(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】認知能力開発システムと方法及びそのためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230920BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2021550086
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2021002695
(87)【国際公開番号】W WO2022177046
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0020809
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521377524
【氏名又は名称】ロワン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ROWAN Inc.
【住所又は居所原語表記】17F,Yonsei Severance Bldg.,10,Tongil-ro,Jung-gu Seoul 04527,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スン ヒョン
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知能力開発コンテンツをユーザに提供するように構成されたコンテンツ提供モジュールと;
前記認知能力開発コンテンツに対するユーザの学習データを受信するように構成された入力モジュールと;
前記学習データに基づいて複数の認知領域別成果情報を算出するように構成された分析モジュールと;
予め設定された訓練データセットを用いたマシンラーニングによる
学習済みモデルである学習結果を格納し、前記複数の認知領域別成果情報及び前記学習結果を用いて前記ユーザに提供する認知能力開発コンテンツの特性を決定するように構成されたマシンラーニングモジュールとを含
み、
前記複数の認知領域は、血管管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの領域に構成され、
前記成果情報は、訓練データセットのユーザらの各認知領域別認知点数、進行率、参加率、使用履歴、及び画面のログに基づいて、前記5つの領域に関連され5次元データレコードの形態で決定され、
前記訓練データセットに含まれた各学習データも5次元データレコードの形態で表現され、
前記認知能力開発コンテンツは、前記複数の認知領域のうち当該コンテンツを通じて改善が可能な領域定義され、
前記使用履歴は、ユーザのコンテンツ検索履歴、各コンテンツに対してユーザが消耗した時間、または特定の認知領域のコンテンツに対してユーザが消耗した時間の総合計を含み、
前記学習結果は、訓練データセットのユーザの学習データをクラスタ化して生成された各データグループの中心データレコードに該当する5次元のデータと、各データグループの認知能力の開発に適したものと設定された認知能力開発コンテンツの5次元の特性値を含む
ことを特徴とする認知能力開発システム。
【請求項2】
前記入力モジュールは、
前記訓練データセットを受信するように更に構成され、
前記訓練データセットに含まれたデータに対して予め設定されたカスタマイズ化コンテンツを用いて前記訓練データセットにラベル付けを行い、ラベル付けられたデータを前記マシンラーニングモジュールに提供するように構成されたデータラベル付け部を含む
請求項1に記載の認知能力開発システム。
【請求項3】
前記分析モジュールは
、複数の認知領域別認知点数
、複数の認知領域別消耗時間
、複数の認知領域別進行率及
び複数の認知領域別参加率のうち一つ以上に基づい
て成果情報を決定するように更に構成される
請求項1に記載の認知能力開発システム。
【請求項4】
前記入力モジュールは、前記ユーザの個人情報を受信するように更に構成され、
前記分析モジュールは、前記ユーザの個人情報を用いて、前記認知点数、前記消耗時間、前記進行率及び前記参加率のうち一つ以上から前記成果情報を導出するための基準値を決定するように更に構成される
請求項3に記載の認知能力開発システム。
【請求項5】
前記マシンラーニングモジュールは、
前記訓練データセットを用いたマシンラーニングを行うことで、前記学習結果を生成するように構成されたマシンラーニングモデル学習部と;
前記学習結果を用いて前記複数の認知領域別成果情報に対応する前記認知能力開発コンテンツの特性を決定するように構成されたマシンラーニングモデル判定部とを含む
請求項1に記載の認知能力開発システム。
【請求項6】
認知能力開発システムが、予め設定された訓練データセットを用いたマシンラーニングによる学習結果を生成するステップと;
前記認知能力開発システムに前記学習結果を格納するステップと;
前記認知能力開発システムが、認知能力開発コンテンツをユーザに提供するステップと;
前記認知能力開発システムが、前記認知能力開発コンテンツに対するユーザの学習データを受信するステップと;
前記認知能力開発システムが、前記学習データに基づいて複数の認知領域別成果情報を算出するステップと;
前記認知能力開発システムが、前記複数の認知領域別成果情報及び前記学習結果を用いて前記ユーザに提供する認知能力開発コンテンツの特性を決定するステップとを含
み、
前記複数の認知領域は、血管管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの領域に構成され、
前記成果情報は、訓練データセットのユーザらの各認知領域別認知点数、進行率、参加率、使用履歴、及び画面のログに基づいて、前記5つの領域に関連され5次元データレコードの形態で決定され、
前記訓練データセットに含まれた各学習データも5次元データレコードの形態で表現され、
前記認知能力開発コンテンツは、前記複数の認知領域のうち当該コンテンツを通じて改善が可能な領域定義され、
前記使用履歴は、ユーザのコンテンツ検索履歴、各コンテンツに対してユーザが消耗した時間、または特定の認知領域のコンテンツに対してユーザが消耗した時間の総合計を含み、
前記学習結果は、訓練データセットのユーザの学習データをクラスタ化して生成された各データグループの中心データレコードに該当する5次元のデータと、各データグループの認知能力の開発に適したものと設定された認知能力開発コンテンツの5次元の特性値を含む
ことを特徴とする認知能力開発方法。
【請求項7】
前記学習結果を生成するステップは、
前記認知能力開発システムが、前記訓練データセットを受信するステップと;
前記認知能力開発システムが、前記訓練データセットに含まれたデータに対して予め設定されたカスタマイズ化コンテンツを用いて前記訓練データセットのラベル付けを行うステップとを更に含む
請求項6に記載の認知能力開発方法。
【請求項8】
前記認知能力開発システムが
、複数の認知領域別認知点数
、複数の認知領域別消耗時間
、複数の認知領域別進行率及
び複数の認知領域別参加率のうち一つ以上に基づい
て成果情報を決定するステップを含む
請求項6に記載の認知能力開発方法。
【請求項9】
前記成果情報を算出するステップの前に、
前記認知能力開発システムが、前記ユーザの個人情報を受信するステップと;
前記認知能力開発システムが、前記ユーザの個人情報を用いて、前記認知点数、前記消耗時間、前記進行率及び前記参加率のうち一つ以上から前記成果情報を導出するための基準値を決定するステップとを更に含む
請求項8に記載の認知能力開発方法。
【請求項10】
ハードウェアと組み合わせて、
予め設定された訓練データセットを用いたマシンラーニングによる学習結果を生成するステップと;
認知能力開発コンテンツをユーザに提供するステップと;
前記認知能力開発コンテンツに対するユーザの学習データを受信するステップと;
前記学習データに基づいて複数の認知領域別成果情報を算出するステップと;
前記複数の認知領域別成果情報及び前記学習結果を用いて前記ユーザに提供する認知能力開発コンテンツの特性を決定するステップとを
コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであり、
前記複数の認知領域は、血管管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの領域に構成され、
前記成果情報は、訓練データセットのユーザらの各認知領域別認知点数、進行率、参加率、使用履歴、及び画面のログに基づいて、前記5つの領域に関連され5次元データレコードの形態で決定され、
前記訓練データセットに含まれた各学習データも5次元データレコードの形態で表現され、
前記認知能力開発コンテンツは、前記複数の認知領域のうち当該コンテンツを通じて改善が可能な領域定義され、
前記使用履歴は、ユーザのコンテンツ検索履歴、各コンテンツに対してユーザが消耗した時間、または特定の認知領域のコンテンツに対してユーザが消耗した時間の総合計を含み、
前記学習結果は、訓練データセットのユーザの学習データをクラスタ化して生成された各データグループの中心データレコードに該当する5次元のデータと、各データグループの認知能力の開発に適したものと設定された認知能力開発コンテンツの5次元の特性値を含む
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は認知能力開発システムと方法及びそのためのコンピュータプログラムに関するものである。より詳細には、本発明の実施形態は認知症の予防に重要な多重領域に対する介入が含まれた総合プログラムを通じて個人別特性を反映したカスタマイズ化認知症の予防を行い、ユーザが機関を訪問して行う機関型だけでなく、在宅型でも実現が可能であって、複数のユーザによる使用が可能な認知能力開発システムの関連技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学の発達に伴い平均寿命が増加しながら、全世界的に高齢化が進んでいる。韓国の場合、2000年に65歳以上の高齢者人口の割合が全体人口の7.2%で、高齢化社会に進入し、2017年には高齢者人口の割合が14%を超え、高齢社会に進入した。2030年に韓国の高齢者人口の割合は24.3%に達し、韓国は超高齢社会になると予想されている。
【0003】
このような急速な高齢化による影響で、認知症の人口が急激に増加する傾向にある。全世界の認知症の人口は2010年基準で約3,560万人に達し、2050年には認知症の人口が約3倍に増加して1億1,540万人に達すると予想される。韓国においても2005年の人口センサスを基準に年齢、性別、教育、居住地域により標準化した認知症の有病率に基づいて推定した今後年度別認知症の有病率は、2012年に9.08%、2020年に9.74%、2030年に9.61%、2040年に11.21%、そして2050年に13.17%に増加して、2027年には認知症の人口が100万人を超え、2050年には認知症の人口が212万人に達すると予想されている。
【0004】
認知症の人口が急激に増加するにつれて、認知症の治療及び管理コストもまた増加している。認知症の社会的コストはがん、心臓病、脳卒中の3大疾患を全て合わせたコストを超えると推定される。韓国の場合、認知症による年間総診療費は2010年を基準に8100億ウォンで老人性疾患のうち2位であり、1人当たりの認知症の診療費は年間310万ウォンで5大慢性疾患のうち最も高いことになっている。また、韓国における国家総認知症のコストは年間8兆7000億ウォンで、10年ごとに2倍ずつ増加すると推定される。
【0005】
急激に増加する認知症による社会的及び経済的負担を軽減するためには、認知症高危険群の早期発見を通じた積極的な治療を通じて認知症の発症を遅延させる必要がある。このための従来の技術として、特許文献1(韓国特許登録公報第10-1295187号)には選別されたコンテンツに対して伝達したユーザのフィードバックによる獲得点数に基づいてユーザの成就度を付与することで、認知症の予防機能を行う脳機能向上システム及びその運用方法が開示されている。
【0006】
しかし、認知症の予防及び治療のための従来の認知介入治療法は病院などの機関を訪問して専門家の立ち会い下に施行しなければならないため、1回に5~12万ウォンに達する高い治療費を支払わなければならないことがほとんどである。また、コンピューティングデバイスを用いた認知介入治療プログラムも開発されているが、デバイス1台の値段が5千万ウォンに達する高いコストによって、一般的なユーザが使いにくい限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、認知症の予防に重要な多重領域に対する介入が含まれた総合プログラムの形態で実現されて個人別特性を反映したカスタマイズ化認知症の予防機能を行うことができ、ユーザが機関を訪問して行う機関型だけでなく、ネットワークを通じた通信を通じてユーザを管理する在宅型でも実現することができる認知能力開発システムと方法及びそのためのコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る認知能力開発システムは、認知能力開発コンテンツをユーザに提供するように構成されたコンテンツ提供モジュール;前記認知能力開発コンテンツに対するユーザの学習データを受信するように構成された入力モジュール;前記学習データに基づいて複数の認知領域別成果情報を算出するように構成された分析モジュール;及び、予め設定された訓練データセット(training data set)を用いたマシンラーニングによる学習結果を格納し、前記複数の認知領域別成果情報及び前記学習結果を用いて前記ユーザに提供する認知能力開発コンテンツの特性を決定するように構成されたマシンラーニング(machine learning)モジュールを含む。
【0010】
一実施形態において、前記入力モジュールは、前記訓練データセットを受信するように更に構成され、前記訓練データセットに含まれたデータに対して予め設定されたカスタマイズ化コンテンツを用いて前記訓練データセットにラベル付け(labeling)を行い、ラベル付けられたデータを前記マシンラーニングモジュールに提供するように構成されたデータラベル付け部を含む。
【0011】
一実施形態において、分析モジュールは、前記複数の認知領域別認知点数、前記複数の認知領域別消耗時間、前記複数の認知領域別進行率及び前記複数の認知領域別参加率のうち一つ以上に基づいて前記成果情報を決定するように更に構成される。
【0012】
一実施形態において、前記入力モジュールは前記ユーザの個人情報を受信するように更に構成される。この時、前記分析モジュールは、前記ユーザの個人情報を用いて、前記認知点数、前記消耗時間、前記進行率及び前記参加率のうち一つ以上から前記成果情報を導出するための基準値を決定するように更に構成される。
【0013】
一実施形態において、前記マシンラーニングモジュールは、前記訓練データセットを用いたマシンラーニングを行うことで、前記学習結果を生成するように構成されたマシンラーニングモデル学習部;及び前記学習結果を用いて前記複数の認知領域別成果情報に対応する前記認知能力開発コンテンツの特性を決定するように構成されたマシンラーニングモデル判定部を含む。
【0014】
一実施形態に係る認知能力開発方法は、認知能力開発システムが、予め設定された訓練データセットを用いたマシンラーニングによる学習結果を生成するステップ;前記認知能力開発システムに前記学習結果を格納するステップ;前記認知能力開発システムが、認知能力開発コンテンツをユーザに提供するステップ;前記認知能力開発システムが、前記認知能力開発コンテンツに対するユーザの学習データを受信するステップ;前記認知能力開発システムが、前記学習データに基づいて複数の認知領域別成果情報を算出するステップ;及び前記認知能力開発システムが、前記複数の認知領域別成果情報及び前記学習結果を用いて前記ユーザに提供する認知能力開発コンテンツの特性を決定するステップを含む。
【0015】
一実施形態に係る認知能力開発方法において、前記学習結果を生成するステップは、前記認知能力開発システムが、前記訓練データセットを受信するステップ;前記認知能力開発システムが、前記訓練データセットに含まれたデータに対して予め設定されたカスタマイズ化コンテンツを用いて前記訓練データセットのラベル付けを行うステップを更に含む。
【0016】
一実施形態において、前記成果情報を算出するステップは、前記認知能力開発システムが、前記複数の認知領域別認知点数、前記複数の認知領域別消耗時間、前記複数の認知領域別進行率及び前記複数の認知領域別参加率のうち一つ以上に基づいて前記成果情報を決定するステップを含む。
【0017】
一実施形態に係る認知能力開発方法は、前記成果情報を算出するステップの前に、前記認知能力開発システムが、前記ユーザの個人情報を受信するステップ;前記認知能力開発システムが、前記ユーザの個人情報を用いて、前記認知点数、前記消耗時間、前記進行率及び前記参加率のうち一つ以上から前記成果情報を導出するための基準値を決定するステップを更に含む。
【0018】
一実施形態に係るコンピュータプログラムはハードウェアと組み合わせて前述した実施形態に係る認知能力開発方法を行うためのものであって、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録されるものであり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面に係る認知能力開発システム及び方法によれば、認知、動機、血管、運動、栄養など認知症の予防に重要な多重領域に対する介入が含まれた総合プログラムを通じて個人別特性を反映したカスタマイズ化認知症の予防を行うことができる利点がある。
【0020】
また、本発明の一側面に係る認知能力開発システム及び方法は、高齢者福祉館や認知症安心センターなどの機関を訪問して行う機関型だけでなく、ユーザがネットワークを通じて管理を受け、認知症の予防を行う在宅型プログラムを通じても実現することができるので、訪問が難しい高齢者もインターネットを通じて使用が可能であり、従来に比べてより多くのユーザが認知症の予防プログラムの恩恵を受けるようにすることができる。
【0021】
更に、本発明の一側面に係る認知能力開発システム及び方法を使用すると、ユーザが継続的に参加するようにカスタマイズ化したプログラムを構成することで、認知症の予防に役立つようにユーザの生活習慣を改善し、ユーザが正確な知識に基づいた活動を連続的に実践するように動機を強化することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係る認知能力開発システムの概略的なブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る認知能力開発方法の各ステップを示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係る認知能力開発方法によるデータ処理過程を説明するための概念図である。
【
図4A】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図4B】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図4C】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図4D】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図4E】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図4F】一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像である。
【
図5】一実施形態に係る認知能力開発システムによりユーザデバイス上に出力される認知点数を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は一実施形態に係る認知能力開発システムの概略的なブロック図である。
図1を参照すると、本実施形態に係る認知能力開発システム2はコンテンツ提供モジュール21、入力モジュール22、分析モジュール23及びマシンラーニング(machine learning)モジュール24を含む。また、それぞれのモジュール21~24は単一又は複数の機能部(unit)を含むことができる。
【0024】
実施形態に係る認知能力開発システム2とこれに含まれる各モジュール21~24又は部は、全てがハードウェアであるか、または部分的にハードウェアであり、部分的にソフトウェアである側面を有することができる。例えば、認知能力開発システム2の各モジュール21~24又は部は、特定の形式及び内容のデータを電子通信方式で送受信するためのハードウェア及びこれに関連するソフトウェアを通称することができる。本明細書において「部」、「モジュール」、「装置」、「端末」、「サーバ」又は「システム」などの用語は、ハードウェア及び当該ハードウェアによって駆動されるソフトウェアの組み合わせを称することと意図する。例えば、ハードウェアはCPU又は他のプロセッサ(processor)を含むデータ処理機器であり得る。また、ハードウェアによって駆動されるソフトウェアは実行中のプロセッサ、オブジェクト(object)、実行ファイル(executable)、実行スレッド(thread of execution)、プログラム(program)などを称することもできる。
【0025】
また、認知能力開発システム2を構成するそれぞれの要素は必ずしも互いに物理的に区分される別の装置を称することを意図しない。即ち、
図1のコンテンツ提供モジュール21、入力モジュール22、分析モジュール23及びマシンラーニングモジュール24は認知能力開発システム2を構成するハードウェアを当該ハードウェアによって行われる動作に応じて機能的に区分したものであるに過ぎず、必ずそれぞれの部が互いに独立して備えなければならないものではない。勿論、実施形態によってはコンテンツ提供モジュール21、入力モジュール22、分析モジュール23及びマシンラーニングモジュール24のうち一つ以上が互いに物理的に区分される別の装置で実現することも可能である。
【0026】
コンテンツ提供モジュール21は認知能力開発のためのコンテンツをユーザに提供するように構成される。例えば、コンテンツ提供モジュール21はユーザデバイス1に備えられたディスプレイ手段及び音響出力手段などを用いてコンテンツをユーザに提示することができるように、ユーザデバイス1にコンテンツを伝送するための部分であり得る。以上の動作を行うために、認知能力開発システム2は有線及び/又は無線ネットワークを通じてユーザデバイス1と通信することができる。本明細書における有線及び/又は無線ネットワークを通じた通信方法は、オブジェクトとオブジェクトがネットワークできる全ての通信方法を含むことができ、有線通信、無線通信、3G、4G、或いはそれ以外の方法を含むこともでき、特に限定されるものではない。
【0027】
図1においてユーザデバイス1はタブレット(tablet)コンピュータの形態で示したが、これは例示的なものであって、ユーザデバイス1はスマートフォン(smartphone)などのモバイルコンピューティングデバイス、ノート型コンピュータ、パーソナルコンピュータ(Personal Computer; PC)などの任意のコンピューティングデバイスで構成されることができる。
【0028】
一実施形態において、認知能力開発システム2は少なくとも部分的にユーザデバイス1で実行されるアプリケーション(又は、アプリ(app))と通信することで、アプリケーションの機能実行を可能にするアプリケーションサーバの機能を行うことができる。又は/更に、認知能力開発システム2は少なくとも部分的にユーザデバイス1上で実行されるWebブラウザ(web browser)などを通じて接続可能な所定のWebページ(web page)を提供しているWebサーバ(web server)の機能を行うこともできる。
【0029】
しかし、これは例示的なものであって、他の実施形態では認知能力開発システム2自体が、ユーザが使用するデバイスの形態で構成されることができる。この場合、ユーザは認知能力開発システム2を通じて直接コンテンツを用いることができるので、
図1に示したユーザデバイス1は省略することもできる。
【0030】
本発明の実施形態において、コンテンツ提供モジュール21を通じて提示される認知能力開発コンテンツは複数の認知領域に関連するものであり得る。本明細書において複数の認知領域とは、認知症などによる認知能力の低下を防止したり、低下速度を遅らせるなど認知能力を改善するために互いに異なる視点からユーザの認知能力を改善するための活動を誘導するための多角的な分野を意味する。
【0031】
例えば、一実施形態において認知能力開発システム2は認知能力の改善のために管理が必要な内容を血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域に区分することができる。この時、認知能力開発システム2が提供する認知能力開発コンテンツは前述した5つの認知領域のうち一つ又は複数の認知領域の能力改善を目指し、特定の認知領域の強化を目指して開発されたものであり得、これを本明細書では認知能力開発コンテンツの特性と称する。例えば、認知能力開発コンテンツは特定の分野における能力強化を目的とするゲームの形式を有することができる。
【0032】
入力モジュール22は、コンテンツ提供モジュール21を通じてユーザに提供されたコンテンツに対するユーザの学習データをユーザデバイス1から受信するように構成される。又は、認知能力開発システム2がユーザのパーソナルコンピュータなど、ユーザデバイスの形態で実現される場合、入力モジュール22はキーボードやタッチスクリーンなどの入力手段(図示せず)を通じて学習データの入力を受けることができる。
【0033】
分析モジュール23は、入力モジュール22に入力された学習データを分析して複数の認知領域別成果情報を算出するように構成される。例えば、分析モジュール23は各認知領域のコンテンツ(例えば、ゲーム)に対する認知点数、各領域のコンテンツに対する消耗時間、領域別進行率及び/又は参加率などに基づいて成果情報を決定することができる。
【0034】
このため、一実施形態において分析モジュール23は各領域に対するユーザの学習結果である認知点数を分析する結果分析部231及び/又は各領域のコンテンツの目標を達成するまでに要した時間とコンテンツに対するユーザの応答時間などの消耗時間に関する情報を分析する過程分析部232を含むことができる。
【0035】
また一実施形態において、分析モジュール23はプロファイル化(profiling)部233を更に含む。本実施形態においてユーザは入力モジュール22を通じて自分の個人情報、例えば、性別、年齢、居住環境(世帯構成員の数など)、過去の認知症診断の可否などの病歴のような情報を入力することができる。プロファイル化部233は、このような個人情報に基づいて、学習データから成果情報を導出するための基準値を決定するように構成される。この時、基準値とは、認知点数や消耗時間を成果値に変換するための区間に関する情報、認知点数や消耗時間に適用するための重み情報、又はユーザの性別/年齢/居住環境/病歴などが成果値に影響を与えるようにする他の任意の方式の調整値を称することができる。
【0036】
マシンラーニングモジュール24は、予め入力した訓練データセット(training data set)を用いてマシンラーニングによる学習を行った結果を格納しており、分析モジュール23により得られた成果情報にマシンラーニングの学習結果を適用することで、ユーザカスタマイズ化コンテンツの特性を決定する機能をする。
【0037】
以上の動作のために、マシンラーニングモジュール24は訓練データセットを用いたマシンラーニングを行うマシンラーニングモデル学習部241と、学習結果に基づいてユーザの成果情報に対するカスタマイズ化コンテンツを判定するマシンラーニングモデル判定部242を含むことができる。
【0038】
一実施形態において、入力モジュール22は訓練データセットの入力を受け、これをマシンラーニングのためにマシンラーニングモデル学習部241に入力する機能を更に行うことができる。この時、入力モジュール22はデータラベル付け(labeling)部222を含むことができる。データラベル付け部222は、訓練データセットに含まれたデータに対して当該データを提供したユーザの認知能力の改善に適したものと専門家や臨床結果などにより決定されたカスタマイズ化コンテンツ情報(即ち、正解)を用いて訓練データセットのデータにラベル付けを行い、ラベル付けられたデータをマシンラーニングモデル学習部241に提供することができる。
【0039】
また、入力モジュール22は個人情報処理部223を更に含むこともできる。個人情報処理部223は、マシンラーニングモデル学習部241が訓練データセットを用いた学習を行うにあたって、各ユーザの個人機密情報が露出されないように個人情報に対するマスク処理(masking)を行うことができる。この時、マスク処理とは、機密情報自体を訓練データセットから削除することを意味することもあり、又はその情報を削除しなくても、データレコードと、これを提供した個人を整合(matching)させることができないようにデータを分割、組み合わせ又は再構成することを称することができる。
【0040】
マシンラーニングモジュール24のマシンラーニングモデル判定部242は、マシンラーニングモデル学習部241により先行して蓄積されたデータに基づいてユーザの成果情報に対応するユーザのタイプを判定し、当該ユーザに適したカスタマイズ化コンテンツの特性を決定することができる。例えば、ユーザのタイプを判定するということは、複数の認知領域でユーザが示した成果のパターンに基づいてユーザを分類(classification)するか、又はクラスタ化(clustering)することを意味することができる。マシンラーニングモデル判定部242はこのようなタイプを用いてユーザの分類やクラスタの認知能力の改善に適したカスタマイズ化コンテンツを決定することができる。
【0041】
図2は一実施形態に係る認知能力開発方法の各ステップを示すフローチャートである。説明の便宜上、
図1及び
図2を参照して本実施形態に係る認知能力開発方法について説明する。
【0042】
図2を参照すると、まず、マシンラーニングベースの学習過程として認知能力開発システム2の入力モジュール22は訓練データセットを受信することができる(S11)。訓練データセットは管理者のユーザデバイスから入力モジュール22に入力又は伝送されるか、又は外部のサーバ(図示せず)から受信することができる。
【0043】
訓練データセットを用いてマシンラーニングを行うための前処理過程として、入力モジュール22のデータラベル付け部222は訓練データセットの各データにより専門家や臨床などに基づいて決定されたカスタマイズ化コンテンツ情報を用いてデータのラベル付けを行うことができる(S12)。また、入力モジュール22の個人情報処理部223は訓練データセットのデータから機密情報を除去したり、機密情報がデータ提供者の個人に関連付けられていないようにするマスク処理を行うこともできる(S12)。
【0044】
認知能力開発システム2のマシンラーニングモジュール24は、ラベル付け及びマスク処理などが完了したデータの入力を受け、これを用いて学習データからカスタマイズ化コンテンツを決定するための学習結果を生成することができる(S13)。例えば、学習結果とは、学習データのパターンに基づいてユーザのタイプを判定し、当該タイプのユーザに適用するのに適したコンテンツの特性、例えば、コンテンツに対応する認知領域の種類及び数を決定するためのものであり得る。
【0045】
以上で説明したマシンラーニングによる学習過程(S11~S13)は、マシンラーニングモジュール24のマシンラーニングモデル学習部241により行うことができる。しかし、他の実施形態において、マシンラーニングモジュール24は外部の装置やサーバなどからマシンラーニングの結果に該当するアルゴリズム及びパラメータなどを受信し、これに基づいて動作することもできる。この場合は、前述した学習過程(11~S13)は省略することができる。
【0046】
マシンラーニングによる学習結果に基づいて対象ユーザにカスタマイズ化コンテンツを提供するために、まず認知能力開発システム2のコンテンツ提供モジュール21は複数の認知領域別の特性を有する認知能力開発コンテンツをユーザに提供することができる(S21)。
【0047】
次に、認知能力開発システム2の入力モジュール22は提供されたコンテンツに対するユーザの学習データを受信することができる(S22)。この時、学習データとは、例えばゲームのような形式を有するコンテンツを通じて提供される課題をユーザが解決することで達成した認知点数や、当該課題を達成するためにユーザが消耗した時間、コンテンツ内の一連の課題に対するユーザの進行率や参加率などを含むことができる。
【0048】
一実施形態において、入力モジュール22は学習データの受信と同時に又は学習データの受信前や後に、コンテンツに参加するユーザの個人情報を更に受信することもできる(S23)。例えば、個人情報はユーザの性別/年齢/居住環境/病歴などの情報を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
認知能力開発システム2の分析モジュール23は、ユーザの学習データから当該学習データが示すユーザのタイプを判定するのに適した成果情報を導出することができる(S24)。例えば、成果情報はユーザがコンテンツに対して達成した認知点数、消耗時間、進行率、参加率などを称するものであり得、又は所定の基準(評価、しきい値、重みなど)に基づいてこのような情報を成果値に変換したものであり得る。
【0050】
認知能力開発システム2のマシンラーニングモジュール24は、分析モジュール23により導出された成果情報に基づいてユーザカスタマイズ化コンテンツを決定することができる(S25)。これは、マシンラーニングモデルを通じて決定されたユーザのタイプに基づいて、当該ユーザに次に提示するのに適した認知能力開発コンテンツの特性(種類、難易度、制限時間など)を決定することを意味することができ、これについては詳細に後述する。
図3は一実施形態に係る認知能力開発方法によるデータ処理過程を説明するための概念図である。
【0051】
図3を参照すると、本発明の実施形態に係る認知能力開発方法ではユーザの学習データから使用履歴、進行率、認知点数及び/又は参加率などの情報を導出し、これを成果情報として用いてユーザに提供するためのカスタマイズ化コンテンツを決定することができる。
【0052】
本明細書において認知点数とは、複数の認知領域を有する多重領域介入ベースのコンテンツを通じて提供される課題について、ユーザが達成した点数を称する。例えば、認知能力開発コンテンツが血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域を有するコンテンツである場合、認知点数は{30、40、10、5、80}などのように各認知領域に対する点数をデータレコードとして含むデータセットであり得る。
【0053】
図4A乃至4Fは一実施形態に係る認知能力開発システムが提供するコンテンツの画面を示す例示的な画像であって、血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域のうち認知訓練に該当するコンテンツの画面を示す。
【0054】
図4Aを参照すると、認知訓練に参加するユーザは画面上に提示された問題画像402を見て、正解画像403に含まれた複数の数字パネルのうち問題画像402に表示された数字と同じ合計を導出するために複数のパネルを選択することができる。この時、コンテンツは画面上のレベル画像401に示したように、複数の難易度に該当する難易度別課題を含むことができ、低レベルの課題を達成するにつれて徐々に提示される課題の難易度が増加するようにコンテンツが構成されてことができる。また、タイマー画像404に示したように、ユーザが課題を解決するために消耗する時間を認知能力開発システムにより記録することができる。
【0055】
図4Bを参照すると、他の形態の認知訓練に対する例示として、ユーザは課題として提示された問題画像412、413から出発時間と所要時間を確認し、出発時間に所要時間を加えた到着時間を算出し、これを正解画像415として選択する課題を行うことができる。
図4Aに例示したコンテンツの画面と同様に、本コンテンツの場合にも課題の難易度を示すレベル画像411及び/又は消耗時間を示すタイマー画像414を画面上に更に表示することもできる。
【0056】
図4Cを参照すると、また他の形態の認知訓練に対する例示として、ユーザは課題として提示された問題画像422内の文句を読んで問題を確認し、画面上に表示された正解画像423のうち問題の答えに該当する画像を選択する課題を行うことができる。
図4Cに示した例示の場合、左に泳ぐ半月状のオレンジ色魚は画面の左上段と中央に位置しているので、これを除いた残りの魚を選択することで当該課題を達成することができる。この時、ユーザが選択した魚の数はカウンター画像424を通じて表示することができる。また、
図4Aに例示したコンテンツの画面と同様に、本コンテンツの場合にも課題の難易度を示すレベル画像421を画面上に更に表示することもできる。
【0057】
図4Dを参照すると、また他の形態の認知訓練に対する例示として、ユーザは問題画像432で提示された一連の矢印を見て、これに基づいて正解提示空間435内の出発地点436から位置の移動を行うことで、正解に該当する宝物が位置する地点437に到達する課題を行うことができる。この時、ユーザの選択に応じた位置の移動は
図4Dに示したように、点線や、仮想のキャラクター、ポインタなどによりユーザが認知できるように表示することもできる。
図4Aに例示したコンテンツの画面と同様に、本コンテンツの場合にも課題の難易度を示すレベル画像431及び/又は消耗時間を示すタイマー画像434を画面上に更に表示することもできる。
【0058】
図4Eを参照すると、また他の形態の認知形態の訓練のための例示として、ユーザは所定の数字が表示された複数の問題画像443を見て、画面上に表示された問題画像443を数字が少ない順から多い順に(又は、その逆に)選択する課題を行うことができる。
図4Aに例示したコンテンツの画面と同様に、本コンテンツの場合にも課題の難易度を示すレベル画像441及び/又は消耗時間を示すタイマー画像444を画面上に更に表示することもできる。
【0059】
図4Fを参照すると、また他の形態の認知訓練に対する例示として、ユーザは問題画像452で提示された事物を見て、物事を時間に応じた順に選択する課題を行うことができる。例えば、
図4Fに示した例示の場合、トマトの芽が伸びてトマトが生った後、トマトが成熟すると赤色になるので、問題画像452に提示された事物を左から右の順に選択することが正解になる。この時、ユーザは制限された回数分だけの課題の解決を試みることができるようにコンテンツを構成することもできる。この場合、ユーザが課題の解決を試みた回数(又は、残りの試み可能回数)をカウンター画像453により画面上に表示することもできる。また、
図4Aに例示したコンテンツの画面と同様に、本コンテンツの場合にも課題の難易度を示すレベル画像461及び/又は消耗時間を示すタイマー画像464を画面上に更に表示することもできる。
【0060】
一実施形態に係る認知能力開発システムは、
図4A乃至4fを参照して例示したように、認知訓練コンテンツについてユーザが達成した難易度(即ち、レベル)やユーザが課題を達成するために消耗した時間に基づいて認知訓練領域の認知点数を決定することができる。また、5つの認知領域のうち認知訓練を除いた血管疾患の管理、運動、栄養管理、動機強化の各領域の点数は次のように決定することができる。
【0061】
まず、血管疾患の管理領域の認知点数は、コンテンツを通じてユーザに服薬指導及び管理、血管性危険疾患の教育などを行い、教育の後ユーザに教育内容に関連した質問を提示し、これに対するユーザの応答に基づいて決定することができる。又は/更に、血管疾患の管理領域の認知点数は、代表的な危険因子に該当する糖尿病、高血圧、異常脂質血症、肥満、過度の飲酒、喫煙などの有無に基づいて決定することもできる。例えば、コンテンツを通じユーザが前述した危険因子のうちいくつか該当するか否かを確認することができる質問を提示し、これに対するユーザの応答を通じて血管疾患の管理領域の認知点数を決定することができる。例えば、ユーザが有している危険因子が多いほど、低い認知点数を付与することができる。
【0062】
次に、運動分野の認知点数は、身体活動に対するユーザの参加度に基づいて決定することができる。身体活動とは、認知能力開発システムのオペレータが定期的に行う機関主導の活動として、これに対するユーザの出席回数に基づいて認知点数を決定することができる。この時、機関主導の身体活動は個人の体力レベルによって低体力群と一般体力群、筋力強化型及び有酸素強化型などの差別化された形態を有することもできる。しかし、これは例示的なものであって、機関主導の活動にユーザが参加することが不可能である場合には、ユーザ自ら身体活動を行うように誘導してアンケートを通じて身体活動の頻度や持続時間などを確認し、これに基づいて認知点数を決定することもできる。
【0063】
次に、栄養分野の認知点数は、ユーザが摂取する食事メニューに基づいて決定することができる。例えば、認知能力開発システムを通じてユーザが野菜、魚、ナッツ類、果物、オリーブオイル及び全粒の穀物などをバランスよく摂取するように誘導し、また体に良くない酒類、単糖類、てんぷら類、チーズ、バター、加工食品は摂取量を減らすように誘導することができる。次に、ユーザが摂取する栄養を確認するために認知能力開発コンテンツを通じてユーザにアンケートを提示し、これに対するユーザの応答を通じて栄養分野の認知点数を決定することができる。又は、認知能力開発コンテンツを通じユーザ自分が摂取する食事メニューの写真を認知能力開発システムにアップロードするようにして、認知能力開発システムで画像処理手法を通じて写真上のオブジェクトを認識することで、ユーザが摂取する食事メニューに含まれた栄養素の種類を決定し、これに基づいて栄養分野のユーザの認知点数を決定することもできる。
【0064】
次に、動機強化分野の認知点数は、認知能力開発プログラムに参加するユーザ又はユーザの関係者(例えば、家族などの介護者)が視聴するための映像コンテンツなどを提示し、当該コンテンツの視聴が完了したか否か、コンテンツ全体の再生時間のうち視聴が完了した時間の割合、及び/又は複数のコンテンツがある場合、全体のコンテンツの中から視聴したコンテンツの割合などに基づいて動機強化分野の認知点数を決定することができる。又は、他の実施形態において認知能力開発システムはユーザがコンテンツを通じて自分の動機付与状態を選択するようにすることで、ユーザが自体評価した内容に基づいて認知点数を決定することもできる。例えば、ユーザが家族の応援映像をコンテンツを通じて視聴するようにし、応援映像の視聴後にユーザが自体評価した動機状態に基づいて動機強化分野の認知点数を決定することができる。
【0065】
以上で説明したように、一実施形態に係る認知能力開発システムは認知能力開発のための認知領域を血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの領域に分けて、コンテンツに基づいて各領域に対するユーザの認知点数を導出することができる。
図5は一実施形態に係る認知能力開発システムによりユーザデバイス上に出力される認知点数を示す例示的なグラフである。
【0066】
図5を参照すると、一実施形態に係る認知能力開発システムはコンテンツを通じたユーザの学習を血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域に区分して、それぞれの領域でユーザがコンテンツに対して達成した認知点数に基づいてユーザの認知能力を五角形状のグラフで示すことができる。しかし、これは例示的なものであって、実施形態に係る認知能力開発システムにより区分される認知領域の種類及び数や、各領域の認知点数を導出する方式は、本明細書に説明した形態に限定されるものではない。
【0067】
再び
図3を参照すると、本発明の実施形態に係る認知能力開発システムは前述したように算出される認知領域別認知点数に加えて、進行率、使用履歴、及び参加率などを更に用いてコンテンツに対するユーザの成果情報を算出することができる。
【0068】
本明細書において進行率とは、多重領域介入ベースのコンテンツ全体で提供される課題に対するユーザの達成率を称する。例えば、認知能力開発コンテンツが血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域に対してそれぞれ5個ずつ合計25個の課題を含み、ユーザがこのうち5つの課題を達成した場合、進行率は20%で定義することができる。しかし、これは例示的なものであって、他の実施形態において進行率はそれぞれの認知領域ごとに定義することもできる。
【0069】
また他の実施形態において、進行率は達成した課題の数ではなく課題について達成した認知点数の合計で決定することもできる。例えば、前述した例で25個の課題を通じてユーザが達成可能な認知点数の合計が2500点であり、5つの課題を通じて達成したユーザの平均認知点数が80点である場合、進行率は[ユーザが達成した点数の合計]を[課題を通じて達成可能な点数の合計]で割った値として80/2500、即ち、3.2%で定義することもできる。
【0070】
一実施形態において、使用履歴はユーザが多重領域介入のためのコンテンツのうちどのコンテンツを消費するかに対するユーザの消費タイプを把握することができる情報を称する。例えば、使用履歴はユーザのコンテンツ検索履歴や、各コンテンツに対してユーザが消耗した時間、又は特定の認知領域のコンテンツに対してユーザが消耗した時間の総合計などの情報を含むことができる。
【0071】
一実施形態において、参加率は所定の期間中に繰り返し進行するように意図したコンテンツの学習に対してユーザが実際に参加した程度を示す情報であり得る。例えば、実施形態に係る認知能力開発システムは、ユーザが病院や診療所などに来院して使用する機関型で実現するか、又はユーザが自宅でネットワークを通じて接続して使用が可能な在宅型で実現することができる。この時、参加率とは、一定期間(例えば、1ヶ月)中に進行可能な学習回数でユーザが実際に学習を行った学習の回数(又は、学習日数)を称するものであり得る。
【0072】
また、他の実施形態において参加率とは、ユーザがコンテンツを通じた学習を連続的に行った日数に関する情報として定義することもできる。例えば、ユーザが予め決定された学習スケジュールに応じて学習を漏れなく守った学習回数を参加率として定義することができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
一実施形態において、ユーザの学習データからカスタマイズ化コンテンツを決定するに当たり、ユーザに提供されたコンテンツに該当する画面のログ(log)の情報を更に用いることもできる。本明細書において画面のログ情報とは、コンテンツに対応して表示される各画面でユーザが留まった時間を算出したり、画面と画面との間の切り替えに要した時間を算出したり、又は各画面内でユーザ入力手段(例えば、マウス)を用いて行われた操作の軌跡を検出したことを称することができる。例えば、コンテンツ画面上でマウスを用いたユーザのポインタ操作軌跡を追跡して、ポインタが長時間留まった画面上のポイントの位置を画面のログを用いて分析するか、又はユーザが画面上で留まった時間をログにより分析することで、コンテンツに対するユーザの実際の参加情報を算出することができる。このような参加情報は前述した参加率を代替して又はこれを補助して使用することもできる。
【0074】
実施形態に係る認知能力開発システムは、以上の過程によって学習データから導出される認知点数、進行率、使用履歴、参加率及び画面のログ情報などをユーザの成果情報として導出することができる。また、認知能力開発システムはユーザの成果情報をマシンラーニングの学習結果に基づいて分析することで、当該ユーザのタイプを判定し、当該ユーザの認知能力の改善に適したカスタマイズ化コンテンツを決定してユーザに提示することができる。
【0075】
例えば、訓練データセットを用いた学習結果はユーザを成果情報に基づいて複数のグループにクラスタ化し、各グループについて当該グループのユーザの認知能力の改善に適したコンテンツの特性を整合させたことを意味することができる。例えば、訓練データセットのユーザの認知点数、進行率、参加率、使用履歴及び画面のログなどを総合的に分析した結果に基づいて、ユーザの成果情報は血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域のそれぞれの成果を示す5次元の値であるデータレコードの形態で表示することができる。
【0076】
訓練データセットに含まれた各学習データはそれぞれ5次元データレコードの形態で表現され、これに対するクラスタ化を通じて各グループ(即ち、クラスタ)の中心点に該当するデータレコードを決定することができる。この時、認知能力開発コンテンツは血管疾患の管理、認知訓練、運動、栄養管理、及び動機強化の5つの認知領域のうち当該コンテンツを通じて改善が可能な分野を定義する特性情報を有することができる。特性情報は予め専門家が設定することができ、一つのコンテンツを通じて複数の領域に対する強化が行われる場合もある。従って、認知能力開発コンテンツもまた5つの領域のそれぞれに対する特性値を有する5次元のデータレコードの形態で表現することができる。
【0077】
即ち、本実施形態においてマシンラーニングによる学習結果とは、訓練データセットのユーザの学習データをクラスタ化して生成された各データグループの中心データレコードに該当する5次元のデータと、各データグループの認知能力の開発に適したものと設定された認知能力開発コンテンツの5次元の特性値を含むことができる。
【0078】
この時、対象ユーザから学習データが受信されると、認知能力開発システムでは学習結果に基づいて対象ユーザの成果情報がどのデータグループに該当するかを決定することができる。即ち、これはユーザの成果情報に基づいてユーザのタイプを判定することを意味する。ユーザのタイプ判定は、各認知領域に該当する5つの座標軸を有する5次元のデータ空間内で、各データグループの中心点に該当するデータレコードとユーザの成果情報との間の距離を算出し、このうち最も近く位置したデータレコードを中心点とするデータグループを決定する方式で行うことができる。次に、当該データグループに対して決定されている認知能力開発コンテンツをユーザのカスタマイズ化コンテンツとして決定することができる。
【0079】
また他の実施形態において、ユーザのタイプ判定は必ずユーザの成果情報がいずれか一つのデータグループに属するものと判定することを意味せず、複数のデータグループのそれぞれに対するユーザの成果情報の類似度を算出し、これに基づいて各データグループに該当するカスタマイズ化コンテンツを併合する方式で当該ユーザのカスタマイズ化コンテンツを決定することもできる。
【0080】
即ち、各認知領域に該当する5つの座標軸を有する5次元のデータ空間内で、各データグループの中心点に該当するデータレコードとユーザの成果情報との間の距離は(a、b、c、d、e)のような5次元データの形式を有する。例えば、aは第1データグループの中心点とユーザの成果情報との間の5次元距離を意味し、bは第2データグループの中心点とユーザの成果情報との間の5次元距離を意味する。この時、第1乃至第5データグループに該当するカスタマイズ化コンテンツをそれぞれA、B、C、D、Eと称すると、ユーザの成果情報から各データグループの中心点までの距離が近いほど当該データグループに対応するカスタマイズ化コンテンツがより高い割合で含まれるようにコンテンツ間の比率を定義し、これに基づいてコンテンツを併合することで、ユーザのカスタマイズ化コンテンツを新しく決定することができる。
【0081】
例えば、前述した例で各データグループの中心点とユーザの成果情報との間の距離は(a、b、c、d、e)であり、新たに生成されるコンテンツでカスタマイズ化コンテンツA、B、C、D、Eの間の併合割合は距離の逆数に比例して(1/a、1/b、1/c、1/d、1/e)に決定することができる。この時、コンテンツを併合するということは、各
図4A乃至4fを参照して前述したように、各コンテンツに含まれた複数の課題のうち一部を他のコンテンツに含まれた課題と併合して互いに異なるコンテンツの課題が併合された新しいコンテンツを生成することを意味することができる。
【0082】
又は、認知能力開発システムのマシンラーニングモジュールはユーザの成果情報をマシンラーニングベースの分析モデルに対する入力値として使用してマシンラーニングベースの分析モデルに対する学習を行い、学習結果5次元ベクトルの特徴値を特定課題又は特定課題の併合を含むコンテンツに対応するものとして分類(classification)する過程を通じてユーザに適したコンテンツの種類を決定することもできる。
【0083】
分類のために、マシンラーニングモジュールは成果情報が一定の特性値(例えば、5次元データのサイズ、各データ項目の値、各データ項目の値の平均、及び各データ項目の値の標準偏差など)を有するユーザに対して効果があると知られているコンテンツの特性(課題の種類など)を含む学習データの入力を受けて分析モデルに対する学習を行い、学習結果決定されたパラメータに基づいて分析対象である未知のユーザの成果情報に対応するコンテンツを分類することができる。この時、分析モデルに対する入力値としてはユーザの成果情報である5次元のデータ自体を用いることもでき、又は前述したクラスタ化の結果得られる各データグループの中心点とユーザの成果情報との間の距離を示す5次元ベクトル(a、b、c、d、e)、又は前記距離の逆数を示す5次元ベクトル(1/a、1/b、1/c、1/d、1/e)を用いることもできる。
【0084】
しかし、以上で説明したユーザカスタマイズ化コンテンツの決定方式は例示的なものであって、実施形態に係る認知能力開発システムがマシンラーニングに基づいてユーザの学習データからカスタマイズ化コンテンツを決定する方式は前述した例に限定されるものではない。
【0085】
一方、以上で説明した実施形態に係る認知能力開発方法による動作は、少なくとも部分的にコンピュータプログラムで実現されてコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されることができる。実施形態に係る認知能力開発方法による動作を実現するためのプログラムが記録され、コンピュータが読み取り可能な記録媒体はコンピュータによって読み取ることができるデータが記録される全ての種類の記録装置を含む。コンピュータが読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ格納装置などがある。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ネットワークに連結されたコンピュータシステムに分散されて、分散方式でコンピュータが読み取り可能なコードが格納され、実行されることもできる。また、本実施形態を実現するための機能的なプログラム、コード及びコードセグメント(segment)は、本実施形態の属する技術分野の通常の技術者により容易に理解されるであるう。
【0086】
以上、図面に示した実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、これにより様々な変形及び均等な他の実施形態が可能である。しかし、このような変形は本発明の技術的保護範囲内にあると見なすべきである。従って、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付した特許請求範囲の技術的思想によって定められる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
実施形態は認知症の予防に重要な多重領域に対する介入が含まれた総合プログラムを通じて個人別特性を反映したカスタマイズ化認知症の予防を行い、ユーザが機関を訪問して行う機関型だけでなく、在宅型でも実現が可能であるので、複数のユーザによる使用が可能な認知能力開発システム関連技術に寄与する。