(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20230920BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61F13/511 500
A61F13/511 100
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2019139958
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田篭 純太
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278703(JP,A)
【文献】特開2016-104091(JP,A)
【文献】特開2019-063006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌当接面側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌当接面側に配置された裏面シートとを具備する吸収性物品において、
前記表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された本体部分の非肌当接面に、吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め粘着剤層が
、長手方向に沿うとともに幅方向に間隔を空けて複数条設けられており、
前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれを示す目印が、吸収性物品の肌当接面側から目視可能な位置
であって、前記ズレ止め粘着剤層が配置された領域の長手方向両側部に対応する位置の前側端部及び後側端部にそれぞれ設けられ
、
前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面であって、前記目印が配置された長手方向の領域内に、吸収性物品の前後端部を下着に固定する際、着用者が指を押し付けるための指押付け用圧搾部が設けられ、前記指押付け用圧搾部は、全ての前記ズレ止め粘着剤層を横断するように、吸収性物品の幅方向に延びる線状に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記目印は、エンボス及び印刷のいずれか又はこれらの組み合わせにより施されている請求項
1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記目印は、吸収性物品の長手方向に所定の長さで形成されている請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記指押付け用圧搾部は、前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を含む位置に配置されている請求項
1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記指押付け用圧搾部は、前記目印が配置された長手方向の領域内のみに設けられ、該領域から外側に延在しないように形成されている請求項
1~4いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは肌当接面側からズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部の位置が認識できるようにした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性の裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性の表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体が介在されるとともに、前記裏面シートの外面(下着当接面)に、下着との固定を図るためのズレ止め粘着剤層が設けられたものが知られている。
【0003】
前後方向に複数に折り畳まれて個装された吸収性物品を個装から取り出して下着に装着するには、吸収性物品の体液排出部対応領域を下着のクロッチ部分に宛がって固定した後、個装の際の折り癖によって浮き上がった前側部分及び後側部分をそれぞれ肌当接面側から手で押さえて下着に固定するという手順で行っている。
【0004】
吸収性物品の浮き上がった前側部分及び後側部分を手で押さえる際、衛生上吸収性物品の肌当接面をなるべく手で触りたくないという心理から、着用者は吸収性物品の前後端部を手で押さえることが多かった。しかし、ズレ止め粘着剤層の配置領域より外側を手で押さえても下着に固定できないため、押さえる場所を変えて何回か繰り返し行わなければならず、繰り返してる間に、吸収性物品の肌当接面を広範囲に亘って手で触れることとなり、衛生上の問題があるとともに、下着に対する固定が不充分で着用中の位置ずれが生じやすく、かつ装着に時間がかかるなどの問題があった。
【0005】
近年では、吸収性物品の装着や取り外しの際の目印が設けられたものが種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、下着のクロッチ部分に吸収性物品を正確に配置するための指標マーカーが設けられたものが開示され、下記特許文献2には、バックシートの非接着領域の位置を示すための視覚的指標が設けられたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2008-500107号公報
【文献】特表2012-502776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2では、ズレ止め粘着剤層の前後端部の位置を吸収性物品の肌当接面側から認識できるようにしたものではなく、上述の問題が解決されるものではなかった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性物品の肌当接面側からズレ止め粘着剤層の前後端部の位置が視覚的に認識でき、衛生的な状態が保持できるとともに、下着にしっかりと固定でき、かつ手早く装着できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と、前記吸収体の肌当接面側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌当接面側に配置された裏面シートとを具備する吸収性物品において、
前記表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された本体部分の非肌当接面に、吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め粘着剤層が、長手方向に沿うとともに幅方向に間隔を空けて複数条設けられており、
前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれを示す目印が、吸収性物品の肌当接面側から目視可能な位置であって、前記ズレ止め粘着剤層が配置された領域の長手方向両側部に対応する位置の前側端部及び後側端部にそれぞれ設けられ、
前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面であって、前記目印が配置された長手方向の領域内に、吸収性物品の前後端部を下着に固定する際、着用者が指を押し付けるための指押付け用圧搾部が設けられ、前記指押付け用圧搾部は、全ての前記ズレ止め粘着剤層を横断するように、吸収性物品の幅方向に延びる線状に形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれを示す目印が、吸収性物品の肌当接面側から目視可能な位置であって、前記ズレ止め粘着剤層が配置された領域の長手方向両側部に対応する位置の前側端部及び後側端部にそれぞれ設けられているため、吸収性物品の肌当接面側からズレ止め粘着剤層の前後端部の位置が視覚的に認識できるようになる。これによって、個装の折り癖によって浮き上がった吸収性物品の前側部分及び後側部分をそれぞれ肌当接面側から手で押さえて下着に固定する際、吸収性物品の肌当接面に対する最小限の接触で、ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部をそれぞれ手で押さえて下着に固定できるようになる。このため、吸収性物品の肌当接面が衛生的な状態に保持できるとともに、吸収性物品の前側部分及び後側部分が下着にしっかりと固定でき、着用中の位置ずれが生じにくくなり、かつ手早く装着できるようになる。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面に前記指押付け用圧搾部を設けることによって、指で押さえ付ける位置が更に明確になり、より一層吸収性物品が下着にしっかりと固定できるようになるとともに、指押付け用圧搾部を指の腹部で押さえることによって、平坦な部分を押さえたときと比較して、窪んだ圧搾部の分だけ、指の腹部と吸収性物品表面との接触面積が減少するため、肌当接面をより衛生的な状態に保持できるようになる。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、指押付け用圧搾部の平面形状として、全てのズレ止め粘着剤層を横断するように、吸収性物品の幅方向に延びる線状に形成している。この線状に形成された指押付け用圧搾部に指の腹部を沿わせることによって、全てのズレ止め粘着剤層が下着にしっかりと固定できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記目印は、エンボス及び印刷のいずれか又はこれらの組み合わせにより施されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記目印を付与する手段について規定している。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記目印は、吸収性物品の長手方向に所定の長さで形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、吸収性物品の前側部分及び後側部分を手で押さえる際、指の腹部で押し付けることを考慮して、前記目印を、吸収性物品の長手方向に所定の長さで形成している。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記指押付け用圧搾部は、前記ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を含む位置に配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、ズレ止め粘着剤層の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を含む位置に前記指押付け用圧搾部を配置しているため、前記指押付け用圧搾部を指の腹部で押さえることにより、ズレ止め粘着剤層が下着にしっかりと固定できるようになる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記指押付け用圧搾部は、前記目印が配置された長手方向の領域内のみに設けられ、該領域から外側に延在しないように形成されている請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記指押付け用圧搾部を、前記目印が配置された長手方向の領域内のみに設け、該領域から外側に延在しないように形成することにより、この領域より外側を手で触れることなく、衛生的な状態を保持したまま、吸収性物品を下着にしっかりと固定できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品の肌当接面側からズレ止め粘着剤層の前後端部の位置が視覚的に認識でき、衛生的な状態が保持できるとともに、下着にしっかりと固定でき、かつ手早く装着できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図3】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
【
図4】(A)~(F)は、目印10の変形例である。
【
図5】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
【
図6】(A)は平坦部分、(B)は指押付け用圧搾部11を指の腹部で押さえ付けた場合を示す側面図である。
【
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
【
図8】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向のほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7、7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されたフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0025】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記裏面シート2の非肌当接面(外面)にはナプキン長手方向に沿うとともにナプキン幅方向に間隔を空けて1または複数条の、図示例では3条のズレ止め粘着剤層9、9…が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0026】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0027】
一方、前記表面シート3の肌当接面には、適宜のパターンで非肌側に窪む圧搾溝6が形成されている。
図1に示される形態例では、体液排出部対応領域Hの周囲を環状に囲うように圧搾溝6が形成されるとともに、前後部にそれぞれリボン形をした圧搾溝6が形成されている。
【0028】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、クレープ紙などの吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0029】
前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2及び
図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。たとえば、尿やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは目付け量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0031】
前記サイド不織布7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。図示しないが、このフラップ部によって、ほぼ前記体液排出部対応領域Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップを形成してもよい。このウイング状フラップの外面側にはそれぞれ粘着剤層が備えられ、下着に対する装着時に、前記ウイング状フラップを基端部の折返し線位置にて反対側に折り返し、下着のクロッチ部分に巻き付けて止着することができる。
【0032】
一方、前記サイド不織布7の内方側は、
図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8,8が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を表面側に起立させた立体ギャザーG、Gが形成されている。
【0033】
図1に示されるように、前記表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面(裏面シート2の外面)には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では生理用ナプキン1の長手方向に沿うとともに幅方向に間隔を空けて3条のズレ止め粘着剤層9,9…が形成されている。これらズレ止め粘着剤層9、9…は、生理用ナプキン1を個装した状態において、剥離シート(図示せず)によって剥離可能に覆われている。
【0034】
〔目印〕
本生理用ナプキン1では、
図1に示されるように、前記ズレ止め粘着剤層9、9…の前側端部及び後側端部のそれぞれを示す目印10、10…が、生理用ナプキン1の肌当接面側から目視可能な位置に設けられている。より具体的には、ズレ止め粘着剤層9の前側端部を示す目印10、10が、生理用ナプキン1の前側部分であって、生理用ナプキン1の肌当接面側から目視可能な位置に設けられるとともに、ズレ止め粘着剤層9の後側端部を示す目印10、10が、生理用ナプキン1の後側部分であって、生理用ナプキン1の肌当接面側から目視可能な位置に設けられている。
【0035】
前述の通り、前記ズレ止め粘着剤層9…は、吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面(下着当接面)に設けられているため、生理用ナプキン1の肌当接面側からは、透かして見ることが不可能である。そこで、本生理用ナプキン1では、肌当接面側から目視可能な前記目印10…を設けることにより、着用者が生理用ナプキン1の肌当接面側からズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれの位置を視覚的に認識できるようにしている。前記目印10…によってズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部の位置が認識できるため、生理用ナプキン1を個装から取り出して下着に装着する際、生理用ナプキン1の体液排出部対応領域Hを含む部分を下着のクロッチ部分に宛がって固定した後、個装の際の折り癖によって浮き上がった前側部分及び後側部分を、生理用ナプキン1の肌当接面に対する最小限の接触で、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部を手で押さえて下着に固定できるようになる。このため、何回も繰り返して生理用ナプキン1の肌当接面を手で触れることなく、肌当接面が衛生的な状態に保持できるとともに、生理用ナプキン1の前側部分及び後側部分が下着にしっかりと固定され、着用中の位置ずれが生じにくくなり、かつ手早く装着できるようになる。
【0036】
以下、前記目印10について、更に詳細に説明すると、
前記目印10…は、ズレ止め粘着剤層9、9…が配置された領域の両側部に対応する位置にそれぞれ設けるのが好ましい。つまり、長手方向に沿って配置された3条のズレ止め粘着剤層9、9…のうち、両側のズレ止め粘着剤層9の幅方向外側に対応する位置にそれぞれ、前記目印10が設けられている。ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれにおいて、両側に目印10、10が配置された長手方向の領域S内を指で押し付けることにより、ズレ止め粘着剤層9…の端部が下着にしっかりと固定できるようになる。
【0037】
前記目印10は、
図1に示される生理用ナプキン1の平面視で、ズレ止め粘着剤層9の幅方向外側に離隔して配置してもよいし、ズレ止め粘着剤層9に近接して配置してもよく、更にズレ止め粘着剤層9と重なる位置に配置してもよい。好適には、両側の目印10、10が配置された領域Sを指で押さえることにより、全てのズレ止め粘着剤層9…が確実に下着に押し付けられるようにするため、ズレ止め粘着剤層9の幅方向外側に離隔して配置するのがよい。
【0038】
前記目印10は、エンボス及び印刷のいずれか又はこれらの組み合わせにより施すのが好ましい。前記エンボスは、肌当接面側からの圧搾により非肌側に窪ませた凹部を形成するものである。前記エンボスを施すことによって、エンボス凹部の溶融・固化により、生理用ナプキン1の外観視で、他の領域と比較して異なる色調となるため、肌当接面側から目印10の位置が明確に目視可能となる。前記印刷は、公知の印刷方法を制限なく用いることができ、生理用ナプキン1の肌当接面側から目視可能であれば、生理用ナプキン1を構成するいずれかの部材又は2以上の部材に施してもよい。前記エンボスと印刷の組み合わせとしては、エンボスを施した部分に印刷したり、印刷した部分にエンボスを施したりすることができる。また、前記エンボスを施すことにより、エンボス凹部が熱溶融後の固化した状態で透明度が高まることを利用して、前記裏面シート2の全部又は前記目印10に対応する部分のみを、生理用ナプキン1の肌当接面と異なる色で着色しておくことにより、エンボス凹部において裏面シート2の色が透けて見えるようにしてもよい。
【0039】
前記目印10は、
図1に示されるように、吸収体4と重ならない吸収体4より幅方向外側の位置に設けてもよいし、
図3に示されるように、吸収体4と重なる位置に設けてもよい。吸収体4と重ならない位置に設ける場合、吸収体4の側縁との間に幅方向に離隔距離を有するように配置してもよいし、
図1に示されるように、吸収体4の側縁に対して幅方向に離隔距離を有さないように吸収体4の側縁に近接して配置してもよい。吸収体4の側縁に近接して配置する場合には、両側に目印10、10が配置された長手方向の領域Sを手で押し付けた際、吸収体4のほぼ全幅を押さえることができ、より確実にズレ止め粘着剤層9…が下着に固定できるようになるため好ましい。一方、
図3に示されるように、目印10を吸収体4と重なる位置に配置する場合、サイド不織布7が積層された吸収体4の両側部において、サイド不織布7の肌当接面側からの圧搾によりサイド不織布7の肌当接面に非肌側に窪んだエンボス凹部を設けることによって形成するのが好ましい。これにより、サイド不織布7が表面シート3にしっかりと固定でき、前後端部におけるサイド不織布7の剥がれが防止できるという効果も奏するようになる。
【0040】
前記目印10の平面形状は、
図1に示される形態例では、幅方向中央に向けて尖った三角形で形成しているが、
図4に示されるように、(A)円形、(B)楕円形、(C)星形、(D)十字形、(E)ハート形、(F)矢印等で形成してもよく、この他に文字、図形、記号等で形成してもよい。前記三角形や矢印など、幅方向中央に向けて尖った部分を有する形状で形成する場合、尖った部分の先端がズレ止め粘着剤層9の前後方向の端部と幅方向に一致する位置に設けるのが好ましい。これにより、ズレ止め粘着剤層9…の前後方向の端部位置が明確に把握でき、ズレ止め粘着剤層9…の前後方向の端部位置を確実に指で押さえることが可能となる。
【0041】
前記目印10の大きさは、両側に目印10、10が配置された長手方向の領域Sを、指の腹部で押さえ付けることを考慮して、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向の長さAが所定の長さとなるように形成するのが好ましい。具体的には、前記長さAとしては、3~30mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。また、目印10の幅Bとしては、3~30mmが好ましい。
図1に示されるように、両側に前記目印10、10が配置された長手方向の領域Sが、生理用ナプキン1の前後端部を下着に固定する際、指の腹部を押し付ける領域となる。この領域Sのナプキン長手方向の長さが大きすぎると、この領域S内のどの部分を押さえればより確実に止着できるのか曖昧になってしまい、逆に小さすぎると、目立たないため好ましくない。
【0042】
〔指押付け用圧搾部〕
本生理用ナプキン1では、
図5に示されるように、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面であって、前記目印10が配置された長手方向の領域S内に、生理用ナプキン1の前後端部を下着に固定する際、着用者が指を押し付けるための指押付け用圧搾部11を設けるのが望ましい。つまり、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部に対応する肌当接面の前記領域S内に、前側の指押付け用圧搾部11が設けられるとともに、ズレ止め粘着剤層9…の後側端部に対応する肌当接面の前記領域S内に、後側の指押付け用圧搾部11が設けられている。前記指押付け用圧搾部11は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3の肌当接面に形成された非肌側に窪む凹部である。
【0043】
前記指押付け用圧搾部11を設けることにより、生理用ナプキン1の前後端部を下着に固定する際の指で押さえ付ける位置が更に明確になり、より一層生理用ナプキン1が下着にしっかりと固定できるようになる。また、指押付け用圧搾部11を指の腹部で押さえた場合の指と生理用ナプキン1表面との接触面積を比較すると、
図6(A)のように平坦な部分を押さえたときは、指の腹部のほぼ全面がナプキン表面に接触するのに対して、同
図6(B)に示されるように、指押付け用圧搾部11を押さえたときは、窪んだ圧搾部11の分だけ、指の腹部と生理用ナプキン1の表面との接触面積が減少する。このため、肌当接面がより衛生的な状態に保持できるようになる。
【0044】
前記指押付け用圧搾部11は、
図5に示されるように、全てのズレ止め粘着剤層9…を横断するように、生理用ナプキン1の幅方向に延びる線状に形成するのが好ましい。これにより、この線状に形成された指押付け用圧搾部11に指の腹部を沿わせることによって、全てのズレ止め粘着剤層9…が下着にしっかりと固定できるようになる。指押付け用圧搾部11を線状に形成した場合、前記領域S内には1本の指押付け用圧搾部11が設けられるようにするのが好ましい。2本以上設けると、どの圧搾部を押さえれば良いのかが不明確となるため好ましくない。
【0045】
前記指押付け用圧搾部11は、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を含む位置に配置するのが好ましい。つまり、生理用ナプキン1の前側の領域S内に配置された指押付け用圧搾部11は、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部に対応する肌当接面側の部位を含む位置に配置され、生理用ナプキン1の後側の領域S内に配置された指押付け用圧搾部11は、ズレ止め粘着剤層9…の後側端部に対応する肌当接面側の部位を含む位置に配置されている。
図5に示される形態例では、指押付け用圧搾部11が、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を通る線状に形成されている。
図5の形態例では、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部が生理用ナプキン1の幅方向に真っ直ぐなほぼ直線上に配置されているため、前記指押付け用圧搾部11も生理用ナプキン1の幅方向に延びる直線によって形成している。
【0046】
一方、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部が生理用ナプキン1の幅方向に対して直線上にない場合、例えば、
図7に示されるように、中央に配置されたズレ止め粘着剤層9の前側端部及び後側端部がそれぞれ、その両側に配置されたズレ止め粘着剤層9、9より長手方向外側に位置する場合、図示例のように、指押付け用圧搾部11が全てのズレ止め粘着剤層9の前側端部又は後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位を通るように、幅方向中央部で長手方向外側に膨出する曲線状に形成するのが好ましい。
【0047】
このように、前記指押付け用圧搾部11の平面形状は、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部又は後側端部に合わせて、種々の形態で形成することが可能である。ただし、前記指押付け用圧搾部11は、両側に前記目印10、10が配置された長手方向の領域S内のみに設けるのが好ましく、当該領域Sから外側に延在して設けられないようにするのが好ましい。これによって、指押付け用圧搾部11に沿って指を押し付けた際、この領域Sより外側を手で触れることなく、衛生的な状態を保持したまま、生理用ナプキン1を下着にしっかりと固定できるようになる。従って、
図1に示されるように、前後部に設けられたリボン形をした圧搾溝6は、両側に前記目印10、10が配置された長手方向の領域Sを含む領域に形成されているが、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部又は後側端部に合わせて設けられないとともに、前記領域Sから外側に延在して設けられているため、前記指押付け用圧搾部11ではない。
【0048】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、指押付け用圧搾部11が、生理用ナプキン1の幅方向に延びる線状に形成されていたが、
図8に示されるように、ズレ止め粘着剤層9…の前側端部及び後側端部のそれぞれに対応する肌当接面側の部位に、離散的に配置してもよい。これにより、ズレ止め粘着剤層9の端部位置のみを点状に指で押さえ付けて下着が固定できるため、ナプキン表面の接触面積を更に小さく抑えることができるようになる。
【0049】
(2)上記形態例では、体液排出部対応領域Hが生理用ナプキン1のほぼ中央部に設けられ、主として排血量が少ないときに用いる、いわゆる軽い日用の昼用生理用ナプキン1を例に挙げて説明したが、両側部に前記ウイング状フラップが設けられた前記体液排出部対応領域Hが位置する股下域と、前記股下域より前側の生理用ナプキンの前端までの領域であって、装着時に着用者の下腹部を覆う前側域と、前記股下域より後側の生理用ナプキンの後端までの領域であって、装着時に着用者の臀部を覆う後側域とからなり、前記後側域が前記前側域よりナプキン長手方向に長く形成され、かつ前記後側域の両側部にそれぞれ幅方向外方側に延出する左右一対のヒップホールド用フラップが形成された、いわゆる夜用の生理用ナプキンであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、8…糸状弾性伸縮部材、9…ズレ止め粘着剤層、10…目印、11…指押付け用圧搾部、H…体液排出部対応領域