(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/145 C
(21)【出願番号】P 2018038892
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】下村 輝
(72)【発明者】
【氏名】川内 治
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245738(JP,A)
【文献】特開平10-209804(JP,A)
【文献】特開2007-202087(JP,A)
【文献】特開2006-128927(JP,A)
【文献】特開2005-295203(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131170(WO,A1)
【文献】特開平11-234085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を備える一対の櫛型電極と、
前記一対の櫛型電極の外側に設けられ、前記複数の電極指の膜厚より大きい膜厚と前記複数の電極指の平均ピッチより小さい平均ピッチとを有する複数のグレーティング電極を備える反射器と、
を備え、
前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の他方の櫛型電極とが前記複数の電極指の配列方向から見て重なる交叉領域の少なくとも一部において、前記一方の櫛型電極の電極指と前記他方の櫛型電極の電極指とが1本ごとに交互に設けられており、
前記複数のグレーティング電極の膜厚は前記複数の電極指の膜厚の1.1倍以上かつ3.0倍以下であり、前記複数のグレーティング電極の平均ピッチは前記複数の電極指の平均ピッチの0.95倍以下かつ0.8倍以上であり、
前記複数のグレーティング電極の密度は前記複数の電極指の密度以上である弾性波共振器。
【請求項2】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を備える一対の櫛型電極と、
前記一対の櫛型電極の外側に設けられ、前記複数の電極指の密度と膜厚との積より大きい密度と膜厚との積と前記複数の電極指の平均ピッチより小さい平均ピッチとを有する複数のグレーティング電極を備える反射器と、
を備え、
前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の他方の櫛型電極とが前記複数の電極指の配列方向から見て重なる交叉領域の少なくとも一部において、前記一方の櫛型電極の電極指と前記他方の櫛型電極の電極指とが1本ごとに交互に設けられており、
前記複数のグレーティング電極の密度と膜厚との積は前記複数の電極指の密度と膜厚との積の1.1倍以上かつ3.0倍以下であり、前記複数のグレーティング電極の平均ピッチは前記複数の電極指の平均ピッチの0.95倍以下かつ0.8倍以上である弾性波共振器。
【請求項3】
前記複数の電極指および前記複数のグレーティング電極と前記圧電基板との間に設けられ、チタン膜またはクロム膜である密着膜を備える請求項1
または2に記載の弾性波共振器。
【請求項4】
前記圧電基板はタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である請求項1から
3のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の弾性波共振器を含むフィルタ。
【請求項6】
請求項
5に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば一対の櫛型電極と反射器を有する弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波共振器等の弾性波共振器は、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、櫛型電極の両側に設けられた反射器を備えている。反射器は、一対の櫛型電極が励振した弾性波を反射する。これにより、弾性波が一対の櫛型電極内に閉じ込められる。
【0003】
反射器をIDTより厚くすること、反射器の密度をIDTの密度より大きくすることが知られている(例えば特許文献1)。反射器内の膜厚をIDTから離れるにしたがい厚くすることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-209804号公報
【文献】特開2002-290194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、反射器をIDTより厚くする、または反射器の密度をIDTの密度より大きくすると、IDTが励振する弾性波の周波数と反射器のストップバンドとの差が大きくなることがある。このため、弾性波共振器の損失が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、弾性波共振器の特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を備える一対の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の外側に設けられ、前記複数の電極指の膜厚より大きい膜厚と前記複数の電極指の平均ピッチより小さい平均ピッチとを有する複数のグレーティング電極を備える反射器と、を備え、前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の他方の櫛型電極とが前記複数の電極指の配列方向から見て重なる交叉領域の少なくとも一部において、前記一方の櫛型電極の電極指と前記他方の櫛型電極の電極指とが1本ごとに交互に設けられており、前記複数のグレーティング電極の膜厚は前記複数の電極指の膜厚の1.1倍以上かつ3.0倍以下であり、前記複数のグレーティング電極の平均ピッチは前記複数の電極指の平均ピッチの0.95倍以下かつ0.8倍以上であり、前記複数のグレーティング電極の密度は前記複数の電極指の密度以上である弾性波共振器である。
【0010】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を備える一対の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の外側に設けられ、前記複数の電極指の密度と膜厚との積より大きい密度と膜厚との積と前記複数の電極指の平均ピッチより小さい平均ピッチとを有する複数のグレーティング電極を備える反射器と、を備え、前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極の他方の櫛型電極とが前記複数の電極指の配列方向から見て重なる交叉領域の少なくとも一部において、前記一方の櫛型電極の電極指と前記他方の櫛型電極の電極指とが1本ごとに交互に設けられており、前記複数のグレーティング電極の密度と膜厚との積は前記複数の電極指の密度と膜厚との積の1.1倍以上かつ3.0倍以下であり、前記複数のグレーティング電極の平均ピッチは前記複数の電極指の平均ピッチの0.95倍以下かつ0.8倍以上である弾性波共振器である。
【0012】
上記構成において、前記複数の電極指および前記複数のグレーティング電極と前記圧電基板との間に設けられ、チタン膜またはクロム膜である密着膜を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記圧電基板はタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である構成とすることができる。
【0014】
本発明は、上記弾性波共振器を含むフィルタである。
【0015】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性波共振器の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2は、シミュレーション条件を示す図である。
【
図3】
図3は、サンプルAからEにおけるIDTの通過特性を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、サンプルAおよびDの反射器の反射量を示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)の拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、サンプルBおよびEの反射器の反射量を示す図であり、
図5(b)は、
図5(a)の拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、サンプルCおよびDの反射器の反射量を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)の拡大図である。
【
図7】
図7(a)は、サンプルCおよびEの反射器の反射量を示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)の拡大図である。
【
図8】
図8(a)から
図8(c)は、それぞれ実施例1、その変形例1および2に係る弾性波共振器の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、
図9(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
弾性波デバイスとして弾性波共振器について説明する。
図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。電極指14の配列方向をX方向、電極指14の延伸方向をY方向とする。X方向およびY方向は、圧電基板10の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。
【0020】
図1(a)および
図1(b)に示すように、圧電基板10上にIDT22および反射器20が形成されている。IDT22は、圧電基板10上に設けられた膜厚T1の金属膜12aにより形成される。反射器20は、圧電基板10に形成された膜厚T2の金属膜12bにより形成される。反射器20は、IDT22のX方向の外側に配置されている。
【0021】
IDT22は、対向する一対の櫛型電極16を備える。櫛型電極16は、複数の電極指14と、複数の電極指14が接続されたバスバー15と、を備える。一対の櫛型電極16の電極指14が交差する領域が交叉領域24である。交叉領域24の長さが開口長である。一対の櫛型電極16は、交叉領域24の少なくとも一部において電極指14がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交叉領域24において複数の電極指14が励振する弾性波は、主にX列方向に伝搬する。同じ櫛型電極16の電極指14のピッチL1がほぼ弾性波の波長λとなる。ピッチL1は電極指14の2本分のピッチとなる。
【0022】
反射器20は、複数のグレーティング電極18と複数のグレーティング電極18が接続されたバスバー19とを備える。グレーティング電極18はX方向に配列し、Y方向に延伸する。グレーティング電極18の2本分のピッチはL2である。反射器20は、IDT22の電極指14が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交叉領域24内に閉じ込められる。
【0023】
圧電基板10としては、例えば、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬タンタル酸ニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10は支持基板上に直接または中間層を介し接合されていてもよい。支持基板は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、水晶基板またはシリコン基板である。金属膜12aおよび12bは、例えばAl(アルミニウム)またはCu(銅)を主成分とする膜であり、例えばAl膜またはCu膜である。電極指14およびグレーティング電極18と圧電基板10との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指14およびグレーティング電極18より薄い。電極指14およびグレーティング電極18を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償膜として機能する。
【0024】
膜厚T1およびT2は例えば50nmから500nmである。電極指14およびグレーティング電極18のX方向の幅は例えば200nmから1500nmである。電極指14のピッチL1は例えば500nmから2500nmである。IDT22の静電容量値は例えば0.1pFから10pFである。
【0025】
[シミュレーション]
5つのサンプルAからEについてシミュレーションを行った。サンプルAからCは比較例に対応し、サンプルDおよびEは実施例1に対応する。
図2は、シミュレーション条件を示す図である。サンプルAからEとも圧電基板10として42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板を用い、金属膜12aおよび12bとしてアルミニウム膜を用いた。開口長を15λとした。IDT22において、対数を100、ピッチL1を2μm、デュティ比を80%、金属膜12aの膜厚T1を200nmとした。反射器20において、対数を15、デュティ比を80%とした。
【0026】
サンプルAおよびBでは、膜厚T2を膜厚T1と同じ200nmとし、ピッチL2をそれぞれ2.04μmおよび1.97μmとした。サンプルCでは、ピッチL2をL1と同じ2μmとし、膜厚T2を350nmとした。サンプルDおよびEでは、膜厚T2を350nmとし、ピッチL2をそれぞれ1.90μmおよび1.82μmとした。サンプルAからEの反射器20に対するIDT22のピッチ比は、それぞれ1.02、0.985、1.00、0.95および0.91となる。
【0027】
図3は、サンプルAからEにおけるIDTの通過特性を示す図である。
図3に示すように、共振周波数frおよび反共振周波数faは、それぞれ約1923.5MHzおよび約1987MHzである。反共振周波数faは共振周波数frより高周波数側に位置する。フィルタ等には、共振周波数frと反共振周波数faとの間付近の周波数を用いる。
【0028】
図4(a)は、サンプルAおよびDの反射器の反射量を示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)の拡大図である。
図4(a)および
図4(b)に示すように、サンプルAでは、反射量が最も大きい周波数が共振周波数frにほぼ一致する。
【0029】
図5(a)は、サンプルBおよびEの反射器の反射量を示す図であり、
図5(b)は、
図5(a)の拡大図である。
図5(a)および
図5(b)に示すように、サンプルBでは、反射量が最も大きい周波数が反共振周波数faにほぼ一致する。
【0030】
反射器20の反射が大きい周波数帯をストップバンドという。ストップバンドの周波数は、IDT22の共振周波数frおよび反共振周波数faの近傍であることが好ましい。これにより、反射器20は、フィルタ等に用いられる周波数付近の弾性波を効率的に反射する。よって、弾性波をIDT22により閉じ込めることができる。これにより、弾性波共振器の共振周波数frおよび反共振周波数fa付近のQ値を向上させることができる。
【0031】
サンプルAおよびBでは、反射器20のグレーティング電極18のピッチL2を調整することで、反射器20のストップバンドの中心の周波数を共振周波数frおよび反共振周波数fa付近とすることができる。しかしながら、反射器20の反射率が小さく、反射量が小さい。反射器20の反射率を向上させるためには、金属膜12bの膜厚T2を大きくすることが考えられる。しかし、IDT22の金属膜12aの膜厚T1は、IDT22における損失等の特性が最適化されるように設定される。このため、膜厚T1を膜厚T2と合わせて大きくすることが難しい。そこで、サンプルCでは、膜厚T2を膜厚T1より大きくしている。
【0032】
図6(a)は、サンプルCおよびDの反射器の反射量を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)の拡大図である。
図7(a)は、サンプルCおよびEの反射器の反射量を示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)の拡大図である。
図6(a)から
図7(b)に示すように、サンプルCでは、膜厚T2を大きくすることで、サンプルAおよびBに比べ反射器20の反射量が大きくなる。しかしながら、ストップバンドの中心周波数が共振周波数frおよび反共振周波数faより低周波数にシフトしてしまう。このため、反射器20は、共振周波数frおよび反共振周波数fa付近の弾性波を効率的に反射することができない。
【0033】
サンプルDおよびEでは、膜厚T2を膜厚T1より大きくし、かつピッチL2をピッチL1より小さくする。これにより、
図4(a)から
図5(b)のように、サンプルDおよびEでは、サンプルAおよびBに比べ反射器20の反射量を大きくできる。
図6(a)から
図7(b)のように、サンプルDおよびEでは、サンプルCに比べ反射器20のストップバンドを共振周波数frおよび反共振周波数fa付近とすることができる。よって、IDT22が励振した共振周波数frおよび反共振周波数fa付近の弾性波を効率的にIDT22内に閉じ込めることができる。これにより、Q値等の弾性波共振器の特性を向上できる。
【0034】
反射器20のストップバンドの中心周波数は、反射器20のグレーティング電極18の平均ピッチL2にほぼ反比例する。よって、このシミュレーションの例では、ピッチ比が0.95と0.91との間では、ストップバンドの中心周波数は共振周波数frと反共振周波数faの間に位置する。
【0035】
[実施例1およびその変形例]
図8(a)から
図8(c)は、それぞれ実施例1、その変形例1および2に係る弾性波共振器の断面図である。
図8(a)のように、実施例1では、反射器20の複数のグレーティング電極18の膜厚T2は、IDT22(一対の櫛型電極16)の複数の電極指14の膜厚T1より大きく、グレーティング電極18の平均ピッチL2/2は電極指14の平均ピッチL1/2より小さい。これにより、サンプルDおよびEのように、弾性波共振器の特性を向上できる。
【0036】
複数のグレーティング電極18の密度は複数の電極指14の密度以上であることが好ましい。これにより、反射器20の反射率を大きくできる。グレーティング電極18の材料と電極指14の材料は製造誤差程度に略同じであり、グレーティング電極18の密度と電極指14の密度は製造誤差程度に略同じであることが好ましい。これにより、弾性波共振器に用いる材料の数を少なくできる。
【0037】
図8(b)に示すように、実施例1の変形例1では、複数のグレーティング電極18の密度は、複数の電極指14の密度より大きく、グレーティング電極18の平均ピッチL2/2は電極指14の平均ピッチL1/2より小さい。実施例1の変形例1のように、グレーティング電極18の金属膜12bの密度を電極指14の金属膜12aより大きくすることで、反射器20の反射量を大きくしてもよい。この場合もグレーティング電極18の平均ピッチL2/2を電極指14の平均ピッチL1/2より小さくすることで、ストップバンドの中心を共振周波数frおよび反共振周波数fa付近とすることができる。グレーティング電極18の膜厚T2と電極指14の膜厚T1は製造誤差程度に略同じであることが好ましい。このように、グレーティング電極18の密度を大きくすることで、反射器20は薄くても反射器20の反射量を大きくできる。よって、製造工程における反射器20の加工が容易となる。
【0038】
金属膜12aは例えばAlを主成分とする膜を用いる。金属膜12bは、例えばCu、W(タングルテン)、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ir(イリジウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)およびTe(テルル)の少なくとも1つを主成分とする。
【0039】
図8(c)に示すように、実施例1の変形例2では、複数のグレーティング電極18の密度は、複数の電極指14の密度より大きく、複数のグレーティング電極18の膜厚T2は複数の電極指14の膜厚T1以上である。これにより、反射器20の反射率をより大きくできる。
【0040】
実施例1およびその変形例のように、反射器20の反射量を大きくするためには、グレーティング電極18の密度と膜厚の積を電極指14の密度と膜厚の積より大きくすればよい。
【0041】
グレーティング電極18の膜厚T2と電極指14の膜厚T1との関係、およびグレーティング電極18の密度と電極指14の密度との関係は、IDT22における損失等と反射器20の反射率を考慮して決められる。例えば、グレーティング電極18の膜厚T2は電極指14の膜厚T1の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい。膜厚T2はT1の3倍以下が好ましく2倍以下がより好ましい。また、例えばグレーティング電極18の密度は電極指14の密度の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい、3倍以下が好ましく2倍以下がより好ましい。さらに、例えばグレーティング電極18の膜厚T2と密度との積は電極指14の膜厚T1と密度との積の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい、3倍以下が好ましく2倍以下がより好ましい。
【0042】
反射器20のストップバンドを共振周波数frおよび反共振周波数faに合わせるため、複数のグレーティング電極18の平均ピッチL2は複数の電極指14の平均ピッチL1の0.98倍以下が好ましく、0.95倍以下がより好ましく、0.92倍以下がさらに好ましい。L1はL2の0.8倍以上が好ましく、0.85倍以上がより好ましく、0.91倍以上がさらに好ましい。
【0043】
電極指14の平均ピッチは、複数の電極指14のX方向の長さを電極指14の本数(例えば対数)で除することで求めることができる。グレーティング電極18の平均ピッチは複数のグレーティング電極18のX方向の長さをグレーティング電極18の本数で除する(例えば本数の1/2で除する)ことで求めることができる。
【0044】
金属膜12aおよび/または12bが複数の金属膜の積層膜の場合、電極指14および/またはグレーティング電極18の膜厚および密度は、積層された複数の金属膜のうち最も厚い金属膜の膜厚および密度で比較してもよい。
【実施例2】
【0045】
図9(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。
図9(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1およびその変形例の圧電薄膜共振器を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。
【0046】
[実施例2の変形例1]
図9(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
図9(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0047】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 圧電基板
12a、12b 金属膜
14 電極指
16 櫛型電極
18 グレーティング電極
20 反射器
22 IDT
40 送信フィルタ
42 受信フィルタ