(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】トランスアクスル装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20230920BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20230920BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20230920BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20230920BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/442 ZHV
B60K6/36
B60K6/547
B60K17/04 G
(21)【出願番号】P 2022554967
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 IB2020000838
(87)【国際公開番号】W WO2022074413
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 吉孝
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217067(WO,A1)
【文献】特開2010-195378(JP,A)
【文献】特開2011-25911(JP,A)
【文献】特開2017-202735(JP,A)
【文献】中国実用新案第202879229(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/40
B60K 6/442
B60K 6/36
B60K 6/547
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の駆動力により発電する第1の回転電機と、駆動輪の駆動軸と、の間に介装されたトランスアクスル装置であって、前記内燃機関の回転軸と前記駆動軸の回転比率を変更可能な変速機を備えたトランスアクスル装置において、
前記内燃機関の回転軸に介装された第1ギアと、
前記第1の回転電機の回転軸に介装された第2ギアと、
前記変速機の一次側の回転軸に介装された第3ギアと、を備え、
前記第1ギア及び前記第2ギアに噛合うとともに前記第1ギアから前記内燃機関の駆動力を受けて回転することで前記内燃機関の駆動力を前記第2ギアに伝達する中間ギアが介装され、
前記第3ギアが、前記中間ギアに噛合わされることで、前記内燃機関の駆動力が前記中間ギアを介して前記変速機に伝達されるトランスアクスル装置。
【請求項4】
前記第1の回転電機は、前記内燃機関の軸方向において前記内燃機関に対して前記第1ギアを挟んだ反対側に配置され、
前記変速機は、前記内燃機関の軸方向において前記内燃機関に対して前記第1ギアを挟んだ反対側であって平面視で前記第1の回転電機と重複する位置に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトランスアクスル装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトランスアクスル装置であって、前記内燃機関、前記第1の回転電機、及び前記駆動軸に駆動力を伝達する第2の回転電機を備えるハイブリッド車両に搭載されたトランスアクスル装置において、
前記駆動軸に介装されたファイナルギアと、
前記第2の回転電機と前記ファイナルギアとの間に介装され、前記第2の回転電機の駆動力の伝達を断接する断接機構と、を備え、
前記断接機構は、平面視で前記変速機と重なるように配置されているトランスアクスル装置。
【請求項6】
前記変速機の二次側の回転軸には前記ファイナルギアに噛合う第6ギアが介装され、
前記断接機構は、
前記ファイナルギアに噛合う第4ギアと、
前記第4ギアと同軸で回転する第5ギアと、
前記第5ギアに噛合うとともに前記第2の回転電機の回転軸に対して空回り可能な状態で前記第2の回転電機の回転軸に介装された第1遊転ギアと、
前記第1遊転ギアを前記第2の回転電機の回転軸に連結させる第1連結部材と、
を備え、
前記ファイナルギア、前記第4ギア、及び前記第6ギアは、前記内燃機関の軸方向において前記第1ギアと同じ位置に配置されている請求項5に記載のトランスアクスル装置。
【請求項8】
前記変速機の一次側の回転軸には、
第7ギアと、
前記第7ギアよりも径の小さい第8ギアと、がさらに介装され、
前記変速機の二次側の回転軸には、
前記第7ギアに噛合うとともに前記変速機の二次側の回転軸に対して空回り可能な状態で前記変速機の二次側の回転軸に介装された第2遊転ギアと、
前記第8ギアに噛合うとともに前記変速機の二次側の回転軸に対して空回り可能な状態で前記変速機の二次側の回転軸に介装された第3遊転ギアと、
前記第3遊転ギアを前記変速機の二次側の回転軸に対して空回りさせた状態で前記第2遊転ギアを前記変速機の二次側の回転軸に連結させる、又は前記第2遊転ギアを前記変速機の二次側の回転軸に対して空回りさせた状態で前記第3遊転ギアを前記変速機の二次側の回転軸に連結させる第2連結部材と、がさらに介装されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトランスアクスル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスアクスル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2018-134937Aは、エンジンと発電機を備えるハイブリッド車両のトランスアクスル装置において、エンジンの回転軸に変速機の一次側と、発電機に回転力を伝達するギアと、が同軸で介装された構成を開示している。
【発明の概要】
【0003】
しかし、JP2018-134937Aでは、エンジンの回転軸に変速機の一次側が直結しているので、発電機を車両の幅方向において変速機と重なる位置に配置しようすると変速機と干渉する。このため、発電機を車両の幅方向で変速機と重ならない位置に配置する必要があり、結果的にエンジンと発電機の幅方向の間隔を短く設定することができず、車載搭載性が低下する。
【0004】
そこで、本発明は、発電機と変速機の干渉を回避して発電機とエンジンとの幅方向の間隔を短く設定可能とすることで車載搭載性を向上させたトランスアクスル装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、内燃機関と、内燃機関の駆動力により発電する第1の回転電機と、駆動輪の駆動軸と、の間に介装されたトランスアクスル装置であって、内燃機関の回転軸と駆動軸の回転比率を変更可能な変速機を備えたトランスアクスル装置において、内燃機関の回転軸に介装された第1ギアと、第1の回転電機の回転軸に介装された第2ギアと、変速機の一次側の回転軸に介装された第3ギアと、を備え、第1ギア及び第2ギアに噛合うとともに第1ギアから内燃機関の駆動力を受けて回転することで内燃機関の駆動力を第2ギアに伝達する中間ギアが介装され、第3ギアが、中間ギアに噛合わされることで、内燃機関の駆動力が中間ギアを介して変速機に伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態のトランスアクスル装置のスケルトン図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のトランスアクスル装置の側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の側面図であってギアの噛合いをより明確に示す図である。
【
図4】
図4は、比較例のトランスアクスル装置のスケルトン図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の変形例のトランスアクスル装置のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0008】
[本実施形態の構成]
図1は、本実施形態のトランスアクスル装置100のスケルトン図である。本実施形態(基本形態)のトランスアクスル装置100は、図示しない車両に搭載される。車両は、エンジンEと、エンジンEの駆動力により発電する発電モータGM(第1の回転電機)と、図示しないバッテリから電力を受けて駆動する駆動モータDM(第2の回転電機)を搭載したハイブリッド車両である。
【0009】
車両の走行モードとしては、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、直結モードがある。EVモードは、エンジンE及び発電モータGMを停止させた状態で駆動モータDMのみで車両を駆動する走行モードであり、走行負荷や走行速度が低い場合やバッテリの充電レベルが高い場合に適用される。シリーズモードは、エンジンEで発電モータGMを駆動して発電しつつ、その電力を利用して駆動モータDMで車両を駆動する走行モードである。パラレルモードは、主にエンジンEで車両を駆動し、必要に応じて駆動モータDMで車両の駆動をアシストする走行モードであり、走行負荷、走行速度が高い場合に適用される。直結モードは、駆動モータDMが車両の駆動軸3から切り離してエンジンEで車両を駆動し、必要に応じて発電モータGMを駆動させて駆動力を補助する走行モードである。なお、車両を後退走行させる場合は、EVモードが選択され、駆動モータDMを逆回転させる。
【0010】
エンジンEは、ガソリンや軽油を燃焼する内燃機関であるが、その作動状態は、図示しない電子制御装置で制御される。
【0011】
発電モータGM及び駆動モータDMは、いずれも発電機としての機能と電動機としての機能を兼ね備えた電動発電機である。駆動モータDMは、主に電動機と機能して車両を駆動し、回生時には発電機として機能する。発電モータGMはエンジンEを始動させる際に電動機(スタータ)として機能し、エンジンEの作動時にはエンジンEの駆動力で発電を実施する。発電モータGMとバッテリの間、及び駆動モータDMとバッテリの間には、それぞれインバータ(不図示)が介装されている。発電モータGM及び駆動モータDMの回転速度(トルク)は各インバータを制御することで制御される。なお、発電モータGM(インバータ)、駆動モータDM(インバータ)の作動状態は、電子制御装置で制御される。
【0012】
車両において、エンジンEの回転軸1(クランクシャフト)、発電モータGMの回転軸2、駆動モータDMの回転軸62、及び駆動輪Wの駆動軸3は互いに平行であるが同軸に配置されることはなく、互いに異なる位置に配置されている。なおエンジンEの回転軸1にはダンパー12が介装されており、エンジンEからのトルク変動を減衰しギアの歯打ち音を低減する。
【0013】
トランスアクスル装置100は、エンジンE又は駆動モータDMの駆動力を駆動輪Wの駆動軸3に伝達し、またエンジンEの駆動力を発電モータGMに伝達するものである。トランスアクスル装置100は、駆動軸3に介装されたデファレンシャルギア31と、駆動軸3に介装されるとともにデファレンシャルギア31に噛合うファイナルギア31aを備え、エンジンEの駆動力と駆動モータDMの駆動力を駆動軸3に伝達する。
【0014】
トランスアクスル装置100には、エンジンEの回転軸1(ダンパー12よりも回転軸1の先端側の部分)、発電モータGMの回転軸2、駆動モータDMの回転軸62、駆動輪Wの駆動軸3が介装されている。
【0015】
トランスアクスル装置100は、エンジンEの回転軸1に介装された第1ギア11と、発電モータGMの回転軸2に介装された第2ギア21と、を備える。ここで、発電モータGMは、エンジンEの回転軸1の軸方向において、エンジンEから見て第1ギア11を挟んだ反対側に配置されている。第1ギア11と第2ギア21は、空間的に互いに分離している。
【0016】
なお、トランスアクスル装置100を構成するギアは、いずれも円盤形状を有し、円盤を周回する側面にギア溝が形成されたものである。
【0017】
第1ギア11と第2ギア21との間には中間ギア41が配置されている。中間ギア41は、エンジンEの回転軸1及び発電モータGMの回転軸2とは非同軸であって平行に配置された回転軸4を中心として回転するものである。
【0018】
中間ギア41は第1ギア11と第2ギア21に同時に噛合っている。すなわち、第1ギア11は中間ギア41と噛合い、第2ギア21は中間ギア41において第1ギア11とは異なる中間ギア41の周方向の位置で中間ギア41と噛合っている。よって第1ギア11と第2ギア21は中間ギア41を介して互いに機械的に結合している。
【0019】
エンジンEを駆動させて第1ギア11を回転させると中間ギア41は第1ギア11とは逆方向に回転して第2ギア21に駆動力を印加する。第2ギア21は中間ギア41の駆動力を受けて第1ギア11と同じ方向に回転する。なお、第1ギア11から第2ギア21への減速比は、第1ギア11の直径をD1、第2ギア21の直径をD2とすると、中間ギア41の直径に関わらずD2/D1となる。
【0020】
変速機5は、一次側の回転軸51と、二次側の回転軸52を備えている。変速機5の一次側とは、エンジンEの駆動力が最初に入力されるギア(第3ギア511)を包含する回転機構であり、第3ギア511を支持する回転軸51と、回転軸51に支持される第7ギア512及び第8ギア513を備える。変速機5の二次側とは、駆動軸3からのトルクが最初に入力されるギア(第6ギア521)を包含する回転機構であり、第6ギア521を支持する回転軸52と、回転軸52に支持される第2遊転ギア522、第2連結部材523、第3遊転ギア524とを備える。
【0021】
一次側の回転軸51には、第3ギア511、第7ギア512、第8ギア513が介装されている。第3ギア511は、中間ギア41に噛合うとともに、第1ギア11と中間ギア41との噛合う位置及び第2ギア21と中間ギア41との噛合う位置とは周方向で異なる位置において中間ギア41に噛合っている(
図2等参照)。
図1では、第7ギア512の径は、第8ギア513の径よりも大きな径に設定されている。第3ギア511と第7ギア512(及び第8ギア513)の径の比率は任意に設定できる。
【0022】
二次側の回転軸52には、第6ギア521、第2遊転ギア522、第2連結部材523、第3遊転ギア524が介装されている。第6ギア521は、デファレンシャルギア31に噛合うファイナルギア31aに噛合うものであり、ファイナルギア31aとともにファイナルギア対を形成している。第2遊転ギア522は第7ギア512に噛合うとともに二次側の回転軸52に対して空回り可能な状態で介装されている。第3遊転ギア524は第8ギア513に噛合うとともに二次側の回転軸52に対して空回り可能な状態で介装されている。ここで、第3遊転ギア524の径は第2遊転ギア522の径よりも大きく設定されている。
【0023】
エンジンEの回転軸1の軸方向において、第3ギア511及び第6ギア521は、第1ギア11と同じ位置に配置され、第7ギア512、第8ギア513、第2遊転ギア522、第2連結部材523、及び第3遊転ギア524は、第1ギア11よりも発電モータGM側に配置されている。
【0024】
第2連結部材523は、二次側の回転軸52において第2遊転ギア522と第3遊転ギア524の間に介装されている。第2連結部材523は二次側の回転軸52の回転方向に対して固定され且つ二次側の回転軸52の軸方向に摺動可能となるように介装されている。第2連結部材523はアクチュエータ7(
図2)からの駆動力を受けて軸方向に対して摺動する。
【0025】
図示は省略するが、第2連結部材523(第1連結部材622も同様)にはロック機構があり、第2連結部材523が第2遊転ギア522に当接するとロック機構が動作して第2連結部材523を第2遊転ギア522に連結させ、第2連結部材523が第3遊転ギア524に当接するとロック機構が動作して第2連結部材523を第3遊転ギア524に連結させる。また、第2連結部材523を第2遊転ギア522又は第3遊転ギア524から離間させる場合はロック機構を解除することができる。
【0026】
第2連結部材523は、第2遊転ギア522及び第3遊転ギア524のいずれにも連結しない非連結状態(ニュートラル)と、第3遊転ギア524に連結せずに第2遊転ギア522に連結することで二次側の回転軸52の回転数を速い回転数に設定する第1連結状態(HIGH)と、第2遊転ギア522に連結せずに第3遊転ギア524に連結することで二次側の回転軸52の回転数を遅い回転数に設定する第2連結状態(LOW)をとることができる。
【0027】
非連結状態(ニュートラル)では、二次側の回転軸52は一次側の回転軸51の回転に対して空回りするので、エンジンEの駆動力はデファレンシャルギア31(駆動軸3)に伝達されない。
【0028】
第1連結状態(HIGH)では、第1ギア11、中間ギア41、第3ギア511、第7ギア512、第2遊転ギア522、第6ギア521を介してエンジンEの駆動力がファイナルギア31a(駆動軸3)に伝達される。このとき、エンジンEから駆動軸3への減速比は、第1ギア11の直径をD1、中間ギア41の直径をDm、第3ギア511の直径D3、第7ギア512の直径をD7、第2遊転ギア522の直径をDf2、第6ギア521の直径をD6、ファイナルギア31aの直径をDdとすると、(D3・Df2・Dd)/(D1・D7・D6)となる。
【0029】
第2連結状態(LOW)では、第1ギア11、中間ギア41、第3ギア511、第8ギア513、第3遊転ギア524、第6ギア521を介してエンジンEの駆動力がファイナルギア31a(駆動軸3)に伝達される。このとき、エンジンEから駆動軸3への減速比は、第8ギア513の直径をD8、第3遊転ギア524の直径をDf3とすると、(D3・Df3・Dd)/(D1・D8・D6)となる。
【0030】
駆動モータDMは、断接機構6を介してファイナルギア31aに接続されている。駆動モータDMは、エンジンEの回転軸1の軸方向においてファイナルギア31aよりも発電モータGM側に配置されている。
【0031】
断接機構6は、所定の減速比で駆動モータDMの駆動力をファイナルギア31aに伝達するとともに当該駆動力の伝達を断接するものである。断接機構6は、ファイナルギア31aに噛合うとともにファイナルギア31aと第6ギア521との噛合う位置とは周方向で異なる位置においてファイナルギア31aに噛合う第4ギア611と、第4ギア611と同軸(断接機構6の二次側の回転軸61)に回転する第5ギア612と、第5ギア612に噛合うとともに駆動モータDMの回転軸62(断接機構6の一次側の回転軸)に介装された第1遊転ギア621と、駆動モータDMの回転軸62に配置された第1連結部材622(連結部材)と、を備える。
【0032】
第1遊転ギア621は、第1連結部材622と連結していない状態では、駆動モータDMの回転軸62に対して空回りするように配置されているが、第1連結部材622に連結されることで駆動モータDMの回転軸62に連結され、当該回転軸62の回転に伴って回転する。
【0033】
第1連結部材622は、例えば駆動モータDMの回転軸62の回転方向には固定されているが軸方向には摺動可能となるように配置された可動部材であり、アクチュエータ(不図示)からの駆動力を受けて軸方向に摺動可能となっている。
【0034】
ここで、第1連結部材622が第1遊転ギア621から離間した位置にあるときは、第1遊転ギア621は駆動モータDMの回転軸62に対して空回りする状態であるが、第1連結部材622が第1遊転ギア621に連結する位置に来ると第1連結部材622を介して第1遊転ギア621を駆動モータDMの回転軸62に連結させる。
【0035】
なお、第4ギア611及び第5ギア612を支持する回転軸61は駆動モータDMの回転軸62とは逆方向に回転し、ファイナルギア31a(駆動軸3)に対しても逆方向に回転するので、駆動モータDMの回転軸62はファイナルギア31a(駆動軸3)と同じ方向に回転する。
【0036】
駆動モータDMの回転軸62から駆動輪Wの駆動軸3への減速比は、第1遊転ギア621の直径をDf1、第5ギア612の直径をD5、第4ギア611の直径をD4、ファイナルギア31aの直径をDdとすると、(D5・Dd)/(Df1・D4)となる。
【0037】
図1に示すように、エンジンEの回転軸1の軸方向において、第1ギア11、第2ギア21、中間ギア41、第3ギア511、第6ギア521、ファイナルギア31a、第4ギア611、第1連結部材622(非連結時)は、同一平面を形成するように配置されている。すなわち、上記の複数のギアをギア一枚分の厚みの範囲で配置することができる。これにより、トランスアクスル装置100(
図2の筐体8)において車両の幅方向の寸法を短く設定することができる。
【0038】
図2は、本実施形態のトランスアクスル装置100の側面図である。
図3は、
図2の側面図であってギアの噛合いをより明確に示す図である。
図2及び
図3は、
図1のA矢視図となっている。
【0039】
図2に示すように、トランスアクスル装置100は、筐体8内に、第1ギア11、第2ギア21、中間ギア41、変速機5、ファイナルギア31a、断接機構6を収容したものである。
【0040】
筐体8は、全体としては、エンジンEの軸方向(車両の幅方向)において、第1ギア11、第2ギア21、中間ギア41、第3ギア511、第6ギア521、ファイナルギア31a、第4ギア611、第1連結部材622(非連結時)を収容する程度に薄く形成されている(
図1参照)。しかし、筐体8は変速機5(及び変速機5用のアクチュエータ7等)を収容する部分において紙面手前側に突出した形状を有しており、また断接機構6を収容する部分において紙面奥側に突出した形状を有している。
【0041】
図2及び
図3において、エンジンE(不図示)は紙面奥側に配置され、発電モータGM及び駆動モータDMは紙面手前側に配置され、いずれも筐体8の外側に配置されている。
【0042】
駆動輪Wの駆動軸3は筐体8を貫通しており、当該貫通部分において例えばベアリング等の軸受けにより回転自在に支持されている。エンジンEの回転軸1、発電モータGMの回転軸2、駆動モータDMの回転軸62は、筐体8を貫通するとともにその先端が筐体8内に配置されている。各回転軸は貫通部分及び先端部において軸受けにより回転自在に支持され、各軸受けは筐体8に支持されている。中間ギア41を支持する回転軸4、変速機5の一次側の回転軸51、変速機5の二次側の回転軸52、断接機構6の二次側の回転軸61は、それぞれ両端にベアリング等の軸受けが取り付けられ当該軸受けが筐体8に支持されている。
【0043】
発電モータGMの回転軸2と駆動輪Wの駆動軸3は筐体8の下側において車両の前後方向(
図2,
図3における左右方向)の両端側に配置されている。変速機5は筐体8の下側において発電モータGMの回転軸2と駆動輪Wの駆動軸3の間となる位置に配置されている。
【0044】
エンジンEの回転軸1は筐体8の高さ方向の中央部であって発電モータGMの回転軸2側にやや偏った位置に配置されている。中間ギア41の回転軸4は、発電モータGMの回転軸2と変速機5の一次側の回転軸51の間に配置され、またエンジンEの回転軸1から近い位置に配置されている。
【0045】
駆動モータDMの回転軸62(断接機構6の二次側の回転軸)は、筐体8の上部であって変速機5よりも上方となる位置に配置されている。断接機構6の二次側の回転軸61は駆動モータDMの回転軸62と駆動輪Wの駆動軸3の間に配置されている。
【0046】
筐体8の変速機5(及び変速機5用のアクチュエータ7)を収容する部分は、発電モータGMと干渉しないように配置する必要がある。このため、
図2,
図3において筐体8を見る方向(エンジンEの回転軸1の軸方向)から見て、中間ギア41と第3ギア511とが噛合う位置は、発電モータGMの外形(円形の外形)よりも外側となる位置に配置されている。
【0047】
変速機5の一次側の回転軸51は、発電モータGMの回転軸2よりも低い位置に配置されている。これにより、第7ギア512又は第8ギア513の一部(筐体8の第7ギア512及び第8ギア513を収容する部分)が、平面視(
図1の視点)で発電モータGMと重複するように配置されている。これにより、トランスアクスル装置100の車両の前後方向の寸法を短く設定することができる。
【0048】
変速機5用のアクチュエータ7は、筐体8において変速機5よりも下となる位置に配置され、平面視でその一部が発電モータGMの外形に重なるように配置されている。これにより筐体8の内部空間を有効利用し、筐体8の車両の前後方向の寸法を短く設定することができる。
【0049】
変速機5には、アクチュエータ7により回転する円筒カム(不図示)と、円筒カム(不図示)の回転動作により円筒の軸方向に移動するシフトロッド53と、シフトロッド53により支持されたアーム54とが設けられている。円筒カム(不図示)は、その軸方向が変速機5の二次側の回転軸52に平行に配置されている。よって、シフトロッド53は、円筒カムの回転動作により回転軸52の軸方向に移動する。第2連結部材523(第1連結部材622も同様)の外周には、
図1に示すように回転軸52と同心状の溝部523aが形成されており、当該溝部523aにアーム54の先端が入り込むようになっている。よってアーム54が軸方向に移動することで第2連結部材523は回転軸52の軸方向に移動する。
【0050】
なお、筐体8内には、変速機5と同様に、断接機構6の第1連結部材622を可動させるアクチュエータ(不図示)と、シフトロッド63と、アーム64を備えている。
【0051】
駆動モータDM及びその回転軸62は、筐体8の変速機5を収容する部分に干渉しないようにその高さ位置が調整されている。
【0052】
図2、
図3に示すように、駆動力の伝達経路としてはエンジンEの回転軸1から中間ギア41の回転軸4を経て発電モータGMの回転軸2に伝達する第1伝達経路と、エンジンEの回転軸1から中間ギア41の回転軸4及び変速機5(回転軸51、回転軸52)を経てファイナルギア31a(駆動軸3)に伝達する第2伝達経路と、駆動モータDMから断接機構6(回転軸62、回転軸61)を介してファイナルギア31a(駆動軸3)に伝達する第3伝達経路とを有する。
【0053】
本実施形態では、平面視で第3伝達経路が第2伝達経路に重なる配置となるので、トランスアクスル装置100の車両の前後方向の寸法を短く設定することができる。
【0054】
<比較例>
図4は、比較例のトランスアクスル装置100Aのスケルトン図である。
図4の比較例は、前記のJP2018-134937Aに開示されたものと類似のものである。比較例のトランスアクスル装置100Aは、本実施形態の中間ギア41はなく、第1ギア11と第2ギア21が直接噛合っている。さらに、比較例のトランスアクスル装置100Aでは、エンジンEの回転軸1が変速機5の一次側の回転軸を兼ねている。
【0055】
エンジンEの回転軸1(変速機5の一次側の回転軸)には、第1ギア11、第4遊転ギア13、第3連結部材14、第9ギア15が介装されている。変速機5の二次側の回転軸52には、第6ギア521、第10ギア525、第4連結部材526、第5遊転ギア527が介装されている。
【0056】
第4遊転ギア13は、第10ギア525に噛合うとともにエンジンEの回転軸1に対して空回り可能な状態で回転軸1に介装されている。第5遊転ギア527は、第9ギア15に噛合うとともに二次側の回転軸52に対して空回り可能な状態で二次側の回転軸52に介装されている。
【0057】
第3連結部材14は、第1連結部材622と同様の構造を有し、第4遊転ギア13に連結することで第4遊転ギア13を回転軸1に連結する。第4連結部材526も、第1連結部材622と同様の構造を有し、第5遊転ギア527に連結することで第5遊転ギア527を回転軸52に連結する。
【0058】
ここで、第4遊転ギア13の直径は第10ギア525の直径よりも小さく設定され、第5遊転ギア527の直径は第9ギア15の直径はほぼ等しくなるように設定されている。よって、変速機5は、第3連結部材14が第4遊転ギア13に連結し、且つ第4連結部材526が第5遊転ギア527から離間した状態ではLOWとなり、第4連結部材526が第5遊転ギア527に連結し、且つ第3連結部材14が第4遊転ギア13から離間した状態ではHIGHとなる。なお、変速機5は、第3連結部材14が第4遊転ギア13から離間し、且つ第4連結部材526が第5遊転ギア527から離間した状態においては非伝達状態(ニュートラル)となる。
【0059】
比較例において、エンジンEの回転軸1には、第1ギア11、第4遊転ギア13、第3連結部材14、第9ギア15が介装されている。よって、エンジンEの回転軸1は、本実施形態と比較して、第4遊転ギア13、第3連結部材14、第9ギア15の厚みの分だけさらに長く設定する必要がある。また、トランスアクスル装置100Aにおいてギア列が軸方向に4列必要となり、筐体8は当該ギア列を収容するように形成する必要がある。
【0060】
さらに、変速機5(及び筐体8の変速機5を収容する部分)は、本実施形態よりも発電モータGM側に近接して配置される。よって、発電モータGMを軸方向(車両の幅方向)で変速機5と同じ位置に配置しようとすると、発電モータGMが変速機5と干渉することになる。このため、
図4に示すように、発電モータGMを軸方向において変速機5と重ならない位置に配置する必要がある。しかし、この配置では、エンジンEと発電モータGMとの距離を長く設定する必要があり、その分、トランスアクスル装置100Aの車載搭載性が低下するという問題があった。
【0061】
一方、
図1に示すように、本実施形態のトランスアクスル装置100では、エンジンEの回転軸1に変速機5が組み込まれることはなく、変速機5(第3ギア511)は中間ギア41を介して第1ギア11に機械的に結合している。これにより、変速機5をエンジンEの回転軸1から離間させた位置に配置することができ、且つ発電モータGMを変速機5と軸方向(車両の幅方向)で互いに重なる位置に配置できるので、発電モータGMとエンジンEの軸方向の距離も短く設定することがき、車載搭載性を向上させることができる。
【0062】
<変形例>
図5は、本実施形態の変形例のトランスアクスル装置100Bのスケルトン図である。変形例のトランスアクスル装置100Bは、
図1等に示すトランスアクスル装置100と構成は共通するが、断接機構6の配置が異なっている。すなわち、断接機構6は、全体としてファイナルギア31aよりも軸方向(車両の幅方向)で駆動モータDM側となる位置に配置されている。
【0063】
断接機構6において、第4ギア611はファイナルギア31aに接続されているが、第4ギア611と同軸に回転する第5ギア612は、軸方向で第4ギア611よりも駆動モータDM側に配置されている。第1遊転ギア621は第5ギア612に噛合うとともに駆動モータDMの回転軸62に空回り可能な状態で介装されている。第1連結部材622は、駆動モータDMとともに第1遊転ギア621を挟むように駆動モータDMの回転軸62に介装されている。
【0064】
図2に示すように、駆動モータDMは、変速機5のほぼ真上となる位置に配置されるが、このとき、断接機構6は軸方向において第1ギア11よりもエンジンE側に配置されるので、断接機構6がエンジンE又はエンジンE用の補機等に干渉する場合がある。
【0065】
これに対して、
図5に示す変形例では、断接機構6がファイナルギア31aよりも軸方向で駆動モータDM側に配置されている。これにより、
図2と同様に駆動モータDMを変速機5のほぼ真上となる位置に配置しても、断接機構6は軸方向で第1ギア11よりも駆動モータDM側に配置されるので、エンジンE又はエンジンE用の補機等との干渉を回避することができる。
【0066】
<本実施形態の効果>
本実施形態のトランスアクスル装置100によれば、内燃機関(エンジンE)と、内燃機関(エンジンE)の駆動力により発電する第1の回転電機(発電モータGM)と、駆動輪Wの駆動軸3と、の間に介装されたトランスアクスル装置100であって、内燃機関(エンジンE)の回転軸1と駆動軸3の回転比率を変更可能な変速機5を備えたトランスアクスル装置100において、内燃機関(エンジンE)の回転軸1に介装された第1ギア11と、第1の回転電機(発電モータGM)の回転軸2に介装された第2ギア21と、変速機5の一次側の回転軸51に介装された第3ギア511と、を備え、第1ギア11及び第2ギア21に噛合うとともに第1ギア11から内燃機関(エンジンE)の駆動力を受けて回転することで内燃機関(エンジンE)の駆動力を第2ギア21に伝達する中間ギア41が介装され、第3ギア511が、中間ギア41に噛合されることで、内燃機関(エンジンE)の駆動力が中間ギア41を介して変速機5に伝達される。
【0067】
上記構成により、エンジンEの回転軸1には、第1ギア11のみが介装されるので、エンジンEの回転軸1の長さを短くすることができる。また、変速機5がエンジンEの回転軸1とは非同軸に配置できるので、発電モータGMと変速機5を回転軸1の軸方向で互いに重なる位置に配置することができる。これにより、エンジンEと発電モータGMの軸方向の距離を短く設定できるのでトランスアクスル装置100の車載搭載性を高めることができる。
【0068】
本実施形態において、第1ギア11、第2ギア21、及び中間ギア41は、内燃機関(エンジンE)の軸方向において第1ギア11と同じ位置に配置されている。これにより、第1ギア11、第2ギア21、及び中間ギア41をギア一枚分の厚みの範囲内に配置でき、トランスアクスル装置100の軸方向の寸法を短く設定できるので、トランスアクスル装置100の車載搭載性をさらに高めることができる。
【0069】
本実施形態において、中間ギア41と第3ギア511とが噛合う位置は、第1の回転電機(発電モータGM)の軸方向から見て第1の回転電機(発電モータGM)の外形の外側に配置されている。これにより、発電モータGMと変速機5との干渉を回避することができる。
【0070】
本実施形態において、第1の回転電機(発電モータGM)は、内燃機関(エンジンE)の軸方向において内燃機関(エンジンE)に対して第1ギア11を挟んだ反対側に配置され、変速機5は、内燃機関(エンジンE)の軸方向において内燃機関(エンジンE)に対して第1ギア11を挟んだ反対側であって平面視で第1の回転電機(発電モータGM)と重複する位置に配置されている。これにより、トランスアクスル装置100の軸方向に垂直な方向(車両の前後方向)の寸法を短く設定することでトランスアクスル装置100の車載搭載性を高めることができる。
【0071】
本実施形態において、前記のトランスアクスル装置100であって、内燃機関(エンジンE)、第1の回転電機(発電モータGM)、及び駆動軸3に駆動力を伝達する第2の回転電機(駆動モータDM)を備えるハイブリッド車両に搭載されたトランスアクスル装置100において、駆動軸3に介装されたファイナルギア31aと、第2の回転電機(駆動モータDM)とファイナルギア31aとの間に介装され、第2の回転電機(駆動モータDM)の駆動力の伝達を断接する断接機構6と、を備え、断接機構6は、平面視で変速機5と重なるように配置されている。これにより、駆動モータDMは、車両の前後方向において発電モータGMと駆動軸3の間に配置され、且つ平面視で変速機5と重なる位置に配置することができ、トランスアクスル装置100の車両の前後の方向の寸法を短く設定することができる。
【0072】
本実施形態において、変速機5の二次側の回転軸52にはファイナルギア31aに噛合う第6ギア521が介装され、断接機構6は、ファイナルギア31aに噛合う第4ギア611と、第4ギア611と同軸で回転する第5ギア612と、第5ギア612に噛合うとともに第2の回転電機(駆動モータDM)の回転軸62に対して空回り可能な状態で第2の回転電機(駆動モータDM)の回転軸62に介装された第1遊転ギア621と、第1遊転ギア621を第2の回転電機(駆動モータDM)の回転軸62に連結させる第1連結部材622と、を備え、ファイナルギア31a、第4ギア611、及び第6ギア521は、内燃機関(エンジンE)の軸方向において第1ギア11と同じ位置に配置されている。これにより、駆動モータDMに接続されたトランスアクスル装置100の車両の幅方向の寸法を短く設定することができる。
【0073】
本実施形態において、第5ギア612及び第1遊転ギア621は、内燃機関(エンジンE)の軸方向において第1ギア11よりも内燃機関(エンジンE)側に配置されている。これにより、車両の幅方向において駆動モータDMと内燃機関(エンジンE)との距離を短く設定することができ、これによりトランスアクスル装置100の車載搭載性を高めることができる。
【0074】
本実施形態において、変速機5の一次側の回転軸51には、第7ギア512と、第7ギア512よりも径の小さい第8ギア513と、がさらに介装され、変速機5の二次側の回転軸52には、第7ギア512に噛合うとともに変速機5の二次側の回転軸52に対して空回り可能な状態で変速機5の二次側の回転軸52に介装された第2遊転ギア522と、第8ギア513に噛合うとともに変速機5の二次側の回転軸52に対して空回り可能な状態で変速機5の二次側の回転軸52に介装された第3遊転ギア524と、第3遊転ギア524を変速機5の二次側の回転軸52に対して空回りさせた状態で第2遊転ギア522を変速機5の二次側の回転軸52に連結させる、又は第2遊転ギア522を変速機5の二次側の回転軸52に対して空回りさせた状態で第3遊転ギア524を変速機5の二次側の回転軸52に連結させる第2連結部材523と、がさらに介装されている。これにより、簡易な構成で変速機5を構築できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、変速機5としては、上記のようにHIGHとLOWの2つの状態を選択できるもののほかに、CVT(Continuously Variable Transmission)のような無段変速機も適用できる。