(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両制御システム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230920BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230920BHJP
【FI】
G08G1/09 E
G08G1/09 V
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021037744
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大地
(72)【発明者】
【氏名】河内 太一
(72)【発明者】
【氏名】林 勇介
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005123(JP,A)
【文献】特開2009-047491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0097007(US,A1)
【文献】特開2019-185279(JP,A)
【文献】特表2020-513621(JP,A)
【文献】特開2021-033614(JP,A)
【文献】特開2021-033612(JP,A)
【文献】特開2020-061120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転制御の最中に遠隔施設からの遠隔支援を受ける車両の制御システムであって、
前記車両の運転環境データが格納されたメモリと、
前記運転環境データに基づいて前記車両の目標軌道を生成し、前記目標軌道に基づいて前記自動運転制御を実行するプロセッサと、
地図データが格納されたデータベースと、
を備え、
前記プロセッサは、前記自動運転制御において、
前記運転環境データ及び前記目標軌道の少なくとも一方に基づいて、前記遠隔支援が必要であるか否かを判定し、
前記遠隔支援が必要であると判定された場合、前記遠隔施設からの支援信号の受信を待機する予定の位置を示す待機予定位置を含んだ前記目標軌道を生成し、
前記運転環境データに基づいて、前記車両に要求される走行効率の程度を示す走行効率レベルを計算し、
前記走行効率レベルに基づいて、前記遠隔支援のリクエスト信号を前記遠隔施設に送信するリクエストタイミングを計算し、
前記リクエストタイミングが到来した場合、前記リクエスト信号を前記遠隔施設に送信し、
前記プロセッサは、前記リクエストタイミングの計算において、前記走行効率レベルが低い場合、前記走行効率レベルが高い場合に比べて遅いタイミングを出力
し、
前記プロセッサは、前記自動運転制御において、更に、
前記走行効率レベルに基づいて、前記待機予定位置において前記遠隔施設からの支援信号を待機する待機時間を計算し、
前記待機時間が許容時間を上回るか否かを判定し、
前記待機時間が前記許容時間を上回ると判定された場合、前記運転環境データ及び前記地図データの少なくとも一方に基づいて、前記待機予定位置が一時停止位置に適しているか否かを判定し、
前記待機予定位置が前記一時停止位置に適していないと判定された場合、前記待機予定位置が修正された目標軌道を生成する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両の外部状況データを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記外部状況データに前記車両の後続車両の認識データが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両の内部状況データを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記内部状況データに前記車両に乗員が搭乗していることを示す搭乗データが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項
1~3の何れか1項に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両の内部状況データを含み、
前記内部状況データは、前記車両の航続可能距離のデータを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記航続可能距離が短いほど高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか1項に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両により提供される乗客の輸送サービスの稼働状況データを含み、
前記稼働状況データは、前記輸送サービスの運行予定時間に対する遅れ時間のデータを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記遅れ時間が長いほど高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項
1~5の何れか1項に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両により提供される乗客の輸送サービスの稼働状況データを含み、
前記稼働状況データは、前記輸送サービスに対して前記乗客が支払う対価のデータを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記対価が高いほど高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項
1~6の何れか1項に記載の車両制御システムであって、
前記運転環境データは、前記車両の現在地から目的地までのルートにおける交通状況データを含み、
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記交通状況データに前記ルート上で発生している渋滞のデータが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
自動運転制御の最中に遠隔施設からの遠隔支援を受ける車両の制御方法であって、
前記車両の運転環境データに基づいて前記車両の目標軌道を生成し、前記目標軌道に基づいて前記自動運転制御を実行する前記車両のプロセッサが、
前記運転環境データ及び前記目標軌道の少なくとも一方に基づいて、前記遠隔支援が必要であるか否かを判定し、
前記遠隔支援が必要であると判定された場合、前記遠隔施設からの支援信号の受信を待機する予定の位置を示す待機予定位置を含んだ前記目標軌道を生成し、
前記運転環境データに基づいて、前記車両に要求される走行効率の程度を示す走行効率レベルを計算し、
前記走行効率レベルに基づいて、前記遠隔支援のリクエスト信号を前記遠隔施設に送信するリクエストタイミングを計算し、
前記リクエストタイミングが到来した場合、前記リクエスト信号を前記遠隔施設に送信し、
前記プロセッサは、前記リクエストタイミングの計算において、前記走行効率レベルが低い場合、前記走行効率レベルが高い場合に比べて遅いタイミングを出力
し、
前記プロセッサが、更に、
前記走行効率レベルに基づいて、前記待機予定位置において前記遠隔施設からの支援信号を待機する待機時間を計算し、
前記待機時間が許容時間を上回るか否かを判定し、
前記待機時間が前記許容時間を上回ると判定された場合、前記運転環境データ及びデータベースに格納された地図データの少なくとも一方に基づいて、前記待機予定位置が一時停止位置に適しているか否かを判定し、
前記待機予定位置が前記一時停止位置に適していないと判定された場合、前記待機予定位置が修正された目標軌道を生成する
ことを特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転制御の最中に遠隔施設からの遠隔支援を受ける車両の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-77649号公報は、自動運転を行う車両の遠隔運転を行うシステムを開示する。この従来のシステムは、遠隔運転(手動運転)を行うオペレータが駐在する管理施設を備える。管理施設は、車両から遠隔操作リクエストを受信する。遠隔操作リクエストは、例えば、システムによる自動運転の実行が困難になった場合に送信される。管理施設は、遠隔運転の開始に際し、オペレータの運転熟練度、覚醒度といった運転適性条件を判定する。運転適性条件が満たされると判定された場合、システムによる自動運転が一時的に停止され、車両の操作主体がシステムからオペレータに切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転制御が行われる車両では、当該車両のドライバが存在せず、又は、当該ドライバの運転技術が低い場合が予想される。そのため、仮に、この車両の遠隔操作が可能な場合、自動運転制御の最中に遠隔操作リクエストが多発することが予想される。しかしながら、オペレータの人的資源にも限界がある。そのため、遠隔操作リクエストが同時刻に多発すれば、これらのリクエストの全てに対応することが困難になる。そうすると、遠隔操作を待つために車両が路上に停止し続けることになり、交通の妨げになるため望ましくない。従って、このような状況に陥るのを未然に回避するための技術開発が求められる。
【0005】
本発明の1つの目的は、自動運転制御が行われる車両からの遠隔操作リクエストの送信頻度を抑えることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車両制御システムであり、次の特徴を有する。
前記車両制御システムは、自動運転制御の最中に遠隔施設からの遠隔支援を受ける車両の制御システムである。
前記車両制御システムは、メモリと、プロセッサと、データベースとを備える。前記メモリには、前記車両の運転環境データが格納される。前記プロセッサは、前記運転環境データに基づいて前記車両の目標軌道を生成する。前記プロセッサは、前記目標軌道に基づいて前記自動運転制御を実行する。前記データベースには地図データが格納される。
前記プロセッサは、前記自動運転制御において、
前記運転環境データ及び前記目標軌道の少なくとも一方に基づいて、前記遠隔支援が必要であるか否かを判定し、
前記遠隔支援が必要であると判定された場合、前記遠隔施設からの支援信号の受信を待機する予定の位置を示す待機予定位置を含んだ前記目標軌道を生成し、
前記運転環境データに基づいて、前記車両に要求される走行効率の程度を示す走行効率レベルを計算し、
前記走行効率レベルに基づいて、前記遠隔支援のリクエスト信号を前記遠隔施設に送信するリクエストタイミングを計算し、
前記リクエストタイミングが到来した場合、前記リクエスト信号を前記遠隔施設に送信し、
前記プロセッサは、前記リクエストタイミングの計算において、前記走行効率レベルが低い場合、前記走行効率レベルが高い場合に比べて遅いタイミングを出力する。
前記プロセッサは、前記自動運転制御において、更に、
前記走行効率レベルに基づいて、前記待機予定位置において前記遠隔施設からの支援信号を待機する待機時間を計算し、
前記待機時間が許容時間を上回るか否かを判定し、
前記待機時間が前記許容時間を上回ると判定された場合、前記運転環境データ及び前記地図データの少なくとも一方に基づいて、前記待機予定位置が一時停止位置に適しているか否かを判定し、
前記待機予定位置が前記一時停止位置に適していないと判定された場合、前記待機予定位置が修正された目標軌道を生成する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両の外部状況データを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記外部状況データに前記車両の後続車両の認識データが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する。
【0009】
第3の発明は、第1又は2の発明において更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両の内部状況データを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記内部状況データに前記車両に乗員が搭乗していることを示す搭乗データが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する。
【0010】
第4の発明は、第1~3の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両の内部状況データを含む。前記内部状況データは、前記車両の航続可能距離のデータを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記航続可能距離が短いほど高いレベルを出力する。
【0011】
第5の発明は、第1~4の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両により提供される乗客の輸送サービスの稼働状況データを含む。前記稼働状況データは、前記輸送サービスの運行予定時間に対する遅れ時間のデータを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記遅れ時間が長いほど高いレベルを出力する。
【0012】
第6の発明は、第1~5の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両により提供される乗客の輸送サービスの稼働状況データを含む。前記稼働状況データは、前記輸送サービスに対して前記乗客が支払う対価のデータを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記対価が高いほど高いレベルを出力する。
【0013】
第7の発明は、第1~6の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記運転環境データは、前記車両の現在地から目的地までのルートにおける交通状況データを含む。
前記プロセッサは、前記走行効率レベルの計算において、前記交通状況データに前記ルート上で発生している渋滞のデータが含まれる場合、そうでない場合に比べて高いレベルを出力する。
【0014】
第8の発明は、車両制御方法であり、次の特徴を有する。
前記車両制御方法は、自動運転制御の最中に遠隔施設からの遠隔支援を受ける車両の制御方法である。
前記車両制御方法は、前記車両のプロセッサにより実現される。
前記プロセッサは、前記車両の運転環境データに基づいて前記車両の目標軌道を生成し、前記目標軌道に基づいて前記自動運転制御を実行する。
前記プロセッサは、
前記運転環境データ及び前記目標軌道の少なくとも一方に基づいて、前記遠隔支援が必要であるか否かを判定し、
前記遠隔支援が必要であると判定された場合、前記遠隔施設からの支援信号の受信を待機する予定の位置を示す待機予定位置を含んだ前記目標軌道を生成し、
前記運転環境データに基づいて、前記車両に要求される走行効率の程度を示す走行効率レベルを計算し、
前記走行効率レベルに基づいて、前記遠隔支援のリクエスト信号を前記遠隔施設に送信するリクエストタイミングを計算し、
前記リクエストタイミングが到来した場合、前記リクエスト信号を前記遠隔施設に送信し、
前記プロセッサは、前記リクエストタイミングの計算において、前記走行効率レベルが低い場合、前記走行効率レベルが高い場合に比べて遅いタイミングを出力する。
前記プロセッサは、更に、
前記走行効率レベルに基づいて、前記待機予定位置において前記遠隔施設からの支援信号を待機する待機時間を計算し、
前記待機時間が許容時間を上回るか否かを判定し、
前記待機時間が前記許容時間を上回ると判定された場合、前記運転環境データ及びデータベースに格納された地図データの少なくとも一方に基づいて、前記待機予定位置が一時停止位置に適しているか否かを判定し、
前記待機予定位置が前記一時停止位置に適していないと判定された場合、前記待機予定位置が修正された目標軌道を生成する。
【発明の効果】
【0016】
第1又は8の発明によれば、遠隔支援が必要であると判定された場合、走行効率レベルに基づいてリクエストタイミングが計算される。リクエストタイミングの計算では、走行効率レベルが低い場合、走行効率レベルが高い場合に比べて遅いタイミングが出力される。そのため、走行効率レベルが低い場合、リクエストタイミングを遅らせることが可能となる。リクエストタイミングを遅らせれば、このリクエストタイミングが到来するまでの間に車両の運転環境が変わり、遠隔支援が必要であるとの判定が翻ることが期待される。そして、判定が翻れば、リクエスト信号の送信が行われることもない。従って、リクエスト信号の送信頻度を抑えることが可能となる。
【0017】
第1又は8の発明によれば、また、走行効率レベルに基づいて計算された待機時間が許容時間を上回ると判定された場合、待機予定位置が一時停止位置に適しているか否かが判定される。そして、待機予定位置が一時停止位置に適していないと判定された場合、当該待機予定位置が修正された目標軌道が生成される。そのため、一時停止位置として適切な待機予定位置を含む目標軌道を生成することが可能となる。待機時間は、待機予定位置において遠隔施設からの支援信号を待機する時間であることから、待機時間が長くなるほど車両による一時停止が交通の妨げになる。この点、第1又は8の発明によれば、待機時間が許容時間を上回る場合に適切な待機予定位置を含む目標軌道が生成されるので、このような不具合の発生を未然に回避することが可能となる。
【0018】
第2~7の発明によれば、運転環境データに含まれる各種データに基づいて、走行効率レベルを計算することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る車両制御システムが適用される遠隔支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】自動運転制御の最中に車両から送信される遠隔支援のリクエスト信号の第1の送信例を示す図である。
【
図3】自動運転制御の最中に車両から送信されるリクエスト信号の第2の送信例を示す図である。
【
図4】
図2に示した第1の送信例において、リクエスト信号の送信タイミングを遅らせた場合のデメリットを説明する図である。
【
図5】
図3に示した第2の送信例において、リクエスト信号の送信タイミングを遅らせた場合のデメリットを説明する図である。
【
図6】走行効率レベルと、待機予定位置において支援信号の受信を待機する時間との関係の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示した車両の構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図1に示した遠隔施設の構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図7に示した車両の制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図11】第1実施形態において、車両の制御装置(プロセッサ)が自動運転制御の最中に行う処理例を示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係る車両制御システムが備える制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図14】第2実施形態において、車両の制御装置(プロセッサ)が自動運転制御の最中に行う処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両制御システムについて説明する。なお、実施形態に係る車両制御方法は、実施形態に係る車両制御システムにおいて行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0021】
1.第1実施形態
先ず、
図1~11を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
1-1.第1実施形態の概要
1-1-1.遠隔支援
図1は、第1実施形態に係る車両制御システムが適用される遠隔支援システムの構成例を示す図である。
図1に示される遠隔支援システム1は、車両2と、車両2と通信を行う遠隔施設3と、を備えている。車両2と遠隔施設3の間の通信は、ネットワーク4を介して行われる。この通信において、車両2から遠隔施設3へは、通信データCOM2が送信される。一方、遠隔施設3から車両2へは、通信データCOM3が送信される。
【0023】
車両2は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関を動力源とする自動車、電動機を動力源とする電気自動車、内燃機関と電動機を備えるハイブリッド自動車である。電動機は、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池などの電池により駆動される。
【0024】
車両2の運転は、第1実施形態に係る車両制御システムにより行われる。車両制御システムは、例えば、車両2のドライバによる手動運転を支援する車両制御を行い、又は、車両2の自動運転を行うための車両制御を行う。前者は運転支援制御と総称され、後者は自動運転制御と総称される。運転支援制御としては、衝突回避制御及び車線逸脱抑制制御が例示される。衝突回避制御は、車両2と周囲の物体との衝突の回避を支援する。車線逸脱抑制制御は、車両2が走行車線から逸脱するのを抑制する。
【0025】
第1実施形態では、車両2の目標軌道に基づいた自動運転制御が行われる場合を考える。目標軌道は、所定の時間間隔で設定される複数の将来の基準タイミングのそれぞれにおける、車両2の目標位置の集合として構成される。目標軌道は、目標位置ごとの車両2の目標速度を含んでいてもよい。自動運転制御では、車両2と目標軌道の偏差(例えば、横偏差、ヨー角偏差および速度偏差)が算出され、その偏差が減少するように車両2が制御される。
【0026】
自動運転制御の最中、車両制御システムは、オペレータによる遠隔支援が必要であるか否かを判定する。遠隔支援が必要であると判定された場合、車両制御システムは、遠隔施設3に対して遠隔支援のリクエスト信号RSを送信する。リクエスト信号RSは、通信データCOM2に含まれる。
【0027】
車両2は、少なくともカメラ21を備えている。カメラ21は、車両2の外部状況の画像(動画)を撮影する。カメラ21は、車両2の周辺の画像(例えば、前方及び後方画像)を撮影するために設けられる。カメラ21が取得した画像データIMGは、典型的には動画データである。ただし、画像データIMGは静止画像データであってもよい。遠隔支援が必要であると判定された場合、車両制御システムは、遠隔施設3に画像データIMGを送信する。通信データCOM2には、画像データIMGも含まれる。
【0028】
遠隔施設3は、車両制御システムからリクエスト信号RSを受け付けた場合、オペレータの操作に基づいて車両2の走行を遠隔支援する。遠隔施設3には、少なくともディスプレイ31が設けられている。ディスプレイ31としては、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及び有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)ディスプレイが例示される。
【0029】
オペレータによる遠隔支援の最中、遠隔施設3は、車両2から受信した画像データIMGをディスプレイ31に表示する。オペレータは、ディスプレイ31に表示される画像データIMGに基づいて車両2の外部状況を把握し、車両2に対する支援指示を入力する。遠隔施設3は、この支援指示に基づいて支援信号ASを生成し、車両2に送信する。この支援信号ASは、通信データCOM3に含まれる。
【0030】
オペレータによる遠隔支援としては、認識支援及び判断支援が例示される。自動運転制御が行われる場合、例えば、車両2の前方に存在する信号機に日光が当たっている場合、信号機の発光部(例えば、青色、黄色及び赤色発光部)の灯火状態の認識精度が低下する。灯火状態を認識することができない場合、どのような行動をどのタイミングで実行すべきか判断することも困難となる。このような場合、灯火状態の認識支援、及び/又は、オペレータが認識した灯火状態に基づいた車両2の行動の判断支援が行われる。
【0031】
オペレータによる遠隔支援には、遠隔運転も含まれる。遠隔運転において、オペレータは、ディスプレイ31に表示される画像データIMGを参考にして、操舵、加速、及び減速の少なくとも一つを含む車両2の運転操作を行う。この場合、オペレータによる支援指示は、車両2の運転操作の内容を示す。遠隔施設3は、この運転操作の内容に応じた支援信号ASを生成し、車両2に送信する。車両制御システムは、支援信号ASに従って、操舵、加速、及び減速の少なくとも一つを含む車両2の運転操作を行う。
【0032】
なお、リクエスト信号RSを含む通信データCOM2の送信から、この信号に応答して送信される支援信号ASを含む通信データCOM3の受信までの所要時間は、通信規格、使用周波数帯などの通信速度因子に応じて変動する。この所要時間は、通信速度因子を考慮して別途設定されている。
【0033】
1-1-2.リクエスト信号の送信タイミング
図2は、自動運転制御の最中に車両2から送信されるリクエスト信号RSの第1の送信例を示す図である。
図2には、車線L1を走行する車両2が描かれている。車線L1に隣接する車線L2は、例えば、車両2の進行方向とは逆方向に進行する車両(対向車両)の車線である。車両2の前方には、車線L1上で停止する停止車両5が描かれている。停止車両5は、車線L1に沿った車両2の走行を妨げる障害物であり、車両2との衝突を避ける必要ある物体(回避対象)に該当する。
【0034】
図2に示される目標軌道TR21及びTR22は、車両制御システムにより生成される目標軌道の一例である。この第1の例において、車両制御システムは、回避対象としての停止車両5を認識している。目標軌道TR21は、停止車両5の手前において車両2が一時停止するための目標軌道である。停止位置SP1は、目標軌道TR21の先端に相当する目標位置である。目標軌道TR22は、停止車両5の脇を車両2が通過するための目標軌道である。目標軌道TR22は、目標軌道TR21の生成と同時に生成されてもよいし、目標軌道TR21に沿った走行中に生成されてもよい。
【0035】
遠隔支援が必要であると判定された場合、車両制御システムは、遠隔支援のリクエスト信号RSを送信する。例えば、停止車両5の認識精度、又は、停止車両5の周辺のそれが低い場合、遠隔支援が必要であると判定される。別の例では、目標軌道TR22の安全性が担保されない場合、遠隔支援が必要であると判定される。リクエスト信号RSを送信する場合、車両制御システムは、目標軌道TR21を選択し、これに従った自動運転制御を行う。
【0036】
この場合、リクエスト信号RSは、目標軌道TR21に沿った走行中の任意のタイミングにおいて送信され、又は、車両2が停止位置SP1に到達したタイミングにおいて送信される。更には、車両2が停止位置SP1に到達したタイミングよりも後に、リクエスト信号RSが送信されてもよい。
【0037】
図3は、自動運転制御の最中に車両2から送信されるリクエスト信号RSの第2の送信例を示す図である。
図3には、車線L1を走行する車両2が描かれている。車両2は交差点PIに進入する予定である。車両2を基準とした交差点PIの反対側には、対向車両6が描かれている。車両2同様、対向車両6は交差点PIに進入する予定である。
【0038】
図3に示される目標軌道TR23及びTR24は、車両制御システムにより生成される目標軌道の一例である。目標軌道TR23は、交差点PIにおいて車両2が一時停止するための目標軌道である。停止位置SP2は、目標軌道TR23の先端に相当する目標位置である。目標軌道TR24は、交差点PIにおいて車両2が右折動作を行うための目標軌道である。目標軌道TR24は、目標軌道TR23の生成と同時に生成されてもよいし、目標軌道TR23に沿った走行中に生成されてもよい。
【0039】
第2の例において、車両制御システムは、対向車両6を認識している。予測軌道TR61は対向車両6の将来の軌道の一例である。予測軌道TR61は、目標軌道TR23の予測時に車両制御システムにより予測される。予測軌道TR61の予測は、例えば、四輪車、二輪車、歩行者などの各種移動体の挙動モデルに基づいて行われる。この挙動モデルは、各種移動体の挙動パターンに応じて事前に設定されている。
【0040】
第1の例同様、第2の例でも、遠隔支援が必要であるか否かが判定される。例えば、衝突条件が満たされる場合、遠隔支援が必要であると判定される。この衝突条件は、例えば、交差条件及び近接条件を含んでいる。交差条件は、目標軌道TR24と予測軌道TR61が交差する場合に満たされる。近接条件は、この交差位置に車両2が到達するタイミングと、対向車両6のそれとの差が所定時間以内の場合に満たされる。リクエスト信号RSを送信する場合、車両制御システムは、目標軌道TR23を選択し、これに従った自動運転制御を行う。
【0041】
この場合、リクエスト信号RSは、目標軌道TR23に沿った走行中の任意のタイミングにおいて送信され、又は、車両2が停止位置SP2に到達したタイミングにおいて送信される。更には、車両2が停止位置SP2に到達したタイミングよりも後に、リクエスト信号RSが送信されてもよい。
【0042】
1-1-3.走行効率レベル
図2及び3で説明したように、リクエスト信号RSを送信するタイミング(以下、「リクエストタイミングRT」とも称す。)は、遠隔支援が必要であると判定されたタイミング以降の任意のタイミングに設定することができる。リクエストタイミングRTが任意であるということは、メリットとデメリットがあることを意味する。例えば、オペレータによる遠隔運転が行われる場合、リクエストタイミングRTを早めることで、自動運転制御から遠隔運転への円滑な移行が実現可能となる。認識支援又は判断支援が行われる場合は、オペレータによる周辺環境の把握に余裕が生じる。一方、リクエストタイミングRTを早めれば、オペレータが単一の遠隔支援に従事する時間が長くなる。そのため、リクエスト信号RSを複数受け付けた場合に、オペレータがこれらの全てに対応することが難しくなる。
【0043】
リクエストタイミングRTを遅らせた場合のメリットとデメリットについて、
図4及び5を参照して説明する。
図4は、
図2に示した第1の送信例において、リクエストタイミングRTを遅らせた場合のデメリットを説明する図である。
図4を
図2と比較すると分かるように、
図4に示す車両2の位置は、
図2に示すそれに比べて停止位置SP1に近づいている。リクエストタイミングRTを遅らせた場合は、停止位置SP1において支援信号ASを待機する時間が長くなる。この時間が長くなれば、車両2が交通の妨げになる。また、車両2のドライバや乗客がこの待機状況に対して違和感を抱く可能性がある。
【0044】
図5は、
図3で説明した第2の送信例において、リクエストタイミングRTを遅らせた場合のメリットを説明する図である。
図5を
図3と比較すると分かるように、
図5に示す車両2の位置は、
図3に示すそれに比べて停止位置SP2に近づいている。また、対向車両6は、交差点PIの中間位置を通過して車線L2に進入しようとしている。
【0045】
リクエストタイミングRTを遅らせた場合は、遠隔支援が必要であるとの判定結果が翻る可能性がある。判定結果が翻った場合には、遠隔支援に頼ることなく自動運転制御の実行を継続することが可能となる。
図5に描かれる目標軌道TR25及びTR26は、交差点PIに進入した車両2が、一時停止することなく右折動作を行うための目標軌道である。予測軌道TR62は、目標軌道TR25の予測時に車両制御システムにより予測された対向車両6の将来の軌道の一例である。
【0046】
このようなメリットとデメリットに鑑み、第1実施形態では、「走行効率レベルEL」に基づいてリクエストタイミングRTを計算する。走行効率レベルELは、車両2に対して要求される走行効率の程度を示す。「走行効率」は、待機予定位置WPにおいて支援信号ASの受信を待機する時間(以下、「待機時間」とも称す。)WTに対する、当該待機時間WTでの車両2の走行距離の比率と定義される。待機予定位置WPは、支援信号ASの受信を待機する予定の位置を示す。待機予定位置WPとしては、目標軌道に含まれる車両2の一時停止位置が例示される。つまり、
図2及び3で説明した停止位置SP1及びSP2は、待機予定位置WPの具体例に相当する。
【0047】
図6は、走行効率レベルELと、待機時間WT(WT@WP)との関係の一例を示す図である。
図6に示されるように、待機時間WTは走行効率レベルELが高くなるほど短くなる。走行効率レベルELが“EL1”に等しいときに、待機時間WTは“0”を示す。待機時間WTが“0”ということは、待機予定位置WPに車両2が到達したタイミングで支援信号ASを受信することを意味する。走行効率レベルELが“EL1”よりも高いときには、待機時間WTは“0”よりも低い値を示す。待機時間WTが“0”よりも低いということは、待機予定位置WPに車両2が到達するタイミングよりも前のタイミングにおいて支援信号ASを受信することを意味する。
【0048】
図6の左方には、リクエスト信号RSの送信が行われる位置と、走行効率レベルELとの関係も示されている。既に説明したように、走行効率レベルELが高いときには、待機予定位置WPに車両2が到達するタイミングよりも前のタイミングにおいて支援信号ASを受信する可能性が高い。そのため、リクエスト信号RSの送信が行われる位置(以下、「リクエスト位置RP」とも称す。)は、走行効率レベルELが高くなるほど待機予定位置WPから遠ざかる。反対に、走行効率レベルELが低くなるほど、リクエスト位置RPは待機予定位置WPに近づいていく。
【0049】
このように、第1実施形態によれば、走行効率レベルELに基づいて計算されたタイミングにおいてリクエスト信号RSが送信される。そのため、車両2の外部状況、車両2の内部状況といった運転環境を考慮した最適なタイミングでリクエスト信号RSを遠隔施設3に対して送信して支援信号ASを受信することが可能となる。従って、リクエストタイミングRTを任意のタイミングにすることによるメリットを最大化し、又は、デメリットを最小限に抑えることが可能となる。なお、運転環境の例については後述される。
【0050】
以下、第1実施形態に係る車両制御システムと、それを含む遠隔支援システムと、について詳細に説明する。
【0051】
1-2.遠隔支援システム
1-2-1.車両の構成例
図7は、
図1に示した車両2の構成例を示すブロック図である。
図7に示されるように、車両2は、カメラ21と、センサ群22と、地図データベース(地
図DB)23と、走行装置24と、通信装置25と、制御装置26と、を備えている。これらの要素は、第1実施形態に係る車両制御システムを構成する。カメラ21、センサ群22、地図データベース23、走行装置24及び通信装置25と、制御装置26とは、例えば、車載のネットワーク(例えば、CAN(Car Area Network))により接続されている。なお、カメラ21の説明については、
図1の説明において既に述べたとおりである。
【0052】
センサ群22は、車両2の状態を検出する状態センサを含んでいる。状態センサとしては、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ及び舵角センサが例示される。センサ群22は、また、車両2の位置及び方位を検出する位置センサを含んでいる。位置センサとしては、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサが例示される。センサ群20は、更に、カメラ21以外の認識センサを含んでいてもよい。認識センサは、電波又は光を利用して車両2の外部状況を認識(検出)する。認識センサとしては、ミリ波レーダ及びLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)が例示される。
【0053】
地図データベース(地
図DB)23には、地図データMAPが格納されている。地図データMAPとしては、道路の位置データ、道路形状のデータ(例えば、カーブ、直線の種別)、交差点及び構造物の位置データが例示される。地図データMAPには、交通規制データも含まれている。地図データベース23は、車載の記憶装置(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ)内に形成されている。地図データベース23は、車両2と通信可能な施設(例えば、遠隔施設3)のコンピュータ内に形成されていてもよい。
【0054】
走行装置24は、操舵装置と、駆動装置と、制動装置とを含んでいる。操舵装置は、車両2のタイヤを転舵する。操舵装置は、例えば、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、電動機や内燃機関が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0055】
通信装置25は、ネットワーク4の基地局(不図示)との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置25の接続先には、遠隔施設3が含まれる。遠隔施設3との通信において、通信装置25は、制御装置26から受け取った通信データCOM2を、遠隔施設3に送信する。
【0056】
制御装置26は、少なくとも1つのプロセッサ26aと、少なくとも1つのメモリ26bと、インターフェース26cと、を有するマイクロコンピュータから構成される。プロセッサ26aは、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ26bは、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ26aが使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。車両2が取得した各種データは、メモリ26bに格納される。この各種データには、車両2の運転環境データENVが含まれる。インターフェース26cは、カメラ21、センサ群22等の外部装置とのインターフェースである。
【0057】
ここで、
図8を参照して、運転環境データENVの例について説明する。
図8に示されるように、運転環境データENVは、外部状況データEXTと、内部状況データINTと、位置及び方位データPOSと、稼働状況データSERと、交通状況データTRAと、を含んでいる。
【0058】
外部状況データEXTとしては、カメラ21により取得された画像データIMGと、上述した認識センサにより取得された認識データと、が例示される。
【0059】
内部状況データINTとしては、上述した状態センサにより取得された車両2の状態データが例示される。内部状況データINTには、車両2に乗員が搭乗していることを示す搭乗データが含まれてもよい。内部状況データINTには、車両2の航続可能距離を示すデータが含まれていてもよい。車両2の動力源が電動機の場合、航続可能距離は、バッテリの残量に基づいて計算される。車両2の動力源が内燃機関の場合、航続可能距離は、燃料の残量に基づいて計算される。
【0060】
位置及び方位データPOSは、上述した位置センサにより取得された車両2の位置及び方位のデータである。
【0061】
稼働状況データSERは、車両2が乗客の輸送サービスを提供する場合、当該輸送サービスの稼働状況を示すデータである。輸送サービスを提供する車両2としては、所定の時刻表に従って所定のルートを走行する乗り合いバスと、ユーザからのリクエストに応じて当該ユーザの出発地から目的地までのルートを走行するオンデマンドバスと、が例示される。前者の場合の稼働状況データSERとしては、輸送サービスの運行予定時間に対する遅れ時間のデータが例示される。後者の場合の稼働状況データSERとしては、輸送サービスに対してユーザが支払う対価のデータが例示される。なお、稼働状況データSERは、例えば、輸送サービスを管理するサーバから取得される。
【0062】
交通状況データTRAは、車両2の現在地から目的地までのルートにおける交通状況を示すデータである。交通状況データTRAとしては、車両2の現在地から目的地までのルート上で発生している渋滞のデータが例示される。渋滞のデータには、渋滞の起点から終点までの長さ(渋滞長)のデータと、当該渋滞が解消する見込み時間のデータとが例示される。なお、交通状況データTRAは、例えば、交通情報を収集及び編集してこれを外部に提供するセンタから取得される。
【0063】
1-2-2.遠隔装置の構成例
図9は、
図1に示した遠隔施設3の構成例を示すブロック図である。
図9に示されるように、遠隔施設3は、ディスプレイ31と、入力装置32と、通信装置33と、データ処理装置34と、を備えている。ディスプレイ31、入力装置32及び通信装置33と、データ処理装置34とは、専用のネットワークより接続されている。なお、ディスプレイ31の説明については、
図1の説明において既に述べたとおりである。
【0064】
入力装置32は、遠隔施設3のオペレータが操作する装置である。入力装置32は、例えば、オペレータによる入力を受け付ける入力部と、この入力に基づいて支援信号ASを生成及び出力する制御回路と、を備えている。入力部としては、タッチパネル、マウス、キーボード、ボタン及びスイッチが例示される。オペレータによる入力としては、ディスプレイ31に表示されたカーソルの移動操作と、ディスプレイ31に表示されたボタンの選択操作と、が例示される。
【0065】
オペレータが車両2の遠隔運転を行う場合は、入力装置32が走行用の入力装置を備えていてもよい。この走行用の入力装置としては、ステアリングホイール、シフトレバー、アクセルペダル及びブレーキペダルが例示される。
【0066】
通信装置33は、ネットワーク4の基地局との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置33の通信先には、車両2が含まれる。車両2との通信において、通信装置33は、データ処理装置34から受け取った通信データCOM3を、車両2に送信する。
【0067】
データ処理装置34は、各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置34は、少なくとも1つのプロセッサ34aと、少なくとも1つのメモリ34bと、インターフェース34cと、を備えている。プロセッサ34aはCPUを含んでいる。メモリ34bは、プロセッサ34aが使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。入力装置32からの入力信号や、遠隔施設3が取得した各種データは、メモリ34bに格納される。この各種データには、通信データCOM2に含まれる画像データIMGが含まれる。インターフェース34cは、入力装置32等の外部装置とのインターフェースである。
【0068】
1-2-3.制御装置の機能構成例
図10は、
図7に示した制御装置26の機能構成例を示すブロック図である。
図10に示されるように、制御装置26は、データ取得部261と、データ処理部262と、目標軌道生成部263と、車両制御部264と、リクエスト判定部265と、通信処理部266と、レベル計算部267と、タイミング計算部268と、を備える。これらの機能は、プロセッサ26aがメモリ26bに格納された所定のプログラムを処理することにより実現される。
【0069】
データ取得部261は、運転環境データENVを取得する。運転環境データENVの例については
図8で説明したとおりである。データ取得部261は、また、通信データCOM3を取得する。通信データCOM3が遠隔施設3から車両2へ送信されたデータであることは既に説明したとおりである。データ取得部261は、また、地図データベース23から地図データMAPを取得する。
【0070】
データ処理部262は、データ取得部261が取得した各種データを処理する。各種データの処理としては、外部状況データEXTに基づいた物標の認識処理が例示される。この認識処理によれば、車両2の周囲に存在する移動体、車線の区画線(白線)といった物標が認識される。各種データの処理には、認識処理により認識された移動体と、上述した挙動モデルとに基づいた当該移動体の将来軌道の計算処理が含まれる。
【0071】
各種データの処理には、画像データIMG及びリクエスト信号RSのエンコード処理が含まれる。エンコードされた画像データIMG及びリクエスト信号RSは、通信データCOM2に含まれている。各種データの処理には、通信データCOM3に含まれる支援信号ASのデコード処理が含まれる。各種データの処理には、内部状況データINTに基づいた航続可能距離の計算処理が含まれていてもよい。各種データの処理には、稼働状況データSERに基づいた運行予定時間に対する遅れ時間の計算処理が含まれていてもよい。
【0072】
目標軌道生成部263は、目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、データ処理部262の認識処理により認識された物標と、データ取得部261が取得した各種データ(車両2の状態データ、位置及び方位データ)と、に基づいて生成される。目標軌道は、車両制御部264及びリクエスト判定部265に出力される。
【0073】
車両制御部264は、目標軌道に基づいて車両2の自動運転制御を行う。自動運転制御では、車両2が目標駆動TR2に追従するように、車両2の操舵、加速及び減速が制御される。目標軌道に車両2を追従させるため、車両制御部264は、車両2と目標軌道との間の偏差(例えば、横偏差、ヨー角偏差及び速度偏差)を算出する。そして、車両制御部264は、この偏差が減少するように車両2の操舵、加速及び減速を制御する。車両制御部264は、また、支援信号ASに基づいて、車両2の操舵、加速及び減速を制御する。
【0074】
リクエスト判定部265は、遠隔支援が必要であるか否かを判定する。この判定は、例えば、データ処理部262の認識処理により認識された回避対象の尤度(以下、「認識尤度」とも称す。)に基づいて行われる。又は、この回避対象の周辺の物標の認識尤度に基づいて行われる。認識尤度は、ディープラーニングを利用した物標認識における出力の確からしさを示す数値である。認識尤度の具体例としては、YOLO(You Only Look Once)ネットワークを利用したディープラーニングの物標の分類結果と共に出力される当該分類結果の指標が挙げられる。なお、第1実施形態に適用可能な認識尤度の計算の手法は特に限定されない。認識尤度が閾値TH1を下回る場合は、遠隔支援が必要であると判定される。
【0075】
別の例では、目標軌道に基づいて、遠隔支援が必要であるか否かが判定される。例えば、目標軌道から車両2が走行する車線の区画線までの距離が閾値TH2を下回る場合、当該目標軌道の安全性が担保されないと判断される。目標軌道について上述した衝突条件(
図3の説明参照)が満たされる場合も、当該目標軌道の安全性が担保されないと判断される。このような場合、遠隔支援が必要であると判定される。
【0076】
通信処理部266は、データ処理部262によりエンコードされた画像データIMG及びリクエスト信号RSを、通信装置25を介して遠隔施設3に送信する。
【0077】
レベル計算部267は、走行効率レベルELを計算する。走行効率レベルELは、例えば、運転環境データENVを変数とする下記式(1)を用いて計算される。
EL=ΣWk×fk(ENV) ・・・(1)
式(1)に示すWk(k≧1)は、走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの種類に応じて付与される重み付け係数である。
【0078】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第1の例としては、外部状況データEXTに含まれる後続車両の認識データが挙げられる。後続車両は、車両2の後方において、車両2の進行方向と同じ方向に進行する車両である。後続車両の認識データは、上述した認識センサにより取得されてもよいし、車両2の後方の画像データの処理により取得されてもよい。
【0079】
例えば、後続車両の認識データが外部状況データEXTに含まれない場合は関数fk(ENV)の値を“V1”に設定し、そうでない場合はこの値をV1よりも大きな値に設定する。そうすると、後続車両の認識データが外部状況データEXTに含まれる場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0080】
待機予定位置WPでの一時停止は、後続車両の通行を妨げる可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、このような不具合の発生を未然に回避することが可能となる。一方、後続車両の認識データが外部状況データEXTに含まれない場合は、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。
【0081】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第2の例としては、内部状況データINTに含まれる搭乗データが挙げられる。例えば、搭乗データが内部状況データINTに含まれない場合は関数fk(ENV)の値を“V2”に設定し、そうでない場合はこの値をV2よりも大きな値に設定する。そうすると、搭乗データが内部状況データINTに含まれる場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0082】
待機予定位置WPでの一時停止は、車両2の乗員に違和感を与える可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、乗員の快適性を維持することが可能となる。一方、内部状況データINTに搭乗データが含まれない場合は、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。
【0083】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第3の例としては、内部状況データINTに含まれる航続可能距離のデータが挙げられる。例えば、航続可能距離が閾値TH3を上回る場合は関数fk(ENV)の値を“V3”に設定し、そうでない場合はこの値をV3よりも大きな値に設定する。そうすると、航続可能距離が閾値TH3を下回る場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0084】
待機予定位置WPでの一時停止は、航続可能距離を低下させる可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、一時停止に伴う航続可能距離の低下を抑えることが可能となる。一方、航続可能距離に余裕があれば、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。なお、この第3の例では、航続可能距離が短くなるほど増加するように関数fk(ENV)の値を変化させてもよい。
【0085】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第4の例としては、稼働状況データSERに含まれる遅れ時間のデータが挙げられる。例えば、遅れ時間が閾値TH4を下回る場合は関数fk(ENV)の値を“V4”に設定し、そうでない場合はこの値をV4よりも大きな値に設定する。そうすると、遅れ時間が閾値TH4を上回る場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0086】
待機予定位置WPでの一時停止は、遅れ時間を拡大させる可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、一時停止に伴う遅れ時間の拡大を抑えることが可能となる。一方、遅れ時間が閾値TH4を上回る場合は、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。なお、この例では、遅れ時間が長くなるほど増加するように関数fk(ENV)の値を変化させてもよい。
【0087】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第5の例としては、稼働状況データSERに含まれる対価のデータが挙げられる。例えば、対価が閾値TH5を下回る場合は関数fk(ENV)の値を“V5”に設定し、そうでない場合はこの値をV5よりも大きな値に設定する。そうすると、より多くの対価が支払われている場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0088】
待機予定位置WPでの一時停止は、効率的な輸送を期待するユーザに違和感を与える可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、ユーザの快適性を維持することが可能となる。一方、対価が閾値TH5を下回る場合は、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。なお、この例では、対価が高くなるほど増加するように関数fk(ENV)の値を変化させてもよい。
【0089】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第6の例としては、交通状況データTRAに含まれる渋滞のデータが挙げられる。例えば、渋滞のデータが交通状況データTRAに含まれない場合は関数fk(ENV)の値を“V6”に設定し、そうでない場合はこの値をV6よりも大きな値に設定する。そうすると、車両2の現在地から目的地までのルート上で渋滞が発生している場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。
【0090】
待機予定位置WPでの一時停止は、渋滞と相まって目的地への到着時間を遅れさせる可能性がある。この点、走行効率レベルELの値が高くなれば、到着時間の遅れを最小限に留めることが可能となる。一方、交通状況データTRAに渋滞のデータが含まれない場合は、走行効率レベルELの値を低くして、一時停止を許容することも可能となる。
【0091】
走行効率レベルELの計算に用いられる運転環境データENVの第7の例としては、交通状況データTRAに含まれる見込み時間のデータが挙げられる。例えば、見込み時間が閾値TH6を下回る場合は関数fk(ENV)の値を“V7”に設定し、そうでない場合はこの値をV7よりも大きな値に設定する。そうすると、見込み時間が閾値TH6を上回る場合に算出される走行効率レベルELの値が高くなる。第7の例におけるメリットは、第6の例でのそれと基本的に同じである。
【0092】
上述した運転環境データENVの第1~7の例は、適宜組み合わせることができる。
【0093】
タイミング計算部268は、リクエスト信号RSを送信するタイミング(つまり、リクエストタイミングRT)を計算する。リクエストタイミングRTは、「現在タイミングから起算してX秒後」と表現される。リクエストタイミングRTは、例えば、下記式(2)により計算される。
X=Y-TC+WT ・・・(2)
上記式(2)に示すYは、車両2が待機予定位置WPに到達するタイミングであり、「現在タイミングから起算してY秒後」と表現される。到達タイミングを表す“Y”は、目標軌道TRに基づいて計算することができる。また、上記式(2)に示すTCは、リクエスト信号RSの送信から、この信号に応答して送信される支援信号ASの受信までの所要時間である。所要時間TCは、通信規格、使用周波数帯などの通信速度因子に基づいて別途設定されている。
【0094】
待機時間WTは、
図6で説明した走行効率レベルELと待機時間WTの関係に基づいて計算される。待機時間WTの計算は、レベル計算部267が計算した走行効率レベルELを、
図6で説明した関係に適用することにより行われる。
【0095】
待機時間WTが所要時間TCよりも長い場合(WT>TC)、リクエストタイミングRTは、これらの時間の差の分だけ遅いタイミングとして計算される。待機時間WTが所要時間TCと等しい場合、リクエストタイミングRTは到達タイミングと一致する。待機時間WTが所要時間TCよりも短い場合(WT<TC)、リクエストタイミングRTは、これらの時間の差の分だけ早いタイミングとして計算される。
【0096】
リクエストタイミングRTを表す“X”には、上限及び下限が設定されてもよい。上限は、リクエストタイミングRTが先送りされ過ぎるのを回避するために設定される。一方、下限は、リクエストタイミングRTが前倒しされ過ぎるのを回避するために設定される。好ましい“X”の上限はY+10秒である。これは、リクエストタイミングRTが上限制約に抵触すると、リクエスト信号RSの送信が到達タイミングの10秒後に行われることを意味する。好ましい“X”の下限は1秒である。これは、リクエストタイミングRTが下限制約に抵触すると、リクエスト信号RSの送信が現在タイミングの1秒後に行われることを意味する。
【0097】
1-2-4.処理例
図11は、第1実施形態において、制御装置26(プロセッサ26a)が自動運転制御の最中に行う処理例を示すフローチャートである。
図11に示されるルーチンは、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0098】
図11に示されるルーチンでは、まず、遠隔支援が必要であるか否かが判定される(ステップS11)。遠隔支援が必要であるか否かの判定は、外部状況データEXT又は目標軌道に基づいて行われる。外部状況データEXTに基づいた判定では、回避対象の認識尤度、又は、この回避対象の周辺の物標の認識尤度と閾値TH1とが比較される。何れかの認識尤度が閾値TH1を下回る場合、遠隔支援が必要であると判定される。目標軌道に基づいた判定では、目標軌道についての衝突条件が満たされるか否かが判定される。衝突条件が満たされると判定された場合、遠隔支援が必要であると判定される。
【0099】
ステップS11の判定結果が否定的な場合は、今回のルーチンの処理が終了する。一方、この判定結果が肯定的な場合は、走行効率レベルELの計算が行われる(ステップS12)。走行効率レベルELは、例えば、運転環境データENVと、上記式(1)とを用いて計算される。この計算に用いられる運転環境データENVの例については既に説明したとおりである。
【0100】
ステップS12の処理に続いて、リクエストタイミングRTが計算される(ステップS13)。リクエストタイミングRTの計算は、例えば、上記式(2)を用いて行われる。ここで、上記式(2)の変数は、到達タイミングを表す“Y”と、待機時間WTである。前者は、目標軌道TRに基づいて計算される。後者は、ステップS12の処理において計算された走行効率レベルELを用いて行われる。例えば、
図6で説明した走行効率レベルELと待機時間WTの関係を示すマップの参照、又は、この関係を表すモデル式を用いた計算により、待機時間WTが計算される。なお、マップ及びモデル式は、事前に設定又は構築したものを用いることができる。
【0101】
ステップS13の処理に続いて、リクエストタイミングRTが到来したか否かが判定される(ステップS14)。リクエストタイミングRTのカウントは、リクエストタイミングRTの直後から行われる。ステップS14の処理は、リクエストタイミングRTが到来するまで繰り返し行われる。
【0102】
ステップS14の処理では、車両2がリクエスト位置RPに到達した否かを判定してもよい。ステップS13の処理においてリクエストタイミングRTが計算されれば、リクエスト位置RPを特定することもできる。そのため、車両2がリクエスト位置RPに到達したか否かを判定することで、リクエストタイミングRTが到来したか否を実質的に判定することができる。なお、車両2がリクエスト位置RPに到達したか否かの判定は、例えば、車両2の位置及び方位データPOSと、リクエスト位置RPと、に基づいて行われる。
【0103】
ステップS14の判定結果が肯定的な場合、リクエスト信号RSの出力が行われる(ステップS15)。リクエスト信号RSの出力に際しては、リクエスト信号RSのエンコード処理が行われる。エンコードされたリクエスト信号RSは、通信装置25を介して遠隔施設3に送信される。
【0104】
1-3.効果
第1実施形態によれば、遠隔支援が必要であると判定された場合、運転環境データENVに基づいて走行効率レベルELが計算される。そして、この走行効率レベルELに基づいてリクエスト信号RSを送信するタイミング(つまり、リクエストタイミングRT)が計算される。そして、リクエストタイミングRTが到来したら、リクエスト信号RSが遠隔施設3に送信される。従って、運転環境を考慮した最適なリクエストタイミングRTにおいてリクエスト信号RSを送信して支援信号ASを受信することが可能となる。従って、遠隔支援を行うオペレータと、遠隔支援を受ける車両2(又は車両2の乗員)の双方が走行効率レベルELに応じたメリットを享受することが可能となる。
【0105】
2.第2実施形態
次に、
図12~14を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態の説明と重複する説明については適宜省略される。
【0106】
2-1.第2実施形態の概要
図12は、第2実施形態の概要を説明する図である。
図12には、
図2で説明した状況と同じ状況が描かれている。
図2と12の違いは、目標軌道TR27にある。目標軌道TR27は、停止位置SP1よりも手前において車両2が一時停止するための目標軌道である。停止位置SP3は、目標軌道TR27の先端に相当する目標位置である。
【0107】
図2の例では、停止位置SP1が待機予定位置WPとして設定された。そして、この待機予定位置WPを基準として待機時間WTが計算された。
図12の右方に示される関係は、
図2で説明した走行効率レベルELと待機時間WTの関係の一例と同じものである。
【0108】
第1実施形態によれば、走行効率レベルELが高くなるほど待機時間WTが長い時間として設定される。そのため、待機時間WTが長くなれば、待機予定位置WPにおいて車両2が一時停止する可能性が高くなる。そうすると、この一時停止の時間が長くなることで、待機予定位置WPが一時停止位置として不適切となる可能性がある。
図12にはこの状況が描かれている。
【0109】
図12に示される例では、車線L1に隣接する駐車施設PKが描かれている。停止位置SP1は、この駐車施設PKの出入口ENの前に位置している。出入口ENの前に停止位置SP1が位置する場合、駐車施設PKから出庫する車両又は駐車施設PKに入庫する車両の通行を妨げる。従って、待機予定位置WPでの一時停止の時間によっては、待機予定位置WPとしての停止位置SP1が一時停止位置として不適切となる可能性がある。
【0110】
このような問題に鑑み、第2実施形態では、待機時間WTが閾値THWを上回るか否かが判定される。閾値THWは、待機予定位置WPでの一時停止の許容時間として設定することができる(例えば5秒)。待機時間WTが閾値THWを上回る場合、待機予定位置WPが一時停止位置として適切であるか否かを判定する。待機予定位置WPが一時停止位置として適切であるか否かの判定は、外部状況データEXT(具体的には、画像データIMG)及び地図データMAPの少なくとも一方に基づいて行うことができる。
【0111】
そして、待機予定位置WPが一時停止位置として不適切であると判定された場合、目標軌道が再生成される。
図12に示される目標軌道TR27は、再生成された目標軌道である。目標軌道TR27は、一時停止位置として適切な停止位置SP3を含んでいる。
【0112】
このように、第2実施形態によれば、一時停止位置として適切な待機予定位置WPを含む目標軌道を生成することが可能となる。従って、走行効率レベルELに応じて計算される待機時間WTが長くなったとしても、待機予定位置WPでの車両2の一時停止に起因した交通の妨げが発生するのを未然に回避することが可能となる。
【0113】
以下、第2実施形態に係る車両制御システムについて詳細に説明する。
【0114】
2-2.車両制御システム
2-2-1.制御装置の機能構成例
図13は、第2実施形態に係る車両制御システムが備える制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図13に示されるように、制御装置26は、データ取得部261と、データ処理部262と、目標軌道生成部263と、車両制御部264と、リクエスト判定部265と、通信処理部266と、レベル計算部267と、タイミング計算部268と、位置判定部269と、を備える。これらの機能は、プロセッサ26aがメモリ26bに格納された所定のプログラムを処理することにより実現される。
【0115】
位置判定部269以外の機能ブロックは
図10で説明した機能構成例と共通する。従って、以下においては、位置判定部269の説明を中心に行う。位置判定部269は、待機予定位置WPが一時停止位置として適切であるか否かを判定する。この判定では、まず、待機時間WTが計算される。待機時間WTの計算は、レベル計算部267が計算した走行効率レベルELを、
図6で説明した関係に適用することにより行われる。
【0116】
位置判定部269は、続いて、待機時間WTが閾値THWを上回るか否かを判定する。そして、待機時間WTが閾値THWを上回ると判定された場合、位置判定部269は、外部状況データEXT(具体的には、画像データIMG)及び地図データMAPの少なくとも一方に基づいて、待機予定位置WPの周辺の物標を認識し、及び/又は待機予定位置WPの周辺の交差点及び構造物の位置データを取得する。
【0117】
画像データIMGを用いた物標の認識処理によれば、待機予定位置WPの周辺の物標が認識される。地図データMAPによれば、待機予定位置WPの周辺の交差点及び構造物の位置データが取得される。位置判定部269は、認識された物標及び取得された位置データに基づいて、待機予定位置WPの適切性を判定する。
【0118】
不適切な位置としては、
図12で説明した出入口ENの他、
図3で説明した交差点PI、横断歩道が例示される。待機予定位置WPが不適切であると判定された場合、位置判定部269は、目標軌道の修正指示を含む判定信号JSを目標軌道生成部263に出力する。待機予定位置WPが適切であると判定された場合、位置判定部269は、目標軌道の出力指示を含む判定信号JSを目標軌道生成部263に出力する。
【0119】
目標軌道生成部263は、修正指示を含む判定信号ISを受け付けた場合、目標軌道の再生成を行う。目標軌道の再生成は、例えば、前回の目標軌道に含まれる停止位置よりも手前の位置に、新たな停止位置を設定することにより行われる。目標軌道の再生成は、出力指示を含む判定信号JSを受け付けるまで繰り返し行われる。出力指示を含む判定信号ISを受け付けた場合、目標軌道生成部263は、当該出力指示の対象とされた目標軌道を、車両制御部264及びリクエスト判定部265に出力する。
【0120】
2-2-2.処理例
図14は、第2実施形態において、制御装置26(プロセッサ26a)が自動運転制御の最中に行う処理例を示すフローチャートである。
図14に示されるルーチンは、
図11に示したルーチン同様、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0121】
図14に示されるルーチンでは、ステップS21及びS22の処理が行われる。ステップS21及びS22の処理の内容は、
図11で説明したステップS11及びS12の処理のそれと同じである。
【0122】
ステップS22の処理に続いて、待機時間WTが計算される(ステップS23)。待機時間WTの計算は、ステップS22で計算された走行効率レベルELを用いて行われる。例えば、
図6で説明した走行効率レベルELと待機時間WTの関係を示すマップの参照、又は、この関係を表すモデル式を用いた計算により、待機時間WTが計算される。なお、マップ及びモデル式は、事前に設定又は構築したものを用いることができる。
【0123】
ステップS23の処理に続いて、待機時間WTが閾値THWを上回るか否かが判定される(ステップS24)。ステップS24の処理では、ステップS23の処理により計算された待機時間TWと、閾値THWとが比較される。なお、待機予定位置WPでの一時停止の許容時間として閾値THWが設定されることは既に説明したとおりである。
【0124】
ステップS24の判定結果が否定的な場合は、今回のルーチンの処理が終了する。一方、この判定結果が肯定的な場合は、待機予定位置WPが適切な位置に該当するか否かが判定される(ステップS25)。ステップS25の処理では、まず、目標軌道TRに基づいて待機予定位置WPが特定される。続いて、画像データIMGに基づいて待機予定位置WPの周辺の物標が認識される。又は、地図データMAPに基づいて、待機予定位置WPの周辺の交差点及び構造物の位置データが取得される。
【0125】
そして、認識された物標及び取得された位置データに基づいて、待機予定位置WPの適切性が判定される。待機予定位置WPが適切であると判定された場合、目標軌道が出力される(ステップS26)。待機予定位置WPが適切でないと判定された場合、目標軌道の再生成が行われる(ステップS27)。目標軌道の再生成は、例えば、適切でないと判定された目標軌道に含まれる停止位置よりも手前の位置に、新たな停止位置を設定することにより行われる。ステップS25及びS27の処理は、ステップS25の処理において肯定的な判定結果が得られるまで繰り返し実行される。
【0126】
2-3.効果
第2実施形態によれば、一時停止位置として適切な待機予定位置WPを含む目標軌道を生成することが可能となる。従って、待機予定位置WPでの車両2の一時停止に起因した交通の妨げが発生するのを未然に回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0127】
1 遠隔支援システム
2 車両
3 遠隔施設
4 ネットワーク
5 停止車両
6 対向車両
21 カメラ
25,33 通信装置
26 制御装置
26a,34a プロセッサ
26b,34b メモリ
31 ディスプレイ
34 データ処理装置
EL 走行効率レベル
EN 出入口
PI 交差点
PK 駐車施設
RP リクエスト位置
RS リクエスト信号
RT リクエストタイミング
TH1,TH2,TH3,TH4,TH5,TH6,THW 閾値
TR21,TR22,TR23,TR24,TR25,TR26,TR27 目標軌道
TR61,TR62 予測軌道
WP1,WP2,WP3 待機予定位置
WT 待機時間
ENV 運転環境データ
EXT 外部状況データ
INT 内部状況データ
SER 稼働状況データ
TRA 交通状況データ
COM2,COM3 通信データ