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特許7351519釣り補助具兼鮫等の食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
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  • 特許-釣り補助具兼鮫等の食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】釣り補助具兼鮫等の食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
A01K79/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000021
(22)【出願日】2020-01-03
(65)【公開番号】P2021108542
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】522467563
【氏名又は名称】一般社団法人NAGOYA
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】名古谷 聡
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068766(JP,A)
【文献】特開2016-214144(JP,A)
【文献】特開平08-131023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
A01K 65/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも軟質金属を主材料とし、可撓性を有する棒状部材から変形されたリング状部材と、
該リング状部材の両端を連結するためのジョイント部材と、
を備え、
マグロ等の大型魚を対象とした釣りの際に対象魚が針にかかった後に前記リング状部材が道糸を囲繞するようにし、水中に投入された前記リング状部材が対象魚の鰓部を塞ぐことにより前記対象魚の運動能力を低下させ容易に釣り上げることを可能にするとともに、鮫等の食害を齎す生物が前記対象魚を検知しにくくすることを特徴とする、
釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項2】
前記リング状部材は、粘弾性を有する材料を有するチューブ状部材により覆われていることを特徴とする、
請求項1記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項3】
前記リング状部材は少なくとも軟質金属を主材料とし、
該軟質金属は、アルミニウム、マグネシウム、真鍮、鉛若しくは銅又はこれらの何れかの合金又はその混合物よりなることを特徴とする、
請求項1又は2記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項4】
前記ジョイント部材は、前記リング状部材の各端部に取り付けられる2つの部材で構成されており、該2つの部材のそれぞれの両端が相互に嵌合する構造とであることを特徴とする、
請求項1乃至の何れか一に記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項5】
前記2つの部材は、ワンタッチジョイント機構により嵌合する構造とされていることを特徴とする、
請求項に記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項6】
前記2つの部材は、それぞれ磁石を有しており、互いに磁により接合するする構造とされていることを特徴とする、
請求項4又は5に記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【請求項7】
前記2つの部材がそれぞれ有する磁石は、ネオジム磁石であることを特徴とする、
請求項6記載の釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物から食害を防ぐ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグロ等の魚類の釣りの際、鮫等による食害は非常に頻度が高く、問題となっていた。レジャーとしての釣りに於いても、鮫等による食害は興趣を削ぎ、その価値を低下させる原因となっていた。
【0003】
これに対し、漁業分野では食害に対するさまざまな対策が講じられている。魚類、特に鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類は頭部に電流を感知する感覚器官を有し、これを用いて捕食対象を捕捉する一助としている。ただし、かかる器官を有しているため電流に対しては非常に敏感であり、これを利用した忌避装置が提案されている。
【0004】
例えば、マグロの一本釣り漁等では道糸に予め装備された電撃用の機器が用いられており、マグロが針にかかるとこれを投入し、船上からの給電によって数百ボルトの電撃を加えてマグロの活動を止めるとともに鮫等の食害を防止することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006ー149275号公報
【文献】特開2013ー169170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レジャーとしての釣りの場合、前記のような電撃装置を準備することはほとんど不可能であるばかりでなく、高電圧を海水中で用いることの危険性もあり、一般には用いられなかった。
【0007】
同様に、高電圧を用いない対策も検討されている。特許文献1或いは特許文献2では、漁業用の食害忌避装置が開示されている。特許文献1では、はえ縄漁に於いて電流により鮫を忌避する方法が開示され、特許文献2では天秤の両端に電極を設け、錘の中に電源(電池)を内蔵して電流を流し、鮫等の食害を忌避する態様が開示されている。
【0008】
しかし、簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能で、マグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る装置は存在せず、これに対するニーズは大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具であって、少なくとも軟質金属を主材料とした可撓性を有する棒状部材と、該棒状部材の両端を連結してリング状にするためのジョイント部材とからなり、マグロ等の大型魚を対象とした釣りの際に対象魚が針にかかった後に前記棒状部材を道糸を囲繞するようにリング状に連結し、これを水中に投入することにより、対象魚の鰓部を該装置が塞ぐことにより対象魚の運動能力を低下させ、容易に釣り上げることを可能にするとともに、鮫等の食害を齎す生物を忌避することを特徴とする、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具であり、その使用方法である。
【0010】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材が、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材により覆われてなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材は少なくとも軟質金属を主材料とし、該軟質金属は、アルミニウム、マグネシウム、真鍮、鉛或いは銅、及びこれらの何れかの合金或いはその混合物よりなることを特徴とする。また本発明は、該可撓性を有する棒状部材の直径が2cm以上であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、ジョイント部材が、両端が相互に嵌合する構造としたことにより為されることを特徴とし、さらに本発明は、ジョイント部材としてワンタッチジョイントを用いたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、ジョイント部材が、磁石により接合するする構造としたことにより為されることを特徴とし、さらに本発明は、該ジョイント部材に用いられる磁石がネオジム磁石であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、該チューブ状部材に用いる粘弾性を有する材料が、合成樹脂、シリコン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・メラミン樹脂・尿素樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・ポリウレタン・熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリ塩化ビニル・ポリ塩化ビニリデン・ポリスチレン・ポリ酢酸ビニル・ポリテトラフルオロエチレン・ABS樹脂・AS樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド・ナイロン・ポリアセタール・ポリカーボネート・変性ポリフェニレンエーテル・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンテレフタレート・環状ポリオレフィン・ポリフェニレンスルファイド・ポリテトラフロロエチレン・ポリスルホン・ポリエーテルサルフォン・非晶ポリアリレート・液晶ポリマー・ポリエーテルエーテルケトン・熱可塑性ポリイミド・ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合材料、及びこれらと繊維類、グラスファイバー、その他の補強材との複合材料、金属材料を含む複合材料、のいずれかであることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材を輪状に連接した状態での輪の大きさが10cm以上60cm以下であることを特徴とする。さらに本発明に於いては、該可撓性を有する棒状部材を輪状に連接した状態での輪の大きさが15cm以上40cm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具及びその使用方法は、簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能で、マグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る器具を提供し、もって社会に資することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る器具の実施形態のうち、未連接の状態での全形の一例を説明するための図面代用写真である。
図2図2は、本発明に係る器具の実施形態のうち、未連接の状態のジョイント部分の一例を説明するための図面代用写真である。
図3図3は、本発明に係る器具の実施形態のうち、ジョイントを連接した状態での全形の一例を説明するための図面代用写真である。
図4図4は、本発明に係る器具の実施形態のうち、ジョイントを連接した状態のジョイント部分の一例を説明するための図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具であって、少なくとも軟質金属を主材料とした可撓性を有する棒状部材と、該棒状部材の両端を連結してリング状にするためのジョイント部材とからなり、マグロ等の大型魚を対象とした釣りの際に対象魚が針にかかった後に前記棒状部材を道糸を囲繞するようにリング状に連結し、これを水中に投入することにより、対象魚の鰓部を該装置が塞ぐことにより対象魚の運動能力を低下させ、容易に釣り上げることを可能にするとともに、鮫等の食害を齎す生物を忌避することを特徴とする、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具であり、その使用方法である。
【0019】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材が、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材により覆われてなることを特徴とする。これにより、可撓性を有する棒状部材に用いられる金属材料の腐食を防止し、耐久性の向上に寄与する。
【0020】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材は少なくとも軟質金属を主材料とし、該軟質金属は、アルミニウム、マグネシウム、真鍮、鉛或いは銅、及びこれらの何れかの合金或いはその混合物よりなることを特徴とする。また本発明は、該可撓性を有する棒状部材の直径が2cm以上であることを特徴とする。これにより、本発明に係る器具は十分な重量を確保するとともに、対象魚の頭部に嵌る際に釣り針と干渉せず、機能を発揮することができる。
【0021】
また本発明は、ジョイント部材が、両端が相互に嵌合する構造としたことにより為されることを特徴とし、さらに本発明は、ジョイント部材としてワンタッチジョイントを用いたことを特徴とする。
【0022】
また本発明は、ジョイント部材が、磁石により接合するする構造としたことにより為されることを特徴とし、さらに本発明は、該ジョイント部材に用いられる磁石がネオジム磁石であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、該チューブ状部材に用いる粘弾性を有する材料が、合成樹脂、シリコン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・メラミン樹脂・尿素樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・ポリウレタン・熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリ塩化ビニル・ポリ塩化ビニリデン・ポリスチレン・ポリ酢酸ビニル・ポリテトラフルオロエチレン・ABS樹脂・AS樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド・ナイロン・ポリアセタール・ポリカーボネート・変性ポリフェニレンエーテル・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンテレフタレート・環状ポリオレフィン・ポリフェニレンスルファイド・ポリテトラフロロエチレン・ポリスルホン・ポリエーテルサルフォン・非晶ポリアリレート・液晶ポリマー・ポリエーテルエーテルケトン・熱可塑性ポリイミド・ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合材料、及びこれらと繊維類、グラスファイバー、その他の補強材との複合材料、金属材料を含む複合材料、のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、該可撓性を有する棒状部材を輪状に連接した状態での輪の大きさが10cm以上60cm以下であることを特徴とする。さらに本発明に於いては、該可撓性を有する棒状部材を輪状に連接した状態での輪の大きさが15cm以上40cm以下であることが望ましい。これにより、対象魚の頭部に嵌り、その運動能力を低下させる効果を発揮する。
【0025】
本発明に係る器具は、釣りの際に対象魚が針にかかった後に前記棒状部材を道糸を囲繞するようにリング状に連結し、これを水中に投入することにより、対象魚の鰓部を該装置が塞ぐことにより対象魚の運動能力を低下させ、容易に釣り上げることを可能にする。本発明に係る器具は可撓性を有する棒状部材に軟質金属を用いており、容易にリング状に変形・連接できるとともに、十分な重量があるため、水中に投入後速やかに沈降し、対象魚の頭部に嵌り、鰓部を塞いで対象魚の運動能力を低下させることができる。
【0026】
本発明に係る器具が対象魚の頭部に嵌り、鰓部を塞いで対象魚の運動能力を低下させると、針がかりした対象魚が暴れたり急激な逃避行動をとることが出来なくなる。ここで、鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類は頭部に電流を感知する感覚器官を有し、これを用いて捕食対象を捕捉する一助としているが、これは対象魚が暴れたり急激な逃避行動をとることによる筋電流を主に感知しているものと考えられ、対象魚の運動能力を低下させる本発明に係る器具の効果が食害を防ぐ作用を発揮するのである。
【0027】
本発明に係る、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具及びその使用方法は、簡便な構成で簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能で、マグロ等の魚類の釣りの際に釣り上げる動作を容易にするとともに食害を忌避することの出来る装置を提供し、もって社会に資することが出来る。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明に係る、釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具及びその使用方法の実施の例を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る器具の実施形態のうち、未連接の状態での全形の一例を説明するための図面代用写真である。また、図2は、本発明に係る器具の実施形態のうち、未連接の状態のジョイント部分の一例を説明するための図面代用写真である。通常、使用前にはこのように連接部を解放してある。
【0029】
マグロ等の大型魚を対象とした釣りの際に対象魚が針にかかった後に前記棒状部材を道糸を囲繞するようにリング状に連結し、これを水中に投入することにより、対象魚の鰓部を該装置が塞ぐことにより対象魚の運動能力を低下させ、容易に釣り上げることを可能にするとともに、鮫等の食害を齎す生物を忌避するようにする。
【0030】
図3は、本発明に係る器具の実施形態のうち、ジョイントを連接した状態での全形の一例を説明するための図面代用写真である。また、図4は、本発明に係る器具の実施形態のうち、ジョイントを連接した状態のジョイント部分の一例を説明するための図面代用写真である。前記の連結を行なった場合このような形態となり、囲繞した道糸に沿って自重で沈降していき、対象魚の頭部に嵌る。
【0031】
本発明に係る器具は可撓性を有する棒状部材に軟質金属を用いており、容易にリング状に変形・連接できるとともに、十分な重量があるため、水中に投入後速やかに沈降し、対象魚の頭部に嵌り、鰓部を塞いで対象魚の運動能力を低下させることができる。
【0032】
本発明に係る器具が対象魚の頭部に嵌り、鰓部を塞いで対象魚の運動能力を低下させると、針がかりした対象魚が暴れたり急激な逃避行動をとることが出来なくなる。ここで、鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類は頭部に電流を感知する感覚器官を有し、これを用いて捕食対象を捕捉する一助としているが、これは対象魚が暴れたり急激な逃避行動をとることによる筋電流を主に感知しているものと考えられ、対象魚の運動能力を低下させる本発明に係る器具の効果が食害を防ぐ作用を発揮するのである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上述べてきたように、本発明に係る釣り補助具兼鮫等食害を齎す生物を忌避する器具及びその使用方法は、簡便な構成で簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能で、マグロ等の魚類の釣りの際に釣り上げる動作を容易にするとともに食害を忌避することの出来る装置を提供し、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0034】
1 可撓性を有する棒状部材
2 粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材
3 ジョイント部
図1
図2
図3
図4