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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】自動ドア
(51)【国際特許分類】
   E05F 7/04 20060101AFI20230920BHJP
   E06B 3/50 20060101ALI20230920BHJP
   E05F 15/632 20150101ALI20230920BHJP
【FI】
E05F7/04
E06B3/50
E05F15/632
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022141316
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2017251530の分割
【原出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2022168036
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】201710019801.6
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000199201
【氏名又は名称】千蔵工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 一夫
(72)【発明者】
【氏名】潘 海▲豊▼
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169584(JP,A)
【文献】特開平07-293103(JP,A)
【文献】特開2001-003627(JP,A)
【文献】実公平07-046694(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/36
E06B 3/50- 3/52
E06B 7/28
E05C 19/16
E05D 13/00
E05D 15/48
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両縦枠間にFIXドアとスライドドアを配設し、通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時には前記スライドドアが前記FIXドアに沿って走行し、全開放動作時には前記FIXドアと前記スライドドアが室外方向に回動される自動ドアにおいて、
通常開閉動作時に、前記FIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止するFIXドア下部係止ユニットを有し、
前記FIXドア下部係止ユニットは、前記FIXドアの下部に配設されたFIXドア側係止部と、通常開閉動作時に前記FIXドア側係止部の下方の前記床に配設された床側係止部を含み、
前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にあるとき、前記FIXドア側係止部は前記床側係止部に係止され、
前記FIXドアが室外方向に回動されると、前記FIXドア側係止部の前記床側係止部への係止は解除され、
前記FIXドアが回動後に通常開閉動作時の位置に戻されると、前記FIXドア側係止部は前記床側係止部に係止される自動ドア。
【請求項2】
前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にあるとき、前記FIXドアが室内方向に力を受けると、前記床側係止部が前記FIXドアの前記FIXドア側係止部付近の室内方向への移動を規制する
請求項1に記載の自動ドア。
【請求項3】
前記FIXドア側係止部は磁石を含み、
前記床側係止部は本体と前記本体に収納された吸着板を含み、前記吸着板は上方から前記磁石に吸引されると前記本体の上面から突出し、
前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にくると、前記磁石に前記吸着板が吸着されることで、前記FIXドア側係止部が前記床側係止部に係止され、
前記FIXドアが室外方向に回動されると、前記磁石と前記吸着板の吸着が外れて、前記FIXドア側係止部の前記床側係止部への係止が解除される
請求項1又は2に記載の自動ドア。
【請求項4】
前記吸着板は前記磁石に吸引されると、室内側より室外側が高くなるように上面から斜めに突出し、
前記FIXドアが室内方向に力を受けても、突出した前記吸着板が前記FIXドアの室内方向への動きを規制して、係止状態を維持する
請求項3に記載の自動ドア。
【請求項5】
前記FIXドアの室外側の下部に、前記FIXドアの下端部より床面に向けて突出するクリーナ部が取り付けられた
請求項1乃至4のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項6】
前記スライドドアが前記FIXドアに沿って走行する際に、前記スライドドアと前記FIXドアの下端部同士の距離を略一定に保持するスライドドア位置決め部を、前記スライドドアと前記FIXドアの下端部に配設した
請求項1乃至5のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項7】
前記スライドドア位置決め部は、前記スライドドアの下端部に長手方向に沿って設けた略一定の幅を有する長溝と、前記FIXドアの下端部に配設され前記長溝に挿入されるガイド部とを含む
請求項6に記載の自動ドア。
【請求項8】
前記左右両縦枠の上端部に、前記スライドドアを走行させるモータと前記スライドドアの走行を制御するコントローラを内設した固定無目と、前記FIXドアを懸架するとともにレールを有する台板を内設して前記スライドドアを走行可能に吊架する可動無目とを有し、
全開放動作時には前記可動無目が前記固定無目に対して回動される
請求項1乃至7のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項9】
人を検出する起動センサと、
前記可動無目を前記固定無目の直下に係脱させるロック機構を備えるとともに、
前記可動無目が前記固定無目にロックされているか否かを検出するロック検出部を有する
請求項8に記載の自動ドア。
【請求項10】
前記FIXドアと前記スライドドアを室外方向へ回動を開始させるために必要な押圧力が、5~25kgfである
請求項9に記載の自動ドア。
【請求項11】
前記ロック検出部は、配線のない近接部と、配線の必要な検出部からなる近接センサを含み、
近接部を可動無目、検出部を固定無目側に配置した
請求項9又は10に記載の自動ドア。
【請求項12】
前記起動センサが人を検出して開始した通常開動作時に、前記可動無目の前記固定無目へのロックが解除されたことを前記ロック検出部が検出すると、
前記コントローラは前記スライドドアの速度を通常開動作時より低速にして開動作を継続し開完了させる
請求項9乃至11のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項13】
前記開完了後に前記可動無目が前記固定無目にロックされたことを前記ロック検出部が検出し、さらに前記起動センサが人を検出しなくなると、
前記コントローラは前記スライドドアの速度を通常閉動作時より低速にして閉動作を行ない閉完了させる
請求項12に記載の自動ドア。
【請求項14】
上記可動無目が分割された左側可動無目と右側可動無目とからなり、その各可動無目にそれぞれFIXドアとスライドドアを配設した両引きタイプであり、
前記各可動無目を前記固定無目の直下に係脱させる左右2つのロック機構を備えるとともに、
前記各可動無目が前記固定無目にロックされているか否かを検出する左右2つのロック検出部を有する
請求項8乃至11のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項15】
起動センサが人を検出して開始した通常開動作時に、前記各可動無目のうち少なくとも一方の前記固定無目へのロックが解除されたことを前記ロック検出部が検出すると、
前記コントローラは2つの前記スライドドアの速度を通常開動作時より低速にして開動作を継続し開完了させる
請求項14に記載の自動ドア。
【請求項16】
前記開完了後に前記各可動無目が共に前記固定無目にロックされたことを前記ロック検出部が検出し、さらに前記起動センサが人を検出しなくなると、
前記コントローラは2つの前記スライドドアの速度を通常閉動作時より低速にして閉動作を行ない閉完了させる
請求項15に記載の自動ドア。
【請求項17】
全開放動作時に前記FIXドアと前記スライドドアが室外方向に回動する角度が90度より大きい
請求項8乃至16のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項18】
全開放時の回動角度を設定する回動角度設定部を有する
請求項17に記載の自動ドア。
【請求項19】
前記回動角度設定部は回動角度制限部と戻り防止部を含む
請求項18に記載の自動ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア、詳しくは、出入口にFIXドアとスライドドアを配設し、スライドドアをFIXドアに沿い走行可能に吊架して出入口を開閉させるとともに、必要に応じてFIXドアとスライドドアを回動(スイング)させて出入口を全開放(フルオープン)させる自動ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の自動ドアは、通常時はスライドドアがFIXドアに沿って通常開度以内で開閉するが、停電等の非常時にはスライドドアが自動的に通常開度以上にスライドしてスライドドアとFIXドア両方のロック機構を解除するので、その状態で幅方向に重なった両ドアを室内側から押圧することにより、両ドアをそれぞれの支持軸(ピン)を支点に略90度回動(スイング)させることができる。
一方特許文献2の自動ドアは、エンジンセット等が配設された固定無目に対し、FIXドアが懸架されスライドドアがFIXドアに沿って走行可能に吊設された可動無目が回動可能に構成されており、非常時には例えば手動で押圧することによりスライドドアの位置に関係なく両ドアを可動無目と一体的に回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-46694号公報
【文献】特開2016-169584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしいずれの自動ドアも、全開放(フルオープン)動作時にFIXドアを回動させる関係上、全開放動作前のスライドドアがFIXドアに沿って開閉する通常開閉動作時において、FIXドアの下部は縦枠近傍の回動時の回転中心軸により、床面に回動可能に支持されているのみである。このようにFIXドアの下部が縦枠近傍の1点のみで支持されているため、FIXドアの下部の縦枠とは反対側の端部付近が、スライドドアの開閉動作や外部から伝わる振動や風の影響等により振動を起こしたり、風圧により変形してスライドドアの開閉動作に悪影響を与えたりする他、スライドドアに接触し故障の原因となることもある。また気密性、水密性等の諸特性が問題となることもある。
【0005】
本発明の自動ドアは以上のような事情に鑑み、その不具合を解消すべく、スライドドアがFIXドアに沿って開閉する通常開閉動作時において、FIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を、床に係止するFIXドア下部係止ユニットを配設する。このようにFIXドアの下部を、縦枠近傍の回動時の回転中心軸と、それから離間した位置にあるFIXドア下部係止ユニットの双方で床面に支持することにより、FIXドアの下部の振動を防止すると共に、耐風圧性を向上させた自動ドアを提供することを目的とする。またFIXドア下部係止ユニットを追加しても、全開放動作時の操作性を損なうことなく、簡潔かつ安定した操作性と高信頼性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の自動ドアは、左右両縦枠間にFIXドアとスライドドアを配設し、通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時には前記スライドドアが前記FIXドアに沿って走行し、全開放動作時には前記FIXドアと前記スライドドアが室外方向に回動される自動ドアにおいて、通常開閉動作時に、前記FIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止するFIXドア下部係止ユニットを有する。
【0007】
これにより通常のスライド開閉動作に加えて回動(スイング)による全開放動作が可能な自動ドアにおいて、通常開閉動作時にFIXドアの下部を離間した2箇所で床に係止することで、FIXドアの振動を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明の自動ドアは、請求項1に記載の発明に対し、前記FIXドア下部係止ユニットは、前記FIXドアの下部に配設されたFIXドア側係止部と、通常開閉動作時に前記FIXドア側係止部の下方の前記床に配設された床側係止部を含み、前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にあるとき、前記FIXドア側係止部は前記床側係止部に係止され、前記FIXドアが室外方向に回動されると、前記FIXドア側係止部の前記床側係止部への係止は解除され、前記FIXドアが回動後に通常開閉動作時の位置に戻されると、前記FIXドア側係止部は前記床側係止部に係止される。
【0009】
これによりFIXドア側係止部と床側係止部を含むFIXドア下部係止ユニットは、FIXドアを通常開閉時の位置にすれば係止状態となり、また例えば人が押圧操作をすることによりFIXドアを回動させれば係止状態が解除される。すなわち係止状態のオンオフ(係止と解除)を切り替えるための追加的な操作を必要としないため、通常開閉動作時には確実にFIXドアの振動を防止できるとともに、緊急時等の必要なときにはFIXドアを回動させるだけで係止状態が解除されるので全開放動作に要する時間が短くて済み、早急な緊急退避が可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明の自動ドアは、請求項2に記載の発明に対し、前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にあるとき、前記FIXドアが室内方向に力を受けると、前記床側係止部が前記FIXドアの前記FIXドア側係止部付近の室内方向への移動を規制する。
【0011】
これによりFIXドアが通常開閉時の位置において、FIXドアが室外方向から風圧を受けても、FIXドアの下部は回動時の回転中心に加えて、床側係止部がFIXドアのFIXドア側係止部付近の室内方向への移動を規制するので、風圧によるFIXドアの傾きや変形を防止することが可能となり、耐風圧性が向上する。
【0012】
請求項4に記載の発明の自動ドアは、請求項2又は3に記載の発明に対し、
前記FIXドア側係止部は磁石を含み、前記床側係止部は本体と前記本体に収納された吸着板を含み、前記吸着板は上方から前記磁石に吸引されると前記本体の上面から突出し、
前記FIXドアが通常開閉動作時の位置にくると、前記磁石に前記吸着板が吸着されることで、前記FIXドア側係止部が前記床側係止部に係止され、前記FIXドアが室外方向に回動されると、前記磁石と前記吸着板の吸着が外れて、前記FIXドア側係止部の前記床側係止部への係止が解除される。
【0013】
このように磁石の磁力を利用した比較的簡単な構成で、FIXドアを通常開閉動作時の位置にするだけでFIXドアは床に係止され、FIXドアを室外方向に回動するだけでFIXドアの床への係止が解除できる。FIXドアを回動させる際に係止解除の操作が不要で信頼性が高く、しかもコンパクトなFIXドア下部係止ユニットが実現できる。
【0014】
請求項5に記載の発明の自動ドアは、請求項4に記載の発明に対し、前記吸着板は前記磁石に吸引されると、室内側より室外側が高くなるように上面から斜めに突出し、前記FIXドアが室内方向に力を受けても、突出した前記吸着板が前記FIXドアの室内方向への動きを規制して、係止状態を維持する。
【0015】
これによりFIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止して、FIXドアの振動を防止するための吸着板を、FIXドアの下部の室内方向への動きを規制するために併用できるため、部品を増やすことなく、耐風圧性を高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明の自動ドアは、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明に対し、前記FIXドアの室外側の下部に、FIXドアの下端部より床面に向けて突出するクリーナ部が取り付けられた。
【0017】
これによりFIXドアを室外に回動させる際に、仮に室外に異物が落ちていても回動時にクリーニングできるので、例えば鉄釘などが落ちていてもそれがFIXドア側係止部の磁石などに吸着されるのを防止することができ、信頼性が向上する。
【0018】
請求項7に記載の発明の自動ドアは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明に対し、
前記スライドドアが前記FIXドアに沿って走行する際に、前記スライドドアと前記FIXドアの下端部同士の距離を略一定に保持するスライドドア位置決め部を、前記スライドドアと前記FIXドアの下端部に配設した。
【0019】
これによりスライドドアが通常開閉動作をする際に、スライドドアとFIXドアの下端部同士の距離が略一定に保たれるので、安定した開閉動作が実現できる他、床にスライドドアの振れ止めのための溝を形成することも不要となるため、施工が容易となる。
【0020】
請求項8に記載の発明の自動ドアは、請求項7に記載の発明に対し、前記スライドドア位置決め部は、前記スライドドアの下端部に長手方向に沿って設けた略一定の幅を有する長溝と、前記FIXドアの下端部に配設され前記長溝に挿入されるガイド部とを含む。
【0021】
これによりコンパクトな構成でスライドドアをFIXドアに沿って安定して走行させることができるため、FIXドア下部係止ユニットの配置の自由度を大きく確保できる。
【0022】
請求項9に記載の発明の自動ドアは、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明に対し、
前記左右両縦枠の上端部に、前記スライドドアを走行させるモータと前記スライドドアの走行を制御するコントローラを内設した固定無目と、前記FIXドアを懸架するとともにレールを有する台板を内設して前記スライドドアを走行可能に吊架する可動無目とを有し、全開放動作時には前記可動無目が前記固定無目に対して回動される。
【0023】
これによりFIXドアとスライドドアが可動無目と一体的に回動するため、スライドドアの位置によらずいつでも安定した全開放動作をさせることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明の自動ドアは、請求項9に記載の発明に対し、人を検出する起動センサと、前記可動無目を前記固定無目の直下に係脱させるロック機構を備えるとともに、前記可動無目が前記固定無目にロックされているか否かを検出するロック検出部を有する。
【0025】
これにより自動ドア付近の人の有無と可動無目の固定無目へのロック状態を監視できるため、通常開閉動作に限らず、全開放動作を開始してから全開放動作を終了して通常開閉動作に戻るまで、継続的にスライドドアの動作を制御することができ、回動時の操作性や安全性を高めることができる。
【0026】
請求項11に記載の発明の自動ドアは、請求項10に記載の発明に対し、前記FIXドアと前記スライドドアを室外方向へ回動を開始させるために必要な押圧力が、5~25kgfである。
【0027】
これにより可動無目の固定無目へのロック力と、FIXドア下部係止ユニットの係止力に対抗して両者を解除させ、FIXドアとスライドドアの室外方向への回動を開始させるための押圧力を5~25kgfとすれば、必要な押圧力が小さすぎて意図せずに回動してしまうことも、大きすぎて回動させづらいこともなく、全開放動作時の操作性を向上させることができる。
【0028】
請求項12に記載の発明の自動ドアは、請求項10又は11に記載の発明に対し、前記ロック検出部は、配線のない近接部と、配線の必要な検出部からなる近接センサを含み、近接部を可動無目、検出部を固定無目側に配置した。
【0029】
これにより可動無目の固定無目へのロック状態検出に信頼性の高い近接センサを使用できるとともに、回動される可動無目には配線の必要がない近接部を配置し、配線の必要な検出部はコントローラを内設した固定無目側に配置することにより、配線を固定無目内部で完結させることができ、可動無目と固定無目の間の配線が不要となるので、配線の長さを短くできるとともに、信頼性を向上させることができる。
【0030】
請求項13に記載の発明の自動ドアは、請求項10乃至12のいずれかに記載の発明に対し、前記起動センサが人を検出して開始した通常開動作時に、前記可動無目の前記固定無目へのロックが解除されたことを前記ロック検出部が検出すると、前記コントローラは前記スライドドアの速度を通常開動作時より低速にして開動作を継続し開完了させる。
【0031】
これにより人が自動ドアに近づいたことを起動センサが検出して通常動作を開始したところで、人が全開放動作を行なうためにスライドドアを室外方向に押圧することで可動無目のロックが解除されると、スライドドアの開動作時の速度が低速になるため、全開放動作の操作性が向上すると共に、安全性も向上する。
【0032】
請求項14に記載の発明の自動ドアは、請求項13に記載の発明に対し、前記開完了後に前記可動無目が前記固定無目にロックされたことを前記ロック検出部が検出し、さらに前記起動センサが人を検出しなくなると、前記コントローラは前記スライドドアの速度を通常閉動作時より低速にして閉動作を行ない閉完了させる。
【0033】
これにより全開放動作を終了し、FIXドア等を通常開閉時の位置に戻す際の安全性を確保することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明の自動ドアは、請求項9乃至12のいずれかに記載の発明に対し、上記可動無目が分割された左側可動無目と右側可動無目とからなり、その各可動無目にそれぞれFIXドアとスライドドアを配設した両引きタイプであり、前記各可動無目を前記固定無目の直下に係脱させる左右2つのロック機構を備えるとともに、前記各可動無目が前記固定無目にロックされているか否かを検出する左右2つのロック検出部を有する。
【0035】
これにより両引きタイプの場合にも、左右の可動無目の固定無目へのロック状態を共に監視できるため、通常開閉動作に限らず、全開放動作を開始してから全開放動作を終了して通常開閉動作に戻るまで、常時左右両方のスライドドアの動作を制御することができ、回動時の操作性や安全性を高めることができる。
【0036】
請求項16に記載の発明の自動ドアは、請求項15に記載の発明に対し、起動センサが人を検出して開始した通常開動作時に、前記各可動無目のうち少なくとも一方の前記固定無目へのロックが解除されたことを前記ロック検出部が検出すると、前記コントローラは2つの前記スライドドアの速度を通常開動作時より低速にして開動作を継続し開完了させる。
【0037】
これにより人が自動ドアに近づいたことを起動センサが検出して通常動作を開始したところで、人が全開放動作を行なうために左右のスライドドアの一方を室外方向に押圧することで可動無目のロックが解除されると、左右のスライドドアの双方の開動作時の速度が低速になるため、全開放動作の操作性が向上すると共に、安全性も向上する。
【0038】
請求項17に記載の発明の自動ドアは、請求項16に記載の発明に対し、前記開完了後に前記各可動無目が共に前記固定無目にロックされたことを前記ロック検出部が検出し、さらに前記起動センサが人を検出しなくなると、前記コントローラは2つの前記スライドドアの速度を通常閉動作時より低速にして閉動作を行ない閉完了させる。
【0039】
これにより全開放動作を終了し、FIXドア等を通常開閉時の位置に戻す際の安全性を確保することができる。
【0040】
請求項18に記載の発明の自動ドアは、請求項9乃至17のいずれかに記載の発明に対し、全開放動作時に前記FIXドアと前記スライドドアが室外方向に回動する角度が90度より大きい。
【0041】
これにより非常時に全解放したときの人の退避がより容易となり、安全性が向上する。
【0042】
請求項19に記載の発明の自動ドアは、請求項18に記載の発明に対し、全開放時の回動角度を設定する回動角度設定部を有する。
【0043】
これにより自動ドアが取り付けられる建物や室外の状況に合わせて、全開放時の回動角度を最適に設定することができる。
【0044】
請求項20に記載の発明の自動ドアは、請求項19に記載の発明に対し、前記回動角度設定部は回動角度制限部と戻り防止部を含む。
【0045】
これにより回動角度設定部は回動角度制限部に加えて戻り防止部を含むので、全開放した自動ドアを使用して人が退避しているときに、風等の影響によりFIXドアやスライドドアが閉じ方向に戻って退避中の人に衝突することを防止することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、通常開閉動作時にはスライドドアがFIXドアに沿って走行し、全開放動作時にはFIXドアとスライドドアが室外方向へ回動(スイング)可能とされた自動ドアにおいて、通常開閉動作時にFIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止するFIXドア下部係止ユニットを配設することにより、FIXドアの振動を防止することができる。また係止時にFIXドア下部係止ユニットの一部でFIXドアの室内方向への動きを規制することにより、耐風圧性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態に係る自動ドアの全閉状態を室外側から見た正面図と(A)-(A)線断面図を含む側面図である。
図2図1を室内側から見て無目カバーを省略した拡大裏面図である。
図3図1の正面図を上から見た固定無目内部の平面図である。
図4図1における(B)-(B)線断面図である。
図5図2における(C)-(C)線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る自動ドアにおけるスライドドアの開動途中を示し、(a)は正面図、(b)はその(D)-(D)線断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る自動ドアにおけるFIXドア及びスライドドアの回動途中を示し、(a)は正面図、(b)はその(E)-(E)線断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る自動ドアにおける90度全開放(フルオープン)状態を示し、(a)は正面図、(b)はその(F)-(F)線断面図である。
図9図8における(G)-(G)線断面図である。
図10図8(b)において120度全開放(フルオープン)状態としたときの図である。
図11図1における12b(FIXドア下部係止ユニット)周辺の拡大図を示し、(a)は断面図、(b)は側面図、(c)は41(床側係止部)の非吸引状態の見取り図、(d)は41(床側係止部)の吸引状態の見取り図、(e)は44(FIXドア側係止部)の見取り図である。
図12図1における13b(スライドドア位置決め部)周辺の拡大図を示し、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図13図9における(H)部の拡大図である。
図14】本発明の実施形態に係る自動ドアの全開放動作時のフローチャートである。
図15】本発明の実施形態に係る自動ドアの全開放後の閉動作時のフローチャートである。
図16】本発明の第2の実施形態に係るFIXドアの断面図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係るFIXドア下部係止ユニット周辺の拡大図を示し、(a)は断面図、(b)は床側係止部の断面図と上面図である。
図18】本発明の第4の実施形態に係る自動ドアの全閉状態を室外側から見た正面図と(J)-(J)線断面図に全開放(フルオープン)時の動きを加えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の自動ドアに係る実施形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
本発明の実施形態1の自動ドアについて説明する。図1の自動ドアは、左右両縦枠1、2の間にFIXドア3a、3bとスライドドア4a、4bが配設され、左右のスライドドアがそれぞれ隣接するFIXドアに沿って走行する通常開閉動作に加えて、左右それぞれのFIXドアとスライドドアが室外方向に回動(スイング)する全開放動作が可能な全開放型自動ドア(フルオープナー)である。図は全閉状態であり、図の手前側が室外、奥側が室内である。
【0049】
左右両縦枠1、2の上部の無目5は、上端部に固定された固定無目6と、その下方の可動無目7に分割され、可動無目7はさらに左右の可動無目7a、7bに分割されており、可動無目7a,7bは、それぞれが縦枠1,2側の端部付近で上部ピボット軸8a,8bにより固定無目6に対して回動(スイング)可能に取り付けられている。また、可動無目7a,7bのそれぞれの中央部寄りには、固定無目6との間を係脱させるロック機構10a,10bが配設され、通常開閉動作時において可動無目7a,7bは固定無目6の下部に位置決めされた状態でロックされている。
【0050】
一方、図1、及び図4に示すように、可動無目7a,7bに懸架したFIXドア3a,3bの下端には、前記上部ピボット軸8a,8bと同軸線上に下部ピボット軸9a,9bを床面との間に取り付けて、可動無目7a,7b及びFIXドア3a,3bの回動時の支点(回転中心)としている。またFIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止するFIXドア下部係止ユニット12a、12bを配設している。FIXドアの下部が縦枠1、2の近傍の下部ピボット軸9a、9bのみで支持されていると、FIXドアの縦枠とは反対側の中央寄りの下部がスライドドアの開閉動作、外部からの振動、風等の影響で振動を起こしやすいが、下部ピボット軸9a、9bから離間した箇所を床に係止することで振動を防止することができる。FIXドア下部係止ユニットと下部ピボット軸とは最低限離間していれば効果はあるが、距離が大きいほど効果も大きいため、FIXドア下部係止ユニットはFIXドアの縦枠とは反対側の端部付近とすることが最も好ましい。他の構成との関係で縦枠と反対側の端部付近に配置することが難しい場合でも、FIXドア下部係止ユニットと下部ピボット軸との距離は、少なくともFIXドアの横幅の1/2以上、できれば2/3以上離すことが好ましく、効果的にFIXドアの振動を防止することができる。
【0051】
またスライドドア4a、4bがFIXドア3a、3bに沿って走行する際に、スライドドアとFIXドアの下端部同士の距離を略一定に保持するスライドドア位置決め部13a、13bを、スライドドアとFIXドアの下端部に配設している。これによりスライドドアとFIXドアの下端部同士のスライドドアの走行方向と直行する方向の距離(スライドドアとFIXドアのドア面同士の隙間)が略一定に保たれるので、安定した開閉動作が実現できる。またスライドドア位置決め部13a、13bは、それぞれ前述のFIXドア下部係止ユニット12a、12bの近傍にあり、それによりFIXドアの下端部の振動が抑制されているため、FIXドアの下端部との距離が一定とされたスライドドアの振動も抑制され、より安定した開閉動作が実現されるとともに走行時のノイズも小さくできる。また一般的なスライドドアのように走行位置を安定させるためにドア下部から床面下に突出する振れ止めを設けないため、床面に凹状の長溝レールを配設する必要もなく、自動ドアの施工も容易となる。
【0052】
図2図1を室内側から見た無目内の拡大裏面図であり、図3図1の正面図を上から見た固定無目内の平面図である。固定無目6には、図2及び図3に示すように、モータや減速機等からなるエンジンセット22とそれを制御するコントローラ23を含みスライドドア4a,4bの開閉動作を駆動制御する駆動装置21、および駆動装置21の駆動力を左右両側に分岐させる上部動力伝達機構24(上部駆動プーリ25、ガイドプーリ26a、26b、上部ベルト28、上部従動プーリ27a、27bなどを含む)を配設する。また、固定無目6は、その室外側と室内側の各中央部に赤外線等の起動センサ11a,11bを設けており(図9参照)、それら起動センサ11a,11bが通行人等の人を検出したときにコントローラ23を介してエンジンセット22を駆動させるようにする。
なお図9において起動センサ11a、11bの床面からの高さが異なっているが、これには限定されず、例えば同じ高さでもよい。
【0053】
一方、可動無目7a,7bには前記上部動力伝達機構24に連係する下部動力伝達機構29a,29bを左右対称に配設する。
具体的には、図2及び図5に示す如く、前記上部動力伝達機構24の上部従動プーリ27a,27bにより回転する上部ピボット軸(プーリ軸)8a,8bを上部ピボット軸受14a,14bにより可動無目7a,7b内に貫通状回転可能に配設し、その上部ピボット軸(プーリ軸)8a,8bに下部駆動プーリ30a,30bを取り付けるとともに可動無目7a,7bの他端側に下部従動プーリ31a,31bを配設し、両プーリ30a,31a及び30b,31bの間にそれぞれ下部ベルト32a,32bを巻回させて下部動力伝達機構29a,29bを構成させる。なお、本実施形態において、固定無目6の上部ピボット軸8a,8bが、上部動力伝達機構24から下部動力伝達機構29a,29bに動力を伝達するプーリ軸を兼用していることは図示のとおりである。
【0054】
また、可動無目7a,7b内には、図2及び図5に示すように、前記下部動力伝達機構29a,29bの下部ベルト32a,32bの直下に該ベルトの走行方向に沿ったレール34a,34bを形成した台板33a,33bを取り付けている。一方、前記スライドドア4a、4bには、一般的な自動ドアと同様に、上方に突設したハンガー35a,35bを前記下部ベルト32a,32bの一部に掛止するとともに戸車36a,36bを備え、その戸車36a,36bが前記レール34a,34b上を転動しながら走行することにより、スライドドア4a,4bが可動無目7a,7bに走行可能に吊設されている。
【0055】
次に、本発明の実施形態1の自動ドアにおける開閉動作について図1及び図2図6図8に基づいて説明する。スライドドア4a,4bが全閉状態の図1において、室外又は室内の通行者がドアに近づき起動センサ11a又は11bに検出されると、固定無目6内のコントローラ23の制御によりエンジンセット22が駆動して上部動力伝達機構24のプーリ軸(上部ピボット軸)8a,8bが回転し、それに伴って可動無目7a,7b内の下部動力伝達機構29a、29bの下部駆動プーリ31a、31b、下部ベルト32a,32b等がそれぞれ回転する。これにより、スライドドア4a,4bのハンガー35a,35bが下部ベルト32a,32bに牽引されるとともに戸車36a,36bがレール34a,34b上を走行することによりスライドドア4a,4bがFIXドア3a,3bに沿って開動する。
【0056】
図6は、可動無目7a,7bがロック機構10a,10bにより固定無目にロックされた状態でスライドドア4a,4bが開動する途中を示すが、何もしなければ引き続きスライドドア4a,4bは全開した後に閉じ動作を開始し全閉する一連の通常開閉動作を継続する。しかし本発明の自動ドアは、スライドドア4a,4bが図1の全閉状態又は開動途中の図6あるいは図示省略した全開状態の何れの状態でも、室内側からスライドドア4a,4bを室外側へ押し出せば、その押圧力によりロック機構10a,10bが解除されると共に、FIXドア下部係止ユニット12a、12bによるFIXドア下部の係止も解除され、さらに可動無目7a,7bと可動無目に懸架されたFIXドア3a,3bが上部ピボット軸8a,8b(プーリ軸)と下部ピボット軸9a,9bを支軸にして、回動(スイング)する(全開放動作)。
【0057】
ここでロック機構10a、10bによる可動無目のロック、FIXドア下部係止ユニット12a、12bによるFIXドア下部の係止はともに、室内側からスライドドア4a、4bもしくはFIXドア3a、3bを室外側へ押し出せば、その押圧力により解除される押圧解除方式としている。この方式によれば、ドアを室外側に押すだけでいつでも自動ドアを全開放することができるため、大型の荷物等の出し入れの際等の利便性が高い。またFIXドアとスライドドアの室外方向への回動を開始させるために必要な押圧力は、スライドドア4a、4bの戸先付近で左右ともに5~25kgfの範囲であることが望ましい。5kgf未満であると意図しないときに自動ドアが全開放されてしまう恐れがあり、25kgfを超えると全開放動作時の操作性が悪くなる等のためである。また5~20kgfの範囲であればさらに操作性が向上し、より好ましい。必要な押圧力は可動無目のロック機構10a、10bのロック解除力とFIXドア下部係止ユニット12a、12bの係止解除力を適切に設定することにより実現できる。
なお可動無目のロック機構としては押圧解除方式でなく、停電解錠型の電気錠を使用してもよい。この場合は例えば自動ドアの管理者が電気錠を解錠操作することにより全開放が可能となるが、停電等の非常時には電気錠が自動解錠されるため、誰でも自動ドアを手動で全開放させて通行を確保することができる。この場合、回動を開始させるのに必要な押圧力はほぼFIXドア下部係止ユニットの係止解除力のみで決まるため、押圧解除方式に比べて小さくなるが、この場合全開放できるのは非常時のみなので問題はない。
【0058】
次に全開放(フルオープン)動作を図6図10で説明する。全開放動作はスライドドアの位置に関係なくいつでも可能であるが、ここでは図6のスライドドア4a,4bが開動する途中で、室内側からスライドドア4a,4bを室外側へ押し出した場合の例を示す。
スライドドア4a,4bを室外側へ押し出すと、図7に示すように可動無目7a,7bの回動に伴い、FIXドア3a,3bも一緒に回動する。ここからスライドドア4a,4bを室外側へさらに押し出すと、図8に示すように可動無目7a,7bを略90度回動させることができる。このとき例えば室外の床面に回動角度を例えば略90度に設定する回動角度設定部15a、15bを設けてもよい。回動角度設定部15a、15bはそれ以上可動無目が回動しないように回動角度を制限する回動角度制限部と、回動させた可動無目が逆方向に戻るのを防止する戻り防止部を有している。これにより室外に開いているFIXドア3a,3bとスライドドア4a,4bが室外の風等の影響により閉じ方向に勢いよく戻ることで、人に怪我をさせることを防止することができる。戻り防止部は例えばFIXドアと回動角度設定部の間をフック等により手動で係合させるものでよいが、これには限定されない。
なおスライドドア4a、4bの戸先付近の下端部には図示省略したシリンダー錠を含む施錠手段がそれぞれ取り付けられていてもよい。自動ドアの管理者は室内側からはサムターン、室外側からは鍵の操作により施錠もしくは解錠することができる。施錠時には例えばスライドドア4a、4bの下端部から床に配設した穴にデッドボルトが突出し、穴内の移動制限部材によりデッドボルトが移動を制限されることでスライドドアの移動が制限され、通常開閉動作も全開放(回動)動作もできない施錠状態となる。そしてこのスライドドア4a、4bの施錠手段を全開放時の戻り防止部として用いてもよい。すなわち全開放時のスライドドアの施錠手段の位置に対応させて、室外の床にデッドボルトの移動制限部材を配設し、全開放後にサムターンを操作することで施錠しスライドドアの閉じ方向への戻りを防止してもよい。
【0059】
図9は可動無目が略90度回動(スイング)した全開放動作後を示す図8におけるG-G線断面図を示す。全開放時まで含めて固定無目6内の上部動力伝達機構と可動無目7b内の下部動力伝達機構は連動して機能しており、全開放中もスライドドア4a,4bをFIXドア3a,3bに沿って走行させることができる。全開放動作を開始した図6では開動途中だったスライドドア4a,4bが、全開放(フルオープン)後の図8図9で開完了状態となっているのは、その間にスライドドアが開動作を行なっていたためである。このように全開放時にスライドドアがFIXドアと略重なり合う位置まで開いていると、人がここを通行して避難する際、スライドドアの戸先を過ぎれば直進せずに横方向にも逃げられるため避難しやすくなる他、通過時に左右の扉から受ける圧迫感が少なくなり安心して避難できるという利点がある。また全開放時にスライドドア4a,4bをFIXドアと重なる方向に移動させることにより、可動無目7a,7bの重心が回動中心の吊元に近づくため、可動無目の吊先がスライドドア等の重量により変形することを防止する効果もある。なお図9の全開放状態まで含めて、スライドドア位置決め部13bは継続して機能しており、スライドドアとFIXドアの下端部同士の距離は略一定に保たれ、安定したスライド動作が可能となっている。一方全開放状態においてはFIXドア下部係止ユニット12bの床側係止部41bとFIXドア側係止部44bは完全に離れた位置にあり、係止は解除されたままとなっている。
なおスライドドアやFIXドアの重量が大きく、回動時に可動無目の吊先の変形が問題となる場合、例えばスライドドアもしくはFIXドアの少なくとも一方の縦枠から遠い側の下端部に車輪部を配設し、車輪部が回動時に両ドアの重量を支えながら床面と回転摺動することで、可動無目の変形を防止させるようにしてもよい。また車輪部は可動無目が所定の量以上に変形した場合のみ床面に着地して、両ドアの重量を支えるようにしてもよい。
【0060】
これまで全開放時の回動角度は略90度として説明したが、本発明の実施形態1の自動ドアの場合はこれには限られず、90度よりも大きくすることができる。すなわち従来の全開放型の自動ドアではFIXドアとスライドドアのそれぞれが近傍の別の支点を回動中心としていたため、スライドドアの回動角度がFIXドアの支点により制限され、実質的に90度を超えて回動させることは困難であった。これに対し本発明の実施形態1の自動ドアのように可動無目7a、7bを回動させる方式ではこの制約がなく、自動ドアが取付けられる建物部分や室外の状況に合わせて比較的自由に設定可能である。図10は回動角度が略120度となるように、回動角度設定部15a、15bを配置した例である。このように回動角度が90度を超えるようにすると人がここを通行して避難する際、元の自動ドアの位置を過ぎれば直進せずに斜め方向に広がって逃げられるため避難しやすくなる他、通過時に左右の扉から受ける圧迫感が少なくなり安心して避難できるという利点がある。特に回動角度を100度以上にすると、これらの効果を実感しやすくなり、大きいほど効果がある。ここで回動角度設定部15a、15bを室外の床面に配設する例を示したが、これには限定されない。例えば無目5の内部の、例えば固定無目6と可動無目7a、7bの間に、回動角度設定部を配設してもよい。また無目内の回動角度設定部は各種機構や電気錠などを組合せて構成してもよい。
【0061】
次に図11を用いてFIXドア下部係止ユニット12の詳細の構成を説明する。FIXドア下部係止ユニット12a、12bは左右のFIXドア3a、3bに対応してそれぞれ配設されるが左右対称で同一構造のため、以下12bについて説明するが、12aも同様と考えてよい。FIXドア下部係止ユニット12bは、FIXドア3bの下部に配設されたFIXドア側係止部44bと、通常開閉動作時にFIXドア側係止部44bの下方の床面に配設された床側係止部41bとにより構成されている。FIXドア側係止部44bは図11(e)に示すように、磁石45bと、ハウジング46bと、フランジ47bとを含み、例えばフランジ47bの2箇所の長穴を用いて図示省略したねじ2本でFIXドア3bの下部に取付けられる。また床側係止部41bは図11(c)のように本体42bと本体42bに収納された吸着板43bとを含み、本体42bは例えば吸着板43bの脇の左右の穴を用いて床面に固定される。吸着板43bは、その上方にFIXドア側係止部44bの磁石45bがあるときは、その磁力により吸引されて、図11(d)のように本体42bの上面から斜めに突出するように構成されている。
【0062】
図11(a)は通常開閉動作時にFIXドア下部係止ユニット12bのFIXドア側係止部44bと床側係止部41bが係止されている状態を示している。床側係止部41bの上部にFIXドア側係止部44bがあるため、FIXドア側係止部44bの磁石45bに、床側係止部41bの吸着板43bが吸着され、その吸着力によってFIXドアの下部が係止されている。FIXドア下部係止ユニット12bは、FIXドア3bの回動中心である下部ピボット軸9bとは離間した位置にあるため、通常開閉時にFIXドア3bの下部が離間した少なくとも2箇所で床に係止され、FIXドアの振動防止に大きな効果がある。
【0063】
図11(a)のようにFIXドア3bが通常開閉動作時の位置にあるとき、FIXドア側係止部44bは床側係止部41bに係止されているが、この状態から磁石45bと吸着板43bの吸着力による係止力以上の力でFIXドア3bが直接又は間接的に室外(OUT)方向に押されて回動されると、FIXドア側係止部44bの床側係止部41bへの係止は解除される。またFIXドア3bが回動後に再度通常開閉動作時の位置に戻されると、吸着板43bが磁石45bに吸着されて、FIXドア側係止部44bは床側係止部41bに再び係止される。このようにFIXドア側係止部44bと床側係止部41bを含むFIXドア下部係止ユニット12bは、FIXドア3bを通常開閉時の位置にすれば係止状態となり、人によるスライドドア4bの押圧操作等によりFIXドア3bを回動させれば係止状態が解除される。すなわちFIXドア3bを通常開閉動作時の位置にするだけで確実にFIXドアの振動を防止できるとともに、全開放動作が必要なときにはFIXドアを回動させるだけで係止状態が解除され、全開放動作時の操作性を悪化させることがないので、全開放動作に要する時間は短いままであり、緊急時等には早急な退避が可能となる。
【0064】
また図11(a)のようにFIXドア3bが通常開閉動作時の位置にあり、床側係止部41bの吸着板43bがFIXドア側係止部44bの磁石45bに吸着されて、FIXドア下部係止ユニット12bが係止状態となったとき、吸着板43bは室内(IN)側よりも室外(OUT)側が高くなるように本体42bの上面から突出するように構成されている。そしてこの状態でFIXドア3bが室内方向に力を受けると、床側係止部41bの吸着板43bの先端が、FIXドア側係止部44bのフランジ47bの室内方向への移動を規制するように構成されている。すなわちFIXドア3bが通常開閉時の位置にあるとき、床側係止部41bの吸着板43bは、FIXドア3bに取り付けられたFIXドア側係止部44b付近の室内方向への移動を規制する。これによりFIXドア3bが通常開閉時の位置において室外方向から風圧等による力を受けても、FIXドア3bの下部は回動時の回転中心である下部ピボット軸9bに加えて、下部ピボット軸9bから離間した位置にある床側係止部41bの一部、具体的には吸着板43bが、FIXドア3bのFIXドア側係止部44b付近、具体的にはフランジ47bの室内方向への移動を規制するので、風圧等によるFIXドア3bの傾きや変形を防止することが可能となる。またFIXドア3bの下部ピボット軸9bから離間した箇所を床に係止してFIXドアの振動を防止するためのFIXドア下部係止ユニット12bを、FIXドア3bの下部の室内方向への移動の規制にも併用できるため、部品を増やすことなく、耐風圧性も高めることができる。
なお上記の例では吸着板43bの先端に対向するフランジ47bを用いてFIXドア3bのFIXドア側係止部44b付近の室内方向への移動を規制したが、これには限定されないことは言うまでもない。
また以上の例において床側係止部41bは床面上に低背状に配設しているため、施工も容易で、かつ通行時の邪魔になることも殆どない。しかし床側係止部41bの本体42bの厚みと同程度の凹部を床面に設けて、その中に床側係止部41bを配設してもよい。このようにすれば、通行時に人の足が床側係止部41bに引っ掛かることを完全に防止することができ、より安全な通行が可能となる。
【0065】
次に図12ではスライドドア位置決め部13bの詳細の構成を説明する。スライドドア位置決め部13bはスライドドア4bがFIXドア3bに沿って走行する際に、スライドドア4bとFIXドア3bの下端部同士の距離を略一定に保持する。スライドドア位置決め部13bは、スライドドア4bの下端部に長手方向(スライドドアの走行方向)に沿って配設され略一定の幅を有する長溝51bと、FIXドア3bに取り付けられスライドドア4bの長溝51bに挿入され、スライドドア4bをガイドする軸状のガイド52bを含む。ガイド52bは位置調整板54bに取付けられ、位置調整板54bはFIXドア3bにねじ止めされた取付け板53bに対して位置調整可能に取付けられている。ガイド52bはスライドドアの走行時の摩擦力を低減するため、外周に薄肉で回転可能なローラが取付けられていてもよい。
これによりスライドドア4bが通常開閉動作をする際に、スライドドア4bとFIXドア3bの下端部同士の距離が略一定に保たれるので、両者の接触や振動を防止することができ、スライドドア4bのFIXドア3bに沿った安定した開閉動作が実現される。全開放型の自動ドアの場合、通常の自動ドアのような床の長溝レールを利用する振れ止めを配設すると、全開放動作を妨げることになるが、上記のようなスライドドア位置決め部13bは全開放動作を妨げることもなく、床にレールを形成する必要もないので、施工も容易となる。また構成が簡単でコンパクトなため、隣接するFIXドア下部係止ユニット12bの配置に悪影響を及ぼすこともなく、下部ピボット軸9bとFIXドア下部係止ユニット12bとを充分に離間させることができる。
【0066】
図14は、スタート時(STEP1)に閉完了状態にある(STEP2)本発明の実施形態1の自動ドアを、室内側の人が全開放させるときのフローチャートである。全開放動作をさせるために室内側から人が自動ドアに近づくと、起動センサ11bからの人検知信号をコントローラ23が受信し(STEP3)、通常開動作をスタートする(STEP4)。通常開動作中に人がスライドドア4a、4bの少なくとも一方を室外に向けて押し出すことにより、固定無目6に対する可動無目7a、7bのロック機構10a、10bの少なくとも一方が解除されたことを検出した場合(STEP5)、スライドドア4a、4b双方の開速度を低速にして(STEP7)、開完了させる(STEP8)。一方、ロック機構10a、10bがともに解除されたことを検出しない場合(STEP5)は全開放動作は行なわれていないため、開完了となる(STEP6)まで通常開動作を継続する(STEP4)。
【0067】
このように人が自動ドアを全開放させるために室内側から自動ドアに近づくと、起動センサ11bが人を検出するので自動ドアは通常開動作を開始する。そこで人が通常開動作中のスライドドア4a、4bの少なくとも一方を室外方向に回動(スイング)させ、可動無目7a、7bのロック機構10a、10bの少なくとも一方が解除された場合、スライドドア4a、4bの開速度を通常開動作時よりも低速にして開完了させる。スライドドア4a、4bを開閉駆動するエンジンセット22のモータの回転制御には例えばパルス幅変調(PWM)制御を用い、通常開動作時のPWMのデューティ比の最大値を例えば90%、低速開動作時のPWMのデューティ比を例えば10%程度としてもよい。全開放動作時は人が開動作中のスライドドア4a、4bを手で押して回動させるため、スライドドア4a、4bの開速度が低速になれば手で押しやすくなり、全開放動作時の操作性が向上する他、全開放動作の際にスライドドア4a、4bが手や体に衝突してしまった場合の衝撃力も小さくできるため、安全性も向上する。
なお、左右の可動無目がそれぞれ全開放位置にあることを検出する全開放位置検出部をさらに設け、左右の可動無目のロック機構の少なくとも一方が解除された場合、左右のスライドドアの開動作を一時停止し、その後左右の可動無目がともに全開放位置にあることが検出されたらスライドドアの開速度を通常開速度よりも低速にして開完了させるようにしてもよい。これによればスライドドアを押して回動させる際の操作性はさらに向上する。
【0068】
また図15はスタート時(STEP1)に全開放されて開完了状態にある(STEP2)本発明の実施形態1の自動ドアを、人が通常開閉動作時の状態に戻すときのフローチャートである。人が全開放状態のFIXドア3aとスライドドア4a、及びFIXドア3bとスライドドア4bをそれぞれ又は同時に閉じる方向に回動させてそれらを通常開閉時の位置に戻し、左右の可動無目7a、7bが共にロック機構10a、10bにより固定無目6にロックされたことを検出した後に(STEP13)、さらに人が自動ドアから離れて起動センサ11a、11bが共に人を検出しないことが確認されると(STEP14)、スライドドア4a、4bの閉速度を通常閉動作時よりも低速にして(STEP15)閉完了させる(STEP16)。一方、ロック機構10a、10bの少なくとも一方が解除されている場合(STEP13)はスライドドア4a、4bの閉動作を行なうステップには進まない。同様に左右の可動無目7a、7bが共にロック機構10a、10bにより固定無目6にロックされたことを検出しても(STEP13)、起動センサ11a、11bの少なくとも一方が人を検出している場合は(STEP14)、スライドドア4a、4bの閉動作を行なうステップには進まない。
【0069】
このように全開放されると共にスライドドア4a、4bも開完了状態にある自動ドアを通常開閉時の位置に戻す際には、人が2対のFIXドアとスライドドアを回動させることにより左右の可動無目7a、7bが共に固定無目6にロックされて通常開閉時の位置に戻った後、さらに人が自動ドアから離れたことが確認された後に、スライドドア4a、4bを閉方向に移動させる。またその際の閉速度は通常の閉速度よりも低速とし、通常閉動作時のPWMのデューティ比の最大値を例えば90%、低速閉動作時のPWMのデューティ比を例えば10%程度としてもよい。これによって全開放状態の自動ドアを通常開閉時の位置に戻す際に、操作をする人や近くにいる人が、スライドドア4a、4bにぶつかったり挟まれたりして怪我をすることを確実に防止できる。
【0070】
以上のように可動無目7a、7bの固定無目6に対するロック機構10a、10bそれぞれのロック状態を検出して全開放開始から全開放終了までスライドドア4a、4bの開閉動作を制御することにより、本発明の実施例1の自動ドアの安全性を高めることができる。このロック機構10a、10bそれぞれのロック状態を検出するロック検出部は、例えば配線の必要のない近接部と、検出信号をコントローラ23等に送信するための配線が必要な検出部とからなる近接センサを含んでいる。近接センサは例えばリードスイッチを永久磁石で作動させる磁気型近接センサを用いてもよく、永久磁石を含み配線不要の2つの近接部を可動無目7a、7bそれぞれに配置し、リードスイッチを含み配線の必要な2つの検出部をロック時に2つの近接部にそれぞれ対向するように固定無目6に配置してもよい。これにより電気配線を固定無目6の内部で完結させることができ、可動無目7a、7bと固定無目6の間の配線が不要となる。従って全開放動作時に電気配線が繰り返し動くことによる信頼性の低下を防止するとともに、組立て時の作業性も大幅に改善され、配線の長さも短くできるため低コスト化が可能となる。なお近接センサは磁気型近接センサには限定されず、光学式近接センサ等を用いてもよい。例えば可動無目7a、7b側には配線不要の反射板を配置し、固定無目6側に反射型フォトセンサを配置すれば、可動無目7a、7bと固定無目6の間の配線が不要となる。
このようにロック検出部も含め、電気的配線を必要とするエンジンセット22、コントローラ23等の全ての電気部品を固定無目内に配設すれば、組立が容易で信頼性の高い自動ドアを実現することができる。またここではロック検出部に信頼性の高い近接センサを用いる例を示したが、電気接点を有するリミットスイッチを固定無目6側に配設し、可動無目7a、7b側に前記リミットスイッチの可動検出部を変位させる機構部を配設してもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態1においては、スライドドア4a、4bを左右に配置した両引きとして説明したが、スライドドアが単一の片引きタイプにも適用できることは言うまでもない。
【0072】
(第2の実施形態)
実施形態2は、実施形態1に一部の部材を追加しただけで、他の構成については実施形態1と同じ構成のため、説明を省略する。
【0073】
図16に示すFIXドア3b(3a)では、図11の実施形態1のFIXドア3b(3a)の室外(OUT)側の下部に、下端部より床面に向けて突出するクリーナ部61b(61a)が取り付けられている。クリーナ部61b(61a)は、自動ドアを全開放するためにFIXドア3b(3a)を室外方向に回動させる際に、室外の床面をクリーニングして、室外の床面に落ちている可能性のある鉄釘等の異物が、FIXドア3b(3a)の下端面と床面の間に入り込み、FIXドア下部係止ユニットのFIXドア側係止部44b(44a)の磁石45b(45a)に吸着されることなどによりFIXドア下部係止ユニットが機能しなくなることを防止している。
【0074】
クリーナ部61b(61a)としては、例えば薄く均一に並べたモヘアの上部を一体化してブラシ状に形成したものを、FIXドア3b(3a)の下部に接着等により取り付けている。クリーナ部61b(61a)先端のモヘアをFIXドア3b(3a)の下端部から突出させ床面に接触させることにより、床面上の比較的小さい異物までクリーニングすることができ信頼性が向上する。モヘアは毛足が長く、腰の強い繊維で、しかもこすれに強いので、横に動かしても毛が寝にくく、耐久性に優れている。またモヘアを薄く並べているので、FIXドア3b(3a)を回動させる際に、動きの妨げになりにくい。またクリーナ部61b(61a)をFIXドア3b(3a)の全幅にわたって取り付ければ、床面を幅広くクリーニングできる他、FIXドア3b(3a)と床面との隙間を塞ぐことができるので、すきま風を防止することもでき、外観も改善される。
【0075】
ただしクリーナ部61b(61a)は必ずしもFIXドア3b(3a)の全幅にわたって取り付ける必要はない。例えばFIXドア下部係止ユニットのFIXドア側係止部44b(44a)と同等以上の幅で、FIXドア側係止部44b(44a)の室外側に取り付けられていてもよい。これにより最低限FIXドア側係止部44b(44a)の磁石45b(45a)に鉄釘などが吸着することを防止することができる。またクリーナ部を床面に接触させず、FIXドア下部係止ユニットに大きな影響を与える鉄釘など所定の大きさ以上の異物のみをクリーニングするようにしてもよい。またその場合クリーナ部の先端部はモヘアでなく、スポンジや樹脂などで形成してもよい。またクリーナ部の取り付けは接着には限定されず、ねじ止めなどでもよい。
【0076】
またクリーナ部はFIXドア3b(3a)の室外側の下部だけでなく、スライドドア4b(4a)の室内側の下部に同様に取り付けてもよい。これにより全開放したスライドドア4b(4a)とFIXドア3b(3a)を通常開閉動作時の位置に戻す際に、床面上の異物をクリーニングしてFIXドア側係止部44b(44a)の磁石45b(45a)に鉄釘などが吸着することを防止することができる。またクリーナ部をスライドドア4b(4a)の全幅にわたって取り付ければ、スライドドア4b(4a)と床面との隙間を塞ぐことができるので、すきま風を防止することもでき、外観も改善される。
【0077】
(第3の実施形態)
実施形態3の自動ドアは、実施形態1のFIXドア下部係止ユニット12b(12a)の構成が異なるだけで、他の構成は実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0078】
図17は実施形態3の自動ドアのFIXドア下部係止ユニット12bの構成を示している。左右のFIXドア下部係止ユニット12a、12bは左右対称で同一構造のため、以下12bについて説明する。図17のFIXドア下部係止ユニット12bは、FIXドア側係止部75bと床側係止部71bとから構成されている。このうちFIXドア側係止部75bは、本体76bと、本体76bから一部が突出できるように本体76bの穴に装着されたボール77bと、本体76bから所定の力でボール77bを突出させるように本体76bの穴に装着された圧縮コイルばね78bとを含むように構成されている。一方床側係止部71bは、本体72bと、本体72bに形成されたボール係止穴73bとを含むように構成されている。
【0079】
図17(a)ではFIXドア3bは通常開閉時の位置にある。FIXドア側係止部のボール77bが、床側係止部の穴73bに入り込んでおり、FIXドア下部係止ユニット12bは係止状態にある。FIXドア下部係止ユニット12bは、FIXドア3bの回動時の回転中心である下部ピボット軸9bから離間した位置にあるため、FIXドア3bの振動は効果的に防止されている。この状態から人がスライドドア4bを所定以上の力で室外方向に押し出すとFIXドア3bも一緒に回動する。このときFIXドア側係止部75bのボール77bは上方向に押されて圧縮コイルばね78bが縮み、ボール77bが床側係止部71bのボール係止穴73bから外れて、FIXドア下部係止ユニット12bの係止が解除される。
【0080】
図17(a)においてFIXドア3bの室外側の下部にはストッパ板79bが取り付けられている。床側係止部71bの本体72bに形成されたストッパ部74bと、ストッパ板79bとは接触もしくは近接状態にあり、FIXドア3bが室内方向に押されたとき、ストッパ部74bがFIXドア3bの下部に取り付けられたストッパ板79bの動きを規制して、係止状態を維持する。従ってFIXドア3bが室内方向に風圧を受けてもFIXドア3bの傾きや変形は抑制される。またFIXドア3bの下部に取り付けられたストッパ板79bは、FIXドア3bを室外方向に回動させる際に、室外の床面をクリーニングするクリーナ部としても機能する。
【0081】
(第4の実施形態)
実施形態4の自動ドアは実施形態1~3の自動ドアと同様に通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時にはスライドドアがFIXドアに沿って走行し、全開放動作時にはFIXドアとスライドドアが室外方向に回動される全開放(フルオープン)型の自動ドアである。しかしスライドドアの位置に係らず全開放動作を行なうことができる実施形態1~3の自動ドアに対し、実施形態4の自動ドアはスライドドアを通常開閉動作時の開完了位置より更に開方向に移動させてスライドドアとFIXドアのロック機構を解除して初めて全開放動作が可能となる点で異なる。しかし自動ドアの仕組みは違っても、通常開閉動作時のFIXドア下部の振動と風圧による変形という課題は共通であり、通常開閉時の実施形態1~3の自動ドアと同様に、通常開閉時にFIXドアの下部の回動時の回転中心から離間した箇所を床に係止するFIXドア下部係止ユニットを配設するにより、実施形態1~3の自動ドアと同様の効果を得ることができる。そこでここでは実施形態4の自動ドアの機構を中心に簡単に説明し、実施形態1と構成が同じ部分については説明を省略する。
【0082】
図18は実施形態4の自動ドアの全閉状態の正面図とJ-J線断面図を示し、正面図の手前側が室外、奥側が室内側である。左右両縦枠1、2の間でFIXドア3a、3bに沿って走行するスライドドア4a、4bが通常開閉動作時の開度以上に開くと、FIXドアロック機構85a、85bとスライドドアロック機構86a、86bが解除される。そしてスライドドア4a、4bを人が室外方向に押し出すと、スライドドア4a、4bはスライドドア上部ピボット軸83a、83bとスライドドア下部ピボット軸84a、84bを支点に、またFIXドア3a、3bはFIXドア上部ピボット軸81a、81bとFIXドア下部ピボット軸82a、82bを支点に室外方向に回動(スイング)する。
【0083】
またFIXドア3a、3bの下部には、回動時の支点(回転中心)となるFIXドア下部ピボット軸82a、82bから離間した箇所に、FIXドア下部係止ユニット87a、87bを配設している。FIXドア下部係止ユニット87a、87bは実施形態1や実施形態3の自動ドアと同じものが利用可能であり、それによりFIXドア3a、3bの下部の振動を防止することができる。また実施形態1や実施形態3と同様にFIXドア下部係止ユニット87a、87bがFIXドア3a、3bの下部の室内方向への移動を規制するように構成すれば、風圧によるFIXドア3a、3bの傾きや変形を防止することができる。さらに実施形態2の自動ドアと同様に、FIXドア3a、3bの室外側の下部に、FIXドア3a、3bの下端部より床面に向けて突出するクリーナ部を設けてもよい。そうすればFIXドア下部係止ユニット87a、87bに異物が入ることによる不具合を防止することができて信頼性が向上する他、クリーナ部をFIXドア3a、3bの略全幅に取り付ければ更にすきま風を防止することなども可能となる。
【0084】
以上のように本願発明は通常のスライド開閉動作と回動(スイング)による全開放動作が可能な全開放型自動ドアに、方式によらず幅広く適用が可能である。また実施形態1~4の自動ドアは全てスライドドア4a、4bとFIXドア3a、3bを左右に配置した両引きタイプとして説明したが、片引きタイプにも同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1,2:縦枠
3a,3b:FIXドア
4a,4b:スライドドア
5:無目
6:固定無目
7,7a,7b:可動無目
8a,8b:上部ピボット軸
9a,9b:下部ピボット軸
10a,10b:ロック機構
11a,11b:起動センサ
12a,12b:FIXドア下部係止ユニット
13a,13b:スライドドア位置決め部
14a,14b:上部ピボット軸受
15a,15b:回動角度設定部
21:駆動装置
22:エンジンセット
23:コントローラ
24:上部動力伝達機構
25:上部駆動プーリ
26a,26b:ガイドプーリ
27a,27b:上部従動プーリ
28:上部ベルト
29a,29b:下部動力伝達機構
30a,30b:下部駆動プーリ
31a,31b:下部従動プーリ
32a,32b:下部ベルト
33a,33b:台板
34a,34b:レール
35a,35b:ハンガー
36a,36b:戸車
37a,37b:ベルト掴み
41a,41b:床側係止部
42a,42b:本体
43a,43b:吸着板
44a,44b:FIXドア側係止部
45a,45b:磁石
46a,46b:ハウジング
47a,47b:フランジ
51a,51b:長溝
52a,52b:ガイド
53a,53b:取付け板
54a,54b:位置調整板
61a,61b:クリーナ部
71a,71b:床側係止部
72a,72b:本体
73a,73b:ボール係止穴
74a,74b:ストッパ部
75a,75b:FIXドア側係止部
76a,76b:本体
77a,77b:ボール
78a,78b:圧縮コイルばね
79a,79b:ストッパ板
81a,81b:FIXドア上部ピボット軸
82a,82b:FIXドア下部ピボット軸
83a,83b:スライドドア上部ピボット軸
84a,84b:スライドドア下部ピボット軸
85a,85b:FIXドアロック機構
86a,86b:スライドドアロック機構
87a,87b:FIXドア下部係止ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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