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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ダストカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20230920BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20230920BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B62D1/16
F16J3/04 B
F16J15/52 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209840
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079862
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/068277(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/076186(WO,A1)
【文献】特開2019-006268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0054231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16 - 1/20
F16J 3/00 - 3/06,
15/16 -15/32,15/324-15/3296,15/46 -15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの筒状部材を貫通するステアリングシャフトの外周面に取り付けられるブッシュと、
前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、
前記ブッシュの車室内側端よりも車室内側に位置する筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブの内周面は、前記ブッシュの内周面よりも外周側に位置
前記スリーブには、前記ステアリングシャフトの軸方向に沿って延びるスリットが設けられる、
ダストカバー。
【請求項2】
前記スリーブは、前記ブッシュの車室内側端から車室内側に向けて突出する、
請求項1に記載のダストカバー。
【請求項3】
前記ブッシュは、前記ベローズの内周縁部が嵌まる円筒状の基部と、前記基部の車室外側の端部から径方向外側に突出する外側フランジと、前記基部の車室内側の端部から径方向外側に突出する内側フランジと、を備え、
前記スリーブは、前記内側フランジから車室内側に突出する、
請求項2に記載のダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間に配置されるダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通部との間の隙間にダストカバーが設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたダストカバーは、ステアリングシャフトに取り付けられる筒状の本体部と、本体部に加硫接着されるシールリップと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-6268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シールリップを設けることなくブッシュ内への防塵性を保つことが可能なダストカバーが求められることがある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、シールリップを設けることなくブッシュ内への防塵性を保つことが可能なダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のダストカバーは、ダッシュパネルの筒状部材を貫通するステアリングシャフトの外周面に取り付けられるブッシュと、前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、前記ブッシュの車室内側端よりも車室内側に位置する筒状のスリーブと、を備え、前記スリーブの内周面は、前記ブッシュの内周面よりも外周側に位置する。
【0007】
ブッシュの車室内側には、筒状のスリーブが設けられているが、シールリップが設けられていない。スリーブは、ブッシュ内へ塵埃が直接入り込むことを遮蔽する作用を有する。このため、ダストカバーの車室内側は、シールリップを設けることなくブッシュ内への防塵性を保つことが可能となる。また、前記スリーブの内周面は、前記ブッシュの内周面よりも外周側に位置する。従って、車両走行中にブッシュが移動しても、スリーブがステアリングシャフトに接触しにくくなる。
【0008】
ダストカバーの望ましい態様として、前記スリーブは、前記ブッシュの車室内側端から車室内側に向けて突出する。即ち、前記スリーブは、前記ブッシュの車室内側端と一体である。このため、前記スリーブがより強固に前記ブッシュに固定されると共に、スリーブをブッシュに固定する製造工程が省略できる。
【0009】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュは、前記ベローズの内周縁部が嵌まる円筒状の基部と、前記基部の車室外側の端部から径方向外側に突出する外側フランジと、前記基部の車室内側の端部から径方向外側に突出する内側フランジと、を備え、前記スリーブは、前記内側フランジから車室内側に突出する。従って、外側フランジ及び内側フランジが設けられない場合と比較すると、ブッシュの剛性が高くなるため、スリーブのブッシュに対する結合強度がより大きくなる。
【0010】
ダストカバーの望ましい態様として、前記スリーブには、前記ステアリングシャフトの軸方向に沿って延びるスリットが設けられる。ステアリングシャフトとスリーブとの径方向距離が小さいため、両者は接触しやすい。よって、スリーブにスリットを設けることにより、スリーブの剛性を低下させることができる。これにより、ステアリングシャフトの外周面とスリーブとが接触した場合に、スリーブが変形しやすくなって面圧を小さく抑えることができ、引いては、接触時に摺動する異音を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、シールリップを設けることなくブッシュ内への防塵性を保つことが可能なダストカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図3図3は、車両に取り付けられた第1実施形態のダストカバーの断面図である。
図4図4は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。
図5図5は、図4におけるA-A断面図である。
図6図6は、図5のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。
図7図7は、変形例のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態のダストカバーの断面図である。
図9図9は、図8のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、各図において車室内側をINと表示し、車室外側(エンジンルーム側)をOUTと表示する。
【0014】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備え、第3ステアリングシャフト87に接合されている。
【0016】
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
【0017】
図1に示すように、第2ステアリングシャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。第2ステアリングシャフト85の一方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。
【0018】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0019】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式である。
【0020】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0021】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0022】
図3は、車両に取り付けられた第1実施形態のダストカバーの断面図である。図4は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。図5は、図4におけるA-A断面図である。図6は、図5のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。
【0023】
以下の説明において、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、回転軸Zを中心とした円に沿う方向は周方向と記載される。
【0024】
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部材101を備える。筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の外周面85aと対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整又は走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部材101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間には環状の隙間が設けられている。この隙間を塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。
【0025】
ダストカバー1は、筒状部材101の内周面に嵌められている。筒状部材101の外周面に取り付けられたバンド100によって、ダストカバー1が筒状部材101に固定されている。筒状部材101は、バンド100で締め付けられることで変形する。例えば、筒状部材101は金属で形成されている。筒状部材101が金属である場合、筒状部材101は図3に示すように軸方向に沿ったスリット102を有することが好ましい。筒状部材101がスリット102を有することで、筒状部材101がバンド100で締め付けられた時に容易に変形する。
【0026】
図4及び図5に示すように、ダストカバー1は、ベローズ2と、ブッシュ5と、取付部材6と、を備える。図5に示すように、ベローズ2、ブッシュ5、及び取付部材6は、それぞれ環状に形成されている。ベローズ2は、例えばゴムで形成されている。ベローズ2は、内周縁部20と、第1嵌合部22と、第1可撓部21と、第2嵌合部26と、第2可撓部25と、を備える。
【0027】
図5に示すように、内周縁部20は、ベローズ2のうちの径方向内側の端部に位置している。内周縁部20は、ブッシュ5の固定部54に嵌合して固定される。取付部材6は、ベローズ2を図3に示す筒状部材101に押し付ける部材である。取付部材6は、例えばアルミニウム合金で形成される。取付部材6は、合成樹脂で形成されていてもよい。図5に示すように、取付部材6は、本体部61と、フランジ部62と、を備える。本体部61は、円筒状であって、外周面に環状の第1溝611を備える。第1溝611には、ベローズ2の第1嵌合部22が嵌まる。フランジ部62は、本体部61から径方向外側に向かって突出する。フランジ部62が筒状部材101に接することで、取付部材6が位置決めされる。
【0028】
図5に示すように、第1可撓部21は、内周縁部20と第1嵌合部22とを連結している。回転軸Zを含む断面において、第1可撓部21は車室外側(エンジンルーム側)に凸の略U字状である。第2嵌合部26は、取付部材6に嵌まる。第2可撓部25は、内周縁部20と第2嵌合部26とを連結している。回転軸Zを含む断面において、第2可撓部25は車室外側(エンジンルーム側)に凸の略U字状である。第1可撓部21及び第2可撓部25は、内周縁部20により連結されている。フランジ部62と第1嵌合部22との間の隙間には、第2嵌合部26が嵌まる。第2可撓部25の一部は、第1嵌合部22と筒状部材101とに挟まれている。また、第1可撓部21の一部は、第2可撓部25と取付部材6とに挟まれている。
【0029】
ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5は、ナイロン等の合成樹脂で形成されている。以下、図6を参照して、ブッシュ5の構造を詳細に説明する。
【0030】
ブッシュ5は、本体部55と、シールリップ11と、を備える。また、本実施形態では、ブッシュ5の車室内側にスリーブ70が設けられる。本体部55、シールリップ11及びスリーブ70は、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。
【0031】
本体部55は、基部50と、外側フランジ51と、内側フランジ52と、複数の潤滑剤溝59と、を備える。
【0032】
基部50は、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円筒状に延びる。外側フランジ51は、基部50の車室外側の端部から径方向外側に突出している。内側フランジ52は、基部50の車室内側の端部から径方向外側に突出している。固定部54は、本体部55の外周側に設けられる。即ち、基部50、外側フランジ51及び内側フランジ52で固定部54が形成される。固定部54には、ベローズ2の内周縁部20が嵌まる。潤滑剤溝59は、基部50の内周面に設けられた溝であって、例えば軸方向に沿っている。潤滑剤溝59は、ブッシュ5の軸方向の全長に亘っている。例えば複数の潤滑剤溝59が周方向で等間隔に配置されている。潤滑剤溝59には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。これにより、ブッシュ5の本体部55の内周面53と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間の摩擦が低減される。
【0033】
シールリップ11は、第2ステアリングシャフト85及びブッシュ5の間の隙間とエンジンルームとを隔てる密封部材である。シールリップ11は、例えばニトリルゴム(NBR)であり、加硫接着により本体部55と一体となっている。図6に示すように、シールリップ11は、本体部55の第1の端面551から車室外側に突出している。第1の端面551は、本体部55の車室外側の端面である。第2ステアリングシャフト85に接する前におけるシールリップ11の最小内径は、第2ステアリングシャフト85の外径より小さい。このため、シールリップ11が第2ステアリングシャフト85に接すると、シールリップ11が変形する。シールリップ11の弾性により、シールリップ11と第2ステアリングシャフト85との間の隙間が生じにくくなっている。このため、シールリップ11は、エンジンルームからブッシュ5の内側への異物の侵入を防ぐことができると共に、ブッシュ5の内側からエンジンルームへのグリースの漏洩を防ぐことができる。また、シールリップ11は、エンジンルームで生じる音の車室への漏洩を抑制することができる。
【0034】
スリーブ70は、本体部55の第2の端面552から車室内側に向けて突出する。第2の端面552(車室内側端)は、本体部55の車室内側の端面である。スリーブ70は、本体部55と一体である。スリーブ70は、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円環状に延びる円筒部材である。以上を換言すると、スリーブ70は、ブッシュ5の車室内側端である第2の端面552よりも車室内側に位置する筒状の部材である。スリーブ70の内側端72は外側端71から距離L1離隔している。即ち、スリーブ70の軸方向の長さは距離L1である。なお、スリーブ70の内側端72の角部に、テーパ又は面取りを設けることが望ましい。第2ステアリングシャフト85をブッシュ5に挿入する際に、スリーブ70の内側端72の角部に第2ステアリングシャフト85の先端が当たっても、テーパ又は面取りによって第2ステアリングシャフト85をガイドされるためである。
【0035】
図6に示すように、スリーブ70は、内周面73及び外周面74を有する。スリーブ70の内周面73は、ブッシュ5の本体部55の内周面553よりも外周側(径方向外側)に位置する。スリーブ70の内周面73と、ブッシュ5の本体部55の内周面553との径方向の差を距離L2とする。この場合、本体部55の内周面553の内径をD10とし、スリーブ70の内径をD20とすると、距離L2は、(D20-D10)/2である。即ち、スリーブ70の内周面73は、本体部55の内周面553よりも距離L2だけ外周側(径方向外側)に位置している。
【0036】
以上の構成を有するダストカバー1は、ダッシュパネル10の筒状部材101を貫通する第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の外周面85aに取り付けられるブッシュ5と、筒状部材101とブッシュ5との間の隙間を塞ぐ環状のベローズ2と、ブッシュ5の第2の端面552(車室内側端)よりも車室内側に位置する筒状のスリーブ70と、を備える。
【0037】
本実施形態のブッシュ5の車室内側には、筒状のスリーブ70が設けられているが、シールリップが設けられていない。スリーブ70は、ブッシュ5内へ塵埃が直接入り込むことを遮蔽する作用を有する、このため、本実施形態のダストカバー1の車室内側は、シールリップを備えずにブッシュ内への防塵性を保つことが可能である。特に、加硫接着固定によってシールリップをブッシュに固定する場合は、ブッシュへの接着剤の塗布工程、接着剤の乾燥工程及びシールリップの加硫接着工程と多くの工程を有するため、製造コストが高くなる。しかし、本実施形態によれば、加硫接着固定によってシールリップをブッシュに固定する場合よりも、製造コストが安価になる。
【0038】
また、スリーブ70の内周面73は、ブッシュ5の内周面553よりも外周側に位置する。従って、車両走行中にブッシュ5が移動しても、スリーブ70が第2ステアリングシャフト85の外周面85aに接触しにくくなる。
【0039】
そして、スリーブ70は、ブッシュ5の第2の端面552(車室内側端)から車室内側に向けて突出する。即ち、スリーブ70はブッシュ5と一体に形成されているため、スリーブがブッシュと別体の場合と比較すると、スリーブ70がより強固にブッシュ5に固定されると共に、スリーブ70をブッシュ5に固定する製造工程が省略できる。
【0040】
さらに、ブッシュ5は、外側フランジ51と内側フランジ52とを備え、スリーブ70が内側フランジ52から突出して設けられる。従って、外側フランジ51及び内側フランジ52が設けられない場合と比較すると、ブッシュ5の剛性が高くなるため、スリーブ70とブッシュ5との結合強度がより大きくなる。
【0041】
[変形例]
次に、第1実施形態の変形例を説明する。図7は、変形例のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。変形例のスリーブは、第1実施形態のスリーブに対してスリットが設けられている点が相違する。以下に詳細に説明する。
【0042】
図7に示すように、スリーブ70Aは、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。スリーブ70Aには、周方向に等間隔にスリット75が設けられる。スリット75によって、スリーブ70Aが複数の帯状体76に分割される。周方向に隣接する帯状体76同士の間がスリット75となる。即ち、所定の帯状体76の縁部761と、隣接する帯状体76の縁部762と、の間がスリット75である。スリット75の軸方向長さは距離L4であり、周方向長さは距離L3である。距離L4は、スリーブ70の軸方向の長さである距離L1と同じ長さである。
【0043】
以上の構成を有する変形例のスリーブ70Aには、第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の軸方向に沿って延びるスリット75が設けられる。第2ステアリングシャフト85の外周面85aとスリーブ70Aとの径方向距離が小さいため、両者は接触しやすい。よって、スリーブ70Aにスリット75を設けることにより、スリーブ70Aの剛性を低下させることができる。これにより、第2ステアリングシャフト85の外周面85aとスリーブ70Aとが接触した場合に、スリーブ70Aが変形しやすくなって面圧を小さく抑えることができ、引いては、接触時に摺動する異音を低減することができる。なお、スリット75の周方向長さである距離L3は小さい方が望ましく、距離L4は大きい方が望ましい。距離L3が小さい方が塵埃が入り込む隙間の面積が小さくなるため、ブッシュ内への防塵性が高くなる。また、距離L4が大きい方が帯状体76の軸方向長さが長くなるため、ブッシュ内への防塵性が高くなる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図8は、第2実施形態のダストカバーの断面図である。図9は、図8のブッシュ及びスリーブを示す断面図である。
【0045】
図8に示すように、ダストカバー1Aは、ベローズ2Aと、ブッシュ5Aと、シールリップ11Aと、固定部材14と、を備える。
【0046】
ベローズ2Aは、ダッシュパネル10の筒状部材101に支持されている。ベローズ2Aは、ベローズ本体部21Aと、補強部材22Aと、を備える。ベローズ2Aは、ブッシュ5Aと筒状部材101との間の隙間を塞ぐための部材である。ベローズ2Aは、第2ステアリングシャフト85の偏芯によって生じるブッシュ5Aの移動に伴って変形することができる。
【0047】
ベローズ本体部21Aは、支持部211Aと、第1可撓部212Aと、第1嵌合部213Aと、第2可撓部215Aと、第2嵌合部216Aとを含む。支持部211A、第1可撓部212A、第1嵌合部213A、第2可撓部215A及び第2嵌合部216Aは、一体成形されている。第1可撓部212Aは、支持部211Aと第1嵌合部213Aとを繋ぐ部位である。
【0048】
図8に示すように、回転軸Zを含む断面において、第1可撓部212Aは、車室外側(エンジンルーム側)に凸の略U字状である。第1可撓部212Aは、支持部211Aからブッシュ5Aに向けて延びる。第1嵌合部213Aは、ブッシュ5Aの外周面に嵌められる。第2可撓部215Aは、支持部211Aと第2嵌合部216Aとを繋ぐ部材である。図8に示すように、回転軸Zを含む断面において、第2可撓部215Aは、エンジンルーム側に凸の略U字状である。第2可撓部215Aは、第1可撓部212Aに対して隙間を空けて対向している。すなわち、第2可撓部215Aは、支持部211Aからブッシュ5Aに向けて延び且つ第1可撓部212Aとは軸方向で異なる位置に配置される。第2嵌合部216Aは、ブッシュ5Aの外周面に嵌められる。第2嵌合部216Aは、第1嵌合部213Aの外周面に重なっている。
【0049】
補強部材22Aは、ベローズ本体部21Aの全周に亘って配置された環状の部材である。
【0050】
ブッシュ5Aは、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5Aは、環状の部材であって、例えば合成樹脂で形成されている。図8に示すように、ブッシュ5Aは、基部50Aと、フランジ51Aと、凹部57Aと、返し部58Aと、複数の溝59Aとを備える。基部50Aの内周面が第2ステアリングシャフト85に接しており、基部50Aの外周面が第1嵌合部213A及び第2嵌合部216Aに接している。
【0051】
フランジ51Aは、基部50Aの軸方向の端部から径方向外側に突出している。フランジ51Aには第1嵌合部213Aが接している。フランジ51Aは、第1嵌合部213Aを軸方向に位置決めしている。凹部57Aには、固定部材14が嵌まる。返し部58Aが固定部材14を軸方向に位置決めしている。溝59Aは、例えば軸方向に沿う溝であって、ブッシュ5Aの軸方向の全長に亘って設けられている。例えば複数の溝59Aが周方向に等間隔に配置されている。溝59Aには、グリースが充填されている。グリースは、ブッシュ5Aと第2ステアリングシャフト85との間の摩擦を抑制するための潤滑剤である。
【0052】
シールリップ11Aは、ブッシュ5Aの内側とエンジンルームとを隔てるための密封部材である。シールリップ11Aは、例えば合成ゴムであって、ブッシュ5Aと一体成形されている。より具体的には、シールリップ11Aは、ベローズ本体部21Aと同じ軟質ゴムである。シールリップ11Aの先端部は、第2ステアリングシャフト85の外周面に接する。シールリップ11Aと第2ステアリングシャフト85との間の摩擦をグリースによって抑制する。
【0053】
固定部材14は、ベローズ2Aをブッシュ5Aに固定するための部材である。固定部材14は、例えば金属で形成された環状の部材である。図9に示すように、固定部材14は、第1壁141と、第2壁142と、第3壁143と、第4壁144と、を備える。第1壁141、第3壁143及び第4壁144は、回転軸Zを中心とした周方向、且つ、回転軸Zに沿う軸方向に延びる。第2壁142は、回転軸Zの径方向に延びる。第3壁143の内周側の端部が凹部57Aに嵌まる。
【0054】
また、固定部材14の第4壁144の車室内側には、スリーブ70Bが設けられる。即ち、ブッシュ5Aの車室内側端E(一点鎖線で示す)よりも車室内側には、円筒状のスリーブ70Bが第4壁144と一体に形成される。スリーブ70Bの内周面は、ブッシュ5Aの本体部55Aの内周面553Aよりも外周側(径方向外側)に位置する。スリーブ70Bの内周面と、ブッシュ5Aの本体部55Aの内周面553Aとの径方向の差を距離L5とする。
【0055】
固定部材14をブッシュ5Aに固定する手順を簡単に説明する。まず、ブッシュ5Aの返し部58A側から固定部材14を軸方向に沿って移動させる。すると、第3壁143の内周側の端部が返し部58Aの外周面に押し付けられると返し部58Aが内周側に変形し、第3壁143の内周側の端部が凹部57Aに達すると返し部58Aの変形が戻る。これにより、固定部材14がブッシュ5Aに固定される。
【0056】
固定部材14により、第2嵌合部216A及び第1嵌合部213Aがブッシュ5Aに押し付けられる。また、固定部材14が第2嵌合部216Aの車室側端部に接する。このため、軸方向に重ねられた第1嵌合部213A及び第2嵌合部216Aが、ブッシュ5Aのフランジ51Aと固定部材14とによって挟まれる。すなわち、フランジ51A及び固定部材14によって第2嵌合部216A及び第1嵌合部213Aが軸方向に位置決めされる。フランジ51A及び固定部材14は、ベローズ2Aがブッシュ5Aから脱落することを防止している。
【0057】
以上の構成を有するダストカバーによれば、固定部材14にスリーブ70Bを一体に設けている。このように、一つの部材によって、ベローズ2Aをブッシュ5Aに固定すると共に、ブッシュ5内へ塵埃が直接入り込むことを遮蔽する作用を有する。
【符号の説明】
【0058】
1 ダストカバー
1A ダストカバー
2 ベローズ
5 ブッシュ
5A ブッシュ
10 ダッシュパネル
70 スリーブ
70A スリーブ
70B スリーブ
73 内周面
75 スリット
85 第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
85a 外周面
101 筒状部材
552 第2の端面(車室内側端)
553 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9