(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ステータの製造方法及びステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20230920BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K3/04 Z
(21)【出願番号】P 2019214168
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荒井 安成
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-244907(JP,A)
【文献】特開2012-235587(JP,A)
【文献】特開2014-039455(JP,A)
【文献】特許第2661263(JP,B2)
【文献】特開2016-111732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨーク、及び前記ヨークから前記ヨークの径方向の内側に向かって延在するとともに前記ヨークの周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティースを有し、前記周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に、前記径方向の内側に開口する開口部を有するスロットが形成されたステータコアと、金属製の導体、及び前記導体を被覆する被覆部材を有する導線により構成され、前記スロット内に配置されるコイルと、を備えるステータの製造方法であって、
前記ティースの前記径方向における先端には、前記周方向の両側に突出した一対の突出部が設けられており、
前記スロットは、互いに隣り合う一対の前記ティースにおいて前記周方向に対向する2つの前記突出部の突端面同士の間に形成された前記開口部と、前記開口部に対して前記径方向の外側に隣り合うスロット本体と、を有しており、
前記開口部における前記周方向の幅は、前記スロット本体における前記周方向の幅よりも小さくされており、
前記導線を、前記開口部を通じて前記スロット内に配置するとともに治具により前記径方向の外側に向けて押圧して前記導体を塑性変形させることで、当該導線を前記開口部に充填する充填工程を備え、
前記充填工程では、前記治具が前記開口部を形成する一対の前記ティースの前記径方向における先端面を前記径方向において超えないように前記導線を押圧
し、同一の前記導線を前記スロット本体の内面と前記突端面との双方に接触させた状態で前記突出部に係止させる、
ステータの製造方法。
【請求項2】
前記導線は、前記スロット内において前記径方向に複数並んで配置されるものであり、
前記充填工程に先立ち、前記径方向に複数並ぶ前記導線のうち前記開口部に充填される内側導線よりも前記径方向の外側に配置される外側導線を治具により前記径方向の外側に向けて押圧することで前記スロットの内面に沿って前記外側導線の前記導体を塑性変形させる押圧工程を備える、
請求項1に記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記押圧工程では、治具により前記外側導線を前記周方向の全体にわたって押圧する、
請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記導線は、前記スロット内において前記周方向に複数並んで配置されるものであり、
前記充填工程では、前記周方向に複数並ぶ前記導線を一括して押圧する、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のステータの製造方法。
【請求項5】
環状のヨーク、及び前記ヨークから前記ヨークの径方向の内側に向かって延在するとともに前記ヨークの周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティースを有し、前記周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に、前記径方向の内側に開口する開口部を有するスロットが形成されたステータコアと、金属製の導体、及び前記導体を被覆する被覆部材を有する導線により構成され、前記スロット内に配置されるコイルと、を備えるステータであって、
前記ティースの前記径方向における先端には、前記周方向の両側に突出した一対の突出部が設けられており、
前記スロットは、互いに隣り合う一対の前記ティースにおいて前記周方向に対向する2つの前記突出部の突端面同士の間に形成された前記開口部と、前記開口部に対して前記径方向の外側に隣り合うスロット本体と、を有しており、
前記開口部における前記周方向の幅は、前記スロット本体における前記周方向の幅よりも小さくされており、
前記導線は、前記径方向における前記スロットの最外端から前記開口部を形成する一対の前記ティースの前記径方向における先端面と面一になる位置まで充填されて
おり、
同一の前記導線が前記スロット本体の内面と前記突端面との双方に接触した状態で前記突出部に係止している、
ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法及びステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源には回転電機が用いられている。こうした回転電機は、複数のティース及び各ティース同士の間に形成された複数のスロットを有するステータコアと、スロット内に配置されるコイルとを有するステータを備えている。
【0003】
特許文献1には、ステータコアのティースに対して被覆導体線束を巻き付けて構成されたコイルを備えるステータが開示されている。
被覆導体線束は、複数本の導体線を集合させてなる導体線束と、導体線束の外周を被覆する可撓性の絶縁被覆材とを有している。各導体線は、絶縁被覆材内において相対移動が可能とされている。これにより、被覆導体線束における導体線の延在方向に直交する断面形状を変形させることができる。
【0004】
こうしたステータの製造においては、まず、各スロットにおける径方向の内側に開口する径方向開口部から、複数本の被覆導体線束を挿入する。次に、上記径方向開口部から押圧治具を挿入して、複数本の被覆導体線束を径方向の外側に向かって押圧する。これにより、各被覆導体線束がスロットの内面の形状に追従して変形するため、各被覆導体線束の外周面とスロットの内面との隙間が小さくなる。
【0005】
なお、押圧治具により複数の被覆導体線束を押圧した後は、径方向開口部からの被覆導体線束の飛び出しを防止するために、径方向開口部に閉塞部材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のステータにおいては、径方向開口部に閉塞部材が配置されている。このため、コイルの占積率を高める上では、改善の余地がある。
本発明の目的は、コイルの占積率を高めることのできるステータの製造方法及びステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのステータの製造方法は、環状のヨーク、及び前記ヨークから前記ヨークの径方向の内側に向かって延在するとともに前記ヨークの周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティースを有し、前記周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に、前記径方向の内側に開口する開口部を有するスロットが形成されたステータコアと、金属製の導体、及び前記導体を被覆する被覆部材を有する導線により構成され、前記スロット内に配置されるコイルと、を備えるステータの製造方法であって、前記導線を、前記開口部を通じて前記スロット内に配置するとともに治具により前記径方向の外側に向けて押圧して前記導体を塑性変形させることで、当該導線を前記開口部に充填する充填工程を備え、前記充填工程では、前記径方向における前記スロットの最内端または前記最内端よりも内側まで前記導線を押圧する。
【0009】
同方法によれば、スロットの開口部を通じてスロット内に配置された導線を、治具により径方向の外側に向けて押圧して導体を塑性変形させることで、当該導線が開口部に充填される。このとき、治具が径方向においてスロットの最内端を越えないため、導線が開口部全体に充填されやすくなる。したがって、コイルの占積率を高めることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するためのステータは、環状のヨーク、及び前記ヨークから前記ヨークの径方向の内側に向かって延在するとともに前記ヨークの周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティースを有し、前記周方向において互いに隣り合う前記ティース同士の間に、前記径方向の内側に開口する開口部を有するスロットが形成されたステータコアと、金属製の導体、及び前記導体を被覆する被覆部材を有する導線により構成され、前記スロット内に配置されるコイルと、を備えるステータであって、前記導線は、前記径方向における前記スロットの最外端から最内端まで充填されている。
【0011】
同構成によれば、径方向におけるスロットの最外端から最内端まで導線が充填されている。したがって、コイルの占積率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同実施形態におけるステータの1つのスロットを中心とした拡大断面図。
【
図3】同実施形態の押圧工程を示す図であって、スロットの最外端に外側導線が挿入された状態を示す断面図。
【
図4】同実施形態の押圧工程を示す図であって、スロットの最外端に挿入された外側導線が押圧された状態を示す断面図。
【
図5】同実施形態の押圧工程を示す図であって、全ての外側導線が押圧された状態を示す断面図。
【
図6】同実施形態の充填工程を示す図であって、開口部に内側導線が挿入された状態を示す断面図。
【
図7】同実施形態の充填工程を示す図であって、内側導線が開口部に充填された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図7を参照して、ステータの製造方法及びステータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、ステータ10は、中心孔20aを有する筒状のステータコア20と、ステータコア20の内部に配置されるコイル30とを備えている。本実施形態のステータ10は、三相同期型の回転電機に用いられるものであり、ロータ100を取り囲むように設けられている。ステータコア20は、図示しない複数の鋼板が積層されることにより構成されている。
【0014】
以降において、ステータコア20の中心孔20aの軸線方向を単に軸線方向と称し、中心孔20aの軸線を中心とする周方向を単に周方向と称し、同軸線を中心とする径方向を単に径方向と称する。
【0015】
<ステータコア20>
図2に示すように、ステータコア20は、環状のヨーク21、及びヨーク21からヨーク21の径方向の内側に向かって延在するとともにヨーク21の周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティース22を有している。周方向において互いに隣り合うティース22同士の間には、径方向の内側に開口する開口部26を有するスロット24が形成されている。ステータコア20は、都合48個のスロット24を有している。なお、各スロット24の内面には、図示しない絶縁紙が設けられている。
【0016】
各ティース22の先端には、周方向の両側に突出した一対の突出部23が設けられている。各ティース22の先端面22aは、周方向に沿って円弧状に湾曲している。同先端面22aは、ロータ100の外周面に対向している。
【0017】
互いに隣り合う2つのティース22において周方向に対向する2つの突出部23は、当該2つのティース22同士の間に形成されたスロット24内に突出している。これにより、各スロット24の開口部26における周方向の幅は、スロット24のうち開口部26に対して径方向の外側に隣り合うスロット本体25における周方向の幅よりも小さくなる。
【0018】
<コイル30>
図2に示すように、コイル30は、アルミニウム合金などの金属製の導体32と、導体32の外周面を被覆する絶縁性の被覆部材33とを有する導線31により構成されている。図示は省略するが、本実施形態のコイル30は、導線31が略U字状に形成された複数のセグメントコイルが互いに接合することにより構成されている。より詳しくは、各セグメントコイルが所定のスロット24に挿入されるとともに、スロット24から突出した各セグメントコイルの端部同士が互いに接合されている。本実施形態では、U相、V相、及びW相を構成するコイル30が、複数のティース22に跨がって分布巻きにより巻回されている。
【0019】
1つのスロット24内において、導線31は、周方向に3列に並ぶとともに径方向に6列に並んで配置されている。
なお、
図2以降の各図面においては、1つのスロット24内に配置されたコイル30のみを図示し、同スロット24に隣り合う2つのスロット24内に配置されたコイル30の図示を省略している。
【0020】
以降において、径方向に複数並ぶ導線31のうち、径方向の最も内側に配置されて周方向に複数並ぶ導線31を内側導線31bと称し、内側導線31bよりも径方向の外側に配置される導線31を外側導線31aと称する。
【0021】
導線31は、径方向におけるスロット24の最外端から最内端、より詳しくは、スロット本体25の最外端から開口部26の最内端まで充填されている。各内側導線31bは、当該内側導線31bが配置されているスロット24を構成する一対のティース22の先端面22aと面一になる位置までスロット24内に充填されている。
【0022】
ここで、本明細書における「面一」とは、厳密に面一の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね面一であるものも含む。すなわち、製造公差等によって内側導線31bがティース22の先端面22aから僅かに径方向の内側や外側に位置しているものも含む。
【0023】
次に、ステータ10の製造方法について説明する。
図3に示すように、まず、3つの外側導線31aを径方向におけるスロット本体25の最外端に周方向に並べて配置する。このとき、各外側導線31aは、軸線方向に沿ってスロット本体25に挿入されて配置される。なお、本実施形態では、軸線方向に直交する断面形状が長円状をなす導線31が用いられる。
【0024】
次に、各外側導線31aを押圧するための治具40を軸線方向に沿ってスロット本体25に挿入する。
ここで、治具40は、スロット本体25における軸線方向の全体にわたって延びている。また、治具40の周方向における幅は、スロット本体25の周方向における幅と略同一である。
【0025】
図4に示すように、次に、各外側導線31aを治具40により径方向の外側に向けて押圧することで、スロット本体25の内面に沿って外側導線31aの導体32を塑性変形させる(押圧工程)。このとき、治具40により各外側導線31aは周方向の全体にわたって一括して押圧される。これにより、各外側導線31aは、スロット本体25の内面に沿うことで、軸線方向に直交する断面形状が略矩形状になるように変形する。
【0026】
図5に示すように、上述した押圧工程を繰り返すことで、各外側導線31aをスロット本体25内において径方向に5列に並べて配置する。
図6に示すように、次に、3つの内側導線31bを径方向の内側から開口部26を通じてスロット24内に挿入して、これらが周方向に並ぶように配置する。本実施形態では、治具40とは別の治具50により各内側導線31bをスロット24内に配置する。
【0027】
ここで、治具50は、内側導線31bを押圧する押圧部51と、押圧部51をスロット24内に向けて案内する案内部52とを備えている。押圧部51の押圧面は、ティース22の先端面22aに沿って湾曲している。案内部52は、押圧部51を径方向に沿って進退させるための溝53を有している。案内部52は、ティース22の先端面22aに当接している。押圧部51の周方向における幅と、溝53の周方向における幅とは、スロット24の開口部26の周方向における幅と略同一である。
【0028】
上述した内側導線31bのスロット24内への配置においては、各内側導線31bを案内部52の溝53内に配置するとともに押圧部51により各内側導線31bを径方向の外側に向けて押圧する。これにより、各内側導線31bを溝53に沿って変位させてスロット24内に配置する。このとき、各内側導線31bは、各外側導線31aのうち径方向の最も内側に位置する外側導線31aに当接する位置まで押圧される。この状態において、各内側導線31bは、開口部26内とスロット本体25内の最内端との双方に配置されている。
【0029】
図7に示すように、次に、押圧部51により各内側導線31bを径方向の外側に向けて押圧して導体32を塑性変形させることで、各内側導線31bを開口部26に充填する(充填工程)。充填工程において、各内側導線31bは、各外側導線31aに当接しているため、径方向の外側に向かう変形が規制されている。この状態で押圧部51により各内側導線31bを押圧することで、各内側導線31bは、周方向の両側に広がるように変形する。これにより、各内側導線31bによって開口部26とスロット本体25の最内端との双方が充填される。
【0030】
なお、充填工程では、押圧部51により径方向におけるスロット24の最内端、より詳しくは、開口部26の最内端まで各内側導線31bを押圧する。すなわち、押圧部51における各内側導線31bを押圧する押圧範囲が開口部26を構成する一対のティース22の先端面22aを超えない。
【0031】
本実施形態の作用について説明する。
充填工程においては、開口部26を通じてスロット24内に配置された内側導線31bを、治具50により径方向の外側に向けて押圧して導体32を塑性変形させることで、内側導線31bが開口部26に充填される。このとき、治具50が径方向においてスロット24の最内端を越えないため、内側導線31bが開口部26全体に充填されやすくなる。
【0032】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ステータ10の製造方法は、内側導線31bを、開口部26を通じてスロット24内に配置するとともに治具50により径方向の外側に向けて押圧して導体32を塑性変形させることで、内側導線31bを開口部26に充填する充填工程を備える。充填工程では、径方向におけるスロット24の最内端まで内側導線31bを押圧するようにした。
【0033】
こうした方法によれば、上述した作用を奏することから、コイル30の占積率を高めることができる。
(2)押圧工程では、充填工程に先立ち、外側導線31aを治具40により径方向の外側に向けて押圧することでスロット24の内面に沿って外側導線31aの導体32を塑性変形させるようにした。
【0034】
こうした方法によれば、内側導線31bよりも径方向の外側に配置される外側導線31aを治具40により径方向の外側に向けて押圧することで、外側導線31aの導体32がスロット24の内面に沿う形状に塑性変形される。これにより、外側導線31aとスロット24との隙間が小さくなる。したがって、コイル30の占積率をより高めることができる。
【0035】
(3)押圧工程では、治具40により外側導線31aを周方向の全体にわたって押圧するようにした。
こうした方法によれば、治具40により外側導線31aが周方向の全体にわたって押圧される。このため、外側導線31aがスロット24内において周方向の全体にわたって均一に押圧されることで、外側導線31aの導体32がスロット本体25内において均一に塑性変形しやすくなる。これにより、スロット24内に外側導線31aを緻密に配置することができる。したがって、コイル30の占積率をより一層高めることができる。
【0036】
(4)導線31は、スロット24内において周方向に複数並んで配置される。充填工程では、周方向に複数並ぶ内側導線31bを一括して押圧するようにした。
回転電機においては、ステータ10の内周側でロータ100が回転することにより、ロータ100からティース22に向かって磁束が流入する。こうした磁束の一部がコイル30に流入した場合、コイル30の内部には、当該磁束の流入に伴う磁束変化によって渦電流が生じるおそれがある。こうした渦電流を低減させるための手段としては、導線31をスロット24内において周方向に複数並ぶように配置し、各導線31の断面積を小さくすることが有効である。
【0037】
上記方法によれば、導線31がスロット24内において周方向に複数並んで配置されるため、コイル30に渦電流が生じることを抑制できる。
また、上記方法によれば、充填工程では、スロット24内において周方向に複数並ぶ内側導線31bを一括して押圧するため、周方向に複数並ぶ内側導線31bを開口部26に容易に充填することができる。
【0038】
(5)充填工程では、内側導線31bを開口部26とスロット本体25との双方に充填するようにした。
こうした方法によれば、充填工程では、内側導線31bがスロット24の開口部26とスロット本体25との双方に充填される。
【0039】
ここで、スロット24の開口部26における周方向の幅は、スロット本体25における周方向の幅よりも小さい。このため、充填工程においては、押圧された内側導線31bのうち開口部26を通過してスロット本体25に到達した部分が周方向に広がるように変形することで、内側導線31bとスロット本体25との隙間が小さくなる。こうして充填された内側導線31bのうちスロット本体25内に位置する部分の周方向の幅は、開口部26内に位置する部分の周方向の幅よりも大きくなる。これにより、開口部26を通じて各導線31が脱離することを抑制できる。
【0040】
特に、内側導線31bが周方向に3列以上に並んで配置される場合には、周方向の両側に位置する2つの内側導線31bが、ティース22の突出部23に係止される。一方、これら2つの内側導線31bの間に位置する内側導線31bは、当該2つの内側導線31bに係止される。したがって、各内側導線31b同士が互いに係止されるため、開口部26を通じて各導線31が脱離することを抑制できる。
【0041】
(6)コイル30を構成する導線31は、径方向におけるスロット24の最外端から最内端まで充填されている。
こうした構成によれば、径方向におけるスロット24の最外端から最内端まで導線31が充填されている。したがって、コイル30の占積率を高めることができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
なお、以下の
図8及び
図9にそれぞれ示す第1変更例および第2変更例において、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、上記実施形態に対応する構成については、上記実施形態の符号にそれぞれ「100」、「200」を加算した符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0043】
・
図8に示すように、導線131をスロット24内に周方向に2列に並べて配置することもできる。また、こうした導線をスロット24内に周方向に4列以上に並べて配置することもできる。これらの場合であっても、上記効果(4)を奏することができる。
【0044】
・
図9に示すように、導線231をスロット24内に径方向にのみ複数並べて配置することもできる。
・ティース22は突出部23を有するものでなくてもよい。この場合、スロット本体25と開口部26との周方向における幅が同一、すなわち、スロット24の周方向における幅が径方向の全体にわたって同一となる。これにより、上記スロット24の幅と略同一の幅を有する治具を、開口部26を通じてスロット24内に挿入することができる。したがって、押圧工程及び充填工程において同一の治具を用いることができる。
【0045】
・押圧工程において、径方向に外側導線31aを複数並べて配置するとともに、これら外側導線31aを治具40により径方向の外側に向けて一括して押圧することもできる。
・押圧工程において、治具40とは別の治具を開口部26を通じてスロット24内に挿入し、外側導線31aを押圧するようにしてもよい。なお、同治具の周方向における幅は、開口部26の周方向における幅と略同一であることが好ましい。また、これに加えて、本実施形態の治具40により外側導線31aを更に押圧するようにしてもよい。
【0046】
・本実施形態の押圧工程では、各外側導線31aを軸線方向に沿ってスロット本体25に挿入して配置するようにしたが、各外側導線31aを径方向の内側から開口部26を通じてスロット本体25に挿入して配置してもよい。
【0047】
・充填工程において開口部26を通じてスロット24内に各内側導線31bを配置する際に、本実施形態のように治具50により各内側導線31bを押圧することで配置してもよいし、作業者の手指により各内側導線31bを押圧することで配置してもよい。
【0048】
・充填工程では、開口部26のみを内側導線31bにより充填するようにしてもよい。この場合、スロット本体25の全体に外側導線31aが配置されていることが好ましい。
・本実施形態の充填工程では、径方向におけるスロット24の最内端まで各内側導線31bを押圧するようにしたが、径方向におけるスロット24の最内端よりも内側まで各内側導線31bを押圧するようにしてもよい。この場合、各内側導線31bは、ステータコア20とロータ100との隙間において、ティース22の先端面22aから径方向の内側に突出する。
【0049】
・本実施形態では、コイル30として、セグメントコイルにより構成されるものを例示したが、連続した導線31を巻回して形成されるコイルを採用することもできる。
・集中巻きにより巻回されたコイルを有するステータに対しても本発明を適用することができる。
【0050】
・導線31として、治具40,50により押圧される前の軸線方向に直交する断面形状が矩形状をなす角線を採用することもできる。
・導体32は、例えば銅合金などのアルミニウム合金以外の金属からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ステータ
20…ステータコア
20a…中心孔
21…ヨーク
22…ティース
22a…先端面
23…突出部
24…スロット
25…スロット本体
26…開口部
30…コイル
31…導線
31a…外側導線
31b…内側導線
32…導体
33…被覆部材
40…治具
50…治具
51…押圧部
52…案内部
53…溝
100…ロータ
110…ステータ
131…導線
131a…外側導線
131b…内側導線
210…ステータ
231…導線
231a…外側導線
231b…内側導線