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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】書類処理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20230101AFI20230920BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230920BHJP
   G06V 30/12 20220101ALI20230920BHJP
   G06V 30/412 20220101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q10/10
G06F3/01 510
G06V30/12
G06V30/412
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019074338
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020173564
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591057256
【氏名又は名称】株式会社エクサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 美冬
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 良介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼桑 美季
(72)【発明者】
【氏名】小西 裕己
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027442(JP,A)
【文献】特開2017-215701(JP,A)
【文献】特開2016-162372(JP,A)
【文献】特開2010-061523(JP,A)
【文献】特開平06-325058(JP,A)
【文献】特開2010-128904(JP,A)
【文献】特開2001-092995(JP,A)
【文献】特開2017-091208(JP,A)
【文献】特開2000-030056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 3/01
G06V 30/12
G06V 30/412
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の書類を処理することを支援する書類処理支援システムであって、
ユーザが装着する表示デバイス、
前記書類が属する書類タイプを識別する書類分類部、
を備え、
前記表示デバイスは、前記書類の画像を撮像してその画像データを前記書類分類部に対して出力し、
前記書類分類部は、前記画像データが属する前記書類タイプを識別してその結果を出力し、
前記表示デバイスは、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応する、前記書類を処理するための作業内容を示唆するナビゲーション画像を、前記ユーザの視界内に表示し、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類の記載内容をチェックする書類チェック部を備え、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類が有する押印欄の座標を前記書類タイプごとに記述した書類データベースを備え、
前記書類チェック部は、前記書類分類部が識別した前記書類タイプが、前記押印欄を有するものである場合は、その書類タイプに対応する前記押印欄の座標を前記書類データベースから取得し、
前記書類チェック部は、前記押印欄を有する前記書類の前記画像データのうち赤色成分を閾値以上有する赤色領域を特定し、
前記書類チェック部は、前記赤色領域に含まれ押印画像のノイズを除去し、
前記書類チェック部は、前記ノイズを除去した後の前記赤色領域と、前記押印欄の座標領域とが重なる重複領域を抽出し、
前記書類チェック部は、前記重複領域の最小外接円を作成し、
前記書類チェック部は、前記最小外接円の面積と前記重複領域の面積の比が閾値以上である場合は、前記押印欄の座標領域において押印画像が存在すると判定し、閾値未満である場合は、存在しないと判定する
ことを特徴とする書類処理支援システム。
【請求項2】
紙の書類を処理することを支援する書類処理支援システムであって、
ユーザが装着する表示デバイス、
前記書類が属する書類タイプを識別する書類分類部、
を備え、
前記表示デバイスは、前記書類の画像を撮像してその画像データを前記書類分類部に対して出力し、
前記書類分類部は、前記画像データが属する前記書類タイプを識別してその結果を出力し、
前記表示デバイスは、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応する、前記書類を処理するための作業内容を示唆するナビゲーション画像を、前記ユーザの視界内に表示し、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類の記載内容をチェックする書類チェック部を備え、
前記書類処理支援システムはさらに、書類が有する記入欄の座標を前記書類タイプごとに記述するとともに前記記入欄に記入すべき事項を前記書類タイプごとに記述した書類データベースを備え、
前記書類チェック部は、前記画像データ上における前記記入欄の座標領域に対して文字認識を実施することにより、前記記入欄に記載されている文字を取得し、
前記書類データベースは、前記記入欄に記入すべき前記事項として、所定の計算式にしたがって算出すべき数値を記述しており、
前記書類チェック部は、前記文字認識によって取得した文字を前記計算式に対して適用することにより、前記記入欄に記入すべき事項が記載されているか否かをチェックする
ことを特徴とする書類処理支援システム。
【請求項3】
紙の書類を処理することを支援する書類処理支援システムであって、
ユーザが装着する表示デバイス、
前記書類が属する書類タイプを識別する書類分類部、
を備え、
前記表示デバイスは、前記書類の画像を撮像してその画像データを前記書類分類部に対して出力し、
前記書類分類部は、前記画像データが属する前記書類タイプを識別してその結果を出力し、
前記表示デバイスは、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応する、前記書類を処理するための作業内容を示唆するナビゲーション画像を、前記ユーザの視界内に表示し、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類の記載内容をチェックする書類チェック部を備え、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類が有する個人識別情報を記載すべき個人識別欄の座標を前記書類タイプごとに記述した書類データベースを備え、
前記書類チェック部は、前記書類分類部が識別した前記書類タイプが、前記個人識別欄を有するものである場合は、その書類タイプに対応する前記個人識別欄の座標を前記書類データベースから取得し、
前記書類チェック部は、前記画像データ上における前記個人識別欄の座標領域に対して文字認識を実施することにより、前記個人識別欄に記載されている個人識別情報を取得するとともに、その取得した個人識別情報を用いて、対応する個人が前記書類を提出済である旨を表す情報を記憶装置に格納する
ことを特徴とする書類処理支援システム。
【請求項4】
紙の書類を処理することを支援する書類処理支援システムであって、
ユーザが装着する表示デバイス、
前記書類が属する書類タイプを識別する書類分類部、
を備え、
前記表示デバイスは、前記書類の画像を撮像してその画像データを前記書類分類部に対して出力し、
前記書類分類部は、前記画像データが属する前記書類タイプを識別してその結果を出力し、
前記表示デバイスは、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応する、前記書類を処理するための作業内容を示唆するナビゲーション画像を、前記ユーザの視界内に表示し、
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類の記載内容をチェックする書類チェック部を備え、
前記表示デバイスは、前記書類が正しく記載されておらず、かつその記載不備の程度が閾値未満である場合は、その記載不備を自動訂正するので前記ユーザが対処する必要がない旨を表す前記ナビゲーション画像を、前記視界内に表示する
ことを特徴とする書類処理支援システム。
【請求項5】
前記書類分類部は、書類の画像とその書類のタイプとの間の対応関係をあらかじめ学習した学習器を備え、
前記書類分類部は、前記表示デバイスから受け取った前記画像データを前記学習器に対して入力として与えることにより、前記画像データに対応する前記書類タイプを識別する ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の書類処理支援システム。
【請求項6】
前記書類チェック部は、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応するチェックルールを前記画像データに対して適用することにより、前記書類が正しく記載されているか否かをチェックするとともに、そのチェック結果を出力し、
前記表示デバイスは、前記チェック結果を表す前記ナビゲーション画像を、前記視界内に表示する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の書類処理支援システム。
【請求項7】
記書類チェック部は、前記画像データ上における前記押印欄の座標領域において押印画像が存在するか否かをチェックすることにより、前記書類が正しく記載されているか否かをチェックする
ことを特徴とする請求項記載の書類処理支援システム。
【請求項8】
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類が有する押印欄の座標を前記書類タイプごとに記述した書類データベースを備え、
前記書類チェック部は、前記書類分類部が識別した前記書類タイプが、前記押印欄を有するものである場合は、その書類タイプに対応する前記押印欄の座標を前記書類データベースから取得し、
前記書類チェック部は、前記画像データ上における前記押印欄の座標領域において押印画像が存在するか否かをチェックすることにより、前記書類が正しく記載されているか否かをチェックする
ことを特徴とする請求項記載の書類処理支援システム。
【請求項9】
前記書類チェック部は、前記書類分類部が識別した前記書類タイプに対応する前記記入欄に記入すべき前記事項を前記書類データベースから取得し、
前記書類チェック部は、前記書類データベースから取得した前記事項と、前記文字認識によって取得した文字とを比較することにより、前記記入欄に記入すべき事項が記載されているか否かをチェックする
ことを特徴とする請求項2記載の書類処理支援システム。
【請求項10】
前記書類チェック部は、前記書類が正しく記載されていると判断した場合は、前記画像データを記憶装置に格納する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の書類処理支援システム。
【請求項11】
前記書類チェック部は、前記書類が正しく記載されていると判断した場合は、前記画像データを記憶装置に格納し、
前記表示デバイスは、前記画像データを前記記憶装置から取得し、
前記表示デバイスは、前記チェックルールにしたがって、前記ユーザが目視確認により前記書類の記載内容を確認するように促す前記ナビゲーション画像を、前記記憶装置から取得した画像データと併せて前記視界内に表示する
ことを特徴とする請求項6記載の書類処理支援システム。
【請求項12】
前記書類処理支援システムはさらに、前記書類を提出済である旨を表す情報が前記記憶装置に格納されていない個人に対して、提出を促すメッセージを送信する、メッセージ送信部を備える
ことを特徴とする請求項3記載の書類処理支援システム。
【請求項13】
前記表示デバイスは、前記書類が正しく記載されていない場合は、前記ユーザが目視確認により前記書類の記載内容を確認するように促す前記ナビゲーション画像を、前記視界内に表示する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の書類処理支援システム。
【請求項14】
前記表示デバイスは、前記ユーザの視界内に画像を表示するディスプレイと、前記書類の前記画像データを撮像するカメラとを備えたヘッドマウントディスプレイデバイスとして構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の書類処理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の書類を処理することを支援する書類処理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
定型的な帳票を処理する事務作業においては、作業の効率性が求められる。1例として企業の年末調整業務において、年末調整表を各社員が記入し、経理部員がその記入内容をチェックする作業が挙げられる。このような作業においては、帳票の所定欄に対して所定事項が記入されているか、押印欄に対して押印がされているか、などのチェックを、目視確認によって実施するのが典型的である。
【0003】
下記特許文献1は、金融機関における事務作業をナビゲートする技術について記載している。同文献は、『事務ナビゲーションサーバ、事務ナビゲーションシステム、事務ナビゲーション方法およびプログラムを提供する。』ことを目的として、『金融機関における事務作業の手順が定義された事務フロー定義にしたがって、事務作業端末に表示されるナビゲーション画面を生成するナビゲーション部と、前記事務フロー定義にてナビゲーション画面として勘定系画面が使用される場合、前記事務作業端末に記憶された前記勘定系画面の呼び出しを前記事務作業端末に要求する勘定系呼出部と、を備える事務ナビゲーションサーバ。』という技術を記載している(要約参照)。
【0004】
下記特許文献2は、機密事項を記載した紙の書類をヘッドマウントディスプレイによって閲覧する技術について記載している。同文献は、『2次元コードを読み取る情報処理端末が、携帯端末として用いられるかヘッドマウントディスプレイとして用いられるかによって、当該2次元コードに対応する文字データまたは画像データの表示を変えることによって、ユーザにとって視認性の高い表示を行うことが可能な仕組みを提供する』ことを課題として、『撮影手段を有する情報処理装置が携帯端末かヘッドマウンドディスプレイとして用いるかを判定し、携帯端末として用いられる場合には、2次元コードに対応する文字データまたは画像データを一覧で表示し、ヘッドマウントディスプレイとして用いられる場合には、複数の前記2次元コードに対応する前記文字列データまたは画像データを、撮影手段により前記紙媒体を撮影することによって得られた画像データの複数の前記二次元コード上にそれぞれ重ね合わせた画像データを表示する。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-127141号公報
【文献】特開2018-092228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1においては、事務作業をナビゲートすることは可能であるものの、そのナビゲートは、アプリケーション上で提供されるGUI(Graphical User Interface)として提供されている。換言すると同文献においては、紙の書類に対する作業をナビゲートすることは考慮されていない。
【0007】
上記特許文献2は、ヘッドマウントディスプレイによって紙の書類を閲覧し、そのとき拡張現実(AR)技術を用いて、ディスプレイ上で画像を表示する。同文献は機密情報に対する処理をターゲットとしており、紙の書類を処理する作業効率を向上させることについては考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ユーザが装着するタイプの表示デバイスを用いて、紙の書類を効率よく処理するためのナビゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る書類処理支援システムは、ユーザが装着する表示デバイスによって書類の画像データを撮影し、その画像データを用いて書類タイプを識別するとともに、その書類タイプに対応するナビゲーション画像を、前記表示デバイス上に表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る書類処理支援システムによれば、紙の書類を処理する場合であっても、その書類の書類タイプに応じた適切な作業ナビゲーションを、ユーザに対して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る書類処理支援システム10の構成図である。
図2】表示部210が表示する画面イメージの例である。
図3A】ユーザが記入内容チェック212aを選択したとき表示デバイス200が表示するナビゲーションの画面イメージである。
図3B】書類400を撮影ウインドウ213内に収めた様子を示す画面イメージである。
図4A】書類チェック部120によるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す画面イメージである。
図4B】書類チェック部120によるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す別例である。
図4C】添付書類410を撮影する様子を示す画面イメージである。
図4D】書類400の記入内容と添付書類410の内容が一致しない場合におけるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す例である。
図5A】記入内容チェック212aにおいて書類400が正しく記入されていると書類チェック部120が判断した場合における画面イメージである。
図5B】ユーザが操作メニュー211において第3者チェック212bを選択したとき表示デバイス200が表示する画面イメージである。
図6】書類チェック部120によるチェック結果を表示する画面イメージの別例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る書類処理支援システム10の構成図である。書類処理支援システム10は、ユーザが紙の書類を処理する作業を支援するシステムである。ここでいう紙の書類とは、例えば会社における事務作業者が記入内容をチェックする書類であり、書類処理支援システム10はそのチェック作業を支援する。書類処理支援システム10は、サーバ100と表示デバイス200を備える。
【0013】
表示デバイス200は、書類を処理するユーザが装着するデバイスである。表示デバイス200は、表示部210とカメラ220を備える。表示部210は、後述するナビゲーション画像を表示する。カメラ220は、ユーザが処理する書類の画像を撮像する。表示デバイス200は、例えばヘッドマウントディスプレイを用いて構成することができる。以下ではこれを前提とし、表示部210はユーザの視界内に画像を重畳表示するものとする。
【0014】
サーバ100は、表示デバイス200と連動して、ユーザによる書類処理作業を支援するコンピュータである。サーバ100は、ネットワーク300を介して表示デバイス200と接続されている。サーバ100は、書類分類部110、学習器111、書類チェック部120、書類データベース121、メッセージ送信部130を備える。
【0015】
書類分類部110は、表示デバイス200が撮影した画像データを取得し、その画像データ(すなわちその書類)が属する書類タイプを識別する。識別処理は、例えば学習器111に対して画像データを入力として与え、学習器111がその画像データの書類タイプを識別した結果を取得することにより、実施することができる。その他適当な手法を用いてもよい。以下では学習器111を用いることを前提とする。
【0016】
学習器111は、書類の画像データとその書類が属する書類タイプとの間の対応関係をあらかじめ学習アルゴリズムにしたがって学習し、その学習結果を記憶装置に格納することにより、構成することができる。学習アルゴリズムとしては任意のものを用いることができるが、本発明においては画像データを分類するタイプの学習アルゴリズムが最も適していると考えられる。
【0017】
書類チェック部120は、表示デバイス200が撮影した画像データに対して、その書類タイプに対応するチェックルールを適用することにより、書類が正しく記入されているか否かをチェックする。チェックルールの例としては例えば、(a)押印欄に対して押印がされているか否か、(b)記入必須欄に対して正しい事項が記入されているか否か、などが挙げられる。詳細については後述する。
【0018】
書類データベース121は、書類タイプごとに、チェックルールが適用されるべき部分の画像データ上における座標を定義したデータベースである。例えば上記例(a)(b)が適用される領域の座標を、書類タイプごとに記述している。書類データベース121はさらに、各書類タイプのチェックルールについても、そのルールが適用される座標と対応付けて記述している。書類データベース121は、座標とチェックルールを記述したデータを記憶装置に対して格納することにより、構成することができる。
【0019】
メッセージ送信部130は、各ユーザに対して電子メールその他のメッセージを送信する。例えば未提出の書類があるユーザに対して、提出を促すメッセージを送信することができる。その他適当なメッセージを送信してもよい。メッセージ送信の具体例については後述の実施形態3で説明する。
【0020】
<実施の形態1:チェック手順>
図2は、表示部210が表示する画面イメージの例である。表示部210は、ユーザが実施する作業内容を指定する操作メニュー211をユーザの視界内に重畳表示する。ユーザは操作メニュー211の中から実施したい作業内容を選択する。ここでは記入内容チェック212aについて説明し、第3者チェック212bとリマインドメッセージ212cについては後述の実施形態で説明する。選択動作は表示デバイス200の仕様によって異なるが、例えば2本の指を記入内容チェック212aの上に重ねて閉じ合わせる動作などが考えられる。以後の説明においても同様である。
【0021】
図3Aは、ユーザが記入内容チェック212aを選択したとき表示デバイス200が表示するナビゲーションの画面イメージである。表示デバイス200は、ユーザがチェックすべき書類(図3Aにおける書類400)をカメラ220によって撮影するように促すメッセージを表示する。表示デバイス200はさらに、撮影ウインドウ213を画面表示する。撮影ウインドウ213は、カメラ220が撮影している画像を表示する。ユーザは撮影ウインドウ213内に書類400が収まるように、表示デバイス200の姿勢を調整する。
【0022】
図3Bは、書類400を撮影ウインドウ213内に収めた様子を示す画面イメージである。ユーザは、書類400を撮影ウインドウ213内に収めたことを確認し、OKボタンを選択する。カメラ220は書類400の画像データを撮影し、その画像データをサーバ100に対して送信する。
【0023】
書類分類部110は、表示デバイス200から書類400の画像データを受け取る。書類分類部110は、その画像データの書類タイプを識別し、その識別結果を出力する。出力結果は、例えば書類タイプを表すIDなどである。書類チェック部120は、その書類タイプに対応するチェックルールを書類データベース121から取得する。例えば書類タイプIDをキーとして書類データベース121を検索することにより、チェックルールを取得できる。
【0024】
図4Aは、書類チェック部120によるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す画面イメージである。ここでは書類400の右上部分が押印欄として構成されており、押印欄に対して押印がされているか否かを書類チェック部120がチェックするものとする。押印がない場合は、その旨のマーク214を画面表示する。マーク214は、例えば押印欄の中央に表示すればよい。書類チェック部120は、例えば以下の手順によって押印有無をチェックすることができる。
【0025】
(押印チェック手順:ステップ1)
書類データベース121は、書類400の書類タイプについて、押印欄の座標をチェックルールとして記述している。例えば押印欄の左上座標と縦横サイズなどによって、押印欄の座標領域を記述することができる。書類チェック部120はその座標を書類データベース121から取得する。
【0026】
(押印チェック手順:ステップ2)
書類チェック部120は、書類400の画像データから、赤色成分を有する部分の座標を取得する。例えば色相が赤であり、彩度が閾値以上である部分を抽出することにより、赤色部分を取得する。
【0027】
(押印チェック手順:ステップ3)
書類チェック部120は、ステップ2によって取得した部分に対して、押印有無をチェックする際にノイズとなる部分を除去する。例えばモルフォロジー変換のクロージング処理とオープニング処理によってノイズを除去できる。クロージング処理により、例えば前景領域内の穴を埋めることができる。オープニング処理により、例えば背景領域を平坦にすることができる。
【0028】
(押印チェック手順:ステップ4)
書類チェック部120は、ノイズ除去後の画像領域と、ステップ1によって取得した押印欄の座標領域とが重複している部分を抽出する。書類チェック部120は、重複領域の最小外接円を生成する。書類チェック部120は、最小外接円の面積と、重複領域の面積との比を求める。書類チェック部120は、その比が閾値以上であれば押印があると判定し、それ以外であれば押印がないと判定する。
【0029】
(押印チェック手順:ステップ4:補足)
本ステップにおいて算出する面積比が閾値以上である場合、重複領域は円形であると考えられる。したがってその場合は、赤色の押印が押印欄上に存在すると判断することにした。面積比が閾値未満である場合、押印が存在しないかまたは不鮮明であると考えられるので、その場合はまとめて押印が存在しないと判定することにした。
【0030】
図4Bは、書類チェック部120によるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す別例である。ここでは書類400の中央部分が記入必須欄として構成されており、記入必須欄に正しい内容が記入されているか否かを書類チェック部120がチェックするものとする。正しい内容が記入されていない場合は、マーク214を例えば記入必須欄の中央に画面表示する。記入必須欄の座標は書類データベース121上に格納することができる。
【0031】
書類チェック部120は、記入必須欄の座標領域内の画像に対して文字認識処理を実施することにより、記入内容を取得する。書類チェック部120は、その記入内容と、書類データベース121が記述しているチェックルールとを比較することにより、正しい内容が記入されているか否かをチェックすることができる。記入内容が正しくない場合や、記入がない場合は、いずれも正しい内容が記入されていないとみなす。
【0032】
チェックルールとしては、記入が必須であることに加えて、記入者固有の事項を定義することができる。例えば記入必須欄が個人を識別する情報(社員IDなど)を記入する欄である場合は、その個人識別情報のフォーマットにしたがって記入されているか否かをチェックすることができる。さらには、その個人識別情報に対応する個人固有の情報(例えば社員氏名)を書類データベース121上にあらかじめ保持しておき、その個人固有情報が記入必須欄に記入されているか否かをチェックすることができる。
【0033】
図4Cは、添付書類410を撮影する様子を示す画面イメージである。書類400の書類タイプが付属書類を添付すべきものである場合、表示デバイス200は、添付書類を撮影するよう促すメッセージを表示するとともに、撮影ウインドウ213を再表示する。ここでは書類400が年末調整表であり、添付書類410として控除証明書類を撮影する例を示した。添付書類410が複数ある書類タイプであれば、表示デバイス200は図4Cと同様のナビゲーションを繰り返せばよい。
【0034】
図4Dは、書類400の記入内容と添付書類410の内容が一致しない場合におけるチェック結果を表示デバイス200が表示している様子を示す例である。書類データベース121は、添付書類410が付属する書類400の書類タイプについて、添付書類410に対応する事項を記入すべき領域の座標をチェックルールとして記述している。書類チェック部120は、その領域に対して文字認識を実施する。添付書類410のうち必要事項が記載されている箇所の座標についても同様に、チェックルールとして記述してもよい。書類チェック部120は、添付書類410の内容と、文字認識によって取得した内容とを比較することにより、正しい内容が記入されているか否かをチェックする。
【0035】
添付書類410が控除証明書類である場合、添付書類410の記載内容に対して所定の計算式を適用した結果を、書類400に対して記入することになる。書類データベース121は、その計算式をチェックルールとして定義してもよい。この場合、書類チェック部120は書類400に対して文字認識を実施した結果に対してさらにその計算式を適用する。書類チェック部120は、その適用結果と添付書類410の内容を比較することにより、正しい内容が記入されているか否かをチェックする。計算式がともなうその他の添付書類についても同様に処理することができる。
【0036】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る書類処理支援システム10は、表示デバイス200が撮影した書類400の画像データを用いて書類タイプを識別し、その書類タイプに対応するチェックルールを適用する。ユーザはチェック結果を表示デバイス200上のナビゲーション画像として視覚的に把握することができる。これにより、紙の書類400を処理する作業を、効率的に支援することができる。
【0037】
本実施形態1に係る書類処理支援システム10は、紙の書類400の書類タイプを識別し、その書類タイプに対応するチェックルールを書類データベース121から取得する。これにより、紙の書類であっても、書類タイプごとにチェックルールを自動適用することができる。したがって、紙の書類に対するチェックルールをチェック者の判断によって適用する負担を抑制することができる。
【0038】
本実施形態1に係る書類処理支援システム10は、正しく記入されていないことが判明した箇所をマーク214によって示唆することにより、ユーザが書類400の対応する箇所を目視確認するように促すことができる。これによりユーザは、正しく記入されていないと判断された箇所のみを目視確認すれば足りるので、それ以外の箇所も含めて目視確認する従来の作業手順と比較して、作業負担を抑制することができる。
【0039】
本実施形態1に係る書類処理支援システム10は、添付書類410が付属する書類タイプである場合は、添付書類410を撮影するように表示デバイス200上のナビゲーションによって促す。さらに、添付書類410と書類400を比較することにより、添付書類410の内容が書類400に対して正しく反映されているか否かをチェックする。これにより、添付書類410を目視チェックする負担を抑制することができる。
【0040】
本実施形態1に係る書類処理支援システム10は、書類データベース121が記述している個人固有の記入事項とその記入欄の座標を取得し、書類400の画像データに対して文字認識を実施することにより、その個人固有の記入事項が記入欄に記入されているか否かをチェックする。これにより、紙の書類400とその個人固有の事項を対照比較するための作業負担を抑制することができる。
【0041】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、第3者チェック212bの作業内容について説明する。記入内容チェック212aによって書類400が正しく記入されていることが確認された場合、表示デバイス200はその旨をサーバ100に対して通知する。サーバ100は、正しく記入されている書類400の画像データを記憶装置(例えば書類データベース121上の適当なフィールドなどでもよい)に格納する。記入内容チェック212aを実施したユーザ以外のユーザは、その画像データを再チェックすることができる。この再チェックのことを本発明においては第3者チェックと呼ぶ。
【0042】
図5Aは、記入内容チェック212aにおいて書類400が正しく記入されていると書類チェック部120が判断した場合における画面イメージである。ユーザがOKボタンを選択すると、表示デバイス200はその旨をサーバ100に対して通知し、サーバ100は書類400の画像データを記憶装置に格納する。
【0043】
図5Bは、ユーザが操作メニュー211において第3者チェック212bを選択したとき表示デバイス200が表示する画面イメージである。ユーザが第3者チェック212bを選択すると、表示デバイス200は再チェックする書類400を指定する選択メニューを表示する。例えば書類タイプのリストを表示して選択させることができる。ユーザが再チェック対象を選択すると、表示デバイス200はその書類の画像データをサーバ100に対して照会する。サーバ100はその画像データを記憶装置から読み出して表示デバイス200に対して送信する。
【0044】
書類分類部110と書類チェック部120は、表示デバイス200に対して画像データを送信する際に、その画像データの書類タイプに対応するチェックルールを書類データベース121から取得し、画像データと併せて表示デバイス200に対して送信する。これにより表示デバイス200は、受け取った画像データに対応するチェックルールを把握することができる。例えばチェックルールが適用される座標領域を把握することができる。
【0045】
図5Bにおいては、チェックルールとして押印欄の座標領域を表示デバイス200が書類チェック部120から取得し、画像ウインドウ215上で書類の画像データを表示するとともに、押印欄の座標領域をハイライト表示している。ハイライト表示の例としては、その座標領域を中心として図5Bのようなマーク216を表示することが考えられる。ユーザはその画像データに対応する書類400のうち、ハイライトされている領域を目視確認することにより、再チェックを実施する。チェックルールが複数ある場合は、図5Bのようなハイライト表示をチェックルールごとに繰り返せばよい。
【0046】
<実施の形態2:まとめ>
本実施形態2に係る書類処理支援システム10は、正しく記入されている書類400の画像データを記憶装置に格納しておき、第3者チェック212bを実施するときその画像データを読み出して表示デバイス200上で表示する。さらに、その画像データの書類タイプに対応するチェックルールを書類データベース121から取得し、表示デバイス200はそのチェックルールにしたがってマーク216を重畳表示する。これにより、第3者が書類400を再チェックする際に、再チェックすべき個所をガイドすることができるので、再チェックの負担を抑制できる。
【0047】
<実施の形態3>
実施形態1~2においては、表示デバイス200上でナビゲーション画像を表示する例を説明したが、表示デバイス200が撮影した書類400の画像データは、それ以外の用途においても用いることができる。例えば書類400が個人識別情報欄を有している場合は、その座標領域をチェックルールとして書類データベース121上に格納しておき、書類チェック部120はその個人識別情報欄に対して文字認識を実施することにより、書類400を提出した個人を特定することができる。書類400を提出した個人を特定することにより、書類400を提出済/未提出いずれであるかを個人ごとに特定することができる。サーバ100は、提出済/未提出者のリストを書類タイプごとに記憶装置(例えば書類データベース121上の適当なフィールドなどでもよい)に格納することができる。
【0048】
メッセージ送信部130は、未提出者に対して提出を促すリマインドメッセージを発信することができる。例えばユーザがリマインドメッセージ212cを選択すると、書類タイプと提出済/未提出者のリストを表示デバイス200上で画面表示し、さらにリマインドメッセージを発信するか否か選択させることができる。発信する場合はその旨をサーバ100に対して通知し、メッセージ送信部130は未提出者のリストを読み出してそれぞれメッセージを送信する。メッセージの形式は任意であり、例えば電子メールでもよいしその他形態のメッセージでもよい。
【0049】
<実施の形態4>
図6は、書類チェック部120によるチェック結果を表示する画面イメージの別例である。以上の実施形態においては、書類400が正しく記入されているか否かをマーク214などによって表示する例を説明した。これに代えてまたはこれに加えて、記入不備の程度が軽微である場合は、書類チェック部120がその不備を自動訂正してもよい。あるいは後段の作業フローにおいて別の作業者が自発的に訂正してもよい。例えば明らかな誤記などについては、このような処理が適していると考えられる。この場合は図6に例示するように、そのような訂正を実施する旨をナビゲートメッセージとして表示するとともに、該当箇所を表すマーク217を表示してもよい。
【0050】
不備が軽微であるか否かの判断基準としては様々あるが、例えば以下のような例が考えられる。(a)押印欄については、印影が押印欄からわずかにずれている場合は、軽微な不備とみなすことができる。例えば上述の面積比が閾値に対してわずかに不足する場合は、軽微な不備とみなすことができる。(b)個人識別IDと氏名が合致しない場合は、そのずれの程度に応じて軽微な不備とみなすことができる。例えば氏名のうち一部のみが不鮮明である場合は、個人識別IDが正しい前提の下で、その不鮮明部分は軽微な不備とみなすことができる。
【0051】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態においては、書類分類部110/学習器111/書類チェック部120/書類データベース121/メッセージ送信部130をサーバ100が備える構成例を説明したが、これらのうちいずれか1つ以上を表示デバイス200上に実装してもよい。例えば書類チェック部120は、表示デバイス200が実行するアプリケーションとして構成することもできる。この場合、表示デバイス200はサーバ100から書類タイプのみを取得し、その書類タイプに対応するチェックルールを表示デバイス200がチェックすることになる。
【0052】
以上の実施形態において、書類分類部110/学習器111/書類チェック部120/書類データベース121/メッセージ送信部130は、サーバ100とは別のコンピュータ上に構成することもできる。例えば学習器111と書類データベース121は、別のサーバコンピュータ上に実装しているものをサーバ100が利用してもよい。
【0053】
以上の実施形態において、表示デバイス200が画面表示する操作メニュー211などのナビゲーション画像は、例えば表示デバイス200が実行するアプリケーションによって提供することができる。ナビゲーションの内容は、そのアプリケーション内に組み込んで実装してもよいし、例えばWebアプリケーションのようにサーバ100からナビゲーション内容を取得して表示デバイス200がそれを適当な形式にフォーマットすることにより生成してもよい。その他適当な手段によって実装してもよい。
【0054】
書類分類部110、書類チェック部120、メッセージ送信部130は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアを演算装置(Central Processing Unit:CPUなど)が実行することにより構成することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10:書類処理支援システム
100:サーバ
110:書類分類部
111:学習器
120:書類チェック部
121:書類データベース
130:メッセージ送信部
200:表示デバイス
210:表示部
211:操作メニュー
213:撮影ウインドウ
214:マーク
215:画像ウインドウ
216:マーク
217:マーク
220:カメラ
300:ネットワーク
400:書類
410:添付書類
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6