(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】操作スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/04 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H01H13/04 C
(21)【出願番号】P 2020146943
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 眞一
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-005028(JP,U)
【文献】特開平08-124451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル前面に取り付けられる操作子、該操作子からパネル孔を通ってパネル裏側に突出する胴部、および前記胴部の周面において互いに反対側となる箇所に形成された一対の溝を有する操作部と、
前記胴部が挿入される装着孔、および前記操作子の操作に連動して開閉する接点を有し、前記操作部に対して着脱可能な接点部と、
開口を挟んだ一対の先端部に係合部を有し、前記胴部の外周に略沿って設けられ、一部が前記溝に嵌り込むことにより前記操作部と前記接点部と固定する略C字形状の線ばねと、
を備え、
前記接点部は、
前記線ばねを弾性変形させながら前記胴部から引き出すときに一対の前記係合部を互いに離間させるように案内する一対の傾斜面と、
前記線ばねが弾性変形して前記溝から抜けた後、互いに離間した一対の前記係合部が当接することにより前記線ばねの引き出しを制限する一対の被係合部と、
を有することを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
一対の前記係合部は、前記操作部と前記接点部との着脱方向に沿って突出した凸部であり、
一対の前記被係合部は、前記着脱方向に沿って立設する壁部であることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項3】
一対の前記係合部は、前記開口を挟んで互いに反対側に屈曲した鉤部であり、
一対の前記被係合部は、前記鉤部に嵌り込む突出部であることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項4】
前記線ばねは、前記係合部を含む前記先端部、前記溝に嵌り込む中間部、および略C字形状の最奥側である基端部に区分するときに、前記開口の幅方向を基準として、前記中間部の幅よりも前記基端部の幅の方が大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の操作スイッチ。
【請求項5】
前記接点部は、前記基端部の内面両側を支持する一対の支持壁を有することを特徴とする請求項4に記載の操作スイッチ。
【請求項6】
前記支持壁と前記胴部の一部は、同一面を形成して前記基端部の内面を支持することを特徴とする請求項5に記載の操作スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン有する操作部と、該ボタンの操作に連動して開閉する接点を有し、操作部に対して着脱可能な接点部とを備える操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
操作スイッチは、例えば制御盤等のパネルに設けられた孔に取り付けられる。この場合、パネルの前面側にボタンを有する操作部が配置され、パネルの裏面側にはボタンの操作に連動して開閉する接点を有する接点部が配置される。
【0003】
特許文献1に示されるように操作スイッチの操作部と接点部とは着脱可能な構成になっている。特許文献1の操作部はボタン、該ボタンから突出する胴部を有する。胴部はパネルの孔に挿入され、裏面側からナットで固定される。胴部は接点部の装着孔に挿入される。そして操作部と接点部とが固定される。この操作スイッチでは、接点部における内向きの突起が弾性的に押圧されて胴部の凹部に嵌められることにより操作部と接点部とが固定される。この操作スイッチでは接点部を接点部から取り外すには、突起を加圧ばねに抗して押し広げるためのU字形状の腕が設けられており、複雑な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の操作スイッチよりも簡便な構成として
図14、
図15に示すような比較例が考えられる。
【0006】
図14は、操作部502と接点部504とが固定された状態の比較例にかかる操作スイッチ500を示す断面平面図である。
図15は、操作部502と接点部504とを切り離す操作をしている状態の比較例にかかる操作スイッチ500を示す断面平面図である。
【0007】
図14に示すように、操作スイッチ500は操作部502と、操作部502に対して着脱可能な接点部504と、線ばね506とを備える。操作部502は図示しないボタンと、該ボタンから突出する胴部508、および胴部508の周面において互いに反対側となる箇所に形成された一対の溝510を有する。接点部504は胴部508が挿入される装着孔512、およびボタンの操作に連動して開閉する接点を有する。線ばね506は略C字形状であるが、より具体的には多角形の一部に開口506aが形成された形状である。線ばね506は説明の便宜上3つに区分される。すなわち、溝510に嵌り込む直線状の中間部506b、開口506aを挟んだ両側の先端部506c、および略C字形状の最奥側である基端部506dである。一対の先端部506cは狭まって開口506aを形成している。基端部506dは一対の中間部506bを連結している。
【0008】
接点部504には胴部508を2方向から囲う円弧壁514,516が設けられている。円弧壁514と円弧壁516とは胴部508に対して一対の溝510を挟んで両側に設けられている。円弧壁514における両端の傾斜面514a,514aは線ばね506の先端部506cで囲われ、それ以外の部分は露呈している。円弧壁516は線ばね506の基端部506dで囲われている。円弧壁514と円弧壁516とは略対称形状である。胴部508の外周部のうち略90度は一方の溝510が形成される部分であり、反対側の略90度は他方の溝510が形成される部分であり、さらに別の略90度は円弧壁514で囲われる部分であり、残る略90度は円弧壁516で囲われる部分となっている。
【0009】
線ばね506は開口506aの部分を除けば、円弧壁514,516を介して胴部508の外周に対してほぼ隙間がないように沿って設けられ、溝510に嵌り込んだ中間部506bが胴部508を確実に固定し、操作部502と接点部504とが安定して固定される。接点部504において、平面視で基端部506dと重なる一部分には切欠504aが形成されている。
【0010】
図15に示すように、接点部504を操作部502から取り外す場合には、線ばね506の基端部506dを外側へ引き出す。この操作は切欠504aに工具を入れて基端部506dに引っ掛けて外側に引き出せばよい。そうすると、一対の傾斜面514aは、一対の先端部506cが互いに離間するように案内し線ばね506を弾性変形させる。そして一対の中間部506bが互いに離間して溝510から抜け出ることから、胴部508は紙面垂直方向に移動可能となり、接点部504を操作部502から取り出し可能となる。
【0011】
ところでこのような操作スイッチ500では、線ばね506は接点部504から完全に離脱してしまうため紛失してしまう懸念がある。また、作業者は接点部504を操作部502から取り出すために線ばね506をどの程度引き出せばよいのかが分からず、必要以上に引き出してしまい、開口506aが過度に開いて弾性力が低下する懸念がある。
【0012】
さらに、線ばね506の基端部506dは接点部504の外壁504bよりも突出することから、隣接する他の操作スイッチ500との隙間を十分広く確保する必要があり密集して配置することができず、または近接配置した一方の操作スイッチ500について予め接点部504を取り外した後でないと他方の操作スイッチ500について接点部504を取り外すことができないため作業性に劣る。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、操作部を接点部に固定する部品が該接点部から外れてしまうことを防止する操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる操作スイッチは、パネル前面に取り付けられる操作子、該操作子からパネル孔を通ってパネル裏側に突出する胴部、および前記胴部の周面において互いに反対側となる箇所に形成された一対の溝を有する操作部と、前記胴部が挿入される装着孔、および前記操作子の操作に連動して開閉する接点を有し、前記操作部に対して着脱可能な接点部と、開口を挟んだ一対の先端部に係合部を有し、前記胴部の外周に略沿って設けられ、一部が前記溝に嵌り込むことにより前記操作部と前記接点部と固定する略C字形状の線ばねと、を備え、前記接点部は、前記線ばねを弾性変形させながら前記胴部から引き出すときに一対の前記係合部を互いに離間させるように案内する一対の傾斜面と、前記線ばねが弾性変形して前記溝から抜けた後、互いに離間した一対の前記係合部が当接することにより前記線ばねの引き出しを制限する一対の被係合部と、を有することを特徴とする。
【0015】
一対の前記係合部は、前記操作部と前記接点部との着脱方向に沿って突出した凸部であり、一対の前記被係合部は、前記着脱方向に沿って立設する壁部であってもよい。
【0016】
一対の前記係合部は、前記開口を挟んで互いに反対側に屈曲した鉤部であり、一対の前記被係合部は、前記鉤部に嵌り込む突出部であってもよい。
【0017】
前記線ばねは、前記係合部を含む前記先端部、前記溝に嵌り込む中間部、および略C字形状の最奥側である基端部に区分するときに、前記開口の幅方向を基準として、前記中間部の幅よりも前記基端部の幅の方が大きくてもよい。
【0018】
前記接点部は、前記基端部の内面両側を支持する一対の支持壁を有してもよい。
【0019】
前記支持壁と前記胴部の一部は、同一面を形成して前記基端部の内面を支持してもよい。
【0020】
パネル前面に取り付けられる操作子、該操作子からパネル孔を通ってパネル裏側に突出する胴部、および前記胴部の周面において互いに反対側となる箇所に形成された一対の溝を有する操作部と、前記胴部が挿入される装着孔、および前記操作子の操作に連動して開閉する接点を有し、前記操作部に対して着脱可能な接点部と、開口を挟んだ一対の先端部に係合部を有し、前記胴部の外周に略沿って設けられ、一部が前記溝に嵌り込むことにより前記操作部と前記接点部と固定する略C字形状の線ばねと、を備え、前記線ばねは、前記係合部を含む前記先端部、前記溝に嵌り込む中間部、および略C字形状の最奥側である基端部に区分するときに、前記開口の幅方向を基準として、前記中間部の幅よりも前記基端部の幅の方が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる操作スイッチでは、線ばねが弾性変形して溝から抜けた後、相互に離間した一対の係合部が一対の被係合部に当接することによりそれ以上の引き出しが制限される。したがって、固定部品である線ばねが外れてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる操作スイッチを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる操作スイッチを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2と逆方向から見た第1の実施形態にかかる操作スイッチを示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる操作スイッチを示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかる操作スイッチにおける接点部の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、操作部と接点部とが固定された状態の第1の実施形態にかかる操作スイッチの断面平面図である。
【
図7】
図7は、操作部と接点部とを切り離す操作をしている状態の第1の実施形態にかかる操作スイッチの断面平面図である。
【
図8】
図8は、パネルに取り付けられた2つの操作スイッチの断面平面図である。
【
図9】
図9は、パネルに取り付けられた2つの操作スイッチの平面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態にかかる操作スイッチを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態にかかる操作スイッチにおける接点部の分解斜視図である。
【
図12】
図12は、操作部と接点部とが固定された状態の第2の実施形態にかかる操作スイッチの断面平面図である。
【
図13】
図13は、操作部と接点部とを切り離す操作をしている状態の第2の実施形態にかかる操作スイッチの断面平面図である。
【
図14】
図14は、操作部と接点部とが固定された状態の比較例にかかる操作スイッチを示す断面平面図である。
【
図15】
図15は、操作部と接点部とを切り離す操作をしている状態の比較例にかかる操作スイッチを示す断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる操作スイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる操作スイッチ10Aを示す斜視図である。
図2は、操作スイッチ10Aを示す分解斜視図である。
図3は、
図2と逆方向から見た操作スイッチ10Aを示す分解斜視図である。
【0025】
図1~
図3に示すように、操作スイッチ10Aは操作部12と、操作部12に対して着脱可能な接点部14と、線ばね16Aと、ナット18と、座金20とを備える。操作部12は人手によって操作されるボタン(操作子)22と、該ボタン22から突出する胴部24とを有する。ボタン22はモーメンタリ式、オルタネート式のいずれでもよい。ボタン22は角柱形であるがこれに限らず、例えば茸形でもよい。ボタン22は照光式、キーシリンダ式、トグル式などでもよい。
【0026】
線ばね16Aは操作部12と接点部14とを固定する固定部品である。線ばね16Aは略C字形状であり(
図5参照)、開口16aが形成されている。以下の説明では便宜上、線ばね16Aを基準として方向を規定する。すなわち、開口16aの幅方向をX方向とし、それに直交する方向をY方向とする。また、操作部12と接点部14との着脱方向、つまりX方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。Z方向は操作スイッチ10Aの高さ方向であり、パネルP(
図4参照)に直交する方向である。これらの方向について、図面では適宜矢印で示す。
【0027】
図4は、第1の実施形態にかかる操作スイッチ10Aを示す側面図である。
図4に示すように、操作スイッチ10Aは制御盤等のパネルPに取り付けられる。具体的には、パネルPの前面にボタン22が設けられ、胴部24がパネルPに形成されたパネル孔Paを通って裏側に突出する。そして、胴部24に形成されたネジにナット18が螺合し、座金20を介して胴部24をパネルPに固定する。後述するように胴部24には接点部14が取り付けられる。
【0028】
図2、
図3に戻り、操作部12の胴部24は円筒形状であり、ボタン22からZ方向に突出している。胴部24の周面には、互いに反対側となる箇所に形成された一対の溝26(
図6も参照)が形成されている。それぞれの溝26は胴部24の周面で略50度の範囲にわたってY方向に延在している。溝26の深さは最も深い箇所で線ばね16Aの径とほぼ等しい。胴部24のY方向の一端にはDカット面24aが形成されている。胴部24の下端にはY方向に沿った一対の面取り部28が形成されている。一対の面取り部28は溝26の下方部で、下端部のX方向幅が狭まるように斜めにカットされる形状になっている。
【0029】
図5は、第1の実施形態にかかる操作スイッチ10Aにおける接点部14の分解斜視図である。
図5には線ばね16Aも図示している。
図5で示す線ばね16Aには3次元形状の理解が容易となるように、複数の屈曲部の各境界に実際には存在しない筋を示している。
図11の線ばね16Bも同様である。
【0030】
図5に示すように、接点部14は、ベース30と、ケース32と、接続ユニット34とを備える。なお、接続ユニット34はケース32の一部であるが、操作部12との接続機能を有する部分として理解が容易となるように別符号を付している。接続ユニット34とケース32とは一体であるが、成型を容易にするためには別体に製作し、組み立て段階で所定手段により一体化してもよい。
【0031】
ベース30には一対のロッド36が組み込まれる。ベース30は箱形状の本体30aと、下方に突出した複数の端子30bと、上面中央部から上方に突出した円筒30cとを備える。本体30aにはボタン22の操作に連動して開閉する接点(図示略)が設けられている。接点は、ボタン22の操作がロッド36によって伝えられ、対応する端子30bの間で開閉する。接点はノーマルオープン式、ノーマルクローズ式のいずれでもよく、コモン接点を有していてもよい。接点は複数設けられていてもよい。
【0032】
図6は、操作部12と接点部14とが固定された状態の操作スイッチ10Aの断面平面図である。
【0033】
図5および
図6に示すように、ケース32は本体30aの四周を囲うカバー32aと、中央に装着孔33が形成された天板32bと、装着孔33の周辺部から上方(Z2方向)に突出する第1円弧壁32cおよび一対の第2円弧壁32dとを有する。円弧壁32c,32dの各内周面は装着孔33の一部を形成している。円弧壁32c,32dは、内周側が胴部24の外周面を支持し、外周側が線ばね16Aの内周面を支持する支持壁である。装着孔33は胴部24が挿入される部分である。
【0034】
第1円弧壁32cは、ケース32におけるY方向についての一方(Y1方向)の上端に設けられ、装着孔33の中心から見て略90度の範囲を占めている。
【0035】
カバー32aの上端で第1円弧壁32cの両脇部に相当する部分にはそれぞれ凹部32fが形成されている。凹部32fはそれぞれ、下方(Z1方向)を塞ぐ底面32faと、Y2方向を塞ぐ被係合面(被係合部)32fbと、第1円弧壁32cの外周に相当する傾斜面32fcとから構成される。
【0036】
一対の第2円弧壁32dはケース32におけるY方向についての他方(Y2方向)でX方向について両側に設けられ、装着孔33の中心から見てそれぞれ略40度の範囲を占めている。一対の第2円弧壁32dの間には胴部24のY2方向端部、つまりDカット面24aの部分がほぼ隙間なく入り込んでいる。第2円弧壁32dの後平面32daは、胴部24のDカット面24aと同一面上にある。装着孔33におけるY2方向部分には、Dカット面33aが形成されている。Dカット面33aの一部には外周面まで連通する切欠33bが形成されている。
【0037】
第1円弧壁32cおよび第2円弧壁32dの上部には環状板34aが設けられている。環状板34aは、平面視で外周輪郭がカバー32aと一致する矩形である。環状板34aの内周面は装着孔33に沿っている。環状板34aの四隅からは円弧ガイド34bが上方に立設している。環状板34aと天板32bとの間で、円弧壁32c,32dが存在しない箇所には狭い隙間32hが形成される。隙間32hのZ方向幅は線ばね16Aの径とほぼ等しい。
【0038】
線ばね16Aは、上記の通り開口16aを有する略C字形状であり、一本の線状部材から形成されている。線ばね16Aを一対の先端部16b、一対の中間部16cおよび略C字形状の最奥側(つまりY2側)である基端部16dに区分して説明する。先端部16bは開口16aを挟んだ両側の部分であり、その先端には係合部16Aeを有する。一対の係合部16Aeは、操作部12と接点部14との着脱方向(より具体的にはZ1方向)に突出した凸部である。
【0039】
一対の中間部16cはY方向に直線状に延在しており、上記の溝26に嵌り込む部分である。基端部16dは一対の中間部16cを連結する部分である。基端部16dにおける最もY2側の直線部分16daはX方向に直線状に延在している。
【0040】
線ばね16AはX方向を基準として、中間部16cの幅W1よりも基端部16dにおける最大の幅W2の方が大きくなっており、その分全体として適度な長さが確保されている。線ばね16Aは適度な長さが確保されているが、基端部16dにおけるX方向の幅W2が大きく設定されていることからY方向長さは比較的短く抑制されている。
【0041】
図6に示すように、操作部12と接点部14とが固定された状態では、線ばね16Aにおける直線部分16daは一対の後平面32daおよびDカット面24aに当接して安定している。
【0042】
第2円弧壁32dは基端部16dの内面両側を支持する一対の支持壁であり、その間の部分は開口していてY2方向への突出がない。一層具体的には、第2円弧壁32dの後平面32daは胴部24のDカット面24aと同一面上にあって、Y2方向に突出していない。したがって、線ばね16AをY方向寸法を短く設定することが可能となっている。
【0043】
また、線ばね16Aの中間部16cが溝26に嵌り込んでおりその底部に当接しており、胴部24の抜け止めとなっている。線ばね16Aの先端部16bは第1円弧壁32cの傾斜面32fcに当接している。
【0044】
このように、線ばね16Aは開口16aの部分を除けば、円弧壁32c,32dを介して胴部24の外周に対してほぼ隙間がないように沿って設けられる。また、線ばね16Aは係合部16Aeなどの一部分を除いて隙間32h(
図1参照)に嵌り込んでおり、Z方向にずれることはない。したがって胴部24は溝26に嵌り込んだ中間部16cによってZ方向について位置決めされ、胴部24が接点部14に確実に固定される。また、胴部24は装着孔33に嵌合しているが、互いのDカット面24a,33aが当接し合うことにより、胴部24は回転方向についても固定される。
【0045】
さらに、線ばね16Aはケース32の外周輪郭で囲まれる範囲内に収まっている。線ばね16Aの係合部16Aeは、凹部32fに嵌り込んでおり傾斜面32fcにおけるY1方向端部近傍に当接している(
図1、
図5参照)。
【0046】
接点部14と操作部12とを切り離す場合には、切欠33bにドライバなどの工具を差し入れ、線ばね16Aの直線部分16daに引っ掛け、白抜矢印で示すようにY2方向に引き出す。そうすると
図7に示す状態となる。
【0047】
図7は、操作部12と接点部14とを切り離す操作をしている状態の操作スイッチ10Aの断面平面図である。
図7に示すように、線ばね16AをY2方向に引き出すと、一対の傾斜面32fcは一対の係合部16Aeを互いにX方向に離間させるように案内する。そして線ばね16Aは開口16aが広がるように弾性変形させながら引き出される。開口16aが広がることにより一対の中間部16cは傾斜しながら互いにX方向に離間し、やがて溝26から抜ける。そうすると、胴部24はZ方向についての位置固定が解除されるため装着孔33から抜き取りが可能になり、操作部12と接点部14とを離間させることができる。
【0048】
線ばね16Aが弾性変形して溝26から抜けた後、離間した一対の係合部16Aeは被係合面32fbに当接する。被係合面32fbはZ方向に立設してY2方向を塞ぐ面であることから、係合部16Aeおよび線ばね16AはY2方向への引き出しが制限される。したがって、線ばね16Aが接点部14から外れてしまうことが防止され、作業者は該線ばね16Aを紛失することがない。
【0049】
また、係合部16Aeが被係合面32fbに当接して線ばね16Aの移動が制限されると、作業者は線ばね16Aが十分に引き出されたことを認識可能となり、必要以上に引き出してしまい開口16aを過度に開いてしまうことがない。
【0050】
さらに、線ばね16Aは中間部16cの幅W1よりも基端部16dの幅W2の方が大きくなっていて適度な長さが確保されていることから、弾性変形しやすく小さい荷重で足りる。さらにまた、線ばね16Aは長さに余裕があることから操作を繰り返し行っても塑性変形しにくい。
【0051】
上記のとおり、線ばね16AはY方向寸法が比較的短く抑制されていることから、被係合面32fbによって線ばね16Aの引き出しが制限された時点において基端部16dは平面視で接点部14の範囲からY2方向に突出することがない。したがって、パネルPに複数の操作スイッチ10Aを設ける場合に、少なくとも接点部14同士に関してはY方向の隙間が不要であり相当に接近して配置することが可能になる。
【0052】
さらに
図6に示す状態では、中間部16cの幅W1は比較的短く設定されていて、ケース32における外周輪郭とのX方向間隔に余裕があることから、
図7に示す状態では、先端部16bと中間部16cとの境界である屈曲端16fがケース32の外周輪郭で囲まれる範囲内に収まっている。したがって、パネルPに複数の操作スイッチ10Aを設ける場合に、少なくとも接点部14同士に関してはX方向の隙間が不要であり相当に接近して配置することが可能になる。
【0053】
なお、操作部12に対して接点部14を装着する場合には、線ばね16AをY2方向に引き出しておき、その状態で接点部14の装着孔33に操作部12の胴部24を挿入し、そして線ばね16Aを
図6に示す位置に戻せばよい。線ばね16Aは、切欠33bから工具を抜き取ることにより自己の弾性に基づいて
図6に示す位置に自動的に復帰する。また、線ばね16Aに対して特段の操作を行わなくとも、装着孔33に胴部24を挿入すると、一対の面取り部28(
図2参照)が一対の中間部16cを外側に押し広げることから、そのままさらに深く挿入することにより中間部16cが溝26に係合し、操作部12と接点部14とが組み合わせられる。作業者はいずれの方法を用いてもよい。
【0054】
図8は、パネルPに取り付けられた2つの操作スイッチ10Aの断面平面図である。
図9は、パネルPに取り付けられた2つの操作スイッチ10Aの平面図である。
【0055】
図8に示すように、隣接する2つの操作スイッチ10AはY方向について相当に接近して配置することができる。上記のとおり接点部14同士に関してはY方向の隙間を設けない配置も可能であるが、
図9に示すように、ボタン22の寸法によっては、該ボタン22同士をY方向について接触させても接点部14同士にはわずかな隙間が形成される場合がある。
図8における下方の操作スイッチ10Aは線ばね16Aが引き出された状態(
図7と同じ状態)である。上下2つの操作スイッチ10AはY方向の隙間が狭いが、下方側から引き出された線ばね16Aが上方側に干渉することがない。
【0056】
例えば、
図14および
図15に示すような比較例にかかる操作スイッチ500の場合、2つをY方向に接近して配置すると、上方側についてはそのまま接点部14の取り外しが可能であるが、下方側については上方側を取り外した後でなければ接点部14を取り外すことができない。これに対して、本実施例にかかる操作スイッチ10Aでは、上方側、下方側のいずれについても他方の状態に関係なく接点部14を取り外すことが可能であり、工数を削減することができる。もちろん、操作スイッチ10AがY方向に3以上隣接して設けられている場合でも同様である。
【0057】
このように、操作スイッチ10Aでは、固定部品である線ばね16Aの形状が、開口16aの幅方向を基準として中間部16cの幅W1よりも基端部16dの幅W2の方を大きく設定することにより適度な長さを確保しながら、Y方向については寸法の抑制が可能となる。したがって、線ばね16Aを引き出したときでも接点部14から突出することがなく、または突出量を抑制することが可能であり、隣接する他の操作スイッチ10Aとの干渉を回避することができる。したがって、複数の操作スイッチ16Aを密集して配置しても、操作部14について個別の着脱が可能であり作業性が劣ることがない。
【0058】
次に、第2の実施形態にかかる操作スイッチ10Bについて説明する。操作スイッチ10Bにおいて上記の操作スイッチ10Aと同様の構成要素については、同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
図10は、第2の実施形態にかかる操作スイッチ10Bを示す斜視図である。
図11は、第2の実施形態にかかる操作スイッチ10Bにおける接点部14の分解斜視図である。
図12は、操作部12と接点部14とが固定された状態の操作スイッチ10Bの断面平面図である。
【0060】
操作スイッチ10Bでは上記の線ばね16Aに代えて線ばね16Bが設けられている。線ばね16Bは線ばね16Aと同様に先端部16b,中間部16cおよび基端部16dを有する略C字形状のばねである。線ばね16Bは上記の一対の係合部16Aeに代えて一対の係合部16Beが設けられている。一対の係合部16Beは、先端部16bにおける各先端に設けられており、開口16aを挟んで互いに反対側で、略X方向に沿って屈曲した鉤形状部分である。
【0061】
操作スイッチ10Bの接点部14には、カバー32aのY1方向側で両端部分に一対の被係合突出部(被係合部)30dが設けられている。被係合突出部30dは、上記の被係合面32fb(
図1参照)に相当する位置で、天板32bから上方に突出している。操作スイッチ10Bにおける接点部14には、上記の凹部32fが設けられていない。
【0062】
被係合突出部30dは、ベース30と一体成型で形成された部分であり、ケース32における天板32bに形成された孔32eを通ってZ方向に突出している。これにより、狭い隙間32hの内部に被係合突出部30dを配置することができる。
【0063】
図12に示すように、操作部12と接点部14とが固定された状態では、線ばね16Bは、胴部24の外周に略沿って設けられている。先端部16bは傾斜面32fcに当接している。
【0064】
図13は、操作部12と接点部14とを切り離す操作をしている状態の操作スイッチ10Bの断面平面図である。
図13に示すように、線ばね16BをY2方向に引き出すと、上記の線ばね16Aを引き出すのと同様に、一対の傾斜面32fcは一対の係合部16Beを互いにX方向に離間させるように案内する。そして中間部16cが溝26から抜けると、操作部12と接点部14とを離間させることができる。
【0065】
線ばね16Bが弾性変形することにより中間部16cが溝26から抜けた後、離間した一対の係合部16Beは被係合突出部30dに係合する。被係合突出部30dはZ方向に立設していることから、係合部16Beおよび線ばね16BはY2方向への引き出しが制限される。したがって、線ばね16Bが接点部14から外れてしまうことが防止され、作業者は該線ばね16Bを紛失することがない。
【0066】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10A,10B 操作スイッチ
12 操作部
14 接点部
16A,16B 線ばね
16a 開口
16Ae,16Be 係合部
16b 先端部
16c 中間部
16d 基端部
16da 直線部分
22 ボタン(操作子)
24 胴部
26 溝
30 ベース
30d 被係合突出部
32 ケース
32a カバー
33 装着孔
33b 切欠
32c 第1円弧壁
32d 第2円弧壁(支持壁)
32f 凹部
32fb 被係合面
32fc 傾斜面
32h 隙間
P パネル
Pa パネル孔