(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230920BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20230920BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20230920BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02H9/02 E
H02H9/04 B
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2019048149
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 志旭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 基二
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-004634(JP,A)
【文献】特開2008-283743(JP,A)
【文献】特開2005-012958(JP,A)
【文献】特開2008-206250(JP,A)
【文献】特開2010-110208(JP,A)
【文献】特開平07-169509(JP,A)
【文献】特開2015-062325(JP,A)
【文献】特開2000-050517(JP,A)
【文献】特開2005-110337(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 9/02
H02H 9/04
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池に接続されて電池の充電状態を制御する充電スイッチング素子と、
前記充電スイッチング素子の制御回路とを備える電源装置であって、
前記充電スイッチング素子と並列に接続してなる保護用トランジスタを備え、
前記制御回路が、
前記充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えるタイミングで、あるいは前記充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えたことを検出して前記保護用トランジスタをオン状態に切り換え、
前記電池の充電電流を前記保護用トランジスタにバイパスして充電電流を遮断する
ようにしてなり、
前記制御回路が、電池の電流を検出する電流検出回路を備え、
前記制御回路が、前記電流検出回路の検出電流で、前記保護用トランジスタの電流を制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記充電スイッチング素子がMOSFETであることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する電源装置であって、
前記保護用トランジスタがMOSFETであることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載する電源装置であって、さらに、
前記保護用トランジスタと直列に接続してなるダイオードを備え、
前記ダイオードが、電池の充電電流を流す方向に接続されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載する電源装置であって、さらに、
前記充電スイッチング素子と直列に接続している放電スイッチング素子を備え、
前記制御回路が前記放電スイッチング素子をオンオフに制御することを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載する電源装置であって、
前記制御回路が、
前記保護用トランジスタをオフに切り換える時間を記憶するタイマーを備え、
前記タイマーが、
前記保護用トランジスタをオフに切り換えることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の充電を停止する充電スイッチング素子を備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を備える電源装置は、電池を充電し、放電して使用される。この電源装置は、電池の充放電をコントロールするために充電スイッチング素子と、放電スイッチング素子を直列に接続して、これ等のスイッチング素子を制御回路でオンオフにコントロールしている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池と直列に充電スイッチング素子と放電スイッチング素子を接続する電源装置は、電池の電流を遮断すると、負荷や電池のインダクタンスに蓄えられる電流のエネルギーによって電流を遮断するスイッチに過電圧が発生する。特許文献1の電源装置は、電池の電流を遮断するときに発生する過電圧を吸収するたるために、電池と並列に定電圧ダイオードを接続している。定電圧ダイオードは、両端の電圧を設定電圧に保持して、電池の両端に誘導される過電圧を吸収する。
【0005】
この電源装置は、電池の電流を遮断するときに電池の両端に発生する過電圧を吸収できるが、電池の充電電流を遮断するときに、オフ状態となった充電スイッチング素子に誘導される過電圧を吸収できない。
電源装置は、充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えて、充電電流を遮断すると、充電スイッチング素子の両端には、負荷のインダクタンスに蓄えられるエネルギーによって過電圧が誘導される。インダクタンスに蓄えられる電流のエネルギーは、遮断する電流の二乗とインダクタンスの積に比例して大きくなるので、大電流で充電する電源装置は、充電電流を遮断するタイミングで充電スイッチング素子に誘導される過電圧は、電池電圧の数倍と極めて高くなる。さらに、負荷のインダクタンスが大きくなると誘導される過電圧はさらに高くなる。オフ状態に切り換えて過電圧が発生する充電スイッチング素子は、過電圧に耐える高耐圧の半導体スイッチング素子を使用する必要がある。とくに、大電流で充電する電源装置においては、誘導される過電圧が高くなるので、大容量の電源装置では、充電スイッチング素子に極めて高耐圧の半導体スイッチング素子を使用する必要がある。高耐圧の半導体スイッチング素子は、部品コストが高く、また、オン抵抗が大きくなって電力ロスが大きくなる欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えて誘導される過電圧を低くできる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電源装置は、電池1と、電池1に接続されて電池1の充電状態を制御する充電スイッチング素子3と、充電スイッチング素子3の制御回路2とを備える電源装置であって、充電スイッチング素子3と並列に接続してなる保護用トランジスタ5を備え、制御回路2が、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えるタイミングで、あるいは充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えたことを検出して保護用トランジスタをオン状態に切り換え、電池1の充電電流を保護用トランジスタ5にバイパスして充電電流を遮断するようにしている。さらに、電源装置は、制御回路が、電池の電流を検出する電流検出回路を備え、制御回路が、電流検出回路の検出電流で、保護用トランジスタの電流を制御している。
【発明の効果】
【0008】
以上の電源装置は、充電スイッチング素子をオフ状態に切り換えたときに、両端に誘導される電圧を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の回路図である。
【
図2】
図1に示す電源装置の保護用トランジスタに流れるバイパス電流の減衰特性を示すグラフである。
【
図3】従来の電源装置の充電スイッチング素子に過電圧が生じる状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
本発明の第1の態様の電源装置は、電池と、電池に接続されて電池の充電状態を制御する充電スイッチング素子と、充電スイッチング素子の制御回路とを備える電源装置であって、充電スイッチング素子と並列に接続してなる保護用トランジスタを備え、制御回路が、充電スイッチング素子がオフ状態となって電池の充電が停止される状態で、電池の充電電流を保護用トランジスタにバイパスして充電電流を遮断するようにしている。
【0012】
以上の電源装置は、充電スイッチング素子をオフに切り換えて電流を遮断したときに、充電スイッチング素子の電流を保護用トランジスタにバイパスして、電池の充電電流を一時には遮断しない。保護用トランジスタは、バイパスされた電流を減少して遮断するので、オフ状態の充電スイッチング素子に誘導される過電圧を小さくできる。たとえば、放電スイッチング素子のない従来の電源装置においては、
図3に示すように、170Aの電流を遮断すると、充電スイッチング素子に過渡的に発生する過電圧は180Vとなるが、保護用トランジスタを備える以上の電源装置は、保護用トランジスタのバイパス電流を減衰して遮断するので、
図2に示すように、充電スイッチング素子をオフに切り換えて、約2msec後のバイパス電流を40Aに減衰して遮断することで、充電スイッチング素子に過渡的に発生する過電圧は80V以下と1/2以下に低下できる。したがって、以上の電源装置は、充電スイッチング素子の耐圧を1/2以下と相当に低くして、部品コストを著しく低減できる。とくに、保護用トランジスタは、バイパス電流をコントロールして電流を遮断できるので、バイパス電流を小さく減衰して電池の充電電流を遮断することで、放電スイッチング素子に過渡的に誘導される過電圧を著しく小さくできる。
【0013】
本発明の第2の態様の電源装置は、充電スイッチング素子をMOSFETとしている。また、本発明の第3の態様の電源装置は、保護用トランジスタをMOSFETとしている。
【0014】
本発明の第4の態様の電源装置は、さらに、保護用トランジスタと直列に接続してなるダイオードを備え、このダイオードを、電池の充電電流を流す方向に接続している。
【0015】
本発明の第5の態様の電源装置は、さらに、充電スイッチング素子と直列に接続している放電スイッチング素子を備え、制御回路が放電スイッチング素子をオンオフに制御している。
【0016】
本発明の第6の態様の電源装置は、制御回路が、電池の電流を検出する電流検出回路を備え、制御回路が、電流検出回路の検出電流で、保護用トランジスタの電流を制御している。
【0017】
本発明の第7の態様の電源装置は、制御回路が、保護用トランジスタをオフに切り換える時間を記憶するタイマーを備え、タイマーが、保護用トランジスタをオフに切り換えることを特徴とする電源装置。
【0018】
(実施の形態1)
図1の回路図に示す電源装置100は、複数の電池セル1Aを直列に接続している電池1と、電池1に接続されて電池1の充電電流を制御する充電スイッチング素子3と、充電スイッチング素子3と並列に接続している保護用トランジスタ5と、この保護用トランジスタ5と充電スイッチング素子3を制御する制御回路2とを備える。さらに、図の電源装置100は、充電スイッチング素子3と直列に接続している放電スイッチング素子4も備え、放電スイッチング素子4も制御回路2でコントロールされる。
【0019】
電池1は、複数の電池セル1Aを並列に接続し、また並列と直列に接続することもできる。複数の電池セル1Aを直列に接続して出力電圧を高く、並列に接続して内部抵抗を小さくして負荷電流を大きくできる。電池1は、複数の電池セル1Aを並列に接続して電池ブロックとし、さらに、複数の電池ブロックを直列に接続して、充放電容量を大きく、出力電流を大きくできる。電池1は、用途に最適な出力に設計されるが、たとえば、複数の電池1を直列と並列に接続して、定格電圧を10V~400V、定格電流10A~500Aとする。
【0020】
電池セル1Aは、円筒形電池や角形電池が使用できる。電池セルは、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池が好適に使用できる。特にリチウムイオン二次電池とすることが望ましい。リチウムイオン二次電池は容積密度が高いために、電源装置の小型化、軽量化に適している。またリチウムイオン二次電池は充放電可能な温度領域が鉛蓄電池やニッケル水素電池に比べて広く、効率よく充放電が可能になる。電池セルのサイズは、18650型(直径18mm、高さ65mmの円筒形)や17670型といった規格化されたサイズとすることが好ましい。リチウムイオン二次電池は、設定電圧に充電して満充電される。設定電圧は、たとえば、4.2V/セルに設定するが、4V~4.2Vに設定して充電して、長寿命化できる。
【0021】
充電スイッチング素子3は、オン状態で電池1を充電し、オフ状態で充電を停止する。制御回路2は、電池1の満充電を検出して、充電スイッチング素子3をオフに切り換えて充電を停止する。また、制御回路2は、電池1が満充電されない状態においても、充電を禁止する状態、たとえば、電池温度が設定温度よりも高くなり、あるいは出力電流が異常に高くなった状態で、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えて充電を停止する。
【0022】
充電スイッチング素子3は、FET、とくに大電流で使用される電源装置においては、MOSFETが適している。ただし、充電スイッチング素子3は、バイポーラトランジスタやIGBT等、オンオフに制御できる他の半導体スイッチング素子も使用できる。充電スイッチング素子3は、オフ状態に切り換えられると、負荷や電池1のインダクタンスに蓄える電流のエネルギーで、充電スイッチング素子3の過電圧が誘導されるが、この過電圧を低下するために、保護用トランジスタ5を並列接続している。
【0023】
充電スイッチング素子3がオフ状態となって誘導される過電圧を低下させるために、充電電流をバイパスさせる保護用トランジスタ5を接続している。保護用トランジスタ5は、充電スイッチング素子3がオフ状態に切り換えられた状態で、電流をバイパスし、充電電流を減少した後、遮断して過電圧を低下させる。放電スイッチング素子4は、FET、大電流を遮断する装置にあってはMOSFETが適している。ただし、保護用トランジスタ5にもバイポーラトランジスタやIGBT等、オンオフに制御できる他の半導体スイッチング素子が使用できる。
【0024】
保護用トランジスタ5は制御回路2で制御される。制御回路2は、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えられるタイミングで、保護用トランジスタ5をオン状態に切り換える。ただし、制御回路2は、保護用トランジスタ5をオン状態に切り換えた後、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えることができ、また、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えたことを検出して、保護用トランジスタ5をオン状態に切り換えることもできる。オフ状態に切り換えられた充電スイッチング素子3は、電流を遮断した瞬間に、FETにあってはD-S間に過電圧が発生する。保護用トランジスタ5は、オフ状態となった充電スイッチング素子3に流れていた電流を遮断することなく、バイパスさせて過電圧を低下させるので、充電スイッチング素子3をオフ状態に切り換えたことを検出して、保護用トランジスタ5をオン状態に切り換える制御回路2は、充電スイッチング素子3に過電圧が誘導されるよりも速く保護用トランジスタ5をオン状態に切り換える。
【0025】
保護用トランジスタ5は、バイパスされた電流を、たとえば、200μsec~5msecの短時間に減少させた後、遮断する。制御回路2は、保護用トランジスタ5の入力信号、FETにあってはゲート電圧が次第に低下するようにコントロールして、バイパス電流を減衰させる。保護用トランジスタ5がバイパス電流を減衰させる電流の減衰特性、すなわち単位時間に電流が減少する割合であるdI/dtは、充電スイッチング素子3に誘導される電圧、すなわちオフ時の誘導電圧を特定する。誘導電圧を低くするために、制御回路2は、入力信号で保護用トランジスタ5を制御して、オフ状態に切り換えられた充電スイッチング素子3の誘導電圧を設定値よりも低くするように、バイパス電流の減衰特性を特定する。
図2は、保護用トランジスタ5に流れるバイパス電流の減衰特性を例示する。この図に示す電流の減衰特性は、充電スイッチング素子3が、170Aの充電電流を遮断して約2msec後に、バイパス電流を40Aに減衰させるように、保護用トランジスタ5を制御している。制御回路2は、保護用トランジスタ5の入力信号をコントロールして、電流の減衰特性を図に示すようにコントロールする。制御回路2は、バイパス電流を40Aまで低下させた後、保護用トランジスタ5をオフ状態に切り換えて電流を完全に遮断する。保護用トランジスタ5が、40Aのバイパス電流を遮断すると、充電スイッチング素子3の誘導電圧は80Vまで低下する。保護用トランジスタ5は、遮断するバイパス電流を40A以下としてさらに充電スイッチング素子3の誘導電圧を低くできる。ただし、バイパス電流をさらに小さく減衰して誘導電圧を低下できるが、バイパス電流を低下させると電流を完全に遮断するまでの時間が長くなる。
【0026】
図2の電流の減衰特性でバイパス電流を減衰する保護用トランジスタ5は、バイパス電流を減衰させるタイミングにおける充電スイッチング素子3の誘導電圧が20V以下と極めて低い。この電流の減衰特性から、保護用トランジスタ5は、さらに短時間にバイパス電流を減衰して、短時間にバイパス電流を遮断することもできる。たとえば、バイパス電流が40Aまで減衰する時間を、
図2の1/2としても、充電スイッチング素子3の誘導電圧は鎖線で示すように40Vを越えることはない。
図2に示す電流の減衰特性は、保護用トランジスタ5の入力信号をコントロールして約2msecでバイパス電流を40Aに減衰させているが、保護用トランジスタ5の入力信号を変更して、約1msecでバイパス電流を40Aまで低下するもできる。この保護用トランジスタ5は、充電スイッチング素子3がオフ状態に切り換えられた後、約1msec後にバイパス電流を遮断して、誘導電圧を80V以下にできる。
【0027】
保護用トランジスタ5は、内部抵抗を制御してバイパス電流をコントロールするので、このタイミングで内部抵抗によるジュール熱が発生する。ジュール熱は、保護用トランジスタ5を流れるバイパス電流の二乗と内部抵抗の積に比例して大きくなるので、バイパス電流が大きいと、ジュール熱も大きくなる。ただ、保護用トランジスタ5は、例えば数msecと極めて短時間でオフ状態に切り換えられるので、バイパス電流による発熱時間は極めて短い。発熱量は、発熱時間を短くして小さくなる。保護用トランジスタ5は、金属製の放熱器でジュール熱による発熱を吸熱できる。保護用トランジスタ5は、熱結合する放熱器を大きくして、短時間の発熱を効率よく吸収できる。
【0028】
保護用トランジスタ5の放熱器は、充電スイッチング素子3の放熱器には熱結合しないで、効率よくバイパス電流の発熱を吸熱できる。充電スイッチング素子3は、充電電流のジュール熱で発熱しているので、充電電流が流れる状態では温度上昇している。充電スイッチング素子3の放熱器に熱結合されない保護用トランジスタ5の放熱器は、電池1を充電しているタイミングではバイパス電流が流れず、バイパス電流による発熱がない。このため、保護用トランジスタ5がオン状態に切り換えられた最初の温度が低く、バイパス電流の発熱を効率よく吸熱できる。
【0029】
図1の電源装置は、保護用トランジスタ5と直列に、バイパス電流を流す方向にダイオード6を接続している。このダイオード6は、保護用トランジスタ5に充電電流と逆方向の電流が流れるのを阻止する。
【0030】
制御回路2は、保護用トランジスタ5の入力信号をコントロールしてバイパス電流の減衰特性を特定する。保護用トランジスタ5のMOSFETは、入力電圧でバイパス電流をコントロールできる。たとえば、制御回路2は、充電スイッチング素子3がオフに切り換えられたタイミングで、保護用トランジスタ5のMOSFETをオンに切り換える電圧をゲートに入力し、その後、ゲートの入力電圧を次第に小さくする。ゲート電圧が次第に小さくなって、保護用トランジスタ5のMOSFETはバイパス電流を次第に減衰させる。MOSFETは、ゲート電圧でバイパス電流をコントロールできるので、バイパス電流の減衰特性は、ゲートの入力電圧でコントロールできる。制御回路2は、予め設定している波形の入力電圧をMOSFETのゲートに入力して、バイパス電流の減衰特性を特定し、あるいは、バイパス電流が予め設定している減衰特性で減衰するように、バイパス電流を検出して、検出するバイパス電流をフィードバック制御して、特性の減衰特性でバイパス電流を減衰させることもできる。
【0031】
制御回路2は、保護用トランジスタ5の入力電圧で保護用トランジスタ5をオフに切り換える。制御回路2は、バイパス電流が設定電流に減衰したことを検出して、保護用トランジスタ5のMOSFETの電流を遮断することができる。この制御回路2は、電池1の電流を検出する電流検出回路(図示せず)を備えて、電流検出回路の検出電流で保護用トランジスタの電流を制御することができる。あるいは、制御回路2は、バイパス電流を遮断する時間を記憶するタイマー(図示せず)を設けて、このタイマーで保護用トランジスタ5をオフ状態に切り換えて、バイパス電流を遮断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、充電スイッチング素子のオンオフをコントロールして電池の充電を制御する電源装置であって、とくに、電池を大電流で充電する高容量の電源装置に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0033】
100…電源装置
1…電池
1A…電池セル
2…制御回路
3…充電スイッチング素子
4…放電スイッチング素子
5…保護用トランジスタ
6…ダイオード