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特許7351513発酵菌の凝集抑制剤及び有用物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】発酵菌の凝集抑制剤及び有用物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20230920BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C12N1/00 Z
C12P1/00 Z
C12P7/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019185559
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058160
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】平川 剛
(72)【発明者】
【氏名】島林 克臣
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132760(WO,A1)
【文献】特開2018-143150(JP,A)
【文献】特開平09-000242(JP,A)
【文献】特開2018-143236(JP,A)
【文献】特開平01-160492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用物質を生産する発酵工程に使用される発酵菌の凝集抑制剤であって、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(A)を含んでなることを特徴とする発酵菌の凝集抑制剤。

R1[(-AO)n-(EO)m-R2]p (1)

R1はトレハロース、スクロース、ソルビトール、アラビノース、エリスリトール、グリセリン、ガラクトース又はキシリトールの反応残基、AOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、R2は水素原子又はメチル基、nは4~40の整数、mは0~20の整数、pは3~8の整数である。
【請求項2】
工業原料、食用原料又は医薬原料から選ばれる有用物質を生産する発酵工程において、請求項に記載された凝集抑制剤を発酵液に添加して発酵することを特徴とする有用物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵菌の凝集抑制剤及び有用物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ツイーン80{ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(EO20モル付加)、ツイーンはクローダ インターナショナル ピーエルシーの登録商標である。}、ツイーン40{ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(EO20モル付加)}などの界面活性剤を使用して、Trichoderma reesei(発酵菌)内に生成したセルラーゼ(有用物質)を菌外への効率的に分泌させること(非特許文献1)は従来より知られていたが、発酵菌の凝集抑制剤を用いて発酵菌の凝集を抑制し、有用物質の生産性を向上させる方策は知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】発酵ハンドブック、バイオインダストリー協会発酵と代謝研究会編集、共立出版株式会社、2001年7月発行、253頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有用物質(アミノ酸やタンパク質、アルコール、カルボン酸、アミン等)の生産性を向上できる凝集抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤の特徴は、有用物質を生産する発酵工程に使用される発酵菌の凝集抑制剤であって、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(A)を含んでなる点を要旨とする。
【0006】
R1[(-AO)n-(EO)m-R2]p (1)
【0007】
R1はトレハロース、スクロース、ソルビトール、アラビノース、エリスリトール、グリセリン、ガラクトース又はキシリトールの反応残基、AOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、R2は水素原子又はメチル基、nは4~40の整数、mは0~20の整数、pは3~8の整数である。
【0008】
本発明の有用物質の製造方法の特徴は、工業原料、食用原料又は医薬原料から選ばれる有用物質を生産する発酵工程において、上記の凝集抑制剤を発酵液に添加して発酵する点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤は、有用物質(アミノ酸やタンパク質、アルコール、カルボン酸、アミン等)の生産性を向上できる。
【0010】
本発明の製造方法を用いると、高い生産効率で有用物質を製造できる。
なお、本発明の発酵菌の凝集抑制剤を用いることにより、発酵菌の凝集が抑制され、発酵菌が原料や培養液等との接触面積が増加し、有用物質への反応効率及び有用物質の分泌効率が向上し、結果として有用物質の生産性が向上すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
有用物質としては特に限定はないが、アミノ酸やタンパク質、アルコール、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミン及び炭化水素が含まれる。
【0012】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジン等が挙げられる。
【0013】
タンパク質としては、酵素(酸化還元酵素、加水分解酵素及び合成酵素等)、ホルモンタンパク質(インターフェロンα、成長ホルモン、インスリン及びグルカゴン等)、発光タンパク質(ルシフェラーゼ等)及びペプチド等が挙げられる。
【0014】
アルコールとしては、モノオール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ドデカノール、イソオクタデカノール、フェノール及びオクタデセノール等);ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン等);及び糖類{単糖類(グリセリン、エリトルロース、エリトリトール、アラビノース、キシルロース、キシリトール、フルクトース、ソルボース、グルコース、マンノース、ラクトース及びソルビトール等)、二糖類(スクロース、ラクトース及びトレハロース等)、三糖類(ラフィノース及びマルトトリオース等)、四糖類(アカルボース及びスタキオース等)及び多糖類(デンプン、セルロース、デキストリン及びキチン等)}等が挙げられる。
【0015】
カルボン酸としては、エタン酸、プロパン酸、デカン酸、オクタデセン酸、エタン二酸、ブタン二酸、ブテン二酸、2-メチリデンブタン二酸、安息香酸及びベンゼンジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシカルボン酸としては、2-ヒドロキシエタン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2,3-ジヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、2-ジヒドロキシブタン二酸、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸及び2-ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0017】
アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン及びトリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0018】
炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、デカン及びパラフィン等が挙げられる。
【0019】
炭素数1~30の活性水素含有化合物の反応残基(R1)は、炭素数1~30の活性水素化合物から活性水素原子を除いた反応残基を意味する。炭素数1~25の活性水素含有化合物としては、水酸基(-OH)、イミノ基(-NH-)、アミノ基(-NH)及び/又はカルボキシル基(-COOH)を少なくとも1個含む化合物が含まれ、アルコール、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸が含まれる。
【0020】
アルコールとしては、モノオール(メタノール、ブタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコール等)、ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、ソルビタン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン等)及び糖類{単糖類(ジヒドロキシアセトン、グリセリン、エリトルロース、エリトリトール、アラビノース、キシルロース、キシリトール、フルクトース、ソルボース、グルコース、マンノース、ラクトース及びソルビトール等)、二糖類(スクロース、ラクトース及びトレハロース等)、三糖類(ラフィノース及びマルトトリオース等)、四糖類(アカルボース及びスタキオース等)、五糖類(ペンタオース等)及び六糖類(ヘキサオース等)}等が挙げられる。
【0021】
アミドとしては、モノアミド(ギ酸アミド、プロピオン酸アミド及びステアリルアミド等)及びポリアミド(マロン酸ジアミド及びエチレンビスオクチルアミド等)等が挙げられる。
【0022】
アミンとしては、モノアミン(ジメチルアミン、エチルアミン、アニリン及びステアリルアミン等)及びポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸としては、有用物質の欄で説明したカルボン酸と同じもの等が挙げられる。
【0024】
ヒドロキシカルボン酸としては、2-ヒドロキシエタン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2,3-ジヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、2-ジヒドロキシブタン二酸、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、2-ヒドロキシベンゼン酸及び12-ヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。
【0025】
アミノ酸としては、グリシン、4-アミノブタン酸、6-アミノヘキサン酸及び12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0026】
これらのうち、生産性の観点から、アルコールが好ましく、さらに好ましくは糖類、特に好ましくは単糖類(ジヒドロキシアセトン、グリセリン、エリトルロース、エリトリトール、アラビノース、キシルロース、キシリトール、フルクトース、ソルボース、グルコース、マンノース、ラクトース、ソルビトール等)、二糖類(スクロース、ラクトース、トレハロース等)及び三糖類(ラフィノース、マルトトリオース等)、最も好ましくは単糖類及び二糖類である。
【0027】
炭素数3~18のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレン、オキシテトラメチレン、オキシ(1-又は2-フェニルエチレン)、オキシ-1,2-デシレン、オキシ-1,12-ドデシレン、オキシ-1,2-ドデシレン及びオキシ-1,2-オクタデシレン等が挙げられる。複数種類の炭素数2~18のオキシアルキレン基(AO)を用いる場合、これらはブロック付加でもランダム付加でもよい。
【0028】
これらのうち、生産性の観点から、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシテトラメチレン及びオキシ(1-又は2-フェニルエチレン)が好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレン及びオキシブチレンである。
【0029】
水素原子又は炭素数1~24の1価の有機基(R2)のうち、炭素数1~24の1価の有機基としては、アルキル基(R)、アルケニル基(R’)、アシル基(-COR)及びアロイル基(-COR’)が含まれる。括弧内に表記した化学式の内、R、R’はそれぞれ上記のアルキル基(R)及びアルケニル基(R’)に対応する。
【0030】
アルキル基(R)としては、メチル、ブチル、t-ブチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びテトラコシル(リグノセリル)等が挙げられる。
【0031】
アルケニル基(R’)としては、ブテニル、オクテニル、イソオクテニル、ドデセニル及びオクタデセニル等が挙げられる。
【0032】
水素原子又は炭素数1~24の1価の有機基(R2)のうち、生産性の観点から、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0033】
nは、2~100の整数であり、好ましくは3~70の整数、さらに好ましくは6~40の整数である。
【0034】
mは、0~100の整数であり、好ましくは0~40、さらに好ましくは0~20の整数である。
【0035】
pは、1~20の整数であり、好ましくは2~15の整数、さらに好ましくは3~8の整数である。
【0036】
ポリオキシアルキレン化合物(A)は公知の有機化学反応(ポリオキシアルキレン付加反応、エステル化反応及びウイリアムソン合成法等)により製造できる。
【0037】
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(A)は、同一種類のポリオキシアルキレン化合物のみから構成されてもよく、複数種類のポリオキシアルキレン化合物(たとえば、R1、AO、n、、m、R2及び/又はpが相違する化合物の集合体)から構成されてもよい。また、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(A)において、pが2~20の場合、p個の[(-AO)n-(EO)m-R2]基は、n、m、AO及び/又はR2の一部又は全部が異なるp個の組み合わせとなっていてもよい。
【0038】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤には、本発明の効果を阻害しない限り、ポリオキシアルキレン化合物(A)以外に他の構成成分を含んでもよい。他の構成成分としては、消泡剤、増粘剤、分散剤、防腐剤、凍結防止剤及び希釈溶剤(水、鉱物油、有機溶剤等)等が挙げられる。他の構成成分を含む場合、ポリオキシアルキレン化合物(A)及び他の構成成分が均一混合できれば、本発明の発酵菌の凝集抑制剤の調製方法に制限はない。
【0039】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤の添加量は特に制限はないが、発酵液の重量に基づいて、0.0001~10重量%程度が好ましい。
【0040】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤の使用方法は特に制限はなく、事前に有用物質の原料に添加混合する方法や、発酵行程中に連続滴下等することができる。
【0041】
本発明の有用物質の製造方法において、使用できる発酵菌としては特に制限は無く、公知の微生物(たとえば、特開2013-39085号公報の0023段落、特開2011-92188号公報の0012段落に記載された微生物)等が使用できる。
【0042】
本発明の有用物質の製造方法としては、公知の方法が適用できる。また使用できる原料としては、有用物質の原料の供給及び発酵菌の死滅や生育阻害が無ければ特に制限は無く、糖質原料(さとうきび、モラセス、甜菜糖)、デンプン原料(トウモロコシ、ソルガム、ジャガイモ等)、セルロース原料(針葉樹または広葉樹等の木材、ケナフ、コウゾ、桑、アシ、タケ等)、家畜のし尿、排水及び微生物用培地等が使用できる。
【実施例
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0044】
<実施例1~9>
公知の方法により、以下のポリオキシアルキレン化合物(a1)~(a9){< >内は式(1)に対応する値である}を合成し、それぞれ順に本発明の発酵菌の凝集抑制剤(1)~(9)とした。
【0045】
(a1)トレハロースのプロピレンオキシド160モル・エチレンオキシド80モルブロック付加体<n=20、m=10、p=8>
(a2)スクロースのプロピレンオキシド88モル付加体<n=11、m=0、p=8>
(a3)ソルビトールのブチレンオキシド30モル・エチレンオキシド100モルブロック付加体<n=6、m=20、p=5>
(a4)アラビノースのブチレンオキシド40モル・エチレンオキシド16モルブロック付加体<n=10、m=4、p=4>
(a5)エリスリトールのプロピレンオキシド15モル・ブチレンオキシド30モル・エチレンオキシド15モルブロック付加体<n=15、m=5、p=3>
(a6)グリセリンのプロピレンオキシド42モル・エチレンオキシド15モルブロック付加体<n=14、m=5、p=3>
(a7)スクロースのプロピレンオキシド24モル・ブチレンオキシド8モルブロック付加体<n=4、m=0、p=8>
(a8)ガラクトースのプロピレンオキシド25モル付加体のペンタメチルエーテル<n=5、m=0、p=5>
(a9)キシリトールのプロピレンオキシド160モル・エチレンオキシド12モルブロック付加体<n=40、m=3、p=4>
【0046】
<比較例>
TWEEN40{ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(エチレンオキシド20モル付加体)、「TWEEN」はクローダ インターナショナル ピーエルシーの登録商標である。}を比較用の発酵菌の凝集抑制剤(h)とした。
【0047】
<発酵菌の凝集性評価及び有用物質(エタノール)の定量>
市販のさとうきび糖みつ(株式会社丸協農産より購入)200部、市販のドライイースト(日清フーズ株式会社より購入、スーパーカメリヤ)50部及びイオン交換水750部を均一混合して発酵液を調製し、この発酵液300mLを内径100mm×高さ200mmのガラス製容器に入れ、この発酵液に、評価用試料{凝集抑制剤(1)~(9)及び(h)}を下表の添加量で添加し、40℃に温調した恒温水槽へガラス製容器を投入、撹拌下30分後の発酵液中の凝集の有無を目視にて確認し、有用物質(エタノール)を定量し、下表に示した。
評価用試料を脱イオン水40μLに変更したこと以外上記と同様にして、ブランクの評価をし、下表に示した。
【0048】
なお、有用物質(エタノール)の定量はガスクロマトグラフィー法(下記の条件)にて測定した。検量線を試薬特級エタノールを用いて作成し、発酵液の重量に対する濃度(重量%)で算出した。
【0049】
装 置:Agilent 7890A(アジレントテクノロジー株式会社)
カラム:Agilent J&W GCカラム-HP-5(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm、アジレントテクノロジー株式会社)
検出器:Agilent 5977A(アジレントテクノロジー株式会社)
キャリアガス及び流量:He、2mL/min
サンプル注入量:1μL
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤は、従来の界面活性剤と比較し、凝集を抑制することができた。そして、本発明の発酵菌の凝集抑制剤を用いると、従来の界面活性剤に比較して有用物質(エタノール)の生産性が高かった。
【0052】
なお、発酵菌の凝集は、発酵菌表面の細胞膜に存在する疎水性タンパク質同士が疎水性相互作用によって合着するにより発生すると考えられるところ、本発明の凝集抑制剤は発酵菌表面の細胞膜(疎水性タンパク質部分)に吸着して疎水性相互作用の発生抑制し、凝集を抑制すると考えられる。そして、以上の結果のとおり、特定の化学構造をもつポリオキシアルキレン化合物(A)が発酵菌表面の細胞膜(疎水性タンパク質部分)に吸着して疎水性相互作用の発生抑制することにより、凝集を抑制したものと考えられる。
したがって、疎水性タンパク質が発酵菌表面の細胞膜に存在する発酵菌であれば、同様に発酵菌表面の細胞膜(疎水性タンパク質部分)に吸着して疎水性相互作用の発生抑制することにより、凝集を抑制できるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の発酵菌の凝集抑制剤は、発酵菌を用いた有用物質の製造に使用される添加剤として好適である。