(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230920BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20230920BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20230920BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/16
C09D5/14
C09D133/00
(21)【出願番号】P 2019106529
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】和久 英典
(72)【発明者】
【氏名】松木 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】安井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基道
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-080777(JP,A)
【文献】特開平11-166136(JP,A)
【文献】特開平11-323209(JP,A)
【文献】特開2006-188453(JP,A)
【文献】特開2002-069360(JP,A)
【文献】特開2005-097400(JP,A)
【文献】特開平11-263937(JP,A)
【文献】特開平10-030071(JP,A)
【文献】特開2003-252931(JP,A)
【文献】特開2001-323208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含銅物質(A)と、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する防汚塗料組成物であって、
前記防汚塗料組成物の固形分中の銅含有量が21質量%以下であり、
前記含銅物質(A)は、亜酸化銅と銅粉を含
み、
前記防汚塗料組成物の固形分が68.7~82.4質量%であり、
前記固形分は、前記防汚塗料組成物の総質量に対する、固形物の質量であり、
前記固形物の質量は、以下に示す測定方法によって算出される、防汚塗料組成物。
(固形物の質量の測定方法)
ISO3251に準拠して、直径75mm、高さ5mmのブリキ製の平底皿に前記防汚塗料組成物の試料1gを測り取り、強制排気装置を備えた乾燥機を使用し、105℃・1時間で加熱した後の残渣の質量を測定する。前記測定は2回繰り返して行い、2つの結果の平均値を固形物の質量とする。
【請求項2】
請求項1に記載の防汚塗料組成物であって、
重合体(B)をさらに含有する、防汚塗料組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の防汚塗料組成物であって、
前記重合体(B)は、単量体(a)と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体であり、
前記単量体(a)は、一般式(1)で表され、
前記単量体(a)の含有量は、前記単量体(a)および(b)の合計質量に対して1~80質量%である、防汚塗料組成物。
【化1】
(式中、R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3、R
4はそれぞれ同一又は異なって炭素数3~8の分岐アルキル基又はフェニル基を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
【0003】
このような問題を防ぐために、船舶等に防汚塗料組成物を塗布して防汚塗膜を形成し、防汚塗膜から防汚薬剤を徐放させることによって、長期間に渡って防汚性能を発揮させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-17203号公報
【文献】WO2005/005516
【文献】特開2005-082725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、海水温度の上昇など海洋環境の大きな変化により海洋生物による汚損は非常に厳しくなっている。また、河川から栄養の豊富な水が流れ込む大阪湾、東京湾や伊勢湾など湾内水域はフジツボなどによる汚損が非常に厳しく、河川から流れ込む淡水の影響で海水のpHが低くなり、防汚塗膜の溶解性が低下することから薬剤の放出量が十分ではなくなる。そのため、特許文献1の技術を採用しても、長期静置防汚性能が維持されないという問題があった。
【0006】
また、近年環境問題から、溶剤型の塗料は、多くの有機溶剤を空気中に揮散させることから、世界的に規制されてきている。特許文献2~3では、有機溶剤の含有量を減少させる試みがなされているが、これらの方法では、塗料粘度が高過ぎて塗布作業が困難であった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、有機溶剤を増やすことなく粘度を低減することができ、且つ長期防汚性能に優れた塗膜を形成可能な防汚塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、含銅物質(A)と、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する防汚塗料組成物であって、前記防汚塗料組成物の固形分中の銅含有量が21質量%以下である、防汚塗料組成物が提供される。
【0009】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、上記組成の防汚塗料組成物によって上記課題が解決可能であることを見出し、本発明の完成に到った。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細を説明する。
1.防汚塗料組成物
本発明の防汚塗料組成物(以下、「塗料組成物」とも称する)は、含銅物質(A)と、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する。4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンは、「Sea Nine211」としてロームアンドハース社製から市販されている防汚薬剤であり、以下の説明では、便宜上、「Sea Nine」と称するが、この商品に権利範囲を限定することを意図するものではない。
【0011】
塗料組成物の固形分中の銅含有量が21質量%以下である。銅含有量が減ると粘度が低下する傾向があり、銅含有量を21質量%以下にすることによって、有機溶剤を増やすことなく、塗料の粘度を低くすることができる。
【0012】
銅含有量は、(塗料組成物中の銅含有量)/(塗料組成物の固形分)によって算出可能である。塗料組成物中の銅含有量は、塗料組成物の総質量に対する、銅原子の質量の割合である。銅原子の質量は、塗料組成物に含まれる各成分中の銅原子の質量を足し合わせることによって算出することができる。塗料組成物の固形分は、塗料組成物の総質量に対する、固形物の質量である。固形物の質量は、塗料組成物を所定の条件で加熱した後に残る残渣の質量を測定することによって求めることができる。
【0013】
銅含有量は、例えば、0.1~21質量%であり、好ましくは、1から21質量%であり、具体的には例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
1-1.含銅物質(A)
含銅物質(A)は、銅を含む物質であり、銅の単体、又は銅化合物である。
【0015】
含銅物質(A)としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅、銅粉、銅ピリチオン、酢酸銅、臭化銅(I)、硫酸銅、水酸化銅、炭酸銅、ネオデカン酸銅、ナフテン酸銅、銅アクリル樹脂、水添ロジン銅、ロジン銅、2-エチルヘキサン酸銅、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸銅、等が挙げられる。これらの含銅物質(A)は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0016】
含銅物質(A)は、防汚性能を有するものであってもよく、防汚性能を有さないものであってもよいが、防汚性能を有するものが好ましい。
【0017】
含銅物質(A)は、Sea Nineと併用される。この併用によって、単独利用の場合に比べて、長期防汚性能が向上する。また、含銅物質(A)は、Sea Nineと錯体を形成するものであることが好ましい。この場合、長期防汚性能がさらに向上する。
【0018】
Sea Nineに対する含銅物質(A)の質量割合は、例えば、0.01~100であり、具体的には例えば、0.01、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
1-2.重合体(B)
防汚塗料組成物は、塗膜形成成分を含むことが必要である。含銅物質(A)が銅アクリル樹脂のような樹脂である場合には、含銅物質(A)が塗膜形成成分となる。一方、含銅物質(A)が塗膜形成成分でない場合には、防汚塗料組成物は、塗膜形成成分である重合体(B)を含有することが好ましい。
【0020】
重合体(B)は、単量体(a)と単量体(b)のうち1種以上の単独重合体又は共重合体であり、単量体(a)と単量体(b)との共重合体であることが好ましい。単量体(b)は、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体である。
【0021】
<単量体(a)>
単量体(a)は、(メタ)アクリル酸トリオルガノシリル単量体であり、一般式(1)で表される。
【0022】
【化1】
(式中、R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3、R
4はそれぞれ同一又は異なって炭素数3~8の分岐アルキル基又はフェニル基を示す)
【0023】
R2~R4の炭素数3~8の分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、1-メチルペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、テキシル基、シクロヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。R2~R4として好ましいものは、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、及び2-エチルヘキシル基である。特に好ましいものは、イソプロピル基、及び2-エチルヘキシル基である。
【0024】
単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソアミルシリル、(メタ)アクリル酸トリス(2-エチルヘキシル)シリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソアミルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピル(2-エチルヘキシル)シリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソアミルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、などが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルである。これらの単量体は、それぞれ一種又は二種以上で使用さる。
単量体(a)の含有量は、長期静置防汚性能と塗膜異常を起こさない観点から、前記単量体(a)および(b)の合計質量に対して1~80質量%であり、20~70質量%が特に好ましい。単量体(a)の割合は、具体的には例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
<エチレン性不飽和単量体(b)>
単量体(b)は、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物、芳香族化合物、二塩基酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、
メタクリル酸2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、N,N'-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル、メタクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、N-ビニル-2-ピロリドン、アクリル酸2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル、
4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、N-イソポロピルアクリルアミド、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル、N,N'-ジエチルアクリルアミド、アクリル酸3-メトキシブチル、等のアクリル酸エステル類、
等が挙げられる。
【0027】
ビニル化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルブチレート、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン等の官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0028】
芳香族化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0029】
二塩基酸のジアルキルエステル化合物としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、これら単量体(b)を単独又は二種以上で用いることができる。特に、単量体(b)としては、塗膜物性の観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に耐クラック性の観点から、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等がより好ましい。
【0031】
<重合体(B)の合成>
重合体(B)は、単量体(a)と単量体(b)のうち1種以上で構成される単量体を重合することにより得ることができる。前記重合は、例えば、重合開始剤の存在下で行われる。
【0032】
重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は5000~300000であることが望ましい。分子量が5000未満であれば、防汚塗料の塗膜が脆弱となり、剥離やクラックを起こし易く、また、300000を超えると、重合体溶液の粘度が上昇し、取扱いが困難となるからである。このMwは、具体的には例えば、5000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
重合体(B)が共重合体である場合、前記共重合体は、単量体(a)および(b)のランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。
【0034】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記重合開始剤としては、特に、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが好ましい。重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、重合体(B)の分子量を調整することができる。
【0035】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、非水分散重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、重合体を得ることができる点で、溶液重合、非水分散重合が好ましい。
【0036】
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、キシレン、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル等のエステル系溶剤;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられる。この中でも特に、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、キシレンがより好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常50~170℃であり、好ましくは60~150℃である。重合反応における反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよく、通常4~10時間程度である。
【0038】
重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0039】
1-3.防汚薬剤(C)
本発明の防汚塗料組成物には、含銅物質(A)とSea Nine以外の防汚薬剤(C)を含んでもよい。防汚薬剤(C)としては、2-メルカプトピリジン-N-オキシド亜鉛(一般名:ジンクピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、3,4-ジクロロフェニル-N-N-ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(一般名:トラロピリル)、(±)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(一般名:メデトミジン)、N-{[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル}-N',N'-ジメチル-N-P-トリルスルファミド(一般名:トリルフルアニド)、ピリジントリフェニルボラン等が挙げられる。
これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0040】
1-4.他の添加剤
さらに本発明の防汚塗料組成物には、必要に応じて溶出調整剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、充填剤、脱水剤、揺変剤、有機溶剤等を添加して防汚塗料とすることができる
【0041】
溶出調整剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸、シクロアルケニルカルボン酸、ビシクロアルケニルカルボン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、及びこれらの金属塩等の、モノカルボン酸及びその塩、又は前記脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
前記ロジン誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等を例示できる。前記脂環式炭化水素樹脂としては、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0042】
可塑剤としては、例えば、燐酸エステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ化大豆油、アルキルビニルエーテル重合体、ポリアルキレングリコール類、t-ノニルペンタスルフィド、ワセリン、ポリブテン、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、パラフィン鉱油、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
【0043】
充填剤としては、無機質充填剤及び/又は有機質充填剤が挙げられる。無機質充填剤としては例えば、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、酸化チタン、焼成カオリン、アミノシランで表面処理した焼成カオリン、けいそう土、水酸化アルミニウム、微粒状アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ベンガラ、酸化鉄、煙霧状金属酸化物、石英粉末、タルク、ゼオライト、ベントナイト、ガラス繊維、炭素繊維、微粉マイカ、溶融シリカ粉末、シリカ微粉末、煙霧状シリカ、沈降性シリカ、湿式シリカ、乾式シリカあるいはこれらをメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクラメチルシクロテトラシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理した疎水性フュームドシリカ、フタロシアニンブルー、カーボンブラック等が挙げられる。有機質充填剤としては例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリルシリコーンなどの合成樹脂粉末等が挙げられる。
【0044】
脱水剤としては、例えば、硫酸カルシウム、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類、カルボジイミド類、カルボジイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
揺変剤としては、脂肪酸アマイド、酸化ポリエチレン、シリカ、フュームドシリカ等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソアミルアルコール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、グリコール系エステル、芳香族炭化水素、脂肪族系炭化水素、ホワイトスピリット、脂環式炭化水素系溶剤、ナフテン系炭化水素、ミネラルスピリット、脂肪族ソルベントナフサ、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
2.防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、含銅物質(A)、Sea Nine、重合体(B)、防汚薬剤(C)及び他の添加剤等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。
前記混合液としては、重合体(B)及び防汚薬剤等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。前記溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものを使用できる。
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル、ディスパー、ペイントシェーカー等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0048】
含銅物質(A)とSea Nineは、その他の成分と混合する前に、予め混合しておいてもよい。含銅物質(A)がSea Nineと錯体と形成する物質である場合には、事前混合によって、含銅物質(A)とSea Nineの間で優先的に錯体形成を行うことができる。錯体形成によって防汚性能が向上する場合がある。
【0049】
3.防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50~700μm、好ましくは100~600μmである。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
各製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム・・・ TSKgel SuperHZM-M 2本
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
溶離液・・・ THF
加熱残分は、JIS K 5601-1-2:1999(ISO 3251:1993)「塗料成分試験方法-加熱残分」に準拠して測定した値である。
【0051】
また、表中の各成分の配合量の単位はgである。
【0052】
1.製造例
<製造例1(錯体(A1)の製造>
Sea Nine(30%キシレン溶液)20g、キシレン20g、エタノール5.0g、及び亜酸化銅50gを配合し、ガラスビーズを加え、ペイントシェーカーで10分間分散混合した。得られた混合溶液のFT-IR測定で、Sea Nine由来のC=O由来の吸収ピーク1664.57cm-1が1662.64cm-1の低波数側へシフトすることから錯体の形成を確認し、錯体溶液A1を得た。
【0053】
<製造例2(錯体(A2)の製造>
Sea Nine(30%キシレン溶液)20g、キシレン15g、イソプロピルアルコール5.0g及びチオシアン酸銅50gを配合し、ガラスビーズを加え、ペイントシェーカーで10分間分散混合した。得られた混合溶液のFT-IR測定で、Sea Nine由来のC=O由来の吸収ピーク1664.57cm-1が1662.64cm-1の低波数側へシフトすることから錯体の形成を確認し、錯体溶液A2を得た。
【0054】
<製造例3(錯体(A3)の製造>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、Sea Nine(30%キシレン溶液)20g、キシレン15g、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル5g及びネオデカン酸銅50gを仕込み、40℃で10分間攪拌した。得られた混合溶液のFT-IR測定で、Sea Nine由来のC=O由来の吸収ピーク1664.57cm-1が1662.64cm-1の低波数側へシフトすることから錯体の形成を確認し、錯体溶液A3を得た。
【0055】
<製造例4(銅アクリル樹脂溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、キシレン40g、n-ブタノール10gを加え90℃まで加熱した。更に、アクリル酸エチル22g、アクリル酸9g、アクリル酸シクロヘキシル8.0g、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(n=9)11g、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0gの混合溶液を3時間かけて滴下し、その後90℃で3時間攪拌を行った。その後、更に、ロジン40g、酢酸銅16g、キシレン100gを加え、リフラックスしながらキシレンを加えつつ、反応で生成した酢酸および水を除去した後、20gのn-ブタノールを添加し室温に冷却し、銅アクリル樹脂溶液を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.7%であった。
【0056】
<製造例5(水添ロジン銅溶液の製造)>
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1000mlのフラスコに、水添ロジンキシレン溶液(固形分50%)400g、Cu2O 200g及びメタノール100gにガラスビーズ(直径2.5~3.5mm)を加え、70~80℃で8時間撹拌後50℃で2日間保温し、室温(25℃)まで冷却濾過後、減圧濃縮によりメタノール分を留去後、キシレンを加えることにより、水添ロジン銅塩のキシレン溶液(濃青色透明溶液、固形分約50%)を得た。得られた水添ロジン銅溶液の加熱残分は50.3%であった。
【0057】
<製造例6(トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸銅の製造)>
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1000mlのフラスコに、とりメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸(商品名「A-3000」(ヤスハラケミカル社製)205g、キシレン150g、Cu2O 200g及びエタノール100gにガラスビーズ(直径2.5~3.5mm)を加え、20~50℃で1時間撹拌後、濾過し、減圧濃縮によりメタノール分を留去後、キシレンを加えることにより、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸銅のキシレン溶液(固形分約60%)を得た。得られたトリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸銅溶液の加熱残分は60.1%であった。
【0058】
<製造例7(共重合体B1の製造)>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、キシレン60g(初期溶媒)を仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら88℃を保持した。そこへ、単量体(a)30g、アクリル酸テトラヒドロフルフリル3g、アクリル酸2-メトキシエチル9g、メタクリル酸2-メトキシエチル25g、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル2g、メタクリル酸メチル28g、アクリル酸n-ブチル3g、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.8g(初期添加)の混合液を88℃で保持しながら3時間かけて滴下した。その後、88℃で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1g(後添加)を1時間毎に3回添加し、さらに同温度で2時間攪拌を行った後、キシレン40g(希釈溶媒)添加し室温に冷却し、共重合体溶液B1を得た。B1の加熱残分、Mwを表1に示す。
【0059】
<製造例8~14>
表1に示す単量体、重合開始剤及び溶媒を用いて、各反応温度条件下、製造例7と同様の操作で重合反応を行うことにより共重合体溶液B2~B8を得た。B2~B8の加熱残分、Mwを表1に示す。表中の数値は質量%である。
【0060】
【0061】
<製造例15(共重合体B9の製造)>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、ナフテゾール160(商品名、JXTGエネルギー社製)30gを仕込み、温度を103℃に保ち、そこへ、n-ブチルメタクリレート33.4g、2-エチルヘキシルアクリレート33.4g及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.2gの混合液を、攪拌しながら3時間かけて滴下した。滴下1時間後、ナイパーBMT-K40(商品名、日油社製)0.15gを1時間毎に2回添加し、さらに同温度で2時間攪拌を行った後、ナフテゾール160(商品名、JXTGエネルギー社製)55gで希釈した。その後、更に、メチルメタクリレート16g、エチルアクリレート7.2g、メタクリル酸10.2g及びナイパーBMT-K40(商品名、日油社製)0.8gの混合液を、攪拌しながら3時間かけて滴下した。滴下1時間後、ナイパーBMT-K40(商品名、日油社製)0.2gを1時間毎に2回添加し、さらに同温度で2時間攪拌を行った後、ナフテゾール160(商品名、JXTGエネルギー社製)32g添加し室温に冷却し、共重合体溶液B9を得た。B9の加熱残分は50.4%、Mwは67,700であった。
【0062】
<製造例16(ロジン亜鉛溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、中国産ガムロジン(WW)240gとキシレン360gをフラスコに入れ、更に、前記ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70~80℃で3時間、減圧下で還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.2%であった。
【0063】
<製造例17(水添ロジン亜鉛塩溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、ハイペールCH(水添ガムロジン)240gとキシレン360gをフラスコに入れ、更に、前記ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70~80℃で3時間、減圧下で還流脱水した。その後、濃縮、冷却しろ過を行うことにより、水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色液体、固形分65%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、65.1%であった。
【0064】
2.実施例・比較例(防汚塗料組成物の調製)
上記製造例で得られた錯体溶液、共重合体溶液を用いて、実施例・比較例の防汚塗料組成物を表2~表5に示す配合により調製した。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表2~表5中の成分の詳細は、以下の通りである。
【0070】
<含銅物質(A)>
亜酸化銅:商品名「NC-301」(日進ケムコ株式会社製)
チオシアン酸銅(I):商品名「チオシアン酸銅(I)」(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
銅粉:商品名「STANDART Lac E 900 Copper Powder」(ECKART社製)
銅ピリチオン:商品名「カッパーオマジン」(Lonza社製)
臭化銅(I):(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
酢酸銅:商品名「酢酸銅(II)」(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
ネオデカン酸銅:商品名「ネオデカン酸銅(Cu5%)」(日本化学産業社製)
ナフテン酸銅:商品名「ナフテン酸銅(Cu10%)」(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
銅アクリル樹脂溶液:製造例4で製造したものを使用
水添ロジン銅溶液:製造例5で製造したものを使用
2-エチルヘキサン酸銅:商品名「2-エチルヘキサン酸銅」(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸銅(約60%キシレン溶液):製造例6で製造したものを使用
【0071】
<防汚薬剤(C)>
Sea Nine:商品名「Sea Nine211」(固形分30%キシレン溶液、ロームアンドハース社製)
亜鉛ピリチオン::商品名「ジンクオマジン」(Lonza社製)
ジネブ:商品名「ジネブ」(SIGMA-ALDRICH製)
トラロピリル:商品名「Econea」4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(ヤンセンPMP製)
メデトミジン:商品名「Selektope」4-(1-(2,3-Dimethylphenyl)ethyl)-1H-imidazole(I-tech社製)
トリルフルアニド:商品名「Preventol A 5-S (Lanxess社製)
ジウロン:商品名「ジウロン」(東京化成工業社製)
ピリジントリフェニルボラン:PK(北興化学工業社製)
イルガロール1051:商品名「イルガロール1051」N-シクロプロピル-N'-tert-ブチル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(BASF社製)
【0072】
<その他の添加剤>
塩素化パラフィン:商品名「エンパラA-40S」(東ソー株式会社製)
パラフィン鉱油:商品名「ピュアセイフティー68」(コスモ石油ルブリカンツ社製)
トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル):商品名「トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)」(東京化成工業株式会社製)
エポキシ化大豆油:商品名「サンソサイザーE-2000H」(新日本理化社製)
ロジン亜鉛塩溶液:製造例16で製造したものを使用
ガムロジン溶液:中国産ガムロジン(WW)の固形分50%キシレン溶液
水添ロジン溶液:商品名「ハイペールCH」(荒川化学工業株式会社製)の固形分50%キシレン溶液。
水添ロジン亜鉛塩溶液:製造例17で製造したものを使用
硫酸カルシウム:商品名「NP3D」半水石膏(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)
エチルシリケート28:テトラエトキシシラン:商品名「エチルシリケート28」(コルコート株式会社製)
ゼオライト:商品名「モレキュラーシーブ4A」(ユニオン昭和社製)
赤色酸化鉄:弁柄 商品名「錦玉A印」(森下弁柄工業社製)
タルク:商品名「タルクMS」(日本タルク株式会社製)
酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」(正同化学工業株式会社製)
酸化チタン:商品名「FR-41」(古河機械金属株式会社製)
焼成カオリン:商品名「カオリン90」(東洋化成社製)
硫酸バリウム:商品名「TS-2」(竹原化学工業社製)
脂肪酸アマイド:商品名「ディスパロンA603-20X」脂肪酸アマイド(固形分20%キシレン溶液、楠本化成社製)
酸化ポリエチレン:商品名「ディスパロン4200-20」酸化ポリエチレン(固形分20%キシレン溶液、楠本化成社製)
1-メトキシ-2-プロパノール:(キシダ化学社製)
キシレン:エチルベンゼン20~65%含有
【0073】
3.塗料組成物の固形分の測定
実施例・比較例で得られた塗料組成物の固形分(質量固形分)は、塗料組成物の総質量に対する、固形物の質量であり、固形物の質量は、以下の方法で算出した。ISO3251に準拠して、直径75mm、高さ5mmのブリキ製の平底皿に試料1gを測り取り、強制排気装置を備えた乾燥機を使用し、105℃・1時間で加熱した後の残渣の質量を測定した。測定は2回繰り返して行い、2つの結果の平均値を固形物の質量とした。結果を表6~表9に示す。
【0074】
4.塗料組成物の固形分中の銅含有量の算出
実施例・比較例で得られた塗料組成物の固形分中の銅含有量は、(塗料組成物の銅含有量)/(塗料組成物の固形分)によって算出した。塗料組成物の銅含有量は、塗料組成物の総質量に対する、銅原子の質量の割合であり、銅原子の質量は、塗料組成物に含まれる各成分中の銅原子の質量を足し合わせることによって算出した。結果を表6~表9に示す。
【0075】
5.試験例1(塗料粘度の測定)
JIS K 5600に準拠して、実施例・比較例で得られた塗料組成物の25℃における粘度(KU)を、製品名「CAP1000+」(ブルックフィールド社製)ストーマ粘度計を用いて測定した。また、25℃における粘度(Pa・s)を、製品名「KU-2」(ブルックフィールド社製)コーンプレート粘度計を用いて測定し、以下の基準で判断した。結果を表6~表9に示す。
【0076】
ストーマ粘度計(KU)
◎:80~100
〇:100~120
×:120以上
【0077】
コーンプレート粘度計(Pa・s)
◎:2~8
〇:8~10
×:10以上
【0078】
6.試験例2(防汚試験)
実施例・比較例で得られた防汚塗料組成物を、硬質塩ビ板(110×60×2mm)に乾燥膜厚で約200μm塗布し、室温で3日間乾燥させて試験板を作製した。この試験板を汚損生物の付着が非常に厳しい大阪湾、伊勢湾内の海面下2.0mに12ヶ月間浸漬して付着物による試験板の汚損を6ヶ月後および12ヶ月後に観察した。
評価は、塗膜表面の状態を目視観察することにより、以下の基準で判断した。結果を表6~表9に示す。
【0079】
◎:貝類、藻類などの汚損生物及びスライムの付着がないレベル
〇:貝類、藻類などの汚損生物の付着がなく、スライムが付着したレベル
△:貝類、藻類などの汚損生物が部分的に付着したレベル
×:貝類、藻類などの汚損生物が全面に付着したレベル
【0080】
7.考察
実施例の防汚塗料組成物は、何れも粘度が低く、防汚試験でも優れた長期防汚性が発揮された。一方、比較例の防汚塗料組成物は、何れも粘度が高かった。また、比較例1~8の防汚塗料組成物は、何れも長期防汚性が実施例よりも劣っていた。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】