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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230920BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019125014
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021013211
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大門 優樹
(72)【発明者】
【氏名】大上 達也
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕樹
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103534(JP,A)
【文献】特開2015-073365(JP,A)
【文献】特開2010-003550(JP,A)
【文献】特開2019-016156(JP,A)
【文献】特開2016-046927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/48
H01R13/40~13/533
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御装置であって、
電気回路を実装した回路基板と、
前記電気回路と電気的に接続される端子を有するコネクタと、
前記回路基板および前記コネクタの少なくとも一部を収容するケースと、
を有し、
前記コネクタは、
それぞれ上下方向に対して交差する方向へ突出する爪形状の少なくとも2つの係合部
を有し、
前記ケースは、
上下方向に対して垂直な面、または下方へ向かうにつれて前記係合部に近づく方向へ傾斜する面を、それぞれ含む、少なくとも2つの被係合部
を有し、
前記少なくとも2つの係合部はそれぞれ、前記少なくとも2つの被係合部のうち1つに係合し、
前記少なくとも2つの係合部を前記少なくとも2つの被係合部へ直接的または間接的に押しつける弾性部材
をさらに有する、電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記ケースは、
前記ケースの底部を形成するケース底板部と、
前記ケース底板部の一部に形成される固定台と、
それぞれ、前記ケース底板部のうち前記固定台の周縁部の一部において、前記ケース底板部を上下方向に貫通する、少なくとも2つの貫通孔と、
を有し、
前記コネクタは、
前記固定台の上方に配置されるコネクタ本体と、
前記コネクタ本体からそれぞれ下方へ突出して前記少なくとも2つの貫通孔のうち1つを貫通し、それぞれ1つの前記係合部を有する少なくとも2つのコネクタ脚部と、
を有し、
前記少なくとも2つの被係合部は、前記ケース底板部のうち前記少なくとも2つの貫通孔のそれぞれの周縁部を形成する部位である、電子制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子制御装置であって、
前記弾性部材は、前記固定台と前記コネクタ本体との上下方向の間において、上下方向に自然長よりも圧縮された状態で介挿される、電子制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電子制御装置であって、
前記固定台は、
上面の一部から上方へ突出するケース突出部
を有し、
前記コネクタ本体は、
下面の一部から上方へ凹むコネクタ凹部
を有し、
前記ケース突出部は、前記コネクタ凹部に嵌まる、電子制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子制御装置であって、
前記弾性部材は、中央の円孔部に前記ケース突出部が挿通されるゴム製のO-リングである、電子制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子制御装置であって、
前記ケースに前記回路基板が固定された状態において、前記端子は前記電気回路の一部に接触する、電子制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電子制御装置であって、
前記ケースは金属製である、電子制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子制御装置であって、
前記ケースはアルミニウム合金製である、電子制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電子制御装置であって、
前記コネクタの前記少なくとも2つの係合部は、それぞれ樹脂製である、電子制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の電子制御装置であって、
2つの前記コネクタ
を有し、
2つの前記コネクタのうち一方は、
前記ケースの外部に露出して配置され、外部から前記端子を介して前記回路基板へ電力を入力する入力コネクタ
であり、
2つの前記コネクタのうち他方は、
前記ケースの外部に露出して配置され、前記回路基板から前記端子を介して外部へ電力を出力する出力コネクタ
であり、
前記回路基板はDC/AC型インバータ回路基板であり、前記入力コネクタを介して入力される直流電力を交流電力へ変換して、前記出力コネクタを介して外部へ出力する、電子制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子制御装置であって、
充放電可能なバッテリとともに車体に搭載され、
前記入力コネクタには、前記バッテリから延びるケーブルのプラグが接続され、
前記回路基板は、前記バッテリから前記入力コネクタを介して入力される直流電力を交流電力へ変換して、前記出力コネクタを介して外部へ出力する、電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や産業機械等の複雑な構造を有するシステムには、様々な電子制御装置が搭載される。例えば、自動車には、車載用の電源装置として備えられた内部バッテリからの直流電圧(直流電力)を、昇圧しつつ交流電圧(交流電力)に変換して、携帯充電器、照明機器、またはオーディオ等の様々な電気機器に供給することを可能にする、DC-ACインバータ等の電力変換装置が搭載される。電動車両においてバッテリの直流電力を昇圧しつつ交流に変換する電力変換装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-046927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電力変換装置(10)は、電圧コンバータ回路(12)とインバータ回路(13)とを含む。バッテリ(3)の直流電力は、電圧コンバータ回路(12)で昇圧された後、インバータ回路(13)で交流に変換され、さらに走行用モータ(5)に供給される(段落0012,図1等)。バッテリ(3)から延びるパワーケーブル(23)のコネクタ(21)が電力変換装置(10)の筐体(19)に設けられたコネクタ連結部(19a)に連結されると、パワーケーブル(23)の先端に取り付けられている端子(22)は電圧コンバータ回路(12)に導通する(段落0021,図2等)。
【0005】
しかしながら、特許文献1の電力変換装置(10)では、コネクタ(21)は、ボルト(36)を用いたボルト止めによって、筐体(19)のコネクタ連結部(19a)に連結される。このため、車体の振動等によってボルト(36)が緩み、または筐体(19)からはずれる虞がある。また、コネクタ(21)を筐体(19)に連結する際の部品点数が増加し、作業効率が低下する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、バッテリ等から延びるケーブルが接続されるコネクタを、電力変換装置等のケースに対して効率良く固定できる技術を提供することである。また、振動等が加わった場合でも、コネクタの脱落や位置ずれを防止できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、電子制御装置であって、電気回路を実装した回路基板と、前記電気回路と電気的に接続される端子を有するコネクタと、前記回路基板および前記コネクタの少なくとも一部を収容するケースと、を有し、前記コネクタは、それぞれ上下方向に対して交差する方向へ突出する爪形状の少なくとも2つの係合部を有し、前記ケースは、上下方向に対して垂直な面、または下方へ向かうにつれて前記係合部に近づく方向へ傾斜する面を、それぞれ含む、少なくとも2つの被係合部を有し、前記少なくとも2つの係合部はそれぞれ、前記少なくとも2つの被係合部のうち1つに係合し、前記少なくとも2つの係合部を前記少なくとも2つの被係合部へ直接的または間接的に押しつける弾性部材をさらに有する。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の電子制御装置であって、前記ケースは、前記ケースの底部を形成するケース底板部と、前記ケース底板部の一部に形成される固定台と、それぞれ、前記ケース底板部のうち前記固定台の周縁部の一部において、前記ケース底板部を上下方向に貫通する、少なくとも2つの貫通孔と、を有し、前記コネクタは、前記固定台の上方に配置されるコネクタ本体と、前記コネクタ本体からそれぞれ下方へ突出して前記少なくとも2つの貫通孔のうち1つを貫通し、それぞれ1つの前記係合部を有する少なくとも2つのコネクタ脚部と、を有し、前記少なくとも2つの被係合部は、前記ケース底板部のうち前記少なくとも2つの貫通孔のそれぞれの周縁部を形成する部位である。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の電子制御装置であって、前記弾性部材は、前記固定台と前記コネクタ本体との上下方向の間において、上下方向に自然長よりも圧縮された状態で介挿される。
【0010】
本願の第4発明は、第2発明または第3発明の電子制御装置であって、前記固定台は、上面の一部から上方へ突出するケース突出部を有し、前記コネクタ本体は、下面の一部から上方へ凹むコネクタ凹部を有し、前記ケース突出部は、前記コネクタ凹部に嵌まる。
【0011】
本願の第5発明は、第4発明の電子制御装置であって、前記弾性部材は、中央の円孔部に前記ケース突出部が挿通されるゴム製のO-リングである。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか一つの電子制御装置であって、前記ケースに前記回路基板が固定された状態において、前記端子は前記電気回路の一部に接触する。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれか一つの電子制御装置であって、前記ケースは金属製である。
【0014】
本願の第8発明は、第7発明の電子制御装置であって、前記ケースはアルミニウム合金製である。
【0015】
本願の第9発明は、第1発明から第8発明までのいずれか一つの電子制御装置であって、前記コネクタの前記少なくとも2つの係合部は、それぞれ樹脂製である。
【0016】
本願の第10発明は、第1発明から第9発明までのいずれか一つの電子制御装置であって、2つの前記コネクタを有し、2つの前記コネクタのうち一方は、前記ケースの外部に露出して配置され、外部から前記端子を介して前記回路基板へ電力を入力する入力コネクタであり、2つの前記コネクタのうち他方は、前記ケースの外部に露出して配置され、前記回路基板から前記端子を介して外部へ電力を出力する出力コネクタであり、前記回路基板はDC/AC型インバータ回路基板であり、前記入力コネクタを介して入力される直流電力を交流電力へ変換して、前記出力コネクタを介して外部へ出力する。
【0017】
本願の第11発明は、第10発明の電子制御装置であって、充放電可能なバッテリとともに車体に搭載され、前記入力コネクタには、前記バッテリから延びるケーブルのプラグが接続され、前記回路基板は、前記バッテリから前記入力コネクタを介して入力される直流電力を交流電力へ変換して、前記出力コネクタを介して外部へ出力する。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明~第11発明によれば、スナップフィット構造を用いて、電子制御装置のケースに対してコネクタを固定することができる。これにより、振動等が加わった場合でも、ケースからのコネクタの脱落や位置ずれを防止できる。また、ケースに対してコネクタを固定する際の部品点数を抑制し、作業効率を向上できる。さらに、弾性部材の弾性力によって、コネクタの少なくとも2つの係合部をケースの少なくとも2つの被係合部に押しつけることにより、コネクタの位置を安定させるとともに、ケースからのコネクタの脱落を防止することができる。
【0019】
特に、本願の第4発明によれば、ケース突出部とコネクタ凹部との嵌合構造を用いて、ケースに対してコネクタを水平方向に位置決めしつつ、固定することができる。これにより、振動等が加わった場合でも、ケースからのコネクタの水平方向の脱落や位置ずれを防止できる。また、ケースに対してコネクタを固定する際の部品点数を抑制し、作業効率を向上できる。
【0020】
特に、本願の第5発明によれば、コネクタ本体とケースの固定台との間に、弾性部材を容易に配置することができ、作業効率を向上できる。
【0021】
特に、本願の第6発明によれば、コネクタの一部が収容されたケースに回路基板を固定するだけで、別途部品を用いることなく、コネクタの端子と回路基板上の電気回路とを電気的に直接的に接続することができる。これにより、端子を電気回路に接続する際の作業効率を向上できる。また、端子と電気回路とを接続するための部品点数を抑制できるため、コストに削減に繋がる。
【0022】
特に、本願の第7発明および第8発明によれば、ケースを容易に加工することができる。
【0023】
特に、本願の第9発明によれば、コネクタの少なくとも2つの係合部を、それぞれ所望の形状に容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る電子制御装置の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電子制御装置の蓋部を外した状態の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る入力コネクタ、出力コネクタ、およびケースの分解斜視図である。
図4】第1実施形態に係る入力コネクタ、出力コネクタ、およびケースの分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係る電子制御装置の縦断面図である。
図6】変形例に係る電子制御装置の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、後述する入力コネクタまたは出力コネクタに対して、外部機器のプラグが挿入される方向(後述する図1図4参照)を前方向とし、その反対を後方向として、各部の形状や位置関係を説明する。
【0026】
<1.第1実施形態>
<1-1.電子制御装置の構成>
まず、本発明の電子制御装置の第1実施形態となる電力変換装置1(DC-ACインバータ)の構成について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電力変換装置1の後述する蓋部50を外した状態の斜視図である。なお、図2では、後述する回路基板10については外枠のみを図示している。
【0027】
本実施形態の電力変換装置1は、例えば、自動車に搭載される。また、自動車の車体には、電源装置としてのバッテリ(図示省略)が備えられている。バッテリは、直流電力を充放電可能な蓄電池である。電力変換装置1は、バッテリからの定電圧(例えば、12ボルト)の直流電圧を、100ボルト程度まで昇圧しつつ交流電圧に変換して、携帯充電器、照明機器、またはオーディオ等の様々な電気機器(以下、「外部機器」と称する)に供給することを可能にする装置である。
【0028】
ただし、電力変換装置1は、プラグイン式HEV(Hybrid Electric Vehicle)やプラグイン式EV(Electric Vehicle)等のプラグイン式電気自動車に搭載され、高圧電力系統から入力される直流の入力電圧を、降圧しつつ直流の出力電圧へ変換して低圧電力系統へと出力する、DC/DCコンバータであってもよい。また、電子制御装置は、電力変換以外の制御を行う装置であってもよい。さらに、電子制御装置は、自動車以外の産業機械等に用いられるものであってもよい。
【0029】
図1および図2に示すように、電力変換装置1は、回路基板10と、2つのコネクタ(入力コネクタ20および出力コネクタ30)と、ケース40と、蓋部50とを有する。
【0030】
本実施形態の回路基板10は、DC/AC型インバータ回路基板である。回路基板10は、ケース40の内側に収容される部位と、蓋部50の下面に固定される部位とを含む。回路基板10の表面には、導電性の金属(例えば、銅)からなるパターンが形成されるとともに、種々の電子部品が配置される。当該パターンによって、当該種々の電子部品が互いに電気的に接続される。これにより、回路基板10において、電気回路11(後述する図5参照)が実装される。
【0031】
入力コネクタ20には、上述のバッテリから延びるケーブルのプラグが接続される。出力コネクタ30には、上述の外部機器から延びるケーブルのプラグが接続される。また、入力コネクタ20および出力コネクタ30はそれぞれ、金属製の2つの端子54(後述する図3参照)を有する。入力コネクタ20および出力コネクタ30はそれぞれ、端子54を含む一部をケース40の外部に露出した状態で、ケース40に収容される。なお、入力コネクタ20、出力コネクタ30、およびケース40のより詳細な構成については、後述する。
【0032】
回路基板10と、入力コネクタ20および出力コネクタ30の一部とがケース40に固定され、またはケース40の内側に収容された状態において、入力コネクタ20の2つの端子54および出力コネクタ30の2つの端子54はそれぞれ、回路基板10上に実装された電気回路11の一部に接触する。これにより、入力コネクタ20の2つの端子54および出力コネクタ30の2つの端子54はそれぞれ、電気回路11と電気的に直接的に接続される。このように、本実施形態では、入力コネクタ20および出力コネクタ30の本体をケース40に固定するだけで、別途部品を用いることなく、これらの端子54と回路基板10上の電気回路11とを電気的に直接的に接続することができる。この結果、これらの端子54と電気回路11とを接続するための作業時間を軽減できる。また、これらの端子54と電気回路11とを接続するための部品点数を抑制できるため、コストに削減に繋がる。ただし、入力コネクタ20の2つの端子54および出力コネクタ30の2つの端子54はそれぞれ、別部材を介して電気回路11と電気的に間接的に接続されてもよい。
【0033】
上述のとおり、入力コネクタ20は、ケース40の外部に設けられたバッテリから端子54を介して回路基板10へ電力を入力する。回路基板10は、DC/AC型インバータ回路基板である。出力コネクタ30は、回路基板10から端子54を介して外部へ電力を出力する。これにより、電力変換装置1は、バッテリから入力コネクタ20を介して入力される直流の入力電圧(直流電力)を昇圧しつつ交流電圧(交流電力)に変換して、出力コネクタ30を介して外部機器へ出力することができる。
【0034】
<1-2.入力コネクタ、出力コネクタ、およびケースの詳細な構成>
続いて、入力コネクタ20、出力コネクタ30、およびケース40のより詳細な構成について説明する。
【0035】
図3は、第1実施形態に係る入力コネクタ20、出力コネクタ30、およびケース40を斜め上方から見た分解斜視図である。図4は、第1実施形態に係る入力コネクタ20、出力コネクタ30、およびケース40を斜め下方から見た分解斜視図である。
【0036】
図3および図4に示すように、入力コネクタ20および出力コネクタ30はそれぞれ、コネクタ本体51と、2つのコネクタ脚部52と、コネクタ接続部53と、端子54と、フランジ部55とを有する。
【0037】
コネクタ本体51は、各コネクタ20,30がケース40に固定された状態において、ケース40の内側に収容される。コネクタ本体51は、例えば、直方体状または立方体状等の立体形状を有する。また、コネクタ本体51は、コネクタ凹部510を有する。コネクタ凹部510は、コネクタ本体51の下面の中央部付近の一部から上方へ凹む。
【0038】
2つのコネクタ脚部52はそれぞれ、1つのコネクタ本体51から下方へ突出する。ただし、各コネクタ20,30が有するコネクタ脚部52の数は、3つ以上であってもよい。すなわち、各コネクタ20,30において、少なくとも2つのコネクタ脚部52が設けられていればよい。
【0039】
各コネクタ20,30の2つのコネクタ脚部52の下端部付近にはそれぞれ、1つの係合部101が設けられている。各係合部101は、爪形状を有し、上下方向に対して交差する方向へ突出する。本実施形態では、各コネクタ20,30の2つの係合部101はそれぞれ、上下方向に対して交差し、かつ、互いに離間する方向へ突出する。ただし、各コネクタ20,30はそれぞれ、コネクタ脚部52を有さず、上下方向に対して交差する方向へ突出する爪形状の少なくとも2つの係合部101のみを有する構造を有していてもよい。
【0040】
コネクタ接続部53は、各コネクタ20,30がケース40に固定された状態において、ケース40の外側に位置する。コネクタ接続部53は、上述のバッテリおよび外部機器から延びるケーブルのプラグを挿入可能な楕円筒形状を有する。コネクタ接続部53に当該プラグが挿入された状態において、各コネクタ20,30の各端子54の一端は、当該プラグの端子と接触する。また、入力コネクタ20および出力コネクタ30がケース40に固定された状態において、各コネクタ20,30の各端子54の他端は、コネクタ本体51の上面に露出する。そして、当該各端子54の他端は、ケース40に回路基板10が固定された状態において、回路基板10上の電気回路11の一部に接触する。フランジ部55は、コネクタ本体51とコネクタ接続部53との前後方向の境界付近から、前後方向に対して直交する方向に拡がる板状の部位である。
【0041】
なお、本実施形態の各コネクタ20,30のうち端子54の除く部位(上述の2つの係合部101を含む)は、樹脂製(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製)である。これにより、係合部101を含む複雑な形状を有する各コネクタ20,30を、樹脂成形により容易に製造することができる。
【0042】
ケース40は、回路基板10と、入力コネクタ20および出力コネクタ30の一部とを収容する。ケース40の材料には、アルミニウム合金等の金属が用いられる。これにより、ケース40を鋳造(例えば、ダイカスト)で容易に形成することができる。図3および図4に示すように、ケース40は、ケース底板部401と、ケース側面部402と、ケース背面部403とを有する。ケース側面部402は、前後方向かつ上下方向に拡がる一対の面である。ケース背面部403は、ケース40の後方部に位置し、前後方向に対して直交する方向に拡がる面である。
【0043】
図5は、第1実施形態に係る電力変換装置1の縦断面図である。図3図5に示すように、ケース底板部401は、上下方向に対して垂直に拡がる。ケース底板部401は、ケース40の底部を形成する。また、ケース底板部401のうち後方の端部付近の一部には、固定台404が形成されている。固定台404は、ケース底板部401の一部から上方へ突出する。なお、固定台404は、ケース背面部403と連続し、かつ固定台404の上方にはケース背面部403が設けられていない。これにより、2つの固定台404付近において、ケース背面部403の一部がそれぞれ下方へ凹んだ2つの背面切欠き部407が形成されている。
【0044】
また、ケース底板部401は、各固定台404の周縁部付近の一部に、2つの貫通孔405を有する。2つの貫通孔405はそれぞれ、ケース底板部401を上下方向に貫通する。また、本実施形態の2つの貫通孔405は、上方から見て、固定台404の中央部を挟んで一対に設けられている。ただし、各コネクタ20,30のコネクタ脚部52の数に対応して、ケース底板部401に3つ以上の貫通孔405が設けられてもよい。例えば、ケース底板部401のうち各固定台404の周縁部付近の一部に、3つの貫通孔405が設けられてもよい。
【0045】
さらに、固定台404は、ケース突出部406を有する。ケース突出部406は、固定台404の上面の中央部付近の一部から上方へ突出する。また、固定台404の上面には、弾性部材60が配置される。本実施形態の弾性部材60には、ゴム製(例えば、天然ゴム製)のO-リングが用いられる。弾性部材60は、中央の円孔部600にケース突出部406が挿通されるように、固定台404の上面に配置される(図3の部分拡大図における矢印参照)。これにより、固定台404の上面に弾性部材60を容易に配置することができ、作業効率を向上できる。ただし、弾性部材60の材料および形状は、これに限定されない。例えば、弾性部材60の材料には、炭素繊維素材が用いられてもよい。また、弾性部材60は、金属製のばねであってもよい。
【0046】
各コネクタ20,30をケース40に固定する際には、まず、各コネクタ20,30を背面切欠き部407に嵌合させ、さらにフランジ部55をケース背面部403に当接させつつ、コネクタ本体51を固定台404の上方に配置する。そして、各コネクタ20,30の2つのコネクタ脚部52をそれぞれケース底板部401の貫通孔405に貫通させる(図3の部分拡大図における矢印および破線部参照)。さらに、各コネクタ20,30の2つの係合部101をそれぞれケース底板部401のうち貫通孔405の周縁部付近を形成する部位に係合させる。つまり、ケース底板部401のうち貫通孔405の周縁部付近を形成する部位は、各コネクタ20,30の2つの係合部101がそれぞれ係合する被係合部102となる。
【0047】
このとき、上述の弾性部材60は、固定台404の上面とコネクタ本体51との上下方向の間に、上下方向に自然長よりも圧縮された状態で介挿される。このため、弾性部材60の反発力によって、コネクタ本体51を含む各コネクタ20,30は、それぞれ全体的に上方へ押し上げられる。この結果、各コネクタ20,30の2つの係合部101はそれぞれ、被係合部102へ押しつけられる。すなわち、本実施形態では、弾性部材60の弾性力により、係合部101が被係合部102へ、間接的に押し付けられる。その結果、各コネクタ20,30が上下方向に位置決めされる。
【0048】
このように、本実施形態では、各コネクタ20,30の2つの係合部101と、ケース底板部401に形成された被係合部102とのスナップフィット構造(係合構造)を用いて、ケース40に対して各コネクタ20,30をそれぞれ上下方向に固定することができる。これにより、各コネクタ20,30にバッテリまたは外部機器から延びるケーブルのプラグを複数回抜き差しする場合や、振動等が加わった場合でも、ケース40からの各コネクタ20,30の上下方向の脱落や位置ずれを防止できる。また、スナップフィット構造を用いることにより、ケース40に各コネクタ20,30をネジ止め等により固定する場合と比べて、ケース40に各コネクタ20,30を固定する際の部品点数を抑制し、作業効率を向上できる。さらに、弾性部材60の弾性力によって、各コネクタ20,30の2つの係合部101をケース40の被係合部102へ押しつけることにより、各コネクタ20,30の位置を安定させるとともに、ケース40からの各コネクタ20,30の脱落を防止することができる。
【0049】
ただし、弾性部材60が配置される箇所は、上述の固定台404の上面とコネクタ本体51との上下方向の間には限定されない。例えば、弾性部材60は、ケース底板部401の2つの貫通孔405よりも下方位置に固定されてもよい。そして、弾性部材60は、ケース底板部401の被係合部102に係合された係合部101の下面にそれぞれ接触し、係合部101を被係合部102へ直接的に押しつけてもよい。このような構造でも、各コネクタ20,30の位置を安定させるとともに、ケース40からの各コネクタ20,30の脱落を防止することができる。
【0050】
さらに、各コネクタ20,30をケース40に固定する際には、固定台404の上面に設けられたケース突出部406を、コネクタ本体51に設けられたコネクタ凹部510に嵌める。これにより、ケース40のケース突出部406と各コネクタ20,30のコネクタ凹部510との嵌合構造を用いて、ケース40に対して各コネクタ20,30をそれぞれ水平方向に位置決めしつつ、固定することができる。この結果、各コネクタ20,30にバッテリまたは外部機器から延びるケーブルのプラグを複数回抜き差しする場合や、振動等が加わった場合でも、ケース40からの各コネクタ20,30の水平方向の脱落や位置ずれを防止できる。また、嵌合構造を用いることにより、ケース40に各コネクタ20,30をネジ止め等により固定する場合と比べて、ケース40に対して各コネクタ20,30を水平方向に容易に位置決めできる。さらに、ケース40に各コネクタ20,30を固定する際の部品点数を抑制し、作業効率を向上できる。
【0051】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0052】
上述の実施形態の被係合部102は、ケース底板部401のうち貫通孔405の周縁部付近に形成されていた。すなわち、被係合部102は、上下方向に対して垂直に拡がる面を含む構造を有していた。しかしながら、被係合部102の構造は、これに限定されない。図6は、変形例に係る電力変換装置1Bの部分縦断面図である。
【0053】
本変形例のコネクタ30Bの2つのコネクタ脚部52Bの下端部付近には、1つの係合部101Bが設けられている。各係合部101Bは、爪形状を有し、上下方向に対して交差する方向へ突出する。本変形例では、コネクタ30Bの2つの係合部101Bはそれぞれ、上下方向に対して互いに離間する方向へ突出する。ケース40Bは、一対の被係合部102Bを有する。各被係合部102Bは、ケース底板部401Bから上方へ突出する。また、一対の被係合部102Bのそれぞれの先端部は、互いに近づくように、下方へ折れ曲がった構造を有している。これにより、各被係合部102Bの先端部において、下方へ向かうにつれて係合部101Bに近づく方向へ傾斜する傾斜面103Bが形成されている。
【0054】
上述の実施形態と同様に、コネクタ30Bをケース40Bに固定する際には、コネクタ30Bの各係合部101Bを、上述の被係合部102Bに係合させる。これにより、コネクタ30Bの2つの係合部101Bと、ケース底板部401Bに形成された一対の被係合部102Bとのスナップフィット構造(係合構造)を用いて、ケース40Bに対してコネクタ30Bを上下方向に固定することができる。この結果、コネクタ30Bにバッテリまたは外部機器から延びるケーブルのプラグを複数回抜き差しする場合や、振動等が加わった場合でも、ケース40Bからのコネクタ30Bの上下方向の脱落や位置ずれを防止できる。また、スナップフィット構造を用いることにより、ケース40Bにコネクタ30Bをネジ止め等により固定する場合と比べて、ケース40Bにコネクタ30Bを固定する際の部品点数を抑制し、作業効率を向上できる。
【0055】
さらに、各コネクタの少なくとも2つの係合部は、上下方向に対して交差し、かつ、互いに近づく方向へ突出してもよい。そして、一対の被係合部は、下方へ向かうにつれて係合部に近づくように、互いに離間する方向へ傾斜する傾斜面を含む構造であってもよい。この場合でも、各コネクタの少なくとも2つの係合部と、ケースに形成された一対の被係合部とのスナップフィット構造(係合構造)を用いて、ケースに対してコネクタを上下方向に固定することができる。また、一対の被係合部は、各コネクタの少なくとも2つの係合部を係合できる構成であればよく、凹みまたは突起であってもよい。つまり、被係合部は、上下方向に対して垂直な面または下方へ向かうにつれてコネクタの少なくとも2つの係合部に近づく方向へ傾斜する面を含む構造であればよい。
【0056】
また、ケース底板部の一部が固定台であってもよい。すなわち、固定台は、ケース底板部の一部を形成してもよい。そして、ケース底板部のうち当該固定台の周縁部の一部に複数の貫通孔が設けられてもよい。さらに、上述の実施形態および変形例と同様の構成を有する各コネクタを用いて、コネクタ本体を固定台の上方に配置し、複数のコネクタ脚部をそれぞれ貫通孔に貫通させ、複数の係合部をそれぞれケース底板部のうち貫通孔の周縁部付近を形成する部位に係合させてもよい。この場合でも、各コネクタの複数の係合部と、ケースに形成された複数の被係合部とのスナップフィット構造(係合構造)を用いて、ケースに対してコネクタを上下方向に固定することができる。さらに、固定台は、ケースのケース側面部等から突出する部位によって形成されてもよい。
【0057】
電子制御装置の細部の形状や構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上述の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1B 電力変換装置
10 回路基板
11 電気回路
20 入力コネクタ
30,30B 出力コネクタ
40,40B ケース
50 蓋部
51 コネクタ本体
52,52B コネクタ脚部
53 コネクタ接続部
54 端子
55 フランジ部
60 弾性部材
101,101B 係合部
102,102B 被係合部
103B 傾斜面
401,401B ケース底板部
402 ケース側面部
403 ケース背面部
404 固定台
405 貫通孔
406 ケース突出部
407 背面切欠き部
510 コネクタ凹部
600 円孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6