(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230920BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20230920BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/00
G01N21/64 E
(21)【出願番号】P 2021094660
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】景 虹之
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524192(JP,A)
【文献】特開平10-062691(JP,A)
【文献】特開平09-166751(JP,A)
【文献】特開平10-161032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0094261(US,A1)
【文献】米国特許第05760950(US,A)
【文献】米国特許第04917478(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスクと、
複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスクと、
複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスクであって、前記第1ピンホールアレイディスクと前記第2ピンホールアレイディスクとの間に位置する前記集光素子アレイディスクと、
前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを連結する連結軸と、
前記連結軸と共に前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを回転させるモータと、
を備え、
前記第1ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第1焦点面に
、一の前記第1ピンホールが
、各々、位置するように前記連結軸に取り付けられ、
前記第2ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第2焦点面に
、一の前記第2ピンホールが
、各々、位置するように前記連結軸に取り付けられている、
共焦点スキャナ。
【請求項2】
前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間、及び前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間の少なくとも一方に配置されている分岐素子をさらに備える、
請求項1に記載の共焦点スキャナ。
【請求項3】
前記複数の第1ピンホールは、前記第1ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、
前記複数の第2ピンホールは、前記第2ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている、
請求項1又は2に記載の共焦点スキャナ。
【請求項4】
前記第1ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第1ピンホールの配置と前記第2ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の共焦点スキャナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の共焦点スキャナと、
前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第1共焦点スキャナを含む第1光学系であって、前記第1共焦点スキャナを通過して試料を含む顕微鏡まで第1照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、前記第1照射光に基づく前記試料からの第1被測定光を第1検出器まで導く前記第1光学系と、
前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第2共焦点スキャナを含む第2光学系であって、前記第2共焦点スキャナを通過して前記顕微鏡まで第2照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、前記第2照射光に基づく前記試料からの第2被測定光を第2検出器まで導く前記第2光学系と、
を備える、
共焦点スキャナシステム。
【請求項6】
前記第1光学系は、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記顕微鏡の像面と、を共役関係に結ぶ第1組のリレーレンズと、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記第1検出器の受光面と、を共役関係に結ぶ第2組のリレーレンズと、を含む、
請求項5に記載の共焦点スキャナシステム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の共焦点スキャナシステムと、
前記共焦点スキャナシステムに入射する前記第1照射光を照射する第1光源と、
前記共焦点スキャナシステムに入射する前記第2照射光を照射する第2光源と、
前記第1照射光及び前記第2照射光が照射される前記試料を含む前記顕微鏡と、
前記試料からの前記第1被測定光を検出する前記第1検出器と、
前記試料からの前記第2被測定光を検出する前記第2検出器と、
を備える、
共焦点顕微鏡システム。
【請求項8】
前記第1ピンホールの径は前記第1照射光の波長に基づいて定められ、
前記第2ピンホールの径は前記第2照射光の波長に基づいて定められている、
請求項7に記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項9】
前記第1光源は第1波長及び第3波長を有する第1照射光を照射し、
前記第2光源は第2波長及び第4波長を有する第2照射光を照射し、
前記第1検出器は前記第1波長及び前記第3波長に基づく前記第1被測定光をそれぞれ検出する一対の検出器を含み、
前記第2検出器は前記第2波長及び前記第4波長に基づく前記第2被測定光をそれぞれ検出する一対の検出器を含み、
各波長は、前記第1波長、前記第2波長、前記第3波長、及び前記第4波長の順に長い、
請求項7又は8に記載の共焦点顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共焦点顕微鏡システムにおいて用いられる、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナに関する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の照明及び発光波長で調査対象の試料を同時に照明及び検出するときの、被測定光としての発光放出の間のクロストーク、すなわち異なる波長のビームの相互干渉を抑制するための装置が記載されている。このような装置では、一組のピンホールアレイディスク及び集光素子アレイディスクからなる共焦点スキャナにおいて異なる箇所に第1の照明波長の照明光及び第2の照明波長の照明光がそれぞれ照射される。共焦点スキャナを通過したこれらの照明光の少なくとも一方は、共焦点スキャナと対物レンズとの間に位置するビームスプリッタデバイスによって偏向される。これにより、試料における各照明光の照射位置が互いに重ならず、クロストークの抑制につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では偏向の量が数百マイクロメートル程度と非常に小さく、照明光の偏向に関して精密な調整が要求される。したがって、装置の製造及び管理が容易ではない。加えて、装置を長時間稼働し続けるような場合、照明光の偏向の経時変化も課題となる。
【0006】
本開示は、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る共焦点スキャナは、複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスクと、複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスクと、複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスクであって、前記第1ピンホールアレイディスクと前記第2ピンホールアレイディスクとの間に位置する前記集光素子アレイディスクと、前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを連結する連結軸と、前記連結軸と共に前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを回転させるモータと、を備え、前記第1ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第1焦点面に一の前記第1ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられ、前記第2ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第2焦点面に一の前記第2ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられている。
【0008】
これにより、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能である。例えば、共焦点スキャナは、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位が重複しないように照射光の方向を偏向させる従来技術のような光学素子を必要としない。共焦点スキャナは、従来技術のような精度の高い機構調整を必要とすることなく、2枚のピンホールアレイディスクを用いることで、これらのディスク自体によって第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位の重複を抑制可能である。したがって、装置の組立調整が容易であり、装置のロバスト性が容易に得られる。
【0009】
一実施形態における共焦点スキャナは、前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間、及び前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間の少なくとも一方に配置されている分岐素子をさらに備えてもよい。これにより、共焦点スキャナは、光源からの照射光の光路と顕微鏡における試料からの蛍光の光路とを切り分けることが可能である。共焦点スキャナが2つの分岐素子の両方を有することで、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれに対しても同様の効果が得られる。
【0010】
一実施形態における共焦点スキャナでは、前記複数の第1ピンホールは、前記第1ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、前記複数の第2ピンホールは、前記第2ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されていてもよい。これにより、共焦点スキャナは、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれにおいても、顕微鏡上の試料に対する光源からの照射光の高速スキャンを実現可能である。
【0011】
一実施形態における共焦点スキャナでは、前記第1ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第1ピンホールの配置と前記第2ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一であってもよい。これにより、共焦点スキャナの設計がさらに容易になる。
【0012】
幾つかの実施形態に係る共焦点スキャナシステムは、上記のいずれかの共焦点スキャナと、前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第1共焦点スキャナを含む第1光学系であって、前記第1共焦点スキャナを通過して試料を含む顕微鏡まで第1照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、前記第1照射光に基づく前記試料からの第1被測定光を第1検出器まで導く前記第1光学系と、前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第2共焦点スキャナを含む第2光学系であって、前記第2共焦点スキャナを通過して前記顕微鏡まで第2照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、前記第2照射光に基づく前記試料からの第2被測定光を第2検出器まで導く前記第2光学系と、を備えてもよい。
【0013】
これにより、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能である。例えば、共焦点スキャナシステムは、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位が重複しないように照射光の方向を偏向させる従来技術のような光学素子を必要としない。共焦点スキャナシステムは、従来技術のような精度の高い機構調整を必要とすることなく、2枚のピンホールアレイディスクを用いることで、これらのディスク自体によって第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位の重複を抑制可能である。したがって、装置の組立調整が容易であり、装置のロバスト性が容易に得られる。
【0014】
一実施形態における共焦点スキャナシステムでは、前記第1光学系は、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記顕微鏡の像面と、を共役関係に結ぶ第1組のリレーレンズと、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記第1検出器の受光面と、を共役関係に結ぶ第2組のリレーレンズと、を含んでもよい。これにより、第1ピンホールアレイディスクのピンホール面、顕微鏡の像面、及び第1検出器の受光面の間で共役関係を維持した状態で光学系を適切に構築することが可能である。
【0015】
幾つかの実施形態に係る共焦点顕微鏡システムは、上記のいずれかの共焦点スキャナシステムと、前記共焦点スキャナシステムに入射する前記第1照射光を照射する第1光源と、前記共焦点スキャナシステムに入射する前記第2照射光を照射する第2光源と、前記第1照射光及び前記第2照射光が照射される前記試料を含む前記顕微鏡と、前記試料からの前記第1被測定光を検出する前記第1検出器と、前記試料からの前記第2被測定光を検出する前記第2検出器と、を備えてもよい。
【0016】
これにより、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能である。例えば、共焦点顕微鏡システムは、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位が重複しないように照射光の方向を偏向させる従来技術のような光学素子を必要としない。共焦点顕微鏡システムは、従来技術のような精度の高い機構調整を必要とすることなく、2枚のピンホールアレイディスクを用いることで、これらのディスク自体によって第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料上の励起部位の重複を抑制可能である。したがって、装置の組立調整が容易であり、装置のロバスト性が容易に得られる。
【0017】
一実施形態における共焦点顕微鏡システムでは、前記第1ピンホールの径は前記第1照射光の波長に基づいて定められ、前記第2ピンホールの径は前記第2照射光の波長に基づいて定められていてもよい。照射光の波長に比例してピンホール径を設計することで、照射光の透過率及び共焦点性が異なるピンホールアレイディスクに対して互いに等しくなり、バランスの取れた共焦点画像を得ることが可能となる。
【0018】
一実施形態における共焦点顕微鏡システムでは、前記第1光源は第1波長及び第3波長を有する第1照射光を照射し、前記第2光源は第2波長及び第4波長を有する第2照射光を照射し、前記第1検出器は前記第1波長及び前記第3波長に基づく前記第1被測定光をそれぞれ検出する一対の検出器を含み、前記第2検出器は前記第2波長及び前記第4波長に基づく前記第2被測定光をそれぞれ検出する一対の検出器を含み、各波長は、前記第1波長、前記第2波長、前記第3波長、及び前記第4波長の順に長くてもよい。これにより、共焦点顕微鏡システムは、4色での撮影によって共焦点画像を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る共焦点顕微鏡システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】第1ピンホールアレイディスクの一例を上方から見たときの模式図である。
【
図3】光が伝搬する様子と共に共焦点顕微鏡システムの構成の一例を示す
図1に対応する模式図である。
【
図4】第1光学系及び第2光学系に共通に用いられるダイクロイックミラーの波長特性を示す模式図である。
【
図5】集光素子アレイディスクの一例を上方から見たときの模式図である。
【
図6A】第1ピンホールアレイディスクの一例を上方から見たときの模式図である。
【
図6B】第2ピンホールアレイディスクの一例を下方から見たときの模式図である。
【
図6C】本開示の効果を説明するための模式図である。
【
図7】蛍光のクロストークを説明するための模式図である。
【
図8A】従来技術の問題点を説明するための第1模式図である。
【
図8B】従来技術の問題点を説明するための第2模式図である。
【
図8C】従来技術の問題点を説明するための第3模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0022】
従来技術における、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナの代表的な構成について説明する。このような共焦点スキャナは、ピンホールアレイディスクを有する。ピンホールアレイディスクは、顕微鏡の対物レンズで観察する焦点面のみの信号光を通過させる。共焦点スキャナは、焦点面以外のノイズ光を遮断する。このようなピンホールによって共焦点画像が得られる。
【0023】
共焦点スキャナは、マイクロレンズアレイディスクをさらに有する。マイクロレンズアレイディスクは、顕微鏡上の試料に照射する照明光の利用効率を向上させる。ピンホールアレイディスク上に形成されている各ピンホールの位置とマイクロレンズアレイディスク上に形成されている集光手段としての各マイクロレンズの位置とは、互いに一対一の関係にある。
【0024】
共焦点スキャナは、ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクを連結する連結軸をさらに有する。ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクが取り付けられた連結軸の先端はモータに取り付けられている。モータは、連結軸と共にピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクを互いに同一方向に回転させる。共焦点スキャナは、照明光の光路と信号光の光路とを分けるためのビームスプリッタをさらに有する。
【0025】
ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクをモータで互いに同一方向に回転させることにより、共焦点スキャナの機能が達成される。以上のような従来技術では、ピンホールアレイディスク上のピンホール径は1種類であり固定化されている。
【0026】
以上のようなマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナの問題点は、試料に含まれる異なる蛍光色素、例えば蛍光タンパクの間に蛍光のクロストークが存在することである。このような問題点は、蛍光イメージングに基づくハイコンテントアナリシスシステム、創薬支援装置、落射蛍光顕微鏡、及び共焦点蛍光顕微鏡などに共通する。
【0027】
蛍光色素の蛍光スペクトルは広い波長帯域に分布する。したがって、多重染色した試料にある複数の蛍光色素を同時に励起した場合、互いの蛍光が有する波長帯域で重複する部分が生じ得る。このような重複する部分が蛍光のクロストークと呼ばれる。蛍光のクロストークが生じると、本来蛍光信号が存在しないはずの細胞の画像に他の蛍光色素から蛍光が映り込み、蛍光信号として誤認識される。これがアーティファクトとなり、画像解析の精度の低下を招く。
【0028】
図7は、蛍光のクロストークを説明するための模式図である。例えば、
図7に示すとおり、第1の蛍光と第2の蛍光が幅広い波長帯域にわたって存在する。このような第1の蛍光及び第2の蛍光の2つの蛍光を分離してイメージングする場合、ダイクロイックミラーを利用する。例えば、ダイクロイックミラーは、第1の蛍光を反射させ、第2の蛍光を透過させる。さらに、第1の蛍光フィルタ及び第2の蛍光フィルタを用いる。しかしながら、
図7に示すとおり、2つの蛍光のうちの一方は他方の蛍光フィルタの波長帯域にまで存在する場合がある。
図7においてハッチングにより示されている部分がクロストークとなる。
【0029】
特許文献1に記載の発明は、蛍光のクロストークを抑制することを目的とする。特許文献1に記載の装置は、一組のピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクを有する共焦点スキャナにおいて系統を2つ有する。装置は、各系統で試料の異なる部位にある異なる波長の蛍光色素を励起し、励起によって生じる蛍光をそれぞれの系統で集光する。共焦点スキャナの系統は波長別に分けられている。2つの系統は、最終的にはビームスプリッタデバイス及び偏光デバイスなどの光学素子を介して顕微鏡に接続されている。
【0030】
図8Aは、従来技術の問題点を説明するための第1模式図である。
図8Bは、従来技術の問題点を説明するための第2模式図である。
図8Cは、従来技術の問題点を説明するための第3模式図である。
【0031】
特許文献1に記載の装置では、共焦点スキャナにおける2つの系統のそれぞれの走査及び励起範囲は、
図8Aの破線囲み部及び実線囲み部によってそれぞれ示す第1マスク領域及び第2マスク領域に対応する。当該2つの領域は1枚のニポウディスク上に設けられ、同一形状で螺旋状に配置されているピンホールによって走査される。
【0032】
図8Aに示すとおり、第1マスク領域と第2マスク領域とは互いに回転対称の位置関係にある。第1マスク領域と第2マスク領域とは同一形状で螺旋状に配置されているピンホールによって走査されるため、このまま顕微鏡に接続した場合、第1マスク領域に対応する走査範囲と第2マスク領域に対応する走査範囲とは完全に一致する。例えば
図8Bに示すとおり、第2マスク領域に対応する走査範囲が180°回転した状態で第1マスク領域に対応する走査範囲に重なる。また、その逆で、第1マスク領域に対応する走査範囲が180°回転した状態で第2マスク領域に対応する走査範囲に重なる。
【0033】
共焦点スキャナにおける2つの系統に対してその後の光学系が理想的に調整されている場合、第1マスク領域のピンホール像及び第2マスク領域のピンホール像も試料上で一致する。したがって、共焦点スキャナにおける2つの系統は、細胞試料の同一部位を励起することになり、同一部位からの蛍光を集光することになる。この場合、共焦点スキャナにおける2つの系統は異なる系統として機能せず、1系統の共焦点スキャナと等価である。結果として、蛍光のクロストークが生じる。
【0034】
以上のような問題点を解決するために、特許文献1に記載の発明では、第1マスク領域を通過する照明光及び第2マスク領域を通過する照明光の少なくとも一方を偏向させるビームスプリッタデバイスが設けられる。ビームスプリッタデバイスの設置角度を調整することで2つの照明光の方向を相対的に変化させ、第1マスク領域に対応する走査範囲をずらして、第2マスク領域に対応する走査範囲と重ならないようにしている。例えば、
図8Cに示すとおり、2つの照明光を相対的に偏向させることで、各範囲が重複しないようにすることが可能である。
【0035】
しかしながら、偏向の量が数百マイクロメートル程度と非常に小さく、照明光の偏向に関して精密な調整が要求される。したがって、装置の製造及び管理が容易ではない。加えて、装置を長時間稼働し続けるような場合、照明光の偏向の経時変化も課題となる。
【0036】
以下では、これらの問題点を解決可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムについて説明する。本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
本開示は、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡の中の共焦点スキャナに関する。本開示は、例えば共焦点画像解析に基づくハイコンテントアナリシスシステム及び創薬支援装置などの製品にも応用可能である。共焦点レーザ顕微鏡では、レーザ光を照射光として細胞などの試料に照射し、試料を励起する。細胞に予め蛍光物質を融合しておくと、励起光を受けたときに細胞から蛍光が放出される。蛍光信号を顕微鏡光学系で画像として撮影し、細胞の観察及び細胞の挙動の解析を行う。このような顕微手法は、生物の基礎研究から創薬の応用開発の分野まで幅広く利用可能である。細胞の画像を撮影する際、ボケの無い高画質な画像を得るために、光学系には共焦点方式が利用される。さらにマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡は、レーザ光の利用効率が高く、高速に画像を取得可能であり、生きた細胞のダイナミックな動きをリアルタイムで撮影可能である。したがって、当該共焦点レーザ顕微鏡は、生細胞ベースのスクリーニングで多用される。
【0038】
図1は、一実施形態に係る共焦点顕微鏡システム1の構成の一例を示す模式図である。
図1を主に参照しながら、一実施形態に係る共焦点顕微鏡システム1の構成について説明する。
【0039】
共焦点顕微鏡システム1は、第1光源10a及び第2光源10bと、共焦点スキャナシステム20と、顕微鏡30と、第1検出器40a及び第2検出器40bと、を有する。
【0040】
第1光源10aは、共焦点スキャナシステム20に入射して、顕微鏡30上の試料Sに照射される第1照射光を出力する。第1光源10aは、例えばレーザ光源を含む。第1光源10aから照射される第1照射光の波長は、例えば試料Sの吸収帯に含まれ、試料Sから蛍光を発生させることが可能な波長領域に含まれる。例えば、第1光源10aから照射される第1照射光の波長は、可視領域に含まれていてもよい。例えば、第1照射光は、第1波長及び第3波長の異なる2種類の波長を有してもよい。
【0041】
第2光源10bは、共焦点スキャナシステム20に入射して、顕微鏡30上の試料Sに照射される第2照射光を出力する。第2光源10bは、例えばレーザ光源を含む。第2光源10bから照射される第2照射光の波長は、例えば試料Sの吸収帯に含まれ、試料Sから蛍光を発生させることが可能な波長領域に含まれる。例えば、第2光源10bから照射される第2照射光の波長は、可視領域に含まれていてもよい。例えば、第2照射光は、第2波長及び第4波長の異なる2種類の波長を有してもよい。
【0042】
共焦点スキャナシステム20は、共焦点スキャナ21と、複数の光学素子を含む第1光学系Saと、複数の光学素子を含む第2光学系Sbと、を有する。
【0043】
共焦点スキャナ21は、複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスク211aと、複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスク211bと、を有する。一実施形態に係る共焦点スキャナ21では、第1ピンホールの径と第2ピンホールの径とは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
図2は、第1ピンホールアレイディスク211aの一例を上方から見たときの模式図である。
図2では、第1ピンホールアレイディスク211aのみについて示しているが、第2ピンホールアレイディスク211bについても
図2と同様に構成されてもよい。例えば、第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一であってもよい。
【0045】
第1ピンホールアレイディスク211aに形成されている複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。同様に、第2ピンホールアレイディスク211bに形成されている複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。
【0046】
図1を再度参照すると、共焦点スキャナ21は、複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスク212を有する。集光素子アレイディスク212は、第1ピンホールアレイディスク211aと第2ピンホールアレイディスク211bとの間に挟まれるように位置する。集光素子は、例えばマイクロレンズを含む。
【0047】
共焦点スキャナ21は、第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212を連結する連結軸213と、連結軸213と共に第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212を同一方向に回転させるモータ214と、を有する。
【0048】
第1ピンホールアレイディスク211aは、集光素子アレイディスク212における一の集光素子の第1焦点面に一の第1ピンホールが位置するように連結軸213に取り付けられている。第2ピンホールアレイディスク211bは、集光素子アレイディスク212における一の集光素子の第2焦点面に一の第2ピンホールが位置するように連結軸213に取り付けられている。
【0049】
より具体的には、集光素子アレイディスク212におけるマイクロレンズアレイは、
図1の上下方向に2つの焦点面を有する。第1ピンホールアレイディスク211aは、上方の第1焦点面の位置に取り付けられている。第2ピンホールアレイディスク211bは、下方の第2焦点面の位置に取り付けられている。第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bを含むピンホールアレイディスク211上に形成されている各ピンホールの位置と集光素子アレイディスク212上に形成されている集光素子としての各マイクロレンズの位置とは、互いに一対一の関係にある。
【0050】
以上のように、共焦点スキャナ21は、例えば1枚のマイクロレンズアレイディスクとそれを挟むように配置した2枚のピンホールアレイディスク211から構成されるマイクロレンズ付きピンホールアレイディスクである。第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との組み合わせで第1共焦点スキャナが形成される。同様に、第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との組み合わせで第2共焦点スキャナが形成される。
【0051】
共焦点スキャナ21は、第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との間に配置されている第1分岐素子215a、及び第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との間に配置されている第2分岐素子215bをさらに有する。第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bを含む分岐素子215は、例えばダイクロイックミラーを含む。
【0052】
第1光学系Saは、第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との組み合わせである第1共焦点スキャナを含む。第1光学系Saは、顕微鏡30の直前に配置されているダイクロイックミラー22aを含む。
【0053】
第1光学系Saは、複数のミラー23aを含む。例えば、第1光学系Saは、第1光源10aから第1検出器40aに向かって順に配置されている第1ミラー23a1、第2ミラー23a2、第3ミラー23a3、及び第4ミラー23a4を含む。
【0054】
第1光学系Saは、複数のレンズ24aを含む。例えば、第1光学系Saは、第1光源10aから第1検出器40aに向かって順に配置されている第1レンズ24a1、第2レンズ24a2、第3レンズ24a3、第4レンズ24a4、第5レンズ24a5、及び第6レンズ24a6を含む。
【0055】
第1光学系Saは、第5レンズ24a5の直前に配置されている第1蛍光フィルタ25a1を含む。第1光学系Saは、第6レンズ24a6の直前に配置されている第2蛍光フィルタ25a2を含む。
【0056】
第1光学系Saは、第4レンズ24a4から、第1蛍光フィルタ25a1及び第5レンズ24a5を第1波長に基づく蛍光が通過する第1光路と第2蛍光フィルタ25a2及び第6レンズ24a6を第3波長に基づく蛍光が通過する第2光路とに分岐するダイクロイックミラー26aを含む。
【0057】
第2光学系Sbは、第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との組み合わせである第2共焦点スキャナを含む。第2光学系Sbは、顕微鏡30の直前に配置されているダイクロイックミラー22bを含む。
【0058】
第2光学系Sbは、ミラー23bを含む。第2光学系Sbは、複数のレンズ24bを含む。例えば、第2光学系Sbは、第2光源10bから第2検出器40bに向かって順に配置されている第1レンズ24b1、第2レンズ24b2、第3レンズ24b3、及び第4レンズ24b4を含む。
【0059】
第2光学系Sbは、第3レンズ24b3の直前に配置されている第1蛍光フィルタ25b1を含む。第2光学系Sbは、第4レンズ24b4の直前に配置されている第2蛍光フィルタ25b2を含む。
【0060】
第2光学系Sbは、第2レンズ24b2から、第1蛍光フィルタ25b1及び第3レンズ24b3を第2波長に基づく蛍光が通過する第1光路と第2蛍光フィルタ25b2及び第4レンズ24b4を第4波長に基づく蛍光が通過する第2光路とに分岐するダイクロイックミラー26bを含む。
【0061】
第1光学系Saのダイクロイックミラー22aと第2光学系Sbのダイクロイックミラー22bとは互いに同一のダイクロイックミラーである。すなわち、当該ダイクロイックミラーは、第1光学系Saのダイクロイックミラー22a及び第2光学系Sbのダイクロイックミラー22bとして共通に利用される。以下では、第1光学系Saのダイクロイックミラー22aと第2光学系Sbのダイクロイックミラー22bとを互いに区別しないときは、単に「ダイクロイックミラー22」と表記する。
【0062】
顕微鏡30は、例えば試料Sの観察に利用可能な任意の顕微鏡を含む。顕微鏡30には、第1光源10aからの第1照射光及び第2光源10bからの第2照射光が照射される試料Sが含まれる。顕微鏡30は、第1光源10aから照射された第1照射光及び第2光源10bから照射された第2照射光を試料Sに対して最終的に集光する一組の結像レンズ31及び対物レンズ32を有する。
【0063】
第1検出器40aは、顕微鏡30上の試料Sからの、第1照射光に基づく第1被測定光としての蛍光を検出する。第1検出器40aは、例えばカメラを含む。このようなカメラは、試料Sから放出される蛍光の波長帯域において適切な受光感度を有する。例えば、第1検出器40aは、可視領域において適切な受光感度を有してもよい。例えば、第1検出器40aは、第1照射光の第1波長及び第3波長に基づく第1被測定光をそれぞれ検出する一対の第1検出器40a1及び第1検出器40a2を含む。
【0064】
第2検出器40bは、顕微鏡30上の試料Sからの、第2照射光に基づく第2被測定光としての蛍光を検出する。第2検出器40bは、例えばカメラを含む。このようなカメラは、試料Sから放出される蛍光の波長帯域において適切な受光感度を有する。例えば、第2検出器40bは、可視領域において適切な受光感度を有してもよい。例えば、第2検出器40bは、第2照射光の第2波長及び第4波長に基づく第2被測定光をそれぞれ検出する一対の第2検出器40b1及び第2検出器40b2を含む。
【0065】
図3は、光が伝搬する様子と共に共焦点顕微鏡システム1の構成の一例を示す
図1に対応する模式図である。
図3を主に参照しながら、共焦点顕微鏡システム1の機能について説明する。
【0066】
初めに、第1光学系Saの機能について主に説明する。第1光学系Saは、第1共焦点スキャナを通過して試料Sを含む顕微鏡30まで第1照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、第1照射光に基づく試料Sからの第1被測定光、すなわち蛍光を第1検出器40aまで導く。
【0067】
例えば、共焦点顕微鏡システム1は、第1光学系Saにおける第1共焦点スキャナによって第1波長及び第3波長の2波長の第1照射光に基づく2波長の蛍光を撮影するシステムを含む。2色の場合、第1光源10aにおいて、2波長のレーザが合波される。加えて、第1光学系Saにおける蛍光の光路において、ダイクロイックミラー26aにより波長が互いに異なる蛍光が分離される。
【0068】
第1光源10aから拡散しながら出力された第1照射光は、共焦点スキャナシステム20における第1光学系Saの第1レンズ24a1によって平行光となる。すなわち、第1レンズ24a1はコリメートレンズとして機能する。平行光となった第1照射光は、第1ミラー23a1で反射して共焦点スキャナ21の集光素子アレイディスク212に入射する。
【0069】
集光素子アレイディスク212上に配置されているマイクロレンズを通過した第1照射光は、第1分岐素子215aを透過して、各マイクロレンズの焦点で収束する。各マイクロレンズの焦点に収束した第1照射光は、マイクロレンズの第1焦点面の位置に配置されている第1ピンホールアレイディスク211aの各第1ピンホールを通過する。
図2の実線囲み部で示されているとおり、各マイクロレンズの焦点に収束した第1照射光は、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて、例えば上方から見て3時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0070】
図3に示すとおり、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて多数の点光源となった第1照射光は、第2ミラー23a2、第3ミラー23a3、第4ミラー23a4、及びダイクロイックミラー22aで反射して顕微鏡30に入射する。このとき、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて多数の点光源となった第1照射光は、光路内の第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3によって、顕微鏡30の像面P1にリレーされる。すなわち、第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、顕微鏡30の像面P1と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0071】
ダイクロイックミラー22aは第1共焦点スキャナを通過した第1照射光及び第1照射光によって励起された試料Sからの蛍光を反射させ、後述する第2共焦点スキャナを通過した第2照射光及び第2照射光によって励起された試料Sからの蛍光を透過させる。
【0072】
第1ピンホールアレイディスク211aによる多数の点光源が、顕微鏡30内の結像レンズ31及び対物レンズ32によって試料Sで点像となり、試料Sを励起する。このとき、試料Sは、第1波長及び第3波長を有する第1照射光に基づいて、第1波長及び第3波長の両方で励起される。共焦点スキャナ21のモータ214の回転によって多数の点光源が試料Sの全面を走査し、2次元の画像情報を得ることが可能となる。
【0073】
多数の点光源によって励起された試料Sから第1波長及び第3波長に基づく蛍光が放出される。このような蛍光は逆光路を辿り、顕微鏡30の像面P1において蛍光像が得られる。蛍光は、第4ミラー23a4、第3ミラー23a3、及び第2ミラー23a2で反射し、光路内の第3レンズ24a3及び第2レンズ24a2によって第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面にリレーされる。蛍光は、第1ピンホールの回転走査によって第1共焦点像となる。
【0074】
第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール像、すなわち第1共焦点像は、第1照射光が透過し対応する蛍光が反射する特性を有する第1分岐素子215aのダイクロイックミラーで反射する。第1波長に基づく第1共焦点像は、ダイクロイックミラー26aを透過し、光路内の第4レンズ24a4及び第5レンズ24a5によって第1検出器40a1の受光面にリレーされる。すなわち、第4レンズ24a4及び第5レンズ24a5は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、第1検出器40a1の受光面と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0075】
第1共焦点像は、第5レンズ24a5の直前で第1蛍光フィルタ25a1を介して、第1検出器40a1のカメラにより画像として撮影される。第1蛍光フィルタ25a1は、観察すべき試料Sの情報を含む、第1波長に基づく蛍光のみを透過させる。
【0076】
第3波長に基づく第1共焦点像は、ダイクロイックミラー26aで反射し、光路内の第4レンズ24a4及び第6レンズ24a6によって第1検出器40a2の受光面にリレーされる。すなわち、第4レンズ24a4及び第6レンズ24a6は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、第1検出器40a2の受光面と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0077】
第1共焦点像は、第6レンズ24a6の直前で第2蛍光フィルタ25a2を介して、第1検出器40a2のカメラにより画像として撮影される。第2蛍光フィルタ25a2は、観察すべき試料Sの情報を含む、第3波長に基づく蛍光のみを透過させる。
【0078】
続いて、第2光学系Sbの機能について主に説明する。第2光学系Sbは、第2共焦点スキャナを通過して試料Sを含む顕微鏡30まで第2照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、第2照射光に基づく試料Sからの第2被測定光、すなわち蛍光を第2検出器40bまで導く。
【0079】
例えば、共焦点顕微鏡システム1は、第2光学系Sbにおける第2共焦点スキャナによって第2波長及び第4波長の2波長の第2照射光に基づく2波長の蛍光を撮影するシステムを含む。2色の場合、第2光源10bにおいて、2波長のレーザが合波される。加えて、第2光学系Sbにおける蛍光の光路において、ダイクロイックミラー26bにより波長が互いに異なる蛍光が分離される。
【0080】
第2光源10bから拡散しながら出力された第2照射光は、共焦点スキャナシステム20における第2光学系Sbの第1レンズ24b1によって平行光となる。すなわち、第1レンズ24b1はコリメートレンズとして機能する。平行光となった第2照射光は、ミラー23bで反射して共焦点スキャナ21の集光素子アレイディスク212に入射する。
【0081】
集光素子アレイディスク212上に配置されているマイクロレンズを通過した第2照射光は、第2分岐素子215bを透過して、各マイクロレンズの焦点で収束する。各マイクロレンズの焦点に収束した第2照射光は、マイクロレンズの第2焦点面の位置に配置されている第2ピンホールアレイディスク211bの各第2ピンホールを通過する。
図2の破線囲み部で示されているとおり、各マイクロレンズの焦点に収束した第2照射光は、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて、例えば上方から見て9時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0082】
図3に示すとおり、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて多数の点光源となった第2照射光は、ダイクロイックミラー22bを透過して顕微鏡30に入射する。第2ピンホールアレイディスク211bによる多数の点光源が、顕微鏡30内の結像レンズ31及び対物レンズ32によって試料Sで点像となり、試料Sを励起する。このとき、試料Sは、第2波長及び第4波長を有する第2照射光に基づいて、第2波長及び第4波長の両方で励起される。共焦点スキャナ21のモータ214の回転によって多数の点光源が試料Sの全面を走査し、2次元の画像情報を得ることが可能となる。
【0083】
ダイクロイックミラー22bは、第1共焦点スキャナを通過した第1照射光と第2共焦点スキャナを通過した第2照射光とを合波して、第1照射光によって励起された試料Sからの蛍光と第2照射光によって励起された試料Sからの蛍光とを分離するための光学素子である。ダイクロイックミラー22bは、上述した第1共焦点スキャナを通過した第1照射光及び第1照射光によって励起された試料Sからの蛍光を反射させ、第2共焦点スキャナを通過した第2照射光及び第2照射光によって励起された試料Sからの蛍光を透過させる。
【0084】
多数の点光源によって励起された試料Sから第2波長及び第4波長に基づく蛍光が放出される。このような蛍光は逆光路を辿り、第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール面に入射する。蛍光は、第2ピンホールの回転走査によって第2共焦点像となる。
【0085】
第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール像、すなわち第2共焦点像は、第2照射光が透過し対応する蛍光が反射する特性を有する第2分岐素子215bのダイクロイックミラーで反射する。第2波長に基づく第2共焦点像は、ダイクロイックミラー26bを透過し、光路内の第2レンズ24b2及び第3レンズ24b3によって第2検出器40b1の受光面にリレーされる。すなわち、第2レンズ24b2及び第3レンズ24b3は、第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール面と、第2検出器40b1の受光面と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0086】
第2共焦点像は、第3レンズ24b3の直前で第1蛍光フィルタ25b1を介して、第2検出器40b1のカメラにより画像として撮影される。第1蛍光フィルタ25b1は、観察すべき試料Sの情報を含む、第2波長に基づく蛍光のみを透過させる。
【0087】
第4波長に基づく第2共焦点像は、ダイクロイックミラー26bで反射し、光路内の第2レンズ24b2及び第4レンズ24b4によって第2検出器40b2の受光面にリレーされる。すなわち、第2レンズ24b2及び第4レンズ24b4は、第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール面と、第2検出器40b2の受光面と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0088】
第2共焦点像は、第4レンズ24b4の直前で第2蛍光フィルタ25b2を介して、第2検出器40b2のカメラにより画像として撮影される。第2蛍光フィルタ25b2は、観察すべき試料Sの情報を含む、第4波長に基づく蛍光のみを透過させる。
【0089】
以上のように、一組の回転するディスクユニットによって2系統の共焦点スキャナ21が実現される。第1共焦点スキャナにおける第1ピンホールの径は第1照射光の波長に基づいて定められてもよい。第2共焦点スキャナにおける第2ピンホールの径は第2照射光の波長に基づいて定められてもよい。例えば、第1照射光の波長と第2照射光の波長とは互いに異なっている。したがって、第1ピンホールの径と第2ピンホールの径とは互いに異なっていてもよい。例えば、照射光の波長に比例して、2系統の共焦点スキャナにおけるピンホール径を異なる値に設計してもよい。より具体的には、照射光の波長が短くなるほどピンホール径を小さく設計し、照射光の波長が長くなるほどピンホール径を大きく設計してもよい。
【0090】
図4は、第1光学系Sa及び第2光学系Sbに共通に用いられるダイクロイックミラー22の波長特性を示す模式図である。
図4において、λ1、λ2、λ3、及びλ4は、第1照射光の第1波長、第2照射光の第2波長、第1照射光の第3波長、及び第2照射光の第4波長にそれぞれ対応する。例えば、各波長は、第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3、及び第4波長λ4の順に長い。
【0091】
例えば、ダイクロイックミラー22は、第1共焦点スキャナを通過した、第1波長λ1及び第3波長λ3を有する第1照射光を反射させる。ダイクロイックミラー22は、第1照射光によって励起された試料Sからの蛍光を反射させる。例えば、第1波長λ1に基づく蛍光は、第1波長λ1よりも長波長側で幅広い波長帯域にわたって放出される。例えば、第3波長λ3に基づく蛍光は、第3波長λ3よりも長波長側で幅広い波長帯域にわたって放出される。
【0092】
例えば、ダイクロイックミラー22は、第2共焦点スキャナを通過した、第2波長λ2及び第4波長λ4を有する第2照射光を透過させる。ダイクロイックミラー22は、第2照射光によって励起された試料Sからの蛍光を透過させる。例えば、第2波長λ2に基づく蛍光は、第2波長λ2よりも長波長側で幅広い波長帯域にわたって放出される。例えば、第4波長λ4に基づく蛍光は、第4波長λ4よりも長波長側で幅広い波長帯域にわたって放出される。
【0093】
互いに近接する2つの波長、例えば第1波長λ1及び第2波長λ2を、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのように共焦点スキャナ21の異なる系統を用いて光学系を分離することで、蛍光のクロストークが抑制される。
【0094】
図5は、集光素子アレイディスク212の一例を上方から見たときの模式図である。
図5は、
図2の第1ピンホールアレイディスク211aと同一方向から見たときの集光素子アレイディスク212の様子を示したものである。
【0095】
図5に示すとおり、集光素子アレイディスク212において、多数のマイクロレンズがアレイ状に配置されている。
図3を用いて上述した第1光学系Saにおいて第1照射光が集光素子アレイディスク212に照射されるとき、
図5の実線囲み部Iで示されているとおり、第1照射光は、集光素子アレイディスク212において、例えば上方から見て3時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。一方で、
図3を用いて上述した第2光学系Sbにおいて第2照射光が集光素子アレイディスク212に照射されるとき、
図5の実線囲み部IIで示されているとおり、第2照射光は、集光素子アレイディスク212において、例えば上方から見て9時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0096】
以上のような一実施形態によれば、光学系に対する精密な調整を必要とせずに被測定光間のクロストークを抑制可能である。例えば、共焦点スキャナ21は、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料S上の励起部位が重複しないように照射光の方向を偏向させる従来技術のような光学素子を必要としない。共焦点スキャナ21は、従来技術のような精度の高い機構調整を必要とすることなく、2枚のピンホールアレイディスク211を用いることで、これらのディスク自体によって第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナによる試料S上の励起部位の重複を抑制可能である。したがって、装置の組立調整が容易であり、装置のロバスト性が容易に得られる。
【0097】
例えば、共焦点スキャナ21は、第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bと、集光素子アレイディスク212と、を組み合わせた一組の回転するディスクユニットによって、2系統の共焦点スキャナを実現する。それぞれの共焦点スキャナによって波長別の共焦点イメージングが可能である。2系統の共焦点スキャナで試料Sの異なる部位を異なる波長の照射光で励起し、生じる波長別の蛍光を2系統の共焦点スキャナに分けて集光する。このように、励起部位が波長によって異なるため、同一部位から異なる波長の蛍光が生じにくい。このとき、第1共焦点スキャナにおける第1ピンホールの回転方向、及び第2共焦点スキャナにおける第2ピンホールの回転方向のそれぞれに特長がある。
【0098】
共焦点スキャナ21では、第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bの2枚のピンホールアレイディスクが集光素子アレイディスク212を挟んで上下に配置される。したがって、第1照射光及び第2照射光のそれぞれの伝搬方向から各ピンホールアレイディスクを見ると、一方は時計回りに、他方は反時計回りに回転する。これにより、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナにおける共焦点スキャンは互いに同期することなく、独立に行われる。結果として、第1共焦点スキャナに基づく第1蛍光画像と第2共焦点スキャナに基づく第2蛍光画像とは重複することなく、蛍光のクロストークも十分に抑制される。したがって、高精度な画像解析を実現することが可能である。
【0099】
換言すると、同一時間において、第1共焦点スキャナが励起する試料Sの部位と第2共焦点スキャナが励起する試料Sの部位とが互いに異なるため、これら2つの部位からの蛍光がそれぞれの共焦点で集光されて混じり合うことが抑制される。したがって、同一時間において、第1被測定光の波長と第2被測定光の波長とが互いに重複することなく、蛍光のクロストークが十分に抑制される。
【0100】
図6Aは、第1ピンホールアレイディスク211aの一例を上方から見たときの模式図である。
図6Aは、
図6B及び
図6Cと対比させながら本開示の効果を説明する都合上、
図2と同一の図を再掲したものである。
図6Aは、第1共焦点スキャナから第1照射光が出射する側で第1照射光の伝搬方向から第1ピンホールアレイディスク211aを見たものである。
図6Bは、第2ピンホールアレイディスク211bの一例を下方から見たときの模式図である。
図6Bは、第2共焦点スキャナから第2照射光が出射する側で第2照射光の伝搬方向から第2ピンホールアレイディスク211bを見たものである。
【0101】
本開示では、
図6A及び
図6Bに示すとおり、従来技術における上述した第1マスク領域に対応する第1領域及び第2マスク領域に対応する第2領域はそれぞれ異なるピンホールアレイディスク211上に存在する。例えば、
図6Aにおいて実線囲み部で示すとおり、第1領域は、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて3時の方向に位置する。例えば、
図6Bにおいて実線囲み部で示すとおり、第2領域は、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて9時の方向に位置する。
【0102】
図6A及び
図6Bを比較すると、第1領域における第1ピンホールの配置と第2領域における第2ピンホールの配置とは、互いに反転する関係にある。したがって、第1領域における第1ピンホールの配置と第2領域における第2ピンホールの配置とは互いに回転対称ではなく、回転によって重複しない。
【0103】
図6Cは、本開示の効果を説明するための模式図である。
図6Cに示すとおり、回転によって第1領域と第2領域とが重なったときであっても、第1ピンホールと第2ピンホールとの間の重なりが抑制されている。
【0104】
共焦点スキャナ21は、第1分岐素子215aを有することで、第1光源10aからの第1照射光の光路と顕微鏡30における試料Sからの蛍光の光路とを切り分けることが可能である。同様に、共焦点スキャナ21は、第2分岐素子215bを有することで、第2光源10bからの第2照射光の光路と顕微鏡30における試料Sからの蛍光の光路とを切り分けることが可能である。
【0105】
複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。以上により、共焦点スキャナ21は、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれにおいても、顕微鏡30上の試料Sに対する光源からの照射光の高速スキャンを実現可能である。
【0106】
第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とが互いに同一であることで、共焦点スキャナ21の設計がさらに容易になる。
【0107】
共焦点スキャナシステム20における第1光学系Saは、第1組のリレーレンズとして、第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3を含む。第1光学系Saは、第2組のリレーレンズとして、第4レンズ24a4及び第5レンズ24a5、又は第4レンズ24a4及び第6レンズ24a6を含む。これにより、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面、顕微鏡30の像面P1、及び第1検出器40aの受光面の間で共役関係を維持した状態で光学系を適切に構築することが可能である。
【0108】
第1ピンホールの径は第1照射光の波長に基づいて定められ、第2ピンホールの径は第2照射光の波長に基づいて定められている。照射光の波長に比例してピンホール径を設計することで、照射光の透過率及び共焦点性が異なるピンホールアレイディスク211に対して互いに等しくなり、バランスの取れた共焦点画像を得ることが可能となる。
【0109】
第1光源10aが第1波長及び第3波長を有する第1照射光を照射し、第2光源10bが第2波長及び第4波長を有する第2照射光を照射することで、共焦点顕微鏡システム1は、4色での撮影によって共焦点画像を得ることが可能である。
【0110】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0111】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0112】
上記実施形態では、共焦点スキャナ21は、第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bを有すると説明したが、これに限定されない。共焦点スキャナ21は、第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bのいずれか一方のみを有してもよいし、両方有さなくてもよい。例えば、第1分岐素子215aは、顕微鏡30上の試料Sから放出された蛍光が第1ピンホールアレイディスク211a及び集光素子アレイディスク212を通過した後の第1光学系Saにおける任意の箇所に配置されていてもよい。例えば、第2分岐素子215bは、顕微鏡30上の試料Sから放出された蛍光が第2ピンホールアレイディスク211b及び集光素子アレイディスク212を通過した後の第2光学系Sbにおける任意の箇所に配置されていてもよい。
【0113】
上記実施形態では、分岐素子215は例えばダイクロイックミラーを含むと説明したが、これに限定されない。分岐素子215は、例えば各光源からの照射光を透過させて顕微鏡30上の試料Sからの蛍光を反射させる任意の素子を含んでもよい。例えば、分岐素子215は、ビームスプリッタを含んでもよい。
【0114】
上記実施形態では、複数の第1ピンホールが第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、複数の第2ピンホールが第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されていると説明したが、これに限定されない。複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて任意の状態で配置されていてもよい。複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて任意の状態で配置されていてもよい。
【0115】
上記実施形態では、第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とが互いに同一であると説明したが、これに限定されない。第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とは互いに異なっていてもよい。
【0116】
上記実施形態では、第1光学系Saは、複数組のリレーレンズを含むと説明したが、これに限定されない。第1光学系Saに代えて、第2光学系Sbがこのような複数組のリレーレンズを含んでもよい。第1光学系Sa及び第2光学系Sbは、顕微鏡30上の試料Sに対して第1共焦点像及び第2共焦点像の両方を鮮明に得ることが可能であれば任意に構成されてもよい。
【0117】
上記実施形態では、第1ピンホールの径が第1照射光の波長に基づいて定められ、第2ピンホールの径が第2照射光の波長に基づいて定められていると説明したが、これに限定されない。ピンホールの径は、照射光の波長に依存せずに一定に定められていてもよい。
【0118】
上記実施形態では、第1照射光が第1波長及び第3波長の異なる2種類の波長を有し、第2照射光が第2波長及び第4波長の異なる2種類の波長を有すると説明したが、これに限定されない。各照射光は1種類の波長のみを有してもよいし、3種類以上の波長を有してもよい。
【0119】
上記実施形態では、第1光源10a及び第2光源10bの各々は例えばレーザ光源を含むと説明したが、これに限定されない。各光源は、第1共焦点像及び第2共焦点像を得ることが可能な任意の光源を含んでもよい。例えば、各光源は、LED(Light Emitting Diode)を含んでもよい。また、上記実施形態では、各光源から照射される照射光の波長は可視領域に含まれていると説明したが、これに限定されない。各光源から照射される照射光の波長は、紫外領域及び赤外領域などに含まれていてもよい。
【0120】
上記実施形態では、集光素子アレイディスク212を構成する集光素子はマイクロレンズを含むと説明したが、これに限定されない。このような集光素子は、第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bの位置で各光源からの照射光を集光可能な任意の素子を含んでもよい。
【0121】
上記実施形態では、
図2及び
図5に示すとおり、上方から見たときに第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212において3時及び9時の位置にある所定領域に照射光又は蛍光が入射すると説明したが、これに限定されない。照射光又は蛍光が入射する領域は、第1光学系Saと第2光学系Sbとの間で任意の配置関係にあってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 共焦点顕微鏡システム
10a 第1光源
10b 第2光源
20 共焦点スキャナシステム
21 共焦点スキャナ
211 ピンホールアレイディスク
211a 第1ピンホールアレイディスク
211b 第2ピンホールアレイディスク
212 集光素子アレイディスク
213 連結軸
214 モータ
215 分岐素子
215a 第1分岐素子
215b 第2分岐素子
22、22a、22b ダイクロイックミラー
23a ミラー
23a1 第1ミラー
23a2 第2ミラー
23a3 第3ミラー
23a4 第4ミラー
23b ミラー
24a レンズ
24a1 第1レンズ
24a2 第2レンズ
24a3 第3レンズ
24a4 第4レンズ
24a5 第5レンズ
24a6 第6レンズ
24b レンズ
24b1 第1レンズ
24b2 第2レンズ
24b3 第3レンズ
24b4 第4レンズ
25a1 第1蛍光フィルタ
25a2 第2蛍光フィルタ
25b1 第1蛍光フィルタ
25b2 第2蛍光フィルタ
26a ダイクロイックミラー
26b ダイクロイックミラー
30 顕微鏡
31 結像レンズ
32 対物レンズ
40a、40a1、40a2 第1検出器
40b、40b1、40b2 第2検出器
P1 像面
S 試料
Sa 第1光学系
Sb 第2光学系
λ1 第1波長
λ2 第2波長
λ3 第3波長
λ4 第4波長