(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】水止め用ハンプ
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230920BHJP
E01F 9/529 20160101ALI20230920BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E01F9/529
(21)【出願番号】P 2019190642
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆尚
(72)【発明者】
【氏名】上甲 信
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196729(JP,A)
【文献】特開2005-325624(JP,A)
【文献】特開2016-204948(JP,A)
【文献】特開2019-002172(JP,A)
【文献】米国特許第05236281(US,A)
【文献】特開2005-163503(JP,A)
【文献】特開2005-201035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E01F 9/529
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豪雨時の水止めのため、人や車両が出入する出入口の床に取外し可能に設置され、かつ設置した状態で、その上を人が通行したり、車両が走行可能である断面山形のブロックよりな
り、
高さを増すためのキャップが前記ブロック上に被せられることを特徴とする水止め用ハンプ。
【請求項2】
前記ブロックの底面には凹所が形成され、該凹所に弾力性に富むシール材が装着されることを特徴とする請求項1記載の水止め用ハンプ。
【請求項3】
前記床とブロックの底面のいずれか一方に凸部が、他方に該凸部が着脱可能に嵌合する凹部が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の水止め用ハンプ。
【請求項4】
前記ブロックは截頭して頂部を水平面とした台形状をなし、建物の戸を閉じたとき、該戸が前記ブロック頂部の水平面に突き当たった状態で閉じられることを特徴とする請求項1-
3のいずれかの請求項に記載の水止め用ハンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口、或いは地下街、地下鉄、地下道、地下駐車場等の出入口に豪雨時の浸水防止のために接地される水止め用ハンプに関する。
【背景技術】
【0002】
豪雨時に雨水が建物内や地下に流入するのを防止する対策として、出入口に土のうを積み上げることが多く行われているが、水止め用の装置も種々知られている。その1つとして下記特許文献1には、出入口の両側部と下部に当てがわれる防水パネルと、出入口両側部とをラチェット式のリングアームよりなる平行回動シフトリンク機構で取外し可能に連結した防水装置が提案され、特許文献2には出入口に起伏式の防水扉を設置し、豪雨時に防水扉を倒して出入口を塞ぐタイプの防水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-100710号公報
【文献】特許第4883444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出入口に土のうを設置するのは多大な労力と時間を要するのに対し、特許文献1及び2記載の防水装置では、設置の省力化及び時間が短縮されて出入口を開閉できるが、いずれも概して構造が複雑で、特許文献1記載の防水パネルの場合、取付けた状態では車両はもとよりのこと、歩行者も通り抜けができない。
【0005】
特許文献2記載の防水扉の場合、倒して出入口を閉じた状態では、その上を歩行者はもとよりのこと、車両の通行も支障なく行えるが、装置の構造が複雑である嫌いがあり、また機構中にゴミや粉塵が付着して装置が正常に機能しなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、構造及び取付けが比較的簡単で、出入口に浸水防止のため取付けてた状態では、歩行者の通行はもとより、車両の走行も可能な水止め用ハンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の水止め用ハンプは、豪雨時の水止めのため、人や車両が出入する出入口の床に取外し可能に設置され、かつ設置した状態で、その上を人が通行したり、車両が走行可能である断面山形のブロックよりなり、高さを増すためのキャップが前記ブロック上に被せられることを特徴とする。
請求項2に係る発明の水止め用ハンプは、請求項1に係る発明において、前記ブロックの底面には凹所が形成され、該凹所に例えばスポンジ材のような弾力性に富むシール材が装着されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明の水止め用ハンプは、請求項1又は2に係る発明において、前記床とブロックの底面のいずれか一方に凸部が、他方に該凸部が着脱可能に嵌合する凹部が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1-3のいずれかに係る発明において、前記ブロックは截頭して頂部を水平面とした台形状をなし、シャッター、フェンス、扉等の建物の戸を閉じたとき、該戸が前記ブロック頂部の水平面に突き当たった状態で閉じられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の水止め用ハンプは、断面山形の構造の簡単な単一のブロックより構成され、出入口に単に置くだけで設置でき、取外しも容易で、その上を歩行したり、車両も走行することが可能である。豪雨時には、水嵩がブロックの高さ分になるまでは雨水の流入を阻むことができる。又ゴミや粉塵が入り難く、入り込んだとしても水止めに支障がないか、ほとんどない。また、請求項1に係る発明のようにブロック上にキャップを被せると、雨水の嵩が増すのに対処することができる。
【0011】
請求項2に係る発明の水止め用ハンプによると、出入口に設置した状態で、シール材が出入口の床に密着することにより床面との不陸を吸収し、床とブロックとの間のシールを行うことができる。
【0012】
請求項3に係る発明の水止め用ハンプによると、凹凸部を嵌合させることによりブロックが出入口に拘束され、ブロックが軽量であっても位置ずれ、とりわけ車両の走行による位置ずれを防ぐことができる。
【0013】
請求項4に係る発明によると、ブロック頂部が水平面をなすことにより、ブロック上を車両が乗り越えるとき、車両の乗り越えがスムーズに行えるほか、夜間等において、建物の戸を閉じた状態においても、土嚢を積んだ場合と同様にして戸と土間との間より雨水が侵入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の1実施形態の水止め用ハンプの斜視図。
【
図2】
図1に示す水止め用ハンプを出入口に取付けた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水止め用ハンプの実施形態について図面により説明する。
図1は、水止め用ハンプとなるブロック1について示すもので、該ブロック1は例えばポリエチレン、ナイロン等の硬質樹脂、ゴム製等の断面が山形状をなし(図示する例では2等辺三角形をなしている)、内部には例えば鋼管或いは鋼材よりなるバラスト2が複数、並列してブロックの長手方向に埋設されている。そして底面には凹所3が1ないし複数か所(図示する例においては、ブロック1の長手方向両側に2か所)形成され、該凹所3には弾力性に富むシール材、例えばスポンジ4を前記凹所3より突出させて装着している。
【0016】
図2及び
図3は、建物、例えば工場の出入口の床、例えばコンクリート製の床5に
図1に示すブロック1を設置した状態を示すもので、ブロック1は埋設されるバラスト2により重量が大であるため、前記凹所3より突出するスポンジ4が床面に圧着し圧縮された状態で出入口の床に密着し、これにより床面との間をシールするようになっている。工場出入口に取付けられるブロック1の端面と、出入口を形成する壁面との間の
図2及び
図3に示す隙間5には水止めのため土嚢が装着される。
【0017】
ブロック1は、その高さH分、豪雨時の雨水の侵入を防ぐことができる。ブロック1はまた、工場へ出入する作業員等の人のみならず、車両の走行が可能で、設置してあっても工場の操業に左程支障を来たすことはない。
【0018】
前記実施形態のブロック1は鋼製或いはコンクリート製とすることもできる。鋼製或いはコンクリート製とする場合、バラスト2がなくても重量が嵩むため設置状態で位置ずれが生じ難い。
【0019】
図示するブロック1は先端が尖っているが、車両の乗り越しがスムーズに行えるように頂部が円弧状又は後述するように水平面をなすのが望ましい。また山裾も車両の走行がスムーズに行えるようになだらかであるのが望ましい。
【0020】
前記実施形態のブロック1は工場の出入口に設置しているが、別の実施形態では、住宅等の建物の出入口、或いは地下街、地下鉄、地下道、地下駐車場等の出入口に設置され、水止めされる。
【0021】
前記ブロック1は、単独で使用することもできるが、出入口が幅広で、1つのブロックでは出入口全体に行き渡らない場合、複数のブロック1が1列に連結して設置される。ブロックの連結は、バラストとして例えば鋼管が用いられる場合、向き合うブロック端面の鋼管開口にそれぞれ鋼製等のロッドを差込むことにより行うことができる。複数のブロック1が連結されることにより、ブロック上を車両が走行するときに生じ易いブロック1の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0022】
ブロック1の位置ずれ防止対策としては、次のような方法も考えられる。
その一例が
図4に示される。
図4に示す実施形態のブロック6は、底面中央に凹部7を形成し、出入口に突設される金具8、例えば工場の出入口に開閉可能に設置される開閉ドア用のレール、或いは出入口に新たに突出して設置される金具に取外し可能に嵌合できるようにする。これによりブロック6上を車両が走行しても位置ずれを生じ難くできる。
【0023】
図2及び
図4に示すブロック1,6はいずれも、前後両端の山裾の裾端部が切断されて垂直面の形態をなしており、出入口に設置した時、出入口の床と段差を生ずるようになっているが、山裾を切断しないで床面と段差を生じないようにバリアフリーとなすようにしてもよい。
【0024】
前記実施形態のブロック1、6では、豪雨時に雨水の水嵩がブロック1,6の高さHを越えると、雨水が建物内に浸水したり、地下に流入するようになる。この問題に対処ために
図5に示す実施形態では、ブロック1上にキャップ10が被せられる。
【0025】
図5に示す実施形態のように、ブロック1上にキャップ10を取付けて高さをh増した場合、車両の走行ができなくなっても、キャップ10の高さhによって歩行者は跨いで、通り抜けすることもできなくはない。跨ぐ際には、キャップ10に当たってキャップ10が容易に外れないおようにするために、キャップ10とブロック1に凹凸を設けて互いに嵌合係止させるようにするのが望ましく、またキャップ10とブロック1との間から雨水の侵入を防止するため、両者の間にシール材を介在させるのが望ましい。
【0026】
図6に示す実施形態のブロック12は、截頭して頂部を水平面12aとした台形状断面をなすもので、車両が水平面12a上をスムーズに乗り越え、しかも夜間や休日等において、工場その他建物の出入口に開閉可能に設置される請求項5に記載される、戸としてのシャッター13を下ろしたときには、該シャッター13が前記水平面12aに突き当たって密着性を高めた状態で出入口が閉じられ、シャッター13を閉じたときでもブロック12をそのまま活用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1、6、12・・ブロック
2・・バラスト
3、7・・凹所
4・・スポンジ
5・・床
6・・隙間
8・・金具
10・・キャップ
13・・シャッター