(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/209 20210101AFI20230920BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230920BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230920BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20230920BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20230920BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20230920BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/262 E
H01M50/242
H01M50/204 101
H01M50/289
H01M50/249
H01M50/121
H01G11/12
H01G11/14
H01G11/82
H01G2/08 A
(21)【出願番号】P 2020002179
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141779(WO,A1)
【文献】特開2016-009585(JP,A)
【文献】特開2019-061749(JP,A)
【文献】特開2017-174655(JP,A)
【文献】特開2015-125930(JP,A)
【文献】特開2019-021382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151856(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0177377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/10
H01G 11/12
H01G 11/14
H01G 11/82
H01G 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数の蓄電モジュール
、熱交換器、正極集電板、及び負極集電板を含む複数の部材が積層されたモジュール積層体と、
密閉空間を構成し、該密閉空間内で前記モジュール積層体を積層方向に拘束する筐体と、を備え、
前記筐体は、
前記モジュール積層体における前記積層方向に沿って延在する側壁、及び、前記積層方向において前記側壁の一端に設けられた底壁を有するケースと、前記ケースにおける前記側壁の他端の開口を塞ぐカバーと、を含み、
前記密閉空間の内圧の上昇に伴って、少なくとも前記積層方向における前記モジュール積層体の拘束力が低下するように変形
し、
前記底壁及び前記カバーは、前記密閉空間の内圧の上昇前において、それぞれ前記側壁の前記一端及び前記他端よりも前記モジュール積層体に近い位置にある押圧部をそれぞれ有し、
一対の前記押圧部のぞれぞれと前記モジュール積層体との間には、パッケージと前記パッケージ内に封入された流体とを含む中間部材が配置されており、
前記密閉空間の内圧の上昇前において、前記密閉空間の内圧は大気圧よりも低くなっており、前記一対の前記押圧部は前記中間部材を介して前記モジュール積層体を拘束し、
前記密閉空間の内圧の上昇に伴って、前記一対の前記押圧部は、それぞれ前記モジュール積層体から離間する方向に変形する、蓄電装置。
【請求項2】
前記モジュール積層体と前記側壁との間には、前記モジュール積層体及び前記側壁の両方に接触した
他の中間部材が設けられている、請求項
1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記底壁及び前記カバーに設けられたそれぞれの前記押圧部は、前記密閉空間の内圧上昇によって、それぞれ前記側壁の前記一端及び前記他端よりも前記モジュール積層体から遠い位置に移動する、請求項
1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記押圧部は、前記押圧部を囲む接続部を介して前記側壁に接続されており、
前記接続部の弾性は、前記筐体の他の部分に比べて大きい、請求項
1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置
。
【請求項5】
前記積層方向に隣り合う前記蓄電モジュール同士の間には、前記蓄電モジュール同士を互いに離間する方向に付勢する離間部材が配置されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電モジュールを備えた蓄電装置が知られている(例えば特許文献1)。この蓄電装置では、密閉された空間内に複数の蓄電モジュールが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールでは、内部短絡等を原因としてモジュール内の部材が発熱する場合がある。この場合、蓄電モジュールの温度制御ができずに、蓄電モジュールの発熱が継続することで蓄電モジュールが高温に達する、いわゆる熱暴走という現象が起こり得る。例えば、複数の蓄電モジュールが互いに熱伝導可能な状態で積層されている場合、一の蓄電モジュールが熱暴走すると、熱暴走した蓄電モジュールの熱の影響によって他の蓄電モジュールでも熱暴走が起こる可能性がある。
【0005】
本開示は、熱暴走が生じた蓄電モジュールの熱が他の蓄電モジュールに伝わることを抑制した蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電装置は、少なくとも複数の蓄電モジュールを含む複数の部材が積層されたモジュール積層体と、密閉空間を構成し、該密閉空間内でモジュール積層体を積層方向に拘束する筐体と、を備え、筐体は、密閉空間の内圧の上昇に伴って、少なくとも積層方向におけるモジュール積層体の拘束力が低下するように変形する。
【0007】
上記蓄電装置では、複数の蓄電モジュールのうちのいずれかにおいて熱暴走が生じると、熱暴走に起因して密閉空間の内圧が上昇し得る。この場合、筐体が変形することによって、積層方向におけるモジュール積層体の拘束力が低下する。通常、モジュール積層体では、複数の蓄電モジュールを含む複数の部材が積層されており、積層方向にモジュール積層体が押圧されていることで、互いに隣り合う部材同士の間に間隙が生じないようになっている。モジュール積層体に働く拘束力が低下した場合には、互いに隣り合う部材同士の接触面積が小さくなる。したがって、熱暴走が生じた蓄電モジュールの熱が他の蓄電モジュールに伝わることが抑制される。
【0008】
筐体は、モジュール積層体における積層方向に沿って延在する側壁を含み、モジュール積層体と側壁との間には、モジュール積層体及び側壁の両方に接触した中間部材が設けられていてもよい。この構成では、モジュール積層体に働く拘束力が低下した場合であっても、蓄電モジュールが積層方向に交差する方向に移動することが抑制される。
【0009】
筐体は、積層方向において側壁の両端に設けられ、モジュール積層体を拘束する一対の挟持部を有し、積層方向において少なくとも側壁の一端に設けられた挟持部は、密閉空間の内圧の上昇に伴って、モジュール積層体から離間する方向に変形してもよい。この構成では、挟持部がモジュール積層体から離間する方向に変形することによって、積層方向に沿って、蓄電モジュール同士の間に隙間が形成されやすい。
【0010】
側壁の一端に設けられた挟持部は、押圧部を有する。押圧部は、密閉空間の内圧の上昇前において、側壁の一端よりもモジュール積層体に近い位置にあり、密閉空間の内圧上昇により、側壁の一端よりもモジュール積層体から遠い位置になる。この構成では、圧力の変動によって側壁の端部に対する押圧部の位置が反転するため、積層方向において蓄電モジュール間の隙間寸法を広げやすい。
【0011】
押圧部は、押圧部を囲む接続部を介して側壁に接続されており、接続部の弾性は、筐体の他の部分に比べて大きい。この構成では、接続部が外力の影響によって変形しやすいため、内圧上昇に伴って押圧部の状態が変形しやすい。
【0012】
互いに積層される前記蓄電モジュール同士の間には、前記蓄電モジュール同士を互いに離間する方向に付勢する離間部材が配置されている。この構成では、内圧上昇に伴って筐体が変形した際に、離間部材の作用によって蓄電モジュール同士を互いに離間させやすい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、熱暴走が生じた蓄電モジュールの熱が他の蓄電モジュールに伝わることを抑制できる蓄電装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一例に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の蓄電装置において、筐体が変形した状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、他の例に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の蓄電装置において、筐体が変形した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられ得る。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、モジュール積層体2を収容する筐体4と、を備える。以下、筐体4内におけるモジュール積層体2の積層方向をZ方向とし、Z方向と交差(例えば直交)する方向をX方向とし、Z方向及びX方向と交差(例えば直交)する方向をY方向とする。一例において、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向(鉛直方向)であってよい。
【0017】
モジュール積層体2は、蓄電モジュール11と、正極集電板31と、負極集電板33と、熱交換器30とを含んでいる。一例では、複数(図示例では2つ)の蓄電モジュール11のそれぞれが正極集電板31と負極集電板33とに挟まれている。蓄電モジュール11は熱交換器30間に挟まれた位置に配置されている。モジュール積層体2を構成する各部材(蓄電モジュール11、正極集電板31、負極集電板33、熱交換器30)同士は、例えば互いに離間可能に積層されていてもよい。
【0018】
蓄電モジュール11は、Z方向から見て例えば略矩形状を呈する。蓄電モジュールは、
図2に示されるように、Z方向に積層された複数の単電池を含む。蓄電モジュール11は、略直方体形状を呈する。蓄電モジュール11は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール11は、電気二重層キャパシタでもよい。蓄電モジュール11は、全固体電池でもよい。本実施形態の蓄電モジュール11は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。
【0019】
蓄電モジュール11は、積層体14と、封止部材15と、を備える。積層体14は、複数のバイポーラ電極(電極)16と複数のセパレータ17とを含む電極群114と、正極終端電極(終端電極)18と、負極終端電極(終端電極)19と、を有する。複数のバイポーラ電極16と、複数のセパレータ17とは、Z方向に沿って交互に配置されている。積層体14は、Z方向に交差する一対の主面及び主面をつなぐ外周面(側面)を有する。
【0020】
複数のバイポーラ電極16のそれぞれは、電極体21と、正極層22と、負極層23とを備える。電極体21は、Z方向に交差する一対の主面21a,21bを有する。電極体21の主面(一方の面)21a上には正極層22が設けられ、電極体21の主面(他方の面)21b上には負極層23が設けられる。このため、電極体21は、Z方向に沿って正極層22と負極層23とによって挟まれている。
【0021】
電極体21は、シート状の導電部材であり、積層方向から見て略矩形状を呈している。電極体21は、例えば、複数の金属箔が一体化された構造を有する。複数の金属箔は、互いに接合されている。各金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、もしくはニッケル箔である。各金属箔は、例えば、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)、メッキ処理が施された鋼箔(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼箔(SPCC等))、又はメッキ処理が施されたステンレス鋼箔であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、電極体21はアルミニウム箔を含んでもよい。金属箔の表面にはアルミニウムが被覆されていてもよい。電極体21の厚みは、例えば、5μm以上70μm以下である。なお、電極体21は、複数の金属箔が一体化された構造に限定されず、例えば一枚の金属箔によって構成されてもよい。
【0022】
正極層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
【0023】
導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等である。
【0024】
負極層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は正極層22と同様のものを用いることができる。
【0025】
正極終端電極18は、積層体14のZ方向における一方の端部に設けられている。正極終端電極18は、電極体21の一方の主面21aにのみ上記の正極層(活物質)22が設けられた電極である。すなわち、Z方向において積層体14の一端に配置される電極体21の主面21b上には、負極層23が配置されていない。
【0026】
負極終端電極19は、積層体14のZ方向における他方の端部に設けられている。負極終端電極19も、正極終端電極18と同様に、電極体21の一方の主面21bにのみ負極層(活物質)23が設けられた電極である。すなわち、Z方向において積層体14の他端に配置される電極体21の主面21a上には、正極層22が配置されていない。
【0027】
セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間のそれぞれを隔てる層状部材であり、積層方向から見て略矩形状を呈している。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間の短絡を防止する部材である。セパレータ17の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0028】
セパレータ17は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ17は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ17は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。
【0029】
封止部材15は、積層体14に含まれる複数のバイポーラ電極16、複数のセパレータ17、正極終端電極18、及び負極終端電極19を保持する部材であり、絶縁性を有している。より詳細には、封止部材15は、バイポーラ電極16、正極終端電極18、及び負極終端電極19を構成する電極体21を保持している。封止部材15は、積層体14の外周面(側面)を封止するように略矩形枠形状を呈する。封止部材15は、積層体14内のバイポーラ電極16同士の短絡、バイポーラ電極16と正極終端電極18との短絡、及び、バイポーラ電極16と負極終端電極19との短絡を防止し得る。
【0030】
封止部材15を形成する材料の例には、耐熱性を示す樹脂部材等が含まれる。耐熱性を示す樹脂部材の例には、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)及びPA66等が含まれる。封止部材15の厚みは、例えば、10μm以上20μm以下である。
【0031】
封止部材15によって封止された空間Sには、電解液が収容されている。電解液の例は、カーボネート系又はポリカーボネート系の電解液である。電解液に含まれる支持塩は、例えばリチウム塩である。リチウム塩は、例えば、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物である。
【0032】
再び
図1を参照する。蓄電モジュール11の一方面には正極集電板31が配置されており、蓄電モジュール11の他方面には負極集電板33が配置されている。正極集電板31は、蓄電モジュール11を構成する正極終端電極18に対面しており、正極終端電極18に電気的に接続され得る。負極集電板33は、蓄電モジュール11を構成する負極終端電極19に対面しており、負極終端電極19に電気的に接続され得る。以下の説明において、正極集電板31及び負極集電板33の総称として集電板35を用いる場合がある。
【0033】
Z方向において互いに隣り合う集電板35同士の間には熱交換器30が配置されている。また、Z方向を上下方向とした場合、上端に配置された集電板35の上部、及び、下端に配置された集電板35の下部には、熱交換器30が配置されている。図示例では、Z方向において互いに隣り合う正極集電板31同士の間、Z方向の上端に配置された負極集電板33の上部、及び、Z方向の下端に配置された負極集電板33の下部に、それぞれ熱交換器30が配置されている。
【0034】
熱交換器30は、正極集電板31又は負極集電板33を介して隣り合う蓄電モジュール11と熱交換を行う。熱交換器30は、例えば蓄電モジュール11において発生した熱を蓄電装置1の外部に放出する放熱板である。熱交換器30は、Z方向から見て略矩形状を呈する。熱交換器30の内部には、例えば水、油、空気等の冷却用流体が通る流路(図示省略)が形成されている。
【0035】
本実施形態において、互いに隣り合う蓄電モジュール11では、対面する終端電極(正極終端電極18、負極終端電極19)が同極となるように配置されている。そのため、互いに隣り合う蓄電モジュール11同士の間に配置される一対の集電板35も同極となっている。図示例では、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と他方の蓄電モジュール11の正極終端電極18とが互いに対面している。そのため、一対の蓄電モジュール11同士の間には一対の正極集電板31が配置されている。一対の蓄電モジュール11間において、熱交換器30は、一方の蓄電モジュール11に当接された正極集電板31と他方の蓄電モジュール11に当接された正極集電板31との間に配置されている。
【0036】
正極集電板31及び負極集電板33は、例えば、銅板、アルミニウム板、チタン板、もしくはニッケル板等の導電板である。正極集電板31は、Z方向から見てバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なっており、略矩形状を呈している。正極集電板31の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。また、負極集電板33は、Z方向から見て例えば略矩形状を呈している。負極集電板33の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0037】
一例のモジュール積層体2では、蓄電モジュール11同士の間において、互いに隣り合う部材(蓄電モジュール11、正極集電板31、負極集電板33、熱交換器30)の少なくとも一つのペアが互いに離間可能に積層されている。本実施形態では、蓄電モジュール11と当該蓄電モジュール11に隣接される集電板35とは、接着剤等によって互いに接着(固定)されていない。また、負極集電板33と熱交換器30との間にも接着剤等の接着(固定)手段が設けられていない。
【0038】
一例の筐体4は、ケース3と、カバー5とを有する。ケース3及びカバー5は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されていてもよく、樹脂材料によって形成されていてもよい。ケース3は、Z方向から見て略矩形状をなす有底筒状を有し、Z方向の一方の端部(図示例では上端)に開口3aを有する。ケース3の内側に形成された空間SPには、モジュール積層体2が収容され得る。図示例のケース3は、側壁3bと、底壁3cと、鍔3dとを有する。一例の側壁3bは、内側に直方体状の空間が形成されるように、Z方向から見て矩形状をなしている。すなわち、側壁3bは、モジュール積層体2における積層方向(Z方向)に沿って延在する。Z方向における側壁3bの長さは、モジュール積層体2よりも大きくなっていてよい。
【0039】
なお、図示例の側壁3bには、圧力調整部3eが形成されていてもよい。一例において、圧力調整部3eは、上下方向(Z方向)において、側壁3bの中央よりも上側に配置されており、例えば、後述する中間部材40の上端よりも上側であって、鍔3dよりも下側に位置している。圧力調整部3eは、筐体4の内圧が所定の大きさを超えたときに、筐体4内のガスを外部に排出し得る。
【0040】
底壁3cは、Z方向における側壁3bの他方の端部を閉塞している。図示例では、側壁3bの下端に底壁3cが形成されている。底壁3cは、側壁3bの下端に接続された周縁部3gと、底壁3cの中央を構成する矩形板状をなす押圧部3fと、周縁部3gと押圧部3fとを接続する接続部3hとを含む。周縁部3gは、Z方向から見て、側壁3bと同じ外形を有する矩形枠状をなしている。周縁部3gは、側壁3bの下端を基端として、XY平面に沿って、側壁3bの内側に向かって突出している。押圧部3fは、Z方向から見て、モジュール積層体2と略同じ大きさを有している。一例の押圧部3fは、側壁3bの下端よりも、Z方向において上側に位置している。接続部3hは、押圧部3fの外縁と周縁部3gの内縁とを接続している。図示例では、接続部3hは、周縁部3gの内縁から押圧部3fの外縁にかけて上向きに傾斜している。例えば、Z方向に沿って下向きの力が押圧部3fに加わった場合、接続部3hが撓むことによって、押圧部3fの位置は下方に移動し得る。鍔3dは、Z方向における側壁3bの他方の端部に形成されている。鍔3dは、Z方向から見て、側壁3bの外形よりも大きな矩形状をなしている。鍔3dは、側壁3bの上端を基端として、XY平面に沿って、側壁3bの外側に向かって突出している。
【0041】
カバー5は、ケース3の開口3aを閉塞する部材である。一例のカバー5は、Z方向から見てケース3と同様に略矩形状をなしており、鍔3dと略同じ大きさの外形を有する。カバー5は、鍔3dに対面する周縁部5aと、カバー5の中央を構成する矩形板状をなす押圧部5bと、周縁部5aと押圧部5bとを接続する接続部5cとを含む。周縁部5aは、Z方向から見て、鍔3dと同じ外形を有する矩形枠状をなしている。周縁部5aの内縁は、Z方向から見て、側壁3bの内周よりも内側に位置している。一例においては、周縁部5aと鍔3dとが溶着されることによって、ケース3とカバー5とが接続されている。これにより、筐体4の内側に密閉空間SSが形成される。押圧部5bは、Z方から見て、モジュール積層体2と略同じ大きさを有している。一例の押圧部5bは、周縁部5aよりも、Z方向において下側に位置している。接続部5cは、押圧部5bの外縁と周縁部5aの内縁とを接続している。図示例では、接続部5cは、周縁部5aの内縁から押圧部5bの外縁にかけて下向きに傾斜している。例えば、Z方向に沿って上向きの力が押圧部5bに加わった場合、接続部5cが撓むことによって、押圧部5bの位置は上方に移動し得る。
【0042】
ケース3に形成された押圧部3fと、カバー5に形成された押圧部5bとは、筐体4の空間SP(密閉空間SS)を挟んで互いに対面している。本実施形態では、これら一対の押圧部3f,5bによってモジュール積層体2が挟持されることで、モジュール積層体2が筐体4の空間SP内に拘束されている。一対の押圧部3f,5bによってモジュール積層体2が挟持されている状態では、例えば、ケース3の接続部3hと周縁部3gとの角部及びカバー5の接続部5cと周縁部3gとの角部に最も応力が加わっている。一例においては、接続部3h,5cの弾性は、筐体4の他の部分に比べて大きくなっていてもよい。すなわち、接続部3h,5cは、筐体4の他の部分に比べて、外力の影響によって変形しやすくてもよい。例えば、筐体4の内圧が上昇した場合、接続部3h,5cが撓むことによって、一対の押圧部3f,5b同士が互いに離れる方向に移動するように筐体4が変形し得る。この場合、一対の押圧部3f,5bによってモジュール積層体2を拘束する拘束力は、低下することになる。
【0043】
図示例では、モジュール積層体2が中間部材40を介して、一対の押圧部3f,5bに挟持されている。すなわち、ケース3に形成された押圧部3fとモジュール積層体2との間には中間部材41が配置されており、カバー5に形成された押圧部5bとモジュール積層体2との間には中間部材43が配置されている。また、図示のように、側壁3bとモジュール積層体2との間には、モジュール積層体2及び側壁3bの両方に接触するように中間部材45が配置されていてもよい。例えば、中間部材45は、2つの蓄電モジュール11に接触するように、Z方向において、一方の蓄電モジュール11の位置と他方の蓄電モジュール11の位置とを含むように延在している。
【0044】
中間部材40は、パッケージ40aと、パッケージ40aに封入された流体40bと、を含む。パッケージ40aは、拘束荷重に応じて変形可能な柔軟な材質によって構成されている。パッケージ40aの材質は、例えば樹脂であって、一例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の絶縁性を有するポリオレフィン系樹脂等である。流体40bは、気体、液体、ゲル、又は、それらの混合物である。さらに、流体40bは、気体、液体、ゲル、又はそれらの混合物に対して、粉末(一例として消火剤)が混合されたものとされ得る。流体40bの材料は、例えば、使用環境で凍結、気化しない液体で例えばオイル、またはクーラントで使用しているLLC(不凍液)とすることができる。このように、中間部材40は、ガスパック、液パック、又はゲルパックとして構成されている。
【0045】
以上説明した蓄電装置1では、一方の蓄電モジュール11において熱暴走が生じると、熱暴走に起因して密閉空間SSの内圧が上昇し得る。一例においては、熱暴走による熱の影響によって密閉空間SS内のガス(空気)が膨張することで、内圧が上昇し得る。また、熱暴走した蓄電モジュール11からガスが排出されることで、密閉空間SS内のガス量が増加し、内圧が上昇し得る。この場合、筐体4が変形することによって、積層方向におけるモジュール積層体2の拘束力が低下する。例えば、一例においては、
図3に示すように、内圧の上昇に伴って、一対の押圧部3f,5bが互いに離れる方向に変形する。これによって、一対の押圧部3f,5b間の距離が増大する。この場合、積層方向におけるモジュール積層体2の拘束力が低下する。
【0046】
通常、モジュール積層体2では、複数の蓄電モジュール11、集電板35及び熱交換器30が互いに離間可能に積層されており、積層方向にモジュール積層体2が押圧されていることで、互いに隣り合う部材同士の間に間隙が生じないようになっている。すなわち、積層方向にモジュール積層体2が押圧されている状態では、互いに隣り合う蓄電モジュール11同士の間において、蓄電モジュール11と集電板35と熱交換器30とが密着している。この場合、一方の蓄電モジュール11が熱暴走すると、集電板35及び熱交換器30を介した熱伝導によって、一方の蓄電モジュール11から他方の蓄電モジュール11に熱が伝わることになる。他方の蓄電モジュール11に熱が伝わることによって、当該他方の蓄電モジュール11においても熱暴走が生じる可能性がある。
【0047】
上記の蓄電装置1では、モジュール積層体2に働く拘束力が低下することにより、互いに隣り合う部材(蓄電モジュール11、正極集電板31、負極集電板33、熱交換器30)同士の接触面積が小さくなる。例えば、Z方向から見たときのモジュール積層体2の面積が1平方メートル~2平方メートル程度と大きい場合、蓄電モジュール11等の平面度にもよるが、拘束力の低下によって部材同士の接触面積が減少し易い。一例においては、拘束力の低下に伴い隣り合う部材間に間隙(例えば空気層)が形成されることによって、部材同士の接触面積が減少してもよい。このように、部材間の接触面積が減少することによって、隣り合う部材間における熱伝導による熱の移動が抑制される。したがって、熱暴走が生じた蓄電モジュール11の熱が他の蓄電モジュール11に伝わることが抑制される。なお、一例の圧力調整部3eは、筐体4の変形に伴って部材同士の接触面積が減少した後で、更に内圧が上昇してから筐体4内のガスを外部に排出するように設計されている。
【0048】
また、筐体4は、モジュール積層体2における積層方向に沿って延在する側壁3bを含み、モジュール積層体2と側壁3bとの間には、中間部材45が設けられいる。この構成では、モジュール積層体2に働く拘束力が低下した場合であっても、蓄電モジュール11が積層方向に交差する方向(XY平面に沿った方向)に移動することが抑制される。
【0049】
また、筐体4は、上下方向において側壁3bの両端に設けられ、モジュール積層体2を拘束するカバー5及び底壁3c(挟持部)を有している。カバー5及び底壁3cは、密閉空間SSの内圧の上昇に伴って、モジュール積層体2から離間する方向に変形する。この構成では、カバー5及び底壁3cがモジュール積層体2から離間する方向に変形することによって、上下方向に沿って、モジュール積層体2を構成する各部材同士の間に隙間が形成されやすい。
【0050】
押圧部3f,5bは、密閉空間SSの内圧の上昇前において、側壁3bの端部(すなわち周縁部3g,5aの位置)よりもモジュール積層体2に近い位置にあり、密閉空間SSの内圧上昇により、側壁3bの端得よりもモジュール積層体2から遠い位置に移動してもよい。この構成では、圧力の変動によって側壁3bの端部に対する押圧部3f,5bの位置が反転するため、上下方向においてモジュール積層体2を構成する各部材同士の隙間寸法を広げやすい。
【0051】
押圧部3f,5bは、押圧部3f,5bを囲む接続部3h,5cを介して側壁3bに接続されており、接続部3h,5cの弾性は、筐体4の他の部分に比べて大きい。この構成では、接続部3h,5cが外力の影響によって変形しやすいため、内圧上昇に伴って押圧部3f、5bの位置が変形しやすい。
【0052】
図4は、蓄電装置の他の例を示す。
図4に示すように、蓄電装置101は、蓄電装置1と同様のモジュール積層体2を有しており、筐体の構成において、蓄電装置1と相違している。以下、主として、筐体の構成について説明する。
【0053】
蓄電装置101において、筐体104は、ケース103と、カバー105とを有する。ケース103及びカバー105は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料又は樹脂材料によって形成されていてよい。なお、一例では、ケース103及びカバー105は、気体の透過率を低くするために、表面又は内部に金属層を有していてもよい。ケース103は、Z方向から見て略矩形状をなす有底筒状を有し、Z方向の一方の端部(図示例では上端)に開口103aを有する。ケース103の内側に形成された空間SPには、モジュール積層体2が収容され得る。図示例のケース103は、側壁103bと、底壁103cと、鍔103dとを有する。一例の側壁103bは、内側に直方体状の空間が形成されるように、Z方向から見て矩形状をなしている。すなわち、側壁103bは、モジュール積層体2における積層方向に沿って延在する。Z方向における側壁103bの長さは、モジュール積層体2よりも大きくなっていてよい。なお、図示例の側壁103bは、圧力調整部3eが形成されていてもよい。
【0054】
底壁103cは、Z方向における側壁103bの他方の端部を閉塞している。図示例では、側壁103bの下端に底壁103cが形成されている。底壁103cは、側壁103bの下端に接続された周縁部103gと、底壁103cの中央を構成する矩形板状をなす押圧部103fと、周縁部103gと押圧部103fとを接続する接続部103hとを含む。周縁部103gは、Z方向から見て、側壁103bと同じ外形を有する矩形枠状をなしている。周縁部103gは、側壁103bの下端を基端として、XY平面に沿って、側壁103bの内側に向かって突出している。押圧部103fは、Z方から見て、モジュール積層体2と略同じ大きさを有している。接続部103hは、押圧部103fの外縁と周縁部103gの内縁とを接続している。鍔103dは、Z方向から見て、側壁103bの外形よりも大きな矩形状をなしている。鍔103dは、側壁103bの上端を基端として、XY平面に沿って、側壁103bの外側に向かって突出している。
【0055】
カバー105は、ケース103の開口103aを閉塞する部材である。一例のカバー105は、Z方向から見てケース103と同様に略矩形状をなしており、鍔103dと略同じ大きさの外形を有する。カバー105は、鍔103dに対面する周縁部105aと、カバー105の中央を構成する矩形板状をなす押圧部105bと、周縁部105aと押圧部105bとを接続する接続部105cとを含む。周縁部105aは、Z方向から見て、鍔103dと同じ外形を有する矩形枠状をなしている。周縁部105aの内縁は、Z方向から見て、側壁103bの内周よりも内側に位置している。一例においては、周縁部105aと鍔103dとが溶着されることによって、ケース103とカバー105とが接続されている。これにより、筐体104の内側に密閉空間SSが形成される。押圧部105bは、Z方向から見て、モジュール積層体2と略同じ大きさを有している。接続部105cは、押圧部105bの外縁と周縁部105aの内縁とを接続している。一例においては、接続部103h,105cの弾性は、筐体104の他の部分に比べて大きくなっていてもよい。すなわち、接続部103h,105cは、筐体104の他の部分に比べて、外力の影響によって変形しやすくてもよい。
【0056】
ケース103に形成された押圧部103fと、カバー105に形成された押圧部105bとは、筐体104の空間SPを挟んで互いに対面している。本実施例では、密閉空間SSの内圧が、大気圧に比べて小さくなっている。一例では、密閉空間SSが真空引きされていてもよい。密閉空間SS内が低圧に調整されていることで、一対の押圧部103f,105b同士の距離が小さくなるように、筐体104が変形し得る。これにより、一対の押圧部103f,105bによってモジュール積層体2が挟持されることで、モジュール積層体2が筐体104の密閉空間SS内に拘束されている。一対の押圧部103f,105bによってモジュール積層体2が挟持されている状態では、例えば、ケース103の接続部103h及びカバー105の接続部105cに応力が加わっている。
【0057】
図5は、自然状態(無負荷状態)、すなわち、密閉空間SSの内圧が大気圧と同じ状態のときの蓄電装置101を示す。
図5に示すように、自然状態では、一例の押圧部103fは、側壁103bの下端よりも、Z方向において下側に位置している。接続部103hは、周縁部103gの内縁から押圧部103fの外縁にかけて下向きに傾斜している。また、押圧部105bは、周縁部105aよりも、Z方向において上側に位置している。接続部105cは、周縁部105aの内縁から押圧部105bの外縁にかけて上向きに傾斜している。
【0058】
蓄電装置101では、一方の蓄電モジュールにおいて熱暴走が生じると、熱暴走に起因して密閉空間SSの内圧が上昇し得る。一例においては、熱暴走した蓄電モジュール11からガスが排出されることで、密閉空間SS内のガス量が増加し、内圧が上昇し得る。また、熱暴走による熱の影響によって密閉空間SS内のガス(空気)が膨張することで、内圧が上昇し得る。なお、密閉空間SS内が真空に近い状態の場合には、密閉空間SS内のガスが膨張し難い。密閉空間SSの内圧が上昇した場合、筐体104の環境が自然状態に近付くため、
図5に示すように、ケース103及びカバー105の形状が復元する。すなわち、一対の押圧部103f,105bが互いに離れる方向に変形する。これによって、一対の押圧部103f,105b間の距離が増大する。この場合、積層方向におけるモジュール積層体2の拘束力が低下する。これにより、互いに隣り合う蓄電モジュール11同士の間に間隙(例えば空気層)が形成されることになる。したがって、熱暴走が生じた蓄電モジュール11の熱が他の蓄電モジュール11に伝わることが抑制される。
【0059】
以上、本開示の一例について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、互いに積層される複数の蓄電モジュール同士の間には、蓄電モジュール同士を互いに離間する方向に付勢する離間部材が配置されていてもよい。一例として、蓄電モジュール11と集電板35との間に圧縮コイルバネが配置されていてもよい。この場合、密閉空間SSの内圧の上昇に伴って筐体が変形した際に、圧縮コイルバネの作用によって蓄電モジュール11同士が互いに離間しやすい。
【0061】
また、2つの蓄電モジュールが積層されたモジュール積層体を示したが、モジュール積層体は、3つ以上の蓄電モジュールを含んでいてもよい。この場合、Z方向において、最上部に配置された蓄電モジュールは、上部に配置された中間部材40、熱交換器30及び集電板35と共にカバーに接着されていてもよい。この場合、筐体が変形した際に、最上部の蓄電モジュールが、他の蓄電モジュールから離間し易くなる。
【0062】
また、封止部材15のみによって蓄電モジュール11の外周面が形成されている例を示したが、例えば、電極体21の周縁と封止部材とによって蓄電モジュールの外周面が形成されてもよい。また、蓄電モジュールの外周面はZ方向に延びる面でなくてもよく、例えば、電極体21の周縁と当該周縁よりも外側に張り出した封止部材とによって凹凸が設けられていてもよい。
【0063】
また、封止部材15によって封止された空間Sに電解質としての電解液が収容されている例について説明したが、電解質は、固体又はゲル状であってもよい。この場合、封止部材は、電解質が蓄電モジュールの外部に漏出しない程度に電極板間を封止していればよい。また、電解質がゲル状である場合には、電解質は、不織布等によって形成されるセパレータに含浸されて半固体状をなしていてもよく、また、固体電解質であってもよい。また、電解質が電解液でなく固体電解質である場合には、セパレータは、固体電解質によって構成されてもよい。セパレータが固体電解質によって構成される場合、セパレータは、略矩形板形状を呈してもよい。
【0064】
また、一例のモジュール積層体では、複数の蓄電モジュール同士が互いに接着されていない例を示したが、例えば、複数の蓄電モジュール同士は、接着手段によって互いに固定されていてもよい。この場合、内圧上昇によって筐体が変形した際に、接着状態が解除される構成を備える。
【0065】
また、モジュール積層体が中間部材を介して、一対の押圧部に挟持されている例を示したが、中間部材は必ずしも必要ではない。中間部材が配置されない場合、モジュール積層体は、筐体を構成する上下一対の押圧部によって挟持され得る。
【0066】
また、中間部材45の例として、2つの蓄電モジュール11に接触する形態を示したが、中間部材45は、一方の蓄電モジュール11と他方の蓄電モジュール11とにそれぞれ接触するようにZ方向において分割して設けられてもよい。その場合、一方の中間部材45と他方の中間部材45とはZ方向において互いに離間していてもよい。
【0067】
また、中間部材45と蓄電モジュール11との間、及び、中間部材45とケース3との間には、ケース3、中間部材45及び蓄電モジュール11を互いに接着する接着手段が設けられてもよい。
図1に示すように、2つの蓄電モジュール11に接触するように中間部材45が設けられている場合、内圧上昇によって筐体4が変形したときに、接着手段による接着状態が解除される構成を備えてもよい。なお、Z方向において中間部材45が分割して設けられる場合には、内圧上昇によって筐体4が変形したときに、接着手段による接着状態が解除される構成を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,101…蓄電装置、2…モジュール積層体、3b,103b…側壁、4,104…筐体、11…蓄電モジュール、40…中間部材、SS…密閉空間。