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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/10 20060101AFI20230920BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230920BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230920BHJP
   F24F 1/0038 20190101ALI20230920BHJP
【FI】
F24F7/10 A
F24F7/08 A
F24F7/007 101
F24F1/0038
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023537536
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032836
(87)【国際公開番号】W WO2023037406
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307001142
【氏名又は名称】株式会社 エコファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村上 尊宣
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-117027(JP,A)
【文献】特開2017-003229(JP,A)
【文献】特開2019-190676(JP,A)
【文献】特開2015-148357(JP,A)
【文献】特開平06-193290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
F24F 7/08
F24F 7/007
F24F 1/0038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造であり、床面部、天井面部、及び壁面部により囲まれた大規模空間が形成された施設に設置される換気システムであって、
前記上層階に設置され、該上層階の所定の領域を空調対象とし、冷媒が循環する熱媒体回路を有する空気調和機と、
前記上層階の所定の位置に設置され、前記上層階の前記壁面部の所定の位置に形成された給気孔に接続されたダクト、該ダクトから導入口に導入された外気を前記大規模空間に給気する給気口に通じる外気導入路が形成された筐体、前記熱媒体回路の経路上に設置され、前記導入口から導入された外気を冷却または加熱する熱交換器、前記給気口が形成された給気室に配され前記導入口から前記給気口に向かう気流を生成する給気ファン、前記外気導入路上であって、前記熱交換器の下流側に配され、前記導入口から導入された外気を浄化する給気フィルタを有する外気調和機と、
前記床面部の所定の位置に形成された床面排気孔、前記下層階の前記壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔、前記床面排気孔から前記壁面排気孔に連通する排気誘導路から構成された排気部と、を備える
換気システム。
【請求項2】
前記外気調和機と前記空気調和機とを一組の給気ユニットとして、該給気ユニットが所定の間隔で並設されており、前記床面排気孔は、前記大規模空間の平面視において、隣接する前記給気ユニットの中心線上に位置する
請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記空気調和機は、前記熱媒体回路により接続された室内機、及び室外機を有し、
前記熱媒体回路は、
前記室外機から前記室内機に冷媒を送る第1の冷媒配管と、
前記室内機から前記外気調和機に冷媒を送る第2の冷媒配管と、
前記外気調和機から前記室外機に冷媒を送る第3の冷媒配管と、を有する
請求項1または請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記下層階には前記床面部を含むアリーナ部が形成されるとともに、該アリーナ部を空調対象とする輻射式パネルが設置され、
該輻射式パネルは、前記床面部から前記上層階に至るまでの高さを有し、前記壁面部の全周に設置された
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の換気システム。
【請求項5】
前記上層階は、背面側である前記壁面部から前面側に向けて下方に傾斜する階段状のスタンド部であり、
該スタンド部の前面側には前面通路、背面側には背面通路がそれぞれ形成され、
前記外気調和機は前記背面通路に設置された
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システム、及び換気方法に関する。詳しくは、大規模空間を有する屋内施設における利用者の活動領域を効率的に換気し、快適な環境を実現する換気システム、及び換気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建造物の高気密化・高断熱化が進み、十分な換気を行わないと二酸化炭素濃度が高くなり、特に新設の建造物などではホルムアルデヒドや揮発有機化合物(VOC:Vapor Organic Composition)の濃度が高くなりすぎることがある。また、不十分な換気により湿度が高くなってカビやダニが発生し、アレルギーを引き起こす原因ともなっている。
【0003】
建造物の中でも、体育館をはじめとする大規模空間を有する屋内施設は、各種運動競技を行う場であるとともに、非常災害時には地域住民の応急避難場所として重要な役割を担っている。特に、近年では、新型コロナウイルスを始めとする感染症予防の対策として、居住空間内に定期的に外気を取り入れ、換気の悪い密閉空間をできるだけ避けることが推奨されている。このような密閉空間内における空気汚染に対処するために、建造物全体を対象として一定量の空気を24時間換気し続ける24時間換気システムが採用されている。
【0004】
大規模空間を有する施設において採用されている換気システムとしては、例えば2階部分に形成された換気窓から外気を流入させ、大規模空間を循環した内気を1階部分に形成された換気窓から屋外へ排気させるといった自然換気方法が採用されている。
【0005】
一方、大規模空間における換気促進を目的として、機械換気による強制的な換気システムも数多く提案されている。機械換気を採用した換気システムとしては、給気用送風機によって外気を室内に強制的に取り入れ、かつ排気用送風機によって内気を屋外へ強制的に排気する第1種換気方式と、給気用送風機によって強制的に給気した外気を自然排気する第2種換気方式と、自然給気によって大規模空間に給気した外気を排気用送風機によって屋外へ強制的に排気する第3種換気方式がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、大規模空間における空調の効率を高めるための第1種換気方式を採用した換気システムが開示されている。具体的には、外気を導入する給気用送風機を空調対象となる大規模空間の床面付近の高さ位置に設置するとともに、室内の空気を屋外に排気する排気用送風機を大規模空間の壁面であって天井までの高さの50%以上の高さに設置する。
【0007】
このような構成により、太陽光により暖められた天井付近に滞留する高温空気が徐々に下降する途中において排気用送風機を通じて屋外に排気されるため、高温空気が大規模空間の床面まで下降することを防止できる。従って、室内で活動する利用者の活動領域の温度上昇を抑制し、さらに大規模空間の下部には給気用送風機から外気が導入されるため、活動領域における換気も促進することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-070480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した特許文献1によれば、排気用送風機を任意の位置に設置することにより、大規模空間の換気促進と空気調和機の効率化を実現できるものとなっている。一方、特許文献1に係る換気システムにおいては、外気がそのまま給気用送風機を通じて室内に流れ込むため、例えば外気温の低い冬場においては、低温の外気がそのまま室内に流入することになる。
【0010】
さらに、給気用送風機が屋内施設の床面付近に設けられているため、室内に流入した低温の外気は天井方向に上昇することなく屋内施設の利用者の活動領域である床面付近に滞留することになる。そのため、活動領域における温度下降や換気ムラが生じ、利用者にとって活動環境が悪化することが懸念される。
【0011】
以上のような問題に対処するために、大規模空間の空調を行うべく空気調和機を運転すると、給気用送風機により常時低温の外気が室内に流入する状況においては、空気調和機の運転負荷が大きくなるとともに、大規模空間の温度を目標温度まで上げるには長時間を要するものとなる。
【0012】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、大規模空間を有する屋内施設における利用者の活動領域を効率的に換気し、快適な環境を実現する換気システム、及び換気方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の換気システムは、上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造であり、床面部、天井面部、及び壁面部により囲まれた大規模空間が形成された施設に設置される換気システムであって、冷媒が循環する熱媒体回路を有する熱源装置と、前記上層階に設置され、導入口から導入された外気を前記大規模空間に給気する給気口に通じる外気導入路が形成された筐体、前記熱媒体回路の経路上に設置され、前記導入口から導入された外気を冷却または加熱する熱交換器を有する外気調和機と、前記床面部の所定の位置に形成された床面排気孔、前記下層階の前記壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔、前記床面排気孔から前記壁面排気孔に連通する排気誘導路から構成された排気部とを備える。
【0014】
ここで、冷媒が循環する熱媒体回路を有する熱源装置を備えることにより、例えば熱源装置として空気調和機や冷却水循環装置の熱媒体回路(例えば、フロンガスや代替ガス等の冷媒、温水または冷水、加熱または冷却用のガス等が含まれる。)に、後記する外気調和機の熱交換器を組み込むことで、外気調和機に導入された外気が熱交換された後に大規模空間に向けて給気することができる。
【0015】
また、上層階に設置され、導入口から導入された外気を大規模空間に給気する給気口に通じる外気導入路が形成された筐体、熱媒体回路の経路上に設置され、導入口から導入された外気を冷却または加熱する熱交換器を有する外気調和機調和機を備えることにより、外気を大規模空間に給気して換気を促進することができる。そして、熱交換器が熱源装置の熱媒体回路に組み込まれていることにより、熱源装置の運転と連動して供給される熱媒体によって、外気調和機に導入された外気が熱交換され、熱交換後の外気を大規模空間に給気することができるため、大規模空間の温度を適温に保つことが可能となる。
【0016】
さらに、外気調和機により温度調整した外気温が大規模空間に給気されることにより、外気の温度(湿度)と大規模空間内の温度(湿度)との間に差が生じるため、瞬時拡散効果により大規模空間の全体に外気を循環させることができる。
【0017】
また、床面部の所定の位置に形成された床面排気孔、下層階の壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔、床面排気孔から壁面排気孔に連通する排気誘導路から構成された排気部を備えることにより、外気調和機から給気された外気は大規模空間を循環した後に床面排気孔から排気される。そして、床面排気孔から排気された外気は、排気誘導路を通じて壁面排気孔を通じて屋外に排気される。なお、排気部の所定の位置に排気用送風機を設置することで、強制的に排気する第1種換気方式とすることも可能である。
【0018】
ここで、大規模空間を有する多くの施設は床下空間が形成されているが、この床下空間に湿気が溜まることにより床面部の膨張や収縮が生じる。この点、床面排気孔から壁面排気孔に連通する排気誘導路を形成することにより、床下空間内の通気性を確保することで床下空間に湿気が溜まることが防止される。
【0019】
また、熱源装置は上層階に設置され、上層階の所定の領域を空調対象とする空気調和機である場合には、空気調和機により大規模空間を所定の温度に保つことができる。また、前記の通り、外気調和機から給気される外気は熱交換において所定の温度に冷却、又は加熱された後に大規模空間に向けて給気されることにより、空気調和機の設定した目標温度に達するまでの空気調和機の稼動時間が短時間となり、空気調和機の運転負荷を低減することができる。
【0020】
また、外気調和機と空気調和機とを一組の給気ユニットとして、該給気ユニットが所定の間隔で並設されている場合には、大規模空間の大きさに応じて複数の給気ユニットを設けることで、大規模空間を適温に保つことができるとともに短時間で換気を行うことができる。さらに、外気調和機と空気調和機とを近接して配置することで、空気調和機の熱媒体回路に外気調和機の熱交換器を簡単に組み込むことができる。
【0021】
また、床面排気孔は、大規模空間の平面視において、隣接する給気ユニットの中心線上に位置する場合には、大規模空間の全体に循環された外気を最も効率的に屋外に排気することができるため、換気効率を高めることができる。
【0022】
また、空気調和機は、熱媒体回路により接続された室内機、及び室外機を有し、熱媒体回路は、室外機から室内機に冷媒を送る第1の冷媒配管と、室内機から外気調和機に冷媒を送る第2の冷媒配管と、外気調和機から室外機に冷媒を送る第3の冷媒配管とを有する場合には、簡単な配管構造により空気調和機と外気調和機を一体化することができる。
【0023】
以上のような構成により、まず冷房運転時には、室外機の減圧器で低温の液体になった冷媒が第1の冷媒配管を通じて室内機に送られ、室内機の熱交換器を冷却する。そして室内機の熱交換器を冷却した冷媒の一部は第2の冷媒配管を通じて外気調和機に送られ、外気調和機の熱交換器を冷却する。その後、冷媒は第3の冷媒配管を通じて室外機に再び戻り、減圧器で低温の液体となって第1の冷媒配管に送られる。このサイクルを繰り返すことで、室内機、及び外気調和機の熱交換器は効率的に冷却され、大規模空間の換気を促進するとともに大規模空間の室内温度を目標温度に保つことができる。
【0024】
一方、暖房運転時には、前記した冷房運転時と逆のサイクルとなる。即ち、室外機で高温の気体となった冷媒が第3の冷媒配管を通じて外気調和機に送られ、冷媒の熱により外気調和機の熱交換器が温められる。さらに、冷媒は第2の冷媒配管を通じて室内機に送られ、室内機の熱交換器を温めた後に第1の冷媒配管を通じて室外機に再び戻り、圧縮器で高温の気体となって第3の冷媒配管に送られる。このサイクルを繰り返すことで、室内機、及び外気調和機の熱交換器は効率的に温められ、大規模空間の換気を促進するとともに大規模空間の温度を目標温度に保つことができる。
【0025】
また、下層階には床面部を含むアリーナ部が形成されるとともに、アリーナ部を空調対象とする輻射式パネルが設置され、輻射式パネルは、床面部から上層階に至るまでの高さを有し、壁面部の全周に設置されている場合には、施設の利用者の活動領域であるアリーナ部を常に快適な温度に保つことが可能となる。
【0026】
さらに、輻射式パネルは送風を発生しないため、例えばアリーナ部において送風による影響を受け易い競技(例えばバトミントンや卓球等)を行う場合においても、送風の影響を受けることなく、アリーナ部の全体を適温に保つことが可能となる。
【0027】
また、上層階は、背面側である壁面部から前面側に向けて下方に傾斜する階段状のスタンド部であり、スタンド部の前面側には前面通路、背面側には背面通路がそれぞれ形成され、外気調和機は背面通路に設置されている場合には、背面通路から前面側に向けて外気を給気することができるため、大規模空間の全体に外気を循環させることができる。
【0028】
前記の目的を達成するために、本発明の換気システムは、上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造であり、床面部、天井面部、及び壁面部により囲まれた大規模空間が形成された施設に設置される換気システムであって、冷媒が循環する熱媒体回路を有する熱源装置と、前記上層階に設置され、前記上層階の前記壁面部の所定の位置に形成された給気孔に接続されたダクト、該ダクトから導入口に導入された外気を前記大規模空間に給気する給気口に通じる外気導入路が形成された筐体、前記熱媒体回路の経路上に設置され前記導入口から導入された外気を冷却または加熱する熱交換器、前記給気口が形成された給気室に配され前記導入口から前記給気口に向かう気流を生成する給気ファン、前記外気導入路上であって、前記熱交換器の下流側に配され、前記導入口から導入された外気を浄化する給気フィルタを有する外気調和機と、前記床面部の所定の位置に形成された床面排気孔、前記下層階の前記壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔、前記床面排気孔から前記壁面排気孔に連通する排気誘導路から構成された排気部とを備える。
【0029】
ここで、冷媒が循環する熱媒体回路を有する熱源装置を備えることにより、例えば熱源装置として空気調和機や冷却水循環装置の熱媒体回路に、後記する外気調和機の熱交換器を組み込むことで、外気調和機に導入された外気が熱交換された後に大規模空間に向けて給気することができる。
【0030】
また、上層階に設置された外気調和機を備えることにより、外気調和機に導入した外気を大規模空間に給気することで、大規模空間における換気を促進することができる。
【0031】
また、外気調和機が、上層階の壁面部の所定の位置に形成された給気孔に接続されたダクト、ダクトから導入口に導入された外気を大規模空間に給気する給気口に通じる外気導入路が形成された筐体を有することにより、大規模空間が形成された施設の壁面に接続されたダクトを通じて外気を外気調和機の筐体に導入することができる。
【0032】
また、外気調和機が、熱媒体回路の経路上に設置され導入口から導入された外気を冷却または加熱する熱交換器を有することにより、熱源装置の運転と連動して供給される熱媒体によって、外気調和機に導入された外気が熱交換され、熱交換後の外気を大規模空間に給気することができるため、大規模空間の温度を適温に保つことが可能となる。
【0033】
また、外気調和機が、給気口が形成された給気室に配され導入口から給気口に向かう気流を生成する給気ファンを有することにより、より多くの外気を筐体内に導入することができるため、大規模空間における換気を促進することができる。
【0034】
また、外気調和機が、外気導入路上であって、熱交換器の下流側に配され、導入口から導入された外気を浄化する給気フィルタを有することにより、筐体内に導入した外気に含まれる汚染物質をはじめとする不純物を捕捉し、常に新鮮な外気を大規模空間に給気することができる。
【0035】
また、床面部の所定の位置に形成された床面排気孔、下層階の壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔、床面排気孔から壁面排気孔に連通する排気誘導路から構成された排気部を備えることにより、外気調和機から給気された外気は大規模空間を循環した後に床面排気孔から排気される。そして、床面排気孔から排気された外気は、排気誘導路を通じて壁面排気孔を通じて屋外に排気される。なお、排気部の所定の位置に排気用送風機を設置することで、強制的に排気する第1種換気方式とすることも可能である。
【0036】
ここで、大規模空間を有する多くの施設は床下空間が形成されているが、この床下空間に湿気が溜まることにより床面部の膨張や収縮が生じる。この点、床面排気孔から壁面排気孔に連通する排気誘導路を形成することにより、床下空間内の通気性を確保することで床下空間に湿気が溜まることが防止される。
【0037】
前記の目的を達成するために、本発明の換気方法は、上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造であり、床面部、天井面部、及び壁面部により囲まれた大規模空間が形成された施設における換気方法であって、熱源装置から熱媒体回路を通じて冷媒を循環する工程と、前記上層階の所定の位置に設置され、前記熱媒体回路の経路上に設置された熱交換器を有する外気調和機の導入口から導入された外気を、前記熱交換器を通過させた後に給気口から前記大規模空間に向けて給気する工程と、前記大規模空間の内気を前記床面部の所定の位置に形成された床面排気孔から排気する工程と、前記床面排気孔から排気された前記内気を、排気誘導路を通じて前記下層階の前記壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔から排気する工程とを備える。
【0038】
ここで、換気方法として、熱源装置から熱媒体回路を通じて冷媒を循環する工程を備えることにより、冷媒が外気調和機の熱交換器を通過して熱媒体回路を循環するため、外気調和機の熱交換器を冷却、或いは加熱することができる。
【0039】
また、上層階の所定の位置に設置され、熱媒体回路の経路上に設置された熱交換器を有する外気調和機の導入口から導入された外気を、熱交換器を通過させた後に給気口から大規模空間に向けて給気する工程を備えることにより、大規模空間の換気を促進することができる。
【0040】
また、導入口から導入された外気は熱交換器を通過することにより、外気調和機に導入された外気は熱交換器との間で熱交換して加熱あるいは冷却され、熱交換後の外気が給気口から大規模空間に給気される。従って、例えば熱源装置として空気調和機を使用する場合には、空気調和機の設定した目標温度に達するまでの空気調和機の稼動時間が短時間となるため、空気調和機の運転負荷を低減することができる。
【0041】
また、大規模空間の内気を床面部の所定の位置に形成された床面排気孔から排気する工程を備えることにより、大規模空間を循環した内気を床面排気孔から排気することができるため、大規模空間の換気を促進することができる。
【0042】
また、床面排気孔から排気された内気を、排気誘導路を通じて下層階の壁面部の所定の位置に形成され屋外と連通する壁面排気孔から排気する工程を備えることにより、床面排気孔から排気された内気は、排気誘導路を通じて壁面排気孔から屋外へと排気することができる。従って、給気量と排気量が均一となり、大規模空間は常に新鮮な空気の入れ替えにより換気促進が行われる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の換気システム、及び換気方法によれば、大規模空間を有する屋内施設における利用者の活動領域を効率的に換気し、快適な環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態に係る換気システムが適用される施設の概略図である。
図2】外気調和機の内部構造を示す正面斜視図である。
図3】外気調和機の内部構造を示す側面図である。
図4】外気調和機の室内における設置状態を示す平面図である。
図5】換気システムの熱媒体回路を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る換気システムが適用される施設の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態に係る換気システムは、外気を大規模空間に給気する外気調和機、外気調和機と熱媒体回路を介して接続された熱源装置、及び大規模空間に給気された外気を屋外に排気する排気部から主に構成されている。以下、各構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0046】
図1は本発明の換気システムが設置される施設1の一例を示すものであり、施設1は主に上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造からなる大規模空間Sを有し、例えばスポーツ競技、演技、演奏等を行うアリーナ部11(下層階)と、アリーナ部11の周辺に設けられた観客等を収容するスタンド部12(上層階)とを有する体育館である。
【0047】
ここで、必ずしも、本発明の換気システムが適用される施設1として図1に示すような構造の体育館である必要はなく、上層階と下層階を有し、かつ上層階の空間と下層階の空間とが連続する吹き抜け構造からなる大規模空間を有する施設であれば特に限定されるものではなく、例えばドーム型のスタジアムや陸上競技場、その他コンサートホールや展示場、武道館などの施設に適用することが可能である。
【0048】
施設1は、床面部13、壁面部14、天井面部15により大規模空間Sが形成されており、下層階であるアリーナ部11には、アリーナ部11の全周を包囲するように高さ3~4メートル程度の内部壁面16が設けられている。内部壁面16の前面には、主にアリーナ部11を対象領域とする空気調和機である輻射式パネル8がアリーナ部11の全周に設置されている。
【0049】
輻射式パネル8は、床面部13から上層階であるスタンド部12に至るまでの高さを有し、直径約6センチメートル程度の熱伝導性に優れたアルミニウム製の縦管を横方向に等間隔で連続的に立設した構成からなり、その内部には図示しない室外機から送られる冷却水が循環することで、ファン等による送風によらずに静的な熱輻射作用によって熱交換を行うことが可能な空気調和機である。
【0050】
ここで、必ずしも、アリーナ部11の空気調和機として輻射式パネル8を設置する必要はない。例えば床置型のパッケージエアコンをアリーナ部11の周方向に沿って一定間隔で設置するようにしてもよい。但し、アリーナ部11の空気調和機として輻射式パネル8を使用することで、アリーナ部11においてにバトミントンや卓球等の送風の影響が無視できない競技を行う場合には、静的な熱輻射作用によって熱交換を行う輻射式パネル8を採用することが好ましい。
【0051】
内部壁面16の上方には上層階としてのスタンド部12が設置されており、スタンド部12はアリーナ部11側へ向けて下方に傾斜し、アリーナ部11の全体を見下ろすことができるように階段状に形成されている。
【0052】
スタンド部12の最前列正面には正面通路17を隔てて転落防止用の手摺が設置され、スタンド部12の後方には背面通路18が設けられている。この背面通路18には外気を大規模空間Sに給気するための外気調和機2と、主にスタンド部12を対象領域とする空気調和機であるパッケージエアコン3が設置されている。
【0053】
外気調和機2は、屋内に設置され、筐体21内に熱交換器22、給気フィルタ23、及び給気ファン24を備えるものである。以下、外気調和機2の詳細な構造について図2乃至図4に基づいて説明する。
【0054】
ここで、必ずしも、本発明の実施形態に係る外気調和機2としては、以下に詳述する屋内設置型のものに限定されず、例えば上層階の壁面部14に形成された窓枠に設置するタイプのものや、ファン等の強制給気装置を有さず、自然給気式のものを適用することができるものとする。
【0055】
筐体21は設置面に設置されたステンレス素材の土台27上に立設し、鉛直方向に縦長の略四角柱状であって断熱パネルにより構成されている。筐体21の一側面の下方側には外気Aを導入するための導入口211、上方側には導入口211から導入した外気Aを室内に向けて給気するための給気口214が形成されている。なお、屋外からは外気調和機2の内部構造は視認することができないが、説明の便宜上、図2、及び図3においては外気調和機2の内部構造が視認できる状態を図示している。
【0056】
ここで、必ずしも、筐体21は断熱パネルにより構成されている必要はない。但し、筐体21を断熱パネルにより構成することで、筐体21の内外の温度差による結露の発生を防止し、筐体21の内部に収納されている各機器の結露に起因する故障等を防止することができる。
【0057】
また、必ずしも、筐体21は、設置面に対して土台27を介して設置されている必要はない。但し、筐体21を土台27に対して設置することで、筐体21の設置面に対する水平位置や垂直位置を調整する作業が不要となるため、筐体21の設置面に対する設置作業が容易なものとなる。また、筐体21の水平位置と垂直位置を保つことができるため、例えば後記する給気ファン24を適正に駆動することができるとともに、熱交換器22からの結露水を鉛直下方に向けて排出させることができる。
【0058】
また、土台27の素材としてステンレス材である必要はない。但し、土台27をステンレス材により構成することで、表面に汚れが付着することを防止し、傷がつきにくくなるため、外観上の見た目が良好なものとなる。
【0059】
また、必ずしも、筐体21の形状として略四角柱である必要はない。四角柱以外の角柱、或いは円柱等の形状であってもよい。
【0060】
導入口211は、外気調和機2を設置する上層階の背面通路18の近傍の壁面部14に形成された貫通孔5とダクト4により接続されており、常に新鮮な外気Aがダクト4を通じて筐体21の内部に導入されるようになっている。
【0061】
導入口211には、網目状の導入口フィルタ25が設置されている。導入口フィルタ25は、主に外気Aとともに筐体21の内部に侵入する虫や塵といった、比較的粒径の大きな物質を捕捉するためのフィルタである。
【0062】
ここで、必ずしも、導入口フィルタ25を設置する必要はない。但し、導入口フィルタ25を設置することで、前記した通り、防虫、又は防塵効果を奏するため、筐体21の内部を常に清潔な状態に保つことができるとともに、筐体21の内部に設置される各種機器に虫や塵が侵入することに起因する故障を予防することができる。
【0063】
また、導入口フィルタ25として、防虫、防塵を目的とするもの以外に、フィルタに所定のコーティングを施すことで脱臭、抗菌機能を有するようにしてもよい。さらに、導入口フィルタ25の網目形状や網目のサイズについても、目的に応じて適宜変更することが可能である。
【0064】
筐体21の内部には、導入口211から導入された外気Aを給気口214まで導くための外気導入路216が筐体21の鉛直方向に沿って形成されており、導入口211から導入される外気Aの導入方向と、外気導入路216の軸方向との交差角度が略90度となっている。外気導入路216は、仕切板28により上流側(導入口211側)の第1の区画室R1と下流側(給気口214側)の第2の区画室R2に区画されている。仕切板28の略中央部には開口孔29が形成され、開口孔29を通じて第1の区画室R1と第2の区画室R2は双方向に連通状態となっており、この開口孔29に対応する位置に後記する熱交換器22が第1の区画室R1に臨むように設置されている。
【0065】
ここで、必ずしも、仕切板28を有している必要はない。但し、仕切板28により、外気導入路216を第1の区画室R1と第2の区画室R2とに区画することで、導入口211から導入された外気Aの全量を熱交換器22により熱交換させたうえで第2の区画室R2に流入させることができる。また、導入口211から第1の区画室R1に導入された外気Aは、仕切板28に衝突することで流れの向きが変えられ、第1の区画室R1において外気Aを乱流状態とすることができる。乱流状態となった外気Aは、第1の区画室R1に設置された熱交換器22による熱交換をより一層促進させることができる。
【0066】
熱交換器22は、導入口211に導入された外気Aとの間で熱交換可能であり、直線部分と折り返し部分が交互に連続する蛇行形状である伝熱管221と、伝熱管221の径方向に交差した複数のフィン222からなる、所謂フィンチューブ式である。
【0067】
熱交換器22は、伝熱管221とフィン222から構成される本体部が仕切板28の開口孔29に対応するように仕切板28に取付ステー等の公知の固定手段を介して固定されている。なお、熱交換器22は図3に示す通り、筐体21の鉛直軸方向(外気導入路216の軸方向)に対して導入口211側に略65度(水平軸に対して略25度)の傾斜角度を有するように筐体21の内部に固定されている。
【0068】
ここで、必ずしも、熱交換器22は伝熱管221とフィン222を含む本体部が仕切板28の開口孔29に対応するように固定されている必要はない。但し、熱交換器22の本体部を仕切板28の開口孔29に対応するように設置することで、熱交換器22で熱交換された外気Aを本体部に形成された開口を通じて開口孔29から第2の区画室R2へ流入させることができるため、外気Aの第1の区画室R1から第2の区画室R2への流入効率を高めることができる。
【0069】
また、必ずしも、熱交換器22は第1の区画室R1側に設置する必要はない。但し、第1の区画室R1側に熱交換器22を設置することで、外気Aの全量を熱交換器22で熱交換することができるとともに、熱交換器22から滴下する結露水の全てが後記する水受け部261に滴下されるため、結露水が筐体21の内部に溜まることがなく、結露水に起因する内部機器の不具合を未然に防止することができる。
【0070】
また、必ずしも、熱交換器22は筐体21の鉛直軸方向に対して所定の傾斜角度を有するように設置されている必要はない。但し、熱交換器22を筐体21の鉛直軸方向に対して所定の傾斜角度を有するように設置することで、限られたスペース内に熱交換器22を設置することができるため、筐体21の大型化を防止することができる。
【0071】
また、熱交換器22を所定の傾斜角度で設置することにより、導入口211から導入された外気Aを筐体21内で鉛直上方への流れへ誘導するための整流作用としての効果を奏することができる。また、パッケージエアコン3の冷房運転時に、熱交換器22に付着する結露水を熱交換器22のフィンの傾斜に従ってスムーズに排水することができる。これにより、結露水の表面張力による停滞や水滴により、熱交換器22の空気の流通部が狭まり、空気の流れが滞ることを防止することができる。
【0072】
また、必ずしも、熱交換器22の鉛直軸方向に対する設置角度として、導入口211側に略65度に限定されるものではない。導入口211から導入された外気Aの全量を効率的に熱交換器22に通過させることができればよく、例えば熱交換器22の鉛直軸方向に対して導入口211側に略45度~75度の傾斜角度の範囲において適宜変更することができる。
【0073】
熱交換器22は、伝熱管221に接続された第一の出入管223と第二の出入管224を有している。第一の出入管223と第二の出入管224の先端は筐体21の屋外に突出され、ジョイントを介してパッケージエアコン3に接続された熱媒体回路33のうち第2の冷媒配管332、及び第3の冷媒配管333と接続、及び取り外しが可能となっている。
【0074】
以上の構成により、熱交換器22は、熱媒体回路33を介してパッケージエアコン3の室外機32から供給される冷媒を循環させて、外気Aとの間で熱交換を行うことが可能となっている。この冷媒の供給は、パッケージエアコン3の運転開始に伴って開始され、パッケージエアコン3の運転停止によって停止する。即ち、熱交換器22は、その稼動がパッケージエアコン3の運転に連動するため、別途新たな電源を必要としない構造となっている。
【0075】
従って、例えばパッケージエアコン3が冷房運転をしている場合には、外気調和機2の導入口211から導入される外気Aは熱交換器22により所定の温度まで冷却され、冷却後の外気Aが給気口214から給気される。従って、パッケージエアコン3の設定した目標温度に達するまでのパッケージエアコン3の稼動時間が短時間となり、パッケージエアコン3の運転負荷を低減することができる。
【0076】
また、パッケージエアコン3が暖房運転をしている場合には、外気調和機2の導入口211から導入された外気Aは熱交換器22により所定の温度まで加熱され、加熱後の外気Aが給気口214から給気される。従って、冷房運転時と同様に、パッケージエアコン3の設定した目標温度に達するまでのパッケージエアコン3の稼動時間が短時間となり、パッケージエアコン3の運転負荷を低減することができる。
【0077】
さらに、パッケージエアコン3が停止している場合には、外気Aは熱交換器22で冷却、加熱されることなく給気口22から給気される。以上のように外気調和機2から給気される外気Aは、パッケージエアコン3の運転モードに応じて適切な温度に制御されたうえで大規模空間Sに給気されるため、大規模空間Sの温度を常に一定の温度に保つことが可能となる。
【0078】
給気フィルタ23は、導入口211から導入された外気に含まれる汚染物質(花粉やPM2.5)を捕捉して外気を浄化するためのフィルタ装置である。給気フィルタ23も熱交換器22と同じく、筐体21の鉛直軸方向(外気導入路の軸方向)に対して導入口211側に所定の傾斜角度(本発明の実施形態においては略45度)を有するように、熱交換器22の後流側であって第2の区画室R2に設置されている。
【0079】
ここで、必ずしも、給気フィルタ23は筐体21の鉛直軸方向に対して所定の傾斜角度で設置されている必要はない。但し、給気フィルタ23を筐体21の鉛直軸方向に対して所定の傾斜角度で設置することで、限られたスペース内に給気フィルタ23を設置することができるため、筐体21の大型化を防止することができる。
【0080】
また、必ずしも、給気フィルタ23の鉛直軸方向に対する設置角度として、導入口211側に略45度に限定されるものではなく、導入口211から導入されるとともに熱交換器22を通過した外気Aの全量を効率的に給気フィルタ23に通過させることができればよく、例えば筐体21の鉛直軸方向に対して導入口211側に略30度~60度の傾斜角度の範囲において適宜変更することができる。
【0081】
前記した導入口フィルタ25は、外気Aに含まれる比較的大きな粒径の物質(虫や塵)を捕捉することを目的とするフィルタであるが、給気フィルタ23は、導入口フィルタ25では捕捉することのできない微粒子を捕捉することを目的としているため、フィルタの網目のサイズは導入口フィルタ25よりも小さなものとなっている。
【0082】
筐体21内の上方には、天井板213により給気室212が形成されている。天井板213には連通孔(符号を付さない)が形成されており、外気導入路216と給気室212との間は外気Aが連通できる状態となっている。また、給気室212の側面には外気Aを室内に向けて吹き出すための給気口214が、筐体の側面のうち正面側、及び左右側面側の計三カ所に形成されており、筐体21に導入された外気Aは係る給気口214から三方向に向けて給気することが可能となっている。また、給気口214には所定の間隔で複数の風向板215が設置されている。
【0083】
ここで、必ずしも、風向板215は設置されている必要はない。但し、風向板215を設置することで給気時の外気Aの指向性を高めることができるため、外気Aが大規模空間Sの全体に行き渡り易くなり、室内を短時間で換気することができる。
【0084】
給気室212内には外気導入路216に沿って導入口211から給気口214に至るまでの気流を生成するための給気ファン24が設置されている。給気ファン24は、ファンブレード243、ファンブレード243を駆動するためのモーター(図示しない)、ファンブレード243やモーターが収納される本体部241、本体部241に連設されたノズル244から構成されている。
【0085】
ファンブレード243は、例えばシロッコファン、シロッコファンを囲む風洞、及びケーシングがそれぞれ分割可能に構成されており、定期的に交換が必要なシロッコファンの交換作業を容易に行うことが可能な構成となっている。
【0086】
給気ファン24の本体部241は筐体21の天井面から固定金具242により吊設され、モーターに電源投入するためのスイッチ、及びモーターの回転数を設定するためのコントローラーが接続されている。スイッチを操作して電源投入すると、コントローラー246で設定された回転数となるようにモーターが回転することで、モーターに接続されたファンブレード243が駆動する構成となっている。
【0087】
ファンブレード243の回転により、筐体21内には導入口211から給気口214に向けて図3の矢印の方向への気流が生成される。これにより、導入口211から大量の外気Aを外気導入路216に導き、さらに給気口214から室内に向けて外気Aを給気することができる。従って、室内の空気を短時間で入れ替えることができる。
【0088】
モーターの回転数は、通常の運転であれば、略2200~2300rpmを目安として設定されるが、これに限定されるものではなく、外気調和機2を設置する室内の広さ、室内の広さに対する外気調和機2の設置台数等に基づいて、必要な換気量が得られるように適宜変更することができる。
【0089】
熱交換器22の鉛直下方には、熱交換器22で発生する結露水を受けて外気調和機2の機外に排出するためのドレイン部26が設置されている。ドレイン部26は熱交換器22から滴下される結露水を受ける水受け部261、水受け部261に滴下された結露水を貯留するためのトラップ部263、水受け部261からトラップ部263に導くための排水路262から構成されている。
【0090】
水受け部261は所定の位置に排水路262に連通する水抜き孔264が形成されるとともに、この水抜き孔264に向かって所定の傾斜角を有する斜面が形成されている。そのため、水受け部261に滴下された結露水の全ては斜面を通じて水抜き孔264から排水路262に排水されるようになっている。
【0091】
トラップ部263は筐体21の側面に設置され、排水路262を通じて排水された結露水を一時的に貯留するための所定の容積が確保されている。トラップ部263には、例えば押し引き操作により排出孔(図示しない)が開閉可能な操作部を有し、トラップ部263内に一定量の結露水が貯留されたら、作業者により操作部を操作して結露水を機外に排出することが可能となっている。
【0092】
なお、筐体の側面のうち一の側面は開閉可能な扉構造となっており、外気調和機2のメンテナンス時には、係る扉を開けることで内部にある機器の修理や部品の取り換え等を容易に行うことが可能となっている。
【0093】
また、外気調和機2を背面通路18に設置する場合には、図4に示すように、柱等の固定物6に連結部材7で連結するようにしてもよい。このように連結部材7で固定物に連結することで、外気調和機2の固定が強固なものとなり、地震発生時において外気調和機2の転倒を防止し安全を確保することができる。
【0094】
パッケージエアコン3は、スタンド部12の背面通路18に設置された室内機31と屋外に設置された室外機32とを有し、室内機31と室外機32とは熱媒体回路33により接続されている。熱媒体回路33は、図5に示すように、第1の冷媒回路331、第2の冷媒回路332、及び第3の冷媒回路333から構成されており、室外機32と室内機31は第1の冷媒回路により直接的に接続されている。また、前記したように室内機31と外気調和機2は第2の冷媒配管332により接続され、外気調和機2と室外機32は第3の冷媒回路333により接続されている。
【0095】
ここで、必ずしも、パッケージエアコン3は室内機31と室外機32から構成されている必要はない。パッケージエアコン3として熱媒体回路33を有していればよく、例えば室外機32を有さないパッケージエアコンを設置することもできる。
【0096】
また、必ずしも、外気調和機2の熱交換器22は、パッケージエアコン3の熱媒体回路33に接続されている必要はない。例えば、輻射式パネル8の図示しない熱媒体回路に接続されていてもよく、或いは別途設けた冷却水循環装置の熱媒体回路に接続するようにしもてよい。以上のように、熱交換器22に接続される熱源装置としては特に限定されるものではない。
【0097】
次に排気部9の構成について説明する。排気部9は、床面排気孔91、壁面排気孔92、及び排気誘導路93から構成されている。まず床面排気孔91は、施設1の床面部13に内部壁面16に沿って等間隔で形成されている。また、壁面部14には屋外と連通する壁面排気孔92が床面排気孔91の数に対応して形成されている。そして、床面排気孔91と壁面排気孔92とは排気誘導路93により連通状態となっており、床面排気孔91に流入した大規模空間Sの内気は、排気誘導路93に設置された排気用送風機94を通じて、壁面排気孔92から施設1の屋外へと強制的に排気される。
【0098】
以上のように、本発明の実施形態においては、外気調和機2により強制的に外気Aが大規模空間Sに給気され、大規模空間Sに給気された外気Aは排気用送風機94により強制的に屋外に排気される第1種換気方式が採用されている。
【0099】
ここで、必ずしも、排気用送風機94の設置位置として排気誘導路93に設ける必要はない。例えば、床面排気孔91、或いは壁面排気孔92の何れかの所定の位置に設けてもよい。
【0100】
また、必ずしも、排気部9に排気用送風機94を設置する必要はなく、給気側を外気調和機2により強制的に給気する一方で、排気側を自然排気とする第2種換気方式を採用してもよい。
【0101】
次に、換気システムの施設1内におけるレイアウトについて、図6に示す施設1の平面図に基づいて説明する。外気調和機2とパッケージエアコン3を一組の給気ユニットとする場合、図6に示すように、給気ユニットはスタンド部12の背面通路18に沿って、所定の等間隔で複数設置されている。このとき、アリーナ部11の床面部13に沿って形成された床面排気孔91と給気ユニットとの位置関係は、隣接する給気ユニットの中心線上に床面排気孔91が位置するようになっている。
【0102】
ここで、必ずしも、給気ユニットと床面排気孔91との位置関係として、前記したレイアウトである必要はない。但し、平面視において隣接する給気ユニットの中心線上に床面排気孔91が配置されることにより、外気調和機2から給気された外気Aを最も効率的に床面排気孔91から排気することができる。
【0103】
以上のように構成された換気システムを適用した施設1において、大規模空間Sにおける空気の流れについて図1、及び図6に基づいて説明する。まず、上層階であるスタンド部12の背面通路18に設置された外気調和機2からアリーナ部11に向けて外気Aが給気される。このとき外気Aは、外気調和機2の熱交換器22を通過することで、温度と湿度が調整される。そして外気Aは、拡散効果によりスタンド部12の上部空間を指向する水平方向の流れと、スタンド部12に沿って床面排気孔91を指向する斜め下方向の流れに分かれる。このうち、スタンド部12に沿う斜め下方向の流れは、例えばスタンド部11で発生した呼気を含む汚染物質とともに床面排気孔91から速やかに屋外に排気される。
【0104】
また、外気調和機2が互いに対向する位置に設けられている場合には、各外気調和機2から給気された外気Aの流れのうち、水平方向の流れであるF1とF2とは、大規模空間Sの略中心付近で衝突する。その後、外気Aは鉛直下方に向きが変わり、床面部13に到達した外気Aは、排気用送風機94の負圧効果により床面排気孔91に向けての流れが形成される。このとき、アリーナ部11で発生した汚染物質は、上層より流れてくる外気Aと合わさり、速やかに床面排気孔91から屋外に排気される。
【0105】
このように、大規模空間Sの中心を境界として対称となる循環流が形成される。この循環流によりアリーナ部11の汚染物質は速やかに屋外に排気されるとともに、外気調和機2からは常に新鮮な外気Aが給気される。従って、大規模空間Sの汚染物質による濃度の平均値は低い値に抑制されるものとなる。
【0106】
さらに、アリーナ部11の呼気を含む汚染物質を含む空気は、アリーナ部11の上部から床面部13に向けて常に有圧で下向きの新鮮空気が供給され、瞬時一様拡散の作用効果を利用し、床面排気孔91に向けた空気の流れになるため、アリーナ部11の利用時のマイクロ飛沫等の浮遊を抑制する事になり、大規模空間Sにおける感染防止対策に有効な換気システムとなる。
【0107】
以上のように、本発明に係る換気装置、及び換気方法は大規模空間を有する屋内施設における利用者の活動領域を効率的に換気し、快適な環境を実現することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0108】
1 施設
11 アリーナ部
12 スタンド部
13 床面部
14 壁面部
15 天井面部
16 内部壁面
17 正面通路
18 背面通路
2 外気調和機
21 筐体
211 導入口
212 給気室
213 天井板
214 給気口
215 風向板
216 外気導入路
217 連通孔
22 熱交換器
221 伝熱管
222 フィン
223 第1の出入管
224 第2の出入管
23 給気フィルタ
24 給気ファン
241 本体部
242 固定金具
243 ファンブレード
244 ノズル
25 導入口フィルタ
26 ドレイン部
261 水受け部
262 排水路
263 トラップ部
264 水抜き孔
27 土台
28 仕切板
29 開口孔
3 パッケージエアコン
31 室内機
32 室外機
33 熱媒体回路
331 第1の冷媒配管
332 第2の冷媒配管
333 第3の冷媒配管
4 ダクト
5 貫通孔
6 固定物
7 連結部材
8 輻射式パネル
9 排気部
91 床面排気孔
92 壁面排気孔
93 排気誘導路
94 排気用送風機
図1
図2
図3
図4
図5
図6