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特許7351220硬化膜の製造方法、及び有機ELディスプレイの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】硬化膜の製造方法、及び有機ELディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20230920BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230920BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230920BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230920BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230920BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230920BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G03F7/027 502
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/02
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
G03F7/037 501
G03F7/037
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019516268
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011808
(87)【国際公開番号】W WO2019182041
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018055832
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】日比野 千香
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143740(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159876(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190294(WO,A1)
【文献】特開2014-167492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)該段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)該段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程、をこの順に有する、硬化膜の製造方法であって、
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤、及び(Da)黒色剤を含有し、前記ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(Da)黒色剤の含有比率が5~70質量%であって、
前記(1)パターンを形成する工程が、(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有し、該(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が200~450nmであって、
前記フォトマスクが、透光部及び遮光部を含み、該透光部と該遮光部の間に、透過率が前記透光部の値より低く、かつ透過率が前記遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクであって、
前記透光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有するフォトマスクであって、
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程、を有し、該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が100~450nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~5,000mJ/cmであって、
該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、前記活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)が0.1~30であって、
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度が150~500℃である、硬化膜の製造方法。
【請求項2】
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)該段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)該段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程、をこの順に有する、硬化膜の製造方法であって、
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤、及び(Da)黒色剤を含有し、前記ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(Da)黒色剤の含有比率が5~70質量%であって、
前記(1)パターンを形成する工程が、(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有し、該(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が200~450nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~3,000mJ/cmであって、
前記フォトマスクが、透光部及び遮光部を含み、該透光部と該遮光部の間に、透過率が前記透光部の値より低く、かつ透過率が前記遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクであって、
前記透光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有するフォトマスクであって、
前記ハーフトーンフォトマスクにおける、前記透光部の透過率を(%TFT)%、前記半透光部の透過率を(%THT)%とするとき、該(%THT)%は、前記(%TFT)%の10~60%であって、
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-2)前記段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、(2-3)前記段差形状を有するパターンをプラズマ処理する工程、を有し、
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、照射する紫外線の露光波長が100~450nmであって、活性ガス紫外線処理に用いられるガスが、酸素、オゾン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を50~100質量%含有するガスであって、
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、高周波電力が100~10,000Wであって、プラズマ処理に用いられるガスが、酸素、オゾン、アルゴン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を成分として含有するガスであって、
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度が150~500℃である、硬化膜の製造方法。
【請求項3】
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程、を有し、さらに、(2-2)前記段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、(2-3)前記差形状を有するパターンをプラズマ処理する工程、を有し、
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、照射する紫外線の露光波長が100~450nmであって、活性ガス紫外線処理に用いられるガスが、酸素、オゾン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を50~100質量%含有するガスであって、
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、高周波電力が100~10,000Wであって、プラズマ処理に用いられるガスが、酸素、オゾン、アルゴン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を成分として含有するガスである、請求項1に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項4】
前記(C1)光重合開始剤が、一般式(15)で表される基、一般式(16)で表される基、一般式(17)で表される基、及び一般式(18)で表される基から選ばれる一種類以上を有する、請求項1~3のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【化1】
(一般式(15)~(18)において、R55~R58は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、又は環を形成する基を表す。aは0~7の整数であり、bは0~2の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して、0~3の整数である。)
【請求項5】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリシロキサン、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、又はアクリル樹脂を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項6】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、(Da)黒色剤を含有し、
該(Da)黒色剤が、(D1a)黒色顔料を含有し、
該(D1a)黒色顔料が、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料である、請求項4または5に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記(Da)黒色剤が、(D1a)黒色顔料を含有し、
該(D1a)黒色顔料が、(D1a-3a)特定の着色顔料混合物であって、
該(D1a-3a)特定の着色顔料混合物が、以下の(I)~(IV)のいずれかであって、
(I)青色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料を含む着色顔料混合物
(II)紫色顔料、及び黄色顔料を含む着色顔料混合物
(III)青色顔料、赤色顔料、及び橙色顔料を含む着色顔料混合物
(IV)青色顔料、紫色顔料、及び橙色顔料を含む着色顔料混合物
該青色顔料が、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、及びC.I.ピグメントブルー60からなる群より選ばれる一種類以上であって、
該赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド179、及びC.I.ピグメントレッド190からなる群より選ばれる一種類以上であって、
該黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー192、及びC.I.ピグメントイエロー194からなる群より選ばれる一種類以上であって、
該紫色顔料が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット29、及びC.I.ピグメントバイオレット37からなる群より選ばれる一種類以上であって、
該橙色顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる一種類以上である、請求項1~6のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
前記(B)ラジカル重合性化合物として、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物を含有し、
該(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が、
(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造、
(II)少なくとも3つのエチレン性不飽和二重結合基、及び、
(III)少なくとも1つの親水性骨格、
を有する化合物を含み、
該親水性骨格として、オキシアルキレン鎖、ラクトン変性鎖、ラクタム変性鎖及びヒドロキシアルキレン鎖から選ばれる一種類以上を有する、請求項1~7のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
前記(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が、
前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造としての、(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来するヒドロキシ基、又は、
フェノール性水酸基、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物基から選ばれる一種類以上を有する、請求項8に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項10】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含み、
前記(B)ラジカル重合性化合物として、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物を含有し、
該(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が、
(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造、
(II)少なくとも3つのエチレン性不飽和二重結合基、及び、
(III)少なくとも1つの親水性骨格、
を有する化合物を含み、
該親水性骨格として、オキシアルキレン鎖、ラクトン変性鎖、ラクタム変性鎖及びヒドロキシアルキレン鎖から選ばれる一種類以上を有する、請求項1~9のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項11】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、さらに(F)撥インク剤を含有し、
該(F)撥インク剤が、光重合性基、及び/又は熱架橋性基を有する、請求項1~10のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項12】
前記(1)パターンを形成する工程が、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程の後、さらに、(1-3)アルカリ溶液を用いて現像する工程、を有し、
該(1-3)現像する工程におけるアルカリ溶液のアルカリ濃度が、1~5質量%であって、
前記フォトマスクが、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の透光部と、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の遮光部とを有するフォトマスクであって、
前記フォトマスクにおける、前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率が、0~30%であって、
前記ハーフトーンフォトマスクにおける、前記透光部の透過率を(%TFT)%、前記半透光部の透過率を(%THT)%とするとき、該(%THT)%は、(%TFT)%の10~60%である、請求項1~11のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項13】
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程を有し、該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が100~450nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~5,000mJ/cmであって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、該活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、
露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)が、0.5以上4未満である、請求項12に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項14】
前記ハーフトーンフォトマスクを介して活性化学線を照射して得られる、段差形状を有するパターンにおいて、前記透光部を介して活性化学線を照射した露光部から形成した箇所を厚膜部、前記半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部から形成した箇所を薄膜部とし、該薄膜部は該厚膜部より小さい膜厚を有し、
半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)%の30%である場合の薄膜部の膜厚を(THT30)μm、及び、
半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の20%である場合の薄膜部の膜厚を(THT20)μmとした場合、
(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmは、0.3~1.5μmである、請求項12または13に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項15】
前記(1-3)現像する工程の後、かつ前記(2)パターンを光硬化させる工程の前に(1c)前記段差形状を有するパターンを現像後ベークする工程を有し、
該(1c)パターンを現像後ベークする工程における、現像後ベークする加熱温度が、100~180℃であって、
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度が、200~500℃である、請求項12~14のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項16】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度が、200~500℃であって、
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、処理雰囲気が、酸素を1~10,000ppm含有するガス雰囲気下である、請求項1~15のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項17】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物として、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物を含有し、
該(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が、
(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造、
(II)少なくとも3つのエチレン性不飽和二重結合基、及び、
(III)少なくとも1つの親水性骨格、
を有する化合物を含み、
該親水性骨格として、オキシアルキレン鎖、ラクトン変性鎖、ラクタム変性鎖及びヒドロキシアルキレン鎖から選ばれる一種類以上を有し、
前記(Da)黒色剤が、(D1a)黒色顔料を含有し、
該(D1a)黒色顔料が、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料であって、
前記(1-3)現像する工程において形成されるパターンが、段差形状を有するパターンであって、該段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角が、1~60°であって、
前記(1)パターンを形成する工程における、該段差形状を有するパターンの、膜厚1μm当たりの光学濃度が、0.3~5.0である、請求項13~16のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項18】
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程を有し、該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が100~450nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~5,000mJ/cmであって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、該活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)が0.1~30であって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、基板温度が、40~200℃である、請求項1~12のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項19】
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程を有し、
該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が、10~310nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~5,000mJ/cmであって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、該活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)が0.1~30である、請求項1~12のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項20】
前記(2)パターンを光硬化させる工程が、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程を有し、該(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長が100~450nmであり、かつ、活性化学線の露光量がi線照度値で10~5,000mJ/cmであって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、該活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)が0.1~30であって、
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、処理雰囲気が、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm含有するガス雰囲気下、真空下、又は、水中である、請求項1~12のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜の製造方法、及び有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPC、及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」)ディスプレイを用いた製品が多く開発されている。
【0003】
一般に、有機ELディスプレイは、発光素子の光取り出し側に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)などの透明電極を有し、発光素子の光取り出しでない側にマグネシウムと銀の合金などの金属電極を有する。また、発光素子の画素間を分割するため、透明電極と金属電極との層間に画素分割層という絶縁層が形成される。画素分割層を形成した後、画素領域に相当する、画素分割層が開口して下地である透明電極又は金属電極が露出した領域に、蒸着マスクを介して発光材料を蒸着によって成膜し、発光層などの有機EL層が形成される。透明電極及び金属電極は、スパッタによって成膜されるのが一般的であるが、成膜された透明電極又は金属電極が断線するのを防ぐため、画素分割層には低テーパーのパターン形状が要求される。
【0004】
また、有機EL層を形成する際、蒸着マスクを画素分割層に接触させて蒸着するが、画素分割層と蒸着マスクとの接触面積が大きいと、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下の要因となる。また、蒸着マスクの付着物によって画素分割層が損傷し、水分が侵入することで、発光素子の劣化の要因となる。そこで、画素分割層の接触面積を小さくするため、画素分割層を二層に分けて成膜し、二層目の寸法幅を小さくして段差形状を有する画素分割層を形成する方法が挙げられるが、工程が煩雑になるため、プロセスタイムの増加又はパネルの歩留まり低下の要因となる課題がある。これらの課題を解決する手法として、フォトマスクとしてハーフトーンフォトマスクを用いてパターン形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。段差形状を有する画素分割層を一層成膜で形成することで、プロセスタイムを増加させることなく、蒸着マスクとの接触面積を小さくする方法である。しかしながら、段差形状を有する画素分割層を形成するには、ナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物を用いる必要があるため、画素分割層から脱ガスが発生し、有機ELディスプレイの寿命低下の要因となる課題がある。
【0005】
そこで、ナフトキノンジアジド化合物を含有しない、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて段差形状を有する画素分割層を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。ハーフトーンフォトマスクを用いた一括プロセスで段差形状を有するパターンを形成可能な特性(以下、「ハーフトーン特性」)を有する、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて、パターニング露光、現像及び熱硬化をすることで、段差形状を有する画素分割層を形成する方法である。一方で、ネガ型の感光機構では、膜の表面から光硬化されるため、一般に矩形又は逆テーパーのパターン形状が形成されやすい。そのため、低テーパー形状の画素分割層を形成するためには、熱硬化工程においてパターンをリフローさせ、低テーパー化させる方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-322564号公報
【文献】国際公開第2017/159876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱硬化時のパターンリフローによって、低テーパー形状を形成する場合、段差形状を有するパターンの厚膜部もリフローしてしまう。そのため、厚膜部と薄膜部との境界の不明確化、厚膜部と薄膜部との段差膜厚の減少、又は、段差形状の消失などの課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて、段差形状を有するパターンを形成可能であって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを備える、硬化膜の製造方法を提供すること、及び、該段差形状を有するパターンを備える有機ELディスプレイを製造することが可能な、表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化膜の製造方法は、以下の構成を有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)該段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)該段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程、をこの順に有する、硬化膜の製造方法であって、
該(1)パターンを形成する工程が、(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有し、
該フォトマスクが、透光部及び遮光部を含み、該透光部と該遮光部の間に、透過率が該透光部の値より低く、かつ透過率が該遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクであって、
該透光部と該半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ該遮光部と該半透光部とが隣接する箇所を有するフォトマスクである、硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明による硬化膜の製造方法によれば、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて、段差形状を有するパターンを形成可能であって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを備える、硬化膜を形成することが可能となる。
【0011】
また、本発明による硬化膜の製造方法によって有機ELディスプレイを製造すれば、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することで、パネルの歩留まり低下を抑制するとともに、発光素子の劣化を抑制し、発光素子の信頼性に優れる有機ELディスプレイを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(1)~(7)は、本発明の硬化膜の製造方法を用いた有機ELディスプレイの製造プロセスを模式的断面で例示する工程図である。
図2図2(1)~(12)は、本発明の硬化膜の製造方法を用いた液晶ディスプレイの製造プロセスを模式的断面で例示する工程図である。
図3図3は、ハーフトーンフォトマスク上の、隣接する透光部と半透光部、及び、隣接する遮光部と半透光部の一例を示す概略図である。
図4図4は、ハーフトーンフォトマスク上の、隣接しない透光部と半透光部、及び、隣接しない遮光部と半透光部の一例を示す概略図である。
図5図5は、ハーフトーンフォトマスク上の、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の透光部及び遮光部の一例を示す概略図である。
図6図6は、ハーフトーンフォトマスク上の、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率が、0%である一例、及び、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率が、0%超である一例を示す概略図である。
図7図7は、ハーフトーンフォトマスク上の、透光部及び半透光部の面積の合計に占める、前記透光部の面積の比率が、1%以上、かつ50%以下である一例を示す概略図である。
図8図8は、段差形状を有するパターンの断面の一例を示す断面図である。
図9図9は、ハーフトーン特性評価に用いたハーフトーンフォトマスクの、透光部、遮光部及び半透光部の配置、並びに、寸法の概略図である。
図10図10は、本発明の硬化膜の製造方法によって、ハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、現像後の段差形状を有するパターンの観察画像である。
図11図11は、本発明の硬化膜の製造方法によって、ハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、光硬化及び熱硬化後の段差形状を有するパターンの観察画像である。
図12図12(1)~(4)は、発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの概略図である。
図13図13は、発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの、開口部、厚膜部及び薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図である。
図14図14は、比較例8において、発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの、開口部、厚膜部及び薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図である。
図15図15は、偏光層を有しない有機ELディスプレイの模式的断面を例示する概略図である。
図16図16は、撥液性の厚膜部と親液性の薄膜部とを有する、段差形状を含むパターンを備える有機ELディスプレイの、開口部、厚膜部、及び薄膜部の配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の構成を有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)該段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)該段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程、をこの順に有する、硬化膜の製造方法であって、
前記(1)パターンを形成する工程が、(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有し、
該フォトマスクが、透光部及び遮光部を含み、該透光部と該遮光部の間に、透過率が該透光部の値より低く、かつ透過率が該遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクであって、
該透光部と該半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ該遮光部と該半透光部とが隣接する箇所を有するフォトマスクである、硬化膜の製造方法。
【0014】
<ネガ型感光性樹脂組成物>
本発明の硬化膜の製造方法は、(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、を有する。ネガ型感光性樹脂組成物としては、例えば、樹脂、ラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び着色剤などを含有する公知のネガ型感光性樹脂組成物が使用できる。樹脂としては、(A)アルカリ可溶性樹脂が好ましく含有され、例えば、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリシロキサン、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、又は、アクリル樹脂などを用いることができる。また、アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ溶液で現像できるものを言う。後述する溶剤を除く、ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める樹脂の含有比率は、5~95質量%が好ましい。
【0015】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、ハーフトーン特性向上、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、及び、硬化膜の耐熱性向上の観点から、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。また、露光時の感度向上、及び、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による段差形状保持の観点から、さらに、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及び、アクリル樹脂から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。また、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及び、アクリル樹脂としては、露光時の感度向上、現像後低テーパー形状のパターン形成、及び、熱硬化時におけるパターンリフロー抑制の観点から、エチレン性不飽和二重結合基を含有することが好ましい。
【0016】
ここでいう露光とは、活性化学線(放射線)の照射のことであり、例えば、可視光線、紫外線、電子線、又はX線などの照射が挙げられる。一般的に使用されている光源であるという観点から、例えば、可視光線や紫外線の照射が可能な超高圧水銀灯光源が好ましく、j線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、又はg線(波長436nm)の照射がより好ましい。以降、露光とは、活性化学線(放射線)の照射をいう。
【0017】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性基として、フェノール性水酸基、シラノール基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基及びメルカプト基から選ばれる一種類以上を有することが好ましく、フェノール性水酸基及びシラノール基から選ばれる一種類以上を有することがより好ましく、フェノール性水酸基を有することがさらに好ましい。(A)アルカリ可溶性樹脂が、上記のアルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像時において、ハーフトーン露光部の溶解性を制御でき、ハーフトーン特性を向上できるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。そのため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程によって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0018】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリシロキサン、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂などが挙げられる。
【0019】
特に(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。上記の樹脂を含有させることで、アルカリ現像時において、ハーフトーン露光部の溶解性を制御でき、ハーフトーン特性を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。また、(A)アルカリ可溶性樹脂としては、露光時の感度向上、及び、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による段差形状保持の観点から、エチレン性不飽和二重結合基を含有することが好ましい。一方で、(A)アルカリ可溶性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合基を有しないものも好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有しないことで、ハーフトーンフォトマスクを用いた露光において、露光部とハーフトーン露光部との間でUV硬化度に緩やかな差が付き、アルカリ現像時における膜減りの勾配が付くと考えられる。そのため、アルカリ現像時において、ハーフトーン露光部の溶解性を制御でき、ハーフトーン特性を向上できるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。そのため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程によって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0020】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0021】
<(A1-1)ポリイミド及び(A1-2)ポリイミド前駆体>
(A1-2)ポリイミド前駆体としては、例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、又はポリイソイミドが挙げられる。
(A1-1)ポリイミドとしては、例えば、上述したポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、又はポリイソイミドを、加熱、又は酸若しくは塩基などを用いた反応により、脱水閉環させることによって得られる公知のものが挙げられ、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ジアミン及び/又はその誘導体残基を有する。
具体的には、(A1-1)ポリイミドとしては、硬化膜の耐熱性向上の観点から、下記一般式(1)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式(1)において、Rは、4~10価の有機基を表し、Rは、2~10価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基、又は一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。pは、0~6の整数を表し、qは、0~8の整数を表す。
一般式(1)のRは、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、Rは、ジアミン及び/又はその誘導体残基を表す。テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物、又はテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。ジアミン誘導体としては、ジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0024】
一般式(1)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する4~10価の有機基が好ましい。また、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。qは、1~8が好ましい。上述した脂肪族構造、脂環式構造、及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0025】
【化2】
【0026】
一般式(5)及び(6)において、R19~R21は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~6のアシル基、又は炭素数6~15のアリール基を表す。上述したアルキル基、アシル基、及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0027】
(A1-2)ポリイミド前駆体としては、公知のものを含有させることができ、具体的には下記一般式(3)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
一般式(3)において、Rは、4~10価の有機基を表し、R10は、2~10価の有機基を表す。R11は、上述した一般式(5)又は一般式(6)で表される置換基を表し、R12は、フェノール性水酸基、スルホン酸基、又はメルカプト基を表し、R13は、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基、又は上述した一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。tは、2~8の整数を表し、uは、0~6の整数を表し、vは、0~8の整数を表し、2≦t+u≦8である。
一般式(3)のRは、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、R10は、ジアミン及び/又はその誘導体残基を表す。テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物、又はテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。ジアミン誘導体としては、ジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0030】
一般式(3)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する4~10価の有機基が好ましい。また、R10は、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。vは、1~8が好ましい。上述した脂肪族構造、脂環式構造、及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0031】
<(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体>
(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、公知のものを含有させることができ、例えば、ポリヒドロキシアミドが挙げられる。
具体的には一般式(4)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0032】
【化4】
【0033】
一般式(4)において、R14は、2~10価の有機基を表し、R15は、芳香族構造を有する4~10価の有機基を表す。R16は、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基、又は上述した一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表し、R17は、フェノール性水酸基を表し、R18は、スルホン酸基、メルカプト基、又は上述した一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。wは、0~8の整数を表し、xは、2~8の整数を表し、yは、0~6の整数を表し、2≦x+y≦8である。
一般式(4)のR14は、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、R15は、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を表す。ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル、トリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル、ジホルミル化合物が挙げられる。
【0034】
一般式(4)において、R14は、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。また、R15は、炭素数6~30の芳香族構造を有する4~10価の有機基が好ましい。上述した脂肪族構造、脂環式構造、及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0035】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾールとしては、公知のものを含有させることができ、具体的には、一般式(2)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(2)において、Rは、2~10価の有機基を表し、Rは、芳香族構造を有する4~10価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基、又は上述した一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。rは、0~8の整数を表し、sは、0~6の整数を表す。
一般式(2)のRは、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、Rは、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を表す。ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル、トリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル、ジホルミル化合物が挙げられる。
【0038】
一般式(2)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造、及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。また、Rは、炭素数6~30の芳香族構造を有する4~10価の有機基が好ましい。sは、1~8が好ましい。上述した脂肪族構造、脂環式構造、及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0039】
<テトラカルボン酸及びジカルボン酸並びにそれらの誘導体>
テトラカルボン酸としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸、脂環式テトラカルボン酸、又は脂肪族テトラカルボン酸が挙げられる。これらのテトラカルボン酸は、カルボキシ基の酸素原子以外にヘテロ原子を有してもよい。
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体中のジカルボン酸及びその誘導体としては、トリカルボン酸及び/又はその誘導体を用いても構わない。ジカルボン酸及びトリカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族トリカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸及びトリカルボン酸は、カルボキシ基の酸素原子以外に、酸素原子以外のヘテロ原子を有してもよい。
テトラカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸、並びにそれらの誘導体としては、例えば、国際公開第2016/158672号に記載の化合物が挙げられる。
【0040】
<ジアミン及びその誘導体>
ジアミン及びその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミン、ビスアミノフェノール化合物、脂環式ジアミン、脂環式ジヒドロキシジアミン、脂肪族ジアミン、又は脂肪族ジヒドロキシジアミンが挙げられる。これらのジアミン及びその誘導体は、アミノ基及びその誘導体が有する窒素原子、酸素原子以外に、ヘテロ原子を有してもよい。
ジアミン及びその誘導体としては、例えば、国際公開第2016/158672号に記載の化合物が挙げられる。
【0041】
<フッ素原子を有する構造単位>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、フッ素原子を有する構造単位を、全構造単位の10~100mol%で含有することが好ましい。
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、フッ素原子を有する構造単位を含有することで、透明性が向上し、ハーフトーン露光部の光硬化を促進し、ハーフトーン特性を向上できるとともに、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができる。
【0042】
(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリイミド前駆体が含有する、フッ素原子を有する構造単位としては、フッ素原子を有するテトラカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位、又はフッ素原子を有するジアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位が挙げられる。
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体が含有する、フッ素原子を有する構造単位としては、フッ素原子を有するジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位、又はフッ素原子を有するビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体に由来する構造単位が挙げられる。
【0043】
<末端封止剤>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、樹脂の末端が、モノアミン、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸塩化物、又はモノカルボン酸活性エステルなどの末端封止剤で封止されていても構わない。樹脂の末端が、末端封止剤で封止されることで、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含有する樹脂組成物の塗液の保管安定性を向上させることができる。
【0044】
ポリシロキサンとしては、例えば、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、二官能オルガノシラン、及び一官能オルガノシランから選ばれる一種類以上を加水分解し、脱水縮合させて得られるポリシロキサンが挙げられる。
【0045】
ポリシロキサンとしては、硬化膜の耐熱性向上及び現像後の解像度向上の観点から、三官能オルガノシラン単位及び/又は四官能オルガノシラン単位を含有することが好ましい。三官能オルガノシランとしては、一般式(7)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。四官能オルガノシラン単位としては、一般式(8)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。また、パターン形状の低テーパー化及び硬化膜の機械特性向上の観点から、二官能オルガノシラン単位を含有しても構わない。二官能オルガノシランとしては、一般式(9)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。また、樹脂組成物の塗液の保管安定性向上の観点から、一官能オルガノシラン単位を含有しても構わない。一官能オルガノシラン単位としては、一般式(10)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。
【0046】
【化6】
【0047】
一般式(7)~(10)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。一般式(7)~(10)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数6~15のアリール基が好ましい。上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及びアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
一般式(7)、一般式(8)、一般式(9)、又は一般式(10)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとしては、例えば、国際公開第2016/158672号に記載の化合物が挙げられる。
【0048】
多環側鎖含有樹脂としては、例えば、“ADEKA ARKLS”(登録商標) WR-101若しくは同 WR-301(以上、いずれもADEKA社製)、OGSOL(登録商標) CR-1030、同 CR-TR1、同 CR-TR2、同 CR-TR3、同 CR-TR4、同 CR-TR5、同 CR-TR6、同 CR-TR7、同 CR-TR8、同 CR-TR9、若しくは同 CR-TR10(以上、いずれも大阪ガスケミカル社製)、又はTR-B201若しくはTR-B202(以上、いずれもTRONLY社製)が挙げられる。
【0049】
酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、“KAYARAD”(登録商標) PCR-1222H、同 CCR-1171H、同 TCR-1348H、同 ZAR-1494H、同 ZFR-1401H、同 ZCR-1798H、同 ZXR-1807H、同 ZCR-6002H、若しくは同 ZCR-8001H(以上、いずれも日本化薬社製)、又は“NK OLIGO”(登録商標) EA-6340、同 EA-7140、若しくは同 EA-7340(以上、いずれも新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0050】
アクリル樹脂としては、例えば、酸性基を有する共重合成分、(メタ)アクリル酸エステルに由来する共重合成分、及びその他の共重合成分から選ばれる一種類以上の共重合成分を、ラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂が挙げられる。酸性基を有する共重合成分、(メタ)アクリル酸エステルに由来する共重合成分、及びその他の共重合成分としては、例えば、国際公開第2016/158672号に記載の化合物が挙げられる。
【0051】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、(A)アルカリ可溶性樹脂として、さらに、その他のアルカリ可溶性基を含有しても構わない。その他のアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性基として、フェノール性水酸基を有する樹脂として、ハーフトーン特性向上の観点から、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンからなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、ノボラック樹脂を含有することがより好ましい。ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンは、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0052】
ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール化合物と、アルデヒド化合物又はケトン化合物とを酸触媒下で反応させて得られるノボラック樹脂が挙げられ、フェノール化合物に由来する芳香族構造を有する。ノボラック樹脂としては、アルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を有する。レゾール樹脂としては、上述したノボラック樹脂の性状と、重合触媒を除き同様の性状を有するものをいう。レゾール樹脂としては、酸触媒の代わりにアルカリ触媒を用いて得られるレゾール樹脂が挙げられる。
【0053】
ポリヒドロキシスチレンとしては、例えば、ヒドロキシスチレン化合物の共重合成分、スチレン化合物の共重合成分、及びその他の共重合成分からなる群より選ばれる一種類以上の共重合成分を、ラジカル共重合させて得られるポリヒドロキシスチレンが挙げられ、ヒドロキシスチレン化合物の共重合成分に由来する芳香族構造を有する。ポリヒドロキシスチレンとしては、アルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を有する。
【0054】
ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンとしては、その他の酸性基を有しても構わない。酸性基としては、pH6未満の酸性度を示す基が好ましい。pH6未満の酸性度を示す基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、又はヒドロキシイミド基が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基が好ましい。また、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンとしては、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有することで、露光時の感度を向上できるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成できる。
【0055】
<(B)ラジカル重合性化合物>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、(B)ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。(B)ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物をいう。露光時、後述する(C1)光重合開始剤から発生するラジカルによって、(B)ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。
(B)ラジカル重合性化合物を含有させることで、露光時のUV硬化が促進されて、露光時の感度を向上させることができる。加えて、熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の硬度を向上させることができる。
【0056】
(B)ラジカル重合性化合物としては、公知のものを含有することができ、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。露光時の感度向上及び硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。
【0057】
(B)ラジカル重合性化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、若しくは1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、又はそれらの酸変性体が挙げられる。また、現像後の解像度向上の観点から、分子中に2つ以上のグリシドキシ基を有する化合物とエチレン性不飽和二重結合基を有する不飽和カルボン酸とを開環付加反応させて得られる化合物に、多塩基酸カルボン酸又は多塩基カルボン酸無水物を反応させて得られる化合物も好ましい。
【0058】
(B)ラジカル重合性化合物としては、現像後低テーパー形状のパターン形成の観点から、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、又は2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダンが好ましい。
【0059】
(B)ラジカル重合性化合物としては、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、及び、段差膜厚向上の観点から、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、δ-バレロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、β-プロピオラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性グリセリンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性1,3-ビス((メタ)アクリロキシメチル)イソシアヌル酸、又はε-カプロラクトン変性1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸が好ましい。
【0060】
ネガ型感光性樹脂組成物に占める(B)ラジカル重合性化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、15~65質量部が好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上でき、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できるとともに、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0061】
(B)ラジカル重合性化合物としては、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基、及び、オキシアルキレン鎖などの親水性骨格とを有する化合物をいう。(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物としては、(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造、(II)少なくとも3つのエチレン性不飽和二重結合基、及び、(III)少なくとも1つの親水性骨格、を有する化合物が好ましい。(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制できる。また、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。これは、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低く、活性化学線の照射後においても、未反応の(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が残存していると推定される。さらに親水性骨格を有するため、現像時に(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が薄膜部から溶出すると考えられる。そのため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンにおける厚膜部は光硬化する一方、薄膜部は光硬化による架橋度向上が阻害され、その後の熱硬化時におけるパターンリフローによって、低テーパー化すると推定される。
【0062】
(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が有する親水性骨格としては、熱硬化後における厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターン形成の観点、及び薄膜部における熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成の観点から、オキシアルキレン鎖、ラクトン変性鎖、ラクタム変性鎖、及びヒドロキシアルキレン鎖から選ばれる一種類以上を有することが好ましく、ラクトン変性鎖、及びラクタム変性鎖から選ばれる一種類以上を有することがより好ましい。(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物としては、分子中に一般式(24)で表される基と3個以上の一般式(25)で表される基とを有する化合物が好ましい。
【0063】
【化7】
【0064】
一般式(24)において、R125は、水素、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Z17は、一般式(29)で表される基又は一般式(30)で表される基を表す。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表し、cは、0又は1を表し、dは、1~4の整数を表し、eは、0又は1を表す。cが0の場合、dは1である。一般式(25)において、R126~R128は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(30)において、R129は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。一般式(24)において、cは1が好ましく、eは1が好ましい。一般式(25)において、R126は、水素、ヒドロキシ基又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。R127及びR128は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。一般式(30)において、R129は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。上述した一般式(24)において、cが、0であって、eが、1であって、Z17が、一般式(29)であると、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物が、オキシアルキレン鎖を有する。一方、一般式(24)において、cが、1であって、eが、1であると、ラクトン変性鎖、及びラクタム変性鎖から選ばれる一種類以上を有する。また、一般式(24)において、cが、0であって、eが、1であって、Z17が、一般式(29)であって、R125が、ヒドロキシ基であると、オキシアルキレン鎖を有する。
【0065】
(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物としては、前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する構造として、前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来するヒドロキシ基を有することが好ましい。上述した構造を有することで、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。これは同様に、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物の親水性に起因すると推測される。前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来するヒドロキシ基としては、前記(II)少なくとも3つのエチレン性不飽和二重結合基、及び、前記(III)少なくとも1つの親水性骨格が結合していない、ヒドロキシ基が挙げられる。例えば、前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物が、分子中に4つのヒドロキシ基を有する場合、分子中の3つのヒドロキシ基が結合に使用され、結合に使用されていない1つのヒドロキシ基が残存する場合などが挙げられる。
【0066】
(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物基から選ばれる一種類以上を有することが好ましい。上述した基を有することで、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。これは同様に、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物の親水性に起因すると推測される。前記フェノール性水酸基、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物基としては、上述した(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来するヒドロキシ基が、前記フェノール性水酸基、カルボキシ基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物と反応して結合して得られる、フェノール性水酸基、カルボキシ基、又はカルボン酸無水物基が挙げられる。例えば、前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する1つのヒドロキシ基が、ヒドロキシ基と反応可能な基、及びフェノール性水酸基を有する化合物と反応して得られるフェノール性水酸基が挙げられる。また、前記(I)分子中に少なくとも3つのヒドロキシ基を有する化合物に由来する1つのヒドロキシ基が、カルボン酸無水物基と反応して得られるカルボキシ基が挙げられる。
【0067】
<(C1)光重合開始剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、(C)感光剤として、(C1)光重合開始剤を含有することが好ましい。(C1)光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。(C1)光重合開始剤を含有させることで、上述した(B)ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0068】
(C1)光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤、又は安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、露光時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、又はベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0069】
(C1)光重合開始剤としては、一般式(15)で表される基、一般式(16)で表される基、一般式(17)で表される基及び一般式(18)で表される基から選ばれる一種類以上を有することが好ましい。(C1)光重合開始剤が、上記の基を有することで、紫外領域の吸光度が向上し、露光時における膜の深部でのラジカル硬化が促進され、露光時の感度を向上できるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。また、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができ、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0070】
【化8】
【0071】
一般式(15)~(18)において、R55~R58は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、又は環を形成する基を表す。複数のR55~R58で形成する環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロペンタン環、又はシクロヘキサン環が挙げられる。aは0~7の整数であり、bは0~2の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して、0~3の整数である。複数のR55~R58で形成する環としては、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
【0072】
ネガ型感光性樹脂組成物に占める(C1)光重合開始剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、1~20質量部が好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。また、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができる。
【0073】
<(D)着色剤、(Da)黒色剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、公知の(D)着色剤を含有してもよい。(D)着色剤としては、顔料、染料などを使用でき、特に可視光に遮光性が必要な場合は、(Da)黒色剤を含有することが好ましい。(D)着色剤とは、特定波長の光を吸収する化合物であり、特に、可視光線の波長(380~780nm)の光を吸収することで、着色する化合物をいう。(D)着色剤を含有させることで、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる膜を着色させることができ、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光を、所望の色に着色させる、着色性を付与することができる。また、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光から、(D)着色剤が吸収する波長の光を遮光する、遮光性を付与することができる。
【0074】
(Da)黒色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する公知の化合物をいう。例えば、(D1a)黒色顔料、(D2a-1)黒色染料などが挙げられる。(Da)黒色剤を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するため、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光を遮光する、遮光性を向上させることができる。このため、カラーフィルタのブラックマトリックス又は液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサーなどの遮光膜や、有機ELディスプレイの画素分割層又はTFT平坦化層など、外光反射の抑制によって高コントラスト化が要求される用途に好適である。
【0075】
一般に、ネガ型感光性樹脂組成物では、(Da)黒色剤を含有する場合、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の光も遮光されるため、パターニング露光時の膜の硬化が不足する場合が多い。そのため、熱硬化時のパターンリフローにより、段差形状を有するパターンにおける厚膜部と薄膜部が一体化して境界部が消失するため、段差形状が消失してしまう場合がある。本発明の硬化膜の製造方法によれば、上記のような(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物においても、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、溶剤を除く、ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(D)着色剤の含有比率は、5~70質量%が好ましい。
【0076】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、後述する(F)撥インク剤、及び(D)着色剤として(Da)を含有することが好ましい。(F)撥インク剤、及び(D)着色剤として(Da)を含有させることで、膜の撥液性を向上できるとともに、遮光性を向上できる。加えて、現像後の残渣発生を抑制できる。(D)着色剤として顔料を含有する場合、顔料起因の現像後の残渣発生を抑制できる観点で好ましく、特に、(Da)黒色剤として(D1a)黒色顔料を含有する場合により好ましい。これは、一般に膜表面において、酸素阻害によるUV硬化不足によって、現像時に硬化部の膜が剥がれ、開口部の付着することで現像残渣が発生する場合がある。このような場合において、(F)撥インク剤が膜表面に偏在することで、膜表面においてアルカリ現像液の浸透が抑制され、現像残渣の発生が抑制されたと推測される。特に、顔料や(D1a)黒色顔料を含有する場合において、現像残渣の発生を抑制できる。
【0077】
(D1a)黒色顔料としては、例えば、アントラキノン系黒色顔料、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料、又はカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、グラファイト若しくは銀スズ合金、又は、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、若しくは銀などの金属における、微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物、若しくは酸窒化物や、赤、橙、黄、緑、青、又は紫色の公知の顔料から選ばれる二色以上の顔料を組み合わせることで、擬似的に黒色に着色する、着色顔料混合物などが挙げられる。
【0078】
(D1b)黒色以外の顔料としては、青色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60、又は64が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。赤色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントレッド9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、190、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、又は250が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。黄色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、120、125、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、166、168、175、180、181、185、192、又は194が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。紫色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、又は50が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。橙色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントオレンジ12、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、又は72が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。緑色に着色する顔料としては、例えば、ピグメントグリーン7、10、36、又は58が挙げられる(数値はいずれもC.I.ナンバー)。
【0079】
<(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、上述した(D1a)黒色顔料が、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料であることが好ましい。(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料は、一般的な有機顔料と比較して、樹脂組成物中の顔料の単位含有比率当たりの遮光性に優れ、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の透過率が高い。そのため、少ない含有比率で同等の遮光性を付与することができ、露光時の感度を向上させることができる。また、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができ、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、発光素子の信頼性を向上させることができる。
【0080】
(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料とは、分子中にベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料としては、例えば、“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製)、国際公開第2010/081624号記載の黒色顔料、又は国際公開第2010/081756号記載の黒色顔料が挙げられる。
【0081】
<(D1a-3a)特定の着色顔料混合物>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、上述した(D1a)黒色顔料が、(D1a-3a)特定の着色顔料混合物であることが好ましい。(D1a-3a)特定の着色顔料混合物とは、以下の(I)~(IV)のいずれかであることが好ましい。
(I)青色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料を含む着色顔料混合物
(II)紫色顔料、及び黄色顔料を含む着色顔料混合物
(III)青色顔料、赤色顔料、及び橙色顔料を含む着色顔料混合物
(IV)青色顔料、紫色顔料、及び橙色顔料を含む着色顔料混合物
(D1a-3a)特定の着色顔料混合物は、一般的な有機顔料と比較して、樹脂組成物中の顔料の単位含有比率当たりの遮光性に優れ、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の透過率が高い。そのため、少ない含有比率で同等の遮光性を付与することができ、露光時の感度を向上させることができる。また、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程による、段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができ、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、発光素子の信頼性を向上させることができる。
【0082】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、上述した(D1a-3a)特定の着色顔料混合物において、上述した青色顔料が、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、及びC.I.ピグメントブルー60からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、上述した赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド179、及びC.I.ピグメントレッド190からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、上述した黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー192、及びC.I.ピグメントイエロー194からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、上述した紫色顔料が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット29、及びC.I.ピグメントバイオレット37からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、上述した橙色顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましい。
【0083】
<(D2)染料>
染料としては、例えば、直接染料、反応性染料、硫化染料、バット染料、酸性染料、含金属染料、含金属酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、分散染料、カチオン染料、又は蛍光増白染料が挙げられる。ここで分散染料とは、水に不溶又は難溶であり、スルホン酸基、カルボキシ基などのアニオン性イオン化基を持たない染料をいう。
(D2)染料としては、アントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、フタロシアニン系染料、メチン系染料、オキサジン系染料、キノリン系染料、インジゴ系染料、インジゴイド系染料、カルボニウム系染料、スレン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、トリアリールメタン系染料、又はキサンテン系染料が挙げられる。後述する溶剤への溶解性及び耐熱性の観点から、アントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料が好ましい。
<(F)撥インク剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、(F)撥インク剤を含有することが好ましい。(F)撥インク剤とは、撥水性の構造、及び/又は撥油性の構造を有する化合物をいう。(F)撥インク剤を含有させることで、膜の撥液性を向上できるため、膜の純水に対する接触角、及び/又は膜の有機溶剤に対する接触角を高めることができる。撥水性の構造、及び/又は撥油性の構造としては、フッ素原子を有する構造が好ましく、シリル基又はシロキサン結合を有する構造も好ましい。フッ素原子を有する構造としては、2つ以上のフッ素原子を有するアルキル基、2つ以上のフッ素原子を有するシクロアルキル基、2つ以上のフッ素原子を有するアリール基、2つ以上のフッ素原子を有するアルキレン鎖、2つ以上のフッ素原子を有するシクロアルキレン鎖、又は2つ以上のフッ素原子を有するアリーレン鎖が好ましい。シリル基又はシロキサン結合を有する構造としては、2つ以上のジメチルシリル構造を有するアルキル基、2つ以上のジメチルシロキサン結合を有するアルキル基、2つ以上のジメチルシロキサン結合を有するポリジメチルシロキサン構造、2つ以上のジメチルシリル構造を有するアルキレン鎖、又は2つ以上のジメチルシロキサン結合を有するアルキレン鎖が好ましい。
【0084】
(F)撥インク剤としては、光重合性基、及び/又は熱架橋性基を有することが好ましく、分子中に2つ以上の光重合性基、及び/又は分子中に2つ以上の熱架橋性基を有することが好ましい。光重合性基としては、エチレン性不飽和二重結合基を有する基が好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有する基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、又はマレイミド基が好ましく、(メタ)アクリル基がより好ましい。熱架橋性基としては、エポキシ基、アルコキシメチル基、メチロール基、オキセタニル基、又はブロックイソシアネート基が好ましい。
【0085】
(F)撥インク剤が光重合性基を有することで、露光時、上述した(C1)光重合開始剤から発生するラジカル、及び/又は上述した(B)ラジカル重合性化合物から発生するラジカルによって、(B)ラジカル重合性化合物とUV硬化させて架橋させることができる。そのため、現像時における(F)撥インク剤の膜からの溶出を抑制し、膜に固定化することができるため、現像後においても膜の撥液性を向上できる。また、(F)撥インク剤が熱架橋性基を有することで、熱硬化時、上述した(A)アルカリ可溶性樹脂の主鎖及び/又は側鎖と反応して架橋させることができる。そのため、熱硬化時における(F)撥インク剤の膜からの揮発を抑制し、膜に固定化することができるため、熱硬化後においても膜の撥液性を向上できる。また、(F)撥インク剤が揮発してパターン開口部に付着すると、パターン開口部に撥液性が付与されてしまうため、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程において、インクの濡れ性が低下し、有機EL層の成膜不良の要因となる。従って、(F)撥インク剤が熱架橋性基を有することで、有機EL層の成膜不良を抑制できる。加えて、(F)撥インク剤の熱分解による脱ガス発生又は昇華物発生を抑制し、パターン開口部への残渣の付着を防止できるため、有機EL層の成膜不良の抑制が可能となる。
【0086】
また、本発明の硬化膜の製造方法において、(F)撥インク剤が光重合性を有することで、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、(F)撥インク剤のUV硬化が促進されるため、熱硬化後においても膜の撥液性を向上できるとともに、有機EL層の成膜不良を抑制できる。従って、本発明の硬化膜の製造方法としては、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。
【0087】
(F)撥インク剤としては、ポリマー鎖を有することも好ましく、ポリマー鎖の繰り返し単位の側鎖に撥水性の構造、及び/又は撥油性の構造を有することも好ましい。また、(F)撥インク剤としては、ポリマー鎖を有することも好ましく、ポリマー鎖の繰り返し単位の側鎖に光重合性、及び/又は熱架橋性基を有することで、分子中に2つ以上の光重合性基、及び/又は分子中に2つ以上の熱架橋性基を有することも好ましい。ポリマー鎖を有する(F)撥インク剤としては、アクリル樹脂系撥インク剤、ポリオキシアルキレンエーテル系撥インク剤、ポリエステル系撥インク剤、ポリウレタン系撥インク剤、ポリオール系撥インク剤、ポリエチレンイミン系撥インク剤、又はポリアリルアミン系撥インク剤が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、アクリル樹脂系撥インク剤、ポリオキシアルキレンエーテル系撥インク剤、ポリエステル系撥インク剤、ポリウレタン系撥インク剤、又はポリオール系撥インク剤が好ましく、アクリル樹脂系撥インク剤がより好ましい。
【0088】
ネガ型感光性樹脂組成物に占める(F)撥インク剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、1~20質量部が好ましい。含有量が上記範囲内であると、膜の撥液性を向上させることができるとともに、現像後の残渣発生を抑制できる。また、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、有機EL層の成膜不良を抑制できる。
【0089】
<溶剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、溶剤を含有することが好ましい。溶剤とは、樹脂組成物中に含有させる各種樹脂及び各種添加剤を溶解させることができる化合物をいう。溶剤を含有させることで、樹脂組成物中に含有させる各種樹脂及び各種添加剤を均一に溶解させ、硬化膜の透過率を向上させることができる。また、樹脂組成物の粘度を任意に調整することができ、基板上に所望の膜厚で成膜することができる。加えて、樹脂組成物の表面張力又は塗布時の乾燥速度などを任意に調整することができ、塗布時のレベリング性及び塗膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0090】
溶剤としては、各種樹脂及び各種添加剤の溶解性の観点から、アルコール性水酸基を有する化合物、カルボニル基を有する化合物、又はエーテル結合を3つ以上有する化合物が好ましい。加えて、大気圧下の沸点が、110~250℃である化合物がより好ましい。沸点を110℃以上とすることで、塗布時に適度に溶剤が揮発して塗膜の乾燥が進行するため、塗布ムラを抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。一方、沸点を250℃以下とすることで、塗膜中に残存する溶剤量を低減することができる。そのため、熱硬化時の膜収縮量を低減させることができ、硬化膜の平坦性を高め、膜厚均一性を向上させることができる。
【0091】
(D)着色剤として、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料を含有させる場合、溶剤としては、カルボニル基又はエステル結合を有する溶剤が好ましい。カルボニル基又はエステル結合を有する溶剤を含有させることで、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させることができる。また、分散安定性の観点から、溶剤としては、アセテート結合を有する溶剤がより好ましい。アセテート結合を有する溶剤を含有させることで、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させることができる。
【0092】
<その他の添加剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、他の樹脂若しくはそれらの前駆体、又は、他の添加剤を含有しても構わない。他の樹脂又はそれらの前駆体としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、若しくはポリウレタン、又はそれらの前駆体が挙げられる。他の添加剤としては、(C2)光酸発生剤、(E)分散剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、架橋剤、シランカップリング剤又は界面活性剤が挙げられる。
【0093】
<(C2)光酸発生剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、(C)感光剤として、(C2)光酸発生剤を含有しても構わない。(C2)光酸発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸を発生する化合物をいう。(C2)光酸発生剤を含有させることで、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。また、樹脂組成物の熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。加えて、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制することができる。(C2)光酸発生剤としては、トリオルガノスルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物又はスルホンイミド化合物が好ましい。
【0094】
<(E)分散剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、(E)分散剤を含有することが好ましい。(E)分散剤とは、上述した(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料などの表面と相互作用する表面親和性基と、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させる分散安定化構造とを有する化合物をいう。(E)分散剤の分散安定化構造としては、ポリマー鎖及び/又は静電荷を有する置換基などが挙げられる。
【0095】
(E)分散剤を含有させることで、ネガ型感光性樹脂組成物が、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料を含有する場合、それらの分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。
【0096】
表面親和性基としては、例えば、塩基性基、塩基性基及び酸性基、酸性基、塩基性基及び/又は酸性基が、酸及び/又は塩基と塩形成した構造が挙げられる。ポリマー鎖を有する(E)分散剤としては、アクリル樹脂系分散剤、ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、ポリオール系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、又はポリアリルアミン系分散剤が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、アクリル樹脂系分散剤、ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、又はポリオール系分散剤が好ましい。
【0097】
<増感剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、増感剤を含有することが好ましい。増感剤とは、露光によるエネルギーを吸収し、内部転換及び項間交差によって励起三重項の電子を生じ、上述した(C1)光重合開始剤などへのエネルギー移動を介することが可能な化合物をいう。増感剤を含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。増感剤としては、チオキサントン系増感剤が好ましい。
【0098】
<連鎖移動剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤とは、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端からラジカルを受け取り、他のポリマー鎖へのラジカル移動を介することが可能な化合物をいう。連鎖移動剤を含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0099】
<重合禁止剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤とは、露光時に発生したラジカル、又は、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。重合禁止剤を適量含有させることで、現像後の残渣発生を抑制し、現像後の解像度を向上させることができる。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。
【0100】
<架橋剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤とは、樹脂と結合可能な架橋性基を有する化合物をいう。架橋剤を含有させることで、硬化膜の硬度及び耐薬品性を向上させることができるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成が可能となる。架橋剤としては、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、又はオキセタニル基などの熱架橋性を、分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。
【0101】
<シランカップリング剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤とは、加水分解性のシリル基又はシラノール基を有する化合物をいう。シランカップリング剤を含有させることで、樹脂組成物の硬化膜と下地の基板界面における相互作用が増大し、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、又はシリケート化合物が好ましい。
【0102】
<界面活性剤>
ネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、界面活性剤を含有しても構わない。界面活性剤とは、親水性の構造及び疎水性の構造を有する化合物をいう。界面活性剤を適量含有させることで、樹脂組成物の表面張力を任意に調整することができ、塗布時のレベリング性が向上し、塗膜の膜厚均一性を向上させることができる。界面活性剤としては、フッ素樹脂系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンエーテル系界面活性剤、又はアクリル樹脂系界面活性剤が好ましい。
【0103】
<硬化膜の製造方法>
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の(1)、(2)及び(3)の工程を、この順に有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)該段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)該段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程。
【0104】
前記(1)パターンを形成する工程により、段差形状を有するパターンを形成することで、有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0105】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1)パターンを形成する工程は、さらに、以下の(1-1)、(1-2)及び(1-3)の工程を有することが好ましい。
(1-1)基板上に、前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、
(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、及び、
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程の後、さらに、(1-3)アルカリ溶液を用いて現像する工程。
【0106】
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する方法としては、例えば、インクジェット印刷などで異なる寸法のパターン状に、二回以上パターン状に塗布成膜する方法、ハーフトーンフォトマスクを用いたフォトリソグラフィーにより、直接パターン加工する方法、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて二回以上露光し、フォトリソグラフィーによりパターン加工する方法、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、フォトレジストを用いて二回以上エッチングしてパターン加工する方法、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用い、二層成膜をすることで、フォトリソグラフィー又はエッチングによりパターン加工する方法が挙げられるが、工程数の削減による生産性の向上及びプロセスタイム短縮の観点から、ハーフトーンフォトマスクを用いたフォトリソグラフィーにより、直接パターン加工する方法が好ましい。
【0107】
<第1電極を形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、ネガ型樹脂組成物の塗膜を成膜する基板として、第1電極を形成する工程、を有することが好ましい。後述する有機ELディスプレイにおいて、第1電極と、後述する第2電極として、透明電極と非透明電極とを組み合わせることにより、発光層における発光を片側に取り出すことができる。有機ELディスプレイにおける透明電極及び非透明電極には、電気特性に優れること、陽極として用いる場合には効率良く正孔を注入できること、陰極として用いる場合には効率良く電子を注入できることなどの複合的な特性が求められる。
【0108】
第1電極としては、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイであれば透明電極、トップエミッション方式の有機ELディスプレイであれば非透明電極を選択する。電極の形成方法としては、例えば、第1電極を形成する材料を成膜した後、パターン加工する方法が挙げられる。成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、化学気相蒸着(CVD)法、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法又は印刷法などが挙げられる。パターン加工方法としては、シャドーマスクやフォトマスクなどを用いたエッチング法などが挙げられる。一般的には、スパッタ法により成膜し、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン加工を行う。
【0109】
<塗膜を成膜する工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1)パターンを形成する工程として、(1-1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、を有することが好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物を成膜する方法としては、例えば、基板上に、上述した樹脂組成物を塗布する方法、又は、基板上に、上述した樹脂組成物をパターン状に塗布する方法が挙げられる。
【0110】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて有機ELディスプレイを製造する場合、前記(1-1)塗膜を成膜する工程における基板は、第1電極基板であって、前記(1-1)塗膜を成膜する工程は、(1-1)第1電極基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜と成膜する工程である。また、後述するパターン加工する方法により、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成することで、有機ELディスプレイにおける、画素分割層(絶縁層)を形成することができる。
【0111】
基板としては、例えば、ガラス上に、電極又は配線として、インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム、及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物、金属(モリブデン、銀、銅、アルミニウム、クロム、若しくはチタンなど)、又はCNT(Carbon Nano Tube)が形成された基板などが用いられる。インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム、及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)、酸化アルミニウムスズ(ATO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、又は酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。
【0112】
<基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布する方法>
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、又はスリットコーティングが挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
【0113】
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。
【0114】
<基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法>
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法としては、例えば、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、又はレーザー印刷が挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
【0115】
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。
【0116】
前記パターン状に塗布する方法において、パターン寸法の二つ以上のパターン状に塗布することで、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。一方で、ハーフトーンフォトマスクを用いたフォトリソグラフィーにより、直接パターン加工する方法の場合、パターニング露光時の活性化学線の照射により、パターンの架橋密度が向上するため、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができ、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、その後のアルカリ溶液を用いた現像工程により、脱ガス起因となるパターン中の低分子成分が除去されるため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。
【0117】
<基板上に成膜した塗膜をパターン加工する方法>
基板上に成膜した、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜をパターン加工する方法としては、例えば、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法又はエッチングによりパターン加工する方法が挙げられる。工程数の削減による生産性の向上及びプロセスタイム短縮の観点から、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法が好ましい。
【0118】
<フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1)パターンを形成する工程として、(1-2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有する。該(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの解像度を向上させることができる。そのため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置において、発光素子を高密度に集積及び配置することが可能となり、表示装置の解像度を向上させることができる。必要に応じて、所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光することが好ましい。
【0119】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する方法としては、例えば、ステッパー、スキャナー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いてパターニング露光する方法が挙げられる。
【0120】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長は、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。一方、活性化学線の露光波長は、450nm以下が好ましく、420nm以下がより好ましく、380nm以下がさらに好ましい。また、水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、若しくはg線(波長436nm)、又は、i線、h線及びg線の混合線が特に好ましい。露光波長が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物が、(C)感光剤として、(C1)光重合開始剤及び/又は(C2)光酸発生剤を含有する場合、露光波長に対するネガ型感光性樹脂組成物の感度を向上できるとともに、パターニング露光時のタクトタイムを短縮することができる。
【0121】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、パターニング露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、XeF(波長351nm)レーザー、XeCl(波長308nm)レーザー、KrF(波長248nm)レーザー、又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。
【0122】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程において、活性化学線の照射に用いられるランプとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Xeエキシマランプ、KrFエキシマランプ、又はArFエキシマランプなどが挙げられる。
【0123】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光量は、i線照度値で、100J/m(10mJ/cm)以上が好ましく、200J/m(20mJ/cm)以上がより好ましく、400J/m(40mJ/cm)以上がさらに好ましく、1,000J/m(100mJ/cm)以上がさらにより好ましい。露光量が上記範囲内であると、基板面内における開口寸法幅などの面内均一性を向上できる。一方、活性化学線の露光量は、i線照度値で、30,000J/m(3,000mJ/cm)以下が好ましく、20,000J/m(2,000mJ/cm)以下がより好ましく、10,000J/m(1,000mJ/cm)以下がさらに好ましい。露光量が上記範囲内であると、パターニング露光時のタクトタイムを短縮することができる。
【0124】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、パターニング露光時の処理雰囲気としては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、水中又は有機溶媒中が挙げられる。パターニング露光時のタクトタイム短縮の観点から、空気下が好ましい。また、パターニング露光時の感度向上によるタクトタイム短縮、及び、現像後低テーパー形状のパターン形成の観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、又は、水中が好ましい。一方、解像度向上の観点から、水中が好ましい。酸素を含有するガスとしては、酸素を1,000ppm以下で含有するガスがより好ましく、100ppm以下で含有するガスがさらに好ましい。
【0125】
前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、パターニング露光時の基板温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。一方、基板温度は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。基板温度が上記範囲内であると、解像度を向上できるとともに、パターニング露光時のタクトタイムを短縮することができる。
【0126】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程におけるフォトマスクは、透光部及び遮光部を含むパターンを有するフォトマスクであって、該透光部と該遮光部の間に、透過率が該透光部の値より低く、かつ透過率が該遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクである。ハーフトーンフォトマスクを用いて露光することで、現像後に段差形状を有するパターンを形成することができる。なお、段差形状を有するパターンにおいて、該透光部を介して活性化学線を照射した露光部から形成した箇所は、厚膜部に相当し、該半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部から形成した箇所は、薄膜部に相当する。
【0127】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクは、前記透光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有する。該透光部と該半透光部とが隣接する箇所を有することで、現像後にフォトマスク上の該透光部に相当する前記厚膜部と、フォトマスク上の該半透光部に相当する前記薄膜部とを有するパターンを形成することができる。さらに、ハーフトーンフォトマスクとしては、前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有する。現像後にフォトマスク上の該遮光部に相当する開口部と、フォトマスク上の該半透光部に相当する前記薄膜部とを有するパターンを形成することができる。ハーフトーンフォトマスクが、上記の箇所を有することで、現像後に該厚膜部、該薄膜部及び該開口部を含む、段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0128】
ハーフトーンフォトマスクとして、透光部と半透光部とが隣接する箇所を有する例を、図3に示す。同様に、ハーフトーンフォトマスクとして、遮光部と半透光部とが隣接する箇所を有する例を、図3に示す。一方、ハーフトーンフォトマスクとして、透光部と半透光部とが隣接する箇所を有しない例を、図4に示す。同様に、ハーフトーンフォトマスクとして、遮光部と半透光部とが隣接する箇所を有しない例を、図4に示す。
【0129】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクとしては、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の透光部を有することが好ましい。該形状の透光部を有することで、現像後に該形状の厚膜部を有するパターンを形成することができる。多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状としては、例えば、円形、正方形、長方形、正五角形、五角形、正六角形、六角形、正八角形若しくは八角形、又は、一部の辺が円弧で形成された四角形若しくは長方形などの多角形や楕円、真円が挙げられる。該形状の厚膜部は、薄膜部と隣接する箇所において、閉じた多角形の形状の柱状パターンとして存在する。従って、例えば、有機ELディスプレイの製造プロセスにおいて、後述する、有機EL層を形成する工程における、蒸着マスクの支持台として機能するため、好適である。また、ハーフトーンフォトマスクとしては、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の遮光部を有することが好ましい。該形状の遮光部を有することで、現像後に該形状の開口部を有するパターンを形成することができる。該形状の開口部は、薄膜部と隣接する箇所において、閉じた多角形形状の開口パターンとして存在する。従って、例えば、有機ELディスプレイの製造プロセスにおいて、後述する、有機EL層を形成する工程において、有機EL層が形成される発光画素部として機能するため、好適である。また、前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有することで、有機ディスプレイにおける、発光画素部と隣接する画素分割層として機能し、電極を形成する際の断線が抑制され、パネルの歩留まり低下を抑制することができるため、好適である。
【0130】
ハーフトーンフォトマスクとして、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の透光部を有する例を、図5に示す。同様に、ハーフトーンフォトマスクとして、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の遮光部を有する例を、図5に示す。
【0131】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクとしては、前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率は、0%以上が好ましい。一方、前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0132】
前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率が、0%である場合、フォトマスク上の前記遮光部はフォトマスク上の前記半透光部にのみ隣接することが好ましい。多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の前記遮光部としては、前記遮光部の全外周が、前記半透光部に隣接することが好ましい。加えて、前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率が、0%である場合、フォトマスク上の前記透光部はフォトマスク上の前記半透光部にのみ隣接することが好ましい。多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の形状の透光部としては、前記透光部の全外周が、前記半透光部に隣接することが好ましい。前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成することが可能となり、パネルの歩留まり低下を抑制することができるため、好適である。
【0133】
前記遮光部の外周に占める、前記透光部の外周が接する長さの比率が、30%以下である場合、現像後に形成されるフォトマスク上の前記遮光部に相当する開口部に隣接する、フォトマスク上の前記半透光部に相当する前記薄膜部が、熱硬化後に低テーパー化するため、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線防止によって、パネルの歩留まり低下を抑制できる。また、電極のエッジ部における電界集中抑制によって、発光素子の劣化を抑制することができる。加えて、現像後に形成されるフォトマスク上の前記半透光部に相当する前記薄膜部の領域を広く確保することができる。前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上させることができるため、好適である。
【0134】
ハーフトーンフォトマスクとして、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率が、0%である例を、図6に示す。同様に、ハーフトーンフォトマスクとして、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率が、0%超である例を、図6に示す。
【0135】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクとしては、前記透光部及び前記半透光部の面積の合計に占める、前記透光部の面積の比率は、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、10%以上が特に好ましい。前記透光部の面積の比率が1%以上であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクを精度良く配置することができるため、高精度な蒸着パターンを形成できることで、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。一方、前記透過部の面積の比率は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下が特に好ましい。前記透光部の面積の比率が50%以下であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0136】
ハーフトーンフォトマスクとして、透光部及び半透光部の面積の合計に占める、前記透光部の面積の比率が、1%以上、かつ50%以下である例を、図7に示す。
【0137】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクにおける、前記透光部の最小パターン寸法としては、30μm以下のパターンを含むことが好ましく、20μm以下のパターンを含むことがより好ましく、15μm以下のパターンを含むことがさらに好ましく、10μm以下のパターンを含むことが特に好ましい。透光部の最小パターン寸法が、30μm以下のパターンを含む場合、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上させることができる。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。一方、最小パターン寸法としては、3μm以上のパターンを含むことが好ましく、5μm以上のパターンを含むことがより好ましく、7μm以上のパターンを含むことがさらに好ましく、10μm以上のパターンを含むことが特に好ましい。透光部の最小パターン寸法が、3μm以上のパターンを含む場合、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0138】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクにおける、前記半透光部の最小パターン寸法としては、30μm以下のパターンを含むことが好ましく、20μm以下のパターンを含むことがより好ましく、15μm以下のパターンを含むことがさらに好ましく、10μm以下のパターンを含むことが特に好ましい。半透光部の最小パターン寸法が、30μm以下のパターンを含む場合、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上させることができる。一方、最小パターン寸法としては、3μm以上のパターンを含むことが好ましく、5μm以上のパターンを含むことがより好ましく、7μm以上のパターンを含むことがさらに好ましく、10μm以上のパターンを含むことが特に好ましい。半透光部の最小パターン寸法が、3μm以上のパターンを含む場合、熱硬化時のパターンリフローによる厚膜部と薄膜部との境界の不明確化を抑制できるとともに、段差形状の消失を抑制することができるため、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0139】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクにおける、前記透光部の透過率を(%TFT)%とするとき、前記半透光部の透過率(%THT)%は、(%TFT)%の10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)%が上記範囲内であると、段差形状を有するパターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。一方、半透光部の透過率(%THT)%は、(%TFT)%の60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)%が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有するパターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0140】
ハーフトーンフォトマスクを介して活性化学線を照射して得られる、段差形状を有するパターンにおいて、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)%の30%である場合の薄膜部の膜厚を(THT30)μm、及び、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の20%である場合の薄膜部の膜厚を(THT20)μmとした場合、(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmは、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましく、0.8μm以上が特に好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有するパターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmは、1.5μm以下が好ましく、1.4μm以下がより好ましく、1.3μm以下がさらに好ましく、1.2μm以下が特に好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、装置等に起因する僅かな露光量のぶれによる膜厚バラつきの発生を低減できることで、膜厚均一性及び有機ELディスプレイ製造における歩留まりを向上させることができる。
【0141】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程におけるフォトマスクは、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いても構わない。透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、二回以上に分けて露光することで、ハーフトーンフォトマスクを用いた場合の露光部とハーフトーン露光部に相当する、二つ以上の露光部を形成することができる。そのため、現像後に段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。一方で、ハーフトーンフォトマスクを用いた場合、段差形状を一括形成可能であるため、パターニング露光時のタクトタイムを短縮することができる。また、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、二回以上に分けて露光する場合の露光位置精度やアライメント誤差に起因する発光不良が無いため、パネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0142】
露光後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が10秒~数時間であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0143】
<アルカリ溶液を用いて現像してパターンを形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1)パターンを形成する工程として、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程の後、さらに、(1-3)アルカリ溶液を用いて現像する工程、を有する。前記(1-3)現像する工程を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの開口部における現像残渣発生を抑制することができる。そのため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。
【0144】
フォトマスクを介して活性化学線を照射した後、アルカリ溶液を用いて現像する方法としては、例えば、自動現像機を用いて現像する方法が挙げられる。ネガ型感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性を有するため、現像後、未露光部が現像液で除去され、レリーフ・パターンを形成することができる。
【0145】
前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンとしては、段差形状を有するパターンである。前記段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角は、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、10°以上がさらに好ましく、12°以上がさらにより好ましく、15°以上が特に好ましい。テーパー角が1°以上であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上させることができる。一方、前記薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましく、35°以下がさらにより好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が60°以下であると、前記薄膜部が現像後に低テーパー形状であるため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。従って、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線防止によって、パネルの歩留まり低下を抑制できるため、好適である。
【0146】
前記(1-3)現像する工程における、現像液としては、アルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液としては、例えば、有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましく、環境面の観点から、アルカリ性を示す化合物の水溶液すなわちアルカリ水溶液がより好ましい。
【0147】
有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物としては、例えば、2-アミノエタノール、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、酢酸(2-ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメチルアミノ)エチル、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムが挙げられる。
【0148】
また、段差形状を有するパターン中の金属不純物低減及び表示装置の表示不良抑制の観点から、本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-3)現像する工程におけるアルカリ溶液は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、トリメチルアミン及びトリエチルアミンから選ばれる一種類以上を含むことが好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム又は水酸化テトラエチルアンモニウムを含むことがより好ましい。上記化合物を含むアルカリ溶液を用いることで、金属不純物を低減でき、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。さらに、パネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0149】
前記(1-3)現像する工程における、アルカリ溶液のアルカリ濃度としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上が特に好ましい。一方、アルカリ濃度としては、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。アルカリ濃度が上記範囲内であると、解像度を向上できるとともに、現像時のタクトタイムを短縮することができる。
【0150】
また、アルカリ濃度としては、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。一方、アルカリ濃度としては、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。アルカリ濃度が上記範囲内であると、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程におけるフォトマスクが、ハーフトーンフォトマスクである場合、フォトマスク上の半透光部に相当する薄膜部において、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。これは、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低く、加えて、膜表面は酸素阻害によってUV硬化度がより低下していると推定される。上記範囲内のアルカリ濃度のアルカリ溶液を用いて現像することで、フォトマスク上の遮光部に相当する開口部がアルカリ溶液に溶解する間に、半透光部の溶解が適度な速度で進行すると考えられる。そのため、酸素阻害の影響を受けている膜表面及びテーパー部が優先的に溶解するため、現像後に低テーパー化すると推定される。
【0151】
また、アルカリ濃度が上記範囲内であると、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。これは、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低く、活性化学線の照射後においても、未反応の(B)ラジカル重合性化合物や未反応の(C)光重合開始剤が残存していると推定される。UV硬化度が低いため、上記範囲内のアルカリ濃度のアルカリ溶液を用いて現像することで、これらの未反応の化合物が薄膜部から溶出すると考えられる。そのため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンにおける厚膜部は光硬化する一方、薄膜部は光硬化による架橋度向上が阻害され、その後の熱硬化時におけるパターンリフローによって、低テーパー化すると推定される。特に、前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成できるとともに、パネルの歩留まり低下を抑制することができるため、好適である。さらに、有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0152】
また、ネガ型感光性樹脂組成物が、上述した(F)撥インク剤を含有する場合、アルカリ濃度が上記範囲内であると、厚膜部の撥液性を向上できるとともに、薄膜部の親液性を向上できる。すなわち、厚膜部の接触角と薄膜部の接触角との差が十分に大きい段差形状を有するパターンを形成できる。これは、前記透光部を介して活性化学線を照射して形成した厚膜部はUV硬化度が高いため、現像時における(F)撥インク剤の膜からの溶出が抑制され、厚膜部の撥液性が向上すると推測される。一方、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低いため、上記範囲内のアルカリ濃度のアルカリ溶液を用いて現像することで、現像時に(F)撥インク剤が膜から溶出し、薄膜部の親液性が向上すると考えられる。従って、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、薄膜部の親液性によって、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、有機EL層の成膜不良を抑制できるとともに、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できる。
【0153】
前記(1-3)現像する工程における、現像液としては、有機溶媒を用いても構わない。現像液としては、有機溶媒とネガ型感光性樹脂組成物に対する貧溶媒の、両方を含有する混合溶液を用いても構わない。
【0154】
前記(1-3)現像する工程において、現像方法としては、例えば、パドル現像、スプレー現像、又はディップ現像が挙げられる。パドル現像としては、例えば、露光後の膜に上述した現像液をそのまま塗布した後、任意の時間放置する方法、又は、露光後の膜に上述した現像液を任意の時間の間、霧状に放射して塗布した後、任意の時間放置する方法が挙げられる。スプレー現像としては、露光後の膜に上述した現像液を霧状に放射して、任意の時間当て続ける方法が挙げられる。ディップ現像としては、露光後の膜を上述した現像液中に任意の時間浸漬する方法、又は、露光後の膜を上述した現像液中に浸漬後、超音波を任意の時間照射し続ける方法が挙げられる。現像時の装置汚染抑制及び現像液の使用量削減によるプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、パドル現像が好ましい。現像時の装置汚染を抑制することで、現像時の基板汚染を抑制することができ、表示装置の表示不良を抑制することができる。一方、現像後の残渣発生の抑制の観点から、現像方法としては、スプレー現像が好ましい。また、現像液の再利用による現像液の使用量削減及びプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、ディップ現像が好ましい。
【0155】
前記(1-3)現像する工程における、現像時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましく、1分以上が特に好ましい。現像時間が上述した範囲内であると、アルカリ現像時の残渣発生を抑制することができる。一方、現像時のタクトタイム短縮の観点から、現像時間は、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。
【0156】
前記(1-3)現像する工程における、現像後、得られたレリーフ・パターンを、リンス液で洗浄することが好ましい。リンス液としては、現像液としてアルカリ水溶液を用いた場合、水が好ましい。リンス液としては、例えば、エタノール若しくはイソプロピルアルコールなどのアルコール類の水溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類の水溶液、又は炭酸ガス、塩酸、若しくは酢酸などの酸性を示す化合物の水溶液を用いても構わない。リンス液としては、有機溶媒を用いても構わない。
【0157】
<エッチングによりパターンを形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1)パターンを形成する工程として、前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜をエッチングによりパターンを形成する工程、を有しても構わない。必要に応じて、所望のパターンを有するフォトマスクを用いても構わない。
【0158】
基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布及びプリベークした後、必要に応じて、加熱して熱硬化させても構わない。樹脂組成物の塗膜上に、上記と同様の方法でフォトレジストを塗布して成膜した後、上記と同様の方法で、プリベークすることが好ましい。樹脂組成物の塗膜上に、フォトレジストを塗布及びプリベークした後、上記と同様の方法で露光及び現像することで、フォトリソグラフィーにより、樹脂組成物の塗膜上に、フォトレジストのパターンを形成することができる。現像後、得られたパターンを加熱して熱硬化させることが好ましい。熱硬化は、オーブン、ホットプレート又は赤外線などを使用することができる。
【0159】
現像及び熱硬化後、フォトレジストのパターンをエッチングマスクとして、パターン下層の、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜をエッチングすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜をパターン加工することができる。エッチングする方法としては、例えば、エッチング液を用いるウェットエッチング又はエッチングガスを用いるドライエッチングが挙げられる。
【0160】
ウェットエッチングの方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板に、上記のエッチング液をそのまま塗布する若しくは上記のエッチング液を霧状にして放射する、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板を、上記のエッチング液中に浸漬する、又はネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板を、上記のエッチング液中に浸漬後に超音波を照射するなどの方法が挙げられる。ウェットエッチング後、ウェットエッチングによってパターン加工したネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を、リンス液で洗浄することが好ましい。
【0161】
ドライエッチングの方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板に、上記のエッチングガスを暴露させる反応性ガスエッチング、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板に、電磁波によってイオン化若しくはラジカル化させたエッチングガスを暴露させるプラズマエッチング、又はネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストのパターンを形成した基板に、電磁波によってイオン化若しくはラジカル化させたエッチングガスを、バイアスを印加して加速させて衝突させる反応性イオンエッチングなどが挙げられる。
【0162】
エッチング後、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上に残存するフォトレジストを除去することで、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成することができる。フォトレジストを除去する方法としては、例えば、レジスト剥離液を用いる除去又はアッシングによる除去が挙げられる。
【0163】
レジスト剥離液を用いる除去方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストが残存した基板に、上記のレジスト剥離液をそのまま塗布する若しくは上記のレジスト剥離液を霧状にして放射する、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストが残存した基板を、上記のレジスト剥離液中に浸漬する、又はネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストが残存した基板を、上記のレジスト剥離液中に浸漬後に超音波を照射するなどの方法が挙げられる。レジスト剥離液を用いる除去後、得られたネガ型感光性樹脂組成物のパターンを、リンス液で洗浄することが好ましい。
【0164】
アッシングによる除去方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストが残存した基板に、上記のガスを暴露させて紫外線を照射する光励起アッシング、又はネガ型感光性樹脂組成物の塗膜上にフォトレジストが残存した基板に、電磁波によってイオン化若しくはラジカル化させた上記のガスを暴露させるプラズマアッシングなどが挙げられる。
【0165】
前記エッチングによりパターン加工する工程において、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、フォトレジストを用いたエッチングによるパターン加工を二回以上することで、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。
【0166】
<パターンを現像後ベークする工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1-3)現像する工程の後、かつ前記(2)パターンを光硬化させる工程の前、さらに、(1c)前記段差形状を有するパターンを現像後ベークする工程を有することが好ましい。
【0167】
前記(1c)パターンを現像後ベークする工程により、段差形状を有するパターンを加熱することで、現像後ベーク後に、UV硬化度の低い薄膜部を低テーパー化することができる。また、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0168】
なお、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における、現像後ベークする加熱温度は、後述する(2c)前記段差形状を有するパターンをミドルベークする工程におけるミドルベークする加熱温度以下の温度であり、かつ後述する(3)前記段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程における熱硬化させる加熱温度よりも低い温度である。
【0169】
前記(1c)パターンを現像後ベークする工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを現像後ベークする方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置を用いて加熱する方法が挙げられる。
【0170】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における、現像後ベークする加熱温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。現像後ベークする加熱温度が上記範囲内であると、現像後ベーク後に、薄膜部において低テーパー形状のパターンを形成でき、また、平坦性を向上することができるとともに、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できる。これは、上述した通り、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低いため、現像後ベーク時のパターンリフローによって低テーパー化すると考えられる。一方、厚膜部では、現像後ベーク時のパターンリフローの影響は小さく、薄膜部のみを低テーパー化できる。前記薄膜部が現像後ベーク後に低テーパー形状であるため、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線防止によって、パネルの歩留まり低下を抑制できるため、好適である。また、発光素子の信頼性を向上させることができる。
【0171】
一方、現像後ベークする加熱温度は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。現像後ベークする加熱温度が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部との境界の不明確化抑制をしつつ、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。
【0172】
前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における、現像後ベークする加熱時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、1分以上がさらに好ましく、3分以上が特に好ましく、5分以上が最も好ましい。現像後ベークする処理時間が上記範囲内であると、現像後ベーク後に、薄膜部において低テーパー形状のパターンを形成できる。また、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。一方、現像後ベークする加熱時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。現像後ベークする加熱時間が上記範囲内であると、現像後ベーク時のタクトタイムを短縮することができる。また、100℃で5分間現像後ベークした後、150℃で5分間現像後ベークするなど、二段又はそれ以上の多段で現像後ベークしても構わない。
【0173】
前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における、現像後ベークする処理雰囲気としては、例えば、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、又は、真空下が挙げられる。現像後ベーク時のタクトタイム短縮の観点から、空気下が好ましい。
【0174】
<パターンを光硬化させる工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の(1)、(2)及び(3)の工程を有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
前記(1)パターンを形成する工程の後、(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
前記(2)パターンを光硬化させる工程の後、さらに、(3)前記段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程。
【0175】
前記(2)パターンを光硬化させる工程により、段差形状を有するパターンを光硬化させることで、パターンの架橋密度が向上し、脱ガス起因となる低分子成分が減量するため、発光素子の信頼性を向上させることができる。そのため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。また、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0176】
また、ネガ型感光性樹脂組成物が、上述した(F)撥インク剤を含有する場合、厚膜部の撥液性を向上できるとともに、薄膜部の親液性を向上できる。すなわち、厚膜部の接触角と薄膜部の接触角との差が十分に大きい段差形状を有するパターンを形成できる。これは、前記透光部を介して活性化学線を照射して形成した厚膜部はUV硬化度が高いため、現像時における(F)撥インク剤の膜からの溶出が抑制され、厚膜部の撥液性が向上すると推測される。一方、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低いため、現像時に(F)撥インク剤が膜から溶出し、薄膜部の親液性が向上すると考えられる。従って、後述する(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、薄膜部の親液性によって、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、有機EL層の成膜不良を抑制できるとともに、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できる。
【0177】
<パターンに活性化学線を照射する工程>
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2)パターンを光硬化させる工程は、(2-1)前記段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する工程、を有することが好ましい。
【0178】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程により、段差形状を有するパターンを光硬化させることで、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、発光素子の信頼性を向上させることができる。
【0179】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンに活性化学線を照射する方法としては、例えば、ステッパー、スキャナー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いてブリーチング露光する方法が挙げられる。
【0180】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長は、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。一方、活性化学線の露光波長は、450nm以下が好ましく、420nm以下がより好ましく、380nm以下がさらに好ましく、340nm以下が特に好ましい。また、水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、若しくはg線(波長436nm)、又は、i線、h線及びg線の混合線が特に好ましい。露光波長が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物が、(C)感光剤として、(C1)光重合開始剤及び/又は(C2)光酸発生剤を含有する場合、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、ブリーチング露光時のタクトタイムを短縮することができる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、段差膜厚向上及び信頼性向上の観点から、露光波長は、310nm以下が好ましく、270nm以下がより好ましく、230nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。
【0181】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、XeF(波長351nm)レーザー、XeCl(波長308nm)レーザー、KrF(波長248nm)レーザー、又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。
【0182】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程において、活性化学線の照射に用いられるランプとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Xeエキシマランプ、KrFエキシマランプ、又はArFエキシマランプなどが挙げられる。
【0183】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光量は、i線照度値で、100J/m(10mJ/cm)以上が好ましく、300J/m(30mJ/cm)以上がより好ましく、1,000J/m(100mJ/cm)以上がさらに好ましく、2,000J/m(200mJ/cm)以上がさらにより好ましい。露光量が上記範囲内であると、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、基板面内における、厚膜部と薄膜部の膜厚差などの面内均一性を向上でき、それにより、有機ELディスプレイ製造における歩留まりを向上させることができる。加えて、発光信頼性を向上させることができる。一方、活性化学線の露光量は、i線照度値で、50,000J/m(5,000mJ/cm)以下が好ましく、30,000J/m(3,000mJ/cm)以下がより好ましく、10,000J/m(1,000mJ/cm)以下がさらに好ましい。露光量が上記範囲内であると、ブリーチング露光時のタクトタイムを短縮することができる。また、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成することが可能となる。そのため、パネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0184】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.7以上がさらにより好ましく、1以上が特に好ましい。露光量比が上記範囲内であると、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、基板面内における、厚膜部と薄膜部の膜厚差などの面内均一性を向上でき、それにより、有機ELディスプレイ製造における歩留まりを向上させることができる。また、段差膜厚向上、歩留まり向上及び信頼性向上の観点から、露光量比は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下がさらにより好ましく、4未満が特に好ましい。露光量比が上記範囲内であると、ブリーチング露光時のタクトタイムを短縮することができる。また、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成することが可能となる。そのため、パネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。また、平坦性向上及び歩留まり向上の観点から、露光量比は、4未満が好ましく、3.5未満がより好ましく、3未満がさらに好ましい。
【0185】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光時の処理雰囲気としては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、水中又は有機溶媒中が好ましく、ブリーチング露光時のタクトタイム短縮の観点から、空気下がより好ましい。また、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、及び、それによって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成する観点、並びに、信頼性向上の観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、又は、水中が好ましい。酸素を含有するガスとしては、酸素を1,000ppm以下で含有するガスがより好ましく、100ppm以下で含有するガスがさらに好ましい。
【0186】
前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光時の基板温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上がさらにより好ましく、60℃以上が特に好ましい。一方、基板温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。基板温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。また、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、段差膜厚向上、歩留まり向上及び信頼性向上の観点から、基板温度は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0187】
<パターンを活性ガス紫外線処理する工程>
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2)パターンを光硬化させる工程は、(2-2)前記段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、(2-3)前記段差形状を有するパターンをプラズマ処理する工程、を有することがより好ましい。
【0188】
前記(2)パターンを光硬化させる工程としては、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程、を有し、さらに、前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程、を有しても構わない。
【0189】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程により、段差形状を有するパターンを光硬化させることで、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、発光素子の信頼性を向上させることができる。これは、紫外線照射によるパターンの光硬化に加えて、紫外線照射によって発生した活性原子の作用により、パターンリフロー起因や脱ガス起因となる低分子成分がパターン中から除去されるため、段差膜厚向上や発光素子の信頼性向上の効果が得られると推測される。後述する、活性ガス紫外線処理に用いられるガスとして、酸素又はオゾンを用いた場合、上記の効果はオゾン分子や、そこから発生する活性酸素原子が作用すると考えられる。
【0190】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理する方法としては、例えば、ガスを暴露させて紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0191】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理に用いられるガスとしては、酸素、オゾン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を50~100質量%含有するガスが挙げられる。ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、及び、それによって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成する観点、並びに、信頼性向上の観点から、酸素又はオゾンを50~100質量%含有するガスが好ましい。段差膜厚向上の観点から、酸素を含有するガスとしては、酸素を60質量%以上含有するガスが好ましく、酸素を70質量%以上含有するガスがより好ましく、酸素を80質量%以上含有するガスがさらに好ましい。
【0192】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理時に照射する紫外線の露光波長としては、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましく、100nm以上が特に好ましい。一方、照射する紫外線の露光波長としては、450nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、350nm以下がさらに好ましく、300nm以下が特に好ましい。また、波長185nm又は波長254nmの紫外線が特に好ましい。露光波長が上記範囲内であると、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、活性ガス紫外線処理時のタクトタイムを短縮することができる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、発光信頼性を向上させることができる。
【0193】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、紫外線照度は、3mW/cm以上が好ましく、5mW/cm以上がより好ましく、10mW/cm以上がさらに好ましく、30mW/cm以上が特に好ましい。一方、紫外線照度は、2,000mW/cm以下が好ましく、1,500mW/cm以下がより好ましく、1,000mW/cm以下がさらに好ましく、700mW/cm以下が特に好ましい。紫外線照度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、発光信頼性を向上させることができる。
【0194】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理時の基板温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。一方、基板温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。基板温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。また、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。加えて、発光信頼性を向上させることができる。
【0195】
前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理の処理時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、1分以上がさらに好ましく、3分以上がさらにより好ましく、5分以上が特に好ましい。処理時間が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。一方、処理時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。処理時間が上記範囲内であると、活性ガス紫外線処理時のタクトタイムを短縮することができる。
【0196】
<パターンをプラズマ処理する工程>
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2)パターンを光硬化させる工程は、(2-2)前記段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、(2-3)前記段差形状を有するパターンをプラズマ処理する工程、を有することがより好ましい。
【0197】
前記(2)パターンを光硬化させる工程としては、前記(2-1)パターンに活性化学線を照射する工程、を有し、さらに、前記(2-2)パターンを活性ガス紫外線処理する工程、及び/又は、前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程、を有しても構わない。
【0198】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程により、段差形状を有するパターンを光硬化させることで、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、発光素子の信頼性を向上させることができる。これは、プラズマ発生の過程で生成する励起原子や励起分子からの発光又は電磁波によるパターンの光硬化に加えて、プラズマ処理によって発生した電子、イオン又はラジカルの作用により、パターンリフロー起因や脱ガス起因となる低分子成分がパターン中から除去されるため、段差膜厚向上や発光素子の信頼性向上の効果が得られると推測される。
【0199】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンをプラズマ処理する方法としては、例えば、電磁波の照射によってイオン化又はラジカル化させたガスを暴露させる方法が挙げられる。
【0200】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理に用いられるガスとしては、酸素、オゾン、アルゴン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を成分として含有するガスが挙げられる。ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、及び、それによって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成する観点、並びに、信頼性向上の観点から、酸素又はオゾンを成分として含有するガスが好ましい。酸素を成分として含有するガスとしては、酸素を10~100質量%含有するガスが好ましい。
【0201】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、高周波電力は、100W以上が好ましく、200W以上がより好ましく、300W以上がさらに好ましく、500W以上が特に好ましい。一方、高周波電力は、10,000W以下が好ましく、5,000W以下がより好ましく、3,000W以下がさらに好ましく、2,000W以下が特に好ましい。高周波電力が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、発光信頼性を向上させることができる。
【0202】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、ガス流量は、10sccm(standard cc/min)以上が好ましく、20sccm以上がより好ましく、30sccm以上がさらに好ましく、50sccm以上が特に好ましい。一方、ガス流量は、200sccm以下が好ましく、150sccm以下がより好ましく、100sccm以下がさらに好ましい。ガス流量が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0203】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、処理圧力は、1Pa以上が好ましく、3Pa以上がより好ましく、5Pa以上がさらに好ましく、10Pa以上が特に好ましい。一方、処理圧力は、100Pa以下が好ましく、50Pa以下がより好ましく、30Pa以下がさらに好ましい。処理圧力が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、膜表面のリフロー性維持により平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0204】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理時の基板温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。一方、基板温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。基板温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。また、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。加えて、発光信頼性を向上させることができる。
【0205】
前記(2-3)パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理の処理時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、1分以上がさらに好ましく、3分以上がさらにより好ましく、5分以上が特に好ましい。処理時間が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。一方、処理時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。処理時間が上記範囲内であると、プラズマ処理時のタクトタイムを短縮することができる。
【0206】
<パターンをミドルベークする工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(2)パターンを光硬化させる工程の後、さらに、(2c)前記段差形状を有するパターンをミドルベークする工程を有することが好ましい。
【0207】
前記(2c)パターンをミドルベークする工程により、段差形状を有するパターンを加熱することで、パターンの架橋密度が向上し、脱ガス起因となる低分子成分が減量するため、発光素子の信頼性を向上させることができる。そのため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。また、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0208】
なお、前記(2c)パターンをミドルベークする工程における、ミドルベークする加熱温度は、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における現像後ベークする加熱温度以上の温度であり、かつ後述する(3)前記段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程における熱硬化させる加熱温度よりも低い温度である。
【0209】
前記(2c)パターンをミドルベークする工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンをミドルベークする方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置を用いて加熱する方法が挙げられる。
【0210】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2c)パターンをミドルベークする工程における、ミドルベークする加熱温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。一方、ミドルベークする加熱温度は、200℃未満が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。ミドルベークする加熱温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。
【0211】
前記(2c)パターンをミドルベークする工程における、ミドルベークする加熱時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、1分以上がさらに好ましく、3分以上が特に好ましく、5分以上が最も好ましい。ミドルベークする処理時間が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。一方、ミドルベークする加熱時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。ミドルベークする加熱時間が上記範囲内であると、ミドルベーク時のタクトタイムを短縮することができる。また、100℃で5分間ミドルベークした後、150℃で5分間ミドルベークするなど、二段又はそれ以上の多段でミドルベークしても構わない。
【0212】
前記(2c)パターンをミドルベークする工程における、ミドルベークする処理雰囲気としては、例えば、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、又は、真空下が挙げられる。ミドルベーク時のタクトタイム短縮の観点から、空気下が好ましい。
【0213】
<パターンを加熱して熱硬化させる工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の(1)、(2)及び(3)の工程を有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
前記(1)パターンを形成する工程の後、(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
前記(2)パターンを光硬化させる工程の後、さらに、(3)前記段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程。
【0214】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程により、段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させることで、パターンの架橋が進行して耐熱性が向上するため、熱分解起因による脱ガス発生を抑制でき、発光素子の信頼性を向上させることができる。そのため、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おいて、発光信頼性を向上させることができる。また、熱硬化時におけるパターン裾のリフローによって、低テーパー形状のパターンを形成することができる。加えて、熱硬化時における膜表面のリフローによって平坦性が向上するため、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成することが可能となる。そのため、パネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0215】
なお、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度は、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程における現像後ベークする加熱温度よりも高い温度であり、かつ前記(2c)パターンをミドルベークする工程におけるミドルベークする加熱温度よりも高い温度である。
【0216】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを熱硬化させる方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置を用いて加熱する方法が挙げられる。
【0217】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程で形成されるパターンとしては、段差形状を有するパターンであることが好ましく、前記段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角は、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、10°以上がさらに好ましく、12°以上がさらにより好ましく、15°以上が特に好ましい。テーパー角が1°以上であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上させることができる。一方、前記薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましく、35°以下がさらにより好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が60°以下であると、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線防止によって、パネルの歩留まり低下を抑制できる。また、電極のエッジ部における電界集中抑制によって、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0218】
また、前記(1-3)現像する工程で形成される、段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角が、60°以下である場合、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程で形成される、段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角は、45°以下が好ましく、40°以下がより好ましく、35°以下がさらに好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が45°以下であると、薄膜部は熱硬化時のパターンリフローによって、さらに低テーパー化するため、前記(2)パターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果は厚膜部にのみ作用することとなり、組み合わせることに好適である。従って、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。特に、前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成できるとともに、パネルの歩留まり低下を抑制することができるため、好適である。さらに、有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0219】
本発明の硬化膜の製造方法は、前記(1)パターンを形成する工程の後、前記(2)パターンを光硬化させる工程、を有するため、前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンが光硬化によって架橋度が向上する。そのため、架橋度低下や耐熱性低下を抑制しつつ、その後の熱硬化工程における加熱温度を、通常よりも低温化することが可能となる。
【0220】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度は、150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、170℃以上がさらに好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、耐熱性が向上するため、発光素子の信頼性を向上できるとともに、低テーパー形状のパターンを形成でき、また、平坦性を向上することができる。一方、熱硬化させる加熱温度は、200℃未満が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。加えて、熱硬化時のタクトタイムを短縮することができる。これは、上述した通り、前記半透光部を介して活性化学線を照射して形成した薄膜部はUV硬化度が低く、熱硬化時のパターンリフローによって低テーパー化する一方、前記(2)パターンを光硬化させる工程において、厚膜部は光硬化による架橋度向上によって、熱硬化時のパターンリフローが抑制されたためと考えられる。
【0221】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(2)パターンを光硬化させる工程の後、熱硬化工程における加熱温度を通常の温度とすることで、パターンが熱硬化によってさらに架橋度が向上する。そのため、さらに耐熱性を向上させることができる。
【0222】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度は、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましく、270℃以上が特に好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、耐熱性が向上するため、発光素子の信頼性を向上できるとともに、低テーパー形状のパターンを形成でき、また、平坦性を向上することができる。従って、前記パターンを備える有機ELディスプレイなどの表示装置おける、発光信頼性を向上ができるとともに、パネルの歩留まり低下を抑制でき、また、発光素子の劣化を抑制することができる。一方、熱硬化させる加熱温度は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、350℃以下が特に好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、発光素子の信頼性を向上できるとともに、熱硬化時のタクトタイムを短縮することができる。
【0223】
特に、前記ネガ型感光性樹脂組成物が、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上(以下、「(Ax)特定の樹脂」)を含有する場合、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱温度は、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましく、270℃以上が特に好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。また、耐熱性が向上するため、発光素子の信頼性を向上できるとともに、平坦性を向上することができる。
【0224】
これは、以下のように推定される。前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程において、(B)ラジカル重合性化合物がUV硬化して形成されたポリマー鎖(以下、「(Bx)脂肪族ポリマー鎖」)は、エチレン性不飽和二重結合基が重合した脂肪族鎖を主鎖として有する。また、一般に、前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖は、側鎖に(B)ラジカル重合性化合物由来の(メタ)アクリル酸エステル構造を多く有する。一方、前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンにおいて、現像液として使用したアルカリ溶液由来の、有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物が、パターン中に残存していると考えられる。そのため、その後の、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において、前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖中の(メタ)アクリル酸エステル構造が、前記有機系のアルカリ溶液又は前記アルカリ性を示す化合物を触媒とした、加熱による加水分解反応を起こして低分子量化する。加えて、(A)アルカリ可溶性樹脂として、前記(Ax)特定の樹脂を用いて、現像後に段差形状を形成する場合、前記(Ax)特定の樹脂中のアルカリ可溶性基、又は、前記(Ax)特定の樹脂構造によるUV硬化阻害などの作用によって、厚膜部及び薄膜部において、UV硬化度が制御されていると推定される。そのため、上述した、熱硬化時における加水分解反応による低分子量化の寄与が大きくなることで、厚膜部における熱硬化時のパターンリフローが顕在化し、厚膜部と薄膜部との段差膜厚が減少してしまうと推定される。従って、前記(2)パターンを光硬化させる工程により、前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンを光硬化させて架橋度を向上させることが、上述した厚膜部におけるパターンリフロー抑制に対して、顕著な効果を示していると考えられる。なお、例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂として、アクリル樹脂のような脂肪族鎖を主鎖として有する樹脂を主成分として用いた場合、上述した、UV硬化阻害などの作用による、厚膜部及び薄膜部におけるUV硬化度制御は起こらないため、上述した厚膜部における熱硬化時のパターンリフローは顕在化しないと推定される。ただし、アクリル樹脂を用いた場合においても、前記(2)パターンを光硬化させる工程によって、厚膜部において熱硬化時のパターンリフローを抑制し、段差膜厚を向上させることは可能である。
【0225】
また、以下のようにも推定される。上述した通り、前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖は、エチレン性不飽和二重結合基が重合した脂肪族鎖を主鎖として有する。一方、前記(Ax)特定の樹脂は、一般に、ポリイミド由来の芳香族構造、又はポリベンゾオキサゾール由来の芳香族構造を主鎖として有する。そのため、前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンにおいて、前記(Ax)特定の樹脂と前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖とが、微視的レベルで相分離していると考えられる。そのため、その後の、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において、相分離した前記(Ax)特定の樹脂と前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖とが、疎水性相互作用により、膜全体の安定化構造を形成するために膜流動する。その結果、厚膜部における熱硬化時のパターンリフローが顕在化し、厚膜部と薄膜部との段差膜厚が減少してしまうと推定される。従って、前記(2)パターンを光硬化させる工程により、前記(1-3)現像する工程で形成されるパターンを光硬化させて架橋度を向上させることが、上述した厚膜部におけるパターンリフロー抑制に対して、顕著な効果を示していると考えられる。なお、例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂として、アクリル樹脂のような脂肪族鎖を主鎖として有する樹脂を主成分として用いた場合、上述した、前記(Bx)脂肪族ポリマー鎖との相分離は起こらないため、上述した厚膜部における熱硬化時のパターンリフローは顕在化しないと推定される。ただし、アクリル樹脂を用いた場合においても、前記(2)パターンを光硬化させる工程によって、厚膜部において熱硬化時のパターンリフローを抑制し、段差膜厚を向上させることは可能である。
【0226】
一方、熱硬化させる加熱温度は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、350℃以下が特に好ましい。熱硬化させる加熱温度が上記範囲内であると、発光素子の信頼性を向上できるとともに、熱硬化時のタクトタイムを短縮することができる。
【0227】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる加熱時間は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましく、30分以上が特に好ましい。熱硬化させる加熱時間が上記範囲内であると、耐熱性が向上するため、発光素子の信頼性を向上できるとともに、低テーパー形状のパターンを形成でき、また、平坦性を向上することができる。一方、熱硬化させる加熱時間は、300分以下が好ましく、250分以下がより好ましく、200分以下がさらに好ましく、150分以下が特に好ましい。熱硬化させる加熱時間が上記範囲内であると、発光素子の信頼性を向上できるとともに、熱硬化時のタクトタイムを短縮することができる。また、150℃で30分間熱硬化させた後、250℃で30分間熱硬化させるなど、二段又はそれ以上の多段で熱硬化させても構わない。
【0228】
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、熱硬化させる処理雰囲気としては、例えば、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、又は、真空下が挙げられる。熱硬化時のタクトタイム短縮の観点から、空気下が好ましい。また、発光素子の信頼性向上の観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、又は、真空下が好ましい。酸素を含有するガスとしては、酸素を1,000ppm以下で含有するガスがより好ましく、100ppm以下で含有するガスがさらに好ましい。
【0229】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-3)現像する工程で形成される、段差形状を有するパターンにおける、厚膜部の膜厚(TFT1)μmと薄膜部の膜厚(THT1)μmとの膜厚差を(ΔTDEV)μmとし、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において形成される、段差形状を有するパターン段差形状を有するパターンにおける、厚膜部の膜厚(TFT2)μmと薄膜部の膜厚(THT2)μmとの膜厚差を(ΔTCURE)μmとするとき、段差膜厚残存率((ΔTCURE)/(ΔTDEV)×100)%は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましい。段差膜厚残存率が、60%以上であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。一方、段差膜厚残存率((ΔTCURE)/(ΔTDEV)×100)%は、100%以下が好ましく、99%以下がより好ましく、97%以下がさらに好ましく、95%以下が特に好ましい。段差膜厚残存率が、100%以下であると、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、電極を形成する際の断線が抑制され、基板面内において均一な電極を形成できるとともに、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0230】
なお、本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-3)現像する工程を有しない場合、前記(1)パターンを形成する工程で形成される、段差形状を有するパターンにおける、厚膜部の膜厚(TFT1)μmと薄膜部の膜厚(THT1)μmとの膜厚差を(ΔTFORM)μmとし、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において形成される、段差形状を有するパターン段差形状を有するパターンにおける、厚膜部の膜厚(TFT2)μmと薄膜部の膜厚(THT2)μmとの膜厚差を(ΔTCURE)μmとし、段差膜厚残存率は((ΔTCURE)/(ΔTFORM)×100)%とする。
【0231】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1-3)現像する工程の後、かつ前記(2)パターンを光硬化させる工程の前、さらに、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程を有する場合、現像後ベーク後に、UV硬化度の低い薄膜部が低テーパー化する。その際、薄膜部のパターンリフローに伴って、現像後の膜厚よりも薄膜化し、現像後よりも段差膜厚が増加する場合がある。その後の、前記(2)パターンを光硬化させる工程において、厚膜部は熱硬化時におけるパターンリフローが抑制されるため、現像後ベーク後の段差膜厚が熱硬化後においても維持される場合がある。その結果、前記段差膜厚残存率は、100%を超える場合がある。そのため、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程を有する場合、前記段差膜厚残存率((ΔTCURE)/(ΔTDEV)×100)%は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましい。段差膜厚残存率が、60%以上であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。一方、段差膜厚残存率((ΔTCURE)/(ΔTDEV)×100)%が、100%を超える場合、150%以下が好ましく、140%以下がより好ましく、130%以下がさらに好ましく、120%以下が特に好ましい。段差膜厚残存率が、150%以下であると、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持できるため平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、段差膜厚残存率が100%を超えない場合、平坦性向上及び歩留まり向上の観点から、100%以下が好ましく、99%以下がより好ましく、97%以下がさらに好ましく、95%以下が特に好ましい。
【0232】
<パターンの光学濃度>
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1)パターンを形成する工程、及び/又は、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、前記段差形状を有するパターンとしては、膜厚1μm当たりの光学濃度が、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。膜厚1μm当たりの光学濃度が0.3以上であると、遮光性を向上させることができるため、有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイなどの表示装置において、電極配線の可視化防止又は外光反射低減が可能となり、画像表示におけるコントラストを向上させることができる。そのため、本発明の硬化膜の製造方法は、カラーフィルタのブラックマトリックス又は液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサーなどの遮光膜や、有機ELディスプレイの画素分割層又はTFT平坦化層など、外光反射の抑制によって高コントラスト化が要求される用途のパターンの製造する方法として好適である。一方、膜厚1μm当たりの光学濃度は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。膜厚1μm当たりの光学濃度が5.0以下であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパー形状のパターンを形成することができる。パターンの、膜厚1μm当たりの光学濃度は、上述した(D)着色剤の組成及び含有比率により調節することができる。
【0233】
一般に、ネガ型感光性樹脂組成物では、ハーフトーン特性が不足する場合が多く、さらに、(D)着色剤によって光学濃度を高めた場合には、パターニング露光時の膜の硬化が不足する場合が多い。そのため、熱硬化時のパターンリフローにより、段差形状を有するパターンにおける厚膜部と薄膜部が一体化して境界部が消失するため、段差形状が消失してしまう場合がある。本発明の硬化膜の製造方法によれば、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制し、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。また、前記パターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0234】
<パターンの接触角>
本発明の硬化膜の製造方法によれば、厚膜部と薄膜部とで十分な接触角差がある段差形状を有し、低テーパー形状を有するパターンを形成することが可能である。そのため、厚膜部と薄膜部とで十分な接触角差がある段差形状を一括形成するための用途に好適であり、画素分割層、TFT平坦化層、又はTFT保護層として好ましく、画素分割層としてより好ましい。中でも、有機ELディスプレイにおける画素分割層の、撥液性の厚膜部と親液性の薄膜部とを有する段差形状を一括形成するための用途において、特に好適である。
【0235】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において形成される前記段差形状を有するパターンとしては、厚膜部の純水に対する接触角は、90°以上が好ましく、100°以上がより好ましい。接触角が上記範囲内であると、厚膜部の撥液性を向上できるため、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、インク同士の混色を防止できる。また、前記段差形状を有するパターンとしては、薄膜部の純水に対する接触角は、70°以下が好ましく、60°以下がより好ましい。接触角が上記範囲内であると、薄膜部の親液性を向上できるため、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、有機EL層の成膜不良を抑制できる。
【0236】
一方、前記段差形状を有するパターンとしては、厚膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角は、40°以上が好ましく、50°以上がより好ましい。接触角が上記範囲内であると、厚膜部の撥液性を向上できるため、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、インク同士の混色を防止できる。また、前記段差形状を有するパターンとしては、薄膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角は、30°以下が好ましく、20°以下がより好ましい。接触角が上記範囲内であると、薄膜部の親液性を向上できるため、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、有機EL層の成膜不良を抑制できる。
【0237】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程において形成される前記段差形状を有するパターンとして、厚膜部の純水に対する接触角を(CAwFT)°、及び、薄膜部の純水に対する接触角を(CAwHT)°とするとき、前記(CAwFT)°と(CAwHT)°との接触角差(ΔCAwFT-HT)°は、20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上がさらに好ましく、50°以上が特に好ましい。接触角差が上述した範囲内であると、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、インク同士の混色を防止できるとともに、有機EL層の成膜不良を抑制できる。一方、有機EL層の成膜不良抑制の観点から、接触角差(ΔCAwFT-HT)°は、90°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、70°以下がさらに好ましい。
【0238】
一方、前記段差形状を有するパターンとして、厚膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角を(CApFT)°、及び、薄膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角を(CApHT)°とするとき、前記(CApFT)°と(CApHT)°との接触角差(ΔCApFT-HT)°は、10°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。接触角差が上述した範囲内であると、後述する(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程における、インク同士の混色を防止できるとともに、有機EL層の成膜不良を抑制できる。一方、有機EL層の成膜不良抑制の観点から、接触角差(ΔCApFT-HT)°は、70°以下が好ましく、60°以下がより好ましく、50°以下がさらに好ましい。
【0239】
<段差形状を有するパターン>
本発明の硬化膜の製造方法によれば、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有し、低テーパー形状を有するパターンを形成することが可能である。そのため、段差形状を一括形成するための用途に好適であり、画素分割層、TFT平坦化層、TFT保護層、層間絶縁層、又はゲート絶縁層として好ましく、画素分割層、TFT平坦化層、又はTFT保護層としてより好ましい。中でも、有機ELディスプレイにおける画素分割層の、段差形状を一括形成するための用途において、特に好適である。
【0240】
本発明の硬化膜の製造方法による、段差形状を有するパターンの断面の一例を、図8に示す。ハーフトーンフォトマスクを用いてパターニング露光をした場合、段差形状における厚膜部34は、パターニング露光における、前記透光部を介して活性化学線を照射した露光部に相当し、パターンの最大の膜厚を有する。一方、段差形状における薄膜部35a、35b,35cは、パターニング露光における、前記半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部に相当し、厚膜部34の厚さより小さい膜厚を有する。段差形状を有するパターンの断面における傾斜辺36a,36b,36c,36d,36eのそれぞれのテーパー角θ,θ,θ,θ,θは、いずれも低テーパーであることが好ましい。
【0241】
ここでいうテーパー角θ,θ,θ,θ,θとは、図8に示すように、パターンが形成される下地の基板の水平辺37、又は薄膜部35a,35b,35cの水平辺と、薄膜部35a,35b,35cの水平辺と交差する段差形状を有するパターンの断面における傾斜辺36a,36b,36c,36d,36eとが成す、段差形状を有するパターンの断面内部の角をいう。ここで、順テーパーとは、テーパー角が0°より大きく90°未満の範囲内であることをいい、逆テーパーとは、テーパー角が90°より大きく180°未満の範囲内であることをいう。また、矩形とは、テーパー角が90°であることをいい、低テーパーとは、テーパー角が0°より大きく60°の範囲内であることをいう。
【0242】
本発明の硬化膜の製造方法による、段差形状を有するパターンの下側表面の平面及び上側表面の平面間の厚さにおいて、最も大きい厚さを有する領域を厚膜部34、厚膜部34の厚さより小さい厚さを有する領域を薄膜部35とする。厚膜部34の膜厚を(TFT)μmとし、厚膜部34に少なくとも1つの段差形状を介して配置された薄膜部35a,35b,35cの膜厚を(THT)μmとする。
【0243】
本発明の硬化膜の製造方法において、前記(1)パターンを形成する工程、及び/又は、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、前記段差形状を有するパターンとして、厚膜部の膜厚を(TFT)μm、及び、薄膜部の膜厚を(THT)μmとするとき、前記(TFT)μmと(THT)μmとの膜厚差(ΔTFT-HT)μmは、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましく、2.5μm以上がさらにより好ましく、3.0μm以上が特に好ましい。膜厚差が上述した範囲内であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有するパターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、膜厚差(ΔTFT-HT)μmは、10.0μm以下が好ましく、9.5μm以下がより好ましく、9.0μm以下がさらに好ましく、8.5μm以下がさらにより好ましく、8.0μm以下が特に好ましい。膜厚差が上述した範囲内であると、段差形状を有するパターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0244】
厚膜部34の膜厚(TFT)は、2.0μm以上が好ましく、2.5μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、3.5μm以上がさらにより好ましく、4.0μm以上が特に好ましい。膜厚(TFT)が上記範囲内であると、発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、厚膜部34の膜厚(TFT)は、10.0μm以下が好ましく、9.5μm以下がより好ましく、9.0μm以下がさらに好ましく、8.5μm以下がさらにより好ましく、8.0μm以下が特に好ましい。膜厚(TFT)が上記範囲内であると、段差形状を有するパターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0245】
厚膜部34に少なくとも1つの段差形状を介して配置された薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)は、0.10μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.20μm以上がさらに好ましく、0.25μm以上がさらにより好ましく、0.30μm以上が特に好ましい。膜厚(THT)が上記範囲内であると、発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)は、7.5μm以下が好ましく、7.0μm以下がより好ましく、6.5μm以下がさらに好ましく、6.0μm以下がさらにより好ましく、5.5μm以下が特に好ましい。膜厚(THT)が上記範囲内であると、段差形状を有するパターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0246】
厚膜部34の膜厚(TFT)μm及び薄膜部35a,35b,35cの膜厚(THT)μmは、一般式(α)~(γ)で表される関係を満たすことが好ましい。
【0247】
2.0≦(TFT)≦10.0 (α)
0.20≦(THT)≦7.5 (β)
0.10×(TFT)≦(THT)≦0.75×(TFT) (γ)
厚膜部34の膜厚(TFT)μm及び薄膜部35a,35b,35cの膜厚(THT)μmは、一般式(δ)~(ζ)で表される関係をさらに満たすことが好ましい。
【0248】
2.0≦(TFT)≦10.0 (δ)
0.30≦(THT)≦7.0 (ε)
0.15×(TFT)≦(THT)≦0.70×(TFT) (ζ)
厚膜部34の膜厚(TFT)μm及び薄膜部35a,35b,35cの膜厚(THT)μmが上述した範囲内であると、発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0249】
<パターン形状とパターン寸法>
本発明の硬化膜の製造方法において、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンは、ラインパターン及び/又はドットパターンを含むことが好ましく、前記パターンのパターン寸法幅として、ライン寸法幅又はドット寸法幅は、0.1μm以上のパターンを含むことが好ましくい。一方、ライン寸法幅又はドット寸法幅は、30μm以下のパターンを含むことが好ましい。
【0250】
ラインパターンとは、最も長い線(以下、「長軸」)と同じ方向(以下、「長軸方向」)に平行する線と、を有する多角形、又は、一部の辺が円弧で形成された閉じた多角形のパターンをいう。ラインパターンとしては、例えば、長方形、六角形若しくは八角形、又は、一部の辺が円弧で形成された長方形などの多角形が挙げられる。ドットパターンとは、多角形、又は、一部の辺若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多角形をいう。ドットパターンとしては、例えば、円形、正方形、正六角形若しくは正八角形、又は、一部の辺が円弧で形成された四角形などの多角形や楕円、真円が挙げられる。
【0251】
ライン寸法幅とは、長軸と長軸方向に平行する線との間の長さをいい、特に長軸方向と直交する方向(以下、「短軸」)の長さをいう。ドット寸法幅とは、パターンが円形の場合、円の直径をいう。パターンが多角形の場合、頂点と頂点の間の最も長い対角線の長さをいう。パターンが一部の辺が円弧で形成された閉じた多角形の場合、頂点と頂点の間の長さ又は頂点と円の間の長さのうち、最も長い長さをいう。また、ライン寸法幅及びドット寸法幅とは、基板と接するパターンの底部から底部までの長さ、及びパターンの頂上部から頂上部までの長さの平均値をいう。
【0252】
ライン寸法幅又はドット寸法幅は、SEMを用いて測定することで求めることができる。拡大倍率を10,000~150,000倍として、ライン寸法幅又はドット寸法幅を直接測定する。ライン寸法幅又はドット寸法幅は、基板内の上下左右と中心など、五点を測定した値の平均値をいう。
【0253】
本発明の硬化膜の製造方法において、フォトマスク上の透光部及び遮光部のパターン形状、及び、ハーフトーンフォトマスク上の透光部、半透光部及び遮光部のパターン形状としては、表示装置のデバイス設計の観点から、ラインパターン及び/又はドットパターン形状が好適である。
【0254】
本発明の硬化膜の製造方法において、フォトマスク上の透光部及び遮光部のパターン寸法幅、及び、ハーフトーンフォトマスク上の透光部、半透光部及び遮光部のパターン寸法幅としては、パターン寸法幅としては、表示装置の画素又は素子の高集積化、及び、解像度向上の観点から、ライン寸法幅又はドット寸法幅は、0.1μm以上のパターンを含むことが好ましく、1μm以上のパターンを含むことがより好ましく、3μm以上のパターンを含むことがさらに好ましく、5μm以上のパターンを含むことが特に好ましい。一方、ライン寸法幅又はドット寸法幅は、30μm以下のパターンを含むことが好ましく、20μm以下のパターンを含むことがより好ましく、15μm以下のパターンを含むことがさらに好ましく、10μm以下のパターンを含むことが特に好ましい。
【0255】
<有機ELディスプレイの製造方法>
本発明の硬化膜の製造方法は、有機ELディスプレイを製造する、表示装置の製造方法として用いることが好ましい。本発明の硬化膜の製造方法によれば、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて、段差形状を有するパターンを形成可能であって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを備える、有機ELディスプレイを製造することが可能となる。加えて、本発明の硬化膜の製造方法によれば、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することで、パネルの歩留まり低下を抑制するとともに、発光素子の劣化を抑制し、発光素子の信頼性に優れる有機ELディスプレイを製造することが可能となる。従って、本発明の硬化膜の製造方法は、有機ELディスプレイを製造する方法として好適である。
【0256】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて、有機ELディスプレイの画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層及び配線保護層から選ばれる一種類以上を形成する工程として、前記(1)~(3)の工程を有する。
(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを形成する工程、
(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程、及び、
(3)前記段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化させる工程。
【0257】
特に、有機ELディスプレイの画素分割層として、段差形状を有する画素分割層を形成する工程であることが好ましく、さらに、以下の(4)及び(5)の工程を有する。
前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程の後、さらに、(4)有機EL層を形成する工程、及び、
前記(4)有機EL層を形成する工程の後、さらに、(5)第2電極を形成する工程。
【0258】
<有機EL層を形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法を用いて有機ELディスプレイを製造する場合、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程の後、さらに、(4)有機EL層を形成する工程、を有することが好ましい。有機ELディスプレイにおける、有機EL層の構成としては、例えば、(1)正孔輸送層/発光層、(2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、又は、(3)発光層/電子輸送層などが挙げられる。有機EL層の構成については、正孔と電子の注入や輸送、発光層における発光効率などを総合的に高めるために種々検討されており、好ましい構成としては、特開平8-109373号公報に記載された有機EL素子などが挙げられる。画素分割層の開口部に相当する領域に有機EL層が形成されることで、発光画素部に相当する領域を形成することができる。
【0259】
有機EL層を形成する方法としては、マスク蒸着法やインクジェット法が挙げられる。マスク蒸着法としては、蒸着マスクを用いて有機化合物を蒸着してパターニングする方法が挙げられ、所望のパターンを開口部とした蒸着マスクを、基板の蒸着源側に配置して蒸着を行う方法が挙げられる。高精度の蒸着パターンを形成するためには、平坦性の高い蒸着マスクを基板に密着させることが好ましく、一般的に、蒸着マスクに張力をかける技術や、基板背面に配置した磁石によって蒸着マスクを基板に密着させる技術などが用いられる。蒸着マスクの製造方法としては、エッチング法、機械的研磨法、サンドブラスト法、焼結法、レーザー加工法又は感光性樹脂の利用などが挙げられるが、微細パターン形成が必要な場合、加工精度に優れるエッチング法や電鋳法を用いることが多い。
【0260】
<インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法を用いて有機ELディスプレイを製造する場合、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程の後、さらに、(4)有機EL層を形成する工程として、(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程、を有することが好ましい。画素分割層の開口部に相当する領域に有機EL層を形成する化合物を含むインクを、インクジェット塗布によって成膜することで、発光画素部に相当する領域を形成できる。(4)有機EL層を形成する工程として、(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程を有することで、一般的な蒸着マスクを使用した、有機化合物を蒸着によってパターニングして有機EL層を形成する方法と比較して、タクトタイムを短縮できる。インクに含まれる有機EL層を形成する化合物としては、低分子化合物、又は高分子化合物が挙げられる。
【0261】
(4-1)インクジェット塗布で有機EL層を形成する工程において、画素分割層における発光画素部として機能する開口部に隣接する領域は、親液性を有することが好ましく、特に、インクに含まれる溶剤に対する親液性を有することがより好ましい。親液性を有することで、インクジェット塗布でインクを成膜する際における、インクの膜厚均一性を向上できるため、有機EL層の成膜不良を抑制できる。また、画素分割層としては、段差形状を有し、薄膜部は、発光画素部として機能する開口部に隣接する領域のため、親液性を有することが好ましい。一方、厚膜部は、開口部に隣接する領域の薄膜部同士を分割する仕切りとして機能するため、撥液性を有することが好ましく、特に、インクに含まれる溶剤に対する撥液性を有することがより好ましい。撥液性を有することで、インクジェット塗布でインクを成膜する際における、インクの過剰な濡れ広がりによる隣接画素領域へのインク流出を抑制可能となるため、インク同士の混色を防止できる。インクに含まれる溶剤としては、例えば、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-n-ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、又は1,4-ブタンジオールジアセテートが挙げられる。
【0262】
上述したネガ型感光性樹脂組成物が、(F)撥インク剤を含有する場合、厚膜部の撥液性を向上できるとともに、薄膜部の親液性を向上できるため、厚膜部の接触角と薄膜部の接触角との差が十分に大きい段差形状を有するパターンを形成できる。そのため、本発明の硬化膜の製造方法において、上述した(2)前記段差形状を有するパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。従って、本発明による硬化膜の製造方法によって有機ELディスプレイを製造すれば、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差があり、かつ厚膜部の接触角と薄膜部の接触角との差が十分に大きい、段差形状を有するパターンを形成することで、薄膜部の親液性によって、インクジェット塗布での有機EL層の成膜不良を抑制できるとともに、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できる。従って、本発明に用いられるネガ型感光性樹脂組成物としては、厚膜部と薄膜部とで十分な接触角差がある段差形状を一括形成するための用途に好適であり、画素分割層、TFT平坦化層、又はTFT保護層として好ましく、画素分割層としてより好ましい。中でも、有機ELディスプレイにおける画素分割層の、撥液性の厚膜部と親液性の薄膜部とを有する段差形状を一括形成するための用途において、特に好適である。
【0263】
インクの塗布膜厚は、インクの固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びベーク後の膜厚が0.01~10μmになるように塗布する。基板上に、インクをインクジェット塗布によってパターン状に塗布した後、ベークして成膜することが好ましい。ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。ベーク温度としては、50~200℃が好ましい。ベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間ベークするなど、二段又はそれ以上の多段でベークしても構わない。
【0264】
<第2電極を形成する工程>
本発明の硬化膜の製造方法を用いて有機ELディスプレイを製造する場合、前記(4)有機EL層を形成する工程の後、さらに、(5)第2電極を形成する工程、を有することが好ましい。上述のように、有機ELディスプレイにおいて、第1電極と第2電極として、透明電極と非透明電極とを組み合わせることにより、有機EL層における発光を片側に取り出すことができる。有機ELディスプレイにおける透明電極及び非透明電極には、電気特性に優れること、陽極として用いる場合には効率良く正孔を注入できること、陰極として用いる場合には効率良く電子を注入できることなどの複合的な特性が求められる。
【0265】
透明電極を形成する材料としては、例えば、透明導電性酸化物又は金属などが挙げられる。陽極として用いる場合には、ITO、IZO、AZO、GZO又はATOなどが好ましく、陰極として用いる場合には、リチウム、マグネシウム、銀又はアルミニウムなどが好ましい。また、非透明電極を形成する材料としては、例えば、炭素又は金属などが挙げられる。非透明電極の耐腐食性向上、及び、有機ELディスプレイの信頼性向上の観点から、銀、アルミニウム、炭素、クロム、銅、モリブデン、ニッケル又はチタンを主成分とすることが好ましく、銀、アルミニウム又は銅を主成分とすることがより好ましい。ここでいう主成分とは、非透明電極を形成する材料中に最も多く含まれる成分をいう。これらを含む電極材料としては、例えば、AgIn合金、AgZn合金、AgZnBi合金、Alグラフェン合金、AlMn合金、AlNd合金、AlGaNi合金、CuZn合金若しくはCuZnMg合金などの合金、又は、Agナノフィラー(ワイヤー)若しくはAgナノ粒子などが挙げられる。
【0266】
また、複合的な特性を両立するため、非透明電極を多層構造とすることも好ましい。例えば、非透明電極を多層構造とし、基板側に密着性や耐腐食性を向上させる下地層や、反射率を調整する反射調整層を有することもできる。また、非透明電極を多層構造とし、勇気EL層側の最表面層に透明導電性酸化物材料を積層することにより、有機EL層との界面における仕事関数差を調整することも好ましい。透明導電性酸化物材料としては、高透過率で低抵抗率であることから、ITO、IZO、AZO、GZO又はATOなどが好ましい。
【0267】
第2電極としては、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイであれば非透明電極、トップエミッション方式の有機ELディスプレイであれば透明電極を選択する。電極の形成方法としては、有機EL層へのダメージ低減の観点から、蒸着マスクを用いたマスク蒸着法により、第2電極を形成することが好ましい。
【0268】
以上の方法により、第1電極と第2電極が交差し、かつ画素分割層が存在しない部分が発光する、有機ELディスプレイを製造可能である。有機ELディスプレイにおける、発光画素と呼ばれる領域は、対向配置された第1電極と第2電極とが交差して重なる部分であって、さらに、第1電極上の画素分割層によって区画される領域である。アクティブマトリックス型ディスプレイにおいては、スイッチング手段が形成される部分が発光画素の一部を占有するように配置されることがあり、発光画素の形状は矩形状ではなく、一部分が欠落したような形でも構わない。しかしながら、発光画素の形状はこれらに限定されるものではなく、例えば円形であっても構わず、画素分割層の形状によって変化させても構わない。
【0269】
その後、有機EL層を保護する目的で封止を行うことが好ましい。有機EL層を酸素や水分に接触させないように封止することが好ましく、真空中又は絶乾雰囲気中にて、ガラス、金属の封止缶又はガスバリアフィルムを接着することが好ましい。同時に、乾燥剤や吸湿剤を封入しても構わない。
【0270】
発光画素の領域において、赤色、緑色及び青色領域に、それぞれの発光ピーク波長を有する有機EL層を配列したものや、全面に白色発光する有機EL層を作製して、別途、赤色、緑色及び青色のカラーフィルタと組み合わせて使用するようなものを、カラーディスプレイと呼ぶ。カラーディスプレイにおいて、通常、表示される赤色領域の光のピーク波長は560~700nm、緑色領域の光のピーク波長は500~560nm、青色領域の光のピーク波長は420~500nmである。
【0271】
<有機ELディスプレイ>
本発明の硬化膜の製造方法によれば、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを備える、有機ELディスプレイを製造することが可能である。そのため、段差形状を有する画素分割層を形成できるため、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有する画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層又は配線保護層を形成できるため、段差形状を有する複雑な積層構造を一括形成することが可能であり、プロセスタイムを短縮することができる。
【0272】
本発明の硬化膜の製造方法は、発光素子の光取り出し側に、偏光板及び1/4波長板を有しない、有機ELディスプレイを製造する、表示装置の製造方法として用いることが好ましい。本発明の硬化膜の製造方法によれば、(Da)黒色剤として、(D1a)黒色顔料などを含有する、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを備える、有機ELディスプレイを製造することが可能である。前記パターンを備えることで、発光素子の光取り出し側に、偏光板及び1/4波長板を形成することなく、有機ELディスプレイの画像表示におけるコントラストを向上させることができる。
【0273】
本発明の硬化膜の製造方法は、フレキシブル基板上の積層構造として、段差形状を有するパターンを備える、フレキシブル有機ELディスプレイを製造する、表示装置の製造方法として用いることが好ましい。本発明の硬化膜の製造方法によれば、(Da)黒色剤として、(D1a)黒色顔料などを含有する、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを備える有機ELディスプレイを製造することが可能である。前記パターンを備えることで、フレキシブル性に乏しい偏光板及び1/4波長板を形成することなく、有機ELディスプレイの画像表示におけるコントラストを向上できるため、それによって、有機ELディスプレイのフレキシブル性を向上させることができる。
【0274】
本発明の硬化膜の製造方法は、フレキシブル有機ELディスプレイとして、曲面の表示部を有する、有機ELディスプレイの製造方法として用いることが好ましい。この曲面の曲率半径は、曲面からなる表示部における断線等に起因する表示不良抑制の観点から、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また曲面の曲率半径は、表示装置の小型化及び高解像化の観点から、10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0275】
本発明の硬化膜の製造方法は、段差形状を有するパターンを備え、該段差形状を有するパターンの厚膜部の純水に対する接触角と、薄膜部の純水に対する接触角とが、十分な接触角差を有する有機ELディスプレイを製造する、表示装置の製造方法として用いることが好ましい。また、本発明の製造方法は、段差形状を有するパターンを備え、該段差形状を有するパターンの厚膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの有機溶剤に対する接触角と、薄膜部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの有機溶剤に対する接触角とが、十分な接触角差を有する有機ELディスプレイを製造する、表示装置の製造方法として用いることも好ましい。本発明の硬化膜の製造方法によれば、画素分割層の開口部に相当する領域に有機EL層を形成する化合物を含むインクを、インクジェット塗布によって成膜して発光画素部に相当する領域を形成できるため、タクトタイムを短縮できる。加えて、薄膜部の親液性によって、インクジェット塗布での有機EL層の成膜不良を抑制できるとともに、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できるため、発光素子の信頼性に優れる有機ELディスプレイを製造することが可能となる。従って、本発明の硬化膜の製造方法としては、厚膜部と薄膜部とで十分な接触角差がある段差形状を一括形成するための用途に好適であり、画素分割層、TFT平坦化層、又はTFT保護層として好ましく、画素分割層としてより好ましい。中でも、インクジェット塗布によって有機EL層を含む層を成膜して、発光画素部に相当する領域を形成した有機ELディスプレイにおける画素分割層の、撥液性の厚膜部と親液性の薄膜部とを有する段差形状を一括形成するための用途において、特に好適である。
【0276】
段差形状を有するパターンを備える有機ELディスプレイとしては、有機ELディスプレイの信頼性向上、及び表示特性向上の観点から、該段差形状を有するパターンの開口部の外周に占める、該段差形状を有するパターンの厚膜部の外周が接する長さの比率は、0%が好ましい。該開口部の外周に占める、該厚膜部の外周が接する長さの比率が0%である場合、該開口部の外周は、該段差形状を有するパターンの薄膜部にのみ隣接することが好ましい。開口部の外周が、該薄膜部にのみ隣接することで、薄膜部の親液性によって、インクジェット塗布での有機EL層の成膜不良を抑制できるため、有機ELディスプレイの信頼性を向上できる。また、該開口部の外周に占める、該厚膜部の外周が接する長さの比率が0%である場合、該厚膜部の外周は、該段差形状を有するパターンの薄膜部にのみ隣接することが好ましい。厚膜部の外周が、該薄膜部にのみ隣接することで、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できるため、有機ELディスプレイの表示特性を向上できる。
【0277】
段差形状を有するパターンを備える有機ELディスプレイとしては、該段差形状を有するパターンの厚膜部の最小パターン寸法、及び/又は該段差形状を有するパターンの厚膜部の最小パターン寸法は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。厚膜部の最小パターン寸法、及び/又は薄膜部の最小パターン寸法が30μm以下の場合、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、表示装置の解像度を向上できる。一方、該段差形状を有するパターンの厚膜部の最小パターン寸法は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、10μm以上が特に好ましい。厚膜部の最小パターン寸法が3μm以上の場合、厚膜部の撥液性によってインク同士の混色を防止できるため、有機ELディスプレイの表示特性を向上できる。また、該段差形状を有するパターンの薄膜部の最小パターン寸法は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、10μm以上が特に好ましい。薄膜部の最小パターン寸法が3μm以上の場合、薄膜部の親液性によって、インクジェット塗布での有機EL層の成膜不良を抑制できるため、有機ELディスプレイの信頼性を向上できる。
【0278】
厚膜部の接触角と薄膜部の接触角との差が十分に大きい段差形状として、撥液性の厚膜部と親液性の薄膜部とを有する、段差形状を含むパターンを備える有機ELディスプレイの、開口部、厚膜部、及び薄膜部の配置の概略図を、図16に示す。なお、図16に示すパターンは、厚膜部と薄膜部とが隣接する箇所を有し、かつ開口部と薄膜部とが隣接する箇所を有する。また、ライン形状の厚膜部と、四角形形状の開口部とを有する。さらに、開口部の外周に占める、厚膜部の外周が接する長さの比率は、0%である。
【0279】
<有機ELディスプレイの製造プロセス>
本発明の硬化膜の製造方法における、ネガ型感光性樹脂組成物を用いたプロセスとして、該組成物の段差形状を有するパターンを、有機ELディスプレイの段差形状を有する遮光性の画素分割層として用いたプロセスを例に、図1に模式的断面図を示して説明する。なお、各工程における好ましい条件は上述した通りであり、公知の材料、装置及び条件を用いることができる。
【0280】
まず、(1)ガラス基板1上に、電子ビーム蒸着法により、クロムと金の積層膜を成膜し、フォトレジストを用いたエッチングによりソース電極とドレイン電極を形成する。次に、スパッタ法により、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(以下、IGZO)を成膜し、フォトレジストを用いたエッチングにより、ソース・ドレイン電極間に酸化物半導体層を形成する。その後、スピンコート法により、ポジ型ポリシロキサン組成物を成膜し、所望のパターンを有するマスクを介して活性化学線を照射し、アルカリ溶液を用いて現像する、フォトリソグラフィーによってパターン加工し、熱硬化させてゲート絶縁層を形成する。その後、電子ビーム蒸着法により、金を成膜し、エッチングによりゲート電極を形成し、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」)2を形成する。TFT平坦化膜用の感光性材料として、ポジ型ポリシロキサン組成物を塗布及びプリベークして成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させてTFT平坦化用の硬化膜3を約2.0μmの膜厚で形成する。次に、(2)銀‐パラジウム‐銅合金(以下、「APC」)をスパッタにより、約100nmの膜厚で成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工してAPC層を形成する。さらに、APC層の上層に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)をスパッタにより、約10nmの膜厚で成膜し、フォトレジストを用いたエッチングによりパターン加工し、第1電極として反射電極4を形成する。その後、(3)ネガ型黒色ポリイミド組成物を、スピンコート法により塗布及びプリベークして、プリベーク膜5aを形成する。次いで、(4)透光部、遮光部及び半透光部(透光部の20%透過率)を含む、所望のパターンを有するハーフトーンフォトマスク6を介して、活性化学線7として、g線、h線及びi線を照射する。次に、(5)水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、「TMAH」)水溶液をアルカリ溶液として用いて、現像してパターン加工をした後、活性化学線として、g線、h線及びi線を照射してブリーチング露光をし、その後、必要に応じてミドルベークし、熱硬化させることで、遮光性の画素分割層として、所望のパターンを有し、かつ段差形状を有する硬化パターン5bを形成する。その後、(6)EL発光材料を、マスクを介した蒸着によって成膜してEL発光層8を形成し、マグネシウム‐銀合金(以下、「MgAg」)を蒸着により、約10nm成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工し、第2電極として透明電極9を形成する。次に(7)平坦化膜用の感光性材料として、ポジ型ポリシロキサン組成物を塗布及びプリベークして成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて平坦化用の硬化膜10を形成し、次に、低湿窒素雰囲気下、有機EL封止用の材料を成膜し、硬化させて封止膜を形成する。その後、カバーガラス11を接合させることで、ネガ型黒色ポリイミド組成物を、段差形状を有する遮光性の画素分割層として有する有機ELディスプレイが製造される。
【0281】
<有機ELディスプレイ以外の表示装置の製造方法>
本発明の硬化膜の製造方法は、前記ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを、カラーフィルタ、カラーフィルタのブラックマトリックス、液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサー又は半導体のゲート絶縁層として備える、表示装置の製造方法として用いても構わない。
【0282】
本発明の硬化膜の製造方法は、有機ELディスプレイ以外の表示装置の製造方法として用いても構わない。有機ELディスプレイ以外の表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電界放出ディスプレイ、LEDディスプレイ又はマイクロLEDディスプレイが挙げられる。
【0283】
<液晶ディスプレイの製造プロセス>
本発明の硬化膜の製造方法における、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた別のプロセスとして、該組成物の段差形状を有するパターンを、液晶ディスプレイの段差形状を有するブラックカラムスペーサー(以下、「BCS」)として用いたプロセスを例に、図2に模式的断面図を示して説明する。まず、(1)ガラス基板12上に、公知の方法で、バックライトユニット(以下、「BLU」)13を形成し、BLUを有するガラス基板14を形成する。
【0284】
また、(2)別のガラス基板15上に、電子ビーム蒸着法により、クロムと金の積層膜を成膜し、フォトレジストを用いたエッチングによりソース電極とドレイン電極を形成する。次に、スパッタ法により、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(以下、IGZO)を成膜し、フォトレジストを用いたエッチングにより、ソース・ドレイン電極間に酸化物半導体層を形成する。その後、スピンコート法により、ポジ型ポリシロキサン組成物を成膜し、所望のパターンを有するマスクを介して活性化学線を照射し、アルカリ溶液を用いて現像する、フォトリソグラフィーによってパターン加工し、熱硬化させてゲート絶縁層を形成する。その後、電子ビーム蒸着法により、金を成膜し、エッチングによりゲート電極を形成し、TFT16を形成する。TFT平坦化膜用の感光性材料として、ポジ型ポリシロキサン組成物を塗布及びプリベークして成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させてTFT平坦化用の硬化膜17を約2.0μmの膜厚で形成する。次に、(3)ITOをスパッタにより、約100nmの膜厚で成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工し、透明電極18を形成する。その上に、平坦化膜用の感光性材料として、ポジ型ポリシロキサン組成物を塗布及びプリベークして成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて平坦化膜19を形成し、さらに、公知の方法で、配向膜20を形成する。その後、(4)ネガ型黒色ポリイミド組成物を、スピンコート法により塗布及びプリベークして、プリベーク膜21aを形成する。次いで、(5)透光部、遮光部及び半透光部(透光部の20%透過率)を含む、所望のパターンを有するハーフトーンフォトマスク22を介して、活性化学線23として、g線、h線及びi線を照射する。次に、(6)TMAH水溶液をアルカリ溶液として用いて、現像してパターン加工をした後、活性化学線として、g線、h線及びi線を照射してブリーチング露光をし、その後、必要に応じてミドルベークし、熱硬化させることで、遮光性のBCSとして、所望のパターンを有する硬化パターン21b、及び、所望のパターンを有し、かつ段差形状を有する硬化パターン21cを形成し、段差形状を有するBCSを有するガラス基板24を形成する。次いで、(7)上述したガラス基板14と該ガラス基板24と、を接合させることで、BLU及び段差形状を有するBCSを有するガラス基板25を形成する。
【0285】
さらに、(8)別のガラス基板26上に、カラーフィルタ用の感光性材料として、ネガ型着色アクリル組成物を塗布及びプリベークして成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて、赤色、緑色、青色の三色のカラーフィルタ27を形成する。その後、(9)平坦化用の感光性材料として、ポジ型ポリシロキサン組成物を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて平坦化用の硬化膜28を形成し、その上に、公知の方法で、配向膜29を形成することで、カラーフィルタ基板30を形成する。次いで、(10)前記BLU及び段差形状を有するBCSを有するガラス基板25と該カラーフィルタ基板30と、を接合させることで、(11)BLU、段差形状を有するBCS及びカラーフィルタを有するガラス基板31を形成する。次に、(12)公知の方法で、液晶を注入して液晶層32を形成することで、ネガ型黒色ポリイミド組成物を、段差形状を有するBCSとして有する液晶ディスプレイが製造される。
【0286】
以上のように、本発明の硬化膜の製造方法によれば、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを備える、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイを製造することが可能である。また、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを、フォトリソグラフィーにより一括形成可能である。従って、フォトレジストを用いたプロセスと比較して、工程数を削減することができるため、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイの生産性の向上、プロセスタイム短縮及びタクトタイム短縮が可能となる。
【0287】
本発明の硬化膜の製造方法によれば、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて、段差形状を有するパターンを形成可能であって、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを備える、有機ELディスプレイを製造することが可能となる。加えて、本発明の硬化膜の製造方法によれば、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することで、パネルの歩留まり低下を抑制するとともに、発光素子の劣化を抑制し、発光素子の信頼性に優れる有機ELディスプレイを製造することが可能となる。従って、本発明の硬化膜の製造方法は、有機ELディスプレイを製造する方法として好適である。また、段差形状を有する画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層又は配線保護層を形成できるため、段差形状を有する複雑な積層構造を一括形成することが可能であり、プロセスタイムを短縮することができる。
【実施例
【0288】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、名称を以下に示す。
5CPL-1:オキシペンチレンカルボニル構造を分子内に5個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
6FDA:2,2-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;4,4’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(1,2-フタル酸無水物)
A-BPEF:“NK ESTER”(登録商標) A-BPEF(新中村化学工業社製;9,9-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)
APC:Argentum‐Palladium‐Cupper(銀‐パラジウム‐銅合金)
BAHF:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
BFE:1,2-ビス(4-ホルミルフェニル)エタン
BGPF:9,9-ビス(4-グリシドキシフェニル)フルオレン
Bk-S0100CF:“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製;一次粒子径40~80nmのベンゾフラノン系黒色顔料)
CF:四フッ化炭素
cyEpoTMS:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
D.BYK-167:“DISPERBYK”(登録商標)-167(ビックケミー・ジャパン社製;アミン価を有する分散剤)
DFA:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
DPCA-60:“KAYARAD”(登録商標) DPCA-60(日本化薬社製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に6個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
DPHA:“KAYARAD”(登録商標) DPHA(日本化薬社製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
GL-02R:シリル基又はシロキサン結合を有する構造として、2つ以上のジメチルシロキサン結合を有するポリジメチルシロキサン構造、及び光重合性基として、アクリル基を有する、アクリル樹脂系撥インク剤(共栄社化学社製)
GMA:メタクリル酸グリシジル
HA:N,N’-ビス[5,5’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(2-ヒドロキシフェニル)]ビス(3-アミノ安息香酸アミド)
IGZO:酸化インジウムガリウム亜鉛
ITO:酸化インジウムスズ
KOH:水酸化カリウム
MAA:メタクリル酸
MAP:3-アミノフェノール;メタアミノフェノール
MBA:3-メトキシ-n-ブチルアセテート
MeTMS:メチルトリメトキシシラン
MgAg:Magnesium‐Argentum(マグネシウム‐銀合金)
NA:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物;ナジック酸無水物
NCI-831:“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831((株)ADEKA製;オキシムエステル系光重合開始剤)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
ODPA:ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;オキシジフタル酸二無水物
P.B.60:C.I.ピグメントブルー60
P.R.179:C.I.ピグメントレッド179
P.Y.192:C.I.ピグメントイエロー192
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PHA:フタル酸無水物
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
RS-72-K:“メガファック”(登録商標)RS-72-K(DIC社製;フッ素原子を有する構造として、パーフルオロアルキレン鎖(2つ以上のフッ素原子を有するアルキレン鎖)、及び光重合性基として、アクリル基を有する、アクリル樹脂系撥インク剤)
S-20000:“SOLSPERSE”(登録商標) 20000(Lubrizol社製;ポリエーテル系分散剤)
SiDA:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
STR:スチレン
TCDM:メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル;ジメチロール-トリシクロデカンジメタアクリレート
TEA:トリエチルアミン
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TMOS:テトラメトキシシラン
TPK-1227:スルホン酸基を導入する表面処理がされたカーボンブラック(CABOT社製)
合成例(A)
三口フラスコに、BAHFを18.31g(0.05mol)、プロピレンオキシドを17.42g(0.3mol)、アセトンを100mL秤量して溶解させた。ここに、アセトン10mLに塩化3-ニトロベンゾイルを20.41g(0.11mol)溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ取し、50℃で真空乾燥させた。得られた固体30gを、300mLのステンレスオートクレーブに入れ、2-メトキシエタノール250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、室温で2時間反応させた。2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認した。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除去し、減圧留去させて濃縮し、下記構造のヒドロキシ基含有ジアミン化合物(HA)を得た。
【0289】
【化9】
【0290】
合成例1 ポリイミド(PI-1)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、BAHFを31.13g(0.085mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して77.3mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して4.5mol%)、末端封止剤として、MAPを2.18g(0.020mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して18.2mol%)、NMPを150.00g秤量して溶解させた。ここに、NMP50.00gにODPAを31.02g(0.10mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、キシレン15gを添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド(PI-1)を得た。得られたポリイミドのMwは27,000、酸当量は350であった。
【0291】
合成例2 ポリイミド前駆体(PIP-1)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、6FDAを44.42g(0.10mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)、NMPを150g秤量して溶解させた。ここに、NMP50gにBAHFを14.65g(0.040mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して32.0mol%)、HAを18.14g(0.030mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して24.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して4.0mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP15gにMAPを5.46g(0.050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して40.0mol%)溶かした溶液を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、NMP15gにDFAを23.83g(0.20mol)溶かした溶液を投入した。投入後、50℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温に冷却した後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド前駆体(PIP-1)を得た。得られたポリイミド前駆体のMwは20,000、酸当量は450であった。
【0292】
合成例3 ポリベンゾオキサゾール(PBO-1)の合成
トルエンを満たしたディーンスターク水分離器及び冷却管を付けた500mL丸底フラスコに、BAHFを34.79g(0.095mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して95.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して5.0mol%)、NMPを75.00g秤量して、溶解させた。ここに、NMP25.00gに、BFEを19.06g(0.080mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し66.7mol%)、末端封止剤として、NAを6.57g(0.040mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し33.3mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、200℃以上で10時間加熱攪拌し、脱水反応を行った。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール(PBO-1)を得た。得られたポリベンゾオキサゾールのMwは25,000、酸当量は330であった。
【0293】
合成例4 ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBOP-1)の合成
トルエンを満たしたディーンスターク水分離器及び冷却管を付けた500mL丸底フラスコに、BAHFを34.79g(0.095mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して95.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して5.0mol%)、NMPを70.00g秤量して、溶解させた。ここに、NMP20.00gに、BFEを19.06g(0.080mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し66.7mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP10gにNAを6.57g(0.040mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し33.3mol%)溶かした溶液を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、100℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBOP-1)を得た。得られたポリベンゾオキサゾール前駆体のMwは20,000、酸当量は330であった。
【0294】
合成例5 ポリシロキサン溶液(PS-1)の合成
三口フラスコに、MeTMSを20.43g(30mol%)、PhTMSを49.57g(50mol%)、cyEpoTMSを12.32g(10mol%)、TMOSを7.61g(10mol%)、PGMEAを83.39g仕込んだ。フラスコ内に空気を0.05L/分で流し、混合溶液を攪拌しながらオイルバスで40℃に加熱した。混合溶液をさらに攪拌しながら、水28.38gにリン酸0.270gを溶かしたリン酸水溶液を投入した。投入後、40℃で30分間攪拌して、シラン化合物を加水分解させた。加水分解終了後、バス温を70℃にして1時間攪拌した後、続いてバス温を115℃まで昇温した。昇温開始後、約1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。2時間加熱攪拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却し、ポリシロキサン溶液(PS-1)を得た。得られたポリシロキサンのMwは4,500であった。
【0295】
合成例6 多環側鎖含有樹脂溶液(CR-1)の合成
三口フラスコに、BGPFを46.25g(0.10mol)、MBAを54.53g秤量して溶解させた。ここに、MBA10.00gにMAAを17.22g(0.20mol)、ジベンジルアミンを0.135g(0.0010mol)、4-メトキシフェノールを0.037g(0.0003mol)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌した。その後、MBA30.00gにODPAを27.92g(0.090mol)、末端封止剤として、PHAを2.96g(0.020mol)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、150℃で5時間攪拌して、多環側鎖含有樹脂溶液(CR-1)を得た。得られた多環側鎖含有樹脂のMwは4,700、カルボン酸当量は470g/molであり、二重結合当量は470g/molであった。
【0296】
合成例7 アクリル樹脂溶液(AC-1)の合成
三口フラスコに、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.821g(1mol%)、PGMEAを29.29g仕込んだ。次に、MAAを21.52g(50mol%)、TCDMを22.03g(20mol%)、STRを15.62g(30mol%)仕込み、室温でしばらく攪拌して、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間攪拌した。次に、得られた溶液に、PGMEAを59.47gにGMAを14.22g(20mol%)、ジベンジルアミンを0.676g(1mol%)、4-メトキシフェノールを0.186g(0.3mol%)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌して、アクリル樹脂溶液(AC-1)を得た。得られたアクリル樹脂のMwは15,000、カルボン酸当量は490g/molであり、二重結合当量は740g/molであった。
【0297】
以上説明した合成例1~7の組成を、まとめて表1に示す。
【0298】
【表1】
【0299】
調製例1 顔料分散液(Bk-1)の調製
分散剤として、S-20000を34.5g、溶剤として、MBAを782.0g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、Bk-S0100CFを103.5g秤量して混合して30分間攪拌し、0.40mmφのジルコニアビーズが充填された横型ビーズミルを用いて、数平均粒子径が100nmとなるように湿式メディア分散処理を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=75/25(質量比)の顔料分散液(Bk-1)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は100nmであった。
【0300】
調製例2 顔料分散液(Bk-2)の調製
樹脂として、合成例1で得られた、ポリイミド(PI-1)の30質量%のMBA溶液を92.0g、分散剤として、S-20000を27.6g、溶剤として、MBAを717.6g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、Bk-S0100CFを82.8g秤量して混合して30分間攪拌し、0.40mmφのジルコニアビーズが充填された横型ビーズミルを用いて、数平均粒子径が100nmとなるように湿式メディア分散処理を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/樹脂/分散剤=60/20/20(質量比)の顔料分散液(Bk-2)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は100nmであった。
【0301】
調製例3~4 顔料分散液(Bk-3)~顔料分散液(Bk-4)の調製
表2-1に記載の着色剤、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(E)分散剤の種類並びにこれらの比率にて、調製例2と同様に顔料分散をして、顔料分散液(Bk-3)~顔料分散液(Bk-4)を得た。
【0302】
調製例1~4の組成を、まとめて表2-1に示す。
【0303】
【表2-1】
【0304】
各実施例で使用した、(B1)親水性骨格含有ラジカル重合性化合物として、DPCA-60(オキシペンチレンカルボニル構造を分子内に6個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、及び5CPL-1(オキシペンチレンカルボニル構造を分子内に5個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)の構造を、それぞれ以下に示す。
【0305】
【化10】
【0306】
各実施例及び比較例における評価方法を以下に示す。
【0307】
(1)樹脂の重量平均分子量
GPC分析装置(HLC-8220;東ソー社製)を用い、流動層としてテトラヒドロフラン又はNMPを用いて、「JIS K7252-3(2008)」に基づき、常温付近での方法により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。
【0308】
(2)酸価、酸当量
電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業社製)を用い、滴定試薬として0.1mol/Lの水酸化ナトリウム/エタノール溶液、滴定溶剤としてキシレン/N,N-ジメチルホルムアミド=1/1(質量比)を用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により、酸価(単位はmgKOH/g)を測定して求めた。測定した酸価の値から、酸当量(単位はg/mol)を算出した。
【0309】
(3)二重結合当量
電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業社製)を用い、ヨウ素供給源として一塩化ヨウ素溶液(三塩化ヨウ素=7.9g、ヨウ素=8.9g、酢酸=1,000mLの混合溶液)、未反応ヨウ素の捕捉水溶液として100g/Lのヨウ化カリウム水溶液、滴定試薬として0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価、及び不けん化物の試験方法」の「第6項よう素価」に記載の方法に基づき、ウィイス法により、樹脂のヨウ素価を測定した。測定したヨウ素価(単位はgI/100g)の値から、二重結合当量(単位はg/mol)を算出した。
【0310】
(4)ポリシロキサン中の各オルガノシラン単位の含有比率
29Si-NMRの測定を行い、オルガノシランに由来するSi全体の積分値に対する、特定のオルガノシラン単位に由来するSiの積分値の割合を算出して、それらの含有比率を計算した。試料(液体)は、直径10mm の“テフロン”(登録商標)製NMRサンプル管に注入して測定に用いた。29Si-NMR測定条件を以下に示す。
装置:核磁気共鳴装置(JNM-GX270;日本電子社製)
測定法:ゲーテッドデカップリング法
測定核周波数:53.6693MHz(29Si核)
スペクトル幅:20000Hz
パルス幅:12μs(45°パルス)
パルス繰り返し時間:30.0秒
溶媒:アセトン-d6
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:23℃
試料回転数:0.0Hz。
【0311】
(5)顔料の数平均粒子径
ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(ゼータサイザーナノZS;シスメックス社製)を用い、希釈溶媒としてPGMEAを用いて、顔料分散液を1.0×10-5~40体積%の濃度に希釈し、希釈溶媒の屈折率をPGMEAの屈折率に、測定対象の屈折率を1.6に設定して、波長633nmのレーザー光を照射して顔料分散液中の顔料の数平均粒子径を測定した。
【0312】
(6)基板の前処理
ガラス上に、ITOをスパッタにより100nm成膜したガラス基板(ジオマテック社製;以下、「ITO基板」)は、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源社製)を用いて、100秒間UV-O洗浄処理をして使用した。
【0313】
(7)段差形状を有するパターンを現像後ベーク
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて、表3-1~表13-1に記載の条件にて、任意の処理雰囲気下、任意の現像後ベーク温度及び任意の現像後ベーク時間の条件下で加熱し、現像後ベークした。
【0314】
(8)段差形状を有するパターンに活性化学線の照射
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、表3-2~表13-2に記載の条件にて、任意の処理雰囲気下、及び、任意の処理温度下、任意の露光波長の活性化学線を照射した。なお、実施例32、33又は34において、処理雰囲気としては、窒素中に、酸素を500ppm、5,000ppm又は50,000ppm含むガス雰囲気である。
【0315】
(9)段差形状を有するパターンを活性ガス紫外線処理
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源(株)製、紫外線照度:18mW/cm(測定波長254nm))を用いて、表3-2~表13-2に記載の条件にて、任意の処理雰囲気下、任意の処理温度下、及び、任意の処理時間、任意の露光波長の紫外線を照射した。
【0316】
(10)段差形状を有するパターンをプラズマ処理
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、プラズマ洗浄装置(SPC-100B+H;(株)日立ハイテクインスツルメンツ製)を用いて、表3-2~表13-2に記載の条件にて、50sccmのガス流量及び20Paの処理圧力の条件下、任意の処理雰囲気下、任意の処理温度下、及び、任意の処理時間、任意の高周波電力(RF電力)でプラズマを発生させて処理した。
【0317】
(11)段差形状を有するパターンをミドルベーク
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて、表3-2~表13-2に記載の条件にて、任意の処理雰囲気下、任意のミドルベーク温度及び任意のミドルベーク時間の条件下で加熱し、ミドルベークした。
【0318】
(12)段差形状を有するパターンを加熱して熱硬化
下記、実施例1記載の方法、及び、表3-1~表13-1に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。作製したパターンに、表3-2~表13-2に記載の条件にて、任意の処理雰囲気下、任意の熱硬化温度及び任意の熱硬化時間の条件下で加熱し、熱硬化させた。なお、実施例60、61又は62において、処理雰囲気としては、窒素中に、酸素を500ppm、5,000ppm又は50,000ppm含むガス雰囲気である。
【0319】
(13)パターン断面形状
電界放出型走査電子顕微鏡(S-4800;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、前記(1)パターンを形成する工程、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程、及び、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、段差形状を有するパターンの断面を観察し、断面のテーパー角を測定した。下記のように判定し、断面のテーパー角が60°以下となる、A+、A及びBを合格とし、断面のテーパー角が45°以下となる、A+及びAをパターン形状良好とし、断面のテーパー角が30°以下となる、A+をパターン形状優秀とした。
A+:断面のテーパー角が1~30°
A:断面のテーパー角が31~45°
B:断面のテーパー角が46~60°
C:断面のテーパー角が61~70°
D:断面のテーパー角が71~80°
E:断面のテーパー角が81~179°。
【0320】
(14)ハーフトーン特性/段差膜厚
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、前記(1)パターンを形成する工程、前記(1c)パターンを現像後ベークする工程、及び、前記(3)パターンを加熱して熱硬化させる工程における、段差形状を有するパターンの厚膜部の膜厚(TFT)μm、及び、薄膜部の膜厚(THT)μmを測定した。ハーフトーン特性の指標として、段差膜厚を下記式により算出した。
段差膜厚=(TFT)-(THT)。
【0321】
下記のように判定し、最大段差膜厚が1.0μm以上となる、A+、A、B及びCを合格とし、最大段差膜厚が1.5μm以上となる、A+、A及びBをハーフトーン特性良好とし、最大段差膜厚が2.0μm以上となる、A+及びAをハーフトーン特性優秀とした。
A+:最大段差膜厚が2.5μm以上
A:最大段差膜厚が2.0μm以上かつ2.5μm未満
B:最大段差膜厚が1.5μm以上かつ2.0μm未満
C:最大段差膜厚が1.0μm以上かつ1.5μm未満
D:最大段差膜厚が0.5μm以上かつ1.0μm未満
E:最大段差膜厚が0.1μm以上かつ0.5μm未満
F:最大段差膜厚が0.1μm未満又は現像後に残膜せず測定不能。
【0322】
なお、ハーフトーンフォトマスクの一例として、透光部、遮光部及び半透光部の配置、並びに、寸法の一例を、図9に示す。また、表2-2記載の組成物1を用いて、表3-1及び表3-2記載の実施例1において、図9に記載のハーフトーンフォトマスクを用いて形成された、現像後の段差形状を有するパターンを、図10に示す。また、光硬化及び熱硬化後の段差形状を有するパターンの観察画像を、図11に示す。
【0323】
(15)遮光性(光学濃度(以下、「OD」)値)
下記、実施例1記載の方法、上記(7)~(12)記載の方法、並びに、表3-1~表13-1、及び、表3-2~表13-2に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite社製)を用いて、作製したパターンの入射光強度(I)及び透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、OD値を下記式により算出した。
OD値=log10(I/I)。
【0324】
(16)絶縁性(表面抵抗率)
下記、実施例1記載の方法、上記(7)~(12)記載の方法、並びに、表3-1~表13-1、及び、表3-2~表13-2に記載の条件にて、段差形状を有するパターンを作製した。高抵抗抵抗率計(“ハイレスタ”UP;三菱化学社製)を用いて、作製したパターンの表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0325】
(17)有機ELディスプレイの発光特性
(有機ELディスプレイの作製方法)
図12(1)~(4)に、使用した基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板47に、スパッタ法により、ITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、第1電極48としてエッチングし、透明電極を形成した。また、第2電極を取り出すため補助電極49も同時に形成した(図12(1))。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学社製)で10分間超音波洗浄し、超純水で洗浄した。次に、この基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を実施例1に記載された方法で塗布及びプリベークし、所定のパターンを有し、かつ、透光部、遮光部及び半透光部を有するハーフトーンフォトマスクを用いて、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを絶縁層50として形成した。以上の方法で、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第1電極を露出せしめる形状の絶縁層50を、基板有効エリアに限定して形成した(図12(2))。なお、この開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また、基板有効エリアは、16mm四方であり、絶縁層50の厚さは、任意の膜厚で形成した。
【0326】
次に、第1電極48、補助電極49及び絶縁層50を形成した基板を用いて、有機ELディスプレイの作製を行った。前処理として、窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により、発光層を含む有機EL層51を形成した(図12(3))。なお、蒸着時の真空度は、1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として、化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として、化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に、発光層に、ホスト材料として、化合物(GH-1)とドーパント材料として、化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるように40nmの厚さに蒸着した。その後、電子輸送材料として、化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を、体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
【0327】
【化11】
【0328】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgAgを体積比10:1で100nm蒸着して第2電極52とし、反射電極を形成した(図12(4))。その後、低湿窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いて、キャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に5mm四方のボトムエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0329】
(発光特性評価)
上述した方法で作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、非発光領域や輝度ムラなどの発光不良がないかを観察した。作製した有機ELディスプレイのうち、初期特性に問題が無かった良品素子について、耐久性試験として、80℃で500時間保持した。耐久性試験後、有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、発光領域や輝度ムラなどの発光特性に変化がないかを観察した。下記のように判定し、耐久試験前の発光領域面積を100%とした場合の、耐久試験後の発光領域面積が80%以上となる、A+、A、及びBを合格とし、発光領域面積が90%以上となる、A+及びAを発光特性良好とし、発光領域面積が95%以上となる、A+を発光特性優秀とした。
A+:耐久試験後の発光領域面積が95~100%
A:耐久試験後の発光領域面積が90~94%
B:耐久試験後の発光領域面積が80~89%
C:耐久試験後の発光領域面積が70~79%
D:耐久試験後の発光領域面積が50~69%
E:耐久試験後の発光領域面積が0~49%。
【0330】
(表示不良発生率評価)
上記(17)記載の方法で、所定のパターンを有し、かつ、透光部、遮光部及び半透光部を有するハーフトーンフォトマスクを用いて、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを絶縁層50として形成し、38×46mmの無アルカリガラス基板5枚から、有機ELディスプレイを5枚×4=20個作製した。前記段差形状を有するパターンは、厚膜部、薄膜部及び開口部を有し、前記開口部は隣接する前記薄膜部に囲まれており、前記厚膜部は前記薄膜部に隣接している。前記開口部については、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置されている。薄膜部と厚膜部については、前記幅70μmの開口部と開口部の間の85μm(ピッチ155μm-幅70μm=85μm)は、厚膜部25μmと、前記開口部に隣接する薄膜部30μmが、前記厚膜部の両側に配置されている。また、前記長さ260μmの開口部と開口部の間の205μm(ピッチ465μm-長さ260μm=205μm)は、厚膜部65μmと、前記開口部に隣接する薄膜部70μmが、前記厚膜部の両側に配置されている。
【0331】
作製した有機ELディスプレイの、前記開口部、前記厚膜部及び前記薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図を、図13に示す。なお、図13に示すパターンを形成するために用いたハーフトーンフォトマスクは、透光部と半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ遮光部と半透光部とが隣接する箇所を有する。また、ライン形状の透光部と、四角形形状の遮光部とを有する。さらに、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率は、0%である。
【0332】
作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、蒸着時のパーティクルに起因するダークスポット、及び、絶縁層の損傷に起因する非発光領域や輝度ムラなどの表示不良がないかを観察し、20個の有機ELディスプレイのうち、正常に発光する個数から表示不良発生率を算出した。
【0333】
下記のように判定し、表示不良発生率が25%以下となる、A+、A、B及びCを合格とし、表示不良発生率が15%以下となる、A+、A及びBを歩留まり良好とし、表示不良発生率が5%以下となる、A+及びAを歩留まり優秀とした。
A+:表示不良発生率が0%
A:表示不良発生率が1~5%
B:表示不良発生率が6~15%
C:表示不良発生率が16~25%
D:表示不良発生率が26~35%
E:表示不良発生率が36~65%
F:表示不良発生率が66~100%。
【0334】
なお、比較例8において作製した有機ELディスプレイの、前記開口部、前記厚膜部及び前記薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図を、図14に示す。なお、図14に示すパターンを形成するために、比較例8において用いたハーフトーンフォトマスクは、透光部と半透光部とが接する箇所を有する一方、遮光部と半透光部とは隣接する箇所を有しない。また、四角形形状の透光部と、四角形形状の遮光部とを有する。さらに、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率は、100%である。
【0335】
[実施例1]
黄色灯下、NCI-831を0.341g秤量し、MBAを6.817g、PGMEAを4.816g添加し、攪拌して溶解させた。次に、合成例1で得られたポリイミド(PI-1)の30質量%のMBA溶液を5.059g、DPHAの50質量%のMBA溶液を1.421g、A-BPEFの50質量%のPGMEA溶液を0.568g添加して攪拌し、均一溶液として調合液を得た。次に、調製例1で得られた顔料分散液(Bk-2)を9.149g秤量し、ここに、上述した方法によって得られた調合液を15.851g添加して攪拌し、均一溶液とした。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、組成物1を調製した。
【0336】
調製した組成物1を、ITO基板上にスピンコーター(MS-A100;ミカサ社製)を用いて任意の回転数でスピンコーティングにより塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて110℃で120秒間プリベークし、膜厚約5μmのプリベーク膜を作製した。
【0337】
作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液でスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point;以下、「B.P.」)を測定した。
【0338】
上述と同様にプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でパターニング露光した。露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で、23℃の条件下で現像し、水で30秒間リンスすることで、段差形状を有するパターンを作製した。現像時間は、B.P.の1.5倍とした。
【0339】
ハーフトーンフォトマスクとしては、透光部、遮光部、及び、前記透光部と前記遮光部の間に半透光部を有するフォトマスクを用いた。前記半透光部の透過率(%THT)%はそれぞれ、前記透光部の透過率(%TFT)の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%である箇所を有する。前記透光部と前記半透光部とは隣接しており、前記遮光部と前記半透光部は隣接している。前記透光部、前記遮光部及び前記半透過部のパターン形状が、いずれもライン形状である箇所を有する。また、前記透光部及び前記遮光部が、いずれも四角形形状である箇所を有する。前記透光部のパターン寸法は、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は100μmである箇所を有する。また、前記遮光部のパターン寸法は10μmである。一方、前記半透光部のパターン寸法は、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、又は100μmである箇所を有する。
【0340】
現像後、上述した(8)記載の方法で、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でブリーチング露光し、段差形状を有するパターンを光硬化させた。その後、上述した(12)の方法で、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて、250℃で熱硬化させ、段差形状を有する硬化パターンを作製した。熱硬化条件は、窒素雰囲気下、250℃で60分間熱硬化させた。
【0341】
[実施例2~97、参考例1~2及び比較例1~7]
実施例1と同様に、組成物2~18を表2-2に記載の組成にて調製した。得られた各組成物を用いて、実施例1と同様に、基板上に組成物を成膜し、段差形状を有有するパターン加工性、段差形状を有するパターンの膜特性及び有機ELディスプレイの発光特性の評価を行った。これらの評価結果をまとめて、表3-1~表14-1、表3-2~表14-2、表4-3、表7-3、表10-3、表11-3、及び表14-3に示す。なお、比較しやすくするために、表4-1~表12-1、表4-2~表12-2、表4-3、表7-3、表10-3、及び表11-3のそれぞれに、実施例1の評価結果を記載した。また、表12-1、及び表12-2のそれぞれに、実施例7の評価結果を記載した。
【0342】
なお、参考製1について、実施例1との相違点は、ハーフトーンフォトマスクを用いて露光していない点である。参考例1においては、二つのフォトマスクで二回に分けて露光し、現像することで段差形状を有するパターンを形成した。前記(1-2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程において記載した通り、実施例1においては、ハーフトーンフォトマスクを用いており、段差形状を一括形成可能であるため、パターニング露光時のタクトタイムを短縮することができる。また、参考例1においては、透光部の領域が異なる二つのフォトマスクを用いて、二回以上に分けて露光しており、露光位置精度やアライメント誤差に起因する発光不良のため歩留まりが低下するため、表示不良発生率が増加した。タクトタイム短縮及び表示不良発生率低下の観点で、実施例1の優位性を確認することができる。
【0343】
また、参考例2について、実施例1との相違点は、フォトマスクを介する活性化学線の照射と、アルカリ溶液での現像をしていない点である。参考例2においては、インクジェット塗布で二回パターン状に成膜することで、段差形状を有するパターンを形成した。前記(1-1)塗膜を成膜する工程において記載した通り、実施例1においては、ハーフトーンフォトマスクを用いたフォトリソグラフィーであり、パターニング露光時の活性化学線の照射により、パターンの架橋密度が向上するため、熱硬化後の段差膜厚を向上させることができる。加えて、歩留まり低下抑制により、表示不良発生率を低下することができる。また、アルカリ溶液を用いた現像工程により、脱ガス起因となる低分子成分が除去されるため、発光素子の信頼性を向上させることができる。熱硬化後の段差膜厚向上、発光素子の信頼性向上、及び、表示不良発生率低下の観点で、実施例1の優位性を確認することができる。
【0344】
【表2-2】
【0345】
【表3-1】
【0346】
【表3-2】
【0347】
【表4-1】
【0348】
【表4-2】
【0349】
【表4-3】
【0350】
【表5-1】
【0351】
【表5-2】
【0352】
【表6-1】
【0353】
【表6-2】
【0354】
【表7-1】
【0355】
【表7-2】
【0356】
【表7-3】
【0357】
【表8-1】
【0358】
【表8-2】
【0359】
【表9-1】
【0360】
【表9-2】
【0361】
【表10-1】
【0362】
【表10-2】
【0363】
【表10-3】
【0364】
【表11-1】
【0365】
【表11-2】
【0366】
【表11-3】
【0367】
【表12-1】
【0368】
【表12-2】
【0369】
【表13-1】
【0370】
【表13-2】
【0371】
【表14-1】
【0372】
【表14-2】
【0373】
【表14-3】
【0374】
[実施例98]
(偏光層を有しない有機ELディスプレイの製造方法)
作製する有機ELディスプレイの概略を図15に示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板53上に、電子ビーム蒸着法により、クロムと金の積層膜を成膜し、エッチングによりソース電極54とドレイン電極55を形成した。次に、APC(銀/パラジウム/銅=98.07/0.87/1.06(質量比))をスパッタにより100nm成膜し、エッチングによりパターン加工してAPC層を形成し、さらに、APC層の上層にITOをスパッタにより10nm成膜し、エッチングにより、第1電極として反射電極56を形成した。電極表面を酸素プラズマで洗浄した後、スパッタ法により、アモルファスIGZOを成膜し、エッチングによりソース・ドレイン電極間に酸化物半導体層57を形成した。次に、スピンコート法により、ポジ型感光性ポリシロキサン系材料(SP-P2301;東レ社製)を成膜し、フォトリソグラフィーにより、ビアホール58と画素領域59を開口した後、熱硬化させてゲート絶縁層60を形成した。その後、電子ビーム蒸着法により、金を成膜し、エッチングによりゲート電極61を形成することで、酸化物TFTアレイとした。
【0375】
上述した実施例1記載の方法によって、組成物1を、酸化物TFTアレイ上に塗布及びプリベークして成膜し、所定のパターンを有し、かつ、透光部、遮光部及び半透光部を有するハーフトーンフォトマスクを介してパターニング露光、現像及びリンスして画素領域を開口した後、熱硬化させて、段差形状を有し、遮光性を有するTFT保護層/画素分割層62を形成した。以上の方法で、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が反射電極を露出せしめる形状の画素分割層を、基板有効エリアに限定して形成した。なお、この開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また、基板有効エリアは、16mm四方であり、画素分割層の厚さは、任意の膜厚で形成した。
【0376】
次に、上述した(17)記載の方法で、正孔注入層として化合物(HT-1)、正孔輸送層として化合物(HT-2)、ホスト材料として化合物(GH-1)、ドーパント材料として化合物(GD-1)、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を用いて、有機EL発光層63を形成した。
【0377】
その後、蒸着法により、MgAgを体積比10:1で10nm成膜し、エッチングにより、第2電極として透明電極64を形成した。次いで、低湿窒素雰囲気下、有機ELシール材(ストラクトボンド(登録商標)XMF-T;三井化学社製)を用いて封止膜65を形成した。さらに、無アルカリガラス基板66を、封止膜上に貼りあわせ、1枚の基板上に5mm四方の、偏光層を有しないトップエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0378】
(発光特性評価)
上述した方法で作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、外光を画素分割層部に照射した場合の輝度(Y’)、外光を照射しない場合の輝度(Y)を測定した。外光反射低減の指標として、コントラストを下記式により算出した。
コントラスト=Y/Y’。
【0379】
下記のように判定し、コントラストが0.80以上となる、A+、A、及びBを合格とし、コントラストが0.90以上となる、A+及びAを外光反射低減効果良好とし、コントラストが0.95以上となる、A+を外光反射低減効果優秀とした。上述した方法で作製した有機ELディスプレイは、コントラストが0.90であり、外光反射低減が可能であることを確認した。
A+:コントラストが0.95~1.00
A:コントラストが0.90~0.94
B:コントラストが0.80~0.89
C:コントラストが0.70~0.79
D:コントラストが0.50~0.69
E:コントラストが0.01~0.49。
【0380】
[比較例8]
(表示不良発生率評価)
上記(17)記載の方法で、所定のパターンを有し、かつ、透光部、遮光部及び半透光部を有するハーフトーンフォトマスクを用いて、ネガ型感光性樹脂組成物の段差形状を有するパターンを絶縁層50として形成し、38×46mmの無アルカリガラス基板5枚から、有機ELディスプレイを5枚×4=20個作製した。作製した有機ELディスプレイの、前記開口部、前記厚膜部及び前記薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図を、図14に示す。なお、図14に示すパターンを形成するために、比較例8において用いたハーフトーンフォトマスクは、透光部と半透光部とが接する箇所を有する一方、遮光部と半透光部とは隣接する箇所を有しない。また、四角形形状の透光部と、四角形形状の遮光部とを有する。さらに、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する長さの比率は、100%である。
【0381】
作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、蒸着時のパーティクルに起因するダークスポット、及び、絶縁層の損傷に起因する非発光領域や輝度ムラなどの表示不良がないかを観察し、20個の有機ELディスプレイのうち、正常に発光する個数から表示不良発生率を算出した。
【0382】
上記(17)と同様に判定し、表示不良発生率が25%以下となる、A+、A、B及びCを合格とし、表示不良発生率が15%以下となる、A+、A及びBを歩留まり良好とし、表示不良発生率が5%以下となる、A+及びAを歩留まり優秀とした。上記の方法で作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が30%であり、歩留まり不良であった。
【0383】
[実施例99]
(段差形状を有するパターンの撥液性、及びインクジェット有機EL適合性評価)
上述した、実施例1記載の方法で、ITO基板上に組成物1のプリベーク膜を5μmの膜厚で成膜し、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、透光部の露光量が、プリベーク後の膜厚が5μmの場合の感度の露光量となるように超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光し、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で現像した。現像後、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でブリーチング露光し、段差形状を有するパターンを光硬化させた。その後、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて、組成物1の硬化膜を作製した。成膜条件は、表12-1、及び表12-2の実施例1に記載の条件と同じ成膜条件で作製した。
【0384】
接触角測定装置(DMs-401;協和界面科学社製)を用いて、段差形状を有するパターン上に1μLのPGMEAを滴下し、JIS R3257:1999「基板ガラス表面ぬれ性試験方法」の「第6項静滴法」に記載の方法に基づき、23℃の条件下、撥液性の指標として、透光部の熱硬化後のPGMEAに対する接触角(厚膜部のPGMEAに対する接触角)(CApFT)°を測定した。
【0385】
下記のように判定し、厚膜部の接触角が40°以上となる、A+、A、B及びCを合格とし、厚膜部の接触角が50°以上となる、A+、A及びBを撥液性良好とし、厚膜部の接触角が60°以上となる、A+及びAを撥液性優秀とした。上記の方法で作製した組成物1の硬化膜は、厚膜部の接触角(CApFT)が42°であり、撥液性を有することを確認した。
A+:厚膜部の接触角が70°以上
A:厚膜部の接触角が60°以上かつ70°未満
B:厚膜部の接触角が50°以上かつ60°未満
C:厚膜部の接触角が40°以上かつ50°未満
D:厚膜部の接触角が20°以上かつ40°未満
E:厚膜部の接触角が10°以上かつ20°未満
F:厚膜部の接触角が10°未満又は測定不能
また、半透光部について、透過率の異なる箇所の、熱硬化後のPGMEAに対する接触角(薄膜部のPGMEAに対する接触角)(CApHT)°を測定し、現像後に残膜した半透光部の、熱硬化後のPGMEAに対する最小接触角(薄膜部のPGMEAに対する最小接触角)(CApHT/min)°を求めた。インクジェット有機EL適合性の指標として、最大接触角差を下記式により算出した。
最大接触角差=(CApHT)-(CApHT/min)。
【0386】
下記のように判定し、最大接触角差が10°以上となる、A+、A、B及びCを合格とし、最大接触角差が20°以上となる、A+、A及びBをインクジェット有機EL適合性良好とし、最大接触角差が30°以上となる、A+及びAをインクジェット有機EL適合性優秀とした。上記の方法で作製した組成物1の硬化膜は、厚膜部の接触角(CApFT)が42°、薄膜部の最小接触角(CApHT/min)°が28°であったため、最大接触角差が14°であり、インクジェット有機EL適合性を有することを確認した。
A+:最大接触角差が40°以上
A:最大接触角差が30°以上かつ40°未満
B:最大接触角差が20°以上かつ30°未満
C:最大接触角差が10°以上かつ20°未満
D:最大接触角差が5°以上かつ10°未満
E:最大接触角差が10°未満又は測定不能。
【0387】
同様の方法で、実施例100~106として、組成物7、及び14~18を用いて、撥液性及びインクジェット有機EL適合性を評価した。実施例100~105は、組成物7、及び14~18を用いて、現像液として2.38質量%TMAH水溶液を使用した。実施例106は、組成物17を用いて、現像液として0.5質量%TMAH水溶液を使用した。成膜条件は、表12-1、及び表12-2の、それぞれ、実施例7、及び92~97に記載の条件と同じ成膜条件で作製した。実施例99~106の評価結果を表15-1に示す。
【0388】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0389】
本発明による硬化膜の製造方法、及び有機ELディスプレイの製造方法は、歩留まり低下を抑制し、表示特性や信頼性が向上された有機ELディスプレイの製造に適している。
【符号の説明】
【0390】
1,12,15,26 ガラス基板
2,16 TFT
3,17 TFT平坦化用の硬化膜
4 反射電極
5a,21a プリベーク膜
5b,21c 段差形状を有する硬化パターン
6,22 ハーフトーンフォトマスク
7,23 活性化学線
8 EL発光層
9,18,64 透明電極
10,28 平坦化用の硬化膜
11 カバーガラス
13 BLU
14 BLUを有するガラス基板
19 平坦化膜
20,29 配向膜
21b 硬化パターン
24 段差形状を有するBCSを有するガラス基板
25 BLU及び段差形状を有するBCSを有するガラス基板
27 カラーフィルタ
30 カラーフィルタ基板
31 BLU、段差形状を有するBCS及びカラーフィルタを有するガラス基板
32 液晶層
34 厚膜部
35a,35b,35c 薄膜部
36a,36b,36c,36d,36e 硬化パターンの断面における傾斜辺
37 下地の基板の水平辺
47,53,66 無アルカリガラス基板
48 第1電極
49 補助電極
50 絶縁層
51 有機EL層
52 第2電極
54 ソース電極
55 ドレイン電極
56 反射電極
57 酸化物半導体層
58 ビアホール
59 画素領域
60 ゲート絶縁層
61 ゲート電極
62 段差形状を有し、遮光性を有するTFT保護層/画素分割層
63 有機EL発光層
65 封止膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16