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特許7351486格納式ドアハンドルのモータ駆動制御装置及び操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】格納式ドアハンドルのモータ駆動制御装置及び操作方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20230920BHJP
【FI】
E05B85/16 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020569053
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019064548
(87)【国際公開番号】W WO2019238476
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】18176988.6
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ユーシン イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
(73)【特許権者】
【識別番号】516364120
【氏名又は名称】ユーシン、フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ イラルド
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト トロピーニ
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ロッチ
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537532(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016112689(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018101040(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(1)が、ドア(p)と同一平面上にある静止位置と、前記ドアに対して突き出ている作動位置との間で移動可能な、格納式ドアハンドルであって、前記ドアハンドル(1)は、制御機構を備えており、
前記制御機構は、
前記ハンドルによって支えられた第1の回転軸(A7)を中心に回転するように取り付けられた、第1のレバー(7)と、
前記ハンドルの長手方向において、前記第1の回転軸(A7)に平行で前記第1の回転軸(A7)から離れた位置で前記ハンドルによって支えられた第2の回転軸(A6)の周りを旋回するように取り付けられた、第2のレバー(6)と、
少なくとも1つのタイロッド(81、82)であって、ヒンジ付き連結部(801、802)によって前記第1のレバー(7)及び前記第2のレバー(6)に各々連結された端部を有し、前記端部の少なくとも1つは前記タイロッド(81、82)に平行な第1の長方形の開口部(811)を有するタイロッドと、
前記ハンドル(1)を前記静止位置に向かって弾性的にバイアスする弾性バイアス手段(61、71)と、
前記ハンドル(1)を、モータ駆動アクチュエータ(3)を使用して前記静止位置と前記作動位置の間で平行移動させるために、回転軸(A4)を中心に回転するように構成されたカム(4)と、
前記カム(4)を前記タイロッド(81、82)にリンクし、ロッド(5)の平面に対して垂直に延びるピン(51)を含むロッド(5)とを備え、
前記第1のレバー(7)、前記第2のレバー(6)、前記タイロッド(81、82)、及び前記ハンドル(1)が、その変形により前記ハンドル(1)の並進変位を引き起こす変形可能なアセンブリを形成するものにおいて、
前記タイロッド(81、82)は、更に、前記第1の長方形の開口部(811)に平行な第2の長方形の開口部(812)を備えており、前記弾性バイアス手段(61、71)が十分でない場合に、前記カム(4)のオーバートラベルによって、前記ハンドル(1)をモータ駆動により前記作動位置から前記静止位置にスライドさせるために、前記ロッド(5)の前記ピン(51)が前記第2の長方形の開口部を通って延びるように構成されていることを特徴とする格納式ドアハンドル。
【請求項2】
前記第1のレバー(7)の前記軸(A7)、前記第2のレバー(6)の前記軸(A6)、及び前記カム(4)の前記回転軸(A4)は全て互いに平行であることを特徴とする請求項1に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項3】
前記ハンドル(1)の前記長手方向に延びる中央平面の両側に配置され、夫々が前記第1のレバー(7)及び前記第2のレバー(6)に連結された前記端部を有する2つの前記タイロッド(81、82)を備え、
前記タイロッド(81、82)の夫々が、前記ヒンジ付き連結部(801、802)によって前記第1のレバー(7)及び前記第2のレバー(6)に連結された前記端部を有し、
前記端部は、
前記タイロッド(81、82)に平行な前記第1の長方形の開口部(811)と、
前記第1の長方形の開口部(811)に平行な前記第2の長方形の開口部(812)とを有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の格納式ドアハンドル。
【請求項4】
前記ロッド(5)の前記ピン(51)が延びる前記第2の長方形の開口部(812)は、前記第1の長方形の開口部(811)に平行であり、前記第1の長方形の開口部(811)よりも長い長さを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項5】
前記カム(4)は、前記ハンドル(1)をスライドさせるために前記軸(A6)の周りを回転させるように、前記第2のレバー(6)を支える横方向の接触面(43)を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項6】
前記カム(4)は、平面(41)を有し、前記平面(41)に、この平面(41)に対して垂直な方向から装着によって前記ロッド(5)を受け入れるように構成された固定ピン(44)を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項7】
前記カム(4)は、前記モータ駆動アクチュエータ(3)の電気モータの出力軸に直接取り付けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項8】
前記変形が前記ハンドル(1)の前記並進変位を引き起こす前記変形可能なアセンブリは、前記変形がバイアス手段(61、71)の効果によって及び前記モータ駆動アクチュエータ(3)の効果によって可逆的であるように構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項9】
前記ハンドル(1)を前記静止位置に向かって弾性的にバイアスする前記弾性バイアス手段(61、71)は、前記第2のレバー(6)の前記回転軸(A6)に固定され、前記第2のレバー(6)に前記静止位置に向かってバイアス力を加えるための前記ハンドルの固定用サポート(2)に支持された少なくとも1つのねじりばね(61)を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項10】
前記ハンドル(1)を前記静止位置に向かって弾性的にバイアスする前記弾性バイアス手段(61、71)は、前記第1のレバー(7)の前記回転軸(A7)に固定され、前記第1のレバー(7)に前記静止位置に向かってバイアス力を加えるための前記ハンドルの固定用サポート(2)に支持された少なくとも1つの二重ねじりばね(71)を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の格納式ドアハンドル。
【請求項11】
前記ドア(p)に固定された前記請求項1~10のいずれか1項に記載のハンドル(1)を備える自動車(Ve)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のドアハンドル(1)を移動させるための操作方法であって、
前記ハンドル(1)の前記静止位置から作動を開始して、前記カム(4)が、前記第2のレバー(6)の回転およびその前記作動位置への前記ハンドル(1)の前記並進変位を引き起こすために、前記静止位置から前記作動位置に向かって第1の方向に回転し、
前記ハンドル(1)の前記作動位置から開始して、前記カムが前記第1の方向とは反対の第2の方向に戻り、前記静止位置に戻り、前記変形可能なアセンブリが、前記ハンドル(1)を前記静止位置に向かって弾性的にバイアスするために、前記弾性バイアス手段(61、71)によって加えられるバイアス力を受け、
もし、前記弾性バイアス手段(61、71)によって加えられる前記バイアス力が、前記ハンドル(1)を前記静止位置に向けてバイアスするのに十分でない場合、
前記モータ駆動アクチュエータ(3)は、前記ロッド(5)の前記ピン(51)を介して前記タイロッド(81、82)を引っ張って、前記ハンドル(1)を復帰させるために、前記第1の方向とは反対の前記第2の方向に、前記カム(4)によるモータ駆動回転により前記オーバートラベルを実行することを特徴とするドアハンドル(1)を移動させるための操作方法。
【請求項13】
前記ハンドル(1)前記制御機構は自動車のドアに固定されており、前記モータ駆動アクチュエータ(3)は前記カム(4)による前記モータ駆動回転を引き起こし、前記自動車が動いているときにのみ前記オーバートラベルを実行することを特徴とする請求項12に記載のドアハンドル(1)を移動させるための操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルがドアと同一平面にある静止位置と、ハンドルがドアに対して突出した作動位置との間で移動可能なドアハンドルの制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車産業において、格納ハンドルを備えたドアが知られている。これらには、モータ駆動による展開が可能なものが含まれている。
更に、このハンドルの静止位置から作動位置への移動のために、旋回制御機構又は並進制御機構のいずれかを使用することが知られている。現在は、これらの機構の両方が使用されている。
【0003】
特許文献1には、旋回制御機構を備えた自動車のドアハンドルが開示されている。この車ドアのハンドルは、
ドアを開けるために、車ドアのロックを作動させるように構成された作動要素と、ドアのロックを解除するために作動要素と協調するように構成された把持要素とを備え、この把持要素は把持部分を含み、
この把持要素は、把持部分がドアの外側パネルと同じ高さになる格納位置と、把持部分がアウターパネルに対して突出し、把持可能となるアクティブ位置との間で移動可能であり、
この把持要素は作動要素と協働し、ハンドルが作動要素を駆動してロックを作動させ、ドアのロックを解除する開放位置とし、そして最後に、駆動機構及び把持要素と協働するアクチュエータレバーにより、把持要素が格納位置とアクティブ位置との間で駆動される。
ハンドルは、グリップ要素が開放方向に沿って引っ張られると、グリップ要素が作動要素を駆動し、次に、ロックを作動させてドアのロックを解除するように構成されている。この格納式ドアハンドルの機構は、本質的にモータ駆動であり、ハンドルを格納に静止させ、また、アクティブな位置に向けて、すなわち、把持可能な位置に向けて駆動する。ドアを開けた後、ハンドルは、バネなどの弾性手段を使用して、格納位置に戻される。
【0004】
更に、特許文献2には、並進制御機構を備えた自動車のドアハンドルとして、収納状態、展開状態、及び動作状態の3つの間で移動可能なハンドルを含む格納式ハンドル配置に関する発明が開示されている。この装置は、夫々が支持構造及びハンドルにリンクされた第1及び第2の手段を有する機構によって制御される。
これらの手段の少なくとも1つは、展開状態と動作状態との間のハンドルの動きに応答して移動可能なピボット軸を規定するヒンジを介して、支持構造に連結されている。ピボット軸のこの動きにより、例えばボーデンケーブルに作用するクランクを介して、ハンドルに関連付けられたドア又は別のクロージャーのロックを解除できる。
このような並進機構によって開かれる格納ハンドルに関連する発明は、特許文献3、特許文献4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】EP3106596A1
【文献】WO2011/086144A1
【文献】DE102016112689A1
【文献】US2016298366A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置の欠点は、ハンドルが静止位置からアクティブ位置に通過するために延びる開口部に、何らかの物質が存在する場合、弾性手段は、ハンドルをその静止位置に向かって引っ込めてドアと同じ高さにするには十分な力が無いということである。最悪の事例は、開口部における氷や霜の存在である。
【0007】
前記並進制御機構には、かなりの負荷に耐えるという利点があるが、面倒であるという欠点がある。特許文献2で提示されているものは比較的コンパクトであるが、これはモータ駆動のアクチュエータがないためである。
【0008】
従って、従来技術の大きな問題は、ハンドルの展開と引き込みのために、人のアクションが必要なことである。更に、ハンドルが静止位置からアクティブ位置に通過するために延びる開口部に物理的なものが存在する場合、弾性手段の力が、ハンドルをドアと同じ高さの静止位置に向かって引っ込めるのに十分ではない可能性がある。最も恐れられている例は、氷や霜の存在である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の問題に対処するために、特に、ラッチのロックを解除するのに使用された後、ハンドルの引き込みを妨げる望ましくない物理的な存在の問題を回避するために、ハンドルがドアと同一平面にある静止位置と、ハンドルがドアに対して突出した作動位置との間で移動可能なドアハンドルが提供される。このハンドルは、制御機構を備えており、前記制御機構は、
ハンドルによって支えられた第1の回転軸を中心に回転するように取り付けられた第1のレバーと、
ハンドルの長手方向において、第1の回転軸に平行で第1の回転軸から離れた位置でハンドルによって保持された第2の回転軸の周りを旋回するように取り付けられた、第2のレバーと、
ヒンジ付き連結部によって第1のレバー及び第2のレバーに連結された端部を有する、少なくとも1つのタイロッドであって、その少なくとも1つは、このタイロッドに平行な第1の長方形の開口部を有するタイロッドと、
ハンドルを静止位置に向かって弾性的にバイアスする弾性バイアス手段と、
モータ駆動のアクチュエータを使用してハンドルを静止位置と作動位置の間で移動させるために、その軸を中心に回転するように構成されたカムと、
カムをタイロッドにリンクし、ロッドの平面に対して垂直に延びるピンを含むロッドとを含み、
前記第1のレバー、前記第2のレバー、前記タイロッド、及び前記ハンドルが、変形可能なアセンブリを形成し、その変形によって前記ハンドルが並進変位するものにおいて、
前記タイロッドは、更に、前記第1の長方形の開口部に平行な第2の長方形の開口部を備えており、弾性バイアス手段が十分でない場合に、カムのオーバートラベルによって、ハンドルをモータ駆動により作動位置から静止位置にスライドさせるために、ロッドのピンが第2の長方形の開口部を通って延びるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、本発明によるドアハンドル、第1のレバーの回転軸、第2のレバーの回転軸、及びカムの回転軸の全てが互いに平行である。これにより、ドアの幅ではなく長さに関してハンドルが占める体積を拡張できると同時に、コンパクトさが増し、かさばりが軽減される。
【0011】
ハンドルを静止位置から作動位置に向かって引き抜く際の安定性を高めるために、本発明によるドアハンドル、ハンドルの長手方向に延びる中央平面のいずれかの側に配置され、夫々がヒンジ付き連結部によって第1のレバー及び第2のレバーに連結された端部を有する2つのタイロッドを含み、
中央平面の 両端の少なくとも1つには、
タイロッドに平行な第1の長方形の開口部と、
第1の長方形の開口部に平行な第2の長方形の開口部がある。
【0012】
好ましくは、本発明によるドアハンドル、第1の長方形の開口部に平行であり、ロッドのピンが延びる第2の長方形の開口部は、第1の長方形の開口部の長さよりも長い長さを有する。実際に、2つの長方形の開口部には異なる機能がある。
第1の開口部は、それ自体が既知のラッチのロック解除機能を提供し、この機能は、作動位置に達したときにドアを開けたいユーザが、(ボーデンケーブルを引っ張ることにより)加えた力に伴う回転によって実現される。第2の開口部は、本発明に関するものであり、カムの移動により異なる位置の採用を可能にし、カムが異なる角度位置にある間、ロッドのピンが第2の開口部内を移動できる。
従って、第1の長方形の開口部におけるロック解除に必要な移動は、ロック解除を容易にするために短いことが好ましく、一方、第2の開口部における移動及びモータ駆動による引き込みのためのオーバートラベルは、ハンドルが把持を容易にするのに十分に展開されなければならないため、長いほうが良い。
【0013】
好ましくは、本発明によるドアハンドルは、カムが第2のレバーに横方向の接触面ベアリングを有し、ハンドルをスライドさせるためにその軸の周りを回転させるようになっている。並進運動を生成するためのこの恒久的な接触は、取り付けられたピンによるドライブよりも少ないノイズを生成する。これは、ドアを開くために使用される度にハンドルを展開するための永続的な機能である。
【0014】
更に、また好ましくは、カムは、平面に垂直な方向において、装着によってロッドを受け入れるように構成された固定ピンが出てくる平面を有する。これにより、モータ駆動により、オーバートラベルが発生した場合にタイロッドを引っ張ることができ、機構が破損する可能性が低くなる。
【0015】
よりコンパクトにするために、理想的には、本発明によるハンドルのカムは、アクチュエータの電気モータの出力軸に直接取り付けられる。
【0016】
好ましくは、本発明によるドアハンドル、ハンドルの並進変位を引き起こす変形可能なアセンブリの変形が、バイアス手段の効果及び/又はモータ駆動アクチュエータの効果によって可逆的であるように構成される。この可逆性により、デフォルトで弾性手段を使用でき、氷や霜などの物理的な存在によって閉塞した場合は、モータ駆動によりハンドルを復帰できる。
【0017】
好ましくは、ハンドルを静止位置に向かって弾性的にバイアスするための手段は、レバーにその静止角位置に向かってバイアス力を加えるために、第2のレバーの回転軸に固定され、ハンドルの固定支持部に支持された少なくとも1つのねじりばねを含んでいる。
【0018】
好ましくは、ハンドルを静止位置に向かって弾性的にバイアスする弾性バイアス手段は、さらに、第2のエネルギー供給を有するために、そしてより堅牢性にするために、第1のレバーの回転軸に固定され、第1のレバーに第2のバイアス力を及ぼすようにハンドルの固定支持部に支持される二重ねじりばねを備えている。
【0019】
好ましくは、本発明は、ドアに固定された本発明によるドアハンドルを含む自動車のドアもカバーする。
【0020】
本発明はまた、本発明による機構を備え、以下の連続するステップを含む、ドアハンドルを変位させるための方法に関する。
ハンドルの静止位置から開始して、カムが静止角位置から作動角位置に向かって第1方向に回転し、第2のレバーの回転とハンドルの作動位置への並進変位を引き起こし、
ハンドルの作動位置から開始して、カムが第1の方向とは反対の第2の静止角位置に戻り、そして、
変形可能なアセンブリは、ハンドルをその静止位置に向かって弾性的にバイアスするための手段によって加えられるバイアス力を受ける。
もし、弾性バイアス手段によって加えられる力がハンドルをその静止位置に向けてバイアスするのに十分でない場合、アクチュエータは、ロッドのピンを通してタイロッドを引っ張ってハンドルを復帰させるために、カムによるモータ駆動回転により、第1の方向とは反対の第2の方向へのオーバートラベルを実行する。
【0021】
好ましくは、本発明による方法における、ハンドル制御機構が自動車のドアに固定され、カムのモータ駆動による回転を引き起こすアクチュエータは、自動車が動いているときにのみオーバートラベルを実行する。車が動いているときにこの方法が実行されると、多くの利点が得られる。
【0022】
実際、まず第1に、これは、ユーザがまだハンドルの開口部に指を置いたままで、アクチュエータに指が引っ掛かっている間に、弾性手段の力よりも大きな力がかかるモータ駆動によるハンドルの引き込みが発生するのを回避することを可能にする。
【0023】
第2に、車が動き始めたら、アクチュエータにより生ずるノイズは、ユーザによってあまり知覚されないであろう。
【0024】
最後に、第3に、運動学を電子制御してオーバートラベル角位置でそれを遮断することにより、慣性効果によってハンドルが外れるのを防ぐことができる。従って、事故の際にドアが開かれるのを回避するための追加的な手段が得られる。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例による、ドアハンドル斜視図である。
図2A】前記ハンドルの、自動車のドアへ固定されるように構成されたサポートを示す図である。
図2B】前記ハンドルの、第1のレバー及びその弾性バイアス手段の拡大図である。
図3】本発明による前記ドアハンドル、背面図である。
図4】本発明による前記ドアハンドルの制御機構における、変形可能なアセンブリを示す斜視図である。
図5A】本発明による前記ドアハンドルが、作動位置でブロックされる場合の、操作の1つのステップを示す図である。
図5B】前記ドアハンドルが、作動位置でブロックされる場合の、操作の他のステップを示す図である。
図5C】前記ドアハンドルが、作動位置でブロックされる場合の、操作の他のステップを示す図である。
図5D】前記ドアハンドルが、作動位置でブロックされる場合の、操作の他のステップを示す図である。
図6】ドアに固定された本発明による前記ハンドルを備えた、車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面を参照して、本発明の一実施例を詳述する。
本発明は、ドアのハンドル1関する。このハンドル1は、ハンドルがドアと同一平面上にある静止位置と、ハンドルがドアに対して突出した作動位置との間で移動可能である。
【0028】
制御機構は、ハンドルをドアへ固定するためのボス21を備えた、ケース又はサポート2を備えている(図2Aを参照)。ハンドル1は、ドアの開口部内をスライドするようにして、このサポートに取り付けられる。
【0029】
図1に、本発明の実施例によるハンドル1が示されている。
このハンドルの変位機構は、第1のレバー7を含んでいる。この第1のレバーは、第1のヒンジ付き連結部801によってタイロッド81に連結されており、かつ、ハンドルによって保持された軸A7(図3を参照)にヒンジで取り付けられている。
【0030】
より具体的に説明すると、第1のレバー7は、大きな安定性を確保するために、中央平面に関して対称に、ハンドルの長手方向に沿って延びる、2つのタイロッド81および82に連結されている。そして、第1のヒンジ付き連結部801の反対側の端部に、タイロッド81および82がヒンジによって連結されている第2のレバー6がある。このヒンジは、第2のレバー6によって支えられる回転軸A6(図3参照)を備え、この回転軸A6はタイロッド81および82のそれぞれに形成されこれらのタイロッドに平行に延びる第2のヒンジ付き連結部802の長円形の開口部811に組み込まれている。

【0031】
従って、第2のヒンジ付き連結部802の長方形の開口部は、タイロッドの長手方向において、各タイロッド81、82にクリアランスを与える。
もちろん、例えば図3及び図4に示すように、本発明には、1つのタイロッドに1つの単一のクリアランスが必要である。
【0032】
また、図1において、本発明によるドアハンドル制御機構には、カム4によりレバー6及び7並びにタイロッド81及び82を変形させるための、第2のレバー6に直接軸支された、アクチュエータ3が存在する(図3及び図4を参照)。
【0033】
実際、第1のレバー7は、ハンドル1の並進展開の安定性のためのサポートとして機能し、一方、第2のレバー6は、カム4を直接支えるレバーである。
【0034】
図1に、軸A6に沿って配置された2つのねじりばね61が示されている。これらは、ハンドルがラッチのロックを解除してドアを開くために使用されると、ドアハンドルを作動位置から静止位置に向かってバイアスするように機能する。
【0035】
図2Aには、ケース又はサポート2、並びにハンドルと、自動車のドア上のサポートとによって構成されるドアハンドルのセットを固定するための、固定ボス21が示されている。
【0036】
図2Bには、ハンドルがラッチのロックを解除してドアを開くために使用された後、レバー7を作動位置から静止位置に向かって弾性的にバイアスする手段として機能する、二重ねじりばね71が強調表示されている。
【0037】
図3は、本発明によるハンドルの機構に並進展開の機能を持たせると同時に、コンパクト性を向上させるための、互いに平行な、第1のレバー7の回転軸A7、第2のレバー6の回転軸A6、及び、カム4の回転軸A4を示している。
【0038】
本発明による装置は、車(Ve)のドア(p)内の地面に垂直な平面、すなわち別の機能のために意図された空間を占める可能性が高くより扱いにくい垂直な平面で延びるものではなく、地面に平行な平面に縦方向に延びるという利点がある。
【0039】
同じ図3には、カム4をタイロッド81に連結する、ロッド5が示されている。このロッド5は、図4にも示され、このロッド5の平面に対して垂直に延びるピン51がある。
【0040】
図4には、変形可能なアセンブリを構成する第1のレバー7、第2のレバー6、及びタイロッド81、82が示されており、それらの変形により、ハンドル1の並進変位を引き起こす。
【0041】
この変位の動きは、平面41及び横方向接触面43を有するカム4によって生成される。装着時にロッド5を受け入れるように構成された固定ピン44は、平面41に垂直な方向において、平面41から外に伸びている。
【0042】
ロッド5の反対側にはピン51があり、このピンは、タイロッド81に設けられた第2の長方形の開口部812を通って、固定ピン44と平行に延びている。
【0043】
カム4は、出力シャフト42を備えたモータによって支えられた回転軸A4に取り付けられ、モータはアクチュエータ3に固定されている。アクチュエータは、ハンドルを展開する又は引き込むための制御信号を受信するように構成された、コントローラに接続されている。
【0044】
ここで、本発明の実施例によるドアハンドル制御機構の動作モードを、図5A図5D及び図6を使用して説明する。
【0045】
本発明の実施例によるハンドル1を作動位置に向けるために、展開制御信号が、コントローラ(図示せず)によってモータ駆動アクチュエータ3に送信される。
【0046】
図5Aには、カム4すなわち展開部材の静止角位置が示されている。このカムは、図5Aの矢印F1によって示されるように時計回り方向に回転駆動され、その結果、第1のレバー7及び第2のレバー6は、ハンドル1を作動位置に向かって(図5Aの矢印F2を参照)並進運動させるために、カムの移動に伴って夫々変位する。
【0047】
上記のプロセスと同時に、指示としてロック解除信号を、車Veのドアpに設けられたラッチに関連する電気ロック解除部材に送信することが指定される。
【0048】
この作動位置から開始して、ハンドル1を矢印F2の方向に引っ張ると、次に、ドアを開くために、既知の方法で、ボーデンケーブルを引っ張り、ハンドルを回転させる動作が開始する(図示略)。実際、ボーデンケーブルは、ドアに設けられたラッチにリンクされている。
【0049】
ハンドルが作動位置に達すると(図5Bを参照)、ユーザがハンドルをつかんで引っ張れば、ドアpが開くようになる。
【0050】
通常の状態では、すなわち、ハンドルの開口部に物理的な存在が無い場合、続いて、ねじりばね61及び二重ねじりばね71が夫々第1のレバー7及び第2のレバー6に作用して、ハンドルを復帰させると同時に、モータは、所定の時間内に、カム4をその最初の静止角位置に向けて移動させる。
【0051】
この場合、カム4の回転は反時計回り方向に行われる。この運動学的連鎖では、カム4は常にその側面43が第2のレバー6と接触したままである(図4を参照)。
【0052】
図5Cは、実際には、ハンドルの開口部に氷又は霜(図示せず)などの遮断要素が存在しており、ハンドル1がその静止位置に復帰するのを妨げている状況を示している。この場合、カム4の回転は反時計回りに行われるが、第2のレバー6はカム4との接触を失っている。そのため、ロッド5のピン51は、カムの反時計回りの回転によって駆動され、カムに向かって第2の長方形の開口部812内へ変位することが示されている。
【0053】
その後、図5Dにおいて、ハンドル1が引き込められていないことを検出したコントローラは、アクチュエータ3がカム4の反時計回りの回転を再開するように、アクチュエータ3にオーバートラベル命令を与えることができる。この検出は、任意の方法で行うことができ、例えば、位置センサタイプの検出手段を用いることができる。
【0054】
このオーバートラベルにより、タイロッド81をモータ駆動により引っ張るために、ロッド5のピン51をタイロッド81のカム4に近い停止位置に向かって移動させ、各第1のレバー7及び第2のレバー6を介して、ハンドル1を押し込む。
【0055】
静止位置に向かう引き込みの方向は矢印F3によって示され、オーバーストロークの方向は矢印F4によって示されている。
【0056】
理想的には、上記のような静止位置へのモータ駆動による引き込みの指示は、車が動いているときに与えられる。従って、人により知覚されるノイズが低減され、ハンドルの引き込み中にユーザの手が引っ掛かる可能性がないことが保証される。また、これにより、例えばハンドルが図5Dのオーバートラベル角位置に保持されている場合の様に、衝突が発生した場合の不要な開口部の存在も回避される。
【産業上の利用分野】
【0057】
本発明によるドアハンドル制御機構は、図6に示されるように、任意の車のドアpで使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ハンドル
2 ハンドルの固定用サポート
3 モータ駆動アクチュエータ
4 カム
41 カムの表面
43 接触面
44 固定ピン
5 ロッド
51 ロッドのピン
6 第2のレバー
61 弾性バイアス手段
7 第1のレバー
71 弾性バイアス手段
81 タイロッド
82 タイロッド
801 第1のヒンジ付き連結部
802 第2のヒンジ付き連結部
811 第1の長方形の開口部
812 第2の長方形の開口部
A4 カムの回転軸
A6 第2の回転軸
A7 第1の回転軸
P ドア
Ve 自動車
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6