の位置からずれている場合や、クーラントノズル81が破損してクーラントの供給量が適切でない場合には、冷却能力が低下する結果、過度に温度上昇した火花やクーラントが研削点Pからプレート70に放たれる。そうすると、プレート70を通過する熱流が増大し、熱流センサ7が検出する検出値も大きくなるため、クーラントの供給状態が異常であることを検知することが可能である。なお、上記した閾値は予め行う試験によって得られることができる。また、制御部6は、熱流センサ7で検出された熱量に基づいて、研削焼けの判定をすることも可能である。
【0028】
図4(a)及び(b)は、熱流センサ7の原理を説明するための説明図であり、図4(a)は、熱流センサ7に熱流が貫通する状態を示し、図4(b)は、熱流センサ7の構成例を示している。
【0029】
図4(a)に示すように、熱流センサ7の厚みをd、測定面7aの温度をT、測定面7aとは反対側の裏面7bの温度をT、熱流センサ7の熱伝導率をλとすると、熱流センサ7を通過する熱流Qは、以下の式で求められる。
Q=(T-T)λ/d
つまり、熱流センサ7は、熱流センサ7の測定面7aとその裏面7bとの間の温度差に起因して発生する電圧により、熱流センサ7を通過する熱流Qを検出する。
【0030】
図4(b)に示すように、熱流センサ7では、複数の熱電対700が測定点Aと測定点Bとに多点で直列して接続され、これらの熱電対のうち一端にある熱電対と他端にある熱電対のそれぞれ接点が計測器端子900に接続される。複数の熱電対700が直列して接続されていることにより、測定点Aと測定点Bとの間の温度差に起因した出力電圧が増幅される。これにより、熱流センサ7の感度が増大し、精度の高い検出が可能となる。
【0031】
以上説明した本実施の形態によれば、熱流センサ7がプレート70の裏面70bに取り付けられているので、安定的に熱流を検出することができる。これにより、例えばクーラントノズル81が所定の位置からずれている場合や、クーラントノズル81が破損してクーラントの供給量が適切でない場合には、冷却能力が低下する結果、研削点Pから発せられる熱流が過度に大きくなり、熱流センサ7が検出する熱流も大きくなる。これにより、クーラントの供給状態を正確に検知することが可能である。
【0032】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0033】
上記の実施の形態では、制御部6が、熱流センサ7の検出した熱流が予め定めた閾値を超えた場合にクーラントの供給量を調整していたが、これに限定されず、制御部6がクーラントの供給位置が不適切な位置にあることを知らせる報知手段を有していてもよい。
【0034】
また、上記の実施の形態では、熱流センサ7がプレート70に取り付けられていたが、これに限定されず、例えばクーラントを貯留する貯留タンクに取り付けられてもよい。この場合には、熱流センサ7は貯留タンクの裏面あるいは側面に取り付けられる。
【符号の説明】
【0035】
2…砥石 3…砥石用電動モータ
6…制御部 7…熱流センサ
41…X軸モータ 51…Y軸モータ
70…プレート(受け部材) 70a…表面
70b…裏面 80…工作物
81…クーラントノズル 100…研削装置
図1
図2
図3
図4