(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20230920BHJP
G03B 35/18 20210101ALI20230920BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230920BHJP
H04N 13/307 20180101ALI20230920BHJP
【FI】
G02B30/56
G03B35/18
G02B3/00 A
H04N13/307
(21)【出願番号】P 2022104213
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516167967
【氏名又は名称】株式会社IMUZAK
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】澤村 一実
(72)【発明者】
【氏名】片倉 真也
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴子
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/041315(WO,A1)
【文献】特開2010-277019(JP,A)
【文献】特開2003-054025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261758(US,A1)
【文献】特開2021-103269(JP,A)
【文献】米国特許第06381072(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60,3/00
G03B 35/00-35/26
H04N 13/00-13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的2次元画像を形成する為の画像伝達パネルであって、
複数のマイクロレンズを配列させてなるマイクロレンズアレイを3乃至5枚積層して形成しており、
当該マイクロレンズアレイは、
3枚積層の場合に、開口数(NA)が0.33~0.35、
4枚積層の場合に、開口数(NA)が0.33~0.36、
5枚積層の場合に、開口数(NA)が0.33~0.37、
に設定されることを特徴とする画像伝達パネル。
【請求項2】
前記マイクロレンズアレイは、前記マイクロレンズのレンズピッチが0.25~0.31の範囲に規定され、
該マイクロレンズアレイが3枚積層の場合に、マイクロレンズのレンズ曲率半径が0.68~0.73mm、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さが0.81~0.85mmの範囲で、少なくとも何れかが調整され、
該マイクロレンズアレイが4枚積層の場合に、マイクロレンズのレンズ曲率半径が0.94~1.14mm、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さが0.66~0.80mmの各範囲で、少なくとも何れかが調整され、
該マイクロレンズアレイが5枚積層の場合に、レンズ曲率半径が1.20~1.51mm、及びレンズ厚さが0.55~0.
69mmの各範囲で、少なくとも何れかが調整されて
いる、請求項1に記載の画像伝達パネル。
【請求項3】
前記積層される3乃至5枚のマイクロレンズアレイは、材質、厚さ、マイクロレンズの曲率及びピッチが同じである、請求項1又は2に記載の画像伝達パネル。
【請求項4】
1次焦点面が、3乃至5枚積層されたマイクロレンズアレイにおける厚さ方向の中央に存在する請求項1又は2に記載の画像伝達パネル。
【請求項5】
出力画像を表示する平面状の画像表示面を有する表示装置を保持する保持部と、
前記画像表示面から離間して配置され、前記表示部とは反対側に位置する空間に前記出力画像の実像を表示する結像面を生成する画像伝達パネルとからなり、
当該画像伝達パネルは請求項1又は2に記載の画像伝達パネルが使用されている、立体的2次元画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置に関し、特に立体的2次元画像を形成する為の、マイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズアレイは、マイクロメートル単位の大きさのレンズを連続して配置した光学レンズであり、デジタルカメラのイメージセンサーなどの他、二次元画像を擬似立体的に表示する立体的二次元画像を表示する為の装置にも用いられている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2001-255493号公報)では、目視者の両目に対応する視差画像を必要とすることなく、簡単な構成で立体像表示をなし得る画像表示装置として、マイクロレンズアレイを用いた立体的2次元画像表示装置を提案している。即ちこの文献では、立体像を含む2次元画像を表示する平面状の画像表示面を有する表示部と、前記画像表示面に平行に離間して配置され、複数のレンズからなりかつ前記2次元画像の中の立体像よりも広い有効面積を有するマイクロレンズアレイ及び前記マイクロレンズアレイの有効領域の周囲を囲むレンズ枠領域からなり、前記マイクロレンズアレイの前記表示部とは反対側に位置する空間に前記2次元画像の実像を表示する結像面を生成する画像伝達パネルとからなる立体的2次元画像表示装置を提案している。そしてこの文献では、前記マイクロレンズアレイは、同軸に配置された1対の凸レンズからなるレンズ系の複数をそれらの光軸が互いに平行となるように2次元状に配列されたマイクロ凸レンズ板である事も開示している。
【0004】
また特許文献2(特開2007-272137号公報)では、視野角が広い立体的二次元画像表示装置を提案している。即ちこの文献では、二次元画像を表示する画像表示面を備えた表示部と、画像表示面に離間して配置されたマイクロレンズアレイとから構成され、画像表示面から出射される光をマイクロレンズアレイの表示部とは反対側に位置する空間中の結像面に結像して、立体的二次元画像を表示する立体的二次元画像表示装置であって、表示部は、画像表示面から2つの方向に二次元画像を表示出力し、マイクロレンズアレイは、2つのマイクロレンズアレイ半体の光軸が一致した状態から、一のマイクロレンズアレイ半体を左右方向に半レンズピッチずらして配置し、立体的二次元画像は、表示部から表示出力された二次元画像の2つの方向に応じた結像面及びに表示される立体的二次元画像表示装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-255493号公報
【文献】特開2007-272137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、特許文献1では光軸が互いに平行となるように2次元状に配列されたマイクロ凸レンズ板を用いて立体的2次元画像を表示することは開示されているが、表示した立体的2次元画像の視野角を改善することは検討されていなかった。
【0007】
一方で特許文献2では、視野角が広い立体的二次元画像表示装置を提案しているが、画像表示面から2つの方向に二次元画像を表示出力するものであり、マイクロレンズアレイは、2つのマイクロレンズアレイ半体の光軸が一致した状態から、一のマイクロレンズアレイ半体を左右方向に半レンズピッチずらして配置したものであり、即ち、視差バリア方式や時分割方式を用いることにより、目視者の両目に対応する異なる画像を、認識させる手法であった。この為、左右視野へのそれぞれ専用の画像を用意しなければならず、空間的または時間的に分解能が下がることが考えられる。
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明は、左右視野への専用の画像を用意することなく立体的2次元画像を形成することができ、更に形成した立体的2次元画像の視野角を改善する事のできるマイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置を提供することを課題の1つとする。また視野角を改善しながらも形成した画像の明るさやコントラストを向上させる事のできるマイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置を提供することも課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題の少なくとも何れかを解決するべく鋭意開発を行った結果、マイクロレンズアレイを3枚以上積層させることにより、特に視野角を向上させることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち本発明では、立体的2次元画像を形成する為の画像伝達パネルであって、複数のマイクロレンズを配列させてなるマイクロレンズアレイを3枚以上積層して形成したことを特徴とする画像伝達パネルを提供する。特に本発明に係る画像伝達パネルにおいて、積層するマイクロレンズアレイは、6枚以下であることが望ましい。積層するマイクロレンズアレイが6枚を超えると、フレネル損失が大きくなり、形成される立体的2次元画像の明るさが低下する事が危惧されるためである。
【0011】
かかる画像伝達パネルにおいて、各層を形成するマイクロレンズアレイは、それを構成するマイクロレンズの曲率、ピッチ、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さの少なくとも何れかを、積層枚数に応じて調整することが望ましい。特に、当該マイクロレンズの曲率、ピッチ、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さは、マイクロレンズアレイを構成する材料の屈折率に基づいて選択することが望ましい。
【0012】
また前記マイクロレンズアレイの曲率半径は、レンズ面への入射角が臨界角未満となるように調整されており、当該曲率半径は、マイクロレンズアレイを2枚積層させた場合におけるマイクロレンズの曲率半径よりも大きく形成するのが望ましい。即ち、マイクロレンズアレイを3枚以上積層させた場合には、マイクロレンズアレイを2枚積層させた場合よりも、各マイクロレンズの曲率半径を大きくすることが望ましい。この時、2枚又は3枚以上積層させた各マイクロレンズは、何れも同じ材質であって、各マイクロレンズは結像する様に、マイクロレンズの曲率、ピッチ、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さが調整されていることを前提とする。
【0013】
そして光線のレンズ面への入射角が臨界角未満となるような曲率半径であれば、全反射を防ぎ、レンズアレイで集光することが可能である。マイクロレンズアレイを2枚積層させたものと、3枚以上積層させたものとで比較すると、相対的に2枚構成のものの曲率半径が急峻となる為、入射光線が臨界角に達しやすい。
【0014】
かかる画像伝達パネルにおいて、積層される3枚以上のマイクロレンズアレイは、材質、厚さ、マイクロレンズの曲率及びピッチの少なくとも何れかが異ならせる他、材質、厚さ、マイクロレンズの曲率及びピッチを同じにすることができる。また当該画像伝達パネルにおける1次焦点面は、3枚以上積層されたマイクロレンズアレイの中間層、特に当該画像伝達パネルの厚さの中心に存在する事が望ましい。1次焦点面において当該2次元画像は倒立像であり、2次焦点面では正立像である。
【0015】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するために、前記本発明に係る画像伝達パネルを用いて形成した立体的2次元画像表示装置を提供する。即ち、出力画像を表示する平面状の画像表示面を有する表示装置を保持する保持部と、前記画像表示面に平行に離間して配置され、前記表示部とは反対側に位置する空間に前記出力画像の実像を表示する結像面を生成する画像伝達パネルとからなり、当該画像伝達パネルは、前記本発明に係る画像伝達パネルを用いた立体的2次元画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像伝達パネルは、複数のマイクロレンズを配列させてなるマイクロレンズアレイを3枚以上積層して形成していることから、表示した立体的2次元画像立体的2次元画像の視野角を大幅に改善することができる。これはマイクロレンズアレイを2枚積層させた画像伝達パネルの視野角からは予想できない程に広角とすることができ、更に形成した画像の明るさやコントラストも大幅に向上させることができる。
【0017】
即ち本発明に係る画像伝達パネルこれを用いた立体的2次元画像表示装置によれば、出力画像に基づいて表示される立体的2次元画像を認識できる視野角を大幅に向上させた立体的2次元画像表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る画像伝達パネルの使用状態を示す(A)斜視図、(B)縦断面図
【
図2】画像伝達パネルを構成するマイクロレンズアレイを示す正面図
【
図3】マイクロレンズアレイを積層して形成した場合における光の進路を示す略図
【
図4】立体的2次元画像表示装置を示す(A)斜視図、(B)縦断面図
【
図6】実験例1におけるレンズピッチレンズピッチ0.25のシミュレーション結果を示すグラフ
【
図7】実験例1におけるレンズピッチレンズピッチ0.28のシミュレーション結果を示すグラフ
【
図8】実験例1におけるレンズピッチレンズピッチ0.31のシミュレーション結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる立体的2次元画像20を形成する為の画像伝達パネル30を具体的に説明する。特に本実施の形態は複数のマイクロレンズ32を規則的に配列させたマイクロレンズアレイ31を3枚以上積層させたものであり、主として出力する立体的2次元画像20の視野角を広くするように形成している。
【0020】
図1は本実施の形態に係る画像伝達パネル30の使用状態を示す斜視図であり、
図2は当該画像伝達パネル30を構成するマイクロレンズアレイ31を示す正面図であり、
図3はマイクロレンズアレイ31を積層して形成した場合における光の進路を示す略図であり、
図4は本実施の形態に係る画像伝達パネル30を用いて形成した立体的2次元画像表示装置50を示す(A)斜視図、(B)縦断面図である。
【0021】
図1に示す様に、本実施の形態に係る画像伝達パネル30は、立体像を含む2次元画像を表示する画像表示面10の光を入射させ、これを当該画像伝達パネル30の反対側の空間に結像させて表示することができる。この空間に結像される画像は立体的2次元画像20であり、空間に出現することから浮遊像とも云われている。かかる立体的2次元画像20は、本実施の形態に係る画像伝達パネル30において、これを構成する積層させたマイクロレンズアレイ31の焦点に出現する。
【0022】
特に
図1に示した画像伝達パネル30は、3枚のマイクロレンズアレイ31を積層させて構成しているが、その他にもマイクロレンズアレイ31を4枚、5枚、6枚など、3枚以上積層させて形成することもできる。但し、マイクロレンズアレイ31の積層枚数が増えれば、その分だけ画像伝達パネル30の透過率が低下することから、当該画像伝達パネル30は、
図1に示す様に3枚のマイクロレンズアレイ31を積層させて形成することが望ましい。
【0023】
また当該画像伝達パネル30は、少なくともその側面において各マイクロレンズアレイ31を保持する枠体又は筐体(図示せず)を備えることが望ましい。積層した各マイクロレンズアレイ31を保持し、相互移動を阻止することにより、レンズ特性を安定させるためである。かかる枠体又は筐体は、積層させたマイクロレンズアレイ31同士を保持できる限りにおいて任意の構造及び方式であって良い。また、当該画像伝達パネル30を構成する各マイクロレンズアレイ31は、少なくとも何れかの材質、厚さ、マイクロレンズ32の曲率及びピッチを異ならせることもできるが、望ましくはこれらが同じマイクロレンズアレイ31を積層することが望ましい。即ち、画像伝達パネル30を構成するマイクロレンズアレイ31は、同じものを積層させることが望ましい。
【0024】
前記画像伝達パネル30に入力する画像(即ち「出力画像」)は、平面上に表示されている画像とすることができ、反射光の他、透過光を前記画像伝達パネル30に入射させるように構成することができる。例えば当該出力画像は平面上に印刷されている画像の他、携帯情報端末などのディスプレイに表示した画像であって良い。また、当該出力画像は、平面上に表示されている画像のみならず、立体物であっても良い。画像伝達パネル30に入力する光が三次元形状物から発せられる光などであっても、その結像は立体的に浮いたように出力されることになる。
【0025】
図2は前記画像伝達パネル30を構成するマイクロレンズアレイ31を示す(A)正面図、(B)B-B矢視断面図である。この図に示す様に本実施の形態にかかる画像伝達パネル30では、正方形の平板の表面と裏面に球欠形状または半球面状のマイクロレンズ32を複数形成しており、各マイクロレンズ32は縦横方向に千鳥状に配置したハニカム配列としている。但し、当該マイクロレンズ32は直線状に配置したスクエア配列とすることもでき、さらに各マイクロレンズ32は球欠形状または半球面状の他にも、下側が四角形や六角形で球面状に膨らんだマイクロレンズ32であっても良く、凹状に凹んだ曲面を形成するマイクロレンズ32であっても良い。特に本実施の形態に示すように球欠形状または半球面状に膨出するマイクロレンズ32とすることにより、等倍の立体的2次元画像20を形成することができる。
【0026】
図3はマイクロレンズアレイ31を積層して形成した画像伝達パネル30における光の進路を示す略図であり、(A)はマイクロレンズアレイ31を2枚積層した画像伝達パネル30、(B)はマイクロレンズアレイ31を3枚積層した画像伝達パネル30における光の進み方をそれぞれ示している。この
図3に示した画像伝達パネル30において、各マイクロレンズ32は、その積層枚数に合わせて厚さや、マイクロレンズ32の曲率、ピッチを最適化しており、これによって出力画像を逆転させない正立像で結像させることができる。特にマイクロレンズアレイ31を2枚積層させた
図3(A)に示す画像伝達パネル30では、レンズの屈折面が合計4か所となる事から、各屈折面における光の屈折の度合(曲がり具合)を急峻にしなければならず、その結果、出力される立体的2次元画像20の視野角を大きくすることは難しい。これに対して特にマイクロレンズアレイ31を3枚積層させた
図3(B)に示す画像伝達パネル30では、レンズの屈折面は合計6か所となる事から、各屈折面における光の屈折の度合(曲がり具合)を緩やかにすることができ、これにより、出力される立体的2次元画像20の視野角を大きくすることができる。即ち、マイクロレンズアレイ31を3枚以上積層させた画像伝達パネル30によれば、光の屈折の度合を小さくすることができることから、その結果、立体的2次元画像20の視野角を大きくすることができる。
【0027】
図4は本実施の形態にかかる立体的2次元画像表示装置50の1つの実施の形態を示す、(A)斜視図、(B)縦断面図である。この図に示す立体的2次元画像表示装置50は、正面開口51を有する筐体52と、当該筐体52における正面開口51を塞ぐように設けられる画像伝達パネル30とで構成されている。筐体52内には、前記画像伝達パネル30と対向状に、出力画像を表示する平面状の画像表示面10を備えた表示装置40を保持する保持部53が設けられており、本実施の形態において当該表示装置40はディスプレイとして形成している。具体的には、当該表示装置40は携帯情報端末のディスプレイを使用しており、筐体52には当該携帯情報端末を差し込む挿入口と、当該挿入口から差し込まれたディスプレイを保持する保持部を設けている。
【0028】
そして前記正面開口51には、これを塞ぐように前記実施の形態にかかる画像伝達パネル30を設置している。かかる画像伝達パネル30は、本実施の形態において3枚のマイクロレンズアレイ31を積層して構成しており、前記ディスプレイなどの表示装置40に表示された画像や文字などを、当該画像伝達パネル30の反対側の空間に結像させることができる。これにより、当該立体的2次元画像表示装置50、更に画像伝達パネル30は、表示装置40の画像表示面10に出力された出力画像を、空間に浮遊するかのように結像させることができる。
【0029】
このように3枚のマイクロレンズアレイ31を積層して形成した画像伝達パネル30によって結像された立体的2次元画像20は、
図5に示す様に広い角度において確認することができる。即ち、画像伝達パネル30の視野角を大幅に向上させることができる。これは前記
図3に示したように、当該画像伝達パネル30を通る光の屈折率を緩やかにできることによるものと考えられ、その為に、レンズの屈折面は6面以上設けることが望ましい。
【0030】
上記本実施の形態では、特に3枚のマイクロレンズアレイ31を積層させて形成した画像伝達パネル30と此れを用いた立体的2次元画像表示装置50について説明したが、当然に当該マイクロレンズアレイ31は4枚、5枚など複数枚積層させて画像伝達パネル30を形成することもできる。但し、積層枚数やマイクロレンズアレイ31の厚さが厚くなることにより、光の透過率が減じられることから、望ましくは3枚のマイクロレンズアレイ31で形成するのが望ましい。
【0031】
また、前記画像伝達パネル30や立体的2次元画像表示装置50には、任意の構成を伴うことも当然可能である。例えば各マイクロレンズアレイ31に対して任意の機能を有するコーティングを施したり、或いはカラーフィルターなどを積層させることも当然に可能である。
【実施例1】
【0032】
以下では、マイクロレンズアレイを積層させて形成した画像伝達パネルの効果を確認することを目的として、幾つかの実験を行った。
【0033】
〔実験例1〕
この実験例では、マイクロレンズアレイの積層枚数を異ならせた画像伝達パネルにおける明るさとコントラストの違いをシミュレーションによって確認した。即ち、ポリカーボネートの材質(屈折率1.681)からなり、球欠形状または半球面状のマイクロレンズを前記ハニカム形状に配列させたマイクロレンズアレイにおいて、マイクロレンズのピッチを0.25mm、0.28mm、および0.31mmとした画像伝達パネルのモデルを、積層枚数ごとに3パターンを設定し、明るさ(ルミネッセンス)とコントラスト(変調伝達関数)についてシミュレーションを行った。このシミュレーションでは、日本シノプシス社製のcodeVを使用して解析した。マイクロレンズアレイは、積層する枚数に応じて、その厚さ、マイクロレンズの曲率、ピッチ、を設計しており、特にこれらマイクロレンズアレイの厚さ、マイクロレンズの曲率およびピッチは、マイクロレンズアレイを構成する材料の屈折率に応じて設計している。
【0034】
この実験で想定したレンズピッチ0.25mmのサンプルのデータを以下の表1に示す。
【0035】
【0036】
また実験で想定したレンズピッチ0.28mmのサンプルのデータを以下の表2に示す。
【0037】
【0038】
また実験で想定したレンズピッチ0.31mmのサンプルのデータを以下の表3に示す。
【0039】
【0040】
この実験において、レンズピッチ0.25のシミュレーション結果を
図6に、レンズピッチ0.28のシミュレーション結果を
図7に、レンズピッチ0.31のシミュレーション結果を
図8にそれぞれ示す。
【0041】
この実験結果から、マイクロレンズのピッチを0.25mm、0.28mm、0.31mmとした何れのモデルにおいても、マイクロレンズアレイを2枚積層した場合よりも、3枚以上積層した場合の方が、明るさ(ルミネッセンス)とコントラスト(変調伝達関数)が向上していることが分かった。更に、この明るさ(ルミネッセンス)とコントラスト(変調伝達関数)は、3枚積層した画像伝達パネルと、4枚、5枚積層した画像伝達パネルと比べた場合において、大幅な向上は確認できなかったことから、マイクロレンズの透過率を考慮すれば、マイクロレンズアレイを3枚積層した画像伝達パネルが最適である事が分かった。
【0042】
また、本実験例における屈折率の材料を用いた場合、前記表1~3に示したマイクロレンズの曲率半径、ピッチ、およびレンズ厚さにおいて、明るさ(ルミネッセンス)とコントラスト(変調伝達関数)が良好であった。
【0043】
〔実験例2〕
この実験例では、前記した表1~3に示したマイクロレンズアレイを使用した画像伝達パネルについて、開口数(NA)を0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38とした画像伝達パネルについて、視野角の範囲を確認した。そのシミュレーション結果を
図9に示す。
【0044】
ここで、開口数(NA)とは、物点から広がる光の角度の指標であり、開口数が大きいほど広範囲の光を集めることができるため、視野角も向上することになる。
【0045】
この実験結果において、開口数が0.33の画像伝達パネルであれば、マイクロレンズアレイを2枚積層した画像伝達パネルであっても漏れ光は発生しないが、開口数を0.34とした画像伝達パネルでは、マイクロレンズアレイを2枚積層した画像伝達パネルでは漏れ光が発生し、一方でマイクロレンズアレイを3枚積層した画像伝達パネルでは漏れ光が発生しなかった。更に、マイクロレンズアレイの積層枚数を増やせば、その分だけ開口数を大きくした場合であっても漏れ光は発生しなかった。
【0046】
従って、この実験結果から視野角を向上させるためには、マイクロレンズアレイを3枚積層した画像伝達パネルとすることが必要であり、マイクロレンズアレイの積層枚数を4枚以上とすることにより、更に視野角を向上できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の立体的2次元画像を形成する為の画像伝達パネルおよびこれを用いた立体的2次元画像表示装置は、平面上に表示された出力画像を立体的2次元画像として出力する為に利用することができる。よって、このような立体的2次元画像を出力する各種の分野、例えばゲーム機器や各種機械器具の表示パネル、更にはディスプレイなどに実装することができき、光学分野全般で利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 画像表示面
20 立体的2次元画像
30 画像伝達パネル
31 マイクロレンズアレイ
32 マイクロレンズ
40 表示装置
50 立体的2次元画像表示装置
51 正面開口
52 筐体
53 保持部
【要約】
【課題】 視野角を改善しながらも形成した画像の明るさやコントラストを向上させる事のできるマイクロレンズアレイを用いた画像伝達パネル、及びこれを用いた立体的2次元画像表示装置を提供する。
【解決手段】 立体的2次元画像を形成する為の画像伝達パネルであって、複数のマイクロレンズを配列させてなるマイクロレンズアレイを3枚以上積層して形成し、望ましくは当該マイクロレンズアレイは、積層する枚数に応じてマイクロレンズの曲率、ピッチ、及びマイクロレンズアレイのレンズ厚さの少なくとも何れかを最適化する。
【選択図】
図1