(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料ガス品質の判定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04089 20160101AFI20230920BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230920BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230920BHJP
【FI】
H01M8/04089
H01M8/04 Z
H01M8/0438
H01M8/0444
H01M8/04537
H01M8/10 101
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2018164369
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 良輔
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】長馬 望
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102288(JP,A)
【文献】特開2003-132929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料ガスタンクと、
酸化ガス及び前記燃料ガスタンクからの燃料ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、
前記燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサと、
前記燃料電池システムの位置を検出する位置検出部と、
前記燃料ガスタンクへの前記燃料ガスの充填
の有無を判定し、充填有りと判定すると、前記電流センサによって検出された電流値と前記電圧センサによって検出された電圧値とを用いて前記燃料電池の出力が低下したと判定した場合には、水素濃度によって規定される前記燃料ガスの品質が予め定めた基準品質に満たしていないと判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記位置検出部から前記燃料電池システムに対して前記充填が行われた充填位置を取得し、前記燃料ガスの品質が前記基準品質に満たしていないと判定すると、前記判定が行われる直前に取得された前記充填位置を記憶する、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記充填が行われる前の前記燃料電池システムの通常運転時の前記電流値及び前記電圧値と、前記充填が行われた後の前記燃料電池システムの通常運転時の前記電流値及び前記電圧値とを比較することによって、前記燃料電池の前記出力が低下したか否かを判定する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、更に、
前記燃料ガスタンクの圧力を測定する圧力センサを備え、
前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力値を用いて前記充填が行われたか否かを判定する、
燃料電池システム。
【請求項4】
燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスタンクに充填された燃料ガスの品質の判定方法であって、
前記充填
の有無を判定する工程と、
前記燃料電池の出力電流の電流値及び出力電圧の電圧値を用いて前記燃料電池の出力が低下したか否かを判定する工程と、
充填有りと判定し、前記燃料電池の出力が低下したと判定した場合には、水素濃度によって規定される前記燃料ガスの品質が予め定めた基準品質に満たしていないと判定する工程と、
位置検出部から前記燃料電池システムに対して前記充填が行われた充填位置を取得し、前記燃料ガスの品質が前記基準品質に満たしていないと判定すると、前記判定が行われる直前に取得された前記充填位置を記憶する工程と、
を備える燃料ガス品質の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び燃料ガス品質の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基準燃料電池と検査燃料電池とを用いて、燃料電池に供給される水素(燃料ガス)の品質を監視する燃料ガス品質監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、専用の燃料ガス品質監視装置を設けると、燃料電池の製造コストの低減や小型化を実現することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料ガスタンクと、酸化ガス及び前記燃料ガスタンクからの燃料ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサと、前記燃料ガスタンクへの前記燃料ガスの充填が行われた後、前記電流センサによって検出された電流値と前記電圧センサによって検出された電圧値とを用いて前記燃料電池の出力が低下したと判定した場合には、前記燃料ガスの品質が予め定めた基準品質に満たしていないと判定する制御部と、を備える。
この形態の燃料電池システムによれば、燃料ガスタンクへの燃料ガスの充填が行われた後、燃料電池の出力が低下した場合には、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないと判定されるので、別途に燃料ガス品質監視装置を設けることなく、充填された燃料ガスの品質を判定できる。
(2)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記充填が行われる前の前記燃料電池システムの通常運転時の前記電流値及び前記電圧値と、前記充填が行われた後の前記燃料電池システムの通常運転時の前記電流値及び前記電圧値とを比較することによって、前記燃料電池の前記出力が低下したか否かを判定するようにしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、制御部は燃料ガスの充填前後の通常運転時の電流値及び電圧値を比較するので、燃料電池の出力が低下したか否かの判定をより正確に行うことができる。
(3)上記形態の燃料電池システムにおいて、更に、前記燃料電池システムの位置を検出する位置検出部を備える。前記制御部は、前記位置検出部から前記燃料電池システムに対して前記充填が行われた充填位置を取得し、前記燃料ガスの品質が前記基準品質に満たしていないと判定すると、前記判定が行われる直前に取得された前記充填位置を記憶するようにしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないと判定する直前に取得された充填位置が記憶されるので、燃料電池システムが再度に当該充填位置で燃料ガスの充填を受けることを抑制することができる。
(4)上記形態の燃料電池システムにおいて、更に、前記燃料ガスタンクの圧力を測定する圧力センサを備える。前記制御部は、前記圧力センサによって測定された圧力値を用いて前記充填が行われたか否かを判定するようにしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、燃料ガスタンクの圧力を用いて燃料ガスの充填が行われたか否かを判定できる。
【0007】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料ガス品質の判定方法、燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す説明図。
【
図2】第1実施形態における燃料ガス品質判定処理を例示するフローチャート。
【
図4】第2実施形態における燃料ガス品質判定処理を例示するフローチャート。
【
図5】燃料電池システムを搭載した車両の移動例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態における燃料電池システム100の概略構成を示す説明図である。燃料電池システム100は、例えば、動力源として車両に搭載される。燃料電池システム100は、燃料電池500と、燃料ガス供給系110と、位置検出部600と、制御部700とを備える。この他、燃料電池システム100は、図示しない冷却系や、酸化ガス供給系等を備え得る。
【0010】
燃料電池500は、図示しない複数の単セルが積層されることによって構成されている。燃料電池500は、例えば固体高分子形燃料電池である。この他、燃料電池500としては、固体酸化物形燃料電池を採用し得る。燃料電池500は、燃料ガス及び酸化ガスの供給を受けて、電気化学反応により発電する。燃料ガスは、例えば水素であり、酸化ガスは、例えば空気である。この他、燃料ガスとしては、メタンを採用し得る。この場合には、メタンを水素に改質する改質器を設ける必要がある。燃料電池500と図示しない負荷とを接続する電力回路(図示せず)には、電流センサ340と、電圧センサ350とが設置されている。電流センサ340は、燃料電池500の出力電流を検出する。電圧センサ350は、燃料電池500の出力電圧を検出する。
【0011】
燃料ガス供給系110は、燃料ガス充填口150と、燃料ガス充填流路201と、燃料ガスタンク400と、燃料ガス供給流路202とを有する。燃料ガス充填流路201の一端には、燃料ガス充填口150が取り付けられており、他端は、燃料ガスタンク400の口金410と接続している。
【0012】
燃料ガス充填口150は、レセプタクル151と、第1逆止弁152とを有する。レセプタクル151は、充填のための燃料ガスの導入口である。レセプタクル151には、レセプタクル151を覆う蓋(図示せず)が設けられている。第1逆止弁152は、燃料ガス充填流路201内の燃料ガスが外部に漏洩することを防止する弁である。
【0013】
燃料ガスタンク400は、燃料ガスを貯蔵する。燃料ガスタンク400には、温度センサ330が設けられている。温度センサ330は、例えば燃料ガスタンク400の口金410に設けられたバルブアセンブリ(図示せず)に設けられている。温度センサ330は、燃料ガスタンク400の内部の温度を測定する。温度センサ330は、省略されてもよい。
【0014】
燃料ガス充填流路201には、燃料ガス充填口150側から、第1圧力センサ310と、第2逆止弁210とが設けられている。第1圧力センサ310は、燃料ガス充填流路201内の燃料ガスの圧力を測定する。第2逆止弁210は、燃料ガスタンク400内の燃料ガスが外部に漏洩することを防止する弁である。
【0015】
燃料ガス供給流路202の一端は、燃料ガスタンク400の口金410近傍の燃料ガス充填流路201に接続されており、他端は、燃料電池500に接続されている。燃料ガス供給流路202には、燃料ガスタンク400側から、シャットバルブ220と、第2圧力センサ320と、インジェクタ230とが設けられている。シャットバルブ220は、電磁開閉弁であり、制御部700からの制御信号に応じて開閉を切り替える。第2圧力センサ320は、燃料ガス供給流路202内の燃料ガスの圧力を測定する。インジェクタ230は、制御部700からの制御信号に応じて燃料ガスを燃料電池500に向けて吐出する。
【0016】
燃料ガスタンク400へ燃料ガスを充填するとき、燃料電池システム100は停止する。制御部700からの制御信号に応じて、シャットバルブ220は閉状態となる。外部の燃料ガス供給施設から供給された燃料ガスは、燃料ガス充填口150を通じて、燃料ガス充填流路201を介して燃料ガスタンク400に充填される。このとき、第1圧力センサ310の測定値は、燃料ガスタンク400内の燃料ガスの圧力値を示す。一方、燃料電池システム100の運転時には、制御部700からの制御信号に応じて、シャットバルブ220は開状態となる。燃料ガスタンク400の内部の燃料ガスは、燃料ガス供給流路202を介して燃料電池500に供給される。このとき、第2圧力センサ320の測定値は、燃料ガスタンク400内の燃料ガスの圧力値を示す。
【0017】
位置検出部600は、燃料電池システム100の位置を検出する。位置検出部600としては、例えば航法衛星システム(Navigation Satellite System(s):NSS)が用いられる。位置検出部600は、例えば、複数の衛星から信号を受信することにより、燃料電池システム100の位置、例えば緯度及び経度を検出する。
【0018】
制御部700は、例えばCPUとRAMと不揮発性メモリとを備えるマイクロコンピュータによって構成されており、具体的にはECU(Electronic Control Unit)である。制御部700は、利用者の要求や、燃料電池システム100内の各センサの測定値等に応じて、燃料電池システム100内の各部の動作を制御する。制御部700は、燃料ガスタンク400に充填された燃料ガスの品質が予め定めた基準品質に満たしているか否かを判定可能である。この詳細は後述する。なお、「予め定めた基準品質」とは、燃料電池500が所望の出力で発電可能な燃料ガス品質であり、例えば水素濃度によって規定される。また、制御部700は、位置検出部600から燃料電池システム100の位置を取得する。なお、制御部700の不揮発性メモリ(図示せず)には、予め燃料電池システム100に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給施設、例えば水素ステーションの位置情報が記憶されている。制御部700は、燃料ガス供給施設の位置情報を記憶せず、他の構成からその位置情報を取得してもよい。
【0019】
・第1実施形態:
図2は、第1実施形態における燃料ガス品質判定の判定処理を例示するフローチャートである。この判定処理は、燃料電池システム100が起動すると実行される。また、燃料電池システム100が停止しても、制御部700は動作している。
【0020】
ステップS110において、制御部700は、燃料ガスタンク400への燃料ガスの充填が行われたか否かを判定する。具体的には、制御部700は、燃料電池システム100の停止前と起動後における燃料ガスタンク400内の圧力値を比較することによって、燃料ガスの充填が行われたか否かを判定する。燃料ガスタンク400に燃料ガスが充填されると、燃料ガスタンク400内の圧力が上昇する。制御部700は、燃料電池システム100の起動後の燃料ガスタンク400内の圧力値が停止前の燃料ガスタンク400内の圧力値よりも大きい場合には、燃料ガスの充填が行われたと判定する。一方、燃料電池システム100の起動後の燃料ガスタンク400内の圧力値が停止前の燃料ガスタンク400内の圧力値以下の場合には、燃料ガスの充填が行われていないと判定する。なお、制御部700は、燃料ガスタンク400のSOCが上昇したか否かによって燃料ガスの充填の有無を判定してもよい。「燃料ガスタンク400のSOC」とは、燃料ガスタンク400の満充填時を100%、空の時を0%としたときの燃料ガスタンク400の充填率を示す指標である。燃料ガスタンク400のSOCは、燃料ガスタンク400内の圧力値と、燃料ガスタンク400の体積と、温度センサ330から取得される燃料ガスタンク400内の温度とによって算出することができる。この他、制御部700は、位置検出部600から取得される車両10の位置と、記憶された燃料ガス供給施設の位置情報とを照合することによって、燃料ガスの充填の有無を判定してもよい。例えば、燃料ガス供給施設が配置された位置で燃料ガス充填口150(
図1)の蓋の開閉があった場合に、燃料ガスの充填が行われたと判定してもよい。
【0021】
ステップS110において、制御部700は、燃料ガスタンク400に燃料ガスの充填があったと判定した場合(ステップS110、Yes)には、ステップS120に移行する。一方、ステップS110において、制御部700は、燃料ガスタンク400に燃料ガスの充填がなかったと判定した場合(ステップS110、No)には、判定処理を終了する。なお、制御部700は、燃料ガスの充填があったと判定すると、燃料電池システム100に対して燃料ガスの充填が行われた充填位置を位置検出部600から取得する。
【0022】
ステップS120において、制御部700は、燃料ガスの充填後に燃料電池500の出力が低下したか否かを判定する。具体的には、制御部700は、燃料ガスの充填前後の、燃料電池システム100の通常運転時における燃料電池500の電流と電圧の情報、すなわち電流値と電圧値とを用いて、燃料電池500の出力が低下したか否かを判定する。この詳細は、
図3を用いて説明する。なお、「充填後」とは、燃料電池システム100が通常運転に移行した時期を意味し、燃料ガス品質判定を行うために十分な発電があった時期である。「通常運転」とは、燃料電池500が定常で発電している運転状態を指し、暖機運転や間欠運転、酸化ガス制限発電運転等を除いた運転状態のことである。
【0023】
図3は、燃料電池500の電流-電圧特性線G0,G1を例示する図である。
図3の例では、電流-電圧特性線G0は、燃料ガス充填前の通常運転時の燃料電池500の電流-電圧特性線であり、電流-電圧特性線G1は、燃料ガス充填後の通常運転時の燃料電池500の電流-電圧特性線である。まず、制御部700は、燃料ガスの充填前後の、燃料電池システム100の通常運転時において電流センサ340(
図1)によって検出された電流値と電圧センサ350(
図1)によって検出された電圧値とを取得する。例えば、制御部700は、一定の電流値毎の電圧値を複数回取得し、それらの電圧値の平均値又は最大値を算出して記憶する。
図3の例では、制御部700は、電流-電圧特性線G0,G1上の一定の電流値毎の電圧値を記憶する。次に、制御部700は、予め定めた電流値における電圧値の差が予め定めた基準電圧値以上であるか否か、又は、複数の電流値における電圧値の差の合計が予め定めた他の基準電圧以上であるか否かを判定する。
図3の例では、制御部700は、予め定めた電流値I1における電圧値の差ΔVが予め定めた基準電圧値以上であるか否かを判定する。制御部700は、電圧値の差ΔV基準電圧値以上である場合には、燃料電池500の出力が低下したと判定し、電圧値の差ΔV基準電圧値未満である場合には、燃料電池500の出力が低下していないと判定する。
【0024】
なお、制御部700が充填前後の通常運転時でない運転状態、例えば間欠運転時の予め定めた電流値における電圧値を比較すると、燃料電池500の出力が低下した場合の電圧値の差異が顕著に現れないため、燃料電池500の出力が低下したか否かを判定することが難しい。本実施形態では、制御部700は、充填前後の通常運転時の予め定めた電流値における電圧値を比較するので、燃料電池500の出力が低下したか否かの判定をより正確に行うことができる。また、制御部700は、充填前後の通常運転時の予め定めた電圧値における電流値を比較することによって、燃料電池500の出力が低下したか否かを判定してもよい。なお、充填前後の通常運転時の電流値及び電圧値を比較する代わりに、充填後の通常運転時の電流値及び電圧値を、出力低下か否かを判定するための予め定めた基準電流値及び基準電圧値と比較することによって、燃料電池500の出力が低下したか否かを判定してもよい。但し、通常運転時でない運転状態の時の電流値及び電圧値を用いて燃料電池500の出力が低下したか否かを判定してもよい。こうすれば、燃料電池システム100が通常運転に移行する前に燃料電池500の出力低下か否かを判定できるので、当該判定をより早い段階で実行することができる。
【0025】
図2に戻り、ステップS120において、制御部700は、充填後に燃料電池500の出力が低下したと判定した場合(ステップS120、Yes)には、ステップS130に移行して、燃料ガスタンク400に充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないと判定する。燃料ガスの充填が行われた後に発生した燃料電池500の出力の低下は、充填された燃料ガスの品質不良に起因する可能性が高いので、制御部700は、ステップS130において燃料ガス品質不良と判定をする。こうすれば、例えば燃料電池出力低下といった理由で燃料電池システム100を修理する場合に、システム部品の故障が原因か、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないことが原因かを特定することができる。なお、充填した燃料ガスの量や、燃料電池500の出力低下を検出したタイミング等によって、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしているか否かをより正確に判定することができる。ステップS140において、制御部700は、燃料ガス品質不良判定が行われる直前に位置検出部600から取得された充填位置を記憶する。こうすれば、燃料電池システム100が再度に当該充填位置で燃料ガスの充填を受けることを抑制することができる。制御部700は、ステップS140において燃料電池500の出力電流や出力電圧、燃料電池システム100の運転状態等を記憶してもよい。制御部700は、ステップS140を実行した後、判定処理を終了する。なお、ステップS140は、省略されてもよい。
【0026】
一方、ステップS120において、制御部700は、燃料電池500の出力が低下していないと判定した場合(ステップS120、No)には、判定処理を終了する。この場合は、燃料ガスの充填が行われた後に燃料電池500の出力が低下していないので、燃料ガスタンク400に充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていると言える。
【0027】
以上説明したように、第1実施形態では、燃料ガスタンク400への燃料ガスの充填が行われた後、燃料電池500の出力が低下した場合には、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないと判定されるので、別途に燃料ガス品質監視装置を設けることなく、充填された燃料ガスの品質を判定できる。加えて、燃料電池出力低下といった理由で燃料電池システムを修理する場合は、システム部品の故障が原因か、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないことが原因かを特定することができる。
【0028】
・第2実施形態:
図4は、第2実施形態における燃料ガス品質判定処理のフローチャートである。説明の便宜上、
図5を参照しながら
図4を説明する。
図5は、燃料電池システム100(
図1)を搭載した車両10の移動例を示す図である。
図5の例では、車両10は、位置Aの出発地である家屋20から、矢印AW1~AW2の方向に沿って移動する。移動の途中の位置Bには、燃料ガス供給施設30が配置されている。燃料ガス供給施設30には、ガス貯蔵装置31と、ガス供給配管32とを有する。ガス貯蔵装置31には、燃料ガスが貯蔵されている。車両10は、燃料ガス供給施設30から燃料ガスの充填を受ける。
【0029】
ステップS210において、制御部700は、通常運転時の燃料電池500の電流値と電圧値を取得して記憶する。この処理は、例えば車両10が矢印AW1に沿って位置Aから位置Bに移動する途中に実行される。ステップS215において、制御部700は、燃料電池システム100が停止する場合(ステップS215、Yes)には、ステップS220に移行し、燃料電池システム100が停止しない場合(ステップS215、No)には、ステップS210に戻る。ステップS220において、制御部700は、シャットバルブ220が閉じる直前の第2圧力センサ320の第1測定値P1を取得する。この処理は、例えば車両10が位置Bで停止し、燃料ガス供給施設30から燃料ガスの充填を受ける前に実行される。ステップS225において、制御部700は、燃料電池システム100が起動する場合(ステップS225、Yes)には、ステップS230に移行し、燃料電池システム100が起動しない場合(ステップS225、No)には、燃料電池システム100の起動を待ち、或いは、燃料ガス品質判定処理を終了する。ステップS230において、制御部700は、シャットバルブ220が開いた直後の第2圧力センサ320の第2測定値P2を取得する。この処理は、例えば車両10が位置Bで充填を終え、燃料電池システム100が起動した直後に実行される。
【0030】
ステップS235において、制御部700は、第2測定値P2とステップS220で取得した第1測定値P1とを比較する。制御部700は、第2測定値P2が第1測定値P1より大きい場合(ステップS235、Yes)には、燃料ガスの充填が行われたと判定し、ステップS240に移行する。一方、ステップS235において、制御部700は、第2測定値P2が第1測定値P1以下である場合(ステップS235、No)には、燃料ガスの充填が行われていないと判定し、ステップS210に戻る。
図5の例では、位置Bで燃料ガスの充填が行われて第2測定値P2が第1測定値P1より大きいので、制御部700は、ステップS240に移行し、充填が行われた充填位置、すなわち位置Bを位置検出部600から取得する。ステップS245において、制御部700は、通常運転時の燃料電池500の電流と電圧の情報を取得する。この処理は、例えば車両10が矢印AW2に沿って移動する途中に実行される。
【0031】
ステップS250において、制御部700は、充填前後、すなわちステップS210とステップS245のそれぞれで取得された燃料電池500の電流値と電圧値を用いて、予め定めた電流値I1(
図3)における電圧値の差ΔVが予め定めた基準電圧値以上であるか否かを判定する。制御部700は、電圧値の差ΔVが基準電圧以上であると判定した場合(ステップS250、Yes)には、ステップS255に移行し、燃料ガスタンク400に充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないと判定する。すなわち、位置Bの燃料ガス供給施設30の燃料ガスは品質不良である。このため、ステップS260において、制御部700は、燃料ガス品質不良判定が行われる直前に取得された充填位置である位置Bを記憶する。制御部700は、充填位置の位置Bを記憶すると、車両10が再度に位置Bにある燃料ガス供給施設30で燃料ガスの充填を受けることを避けるように、例えば利用者に警告メッセージを報知する。こうすれば、充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていないことによる燃料電池500の出力低下を抑制することができる。なお、制御部700は、ステップS260において、燃料電池500の電流値と電圧値や燃料電池システム100の運転状態を記憶する。一方、ステップS250において、制御部700は、電圧値の差ΔVが基準電圧よりも小さいと判定した場合(ステップS250、No)には、ステップS210に戻る。この場合は、燃料ガスの充填が行われた後に燃料電池500の出力が低下していないので、燃料ガスタンク400に充填された燃料ガスの品質が基準品質に満たしていると言える。
【0032】
以上説明したように、第2実施形態では、第1実施形態に加えて、制御部700は、燃料ガス品質不良判定が行われる直前に取得された充填位置Bを記憶するので、車両10が再度に位置Bにある燃料ガス供給施設30で燃料ガスの充填を受けることを抑制できる。また、制御部700は、充填前後の通常運転時の電流値及び電圧値を比較することによって燃料電池500の出力低下か否かを判定するので、当該判定をより正確に行うことができる。
【0033】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…車両、20…家屋、30…燃料ガス供給施設、31…ガス貯蔵装置、32…ガス供給配管、100…燃料電池システム、110…燃料ガス供給系、150…燃料ガス充填口、151…レセプタクル、152…第1逆止弁、201…燃料ガス充填流路、202…燃料ガス供給流路、210…第2逆止弁、220…シャットバルブ、230…インジェクタ、310…第1圧力センサ、320…第2圧力センサ、330…温度センサ、340…電流センサ、350…電圧センサ、400…燃料ガスタンク、410…口金、500…燃料電池、600…位置検出部、700…制御部