(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】搬送システム及びグリッドシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20230920BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20230920BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B65G1/137 Z
B65G1/04 551A
B61B13/00 V
B61B13/00 U
B61B13/00 C
(21)【出願番号】P 2021554820
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028769
(87)【国際公開番号】W WO2021090543
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019202369
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】北村 亘
(72)【発明者】
【氏名】青木 栄二郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 敏一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039023(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/211898(WO,A1)
【文献】特表2019-500294(JP,A)
【文献】国際公開第2019/101725(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 - 1/20
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送台車と、複数の前記搬送台車を制御するコントローラと、を備えた搬送システムであって、
前記搬送台車は、当該搬送台車を走行させる走行部、及び、前記走行部に対して水平方向に沿って移動して載置台との間で物品を移載する移載部を有し、
前記コントローラは、前記搬送台車により物品を前記載置台との間で移載させる移載時には、平面視において物品の移載の際に当該搬送台車に占有される領域に対応するブロッキング領域へ、当該搬送台車以外の他の搬送台車が進入することを禁止するブロッキング制御を行い、
前記搬送台車は、物品を前記載置台との間で移載する場合、
第1の方向と、前記第1の方向と異なる第2の方向と、のうちの前記第1の方向を決定し、当該載置台へ
前記第1の方向からアクセスする経路に沿って走行し、
前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積は、前記搬送台車が前
記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積以下である、搬送システム。
【請求項2】
前記搬送台車は、平面視で格子状に配置された走行路に沿って走行可能に設けられ、
前記第1の方向は、前記第2の方向と直角な方向であり、
前記ブロッキング領域は、前記走行路のマス目に対応するセル単位で区画され、
前記ブロッキング領域の面積の大小は、前記ブロッキング領域を区画する前記セルの数の大小に対応する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記走行路は、水平方向に沿って延び且つ吊り下げられたレールであり、
前記走行部は、前記レール上を転動する走行車輪を有し、
前記移載部は、前記レールの下側で物品を保持する物品保持部を有する、請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記コントローラには、複数の前記載置台と、前記載置台への複数のアクセス方向毎に定められ前記ブロッキング領域の面積に関する情報と、が互いに関連付けられたマップが記憶されており、
前記コントローラは、前記マップを用いて、前記ブロッキング領域の面積が最も小さくなる前記アクセス方向を前記第1の方向として決定する、請求項1~3の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記搬送台車によってアクセスされる前記載置台を決定した後に、当該載置台への複数のアクセス方向毎に前記ブロッキング領域の面積に関する情報を演算し、演算した前記情報に基づいて前記ブロッキング領域の面積が最も小さくなる前記アクセス方向を前記第1の方向として決定する、請求項1~3の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送台車の前記移載部は、水平面内において前記搬送台車の走行方向と直角な方向に前記走行部に対して移動し、
前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積よりも小さく、
前記搬送台車が前記第1の方向から前記載置台へアクセスする場合は、平面視において物品の移載時に前記走行部から前記移載部がはみ出さず、
前記搬送台車が前記第2の方向から前記載置台へアクセスする場合は、平面視において物品の移載時に前記走行部から前記移載部がはみ出す、請求項1~5の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記載置台を含む複数の載置台は、所定の並設方向に沿って並設されており、
前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積と等しく、
前記第1の方向は、前記第2の方向よりも前記所定の並設方向に沿う方向である、請求項1~6の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記所定の並設方向が存在しない場合、前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間よりも短い、請求項7に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの前記ブロッキング領域の面積と等しく、
前記搬送台車が前記第1の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間よりも短い、請求項1~6の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記搬送台車が前記第1の方向から前記載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間は、前記搬送台車が前記第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間よりも長い、請求項1~7の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記コントローラは、複数の前記搬送台車のうち、前記第1の方向から前記載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ前記搬送台車が到達するまでの到達時間が最も短い何れかの搬送台車に対して、前記経路に沿って走行させる指令を送信する、請求項1~10の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項12】
水平方向に沿って延び、格子状に配置されたレールと、
前記レールに沿って走行可能な複数の搬送台車と、
複数の前記搬送台車を制御するコントローラと、を備えたグリッドシステムであって、
前記搬送台車は、当該搬送台車を走行させる走行部、及び、水平面内において当該搬送台車の走行方向と直角な方向に前記走行部に対して移動して載置台との間で物品を移載する移載部を有し、
前記コントローラは、前記搬送台車により物品を前記載置台との間で移載させる移載時には、平面視において物品の移載の際に当該搬送台車に占有される領域であって前記レールのマス目に対応するセル単位で区画されたブロッキング領域へ、当該搬送台車以外の他の搬送台車が進入することを禁止するブロッキング制御を行い、
前記搬送台車は、物品の移載時に前記移載部を移動させた際に前記走行部が占有する前記セルに隣接する他のセルに当該移載部がはみ出さないアクセス方向である第1の方向が存在する場合、前記載置台へのアクセスを当該第1の方向から実現する、グリッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、搬送システム及びグリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の搬送台車と、複数の搬送台車を制御するコントローラと、を備えた搬送システムが知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、台車がグリッド状の走行路上でコンテナを搬送するシステムが開示されている。特許文献1に開示されたシステムでは、台車は、走行時には走行路の2つのマス目を占有するが、コンテナの移載時には、梁が回転することにより、走行路の3つのマス目を占有する。占有された領域(ブロッキング領域)は、他の台車が通過できない領域とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなシステムでは、例えば近年における益々の普及拡大に伴い、搬送台車の搬送効率を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明の一側面は、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能な搬送システム及びグリッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る搬送システムは、複数の搬送台車と、複数の搬送台車を制御するコントローラと、を備えた搬送システムであって、搬送台車は、当該搬送台車を走行させる走行部、及び、走行部に対して水平方向に沿って移動して載置台との間で物品を移載する移載部を有し、コントローラは、搬送台車により物品を載置台との間で移載させる移載時には、平面視において物品の移載の際に当該搬送台車に占有される領域に対応するブロッキング領域へ、当該搬送台車以外の他の搬送台車が進入することを禁止するブロッキング制御を行い、搬送台車は、物品を載置台との間で移載する場合、当該載置台へ第1の方向からアクセスする経路に沿って走行し、搬送台車が第1の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積は、搬送台車が第1の方向と異なる第2の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積以下である。
【0007】
この搬送システムでは、搬送台車が物品を移載する際に、ブロッキング領域の面積が大きくなることを抑制することができる。そのため、他の搬送台車の走行が妨害されにくくなる。よって、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、搬送台車は、平面視で格子状に配置された走行路に沿って走行可能に設けられ、第1の方向は、第2の方向と直角な方向であり、ブロッキング領域は、レールのマス目に対応するセル単位で区画され、ブロッキング領域の面積の大小は、ブロッキング領域を区画するセルの数の大小に対応していてもよい。この場合、平面視で格子状に配置された走行路に沿って搬送台車が走行するシステムにおいて、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、走行路は、水平方向に沿って延び且つ吊り下げられたレールであり、走行部は、レール上を転動する走行車輪を有し、移載部は、レールの下側で物品を保持する物品保持部を有していてもよい。この場合、いわゆるグリッドシステムにおいて、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、コントローラには、複数の載置台と、載置台への複数のアクセス方向毎に定められブロッキング領域の面積に関する情報と、が互いに関連付けられたマップが記憶されており、コントローラはマップを用いて、ブロッキング領域の面積が最も小さくなるアクセス方向を第1の方向として決定してもよい。これにより、物品を移載する際のブロッキング領域の面積を、効率よく最小化することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、コントローラは、搬送台車によってアクセスされる載置台を決定した後に、当該載置台への複数のアクセス方向毎にブロッキング領域の面積に関する情報を演算し、演算した情報に基づいてブロッキング領域の面積が最も小さくなるアクセス方向を第1の方向として決定してもよい。これにより、搬送台車が載置台へアクセスする都度に当該情報を演算して第1の方向を決定することから、搬送台車の走行環境等が何らかの理由で一時的に変化したような状況が発生しても、物品を移載する際のブロッキング領域の面積を、当該状況に応じて確実に最小化することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、搬送台車の移載部は、水平面内において搬送台車の走行方向と直角な方向に走行部に対して移動し、搬送台車が第1の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積よりも小さく、搬送台車が第1の方向から載置台へアクセスする場合は、平面視において物品の移載時に走行部から移載部がはみ出さず、搬送台車が第2の方向から載置台へアクセスする場合は、平面視において物品の移載時に走行部から移載部がはみ出してもよい。これにより、このような構成の搬送システムにおいて、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、載置台を含む複数の載置台は、所定の並設方向に沿って並設されており、搬送台車が第1の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積と等しく、第1の方向は、第2の方向よりも所定の並設方向に沿う方向であってもよい。この場合、搬送台車の載置台へのアクセスにおいて、載置台の並設方向の優先度を高めることができる。そのため、例えば並設された載置台間の物品の移動をスムーズに行うことができる。
【0014】
本発明に係る搬送システムでは、所定の並設方向が存在しない場合、搬送台車が第1の方向から載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間よりも短くてもよい。この場合、搬送台車の載置台へのアクセスにおいて、到達時間の優先度を高めることができる。
【0015】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、搬送台車が第1の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときのブロッキング領域の面積と等しく、搬送台車が第1の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間よりも短くてもよい。この場合、搬送台車の載置台へのアクセスにおいて、到達時間の優先度を高めることができる。
【0016】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、搬送台車が第1の方向から載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間は、搬送台車が第2の方向から当該載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間よりも長くてもよい。これにより、搬送台車は、物品を移載する際に、到達時間は長くてもブロッキング領域の面積が小さくなるように載置台へアクセスすることができる。
【0017】
本発明の一側面に係る搬送システムでは、コントローラは、複数の搬送台車のうち、第1の方向から載置台へアクセスするときの当該載置台との間で物品を移載可能な位置へ搬送台車が到達するまでの到達時間が最も短い何れかの搬送台車に対して、経路に沿って走行させる指令を送信してもよい。これにより、搬送効率が向上させることが可能となる。
【0018】
本発明の一側面に係るグリッドシステムは、水平方向に沿って延び、格子状に配置されたレールと、レールに沿って走行可能な複数の搬送台車と、複数の搬送台車を制御するコントローラと、を備えたグリッドシステムであって、搬送台車は、当該搬送台車を走行させる走行部、及び、水平面内において当該搬送台車の走行方向と直角な方向に走行部に対して移動して載置台との間で物品を移載する移載部を有し、コントローラは、搬送台車により物品を載置台との間で移載させる移載時には、平面視において物品の移載の際に当該搬送台車に占有される領域であってレールのマス目に対応するセル単位で区画されたブロッキング領域へ、当該搬送台車以外の他の搬送台車が進入することを禁止するブロッキング制御を行い、搬送台車は、物品の移載時に移載部を移動させた際に走行部が占有するセルに隣接する他のセルに当該移載部がはみ出さないアクセス方向である第1の方向が存在する場合、載置台へのアクセスを当該第1の方向から実現する。
【0019】
このグリッドシステムでは、搬送台車が物品を移載する際に、ブロッキング領域のセル数が多くなることを抑制することができる。そのため、他の搬送台車の走行が妨害されにくくなる。よって、搬送台車の搬送効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、搬送台車の搬送効率を向上させることができる搬送システム及びグリッドシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る搬送システムの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、搬送台車の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、搬送台車の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、搬送システムを示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、ブロッキング制御のブロッキング領域の例を示す平面図である。
図5(b)は、ブロッキング制御のブロッキング領域の他の例を示す平面図である。
図5(c)は、ブロッキング制御のブロッキング領域の更に他の例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、グリッドセルにおいて区画された各領域を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)は、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域の例を示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)の続きを示す平面図である。
【
図8】
図8は、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域の例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、ロードポートの並設方向の例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、搬送システムの動作例を説明するための平面図である。
【
図13】
図13は、搬送システムの他の動作例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載する等適宜縮尺を変更して表現している。各図において、XYZ座標系により図中の方向を説明する。XYZ座標系では、水平面に平行な平面をXY平面とする。XY平面に沿った一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向と反対の方向が-方向であるとして説明する。また、垂直軸まわり又はZ軸まわりの旋回方向をθZ方向と表記する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係る搬送システムSYSの一例を示す斜視図である。
図2は、
図1の搬送システムSYSで用いられる搬送台車Vの斜視図である。
図3は、
図2の搬送台車Vを示す側面図である。
図4は、
図1の搬送システムSYSを示すブロック図である。
【0024】
搬送システムSYSは、例えば半導体製造工場のクリーンルームにおいて、物品Mを搬送台車Vにより搬送するためのグリッドシステムである。搬送システムSYSは、第1搬送台車V1~第n搬送台車Vn(以下、搬送台車Vと総称する場合もある)(
図4参照)と、複数の搬送台車Vを制御するシステムコントローラ5と、を備える。本実施形態では、搬送台車Vが天井搬送台車である例を説明する。搬送台車Vは、搬送システムSYSのレールRに沿って移動する。レールRは、搬送台車Vの走行路である。搬送台車Vは、搬送システムSYSのレールRに沿って移動し、半導体ウエハを収容するFOUP、あるいはレチクルを収容するレチクルPod等の物品Mを搬送する。搬送台車Vは、走行車と称する場合がある。
【0025】
レールRは、クリーンルーム等の建屋の天井又は天井付近に敷設されている。レールRは、例えば、処理装置、ストッカ(自動倉庫)等に隣接して設けられる。処理装置は、例えば、露光装置、コータディベロッパ、製膜装置、エッチング装置等であり、搬送台車Vが搬送する容器内の半導体ウエハに各種処理を施す。ストッカは、搬送台車Vが搬送する物品Mを保管する。レールRは、走行路の形態の一例である。レールRは、平面視で格子状に配置されている。レールRは、水平方向に沿って延び且つ吊り下げられたレールである。レールRは、複数の第1レールR1と、複数の第2レールR2と、複数の交差部R3と、を有する。以下、レールRを格子状レールRと称する。
【0026】
複数の第1レールR1は、それぞれX方向に沿って延在する。複数の第2レールR2は、それぞれY方向に沿って延在する。格子状レールRは、複数の第1レールR1と複数の第2レールR2とにより、平面視において格子状に形成されている。格子状レールRは、複数の第1レールR1と複数の第2レールR2とにより複数のマス目を形成する。交差部R3は、第1レールR1と第2レールR2とが交差する部分に配置される。交差部R3は、第1レールR1に対してX方向に隣り合うと共に第2レールR2に対してY方向に隣り合っている。交差部R3は、第1レールR1と第2レールR2との接続、第1レールR1同士の接続、第2レールR2同士の接続をする接続軌道である。交差部R3は、搬送台車Vが第1レールR1に沿って走行する際と、搬送台車Vが第2レールR2に沿って走行する際と、搬送台車Vが第1レールR1から第2レールR2又は第2レールR2から第1レールR1に走行する際と、の何れの際にも用いられる軌道である。
【0027】
格子状レールRは、複数の第1レールR1と複数の第2レールR2とが直交する方向に設けられることで、平面視で複数のグリッドセル(セル)2が隣り合う状態となっている。1つのグリッドセル2は、1つのマス目に相当し、平面視において、Y方向に隣り合った2つの第1レールR1と、X方向に隣り合った2つの第2レールR2と、に囲まれた矩形領域である。なお、
図1では格子状レールRの一部について示しており、格子状レールRは、図示している構成からX方向及びY方向に同様の構成が連続して形成されている。
【0028】
第1レールR1、第2レールR2、及び交差部R3は、吊り下げ部材H(
図1参照)によって不図示の天井に吊り下げられている。吊り下げ部材Hは、第1レールR1を吊り下げるための第1部分H1と、第2レールR2を吊り下げるための第2部分H2と、交差部R3を吊り下げるための第3部分H3と、を有する。第1部分H1及び第2部分H2は、それぞれ第3部分H3を挟んだ二か所に設けられている。
【0029】
第1レールR1、第2レールR2、及び交差部R3は、それぞれ、搬送台車Vの後述する走行車輪21が走行する走行面R1a、R2a、R3aを有する。第1レールR1と交差部R3との間、及び、第2レールR2と交差部R3との間には、それぞれ間隙が形成される。第1レールR1と交差部R3との間、及び、第2レールR2と交差部R3との間の間隙は、搬送台車Vが第1レールR1を走行して第2レールR2を横切る際、あるいは第2レールR2を走行して第1レールR1を横切る際に、搬送台車Vの一部である後述の連結部30が通過する部分である。従って、第1レールR1と交差部R3との間、及び、第2レールR2と交差部R3との間の間隙は、連結部30が通過可能な幅に設けられている。第1レールR1、第2レールR2、及び交差部R3は、同一の水平面に沿って設けられる。本実施形態において、第1レールR1、第2レールR2、及び交差部R3は、走行面R1a、R2a、R3aが同一の水平面上に配置される。
【0030】
第1レールR1は、一方通行のレールである。隣接する一対の第1レールR1における走行可能な走行方向は、互いに異なっている。隣接する一対の第1レールR1のうち一方では、搬送台車Vの走行方向はX方向の一方側(-X方向又は+X方向の何れか一方)であり、隣接する一対の第1レールR1のうち他方では、X方向の他方向(-X方向又は+X方向の何れか他方)である。第2レールR2は、一方通行のレールである。隣接する一対の第2レールR2における走行可能な走行方向は、互いに異なっている。隣接する一対の第2レールR2のうち一方では、搬送台車Vの走行方向はY方向の他方側(-Y方向又は+Y方向の何れか一方)であり、隣接する一対の第1レールR1のうち他方では、X方向の他方向(-Y方向又は+Y方向の何れか他方)である。
【0031】
搬送システムSYSは、通信システム(図示せず)を備える。通信システムは、搬送台車V及びシステムコントローラ5の通信に用いられる。搬送台車V及びシステムコントローラ5は、それぞれ通信システムを介して通信可能に接続される。
【0032】
搬送台車Vの構成について説明する。
図2~
図4に示すように、搬送台車Vは、格子状レールRに沿って走行可能に設けられている。搬送台車Vは、本体部10と、走行部20と、連結部30と、台車コントローラ50とを有する。
【0033】
本体部10は、格子状レールRの下方(-Z方向側)に配置される。本体部10は、平面視で例えば矩形状に形成される。本体部10は、平面視で格子状レールRにおける1つのグリッドセル2(
図1参照)に収まる寸法に形成される。このため、隣り合う第1レールR1又は第2レールR2を走行する他の搬送台車Vとすれ違うスペースが確保される。本体部10は、上部ユニット17と、移載装置(移載部)18とを備える。上部ユニット17は、連結部30を介して走行部20から吊り下げられる。上部ユニット17は、例えば平面視で矩形状であり、上面17aに4つのコーナー部を有する。
【0034】
本体部10は、4つのコーナー部のそれぞれに走行車輪21、連結部30、方向転換機構34を有する。この構成において、本体部10の4つのコーナー部に配置された走行車輪21により、本体部10を安定して吊り下げることができ、且つ、本体部10を安定して走行させることができる。
【0035】
移載装置18は、走行部20に対して水平方向に沿って移動してロードポート(載置台)Pとの間で物品を移載する。移載装置18は、上部ユニット17の下方に設けられている。移載装置18は、Z方向の回転軸AX1まわりに回転可能である。移載装置18は、格子状レールRの下側で物品Mを保持する物品保持部13と、物品保持部13を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部14と、昇降駆動部14を水平方向にスライド移動させる横出し機構11と、横出し機構11を保持する回動部12と、を有する。ロードポートPは、搬送台車Vの移載先又は移載元であって、搬送台車Vとの間で物品Mの受け渡しをする地点である。
【0036】
物品保持部13は、物品Mのフランジ部Maを把持することにより、物品Mを吊り下げて保持する。物品保持部13は、例えば、水平方向に移動可能な爪部13aを有するチャックであり、爪部13aを物品Mのフランジ部Maの下方に進入させ、物品保持部13を上昇させることで、物品Mを保持する。物品保持部13は、ワイヤあるいはベルト等の吊り下げ部材13bに接続されている。
【0037】
昇降駆動部14は、例えばホイストであり、吊り下げ部材13bを繰り出すことにより物品保持部13を下降させ、吊り下げ部材13bを巻き取ることにより物品保持部13を上昇させる。昇降駆動部14は、台車コントローラ50に制御され、所定の速度で物品保持部13を下降あるいは上昇させる。また、昇降駆動部14は、台車コントローラ50に制御され、物品保持部13を目標の高さに保持する。
【0038】
横出し機構11は、例えばZ方向に重ねて配置された複数の可動板を有する。最下層の可動板には、昇降駆動部14が取り付けられている。横出し機構11では、水平面内において搬送台車Vの走行方向と直角な方向に可動板が移動し、最下層の可動板に取り付けられた昇降駆動部14及び物品保持部13が搬送台車Vの走行方向と直角な方向に横出し(スライド移動)する。
【0039】
回動部12は、横出し機構11と上部ユニット17との間に設けられる。回動部12は、回動部材12a及び回動駆動部12bを有する。回動部材12aは、Z方向の軸周り方向に回動可能に設けられる。回動部材12aは、横出し機構11を支持する。回動駆動部12bは、例えば電動モータ等が用いられ、回動部材12aを回転軸AX1の軸周り方向に回動させる。回動部12は、回動駆動部12bからの駆動力によって回動部材12aを回動させ、横出し機構11(昇降駆動部14及び物品保持部13)を回転軸AX1の軸周り方向に回転させることができる。搬送台車Vは、移載装置18を用いることにより、ロードポートPに対して物品Mの受け渡しをすることができる。
【0040】
図2及び
図3に示すように、搬送台車Vには、カバーWが設けられてもよい。カバーWは、移載装置18及び移載装置18に保持している物品Mを囲む。カバーWは、下端を開放した筒状であって、且つ、横出し機構11の可動板が突出する部分を切り欠いた形状を有している。カバーWは、上端が回動部12の回動部材12aに取り付けられており、回動部材12aの回動に伴って回転軸AX1の軸周りに回動する。
【0041】
走行部20は、走行車輪21及び補助車輪22を有する。走行車輪21は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ配置される。走行車輪21のそれぞれは、連結部30に設けられた車軸に取り付けられている。走行車輪21のそれぞれは、走行駆動部33の駆動力により回転駆動する。走行車輪21のそれぞれは、格子状レールR上を転動する。走行車輪21のそれぞれは、第1レールR1、第2レールR2、及び交差部R3の走行面R1a、R2a、R3aを転動し、搬送台車Vを走行させる。なお、4つの走行車輪21の全てが走行駆動部33の駆動力により回転駆動することに限定されず、4つの走行車輪21のうち一部について回転駆動させる構成であってもよい。
【0042】
走行車輪21は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられている。走行車輪21は、後述する方向転換機構34によってθZ方向に旋回し、その結果、搬送台車Vの走行方向を変更することができる。補助車輪22は、走行車輪21の走行方向の前後にそれぞれ1つずつ配置される。補助車輪22のそれぞれは、走行車輪21と同様に、XY平面に沿って平行又はほぼ平行な車軸の軸周りに回転可能である。補助車輪22の下端は、走行車輪21の下端より高くなるように設定されている。従って、走行車輪21が走行面R1a、R2a、R3aを走行しているときは、補助車輪22は、走行面R1a、R2a、R3aに接触しない。また、第1レールR1と交差部R3との間、及び、第2レールR2と交差部R3との間の間隙を走行車輪21が通過する際には、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、走行車輪21の落ち込みを抑制している。なお、1つの走行車輪21に2つの補助車輪22を設けることに限定されず、例えば、1つの走行車輪21に1つの補助車輪22が設けられてもよいし、補助車輪22が設けられなくてもよい。
【0043】
図2に示すように、連結部30は、本体部10の上部ユニット17と走行部20とを連結する。連結部30は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ設けられている。この連結部30によって本体部10は、走行部20から吊り下げられた状態となり、格子状レールRよりも下方に配置される。連結部30は、支持部材31及び接続部材32を有する。支持部材31は、走行車輪21の回転軸及び補助車輪22の回転軸を回転可能に支持する。支持部材31は、走行車輪21と補助車輪22との相対位置を保持する。支持部材31は、例えば板状に形成され、第1レールR1と交差部R3との間、及び、第2レールR2と交差部R3との間の間隙を通過可能な厚さに形成される。
【0044】
接続部材32は、支持部材31から下方に延びて上部ユニット17の上面17aに連結され、上部ユニット17を保持する。接続部材32は、後述する走行駆動部33の駆動力を走行車輪21に伝達する伝達機構を内部に備える。この伝達機構は、チェーン又はベルトが用いられる構成であってもよいし、歯車列が用いられる構成であってもよい。接続部材32は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。この接続部材32が旋回軸AX2を中心として旋回することで、支持部材31を介して走行車輪21を旋回軸AX2周りのθZ方向に旋回させることができる。
【0045】
連結部30(
図2参照)には、走行駆動部33及び方向転換機構34が設けられている。走行駆動部33は、接続部材32に装着される。走行駆動部33は、走行車輪21を駆動する駆動源であり、例えば電動モータ等が用いられる。4つの走行車輪21は、それぞれ走行駆動部33によって駆動されて駆動輪である。4つの走行車輪21は、同一の回転数となるように台車コントローラ50によって制御される。
【0046】
方向転換機構34は、連結部30の接続部材32を、旋回軸AX2を中心として旋回させることにより、走行車輪21を旋回軸AX2周りのθZ方向に旋回させる。走行車輪21をθZ方向に旋回させることにより、搬送台車Vの走行方向をX方向とする第1状態から走行方向をY方向とする第2状態に、又は走行方向をY方向とする第2状態から走行方向をX方向とする第1状態に切り替えることが可能である。方向転換機構34の旋回により、上面17aの4つのコーナー部に配置された走行車輪21及び補助車輪22のそれぞれが旋回軸AX2を中心としてθZ方向に90度の範囲で旋回する。方向転換機構34の駆動は、台車コントローラ50によって制御される。走行車輪21及び補助車輪22を旋回させることにより、走行車輪21が第1レールR1及び第2レールR2の一方に接触した状態から他方に接触した状態に移行する。このため、搬送台車Vの走行方向をX方向とする第1状態と、走行方向をY方向とする第2状態とで切り替えることができる。
【0047】
搬送台車Vは、位置情報を検出する位置検出部38を備える(
図4参照)。位置検出部38は、位置情報を示す位置マーカ(図示せず)を検出することにより、搬送台車Vの現在位置を検出する。位置検出部38は、非接触により位置マーカを検出する。位置マーカは、格子状レールRの各グリッドセル2毎に設置される。
【0048】
台車コントローラ50は、搬送台車Vを統括的に制御する。台車コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなるコンピュータである。台車コントローラ50は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。台車コントローラ50は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。台車コントローラ50は、一つの装置で構成されてもよいし、複数の装置で構成されてもよい。複数の装置で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの台車コントローラ50が構築される。台車コントローラ50は、本実施形態では本体部10に設けられる例を示すが(
図3参照)、本体部10の外部に設けられてもよい。
【0049】
台車コントローラ50は、搬送指令に基づいて、搬送台車Vの走行を制御する。台車コントローラ50は、走行駆動部33、方向転換機構34等を制御することにより、搬送台車Vの走行を制御する。台車コントローラ50は、例えば、走行速度、停止に関する動作、方向転換に関する動作を制御する。台車コントローラ50は、他の搬送台車Vのブロッキング領域(後述)には進入しないように搬送台車Vの走行を制御する。
【0050】
台車コントローラ50は、搬送指令に基づいて、搬送台車Vの移載動作を制御する。台車コントローラ50は、移載装置18等を制御することにより、搬送台車Vの移載動作を制御する。台車コントローラ50は、所定のロードポートPに配置される物品Mを把持する荷つかみの動作、保持した物品Mを所定のロードポートPに下ろす荷下ろしの動作を制御する。台車コントローラ50は、周期的に状態情報(図示せず)を生成し更新する。状態情報は記憶部51に格納される。台車コントローラ50は、状態情報をシステムコントローラ5に送信する。状態情報は、例えば、搬送台車Vの現在位置の情報、正常又は異常等の搬送台車Vの現在の状態を示す情報、搬送指令等の各種指令の搬送台車Vによる実行状態(実行中、実行完了、実行失敗)に関する情報である。台車コントローラ50は、物品Mの移載の際に、後述のブロッキング領域の占有許可を求める領域占有要求をシステムコントローラ5に送信する。台車コントローラ50は、物品Mの移載完了後に、ブロッキング領域の占有解除を求める領域解除要求をシステムコントローラ5に送信する。
【0051】
システムコントローラ5は、CPU、ROM及びRAM等からなるコンピュータである。システムコントローラ5は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。システムコントローラ5は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。システムコントローラ5は、一つの装置で構成されてもよいし、複数の装置で構成されてもよい。複数の装置で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのシステムコントローラ5が構築される。
【0052】
システムコントローラ5は、物品Mを搬送可能な複数の搬送台車Vのうちの何れかを選択し、選択した搬送台車Vに搬送指令を割付ける。搬送指令は、搬送台車VのロードポートPまでの走行を実行させる走行指令と、ロードポートPに配置された物品Mの荷つかみ指令又は保持している物品MのロードポートPへの荷下ろし指令と、を含む。
【0053】
システムコントローラ5は、搬送台車Vにより物品MをロードポートPとの間で移載させる移載時には、ブロッキング領域へ当該搬送台車V以外の他の搬送台車Vが進入することを禁止する排他制御であるブロッキング制御を行う。これにより、他の搬送台車Vは、占有許可が与えられていないブロッキング領域に進入しないように走行が制御され、例えば当該ブロッキング領域の手前で待機する。システムコントローラ5は、例えば台車コントローラ50からの領域占有許可要求に応じて、ブロッキング制御を開始し、搬送台車Vに当該ブロッキング領域の占有許可を与える。システムコントローラ5は、例えば台車コントローラ50からの領域解除要求に応じて、ブロッキング制御(当該ブロッキング領域の占有)を解除する。
【0054】
ブロッキング領域について、詳説する。
図5に示すように、ブロッキング領域3は、平面視において物品Mの移載の際に当該搬送台車Vに占有される領域に対応する。ブロッキング領域3は、格子状レールRのマス目に対応するグリッドセル2単位で区画される。ブロッキング領域3の面積の大小は、ブロッキング領域3を区画するグリッドセル2の数の大小に対応する。ブロッキング領域3の面積は、平面視におけるブロッキング領域3の面積である。本実施形態のブロッキング制御では、構成上、3パターンのブロッキング領域3が存在し得る。
【0055】
例えば
図5(a)に示す例では、Y方向を走行方向とする搬送台車Vは、移載時に、平面視において走行部20から移載装置18がX方向にはみ出し、走行部20のグリッドセル2に隣接するグリッドセル2に移載装置18が進入している。この場合には、ブロッキング領域3は、平面視にて走行部20及び移載装置18を囲む四つのグリッドセル2により構成される。ブロッキング領域3のブロッキング数(面積に関する情報)は、グリッドセル2単位で「4」となる。なお、搬送台車V上に図示する三角形の向きが、搬送台車Vの走行方向を示す(以下の図で同じ)。
【0056】
例えば
図5(b)に示す例では、Y方向を走行方向とする搬送台車Vは、移載時に、平面視において走行部20が、Y方向に隣接する二つのグリッドセル2を跨ぐように位置している。移載時に、平面視において移載装置18が走行部20からはみ出していない。この場合には、ブロッキング領域3は、平面視にて当該2つのグリッドセル2により構成される。ブロッキング領域3のブロッキング数は、グリッドセル2単位で「2」となる。
【0057】
例えば
図5(c)に示す例では、Y方向を走行方向とする搬送台車Vは、移載時に、平面視において走行部20が、1つのグリッドセル2に位置している。移載時に、平面視において移載装置18が走行部20からはみ出していない。この場合には、ブロッキング領域3は、平面視にて当該1つのグリッドセル2により構成される。ブロッキング領域3のブロッキング数は、グリッドセル2単位で「1」となる。
【0058】
このようなブロッキング領域3のブロッキング数は、ロードポートPの中心(以下、単に「ロードポートP」という)の位置と当該ロードポートPへのアクセス方向との関係で変化する。ロードポートPへのアクセス方向(以下、単に「アクセス方向」という)は、ロードポートPへの移載時に、当該ロードポートPが存在するグリッドセル2へアクセス(進入)するときの搬送台車Vの走行方向である。アクセス方向は、格子状レールRでは、X方向及びY方向の何れか一方である。
【0059】
アクセス方向とブロッキング領域3との関係について詳説する。
図6に示すように、ロードポートP(
図7等参照)が存在する位置に関して、一つのグリッドセル2は、平面視で四つの領域A、領域B、領域C及び領域Dに区画される。
【0060】
領域Aは、グリッドセル2における中央の矩形領域である。領域AにロードポートPが存在する確率は、領域B~DにロードポートPが存在する確率よりも低く、例えば16%である。ある領域にロードポートPが存在する確率は当該領域の面積に比例する。領域AにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「2」である。領域AにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、アクセス方向がY方向のときのそれと等しく、「2」である。
【0061】
領域Bは、グリッドセル2において領域Aに対してY方向の一方側及び他方側に隣接する矩形領域である。領域BにロードポートPが存在する確率は、領域DにロードポートPが存在する確率よりも低く、領域CにロードポートPが存在する確率と等しく、領域AにロードポートPが存在する確率よりも高く、例えば24%である。領域BにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「2」である。領域BにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、アクセス方向がY方向のときのそれよりも多く、「4」である。
【0062】
領域Cは、グリッドセル2において領域Aに対してX方向の一方側及び他方側に隣接する矩形領域である。領域CにロードポートPが存在する確率は、領域DにロードポートPが存在する確率よりも低く、領域BにロードポートPが存在する確率と等しく、領域AにロードポートPが存在する確率よりも高く、例えば24%である。領域CにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「4」である。領域CにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、アクセス方向がY方向のときのそれよりも少なく、「2」である。
【0063】
領域Dは、グリッドセル2において領域Cに対してY方向の一方側及び他方側(領域Bに対してX方向の一方側及び他方側)に隣接する領域である。領域DにロードポートPが存在する確率は、領域A、領域B及び領域CにロードポートPが存在する確率よりも高く、例えば36%である。領域DにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「4」である。領域DにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「4」である。
【0064】
なお、領域A~Dの形状及びサイズは、物品Mのサイズ、搬送台車Vのサイズ、グリッドセル2のサイズ(マス目サイズ)、ブロッキング領域3のサイズ、横出し機構11のサイズ、及び移載装置18のサイズの少なくとも何れかに依存する。本実施形態における領域A~Dの形状及びサイズは一例であり、これに限られない。
【0065】
例えば
図7(a)に示すように、領域BにロードポートPが存在している場合、アクセス方向がY方向のとき、搬送台車Vは、その走行部20がY方向に隣接する二つのグリッドセル2を跨ぐように位置する。このとき、搬送台車Vは、当該二つのグリッドセル2を含む領域4を占有する。
図7(b)に示すように、移載時には、移載装置18がX方向に移動するが、平面視において移載装置18は走行部20からはみ出していない。よって、搬送台車Vは、引き続き当該二つのグリッドセル2を含む領域4を占有する。すなわち、領域BにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がY方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「2」となる。
【0066】
一方、例えば
図8に示すように、領域BにロードポートPが存在している場合、アクセス方向がX方向のとき、搬送台車Vは、その走行部20がX方向に隣接する二つのグリッドセル2を跨ぐように位置する。このとき、搬送台車Vは、当該二つのグリッドセル2を含む領域4を占有する。
図9に示すように、移載時には、移載装置18がX方向に移動し、平面視において移載装置18は走行部20からY方向にはみ出し、移載装置18はY方向に隣接するグリッドセル2へ進入する。よって、搬送台車Vは、当該二つのグリッドセル2と、当該二つのグリッドセル2にY方向に隣接する更に二つのグリッドセル2と、を含む領域4を占有する。すなわち、領域BにロードポートPが存在する場合、アクセス方向がX方向のときのブロッキング領域3のブロッキング数は、「4」となる。なお、
図9の右上のグリッドセル2は、搬送台車Vによって物理的に占有されていないが、搬送台車Vによって物理的に占有される2つのグリッドセル2に隣接する。そのため、台車走行の安全性を考慮して右上のグリッドセル2がブロッキング領域3に含まれる。
【0067】
図4に戻り、システムコントローラ5には、複数のロードポートPと、ロードポートPへの複数のアクセス方向毎に定められブロッキング領域3の面積に関する情報と、ロードポートPの並設方向と、が互いに関連付けられたマップが記憶されている。例えば
図10に示されるように、システムコントローラ5に記憶されたマップMPは、複数のロードポートPの「ポート番号」毎に、「アクセス方向がY方向の場合のブロッキング制御のブロッキング数」と「アクセス方向がX方向の場合のブロッキング制御のブロッキング数」と「ロードポートPの並設方向」と、が設定されて成る。
【0068】
ポート番号は、複数のロードポートP毎に設定された識別用の番号である。ブロッキング数は、上述したアクセス方向とブロッキング領域3との関係に基づき、予め求められて設定されている。ロードポートPの並設方向(所定の並設方向)は、例えば一定距離未満の間隔で並ぶ複数のロードポートPの並ぶ方向である。例えば
図11に示すように、一定距離未満の間隔でY方向に並ぶ複数のロードポートPについては、並設方向はY方向となる。例えば一定距離以上互いに離れたロードポートPについては、並設方向は無しとなる。例えばX方向でもY方向でもない方向に並設されているロードポートPについては、並設方向は無しとなる。なお、マップMPには、ブロッキング数に加えて、そのブロッキング領域3を構成するグリッドセル2の番号(識別子)が含まれていてもよい。
【0069】
システムコントローラ5は、搬送台車Vにより物品MをロードポートPとの間で移載させる場合、マップMPを用いて、搬送台車VがロードポートPへアクセスする際のアクセス方向を決定する。具体的には、システムコントローラ5は、搬送台車Vにより物品MをロードポートPとの間で移載させる場合において、マップMPを用いて、ブロッキング領域3のブロッキング数(ブロッキング領域3の面積)が最も小さくなるアクセス方向を第1の方向として決定する。
【0070】
このとき、マップMPにおいて、ブロッキング数が最も小さくなるアクセス方向が複数存在する場合、これらのアクセス方向のうちロードポートPの並設方向に最も沿う何れかを、第1の方向として決定する。或いは、ブロッキング数が最も小さくなるアクセス方向が複数存在し且つロードポートPの並設方向が無しの場合には、ブロッキング数が最も小さくなるアクセス方向のうち、ロードポートPとの間で物品Mを移載可能な位置へ搬送台車Vが到達するまでの到達時間が最も短い何れかを、第1の方向として決定する。以下、ロードポートPとの間で物品Mを移載可能な位置を「移載位置」と称し、移載位置へ搬送台車Vが到達するまでにかかる到達時間を単に「到達時間」とも称する。ロードポートPへアクセスする経路がアクティブな(つまり、セルダウン等で通行不能になっていない)アクセス方向のみが、システムコントローラ5において第1の方向を決定する際の選択肢になる。
【0071】
例えば、システムコントローラ5は、アクセスするロードポートPのポート番号を搬送指令に基づき取得する。システムコントローラ5は、マップMPを参照し、取得したポート番号に係るブロッキング数を、アクセス方向がX方向及びY方向のときのそれぞれでマップMPから取得する。また、システムコントローラ5は、マップMPを参照し、取得したポート番号に係るロードポートPの並設方向を取得する。システムコントローラ5は、X方向及びY方向のうちブロッキング数が小さい一方を第1の方向に決定し、X方向及びY方向のブロッキング数が同じ場合には、X方向及びY方向のうちロードポートPの並設方向に一致する一方を第1の方向に決定し、X方向及びY方向のブロッキング数が同じで且つロードポートPの並設方向が無しの場合には、X方向及びY方向のうち到達時間が最も短い何れか一方を第1の方向に決定する。
【0072】
そして、システムコントローラ5は、決定した第1の方向からロードポートPへアクセスする経路を生成し、この経路に沿って搬送台車Vを走行させる。その結果、搬送台車Vは、当該ロードポートPへ第1の方向からアクセスする経路に沿って走行する。経路は、例えば、通過予定の複数のグリッドセル2により表すことができる。経路は、搬送台車Vの占有許可が与えられていないブロッキング領域3(他の搬送台車Vのブロッキング領域3)に進入しないように生成される。
【0073】
ここで、搬送台車Vが第1の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数(面積)は、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数よりも小さい、又は、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数と等しい。第1の方向は、第2の方向と直角な方向である。第1の方向は、X方向及びY方向の何れか一方であり、第2の方向は、X方向及びY方向の何れか他方である。
【0074】
また、第1の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数が第2の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数と等しい場合、第1の方向は、第2の方向よりもロードポートPの並設方向に沿う方向である。第1の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数が第2の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数と等しく且つロードポートPに並設方向が存在しない場合、搬送台車Vが第1の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間は、搬送台車Vが第2の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間よりも短い。
【0075】
また、第1の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数が第2の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数よりも小さい場合において、アクセス方向が第1の方向である場合は、平面視で移載時に走行部20から移載装置18がはみ出さない。第1の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数が第2の方向をアクセス方向とするときのブロッキング数よりも小さい場合において、アクセス方向が第2の方向の場合は、平面視で移載時に走行部20から移載装置18がはみ出す。
【0076】
また、搬送台車Vは、上述したようにアクセス方向を第1の方向とすることで、物品Mの移載時に移載装置18を移動させた際に走行部20が占有するグリッドセル2に隣接する他のグリッドセル2に当該移載装置18がはみ出さないアクセス方向からロードポートPへのアクセスを実現する(
図7(b)参照)。換言すると、搬送台車Vは、物品Mの移載時に他のグリッドセル2に移載装置18がはみ出さないアクセス方向である第1の方向が存在する場合、当該第1の方向からロードポートPへのアクセスを実現する。なお、上述したシステムコントローラ5の各種の制御は、その少なくとも一部を台車コントローラ50で実行してもよい。
【0077】
次に、搬送システムSYSにおいて、搬送台車Vにより物品Mを移載する際にロードポートPへアクセスする場合の例を説明する。
【0078】
図12は、搬送システムSYSの動作例を説明するための平面図である。
図12に示すように、システムコントローラ5は、マップMPを用いて、アクセスするロードポートPのポート番号から、アクセス方向がX方向のときブロッキング数とアクセス方向がY方向のときのブロッキング数とを取得する。アクセス方向がX方向のときブロッキング数は2であり、アクセス方向がY方向のときブロッキング数は4である。よって、システムコントローラ5は、X方向を第1の方向へ決定し、第1の方向からロードポートPへアクセスする経路で走行する走行指令を含む搬送指令を、搬送台車Vに割り付ける。
【0079】
その結果、搬送指令が割り付けられた搬送台車Vは、第1の方向からロードポートPへアクセスする当該経路に沿ってロードポートPに向かって走行する。なお、
図12に示す例では、搬送台車Vが第1の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間は、搬送台車Vが第2の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間よりも長い。
【0080】
以上、搬送システムSYSでは、搬送台車Vは、物品MをロードポートPとの間で移載する場合、当該ロードポートPへ第1の方向からアクセスする。搬送台車Vが第1の方向からアクセスするときのブロッキング領域3の面積は、第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング領域3の面積以下である。これにより、搬送台車Vは、物品Mを移載する際に、ブロッキング領域3の面積が大きくならないようにしてロードポートPへアクセスすることができる。搬送台車Vが物品Mを移載する際に、ブロッキング領域3の面積が大きくなることを抑制することができる。そのため、他の搬送台車Vの走行が妨害されにくくなる。したがって、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0081】
搬送システムSYSでは、搬送台車Vは、平面視で格子状に配置された格子状レールRに沿って走行可能に設けられている。第1の方向は、第2の方向と直角な方向であり、ブロッキング領域3は、格子状レールRのマス目に対応するグリッドセル2単位で区画されている。ブロッキング領域3の面積の大小は、ブロッキング領域3を区画するグリッドセル2の数の大小に対応する。この場合、平面視で格子状に配置された格子状レールRに沿って搬送台車Vが走行するシステムにおいて、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0082】
搬送システムSYSは、水平方向に沿って延び且つ吊り下げられた格子状レールRを走行路として備える。走行部20は、格子状レールR上を転動する走行車輪21を有する。移載装置18は、格子状レールRの下側で物品Mを保持する物品保持部13を有する。この場合、いわゆるグリッドシステムにおいて、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0083】
搬送システムSYSでは、システムコントローラ5にはマップMPが記憶されており、システムコントローラ5は、マップMPを用いて、ブロッキング領域3の面積が最も小さくなるアクセス方向を第1の方向として決定する。これにより、物品Mを移載する際のブロッキング領域3の面積を、効率よく最小化することができる。
【0084】
搬送システムSYSでは、搬送台車Vの移載装置18は、水平面内において搬送台車Vの走行方向と直角な方向に走行部20に対して移動する。搬送台車Vが第1の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング領域3の面積が、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング領域3の面積よりも小さい場合、次のことがいえる。すなわち、搬送台車Vが第1の方向からロードポートPへアクセスする場合は、平面視において物品Mの移載時に走行部20から移載装置18部がはみ出さない。また、搬送台車Vが第2の方向からロードポートPへアクセスする場合は、平面視において物品Mの移載時に走行部20から移載装置18がはみ出す。これにより、このような構成の搬送システムSYSにおいて、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0085】
搬送システムSYSでは、搬送台車Vが第1の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数が、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数と等しい場合、第1の方向は、第2の方向よりも、ロードポートPの並設方向に沿う方向である。これにより、搬送台車Vが物品Mを移載する際のロードポートPへのアクセスにおいて、ロードポートPの並設方向の優先度を高めることができる。つまり、ロードポートPへのアクセス方向の決定に際し、ブロッキング数の最小化を最優先とし、次にロードポートPの並びを優先させることができる。そのため、例えば並設されたロードポートP間の物品Mの移動をスムーズに行うことができ、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0086】
搬送システムSYSでは、ロードポートPの並設方向が存在しない場合、搬送台車Vが第1の方向から当該ロードポートPへアクセスするときの到達時間は、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートへアクセスするときの到達時間よりも短い。これにより、搬送台車Vが物品Mを移載する際のロードポートPへのアクセスにおいて、移載位置への到達時間の優先度を高めることができる。つまり、つまり、ロードポートPへのアクセス方向の決定に際し、ブロッキング数の最小化を最優先とし、次にロードポートPの並びを優先させ、次に移載位置への到達時間を優先させることができる。搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0087】
搬送システムSYSでは、搬送台車Vが第1の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間が、搬送台車Vが第2の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間よりも長くなる場合がある。この場合には、搬送台車Vは、物品Mを移載する際に、到達時間は長くてもブロッキング領域3の面積が小さくなるようにして、ロードポートPへアクセスすることができる。
【0088】
搬送システムSYSは、グリッドシステムである。グリッドシステムとしての搬送システムSYSにおいて、搬送台車Vが物品Mを移載する際に、ブロッキング数が大きくなることを抑制することができる。他の搬送台車Vの走行が妨害されにくくなり、搬送台車Vの搬送効率を向上させることが可能となる。
【0089】
図13は、搬送システムSYSの他の動作例を説明するための平面図である。
図13に示す例では、ロードポートPの周辺に複数の搬送台車V(第1搬送台車V1及び第2搬送台車V2)が存在する場合の動作例を示す。
【0090】
図13に示すように、システムコントローラ5は、マップMPを用いて、アクセスするロードポートPのポート番号から、アクセス方向がX方向のときブロッキング数とアクセス方向がY方向のときのブロッキング数とを取得する。アクセス方向がX方向のときブロッキング数は4であり、アクセス方向がY方向のときブロッキング数は2である。よって、システムコントローラ5は、Y方向を第1の方向へ決定する。
【0091】
ここで、第1搬送台車V1が第1の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間は、第2搬送台車V2が第1の方向からロードポートPへアクセスする到達時間よりも小さい。よって、システムコントローラ5は、第1の方向からロードポートPへアクセスする経路で走行する走行指令を含む搬送指令を、第1搬送台車V1に割り付ける。その結果、搬送指令が割り付けられた第1搬送台車V1は、第1の方向からロードポートPへアクセスする当該経路に沿ってロードポートPに向かって走行する。
【0092】
このように搬送システムSYSでは、システムコントローラ5は、複数の搬送台車Vのうち、第1の方向からロードポートPへアクセスする場合において到達時間が最も短い何れかの搬送台車Vに対して指令を送信する。これにより、搬送台車Vの搬送効率が向上させることが可能となる。
【0093】
以上に説明した搬送システムSYSに関してシミュレーションを行い、搬送台車Vの搬送効率を検証した。シミュレーションでは、ロードポートPへのアクセス方向の決定に際し、ブロッキング数の最小化を最優先とする搬送システムSYSに対応するモデルを実施例とし、移載位置への到達時間の最短化を最優先とするモデルを比較例1とし、アクセス方向をランダムとするモデルを比較例2とした。シミュレーションでは、搬送台車Vの台数を120台~200台とした。シミュレーションの結果、搬送達成率、搬送時間(平均値及び分散値)及び台車稼働率の全てにおいて実施例が最も優れた結果になり、搬送台車Vの搬送効率を向上させるという搬送システムSYSの上記効果を確認することができた。
【0094】
以上、実施形態について説明したが、本発明の一態様は、上記実施形態に限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
上記実施形態の搬送システムSYSでは、システムコントローラ5は、搬送台車VによってアクセスされるロードポートPを決定した後に、ロードポートPへの複数のアクセス方向毎にブロッキング数(ブロッキング領域3の面積に関する情報)を演算し、演算結果に基づいてブロッキング数が最も小さくなるアクセス方向を第1の方向として決定してもよい。この場合、搬送台車VがロードポートPへアクセスする都度にブロッキング数を演算して第1の方向を決定することから、搬送台車Vの走行環境等が何らかの理由で当初から一時的に変化したような状況が発生しても、物品Mを移載する際のブロッキング領域3の面積を、当該状況に応じて確実に最小化することができる。
【0096】
上記実施形態では、搬送台車Vが第1の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数が、搬送台車Vが第2の方向から当該ロードポートPへアクセスするときのブロッキング数と等しい場合、ロードポートPの並設方向にかかわらず、次のように構成されていてもよい。すなわち、搬送台車Vが第1の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間が、搬送台車Vが第2の方向からロードポートPへアクセスするときの到達時間よりも短くてもよい。この場合、例えばシステムコントローラ5は、ブロッキング数が最も小さくなる複数のアクセス方向のうち到達時間が最も短い何れかを、第1の方向として決定する。これにより、搬送台車Vが物品Mを移載する際のロードポートPへのアクセスにおいて、移載位置への到達時間の優先度を高めることができる。換言すると、ロードポートPへのアクセス方向の決定に際し、ブロッキング数の最小化を最優先とし、その次に移載位置への到達時間を優先させることができる。
【0097】
上記実施形態では、搬送システムSYSとしてグリッドシステムを採用したが、搬送システムSYSはグリッドシステムに限定されない。例えば搬送システムとして、AGV(Automated Guided Vehicle)を採用してもよいし、格子状の走行路を走行する種々の公知のシステムを採用してもよい。上記実施形態では、搬送台車Vは格子状レールRの下側で物品Mを保持したが、本体部10が格子状レールRの上方に配置され、格子状レールRの上側で物品Mを保持してもよい。
【0098】
上記実施形態では、ブロッキング領域3の面積としてブロッキング数を用いているが、ブロッキング数に限定されず、ブロッキング領域3の面積を直接用いてもよいし、ブロッキング領域3の面積に関する他のパラメータを用いてもよい。上記実施形態の「等しい」は、設計上ないし製造上等の誤差を許容する。
【符号の説明】
【0099】
2…グリッドセル(セル)、3…ブロッキング領域、5…システムコントローラ(コントローラ)、13…物品保持部、18…移載装置(移載部)、20…走行部、21…走行車輪、M…物品、MP…マップ、P…ロードポート(載置台)、R…格子状レール(走行路)、SYS…搬送システム(グリッドシステム)、V,V1,V2,Vn…搬送台車。