(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両換気装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/24 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
B60H1/24 661Z
(21)【出願番号】P 2020212465
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】余 淑芬
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-199805(JP,A)
【文献】特開2005-178426(JP,A)
【文献】特許第6782053(JP,B1)
【文献】特開2011-245955(JP,A)
【文献】特開2016-184197(JP,A)
【文献】特開2019-166920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0170143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気を行う換気制御部と、
を備え、
前記換気制御部は、
前記算出部によって算出された前記乗員の密度及びマスク着用率に基づいて感染リスク度を算出するリスク度算出部と、
前記リスク度算出部によって算出された前記感染リスク度に基づいて、車両の空調機器の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う機器制御部と、
を有する
、車両換気装置。
【請求項2】
前記リスク度算出部は、前記乗員の密度が高いほど第1感染リスク度を大きく算出するとともに前記マスク着用率が低いほど第2感染リスク度を大きく算出し、前記第1感染リスク度及び前記第2感染リスク度に基づいて前記感染リスク度を算出し、
前記機器制御部は、前記感染リスク度に基づいて車両の空調機器の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う、
請求項1に記載の車両換気装置。
【請求項3】
前記感染リスク度が閾値以上の場合には、乗車予約システムへ予約を制限するように要求する信号を出力する出力部を備える、
請求項2に記載の車両換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動車用の換気装置を開示する。換気装置は、センサ及び駆動部を備える。センサは、車内温度が設定値以上に上昇した状態を検出して検出信号を出力する。駆動部は、センサからの検出信号を起動指令として車内を外気温度に対応して換気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウイルスによっては空気感染又は飛沫感染が感染経路となるものがある。換気の不十分な空間においては、空気中のウイルス濃度が高くなることがあり、感染のリスクが生じる可能性が指摘されている。つまり、車内の温度が低くても換気を行うべき状況があるため、特許文献1記載の換気装置はウイルス感染症対策の観点から改善の余地がある。本開示は、空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る車両換気装置は、センサの検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方を算出する算出部と、算出部によって算出された乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気を行う換気制御部と、を備える。
【0006】
この車両換気装置では、算出部によって、センサの検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方が算出される。そして、換気制御部によって、乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気が行われる。このように、乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方を車内の換気の判断に利用することができる。よって、車両換気装置は、空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【0007】
一実施形態においては、換気制御部は、乗員の密度が高いほど、又は、マスク着用率が低いほど換気量が増えるように換気を行ってもよい。乗員の密度が高いほど、又は、マスク着用率が低いほど空気中のウイルス濃度が高くなる可能性があるため、換気がより必要となる。乗員の密度が高いほど、又は、マスク着用率が低いほど換気量が増えるように換気することによって、効率的なウイルス感染症対策を実現できるとともに、乗員の密度が低い場合又はマスク着用率が高い場合には換気量が抑えられるため、車室内温度を適正に保つことができる。
【0008】
一実施形態においては、換気制御部は、算出部によって算出された乗員の密度及びマスク着用率に基づいて感染リスク度を算出するリスク度算出部と、リスク度算出部によって算出された感染リスク度に基づいて、車両の空調機器の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う機器制御部と、を有してもよい。この場合、リスク度算出部によって、乗員の密度及びマスク着用率に基づいて感染リスク度が算出される。そして、感染リスク度に基づいて、車両の空調機器の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方が行われる。感染リスク度が乗員の密度及びマスク着用率の2つの指標を用いて評価されることにより、乗員の密度及びマスク着用率の何れか一方を用いて感染リスク度を評価する場合と比べて、感染リスク度を正確に評価することができる。このため、車両換気装置は、より正確な評価に基づいて空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【0009】
一実施形態においては、リスク度算出部は、乗員の密度が高いほど第1感染リスク度を大きく算出するとともにマスク着用率が低いほど第2感染リスク度を大きく算出し、第1感染リスク度及び第2感染リスク度に基づいて感染リスク度を算出し、機器制御部は、感染リスク度に基づいて車両の空調機器の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行ってもよい。この場合、車両換気装置は、感染リスク度をより正確に評価することができる。
【0010】
一実施形態においては、車両換気装置は、感染リスク度が閾値以上の場合には、乗車予約システムへ予約を制限するように要求する信号を出力する出力部を備えてもよい。この場合、車両換気装置は、感染リスク度がある程度高い状況下において、乗員の増加によって感染リスク度がさらに上昇することを回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る車両換気装置を含む車両の一例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態に係る車両換気装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1感染リスク度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2感染リスク度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】(A)は乗員の密度に関するレベルと第1感染リスク度とを対応させたデータであり、(B)はマスク着用率に関するレベルと第2感染リスク度とを対応させたデータであり、(C)は感染リスク度と廃棄量と予約制限要求とを対応させたデータである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、例示的な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0014】
(車両及び車両換気装置の構成)
図1は、実施形態に係る車両換気装置を含む車両の一例の機能ブロック図である。
図1に示されるように、車両換気装置1は、バス、タクシー、又は一般的な乗用車などの車両2に搭載され、車内の換気を制御する装置である。車両2は、自動運転で走行する車両であってもよいし、運転者の運転で走行する車両であってもよい。車両2は、車内センサ21(センサの一例)、ECU(Electronic Control Unit)22及び車載器23を備える。
【0015】
車内センサ21は、車内の状況を検出する機器である。車内の状況の一例は、乗員の人数である。乗員の人数を検出する機器は、例えば、車内を撮像する画像センサと画像認識機能を有する画像処理部とを備えたカメラである。乗員の人数を検出する機器は、着座センサ、出入口に設けられた人感センサ、赤外線センサなどであってもよい。また、車内の状況の一例は、マスクを着用した乗員とマスクを着用していない乗員との区別である。このような状況を検出する機器は、例えば、車内を撮像する画像センサと画像認識機能を有する画像処理部とを備えたカメラである。車内センサ21は、1台の車両に対して複数設けられてもよい。
【0016】
車載器23は、車両2に備わり、換気に関する機器である。ここで換気とは、外気取り込みの有無に関わらず、車室内空気を流動させることを意味する。車載器23は、ウィンドウモータ231及びエアコンディショナ232を備える。ウィンドウモータ231は、車両2の窓の開閉を行うアクチュエータであり、ECU22の指示信号に基づいて動作する。エアコンディショナ232は、空調機器であって、車室内の空気の温度を調整しつつ、送風、空気循環又は外気取り込みを行う機器である。エアコンディショナ232は、湿度を調整する機能や除菌機能を有していてもよい。
【0017】
ECU22は、換気に関する制御を行う。ECU22は、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller AreaNetwork)通信回路などを有する電子制御ユニットである。ECU22は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、上述した車両2の構成要素と通信可能に接続される。ECU22は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムを実行することで、換気に関する制御を実現する。ECU22は、プログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行して換気に関する制御を実現してもよい。ECU22は、複数の電子制御ユニットから構成されてもよい。
【0018】
ECU22は、車内センサ21及び車載器23に接続され、互いに情報を通信する。ECU22は、算出部11、換気制御部12及び出力部13を備える。
【0019】
算出部11は、車内センサ21の検出結果を取得し、車内センサ21の検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方を算出する。算出部11は、車内センサ21によって検出された乗員数を乗車可能面積で除算することにより、乗員の密度を算出する。算出部11は、車内センサ21によって検出されたマスクを着用している人数を乗員数で除算することにより、マスク着用率を算出する。
【0020】
換気制御部12は、算出部11によって算出された乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気を行う。換気制御部12は、算出部11によって算出された乗員の密度が高いほど換気量が増えるように換気を行う。あるいは、換気制御部12は、算出部11によって算出されたマスク着用率が低いほど換気量が増えるように換気を行う。換気量とは、流動させる空気の量である。
【0021】
換気制御部12は、乗員の密度及びマスク着用率の両方を用いて換気の要否を判定する場合、感染リスク度を算出する。感染リスク度とは、感染リスクの度合いを示す指標である。この場合、換気制御部12は、感染リスク度を算出するためのリスク度算出部121を有する。リスク度算出部121は、算出部11によって算出された乗員の密度及びマスク着用率に基づいて感染リスク度を算出する。リスク度算出部121は、乗員の密度が高いほど第1感染リスク度を大きく算出するとともにマスク着用率が低いほど第2感染リスク度を大きく算出する。リスク度算出部121は、第1感染リスク度及び第2感染リスク度に基づいて感染リスク度を算出する。例えば、リスク度算出部121は、第1感染リスク度と第2感染リスク度とを加算して感染リスク度を算出することができる。
【0022】
機器制御部122は、リスク度算出部121によって算出された感染リスク度に基づいて、車両2の車載器23の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う。例えば、機器制御部122は、感染リスク度の大きさに応じて、ウィンドウモータ231の駆動量やエアコンディショナ232の風量や外気取り込み量を決定し、車載器23へ指示信号を出力してもよい。
【0023】
出力部13は、感染リスク度が閾値以上の場合には、予約システム50(乗車予約システムの一例)へ予約を制限するように要求する信号を出力する。ここで予約とは、乗車予約の意味である。予約システム50は、車両2の乗車予約を提供するシステムである。利用者は、予約システム50を介して、例えば日時や場所を指定して車両2の乗車を予約できる。閾値は、予約の制限を判定するために予め設定された感染リスク度である。予約システム50は、予約を制限するように要求する信号を受け取ると、車両2の乗車予約の受け付けを中断する。これにより、車両2に新規で乗車する人の数を制限することができる。
【0024】
(車両換気装置の動作)
図2は、実施形態に係る車両換気装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図2に示されるフローチャートは、車両2に備わる自動換気ボタンがONされたタイミングで、車両換気装置1によって実行される。
【0025】
図2に示されるように、車両換気装置1の算出部11は、車内状況の取得処理(ステップS10)として、車内センサ21の検出結果を取得する。算出部11は、車内センサ21から乗員数及びマスク着用人数を取得する。
【0026】
続いて、算出部11は、感染リスク度の算出処理(ステップS12)として、最初に乗員の密度及びマスク着用率を算出する。そして、算出部11は、乗員の密度から第1感染リスク度を算出し、マスク着用率から第2感染リスク度を算出する。そして、算出部11は、第1感染リスク度と第2感染リスク度とを加算して最終的な感染リスク度を算出する。
【0027】
ステップS12の詳細は、
図3及び
図4に示される。最初に、乗員の密度に基づいて第1感染リスク度を算出する例を説明する。
図3は、第1感染リスク度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示されるように、算出部11は、判定処理(ステップS20)として、乗員の密度は第1密度閾値以上であるか否かを判定する。第1密度閾値は、乗員の密度が高レベルであるか否かを判定するために予め設定された乗員の密度である。乗員の密度は第1密度閾値以上であると判定された場合(S20:YES)、算出部11は、ステップS22として、乗員の密度は「高レベル」と判定する。
【0028】
乗員の密度は第1密度閾値以上でないと判定された場合(S20:NO)、算出部11は、判定処理(ステップS24)として、乗員の密度は第2密度閾値以上であるか否かを判定する。第2密度閾値は、乗員の密度が中レベルであるか否かを判定するために予め設定された乗員の密度であり、第1密度閾値よりも小さい値である。乗員の密度は第2密度閾値以上であると判定された場合(S24:YES)、算出部11は、ステップS26として、乗員の密度は「中レベル」と判定する。乗員の密度は第2密度閾値以上でないと判定された場合(S24:NO)、算出部11は、ステップS28として、乗員の密度は「低レベル」と判定する。
【0029】
ステップS22、ステップS26又はステップS28が終了すると、算出部11は、ステップS30として、レベルを第1感染リスク度に変換する。
図5の(A)は、乗員の密度に関するレベルと第1感染リスク度とを対応させたデータである。このデータは、例えばECU22の記憶部に予め記憶される。
図5の(A)に示されるように、「高レベル」に対して第1感染リスク度「3」が関連付けられており、「中レベル」に対して第1感染リスク度「2」が関連付けられており、「低レベル」に対して第1感染リスク度「1」が関連付けられている。算出部11は、
図5の(A)に示されるデータに基づいてレベルを第1感染リスク度に変換する。ステップS30が終了すると、第1感染リスク度の算出処理は終了する。
【0030】
次に、マスク着用率に基づいて第2感染リスク度を算出する例を説明する。
図4は、第2感染リスク度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示されるように、算出部11は、判定処理(ステップS40)として、マスク着用率は第1着用閾値以上であるか否かを判定する。第1着用閾値は、マスク着用率が高レベルであるか否かを判定するために予め設定されたマスク着用率である。マスク着用率は第1着用閾値以上であると判定された場合(S40:YES)、算出部11は、ステップS42として、マスク着用率は「高レベル」と判定する。
【0031】
マスク着用率は第1着用閾値以上でないと判定された場合(S40:NO)、算出部11は、判定処理(ステップS44)として、マスク着用率は第2着用閾値以上であるか否かを判定する。第2着用閾値は、マスク着用率が中レベルであるか否かを判定するために予め設定されたマスク着用率であり、第1着用閾値よりも小さい値である。マスク着用率は第2着用閾値以上であると判定された場合(S44:YES)、算出部11は、ステップS46として、マスク着用率は「中レベル」と判定する。マスク着用率は第2着用閾値以上でないと判定された場合(S44:NO)、算出部11は、ステップS48として、マスク着用率は「低レベル」と判定する。
【0032】
ステップS42、ステップS46又はステップS48が終了すると、算出部11は、ステップS50として、レベルを第2感染リスク度に変換する。
図5の(B)は、マスク着用率に関するレベルと第2感染リスク度とを対応させたデータである。このデータは、例えばECU22の記憶部に予め記憶される。
図5の(B)に示されるように、「高レベル」に対して第2感染リスク度「1」が関連付けられており、「中レベル」に対して第2感染リスク度「2」が関連付けられており、「低レベル」に対して第2感染リスク度「3」が関連付けられている。算出部11は、
図5の(B)に示されるデータに基づいてレベルを第2感染リスク度に変換する。ステップS50が終了すると、第2感染リスク度の算出処理は終了する。
【0033】
以上で
図2のステップS12の詳細の説明を終了する。算出部11は、
図3及び
図4で算出された第1感染リスク度及び第2感染リスク度を加算して、感染リスク度を算出する。
【0034】
続いて、車両換気装置1の機器制御部122は、感染リスク度に応じた換気処理(ステップS14)として、車両2の車載器23の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う。機器制御部122は、感染リスク度に応じて換気量を決定し、決定した換気量を実現するように、エアコンディショナ232を制御し、及び/又は、ウィンドウモータ231を駆動させる。機器制御部122は、例えば
図5の(C)に示されるデータに基づいて、感染リスク度に応じて換気量を決定する。
図5の(C)は、感染リスク度と廃棄量と予約制限要求とを対応させたデータである。このデータは、例えばECU22の記憶部に予め記憶される。
【0035】
図5の(C)に示されるように、感染リスク度「2」に換気量「1」が関連付けられており、感染リスク度「3」に換気量「2」が関連付けられており、感染リスク度「4」に換気量「3」が関連付けられており、感染リスク度「5」及び「6」に換気量「4」が関連付けられている。換気量の単位及び数値は任意に設定可能である。ここでは、車両2の最大換気量を「4」に設定し、最大換気量を基準に換気量「3」「2」「1」を順に小さく設定している。エアコンディショナ232の場合、最大換気量は最大送風量である。ウィンドウモータ231が制御する窓の場合、最大換気量は最大開閉量である。車両2が複数の窓を備える場合、最大換気量は開閉される窓の数と開閉量の2つの指標を用いて決定されてもよい。機器制御部122は、ステップS12で算出された感染リスク度に対応する換気量を
図5の(C)のデータを参照して取得する。そして、機器制御部122は、決定した換気量を実現するように車両2の車載器23の制御及び窓の開閉制御の少なくとも一方を行う。
【0036】
図2に戻り、出力部13は、判定処理(ステップS16)として、感染リスク度は閾値以上か否かを判定する。感染リスク度は閾値以上であると判定された場合(ステップS16:YES)、出力部13は、予約制限要求の出力処理(ステップS18)として、予約システム50に予約制限要求を送信する。例えば、
図5の(C)に示されるように、車両2の換気量は、感染リスク度「5」の時点で最大の換気量となる。このため、例えば予約制限要求の出力要否を判定する閾値は、感染リスク度「6」以上に設定することができる。これにより、
図5の(C)に示されるように、感染リスク度「6」以上の場合、予約制限要求がなされることになる。
【0037】
予約制限要求の出力処理(ステップS18)が終了した場合、又は、感染リスク度は閾値以上でないと判定された場合(ステップS16:NO)、
図2に示されるフローチャートは終了する。
図2に示されるフローチャートが終了すると、車両換気装置1は、車両2に備わる自動換気ボタンがOFFされるまで、
図2に示されるフローチャートを最初から実行する。
【0038】
(実施形態のまとめ)
車両換気装置1では、算出部11によって、車内センサ21の検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方が算出される。そして、換気制御部12によって、乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気が行われる。このように、乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方を車内の換気の判断に利用することができる。よって、車両換気装置1は、空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【0039】
車両換気装置1では、乗員の密度が高いほど、又は、マスク着用率が低いほど換気量が増えるように換気することによって、効率的なウイルス感染症対策を実現できるとともに、乗員の密度が低い場合又はマスク着用率が高い場合には換気量が抑えられるため、車室内温度を適正に保つことができる。
【0040】
車両換気装置1では、リスク度算出部121によって、乗員の密度及びマスク着用率に基づいて感染リスク度が算出される。そして、感染リスク度に基づいて、車両2のエアコンディショナ232の制御及びウィンドウモータ231による窓の開閉制御の少なくとも一方が行われる。感染リスク度が乗員の密度及びマスク着用率の2つの指標を用いて評価されることにより、乗員の密度及びマスク着用率の何れか一方を用いて感染リスク度を評価する場合と比べて、感染リスク度を正確に評価することができる。このため、車両換気装置1は、より正確な評価に基づいて空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【0041】
車両換気装置1では、感染リスク度が閾値以上の場合には、予約システム50へ予約を制限するように要求する信号を出力するため、感染リスク度がある程度高い状況下において、乗員の増加によって感染リスク度がさらに上昇することを回避することができる。
【0042】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0043】
上記実施形態においては、車内センサ21の検出結果に基づいて車内の乗員の密度及びマスク着用率から感染リスク度を算出し、感染リスク度に基づいて換気する例を説明したが、車内の乗員の密度及びマスク着用率の何れか一方のみに基づいて換気を行ってもよい。例えば、換気制御部12は、乗員の密度が高いほど換気量が増えるように換気を行ってもよい。あるいは、換気制御部12は、マスク着用率が低いほど換気量が増えるように換気を行ってもよい。このように、換気制御部12は、乗員の密度及びマスク着用率の少なくとも一方に応じて車内の換気を行うことで、空気感染又は飛沫感染によるウイルス感染のリスクを低減できる。
【0044】
上記実施形態においては、車両換気装置1が出力部13を備える例を説明したが、車両2が予約システムと連携していない場合には、車両換気装置1は出力部13を備えなくてもよい。また、出力部13は、換気を実行しても車内の状況に変更がない場合や、感染リスク度に改善が見込まれない場合に、予約システム50へ予約を制限するように要求する信号を出力してもよい。また、上記実施形態において、出力部13は、感染リスク度そのものを予約システム50などの外部システムへ出力してもよい。この場合、システムのオペレータに対して、車内センサ21の検出結果の確認を促すことができる。また、外部システムにおいて、感染リスク度を時間と関連付けて記憶することで、乗客の動向ログを作成することができる。
【0045】
上記実施形態においては、「高レベル」「中レベル」「低レベル」の3段階レベルを用いて感染リスク度を算出していたが、2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態において、車両換気装置1は、適宜のタイミングで換気を停止することができる。なお、乗員の密度が低下したり、マスク着用率が上昇したりしたとしても空気中のウイルス濃度が低下するまでは一定期間を要する。このため、車両換気装置1は、感染リスク度が安全な閾値以下となっても換気を継続し、安全な閾値以下となってから一定時間経過後に換気を停止してもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、車両換気装置1は、HMI(Human Machine Interface)を備え、車内の乗員に対して、感染リスク度に応じた注意喚起を、HMIを介して音声又は映像によって実施してもよい。例えば、車両2がバスであって感染リスク度が閾値以上である場合、車両換気装置1は、車外に対して、乗車不可である旨の注意喚起を、HMIを介して音声又は映像によって実施してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…車両換気装置、2…車両、11…算出部、12…換気制御部、13…出力部、21…車内センサ(センサの一例)、121…リスク度算出部、122…機器制御部、50…予約システム(乗車予約システムの一例)。