(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】通信品質を予測するシステム、装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20230920BHJP
【FI】
H04W16/18
(21)【出願番号】P 2022502350
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007363
(87)【国際公開番号】W WO2021171342
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 馨子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃平
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-323620(JP,A)
【文献】特開2019-208188(JP,A)
【文献】特開2018-148297(JP,A)
【文献】特開2018-006844(JP,A)
【文献】工藤理一,ほか,視覚情報を用いたマイクロ波帯通信品質予測の実験的検討,電子情報通信学会2019年通信ソサイエティ大会講演論文集1,日本,2019年08月27日,第324ページ
【文献】今川 隼人,ほか,ストリートセルにおける遮蔽物体が伝搬損失に及ぼす影響,電子情報通信学会2015年通信ソサイエティ大会講演論文集1,日本,2015年08月25日,第11ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用い
て前記通信装置の周囲に存在する
物体の移動速度を含むオブジェクト状態情報を生成するオブジェクト判定部と、
前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成された
前記オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び
前記通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する入力配列作成部と、
前記オブジェクト状態情報及び
前記通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質予測モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する通信品質予測部と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記通信品質予測用カテゴリに分類する前記オブジェクト状態情報を、通信品質への影響ごとに定義する通信品質予測用カテゴリ定義部をさらに備え、
前記オブジェクト状態情報は、物体を構成している素材、動作条件、検出位置、出現頻度の少なくともいずれかを含み、
前記通信品質予測用カテゴリ定義部は、前記オブジェクト判定部で検出された物体を構成している素材、動作条件、検出位置、出現頻度の少なくともいずれかを用いて、前記通信品質予測用カテゴリを定義する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記通信品質予測用カテゴリ定義部は、
前記通信品質予測用カテゴリに分類された物体の種類が適切であるか判定するため、複数の
前記通信品質予測用カテゴリに当該物体の種類を仮に分類し、通信品質の予測精度を評価し、通信品質の予測精度が高くなるように、
前記通信品質予測用カテゴリを更新する、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記オブジェクト判定部において他の物体の種類と誤判定しやすい物体が前記オブジェクト状態情報に含まれている場合、前記入力配列作成部は、前記オブジェクト状態情報に含まれている前記物体に対応する
前記通信品質予測用カテゴリと、前記物体に誤判定されやすい前記他の物体に対応する
前記通信品質予測用カテゴリと、の両方に分類する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する
物体の移動速度を含むオブジェクト状態情報を生成するオブジェクト判定部と、
前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成された
前記オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び
前記通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する入力配列作成部と、
前記オブジェクト状態情報及び
前記通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質予測モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する通信品質予測部と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する
物体の移動速度
を含むオブジェクト状態情報を生成するオブジェクト判定部と、
前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成された
前記オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び
前記通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する入力配列作成部と、
前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力データに用い、前記入力配列データセットと通信品質との関係を機械学習により学習し、通信品質予測モデルを生成するモデル学習部と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項7】
周辺環境情報収集部が、無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得し、
オブジェクト判定部が、前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する
物体の移動速度
を含むオブジェクト状態情報を生成し、
入力配列作成部が、前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成された
前記オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び
前記通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成し、
通信品質予測部が、
前記オブジェクト状態情報及び
前記通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質予測モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
周辺環境情報収集部が、無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得し、
オブジェクト判定部が、前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する
物体の移動速度
を含むオブジェクト状態情報を生成し、
入力配列作成部が、前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成された
前記オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び
前記通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成し、
前記オブジェクト状態情報及び
前記通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質予測モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する、
ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境情報を用いた無線通信品質の予測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能が搭載されたデバイス(通信装置)を使用する際、その周辺環境の変化(周辺に存在するオブジェクトの移動など)に伴って通信品質も変化する可能性があり、当該デバイスのサービスやシステムが要求する通信品質を満たせない要因となる。例えば、IEEE802.11adやセルラー通信の5Gでは、ミリメータ帯の高い周波数を用いるため、無線通信を行う送受の間の遮蔽物によるブロッキングが大きな問題となる。ミリ波だけでなく、それ以外の周波数の無線通信であっても、遮蔽物によるブロッキングや、反射物の動きによる伝搬環境の変化は通信品質に影響を及ぼす。それ以外にも、反射物が動くことによって生じるドップラーシフトも通信に影響を与える。
【0003】
あらかじめ通信品質を予測することで、サービスやシステムが影響を受ける前に対策がとれる可能性がある。また、通信品質を予測するモデルを作成する際、周辺に存在するオブジェクトの動作や素材などにより通信品質への影響が変わる点を考慮する必要がある。
【0004】
非特許文献1では、オブジェクト通過によるミリ波通信の無線通信路遮蔽時における通信品質の予測を深度カメラを用いて行なっている。非特許文献1では、対象となるオブジェクトが人のみであり、その動きも一定であるため、材質などが異なる複数種類のオブジェクトが不規則に動作する場合については示されていない。また複数種類のオブジェクト情報からデータセットを作成する手法による予測精度への効果には言及されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】T. Nishio, H. Okamoto, K. Nakashima, Y. Koda, K. Yamamoto, M. Morikura, Y. Asai, and R. Miyatake, “Proactive Received Power Prediction Using Machine Learning and Depth Images for mmWave Networks,” IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 37, no. 11, pp. 2413-2427, Nov. 2019.doi: 10.1109/JSAC.2019.2933763.
【文献】J. Redmon, A. Farhadi, “YOLOv3: An Incremental Improvement, ”, CoRR, 2018.
【文献】J. Redmon, A. Farhadi, “YOLOv3: An Incremental Improvement, ”, CoRR, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、環境変動による通信品質の変化に対応できるよう、将来の通信品質を予測可能な通信システム及び端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のシステムは、
無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する物体の種類、位置、速度、状態のうち少なくとも一つを含むオブジェクト状態情報を生成するオブジェクト判定部と、
前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成されたオブジェクト状態情報の少なくとも一部及び通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する入力配列作成部と、
物体の種類、位置、速度、状態のうち少なくとも一つを含むオブジェクト状態情報及び通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する通信品質予測部と、
を備える。
【0008】
ここで、本開示に係るシステムに備わる各機能部は、同じ装置に備わっていてよいし、異なる装置に備わっていてもよい。すなわち、本開示に係るシステムは、周辺環境情報収集部、オブジェクト判定部、入力配列作成部及び通信品質予測部を備える装置を含む。
【0009】
本開示に係る方法は、
周辺環境情報収集部が、無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得し、
オブジェクト判定部が、前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する物体の種類、位置、速度、状態のうち少なくとも一つを含むオブジェクト状態情報を生成し、
入力配列作成部が、前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成されたオブジェクト状態情報の少なくとも一部及び通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成し、
通信品質予測部が、物体の種類、位置、速度、状態のうち少なくとも一つを含むオブジェクト状態情報及び通信品質予測用カテゴリと通信品質との関係を機械学習により学習して得られた通信品質モデルに、前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力し、前記通信装置の現在又は未来の通信品質を予測する。
【0010】
本開示に係る装置は、
無線通信を行う通信装置の周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて、前記通信装置の周囲に存在する物体の種類、位置、速度、状態のうち少なくとも一つを含むオブジェクト状態情報を生成するオブジェクト判定部と、
前記オブジェクト状態情報を無線通信の通信品質への影響に応じて予め分類された通信品質予測用カテゴリに分類し、前記オブジェクト判定部で生成されたオブジェクト状態情報の少なくとも一部及び通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する入力配列作成部と、
前記入力配列作成部で生成された入力配列データセットを入力データに用い、前記入力配列データセットと通信品質との関係を機械学習により学習し、通信品質モデルを生成するモデル学習部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本開示に係るプログラムは、本開示に係る装置に備わる各機能部としてコンピュータを機能させる。また本開示に係る方法に備わる各ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、通信環境に応じて通信品質に影響を及ぼすオブジェクトの個体の特徴(動き、素材等)を考慮したオブジェクトの分類を行って学習および予測を行うことにより、将来の通信品質を予測可能にし、これによって環境変動による通信品質の変化に対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本開示に係る通信品質予測システムの処理フローの一例を示す。
【
図4】トラッキングを行う場合のオブジェクト状態情報の一例を示す。
【
図5】トラッキングを行わない場合のオブジェクト状態情報の一例を示す。
【
図7】通信品質予測用カテゴリに分ける効果の一例を示す。
【
図8】本開示に係る通信品質予測システムの構成の一例を示す。
【
図13】屋外におけるスループット予測実験の説明図である。
【
図14】スループット予測実験で得られた映像の取得例を示す。
【
図15】スループット予測実験で用いた実験諸元を示す。
【
図16】周辺環境情報からのオブジェクト状態情報の取得例を示す。
【
図17】スループット予測実験で得られたオブジェクト状態情報の一例を示す。
【
図18】映像に含まれる4つのフレームからのオブジェクト状態情報の取得例を示す。
【
図19】スループット予測実験で用いた通信品質予測用カテゴリを示す。
【
図20】通信品質予測用カテゴリごとに並べ替えたデータセットの一例を示す。
【
図25】通信品質予測用カテゴリとして、bus,truck,vehicle,personを設定した場合の予測結果例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0015】
本開示は、2つ以上の通信装置間で無線通信を行う通信システムを想定する。例えば、本開示に係る通信品質予測システムは、無線通信を行う2以上の通信装置を備える。本開示は、無線通信を行う通信システムにおいて、環境変動による通信品質の変化に対応できるよう、将来の通信品質を予測可能にする。
【0016】
無線通信システムとしては、IEEE802.11で規定される無線LAN、Wigig(登録商標)、IEEE802.11p、ITS用通信規格、LTEや5Gなどのセルラー通信、LPWA(Low Power Wide Area)などの無線通信、ないし音波、電気、光による通信を用いることができる。
【0017】
端末とは、端末の移動や動作などの制御、端末の構成物の制御、及び端末の通信の制御、のいずれかが可能なハードウェアであり、例えば、自動車、大型移動車、小型移動車、鉱山・建設機械、ドローンなどの飛行移動体、2輪車、車いす、ロボットが想定される。
【0018】
通信品質とは、通信装置内に有する通信部の少なくとも1つが、外部の通信装置と無線で通信する際の品質に関連する指標である。受信電力、RSSI(Received Signal Strength Indicato)、RSRQ(Referesnce Singnal Received Quality)、SNR(Signal to noise ratio)、SINR(Signal to interference noise ratio)、パケットロス率、データレート、アプリケーション品質、およびそれらの増減に関する指標や、それらの2つ以上を線形演算などにより組み合わせた指標など、QoE(Qualitybof experience)に関連する指標を用いることができる。
【0019】
図1に、本開示に係る通信装置の一例を示す。通信装置1は、無線通信を行う通信部1-1を備える。通信部1-1は、ダウンリンク(基地局からモバイル端末への送信)、アップリンク(モバイル端末から基地局への送信)、サイドリンク(モバイル端末からモバイル端末への送信)が想定され、いずれの通信でも適用可能である。また、本開示に係る通信装置1は、基地局であっても、モバイル端末であってもいずれでもよい。
【0020】
通信装置1は、情報処理部及び装置ネットワーク1-0を備える。情報処理部は、周辺環境情報収集部1-2、オブジェクト判定部1-5、入力配列作成部27、通信品質予測部32、通信装置管理部1-3を備える。情報処理部は、後述するデータ収集部、学習部1-6及び予測部1-7に備わる任意の機能を備えていてもよい。また、情報処理部に備わる各機能部は、装置ネットワーク1-0で互いに接続されうる。情報処理部に備わる各機能部は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0021】
本開示に係る通信装置1は、ダウンリンクまたはアップリンクの通信品質を予測する基地局であった場合には、通信装置管理部1-3は、通信相手となる外部の通信装置であるモバイル端末の位置などの通信装置状態情報を、通信部1-0を介して取得し生成する。
【0022】
本開示に係る通信装置1がダウンリンクまたはアップリンクの通信品質を予測するモバイル端末であった場合には、通信装置管理部1-3は、自通信装置の通信装置状態情報を生成する。この場合、通信装置1は、通信相手となる基地局の位置やアンテナ条件などの情報を、通信部1-1を介して収集し、通信装置管理部1-3で生成してもよい。
【0023】
本開示に係る通信装置1が、サイドリンクの通信品質を予測する基地局であった場合には、通信装置管理部1-3は、通信相手となる外部の通信装置であるモバイル端末の端末情報を、通信部53を介して取得するとともに、自通信装置の位置情報などの通信装置状態情報を生成する。
【0024】
図2に、本開示に係る通信品質予測システムの処理フローの一例を示す。本開示に係る通信品質予測システムは、環境情報取得ステップC1、オブジェクト判定ステップC2、通信品質予測用カテゴリ分類ステップC3、補助情報取得ステップC4、通信品質予測ステップC5、を実行する。以下に
図2で示した処理の説明を示す。
【0025】
ステップC1では、周辺環境情報収集部1-2が、通信装置の一方もしくは両方の周辺の環境情報(以後、周辺環境情報と称する。)を取得する。ここで、周辺環境情報は、カメラで撮像された画像及び映像、センサによって検出された任意のデータ、センサやカメラのサンプリング間隔を含む。また、カメラやセンサは、通信装置1に搭載されているものであってもよいし、通信装置の外に備わるものであってもよい。
【0026】
ステップC2では、オブジェクト判定部1-5が、ステップC1により得られた周辺環境情報から、既存の物体検出手法を用いて、通信装置の周辺に存在するオブジェクトの種類(クラス)、位置、大きさ等のオブジェクト状態情報を取得する。ここで、クラスとは、物体検出手法にて定義されるもので、物体の種類を表す。位置情報とは画角上または実世界上におけるオブジェクトの中心位置・幅・高さ・輪郭・距離(深度・奥行き)などである。このように、周辺環境情報をオブジェクト状態情報へ変換することで、周辺環境情報を人間が理解・説明・評価しやすくなる。また今後物体検出技術がさらに向上した場合、その技術を導入することが可能である。
【0027】
図3に、オブジェクト判定部12におけるオブジェクト状態情報例を示す。カメラから取得した映像を周辺環境情報に用いる例を示す。映像から、1コマごとにオブジェクトのクラス、スコア、位置、大きさを出力する。認識したオブジェクトに対して、画面上における位置座標(x,y)、幅wx、高さwy、所属するクラス、スコアをオブジェクト状態情報として出力する。Object scoreはオブジェクトがそのクラスに属する信頼度を示す。本例では、既存の物体認識技術YOLOv3を使用した場合を示すが(例えば、非特許文献2参照。)、本開示は、周辺環境情報からオブジェクト状態情報を取得可能な1以上の任意のオブジェクト判定モデルを用いることができる。
【0028】
ステップC2に示している立方体が並んだ図は、画像からオブジェクト状態情報を取得するときにCNN(Convolutional Neural Network)等のデープラーニングを用いた場合をイメージして記載しているが、それ以外の機械学習のアルゴリズムを用いてもよい。機械学習で用いるパラメータは事前に学習する。
【0029】
ステップC3では、入力配列作成部27が、ステップC2により得られたオブジェクト状態情報を、通信品質予測用カテゴリへ分類し、オブジェクト状態情報の少なくとも一部及び通信品質予測用カテゴリを含む入力配列データセットを生成する。ここで通信品質予測用カテゴリとは、あるクラスに属するオブジェクトが無線通信で使用する周波数帯の電波伝搬に与える影響具合の“類似性”やステップC2における“検出の誤りやすさ”、出現頻度を基準に分類されてもよい。ここで、“類似性”は、オブジェクトの素材、サイズ、動作、認識される位置などが類似している場合を指す。また各クラスに属する物体に対して、物体検出領域(Intersection over Unionなど)をもとに同一物体かどうかを判定し、トラッキングすることで得られる時間変化量をオブジェクト状態情報に含んでも良い。このとき、クラスは重複してもよく、また、“通信品質予測時に使用しない情報カテゴリ”を設けても良い。
【0030】
ステップC4では、通信装置管理部1-3が、補助情報として通信装置の位置、向き、姿勢、速度、パーツ状態、通信品質の情報を収集する。
【0031】
ステップC5では、通信品質予測部32が、通信品質予測用カテゴリへ区分されたオブジェクト状態情報及び補助情報の一部もしくは全てを含む入力配列データセットを用いて通信の品質を予測する。ステップC5ではニューラルネットワークをモチーフにした図を示しているがこれに限定することなく、他の機械学習や統計的手法などのいかなる手法を用いても良い。機械学習で用いるパラメータは事前に学習する。
【0032】
(トラッキングに基づくデータ格納)
図4及び
図5に、トラッキングに基づくデータ格納方法と取得可能な特徴量の一例を示す。
図4はトラッキングを行う場合を示し、
図5はトラッキングを行わない場合を示す。
図4及び
図5において、Φ
Bus#1は1番目のカラムに格納されたクラス「Bus」に属するオブジェクトのオブジェクト状態情報を表すベクトルであり、x(オブジェクトのx座標)、y(y座標)、w(幅)、h(高さ)などが含まれる。
【数1】
【0033】
x方向におけるオブジェクトの速度を算出するときは、各カラムに対して時間変化量を算出することで計算が可能である。
【数2】
【0034】
トラッキングした場合、同一物体に対するデータは同カラムへ格納される。このため、個々の物体に対して時間における変化量・中央値・平均値等を算出し、特徴量として使用することができる。一方、トラッキングしなかった場合、複数の物体が同時に検出されるとき、それら物体が同じクラスに属していた場合、同一の物体に対する情報であっても別のカラムへデータが格納される場合がある。このように、トラッキングしていないと違うオブジェクトに対して変化量を見てしまう可能性があり、速度が算出できない。
【0035】
図6に、トラッキングによる効果の一例を示す。通信品質予測用カテゴリごとに分類されたオブジェクト状態情報と通信品質(スループット)との関係をランダムフォレストで学習し、テストデータで評価した結果である。ランダムフォレストへの入力データにオブジェクトの速度情報を含めた場合と含めなかった場合とを比較すると、速度情報がない場合に比べ、速度情報がある場合の予測精度R
2が高いことが分かる。トラッキングにより物体の速度情報を抽出し、通信品質予測モデルへの入力データに加えることで、予測精度の向上が見られた。
【0036】
ここで、予測精度R
2は決定係数と呼ばれ、以下で定義される。
【数3】
【0037】
予測精度R2は、1に近いほど予測値が実測値をよく説明していることを表す。また一般的にR2>0.6の時「回帰できている」と言われる。
【0038】
(通信品質予測用カテゴリ)
図7に、通信品質予測用カテゴリに分ける効果の一例を示す。通信品質予測用カテゴリごとに分類されたオブジェクト状態情報と通信品質(スループット)との関係をランダムフォレストで学習し、テストデータで予測精度(R
2)を評価した。
【0039】
カテゴリ例0と4の比較より、オブジェクトをすべて同等に扱う場合(カテゴリ例0)より、金属物(vehicle)と生物(person)といった素材ごとに分けて扱ったほうが予測精度が高くなることから、素材の分類が有効であることが示唆される。また、カテゴリ0と1を比較すると、クラスでの分類の有効性も示唆される。
【0040】
カテゴリ3のように、素材による分類に加え、バス・トラックのようなサイズが大きく電波伝搬への影響が大きいと予想されるクラスに対してはそれら専用のカテゴリ(bus,truck)を設けることで、予測精度が向上することから、スループット予測にはオブジェクトの素材・クラス・大きさなどを考慮した品質予測用カテゴリの設定が有用であることが示唆される。
【0041】
オブジェクト状態情報の通信品質予測用カテゴリへの分類は、人間にとっての物体区分を通信にとっての物体区分に変更する手続きである。
図6より、いずれのカテゴリ設定の場合においても、機械学習時にオブジェクトの速度情報を含めることで、速度情報を含めない場合より予測精度(R
2)が向上していることから、速度情報の有用性が示唆される。
【0042】
“検出の誤りやすさ”の具体例としては、ステップC2での物体検出にて、時間フレーム毎に物体検出領域(Intersection over Unionなど)をもとにトラッキングをしたときに同一物体と評価されたものに対して、クラス検出では別物体として複数クラスが検出された時、それらクラスは“誤りやすいクラス”と定義する方法が考えられる。また、物体検出時に出力される信頼スコア(confidence score)が基準より小さい時、“誤りやすい”と定義する方法も考えられる。事前にそのクラスに属するオブジェクトが通信品質へ与える影響を調査し、各クラスに対応する通信品質予測用カテゴリを決定する。
【0043】
図8に、本開示に係る通信品質予測システムの構成の一例を示す。本開示に係る通信品質予測システムは、データ収集部、学習部1-6、予測部1-7を備える。データ収集部は、周辺環境情報取集部1-2、通信装置管理部1-3、通信品質評価部1-4、オブジェクト判定部1-5、データ蓄積部1-8、を備える。学習部1-6は、モデル学習部21、モデル記憶部22、予測モデル定義部23、教師データ作成部24、入力データ取得部25、通信品質予測用カテゴリ定義部26、入力配列作成部27を備える。予測部1-7は、モデル選択部31、通信品質予測部32を備える。
【0044】
(データ収集部)
周辺環境情報収集部1-2は、カメラやセンサによって端末周辺の環境情報(=周辺環境情報)とそれらを取得した位置の情報(=周辺環境取得位置情報)を収集する。
通信装置管理部1-3は、通信装置状態情報及び通信設定情報を取得する。通信装置状態情報は、無線通信を行う通信装置に含まれる少なくともいずれかの通信装置の状態を表す情報であり、自装置または通信相手またはその両方の位置・向き・速度のうち少なくとも一つを含む情報である。通信設定情報は、通信に利用している周波数帯・チャネル情報を少なくとも含む情報である。
通信品質評価部1-4は、通信装置間の無線通信の品質を測定する。
オブジェクト判定部1-5は、yoloなどのオブジェクト判定モデルを取得し、周辺環境情報から存在するオブジェクトのクラス、位置、速度、状態等のオブジェクト状態情報を取得する。
データ蓄積部1-8は、周辺環境情報収集部1-2、通信装置管理部1-3、通信品質評価部1-4、オブジェクト判定部1-5より出力された情報を記憶する。
【0045】
(学習部1-6)
予測モデル定義部23は、ランダムフォレストやニューラルネットワークなどから機械学習手法の選択、その構造(層数やノード数など)の設定、通信品質の予測先の時間(何秒後を予測するか)の設定をすることができる。
入力データ取得部25は、データ蓄積部1-8もしくは周辺環境情報収集部1-2、オブジェクト判定部1-5、通信装置管理部1-3、通信品質評価部1-4から、周辺環境取得位置情報、オブジェクト状態情報、通信装置状態情報、通信設定情報のうち少なくとも一つを含む情報を取得する。オブジェクト状態情報を取得する際、通信装置状態情報をもとに、自装置や通信相手付近に設置されたカメラやセンサーから得られた情報を選んで取得しても良い。
【0046】
通信品質予測用カテゴリ定義部26は、通信品質予測用カテゴリに分類するオブジェクト状態情報を、通信品質への影響ごとに通信品質予測用カテゴリを定義する。定義方法の例を以下に示す。
ステップS1-1:入力データ取得部25から出力されたオブジェクト状態情報に含まれるクラスを列挙する。
ステップS1-2:ステップS1-1で挙がったクラスを、素材・大きさ・移動速度・出現頻度などをもとに分類し、カテゴリを作成する。
ステップS1-3:上に加え、スループット情報や端末位置などオブジェクト状態情報以外の特徴量を扱うカテゴリを設定しても良い。
ステップS2-1:ステップS1-1~S1-3の方法をもとにカテゴリ区分を複数パターン用意し、それぞれのカテゴリパターンを用いて学習・予測した時の精度が最も高いカテゴリパターンを採用する。
【0047】
ステップS1-2におけるカテゴリの作成は、物体を構成している素材、動作条件、検出位置、出現頻度の少なくともいずれかを含み、例えば以下のようにして行う。
<例1>メタリックな素材のものと、生物とでは電波伝搬に与える影響が違うため、車・バイク・トラック・バスのカテゴリと、人間のカテゴリを作成。また、トラック・バスは他の物体よりサイズが大きく通信路遮蔽効果が大きいと考えられるため、トラックのカテゴリとバスのカテゴリをさらに作成。
<例2>トラックは他の物体より出現頻度が少なく学習データ量が不十分であると考えられるため、大型車のカテゴリを作成し、形や素材の近いバスとトラックを同一カテゴリへ分類する。
【0048】
入力配列作成部27は、入力データ取得部25より得られたデータを通信品質カテゴリ定義部26により定義されたカテゴリごとに分類し、通信品質予測モデルに入力する入力配列データセットを作成する。オブジェクト状態情報を入力配列データセットに格納する時、オブジェクトの検出領域に対しIoU(the Intersection of Union)を算出するなどして、連続した複数時間に対して検出した物体が同一のものかどうかを判定し、同一だった場合その情報を同じカラムへ格納させても良い。また、同じカラムに格納された特徴量に対して、時間変化率(速度)を算出したり、時間窓における中央値や平均値を算出することで新たに特徴量を作成しても良い。
教師データ作成部24は、入力用配列作成部27により作成された入力配列データセットをモデルに入力したときの教師データとなる通信品質を少なくとも含むデータをデータベースもしくは通信品質評価部15から取得する。
【0049】
モデル学習部21は、予測モデル定義部23より出力された機械学習モデルを用いて、入力配列作成部27から出力された入力配列データセットと教師データ作成部24より出力された教師データより、通信品質予測モデルの学習を行う。
モデル記憶部22では、モデル学習部21にて学習済みの通信品質予測モデルと、それに対応する通信装置状態情報、通信設定情報及び通信品質予測用カテゴリを記憶する。
【0050】
(予測部1-7)
モデル選択部31は、通信装置状態情報及び通信設定情報が一致する通信品質予測モデルを選択する。
通信品質予測部32は、モデル選択部31より選択された通信品質予測モデルに、入力配列作成部27より作成された入力配列データセットを入力し、通信品質の予測を行う。
【0051】
(システム構成例1)
図9に、通信装置の第1の構成例を示す。第1の通信装置1は、周辺環境情報取集部1-2、通信装置管理部1-3、通信品質評価部1-4、オブジェクト判定部1-5、学習部1-6、予測部1-7、通信部1-1-1が、装置ネットワーク1-0で接続されている。この場合、通信装置1には、オブジェクト判定部1-5が物体認識したり、学習部1-6が通信品質予測モデルを学習したりするのに十分なスペックが搭載されている必要がある。通信装置1は外部の通信装置と無線通信を行っている。
【0052】
(システム構成例2)
図10に、通信装置の第2の構成例を示す。第2の通信装置1は、通信装置の外部に備わるカメラ・センサ2のデータを用いる。この場合、通信装置1には、オブジェクト判定部1-5が物体認識したり、学習部1-6が通信品質予測モデルを学習したりするのに十分なスペックが搭載されている必要がある。また、通信装置1は有線または無線で外部のカメラ・センサ2に接続している必要がある。
【0053】
(システム構成例3)
図11に、通信装置の第3の構成例を示す。端末および通信装置1の外部のカメラ・センサ2の周辺環境情報を外部ネットワーク0のデータ蓄積部0-8に蓄積する。通信装置1は外部の通信装置と無線通信を行っている。通信装置1および外部のカメラ・センサ2は、有線または無線で外部ネットワーク0に接続している。通信装置1に備わる学習部1-6は、データ蓄積部0-8に蓄積されている情報を用いて学習を行う。
【0054】
(システム構成例4)
図12に、通信装置の第4の構成例を示す。外部ネットワーク0に接続された学習部0-6で学習された通信品質予測モデルを用いて、通信装置1にて予測を行なう。学習部0-6は、学習部1-6と同様の機能を備え、データ蓄積部0-8に蓄積されている情報を用いて学習を行う。通信装置1は外部の通信装置と無線通信を行っている。通信装置1は有線または無線で外部ネットワーク0に接続している。入力配列作成部1-27は、データ蓄積部0-8に蓄積されているデータを通信品質予測用カテゴリごとに分類し、通信品質予測モデルに入力する入力配列データセットを作成する。通信品質予測部1-32は、入力配列作成部1-27の作成した入力配列データセットを通信品質予測モデルに入力する。
【実施例】
【0055】
屋外におけるスループット予測実験を行った。
[実験環境]
図13に示す屋外路上に通信端末(図に示す★)と基地局(図に示す▲)を設置した。5.66GHzでスループットの測定を行いつつ、通信端末に設置した2つのHDカメラを用い、通過する車両および歩行者の映像を取得した。計測は1時間行った。映像の取得例を
図14に示す。スループットは、過去30秒間のスループットの中央値で規格化したものを用い、オブジェクトが周辺を通過することによるスループットの変化を測定した。実験諸元を
図15に示す。
【0056】
[物体認識]
物体認識技術YOLOv3(例えば、非特許文献3参照。)を使用し、映像から1コマごとにオブジェクトのクラス、スコア、位置、大きさを出力した。各時間tに対して、それぞれのオブジェクトO
1~O
n(nはYoloが認識したオブジェクトの数)から、
図16に示すような、クラス(class)、x、y、wx、wy、スコア(score)の5つのパラメータを取得した。本実験ではカメラ映像は10fps(10Hzサンプリング)で記録されるため、0.1秒ごとの物体認識結果が得られる。オブジェクト状態情報の取得データ例を
図17に示す。
【0057】
[トラッキングによる同一オブジェクトの判定]
Yoloを用い動画に対して物体認識を行ったとき、フレームごとに認識をかける。そのため、
図18に示すように、時間t=0.0~0.3(s)における連続する4つのフレームで車を認識し、時間前後のフレームで認識された物体が同一のものかどうかは判定できない。そこで、物体が同一のものかを判定するために、the Intersection of Union (IoU)を用いた。
【数4】
A
intersectionは検出されたふたつのbounding boxの重なった部分の面積、A
unionはふたつのbounding boxの総合面積を表す。過去2フレームに対してIoUの計算を行い、IoUが0.6以上のとき同一物体とした。
【0058】
[通信品質予測用カテゴリを設定]
以降、通信品質予測用カテゴリとして、
図19に示すように、vehicleカテゴリとpersonカテゴリを設定した場合について述べる。bus,truck,personはそれぞれ、物体認識にてクラスをbus,truck,personとして認識した物体のグループを指す。またvehicleカテゴリは物体認識にてクラスをmotorbike,car,bus,truck,として認識した物体を指す。
【0059】
[通信品質予測モデルへの入力配列データセットの作成]
(1)データの並べ替え
物体認識によって得られたオブジェクト状態情報(
図17)から、通信品質予測用カテゴリに含まれるクラスのデータを抽出し、通信品質予測用カテゴリごとに並べ替えた入力配列データセットを作成した。(
図20)
【0060】
図20においてN
category(category: vehicle, person, bus, truck)は、同時間に存在する、通信品質予測用カテゴリに属する物体の最大数を表す。IoUで同一物体と検出されたものに対しては同じインデックス(#N
category)が割り振られ、その物体情報(x,y,wx,wy)は同じカラムに格納される。
【0061】
Ncategoryより少ない数の物体しか存在しないときは、0を格納する。例えばt=0.2にて、vehicleのカテゴリに該当する物体が2つであった場合、#3~#Nvehicleのインデックスが振られている欄には0が格納される。
【0062】
(2)ダウンサンプリング
(1)にて並び替えたデータを10Hzサンプリングから2Hzサンプリングへダウンサンプリングした。2Hzサンプリングのデータは0.5s区間ごとに中央値より求めた。中央値の算出式はxを例に以下に示す。
図21はダウンサンプリング前のデータを、
図22はダウンサンプリング後のデータ例を示す。
【数5】
【0063】
(3)速度の算出
(2)にて作成されたデータに対しカラムごとに時間変化量を算出し、特徴量として加える。
図23は速度算出前のデータを、
図24は速度算出後のデータ例を示す。ここで作成された特徴量はオブジェクトの速度に値する。速度の算出は以下の式に従う。
【数6】
【0064】
[ランダムフォレストによる予測]
ランダムフォレストを用い、通信品質予測モデルを作成する。ランダムフォレストへの入力には
図24に示す速度算出後のデータを用い、各時間に対し1秒後のスループットを出力するようランダムフォレストを学習させた。
【0065】
検証はk-交差検証法を用いた。検証では、1時間の測定から得られたデータをk個のデータセットに分割し、そのうちの(k-1)個のデータセットによりランダムフォレストの学習を行い、残りの1個のデータセットから予測及びR2の算出を行う。評価は得られたk個のR2の値の平均を用いて行い、その値が大きいときほど予測精度が高いとする。本実験はk=5とした。
【0066】
通信品質予測用カテゴリとして、bus,truck,vehicle,personを設定した場合の予測結果例を
図25に示す。スループットの実測値(real)の低下に対して予測値(predict)も低下しており、予測ができていることがわかる。
【0067】
(本開示の概要)
・本開示に係る通信システムは、カメラ・センサー・報知情報収集機器・その他の周辺環境情報収集装置から、通信機器周辺の周辺環境情報を収集する。
・本開示に係る通信システムは、周辺環境情報から物体認識手法を用い、物体の種類・位置・大きさといったオブジェクト状態情報を取得する。
・本開示に係る通信システムは、オブジェクト状態情報を通信品質予測に効果的なカテゴリ(通信品質予測用カテゴリ)に分類する。
・本開示に係る通信システムは、通信品質予測用カテゴリごとに分類された、オブジェクト状態情報を少なくとも含んだデータと、通信品質との関係を機械学習にてモデル化する。
【0068】
(本開示の効果)
本開示によれば、端末周辺の環境情報から既存の物体認識手法により取得した物体の種類・位置・大きさといったオブジェクト状態情報を、通信品質予測用カテゴリへ分類することで、人間にとって理解しやすい物体区分から、無線通信にとってその品質に影響しやすい区分へ分類することが可能であり、これにより通信品質の予測精度を向上することができる。
【0069】
本開示は、端末周辺の環境情報をオブジェクト状態情報へ変換する工程と、オブジェクト状態情報を通信品質予測用カテゴリへ分類する工程を分けることで、前者工程にて既存の物体検出手法を使用でき、より高性能な物体検出手法が作成された際に、その手法へ差し替えることが容易である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
0:外部ネットワーク
0-0:ネットワーク装置
1:通信装置
2:外部カメラ・センサ
1-0、2-0:装置ネットワーク
0-1-1、0-1-N、1-1、1-1-1、2-1-1、2-1-N:通信部
1-2、2-2:周辺環境情報収集部
1-3:通信装置管理部
1-4:通信品質評価部
1-5:オブジェクト判定部
1-6、0-6:学習部
1-7:予測部
1-8、0-8:データ蓄積部
21:モデル学習部
22:モデル記憶部
23:予測モデル定義部
24:教師データ作成部
25:入力データ取得部
26:通信品質予測用カテゴリ定義部
27、1-27:入力配列作成部
31:モデル選択部
32:通信品質予測部