(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エアジェット織機の制御装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2019200622
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-02-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-306739(JP,A)
【文献】特開平10-251939(JP,A)
【文献】特開平10-008351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁式バルブの開閉に応じて、圧縮エアをノズルから噴射し、緯糸の飛走を制御するエアジェット織機の制御装置であって、
前記電磁式バルブの開状態の立ち上がり時に、立ち上がり特性を決定する過励磁電圧を前記電磁式バルブに供給し、前記立ち上がり時の後に、前記電磁式バルブの開状態を保持する保持電圧を前記電磁式バルブに供給する、制御部と、
前記電磁式バルブを通過後の前記圧縮エアの圧力を検知する圧力検知器と、
を備え、
前記圧力検知器は、前記過励磁電圧の開始時から、前記電磁式バルブを通過後の前記圧縮エアの圧力がピークに達するまでの経過時間を測定し、前記経過時間により前記立ち上がり特性を測定し、
前記制御部は、前記
経過時間に基づいて前記立ち上がり特性が所望の状態となるように前記過励磁電圧を調整する
エアジェット織機の制御装置。
【請求項2】
前記圧力検知器は、あらかじめ定められた圧力にオン状態になる圧力スイッチで構成さ
れる
請求項1に記載のエアジェット織機の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記過励磁電圧と前記保持電圧との調整を、前記電磁式バルブに供給する電流の値に応じて実現する
請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のエアジェット織機の制御装置。
【請求項4】
前記電磁式バルブは、前記圧縮エアの噴射により緯糸を緯糸飛走経路に緯入れするメインノズルに、前記圧縮エアを供給するメインバルブである
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアジェット織機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機は、給糸部の緯糸を緯糸測長貯留部において貯留し、貯留された緯糸をメインノズルにより解除して緯入れを開始し、緯入れされた緯糸をサブノズルにより織幅内に搬送し、緯入れを終了するように構成されている。この種のエアジェット織機は、圧縮エアをメインノズルとサブノズルから噴射して緯糸の飛走を制御しており、適切なエア噴射が重要である。したがって、圧縮エアをメインノズルに供給するメインバルブを適切に駆動する必要がある。
【0003】
緯入れ用メインノズルの噴射圧立ち上がり特性を適切に制御するため、立ち上がり時には定格以上の過励磁電圧によりメインバルブを駆動し、その後に一定圧力を保持するよう定格の保持電圧によりメインバルブを駆動する。このようにメインバルブを使用するエアジェット織機は、特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緯入れ用メインノズルの高速応答性、即ち噴射圧立ち上がり特性は緯糸の緯入れ状態に各種の影響を与える。フィラント系の糸や強撚系の糸において、短い立ち上がり時間の噴射圧で緯入れしようとすると経糸に引っ掛かり易くなるため、メインバルブの立ち上がりを緩やかにすることで、緯糸先端姿勢が安定し、緯ミスが発生しにくくなる場合がある。
【0006】
一方、過励磁電圧を調整し、立上り波形が緩やかになるよう調整すると、メインバルブの個体差により、立ち上がり特性のばらつきが大きくなることがある。従って、過励磁電圧により立上り波形が緩やかになるよう調整した場合でも、立ち上がり特性のばらつきを抑えることが望まれている。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、バルブを過励磁電圧により駆動し、ノズルの噴射圧立ち上がり特性を適正に調整することが可能なエアジェット織機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明におけるエアジェット織機の制御装置は、電磁式バルブの開閉に応じて、圧縮エアをノズルから噴射し、緯糸の飛走を制御するエアジェット織機の制御装置であって、電磁式バルブの開状態の立ち上がり時に、立ち上がり特性を決定する過励磁電圧を電磁式バルブに供給し、立ち上がり時の後に、電磁式バルブの開状態を保持する保持電圧を電磁式バルブに供給する、制御部と、電磁式バルブを通過後の圧縮エアの圧力を検知する圧力検知器と、を備え、圧力検知器は、過励磁電圧の開始時から、電磁式バルブを通過後の圧縮エアの圧力がピークに達するまでの経過時間を測定し、経過時間により立ち上がり特性を測定し、制御部は、経過時間に基づいて立ち上がり特性が所望の状態となるように過励磁電圧を調整する。
【0009】
圧力検知器は、あらかじめ定められた圧力にオン状態になる圧力スイッチで構成される。
【0010】
制御部は、過励磁電圧と保持電圧との調整を、電磁式バルブに供給する電流の値に応じて実現する。
【0011】
電磁式バルブは、圧縮エアの噴射により緯糸を緯糸飛走経路に緯入れするメインノズルに、圧縮エアを供給するメインバルブである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るエアジェット織機の制御装置によれば、バルブを過励磁電圧により駆動し、ノズルの噴射圧立ち上がり特性を適正に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのノーマル状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の特性を示す特性図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の特性を示す特性図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の他の特性を示す特性図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の調整中の特性を示す特性図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の調整後の特性を示す特性図である。
【
図14】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図15】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図16】本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【
図17】本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の調整後の特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明によるエアジェット織機の制御装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0015】
実施の形態1.
はじめに、本発明の実施の形態1におけるエアジェット織機の制御装置を含む緯入装置100の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の構成を示すブロック図である。なお、本明細書では、緯糸を経糸開口内に緯入れし、緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。また、圧縮エアの流れる方向に対し、源流側を上流、源流と反対側を下流とする。
【0016】
[緯入装置100の構成]
図1に示される緯入装置100は、制御部110、給糸部120、緯糸測長貯留部130、緯入れノズル140、筬150、サブノズル160、及び飛走センサ170、を備える。ここで、制御部110は、エアジェット織機の制御装置を構成している。制御部110には、CPU111と、ファンクションパネル112とが設けられている。CPU111は、緯入装置100における各種の制御を実行する。ファンクションパネル112は、表示機能及び入力機能を有し、CPU111から指示された内容に基づいて各種情報を表示し、入力された情報をCPU111に伝達する。
【0017】
給糸部120は、緯糸測長貯留部130の上流側に設けられ、緯糸Yを保持している。給糸部120の緯糸Yは、緯糸測長貯留部130により引き出される。
【0018】
緯糸測長貯留部130には、貯留ドラム131と、緯糸係止ピン132と、バルーンセンサ133とが設けられている。貯留ドラム131は、給糸部120の緯糸Yを引き出し、巻き付けられた状態で貯留する。緯糸係止ピン132及び緯糸係止ピン132は、貯留ドラム131の周囲に配設されている。緯糸係止ピン132は、緯糸係止ピン132に対して緯糸Yの解除方向側に並べて配置されている。
【0019】
緯糸係止ピン132は、制御部110に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム131に貯留された緯糸Yを解除する。緯糸係止ピン132による緯糸Yの解除が行われるタイミングは、緯入れ開始タイミングである。
【0020】
緯糸係止ピン132 は、緯入れ中に貯留ドラム131から解除される緯糸Yを検出し、制御部110に緯糸解除信号を発信する。制御部110は、予め設定された回数(本実施形態では3回)の緯糸解除信号を受信すると、緯糸係止ピン132を作動する。緯糸係止ピン132は、貯留ドラム131から解除される緯糸Yを係止し、緯入れを終了させる。
【0021】
緯糸係止ピン132が緯糸Yを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸Yを貯留ドラム131に貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。本実施形態では、貯留ドラム131に3巻された緯糸Yの長さが織幅TLに相当するため、制御部110は、緯糸係止ピン132の緯糸解除信号を3回受信すると、緯糸Yを係止する動作信号が緯糸係止ピン132に発信されるように設定されている。緯糸係止ピン132の緯糸検出信号は、貯留ドラム131からの緯糸Yの解除信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯糸解除タイミングとして認識される。
【0022】
緯入れノズル140は、タンデムノズル141と、メインノズル142とを有する。タンデムノズル141は、圧縮エアの噴射により、貯留ドラム131の緯糸Yを引き出す。メインノズル142は、圧縮エアの噴射により、緯糸Yを筬150の緯糸飛走経路150aに緯入れする。
【0023】
タンデムノズル141の上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動するブレーキ147が設けられている。
【0024】
メインノズル142は、配管146aを介してメインバルブ146に接続されている。メインバルブ146は、配管144aを介してメインタンク144に接続されている。メインバルブ146の出口側、またはメインバルブ146の出口側の配管146aには、圧力検知器148が取り付けられている。圧力検知器148は、メインバルブ146を通過後の圧縮エアの圧力を検知し、検知結果を制御部110に通知する。なお、圧力検知器148は、あらかじめ定められた圧力にオン状態になる圧力スイッチを使用することができる。この圧力スイッチにより、過励磁電圧の開始時から、メインバルブ146を通過後の圧縮エアの圧力がピークに達するまでの経過時間を測定し、圧力の立ち上がり特性を測定することができる。
【0025】
タンデムノズル141は、配管145aを介してタンデムバルブ145に接続されている。タンデムバルブ145は、配管144bを介してメインバルブ146と共通のメインタンク144に接続されている。メインタンク144は、メインレギュレータ143を介して、織布工場に設置された共通のエアコンプレッサから圧縮エアが供給される。メインタンク144では、エアコンプレッサから供給され、メインレギュレータ143により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。
【0026】
筬150は、緯入れノズル140の下流側に配設され、複数の筬羽から構成され、緯糸飛走経路150aを備える。緯糸飛走経路150aに沿って、サブノズル160を構成する複数のノズルと、飛走センサ170が配置されている。
【0027】
サブノズル160は、筬150の緯糸飛走経路150aに沿って配設され、複数のノズルにより構成されている。サブノズル160は、一例として6群に分けられ、各群は、4本のノズルにより構成されている。サブノズル160の各群に対応して6個のサブバルブ163が配設され、サブノズル160は、それぞれ配管164を介して各群のサブバルブ163に接続されている。各群のサブバルブ163は、共通のサブタンク162に接続されている。
【0028】
サブタンク162は、配管161aによりサブレギュレータ161に接続されている。また、サブレギュレータ161は、配管143cにより、メインレギュレータ143とメインタンク144とを接続している配管143bに接続されている。このため、サブタンク162は、メインレギュレータ143経由で、サブレギュレータ161により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。
【0029】
飛走センサ170は、緯糸飛走経路150aの下流側であって、織幅TLよりも下流側に配置され、光学的に到達した緯糸Yを検出する。飛走センサ170は、緯糸Yを検出して生成した緯糸検出信号を制御部110に伝達する。飛走センサ170による緯糸検出信号は、緯糸Yの到達信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき緯入れ終了タイミングIEとして認識される。
【0030】
メインノズル142、筬150、及びサブノズル160は、図示されないスレイ上に配設され、エアジェット織機の前後方向に往復揺動される。また、給糸部120、緯糸測長貯留部130、タンデムノズル141、及びブレーキ147は、図示されないエアジェット織機のフレーム又は床面に取り付けられたブラケットに固定されている。
【0031】
以上の構成において、メインバルブ146、タンデムバルブ145、サブバルブ163、及びブレーキ147は、制御部110により、作動タイミングと作動期間が制御される。なお、メインバルブ146、タンデムバルブ145、サブバルブ163は、電磁式バルブで構成されている。
【0032】
タンデムバルブ145及びメインバルブ146は、緯糸係止ピン132が作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御部110から作動指令信号が与えられ、メインノズル142及びタンデムノズル141から圧縮エアが噴射される。
【0033】
ブレーキ147は、緯糸係止ピン132が作動して貯留ドラム131の緯糸Yを係止する緯入れ終了タイミングI Eよりも早い時期に制御部110から作動指令信号が出力される。ブレーキ147は、高速で飛走する緯糸Yを制動して緯糸Yの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングIEにおける緯糸Yの衝撃を緩和する。
【0034】
以上の説明において、緯入装置100が1組のみ示されているが、2組以上配設された多色緯入装置として構成してもよい。また、多色緯入装置の概念には、同色の緯糸Yの緯入装置100を複数組設置した場合も含まれる。
【0035】
[メインバルブの駆動]
メインバルブ146の開閉の駆動について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のノーマル状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の特性を示す特性図である。
【0036】
図2の(a)は、織機回転角度におけるメインバルブ146の出口側に設けられた圧力検知器148で検知されたノーマル状態での圧力の特性を示している。
図2(b)は、メインバルブ146をノーマル状態で駆動する際に、メインバルブ146に供給する電圧の特性を示している。
【0037】
図2の(a)のメインバルブ146の開状態の立ち上がりの領域では、メインノズル142の噴射圧立ち上がり特性を適切に実現するよう制御するため、
図2の(b)の駆動電圧として、定格電圧以上の過励磁電圧によりメインバルブ146を駆動する。すなわち、メインバルブ146の開状態の立ち上がり時に、過励磁電圧により立ち上がり特性が決定される。
【0038】
その後、
図2の(a)の立ち上がりの領域の後の平坦な領域では、メインノズル142の噴射圧を一定に保つよう制御するため、
図2の(b)の駆動電圧として、定格の保持電圧によりメインバルブ146を開状態に保持するよう駆動する。
【0039】
図2の(c)は、
図2の(b)に示す過励磁電圧と保持電圧とを、制御部110が生成するパルス電流に応じて実現する様子を示している。このパルス電流は、パルス幅変調、パルス数変調、またはパルス密度変調等により実現される。
図2の(c)では、過励磁電圧と保持電圧との調整を、メインバルブ146に供給するパルス密度変調による電流の値に応じて実現する様子を例示している。
【0040】
次に、メインバルブ146の駆動について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のスロー状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の特性を示す特性図である。
【0041】
図3の(a)は、織機回転角度におけるメインバルブ146の出口側に設けられた圧力検知器148で検知されたスロー状態での圧力の特性を示している。
図3(b)は、メインバルブ146をスロー状態で駆動する際に、メインバルブ146に供給する電圧の特性を示している。ここで、スロー状態とは、
図2で説明したノーマル状態と比較して、立ち上がりが緩やかになる状態を意味している。
【0042】
図3の(a)の立ち上がりの領域では、メインノズル142の噴射圧立ち上がり特性をスロー状態として適切に制御するため、
図3の(b)の駆動電圧として、定格電圧以上の過励磁電圧によりメインバルブ146を駆動する。なお、
図3(b)に示すスロー状態の過励磁電圧は、
図2(b)に示すノーマル状態の過励磁電圧より、低い電圧になっている。
【0043】
その後、
図3の(a)の立ち上がりの領域の後の平坦な領域では、メインノズル142の噴射圧を一定に保つよう制御するため、
図3の(b)の駆動電圧として、定格の保持電圧によりメインバルブ146を駆動する。
【0044】
図3の(c)は、
図3の(b)に示す過励磁電圧と保持電圧とを、制御部110が生成するパルス電流に応じて実現する様子を示している。
図3の(c)では、過励磁電圧と保持電圧との調整を、メインバルブ146に供給するパルス密度変調による電流の値に応じて実現する様子を例示している。
【0045】
次に、メインバルブ146の駆動の他の状態について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のスロー状態の駆動電圧と圧縮エアの圧力の他の特性を示す特性図である。
【0046】
図4の(a)の立ち上がりの領域において、本来の立ち上がり特性(1)だけでなく、メインバルブ146の個体差により、本来より早く立ち上がる立ち上がり特性(2)と、本来より遅く立ち上がる立ち上がり特性(3)とが発生することがある。これら
図4の(a)の(2)及び(3)に示す、ばらつきを有する立ち上がり特性について、制御部110は、
図4の(a)の(1)に示す所望の状態になるように、圧力検知器148の検知結果に基づいて後述するように過励磁電圧を調整する。
【0047】
[メインバルブの調整(1)]
メインバルブ146の駆動状態の調整について、
図5~
図7を参照して説明する。
図5~
図7は、本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。この
図5は、メインバルブ146のノーマル状態の立ち上がり特性の調整を行う際の、ファンクションパネル112に表示される調整モード画面112aを示している。
【0048】
図5は、カラー1とカラー2の2つのメインバルブ146について、立ち上がり特性:ノーマル状態の調整を行う状態を示している。ここで、立ち上がり時間の初期値は、3.0と3.0、立ち上がり時間の目標値は、3.0と3.0、である。
【0049】
図5の調整モード画面112aにおいて、作業者が(a)の調整開始ボタンをクリックすると、ファンクションパネル112は作業者の操作を制御部110に通知する。これにより、制御部110は、ノーマルモードの調整を開始し、
図6のような調整モード画面112bを、ファンクションパネル112に表示する。この
図6において、(b1)は調整中であることを示し、(b2)は測定値を示している。この場合、立ち上がり時間の測定値が目標値に一致したことにより、調整を完了する。
【0050】
制御部110は、メインバルブ146のノーマル状態の調整が完了すると、
図7のような調整モード画面112cをファンクションパネル112に表示し、(c1)に調整終了であることを示し、(c2)に調整が完了した設定値を示している。
【0051】
[メインバルブの調整(2)]
メインバルブ146の駆動状態の調整について、
図8以降を参照して説明する。
図8~
図9は、本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
【0052】
図8は、メインバルブ146のスロー状態の立ち上がり特性の調整を行う際の、ファンクションパネル112に表示される調整モード画面112aを示している。
図8は、カラー1とカラー2の2つのメインバルブ146について、立ち上がり特性:スロー状態の調整を行う状態を示している。ここで、立ち上がり時間の初期値は、6.0と6.0、立ち上がり時間の目標値は、6.0と6.0、である。
【0053】
図8の調整モード画面112aにおいて、作業者が(a)の調整開始ボタンをクリックすると、ファンクションパネル112は作業者の操作を制御部110に通知する。これにより、制御部110は、スローモードの調整を開始し、
図9のような調整モード画面112bを、ファンクションパネル112に表示する。
【0054】
この
図9の調整モード画面112bにおいて、(b1)は調整中であることを示し、(b2)は測定値を示している。この場合、立ち上がり時間は、カラー1の目標値6.0、カラー2の目標値6.0に対し、カラー1の測定値6.0、カラー2の測定値8.0を示している。
【0055】
図9の調整モード画面112bに示される測定値に対応する特性図を
図10に示す。
図10は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のスロー状態の調整中の特性を示す特性図である。
図10の(a1)は、測定値が目標値と一致した、
図9のカラー1のスロー状態の圧力の特性を示している。一方、
図10の(a2)は、測定値が目標値と一致していない、
図9のカラー2のスロー状態の圧力の特性を示している。
図10の(a2)では、
図10の(a1)と比較して、立ち上がり特性に遅れが生じていることが分かる。
【0056】
カラー2の立ち上がりの遅れについて、制御部110は、立ち上がり特性が所望の状態になるように、圧力検知器148の検知結果に基づいて過励磁電圧を調整する。
具体的には、制御部110は、圧力検知器148の検知結果に基づいて過励磁電圧にフィードバックを掛けて調整を繰り返し、カラー2の立ち上がりの遅れについて、立ち上がり特性が所望の状態になるようにする。
【0057】
図11の調整モード画面112cにおいて、(c1)はカラー2の過励磁係数が0.5から0.7に上昇しており、制御部110が過励磁電圧を上昇させたことを意味している。この結果、
図11の(c2)に示すように、立ち上がり時間は、カラー1の目標値6.0、カラー2の目標値6.0に対し、カラー1の測定値6.0、カラー2の測定値6.0を実現している。
【0058】
以上のように立ち上がり時間の測定値が目標値に一致したことにより、制御部110は調整を完了する。制御部110は、メインバルブ146のスロー状態の調整が完了すると、
図12のような調整モード画面112dをファンクションパネル112に表示し、(d1)に調整終了であることを示し、(d2)に調整が完了した設定値を示している。
【0059】
メインバルブ146の調整後の状態について、
図13を参照して説明する。
図13は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のスロー状態の調整後の特性を示す特性図である。
図13の(a)の立ち上がりの領域において、調整前は破線で示す立ち上がり特性であり遅れを生じていたが、調整後は実線で示す本来の立ち上がり特性が実現されている。
【0060】
この
図13(a)の立ち上がり特性を実現するため、
図11及び
図12に示す過励磁係数が補正され、
図13(b)の過励磁電圧が破線で示す調整前よりも実線で示す調整後は高い電圧に設定されている。すなわち、制御部110は、
図13の(a)の実線に示す所望の立ち上がり状態になるように、圧力検知器148の検知結果に基づいて、カラー2の過励磁電圧を調整している。
【0061】
図13(b)の過励磁電圧について、
図13(c)に示すように、制御部110が生成するパルス電流に応じて実現することができる。この場合、過励磁電圧を高い電圧に調整しているため、
図13(c)のパルス電流のパルス幅またはパルス密度は、
図3(c)の適正状態のパルス電流と比較して、高い値を実現するように調整されている。この結果、メインノズル142の噴射圧立ち上がり特性を適正に調整することができる。
【0062】
[メインバルブの調整(3)]
メインバルブ146の駆動状態の調整について、
図14~
図17を参照して説明する。
図14~
図16は、本発明の実施の形態1における調整モード画面を説明する説明図である。
図18は、本発明の実施の形態1におけるメインバルブのスロー状態の調整後の特性を示す特性図である。
【0063】
この
図14の調整モード画面112aにおいて、(a1)は調整中であることを示し、(a2)は測定値を示している。この場合、立ち上がり時間は、カラー1の目標値6.0、カラー2の目標値6.0に対し、カラー1の測定値6.0、カラー2の測定値5.0を示している。このカラー2について、目標値6.0に対して測定値5.0は、立ち上がり特性が目標より進んでいることが分かる。
【0064】
カラー2の立ち上がりの進みについて、制御部110は、立ち上がり特性が所望の状態になるように、圧力検知器148の検知結果に基づいて過励磁電圧を調整する。具体的には、制御部110は、圧力検知器148の検知結果に基づいて過励磁電圧にフィードバックを掛けて調整を繰り返し、カラー2の立ち上がりの進みについて、立ち上がり特性が所望の状態になるようにする。
【0065】
図15の調整モード画面112bにおいて、(b1)はカラー2の過励磁係数が0.5から0.4に低下しており、制御部110が過励磁電圧を低下させたことを意味している。この結果、
図11の(b2)に示すように、立ち上がり時間は、カラー1の目標値6.0、カラー2の目標値6.0に対し、カラー1の測定値6.0、カラー2の測定値6.0を実現している。
【0066】
以上のように立ち上がり時間の測定値が目標値に一致したことにより、制御部110は調整を完了する。制御部110は、メインバルブ146のスロー状態の調整が完了すると、
図16のような調整モード画面112cをファンクションパネル112に表示し、(c1)に調整終了であることを示し、(c2)に調整が完了した設定値を示している。
【0067】
メインバルブ146の調整後の状態について、
図17を参照して説明する。
図17、本発明の実施の形態1におけるメインバルブ146のスロー状態の調整後の特性を示す特性図である。
図17の(a)の立ち上がりの領域において、調整前は破線で示す立ち上がり特性であり進みを生じていたが、調整後は実線で示す本来の立ち上がり特性が実現されている。
【0068】
この
図17(a)の立ち上がり特性を実現するため、
図15及び
図16に示す過励磁係数が補正され、
図17(b)の過励磁電圧が破線で示す調整前よりも実線で示す調整後は低い電圧に設定されている。すなわち、制御部110は、
図17の(a)の実線に示す所望の立ち上がり状態になるように、圧力検知器148の検知結果に基づいて、カラー2の過励磁電圧を調整している。
【0069】
図17(b)の過励磁電圧について、
図17(c)に示すように、制御部110が生成するパルス電流に応じて実現することができる。この場合、過励磁電圧を低い電圧に調整しているため、
図17(c)のパルス電流のパルス幅またはパルス密度は、
図3(c)の適正状態のパルス電流と比較して、低い値を実現するように調整されている。この結果、メインノズル142の噴射圧立ち上がり特性を適正に調整することができる。
【0070】
[その他の実施の形態]
本発明の実施の形態1における変形例を以下に説明する。以上の説明では、メインノズル142の噴射圧の立ち上がり特性を調整するため、メインバルブ146の過励磁電圧を調整するようにしていた。これに対し、メインバルブ146だけでなく、タンデムバルブ145に対して圧力検知器を設け、以上の実施の形態1を適用することも可能であり、この場合には、タンデムノズル141の噴射圧立ち上がり特性を適正に調整することができる。
【0071】
また、以上の具体例では、カラー1とカラー2における調整を説明してきたが、単色の場合にも良好な結果が得られる。また、複数のエアジェット織機の間でも、メインノズル142の噴射圧の立ち上がり特性が揃うことで、生産物の品質を均一に保つことが可能になる。
【符号の説明】
【0072】
100 緯入装置、110 制御部、111 CPU、112 ファンクションパネル、120 給糸部、130 緯糸測長貯留部、131 貯留ドラム、132 緯糸係止ピン、133 バルーンセンサ、140 緯入れノズル、141 タンデムノズル、142 メインノズル、143 メインレギュレータ、143a~143c 配管、144 メインタンク、144a~144c 配管、145 タンデムバルブ、145a 配管、146 メインバルブ(電磁式バルブ)、146a 配管、147 ブレーキ、148 圧力検知器、150 筬、150a 緯糸飛走経路、160 サブノズル、161 サブレギュレータ、161a 配管、162 サブタンク、163 サブバルブ、164 配管、170 飛走センサ、TL 織幅、Y 緯糸。