IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧 ▶ 国立大学法人金沢大学の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池システム 図1
  • 特許-燃料電池システム 図2
  • 特許-燃料電池システム 図3
  • 特許-燃料電池システム 図4
  • 特許-燃料電池システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04186 20160101AFI20230920BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04791 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/1009 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/1011 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230920BHJP
【FI】
H01M8/04186
H01M8/043
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/04791
H01M8/1009
H01M8/1011
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019198715
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072217
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】高里 明洋
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕介
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-064934(JP,A)
【文献】特開2014-011001(JP,A)
【文献】特開2014-118001(JP,A)
【文献】特表2005-535861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸またはアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池を有する燃料電池システムであって、
前記燃料電池に供給する前記燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンク内の前記燃料を前記燃料電池に供給する燃料供給装置と、
前記燃料タンク内に貯留された前記燃料に不活性ガスを吹き込むバブリング装置と、を備え、
前記バブリング装置は、前記燃料タンク内に貯留された前記燃料に吹き込む前記不活性ガスの流量を調整する流量調整弁を有し、
前記燃料電池システムは、
前記燃料供給装置の制御および前記流量調整弁の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記燃料供給装置を用いて前記燃料電池へ前記燃料を供給し始める前では、前記流量調整弁を用いて第1流量の前記不活性ガスを前記燃料タンクに貯留された前記燃料に吹き込むように制御し、
前記燃料供給装置を用いて前記燃料電池へ前記燃料を供給し始めた後では、前記流量調整弁を用いて、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記不活性ガスを前記燃料タンクに貯留された前記燃料に吹き込むように制御する、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料タンク内で、前記不活性ガスとともに前記燃料から放出される前記燃料に溶けていた二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去装置を備えている、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料タンク内に貯留されている前記燃料は、加熱処理により二酸化炭素濃度を低減させた前記燃料である、
燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の燃料を改質せずに燃料極に直接投入する直接液体型燃料電池に関する技術が各種提案されている。例えば、特許文献1には、燃料にメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池と、燃料にギ酸を用いる直接ギ酸型燃料電池とが開示されている。直接液体型燃料電池は、燃料を酸化する燃料極と、空気などの酸化剤ガスを還元する空気極と、空気極と燃料極との間にイオン伝導を行う電解質膜とを備えている。ここで、燃料極はアノードで、空気極はカソードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-217975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料極には、燃料が流入される燃料流入口と、燃料極内で発電に使用された燃料が流出する燃料流出口と、が設けられている。燃料極内には、燃料極内に燃料を拡散させるために、燃料流入口から燃料流出口にかけて燃料を流す燃料流路が形成されている。燃料は、燃料流路を流れるにつれて、燃料極内を拡散してゆき、さらに酸化される。燃料が酸化されると二酸化炭素が生成するとともに発熱する。
【0005】
直接液体型燃料電池では、燃料極内で燃料が酸化されるにつれて、次の(1)および(2)の二酸化炭素ガスが発生し、気泡となる。
(1)燃料が酸化されて生成する二酸化炭素により発生する二酸化炭素ガス。
(2)発熱による燃料の温度上昇により、燃料に対する二酸化炭素の溶解度が下がるため、燃料に溶け込んでいた二酸化炭素が、燃料に溶けきれなくなって発生する二酸化炭素ガス。
【0006】
燃料極で発生した二酸化炭素ガスの気泡は、燃料極内で滞留する場合がある。二酸化炭素ガスの気泡が燃料極内に滞留すると、燃料極内で燃料の拡散が妨げられて、燃料の酸化反応が進みにくくなり、その結果、発電効率が低下する。また、二酸化炭素ガスの気泡が燃料流路内で滞留すると、燃料流路内の燃料の流れが妨げられるため、発電効率が低下する。
【0007】
このため、直接液体型燃料電池の発電効率をより向上させるために、燃料極内における二酸化炭素ガスの発生量を低減することが望まれている。上記の(1)の二酸化炭素ガスは、燃料が酸化されて発生する二酸化炭素ガスであるため、発生量を低減させることはできない。一方、上記の(2)の二酸化炭素ガスの発生量を低減させることができれば、発電効率をより向上させることができる。しかし、特許文献1には、上記の(2)の二酸化炭素ガスの発生量を低減させることについては記載が見受けられない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、燃料の二酸化炭素濃度をより低減させて、発電効率をより向上させることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、ギ酸またはアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池を有する燃料電池システムであって、前記燃料電池に供給する前記燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内の前記燃料を前記燃料電池に供給する燃料供給装置と、前記燃料タンク内に貯留された前記燃料に不活性ガスを吹き込むバブリング装置と、を備える、燃料電池システムである。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る燃料電池システムであって、前記燃料タンク内で、前記不活性ガスとともに前記燃料から放出される前記燃料に溶けていた二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去装置を備えている、燃料電池システムである。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る燃料電池システムであって、前記バブリング装置は、前記燃料タンク内に貯留された前記燃料に吹き込む前記不活性ガスの流量を調整する流量調整弁を有し、前記燃料電池システムは、前記燃料供給装置の制御および前記流量調整弁の制御を行う制御装置を備え、前記制御装置は、前記燃料供給装置を用いて前記燃料電池へ前記燃料を供給し始める前では、前記流量調整弁を用いて第1流量の前記不活性ガスを前記燃料タンクに貯留された前記燃料に吹き込むように制御し、前記燃料供給装置を用いて前記燃料電池へ前記燃料を供給し始めた後では、前記流量調整弁を用いて、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記不活性ガスを前記燃料タンクに貯留された前記燃料に吹き込むように制御する、燃料電池システムである。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明から第3の発明のいずれか1つに係る燃料電池システムであって、前記燃料タンク内に貯留されている前記燃料は、加熱処理により二酸化炭素濃度を低減させた前記燃料である、燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、燃料電池システムは、バブリング装置が燃料タンク内に貯留された燃料に不活性ガスを吹き込むことで、燃料タンクに貯留された燃料の二酸化炭素濃度を低減させることができる。これにより、燃料供給装置が燃料タンク内で二酸化炭素濃度を低減させた燃料を燃料電池に供給することができる。燃料電池の燃料極では、燃料の酸化による発熱により、燃料が暖められる。そして、燃料の温度が上昇するにつれて、燃料に対する二酸化炭素の溶解度が下がる。燃料電池システムでは、バブリング装置を用いて、二酸化炭素濃度を低減させた燃料を燃料電池に供給することにより、燃料極において、燃料に対する二酸化炭素の溶解度が下がったとしても、燃料に溶けていた二酸化炭素が燃料に溶けきれなくなって気泡になることを抑止できる。
【0014】
これにより、二酸化炭素ガスの気泡が燃料極内に滞留して、燃料極内で燃料の拡散を妨げて、燃料の酸化反応を進みにくくすることにより、発電効率が低下することを抑止できる。また、二酸化炭素ガスの気泡が燃料流路内で滞留して、燃料流路内の燃料の流れを妨げることにより、発電効率が低下することを抑止できる。従って、燃料電池システムは、燃料の二酸化炭素濃度をより低減させて、発電効率をより向上させることができる。
【0015】
第2の発明によれば、燃料電池システムは、燃料タンク内で、不活性ガスとともに燃料から放出される燃料に溶けていた二酸化炭素を、二酸化炭素除去装置が除去することで、温室効果ガスの一種である二酸化炭素が燃料電池システムの外部に排出されることを抑制できる。
【0016】
第3の発明によれば、燃料電池システムは、燃料タンクに貯留された燃料に吹き込む不活性ガスの流量は、燃料電池へ燃料を供給し始めた後の第2流量が、燃料電池へ燃料を供給し始める前の第1流量よりも少ない。これにより、燃料電池が発電する、燃料電池へ燃料を供給し始めた後において、燃料に吹き込む不活性ガスの使用量を減らしたうえで、燃料の二酸化炭素濃度をより低減させることができる。
【0017】
第4の発明によれば、燃料電池システムでは、燃料タンク内に収容された燃料は、加熱処理により二酸化炭素濃度を低減させた燃料である。これにより、燃料電池システムは、燃料内に溶けている二酸化炭素濃度を低減させるために必要な、バブリング装置が燃料タンク内に貯留された燃料に吹き込む不活性ガスの量を低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る、燃料電池システムの全体構成を説明する図である。
図2】燃料に吹き込まれた不活性ガスにより二酸化炭素が燃料から除去されることを説明する図である。
図3】実施の形態に係る、燃料電池の構成を説明する分解斜視図である。
図4】実施の形態における、制御装置による処理手順の例を説明するフローチャートである。
図5】実施の形態における、制御装置による処理手順の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態の燃料電池システム1について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態にて説明する燃料電池システム1の燃料電池7は、ギ酸、またはメタノール等のアルコールの水溶液を燃料とする直接液体型燃料電池であり、以下ではギ酸を燃料とする直接ギ酸型燃料電池を例として説明する。ここで、直接液体型燃料電池とは、液体の燃料を、改質せずに燃料極に直接投入する燃料電池を意味する。そして、直接ギ酸型燃料電池は、燃料としてギ酸水溶液を用い、ギ酸を改質せずに燃料極10(図3参照)に直接投入する燃料電池である。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、各軸は互いに直交しており、Z軸方向は鉛直上方に向かう方向、Y軸方向は燃料電池7の積層方向、X軸方向は燃料電池7の水平幅方向を示している。
【0020】
●[燃料電池システム1の全体構成(図1図2)]
図1は、燃料電池7を含む燃料電池システム1の全体構成を示す図であり、図2は燃料に吹き込まれた不活性ガスにより二酸化炭素が燃料から除去されることを説明する図である。燃料電池システム1は、図1に示すように、燃料電池7、燃料タンク50、燃料供給ポンプ52(燃料供給装置に相当)、バブリング装置60、排液タンク70、燃料排出配管71、回収配管72、制御装置80等を有している。以下に詳細を説明するが、本実施の形態の燃料電池システム1では、バブリング装置60が、燃料タンク50内に貯留された燃料に対して、不活性ガスを吹き込んで、燃料の二酸化炭素濃度を低減できる。
【0021】
燃料タンク50は、燃料電池7に供給する燃料として所定濃度のギ酸を含むギ酸水溶液を貯留している。また燃料タンク50には燃料供給配管51の一方端が接続され、燃料供給配管51の他方端は燃料電池7の燃料流入口7Aに接続されている。ギ酸水溶液(燃料)中のギ酸の濃度は、例えば10~40[%]程度である。
【0022】
ここで、燃料タンク50に貯留されている燃料は、あらかじめ加熱処理された燃料である。加熱処理とは、燃料を所定の温度となるように加熱した後、燃料を不活性ガスで満たされた環境下におく処理である。所定の温度とは、室温(20℃)よりも高く、燃料の沸点よりも低い温度である。燃料の温度が高い程、燃料に対する二酸化炭素の溶解度は低くなる。そこで、加熱処理では、まず燃料を加熱して、燃料に対する二酸化炭素の溶解度を低くすることで、燃料に溶けていた二酸化炭素は、溶けきれなくなり、燃料から除去される。加熱処理では、次に、燃料を不活性ガス(後述)で満たされた環境下におくことで、燃料の周囲に二酸化炭素が存在しないようにして、燃料に二酸化炭素が溶けることを防ぐ。後述するように、バブリング装置60を用いて燃料タンク50内に不活性ガスを入れることで、燃料タンク50内の燃料を不活性ガスで満たされた環境下におくことができる。
【0023】
燃料供給ポンプ52は電動ポンプであり、燃料供給配管51に設けられており、制御装置80に接続されている。燃料供給ポンプ52は、制御装置80から出力された制御信号に基づいて、燃料タンク50内の燃料を燃料電池7の燃料流入口7Aに向けて圧送する。
【0024】
ガス排気管53は、燃料タンク50の内部から外部へ延びており二酸化炭素除去装置54、が設けられている。ガス排気管53は、一方端が燃料タンク50内の上部のガスが溜まっている空間に設けられており、他方端が燃料電池7の外部の空間に連通している。
【0025】
二酸化炭素除去装置54、は、ガス排気管53に設けられており、ガス排気管53と連通する中空の容器を備え、ガス排気管53を流れるガス中の二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去材料が内部に配置されている。二酸化炭素除去装置54は、後述するように、不活性ガスとともに燃料から放出されてガス排気管53を流れる、燃料に溶けていた二酸化炭素燃料を除去する。二酸化炭素除去材料は、アミンや重炭酸塩等の水溶液、及び酸化カルシウムの塩類等、二酸化炭素を除去できる公知の如何なる材料も使用可能であり、1種単独又は複数を併用できる。
【0026】
二酸化炭素除去材料の好ましい例としては、アミン類を含有し、当該アミン類を二酸化炭素と可逆的に反応させるアミン系吸収剤が挙げられる。特に、アミン類を粒状の樹脂や多孔質担体に担持させたアミン系吸収剤が好ましい。アミン類を粒状の担体に担持させることで、アミン類が二酸化炭素除去装置54、から流出することを防止できる。また、二酸化炭素除去材料の交換が容易に行えるため、二酸化炭素除去装置54、のメンテナンスを効率的に行うことができる。なお、本明細書における「アミン吸収剤」の用語は、アミン類を含有する二酸化炭素除去材料を意味する。
【0027】
特に好ましいアミン類としては、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピペラジンが挙げられる。アミン系吸収剤の二酸化炭素の主な吸収反応は下記の(式1)又は(式2)の通りである。
2R-NH2 + CO2 → R-NH3 + + R-NH-COO- (式1)
R-NH2 + CO2 + H2O → R-NH3 + + R-NH-CO3 - (式2)
【0028】
バブリング装置60は、不活性ガスタンク61と、不活性ガス供給配管62と、ノズル部63と、流量調整弁64と、を備え、燃料タンク50内に貯留された燃料に不活性ガスを吹き込む。
【0029】
不活性ガスタンク61は、高圧の不活性ガスを貯留している。不活性ガスは、燃料電池内で化学反応しないガスであればよく、例えば、窒素ガスやアルゴンガスを用いる。本実施の形態では、不活性ガスとして窒素ガスを用いる。また、不活性ガスタンク61には、不活性ガス供給配管62の一方端が接続されている。不活性ガス供給配管62の他方端は、燃料タンク50内の底部に設置されたノズル部63が接続されている。ノズル部63は、多数の吹出孔63Aが設けられている。不活性ガスタンク61から不活性ガス供給配管62に流れた不活性ガスは、ノズル部63の吹出孔63Aから燃料タンク50に貯留された燃料に吹き込まれる。
【0030】
ここで、不活性ガスは、図1に示すように、ノズル部63の多数の吹出孔63Aから燃料タンク50に貯留された燃料に、細かい泡B状で吹き込まれる。不活性ガスと二酸化炭素ガスとは容易に混ざる。従って、図2において、矢印Cで示すように、不活性ガスの泡Bに接触している二酸化炭素(CO2)分子は、ギ酸溶液側から容易に不活性ガスの泡Bの内部に入り込んでゆくことで、不活性ガスの泡Bに取り込まれてゆく。さらに、泡Bに取り込まれた二酸化炭素(CO2)分子は、不活性ガスの泡Bとともに燃料タンク50の燃料を浮かび上がってゆき、さらに、燃料内から外へ放出される。以上の様に、燃料に溶けている二酸化炭素(CO2)は、不活性ガスが燃料に吹き込まれることで、燃料内から燃料タンク50内に溜まっているガス内に放出される。
【0031】
流量調整弁64は、図1に示すように、不活性ガス供給配管62に設けられており、制御装置80に接続されている。流量調整弁64は、不活性ガスタンク61から不活性ガス供給配管62に流出する不活性ガスの流量を調整することができる。これにより、流量調整弁64は、制御装置80から出力された制御信号に基づいて、燃料タンク内に貯留された燃料に吹き込む不活性ガスの流量を調整する。
【0032】
排液タンク70は、燃料排出配管71の他方端が接続されており、燃料排出配管71を介して燃料電池7の燃料流出口7Bに接続されている。燃料電池7で使用された燃料(後述)は、燃料流出口7Bから燃料排出配管71に流れて、燃料排出配管71から排液タンク70に流入する。また排液タンク70には、回収配管72の一方端が接続され、回収配管72の他方端の側は、空気極20の排出孔23B(後述)に接続されている。排出孔23Bは、空気極20内を流れた空気(酸素)と、空気極20にて発生した水と、を回収配管72に排出する。これにより、排液タンク70には、燃料排出配管71から流入する燃料電池7内で使用された後の燃料と、回収配管72から流入する空気極20にて発生した水(後述)が蓄えられている。また、排液タンク70には、空気極20内を流れた空気(酸素)が回収配管72から流入する。排液タンク70の上部には、内部と外部を連通する排気口(不図示)が設けられており、排液タンク70の内部の圧力が高まると、排液タンク70内の気体が排気口(不図示)から排液タンク70外へ流出する。
【0033】
制御装置80は、時間を計測できるタイマ81、CPU88等が搭載された電子回路を有している。制御装置80は、CPU88、RAM82、ROM83、タイマ81、EEPROM84等を備えた公知のものである。CPU88は、ROM83に記憶された各種プログラム等に基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAM82は、CPU88での演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROM84は、例えば、燃料電池7の運転の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。上述した様に、制御装置80は、燃料供給ポンプ52、流量調整弁64に接続されており、これらの制御を行う。また、制御装置80は、これらの制御を行うために種々の情報を記憶している。このため、制御装置80は、燃料電池7の発電に関する制御を行うことが出来る。なお、燃料電池7の構造の詳細について、以下に説明する。
【0034】
●[燃料電池7の構造(図3)]
図3は燃料電池7の構成を説明する分解斜視図である。燃料電池7は、図3に示すように、空気極20と燃料極10にて電解質膜30を挟んだ構成を有している。空気極20は、空気極触媒層21、空気極拡散層22、空気極集電体23が積層されて構成されている。燃料極10は、燃料極触媒層11、燃料極拡散層12、燃料極集電体13が積層されて構成されている。
【0035】
空気極集電体23は、厚みが約1~10[mm]程度の導電性を有する板状の金属等である。空気極集電体23には、図1に示すように、電気負荷(例えば、電動モータ)の一方端が接続される。空気極集電体23には、空気(酸素)を空気極拡散層22に拡散させるとともに、空気極20にて発生する水を排出するために、圧送された空気を外部から供給する供給口23Aと、供給口23Aに接続された空気流通溝23Cと、空気流通溝23Cに接続された排出孔23Bとが、設けられている。ここで、供給口23Aには、制御装置80に接続されたエアポンプ(図示省略)により空気が圧送される。
【0036】
空気極集電体23において、供給口23Aは上方に設けられており、排出孔23Bは下方に設けられている。空気流通溝23Cは、空気極集電体23の空気極拡散層22に接触する側の面に、幅が狭い流路として形成されている。空気極20にて発生する水(後述)は、空気流通溝23Cに流入する。圧送された空気(酸素)は供給口23Aから空気流通溝23Cに流入して、空気流通溝23Cを流れると、空気極20にて発生する水とともに、排出孔23Bから回収配管72(図1参照)に排出される。なお、空気流通溝23Cは、燃料流通溝13Bと同形状に形成しても良い。
【0037】
空気極拡散層22は、厚みが約0.05~0.5[mm]程度の層状に形成されている。空気極拡散層22は、水および空気を透過できるとともに、電子伝導性を有する多孔質材であり、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。空気極拡散層22は、空気極集電体23の供給口23Aから流入した空気(酸素)を、拡散させながら空気極触媒層21に導く。外気の空気に含まれる酸素は、空気極拡散層22に浸透して空気極触媒層21の電極触媒粒子に到達する。
【0038】
空気極触媒層21は、厚みが約0.05~0.5[mm]程度の層状に形成されている。空気極触媒層21は、空気極の電極触媒粒子(不図示)と、電極触媒粒子を担持する粒子状の電極触媒担持体(不図示)とを備えている。空気極20の電極触媒粒子は、大気中の酸素を還元する反応の反応速度を促進させる触媒の粒子であり、例えば白金(Pt)粒子を用いることができる。電極触媒担持体は、電極触媒粒子を担持できるとともに、導電性を備える粒子であればよく、例えばカーボン粉末を用いることができる。燃料としてギ酸を用いた場合、空気極触媒層21の電極触媒粒子によって、(式3)に示す酸化還元反応が進行する。なお、生成された水(H2O)は、空気極触媒層21から空気流通溝23Cに流入して、空気極集電体23の排出孔23Bから回収配管72(図1参照)に排出され、回収配管72を経由して排液タンク70に導かれる。
2H+ + 1/2O2 + 2e- → H2O (式3)
【0039】
燃料極集電体13は、厚みが約1~10[mm]程度の導電性を有する板状の金属等である。燃料極集電体13は、燃料極拡散層12に接触する燃料流通面13Aを有しており、燃料流通面13Aには、燃料極拡散層12の側が開口された燃料流通溝13B(燃料流路)が形成されている。燃料流通溝13Bは、淀みなく燃料が流れるように、幅が狭い流路とされている。また、電子e-を回収するために、燃料流通溝13Bの周囲には、燃料極拡散層12に接触するランド部13Eが形成されている。燃料極集電体13には、図1に示すように、電気負荷(例えば、電動モータ)の他方端が接続される。
【0040】
また燃料流通溝13Bは、燃料極集電体13の一方縁部(または他方縁部)から、対向する他方縁部(または一方縁部)へと略水平方向に延びる複数の流通溝部13Cを有している。また複数の流通溝部13Cのそれぞれは、燃料極集電体13の一方縁部または他方縁部の近傍に形成されて略鉛直方向に延びる折り返し溝部13Dにて接続されている。また燃料流通溝13Bは、燃料極集電体13の下方に形成された燃料流入口7Aと、燃料極集電体13の上方に形成された燃料流出口7Bと、に接続されている。
【0041】
従って、燃料流入口7Aに流入された燃料は、流通溝部13Cにて一方縁部の側から他方縁部の側へと導かれ、折り返し溝部13Dにて方向転換されて、次の流通溝部13Cにて他方縁部の側から一方縁部の側へと導かれ、次の折り返し溝部13Dにて方向転換されることを繰り返しながら、つづら折り状とされた燃料流通溝13B内を流れ、燃料極拡散層12中に拡散される。
【0042】
燃料極拡散層12は、厚みが約0.05~0.5[mm]程度の層状に形成されている。燃料極拡散層12は、燃料が内部に浸透できるとともに、電子伝導性を有する多孔質材であり、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。燃料極拡散層12は、燃料極集電体13の燃料流通面13Aに形成された燃料流通溝13Bに流される燃料を、拡散させながら燃料極触媒層11に導く。
【0043】
燃料極触媒層11は、厚みが約0.05~0.5[mm]程度の層状に形成されている。燃料極触媒層11は、電極触媒粒子(不図示)と、電極触媒粒子を担持する粒子状の電極触媒担持体(不図示)とを備えている。燃料極10の電極触媒粒子は、燃料であるギ酸の酸化反応の速度を促進させる触媒の粒子であり、例えばパラジウム(Pd)粒子を用いることができる。電極触媒担持体は、電極触媒粒子を担持できるとともに、導電性を備える粒子であればよく、例えばカーボン粉末を用いることができる。燃料としてギ酸を用いた場合、燃料極触媒層11の電極触媒粒子によって、(式4)に示す酸化反応が進行する。
HCOOH → CO2 + 2H+ +2e- (式4)
【0044】
電解質膜30は、厚みが約0.01~0.3[mm]程度の薄膜状に形成されている。電解質膜30は、燃料極10の燃料極触媒層11と空気極20の空気極触媒層21との間に挟まれており、電子伝導性を持たず、水およびプロトン(H+)を透過できるプロトン交換膜である。電解質膜30には、例えば、Du Pont社製のNafion(登録商標)等のパーフルオロエチレンスルフォン酸系膜を用いることができる。以上で説明した、燃料極触媒層11と、燃料極拡散層12と、電解質膜30と、空気極触媒層21と、空気極拡散層22とが接合されて一体化されたものを、本明細書では、膜/電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と記載する場合もある。
【0045】
●[燃料電池の作動について(図1図3)]
ギ酸水溶液(燃料)は、燃料供給ポンプ52により燃料タンク50内から燃料供給配管51に送りだされて、燃料極集電体13の燃料流入口7Aから、燃料流通溝13Bに流入する。燃料は、燃料流通溝13Bを流れるにつれ、燃料極拡散層12に浸透して、燃料極触媒層11の電極触媒粒子の表面に到達する。そして、燃料極触媒層11の電極触媒粒子の表面上で、上記の(式3)に示すギ酸の酸化反応が進行する。
【0046】
(式3)に示す、ギ酸の酸化反応で二酸化炭素(CO2)およびプロトン(H+)が生成される。二酸化炭素(CO2)は、集まって泡となり、燃料流通溝13B(燃料流路)内を流れる燃料に流されて、燃料極10から排出される。プロトン(H+)は電解質膜30を透過して空気極触媒層21の電極触媒粒子に到達する。また、ギ酸から生成された電子e-は、燃料極拡散層12、燃料極触媒層11、燃料極集電体13を流れ、さらに、燃料極集電体13から外部回路(電気負荷)に流れる。
【0047】
また、燃料電池システム1は、バブリング装置60が燃料タンク50内に貯留された燃料に不活性ガスを吹き込むことで、燃料タンク50に貯留された燃料の二酸化炭素濃度を低減することができる。これにより、燃料供給配管51(燃料供給装置)が燃料タンク内で二酸化炭素濃度を低減させた燃料を燃料電池に供給することができる。燃料電池7の燃料極10では、ギ酸(燃料)の酸化による発熱により、燃料が暖められる。そして、燃料の温度が上昇するにつれて、燃料に対する二酸化炭素の溶解度が下がる。燃料電池システム1では、バブリング装置60を用いて、二酸化炭素濃度を低減させた燃料を燃料電池7に供給することにより、燃料極10において、燃料に対する二酸化炭素の溶解度が下がったとしても、燃料に溶けていた二酸化炭素が燃料に溶けきれなくなって気泡になることを抑止できる。
【0048】
これにより、二酸化炭素ガスの気泡が燃料極10内に滞留して、燃料極10内で燃料の拡散を妨げて、燃料の酸化反応を進みにくくすることにより、発電効率が低下することを抑止できる。また、二酸化炭素ガスの気泡が燃料流通溝13B(燃料流路)内で滞留して、燃料流通溝13B(燃料流路)内の燃料の流れを妨げることにより、発電効率が低下することを抑止できる。従って、燃料電池システム1は、燃料の二酸化炭素濃度をより低減させて、発電効率をより向上させることができる。
【0049】
電子e-は、外部回路(電気負荷)から空気極集電体23へ流れ、さらに、空気極集電体23、空気極拡散層22、空気極触媒層21を流れて空気極触媒層21に到達する。空気極触媒層21の電極触媒粒子表面には、外部回路(電気負荷)からのe-と、電解質膜30を透過したプロトンH+と、空気極拡散層22を透過した外気の酸素とが到達し、上記の(式3)に示す酸化還元反応が進行する。(式3)に示すように、空気極触媒層21の電極触媒粒子表面では水(H2O)が生成されるが、空気極触媒層21の電極触媒粒子表面で生成される水(H2O)は、図1および図3に示す様に、空気極触媒層21から空気流通溝23Cに流入して、空気極集電体23の排出孔23Bから回収配管72に排出され、回収配管72を経由して排液タンク70に貯められる。
【0050】
●[第1の実施の形態の燃料電池システム1の制御について(図4図5)]
次に、図4に示すフローチャートおよび図5に示すグラフを用いて、不活性ガス吹き込み制御の実行処理手順の例等について説明する。なお、制御装置80が起動すると、タイマ81を初期化して、経過時間Tの計測を開始させる。図4に示すフローチャートは、例えば所定時間間隔(例えば、10[ms]間隔))で起動され、起動されると制御装置80は、ステップS110へと処理を進める。
【0051】
ステップS110にて制御装置80は、タイマ81が計測している経過時間Tが所定時間T1以上か否かを判定し、経過時間Tが所定時間T1以上(所定時間T1≦経過時間T)の場合(YES)はステップS130に処理を進め、経過時間Tが所定時間T1未満(経過時間T<所定時間T1)の場合(NO)はステップS120に処理を進める。なお、所定時間T1とは、バブリング装置60が燃料タンク50内のギ酸水溶液(燃料)に不活性ガスを吹き込み続けるものとし、燃料に不活性ガスを吹き込み始めてから、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度が十分低下するためにかかる時間であり、あらかじめ実験データを用いて見積もることができる。経過時間Tが所定時間T1以上(所定時間T1≦経過時間T)の場合(YES)は、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度が十分低下していると判断できる。一方、経過時間Tが所定時間T1未満(経過時間T<所定時間T1)の場合(NO)は、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度が十分低下していないと判断できる。
【0052】
なお、燃料電池システム1では、燃料タンク50内に収容された燃料は、加熱処理により二酸化炭素濃度を低減させた燃料である。これにより、燃料電池システム1は、燃料内に溶けている二酸化炭素濃度を低減させるために必要な、バブリング装置60が燃料タンク50内に貯留された燃料に吹き込む不活性ガスの量を低減し得る。
【0053】
ステップS120に処理を進めた場合、制御装置80は、第1流量Q1で不活性ガスタンク61内の不活性ガスを、燃料タンク50内の燃料に吹き込むよう流量調整弁64に制御信号を出力して、不活性ガス吹き込み制御を終了する。ここで、第1流量Q1は、後述するステップS130での第2流量Q2よりも多い。なお、再び不活性ガス吹き込み制御が実行されたときに、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度が十分低下していないと判断できる場合(ステップS110:NO)にステップS120が再び実行されて、不活性ガスを第1流量Q1で燃料タンク50内の燃料に吹き込む。これにより、燃料の供給開始前は、所定の第1流量Q1以上の不活性ガスを燃料タンク50に貯留された燃料に吹き込む。この様に燃料に不活性ガスを吹き込むことで、上述した様に、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素を除去して、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度を低下させることができる。
【0054】
バブリング装置60から燃料タンク50内で燃料に吹き込まれた不活性ガスは、ガス排気管53から燃料タンク50の外へ排出される。ガス排気管53には、二酸化炭素除去装置54、が設けられている。燃料電池システム1は、燃料タンク50内で、不活性ガスとともに燃料から放出される燃料に溶けていた二酸化炭素を、二酸化炭素除去装置54が除去することで、温室効果ガスの一種である二酸化炭素が燃料電池システム1の外部に排出されることを抑制できる。
【0055】
ステップS130に処理を進めた場合、制御装置80は、第2流量Q2で不活性ガスタンク61内の不活性ガスを、燃料タンク50内の燃料に吹き込むよう流量調整弁64に制御信号を出力して、ステップS140に処理を進める。ここで、第2流量Q2は、上述した第1流量Q1よりも少ない。ステップS130は、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度が十分低下していると判断できる場合(ステップS110:YES)に実行される。
【0056】
バブリング装置60によって、燃料タンク50内に不活性ガスが少量でも流入すれば、燃料タンク50内に流入した不活性ガスがバブリング装置60の内部から外部に出る方向に流れる。そして、外気の二酸化炭素が燃料タンク50内に流入することを防ぐことができる。その結果、燃料タンク50の外の二酸化炭素が燃料に溶けることを防ぐことができる。そこで、ステップS130では、不活性ガスタンク61内の不活性ガスを燃料タンク50内の燃料に吹き込む流量を、第1流量Q1よりも少ない流量の第2流量Q2にしても、燃料タンク50内の燃料の二酸化炭素濃度を低い状態に保つことができると考えられる。
【0057】
ステップS140にて制御装置80は、燃料供給ポンプ52が所定の流量QF1(例えば、約3ml/分)で燃料を圧送するよう、燃料供給ポンプ52に制御信号を出力して活性ガス吹き込み制御を終了する。これにより、流量QF1(例えば、約3ml/分)で燃料が燃料タンク50から燃料電池7に供給されるため、燃料電池7は発電を開始して、電気負荷(例えば、電動モータ)に電力を供給することができる。
【0058】
以上で説明した様に、活性ガス吹き込み制御は、図5に示すように、バブリング装置60が燃料タンク50の燃料に吹き込む不活性ガスのガス流量QGと、燃料供給ポンプ52が燃料電池7に送り出す燃料の燃料流量QFとを、経過時間T=T1のときに切り替える。すなわち、制御装置80が起動(経過時間T=0)してから、所定のT1時間経過するまで(0≦経過時間T≦T1、ステップS110:NO)、制御装置80は、燃料に吹き込む不活性ガスのガス流量QGは第1流量Q1にし(流量QG=Q1)、燃料電池7に送り出す燃料の燃料流量QFは0(流量QF=0)にする(すなわち、燃料電池7に燃料を送り出さない)。
【0059】
一方、経過時間TがT1を超えると(T1≦経過時間T、ステップS110:YES)、制御装置80は、燃料に吹き込む不活性ガスの流量QGは第2流量Q2(流量QG=Q2)にし、燃料電池7に送り出す燃料の燃料流量QFはQF1(流量QF=QF1)にする(すなわち、燃料電池7に燃料を送り出す)。
【0060】
以上の様に、燃料電池システム1は、燃料タンク50に貯留された燃料に吹き込む不活性ガスの流量QGは、燃料電池7へ燃料を供給し始めた後(T1≦経過時間T、ステップS110:YES)の第2流量Q2が、燃料電池へ燃料を供給し始める前(0≦経過時間T≦T1、ステップS110:NO)の第1流量Q1よりも少ない。これにより、燃料電池7が発電する、燃料電池7へ燃料を供給し始めた後において、燃料に吹き込む不活性ガスの使用量を減らしたうえで、燃料の二酸化炭素濃度をより低減させることができる。
【0061】
●[他の実施の形態]
本発明の、第1の実施の形態の燃料電池システム1は、上述した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、図1に示すように、第1の実施の形態の燃料電池システム1は、二酸化炭素除去装置54、が設けられているが、二酸化炭素除去装置54、を設けなくともよい。
【0062】
また、燃料流通溝13Bおよび空気流通溝23Cの形状は、例えば、サーペンタイン流路や平行流路であってもよい。
【0063】
また、燃料タンク50内の燃料は、加熱処理されていない燃料であってもよい。
【0064】
また、ガス排気管53の他端側にタンクを接続し、燃料タンク50内からガス排気管53に排出されるガスを溜めてもよい。
【0065】
燃料電池システム1は、制御装置80に制御された開閉弁をガス排気管53に設けてもよい。加熱処理された燃料を外部から燃料タンク50内に入れて貯留する場合に、バブリング装置60から不活性ガスを燃料タンク50に吹き込ませて、燃料タンク50内を燃料と不活性ガスとで満たした後、開閉弁を閉じることができる。これにより、燃料タンク50内において、加熱処理されて、二酸化炭素濃度が低減された燃料を不活性ガス環境下におき、不活性ガス供給処理を開始する前までに、燃料に燃料タンク50の外に存在する二酸化炭素が溶けることを防ぐことが容易になる。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料電池システム
7 燃料電池
7A 燃料流入口
7B 燃料流出口
10 燃料極
11 燃料極触媒層
12 燃料極拡散層
13 燃料極集電体
13A 燃料流通面
13B 燃料流通溝
13C 流通溝部
13D 折り返し溝部
13E ランド部
20 空気極
21 空気極触媒層
22 空気極拡散層
23 空気極集電体
23A 供給口
23B 排出孔
30 電解質膜
50 燃料タンク
51 燃料供給配管
52 燃料供給ポンプ(燃料供給装置)
53 ガス排気管
54 二酸化炭素除去装置
60 バブリング装置
61 不活性ガスタンク
62 不活性ガス供給配管
63 ノズル部
63A 吹出孔
64 流量調整弁
70 排液タンク
71 燃料排出配管
72 回収配管
80 制御装置
81 タイマ
82 RAM
83 ROM
84 EEPROM
88 CPU
B 泡
C 矢印
Q1 第1流量
Q2 第2流量
QF 燃料流量
QF1 流量
QG ガス流量
T 経過時間
T1 所定時間
図1
図2
図3
図4
図5