IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用回転電機のロータ 図1
  • 特許-車両用回転電機のロータ 図2
  • 特許-車両用回転電機のロータ 図3
  • 特許-車両用回転電機のロータ 図4
  • 特許-車両用回転電機のロータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両用回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/30 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H02K1/30 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019144958
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021027732
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩也
(72)【発明者】
【氏名】末岡 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕太
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-005415(JP,A)
【文献】特開2015-192554(JP,A)
【文献】特開2017-022849(JP,A)
【文献】特開2017-221078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側の空間に摩擦クラッチが収容される円筒状のハブと、前記ハブに外嵌めされ、前記ハブの中心軸線方向に積層された複数枚の電磁鋼板を有する円筒状のロータコアと、を含む車両用回転電機のロータであって、
前記ハブは、外周面に前記ロータコアが嵌め着けられるロータ支持部と、前記ハブの径方向に伸びて前記ロータ支持部の内周面に一体的に連結し、前記空間を形成するハブ支持壁と、を含み、
前記ロータ支持部は、第1外径部と、前記第1外径部よりも外径寸法が小さい第2外径部と、前記第1外径部と前記第2外径部との間の段差部と、を有する段付き状に形成され、
前記第2外径部は、前記ハブ支持壁の径方向外側に位置するように形成され
前記積層された複数枚の電磁鋼板は、前記ロータ支持部の前記第1外径部及び前記第2外径部にそれぞれ締り嵌めされ、前記第1外径部及び前記第2外径部にはそれぞれ締り嵌め反力が発生させられている
ことを特徴とする車両用回転電機のロータ。
【請求項2】
前記段差部は、前記中心軸線方向において、前記ロータコアの両端部のうちの前記ハブ支持壁からの距離が大きい方の端部と前記ハブ支持壁との間に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用回転電機のロータ。
【請求項3】
前記第2外径部は、前記ハブ支持壁が前記ロータ支持部の内周面に連結されている部分の前記中心軸線方向の長さ寸法よりも長く形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用回転電機のロータ。
【請求項4】
前記ロータコアは、内周径の加熱後の縮径によって、前記ロータ支持部の外周面に締り嵌めされている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の車両用回転電機のロータ。
【請求項5】
前記段差部は、前記ロータ支持部の周方向全周に形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の車両用回転電機のロータ。
【請求項6】
前記ロータコアは、前記第1外径部、前記第2外径部および前記段差部に当接して前記ロータ支持部に嵌め着けられている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の車両用回転電機のロータ。
【請求項7】
前記ロータコアは、前記ロータ支持部の前記中心軸線方向の端部から径方向外側へ塑性変形されたかしめ突部によって前記中心軸線方向の摺動が規制されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1に記載の車両用回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用回転電機のロータに関し、特に車両用回転電機のロータの組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内周側の空間に摩擦クラッチが収容される円筒状のハブと、ハブに外嵌めされ、ハブの中心軸線方向に積層された複数枚の電磁鋼板を有する円筒状のロータコアとを含む車両用回転電機のロータが知られている。たとえば特許文献1に記載の車両用回転電機のロータがそれである。特許文献1に記載の車両用回転電機のロータでは、摩擦クラッチが円筒状のハブの内周側に収容され且つロータコアがハブに外嵌めにされているため、車両用回転電機のロータの中心軸線方向の長さ寸法を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-185759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両用回転電機のロータでは、摩擦クラッチを円筒状のハブ内の空間に収容するためにハブの内径が大径化されている。たとえばナット締結によってロータコアとハブとを固定する場合には、ハブの中心軸線方向に大きな締結トルクが必要になるので大掛かりな設備が必要になる。そのため、特許文献1に記載の車両用回転電機のロータでは、ロータコアがハブの外周に外嵌めされることによって固定されている。しかしながら、たとえばハブは形状などに起因してハブの中心軸線方向の部位に剛性いわゆるハブ剛性が異なるため、ロータコアがハブに外嵌めされた場合に、ロータコアに入力される反力にばらつきがあり、ロータコアのハブに対する締結力は弱まる可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ロータコアのハブに対する締結力が弱まることを抑制可能な車両用回転電機のロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、内周側の空間に摩擦クラッチが収容される円筒状のハブと、前記ハブに外嵌めされ、前記ハブの中心軸線方向に積層された複数枚の電磁鋼板を有する円筒状のロータコアと、を含む車両用回転電機のロータであって、前記ハブは、外周面に前記ロータコアが嵌め着けられるロータ支持部と、前記ハブの径方向に伸びて前記ロータ支持部の内周面に一体的に連結し、前記空間を形成するハブ支持壁と、を含み、前記ロータ支持部は、第1外径部と、前記第1外径部よりも外径寸法が小さい第2外径部と、前記第1外径部と前記第2外径部との間の段差部と、を有する段付き状に形成され、前記第2外径部は、前記ハブ支持壁の径方向外側に位置するように形成され、前記積層された複数枚の電磁鋼板は、前記ロータ支持部の前記第1外径部及び前記第2外径部にそれぞれ締り嵌めされ、前記第1外径部及び前記第2外径部にはそれぞれ締り嵌め反力が発生させられていることにある。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記段差部は、前記中心軸線方向において、前記ロータコアの両端部のうちの前記ハブ支持壁からの距離が大きい方の端部と前記ハブ支持壁との間に形成されていることにある。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明において、前記第2外径部は、前記ハブ支持壁が前記ロータ支持部の内周面に連結されている部分の前記中心軸線方向の長さ寸法よりも長く形成されていることにある。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第1発明から第3発明のいずれか1において、前記ロータコアは、内周径の加熱後の縮径によって、前記ロータ支持部の外周面に締り嵌めされていることにある。
【0010】
第5発明の要旨とするところは、第1発明から第4発明のいずれか1において、前記段差部は、前記ロータ支持部の周方向全周に形成されていることにある。
【0011】
第6発明の要旨とするところは、第1発明から第5発明のいずれか1において、前記ロータコアは、前記第1外径部、前記第2外径部および前記段差部に当接して前記ロータ支持部に嵌め着けられることにある。
【0012】
第7発明の要旨とするところは、第1発明から第6発明のいずれか1において、前記ロータコアは、前記ロータ支持部の前記中心軸線方向の端部から径方向外側へ塑性変形されたかしめ突部によって前記中心軸線方向の摺動が規制されていることにある。
【発明の効果】
【0013】
第1発明の車両用回転電機のロータによれば、前記ハブは、外周面に前記ロータコアが嵌め付けられるロータ支持部と、前記ハブの径方向に伸びて前記ロータ支持部の内周面に一体的に連結し、前記空間を形成するハブ支持壁と、を含んでいる。前記ロータ支持部は、第1外径部と、前記第1外径部よりも外径寸法が小さい第2外径部と、前記第1外径部と前記第2外径部との間の段差部と、を有する段付き状に形成されている。前記第2外径部は、前記ハブ支持壁の径方向外側に位置するように形成されている。そして、前記積層された複数枚の電磁鋼板は、前記ロータ支持部の前記第1外径部及び前記第2外径部にそれぞれ締り嵌めされ、前記第1外径部及び前記第2外径部にはそれぞれ締り嵌め反力が発生させられている。これにより、前記ロータ支持部の外径寸法に差が設けられるので、たとえば前記ハブの形状すなわち前記ハブ支持壁の位置に起因する前記ハブの剛性いわゆるハブ剛性のばらつきに拘わらず、締り嵌め反力が均一に近づけられる。そのため、前記ロータ支持部に前記ロータコアが外嵌めされる場合に、前記ハブから前記ロータコアに入力される反力のばらつきが抑制されるので、前記ロータコアの前記ハブに対する締結力が弱まることを抑制できる。
【0014】
第2発明によれば、前記段差部は、前記中心軸線方向において、前記ロータコアの両端部のうちの前記ハブ支持壁からの距離が大きい方の端部と前記ハブ支持壁との間に形成されている。これにより、前記ロータ支持部における前記ハブ支持壁からの距離が大きい側すなわち前記ハブ剛性が小さい側に前記第1外径部が形成されるので、前記ハブから前記ロータコアに入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0015】
第3発明によれば、前記第2外径部は、前記ハブ支持壁が前記ロータ支持部の内周面に連結されている部分の前記中心軸線方向の長さ寸法よりも長く形成されている。これにより、前記ハブは、たとえば前記ハブ支持壁からの距離が大きく前記ハブ剛性が小さい部分に比べて前記ハブ剛性が大きい部分に前記第2外径部が形成されるので、前記ハブから前記ロータコアに入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0016】
第4発明によれば、前記ロータコアは、内周径の加熱後の縮径によって、前記ロータ支持部の外周面に締り嵌めされている。これにより、前記ロータコアは、加熱によって拡径させられた内周径が冷却によって縮径させられて、前記ロータ支持部の外周面に確実に嵌め着けられる。
【0017】
第5発明によれば、前記段差部は、前記ロータ支持部の周方向全周に形成されている。これにより、前記ロータ支持部の周方向全周に前記第1外径部と前記第2外径部との外径寸法差が形成されるので、たとえば前記ハブの周方向において、前記ハブから前記ロータコアに入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0018】
第6発明によれば、前記ロータコアは、前記第1外径部、前記第2外径部および前記段差部に当接して前記ロータ支持部に嵌め着けられる。これにより、前記ロータコアは、前記ロータ支持部に前記第1外径部、前記第2外径部および前記段差部が形成されていない場合に比べて、前記ロータ支持部に当接する面積が増大した状態で前記ロータ支持部に嵌め着けられる。そのため、前記ロータ支持部に前記ロータコアが外嵌めされる場合に、たとえば前記ロータ支持部に対する前記ロータコアのすべりが抑制されるので、前記ロータコアの前記ハブに対する締結力が弱まることを抑制できる。
【0019】
第7発明によれば、前記ロータコアは、前記ロータ支持部の前記中心軸線方向の端部から径方向外側へ塑性変形されたかしめ突部によって前記中心軸線方向の摺動が規制されている。これにより、前記ロータコアは、前記中心軸線方向の摺動が抑制されて前記ハブに固定されるので、前記ロータ支持部に前記ロータコアが外嵌めされる場合に、前記ロータコアの前記ハブに対する締結力が弱まることをより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用された車両用回転電機のロータの要部の一部を示す断面図である。
図2図1のロータコアがハブに外嵌めされる際において、ロータコアがロータ支持部に嵌め入れられた状態を概略的に示した概略図である。
図3】従来のハブとハブに外嵌めされたロータコアとを概略的に示した概略図である。
図4図1のロータコアを構成する電磁鋼板の内周部の要部を拡大して示す拡大図である。
図5図1の複数枚の電磁鋼板のうちの隣り合う2枚の電磁鋼板がロータ支持部に嵌め着けられた状態を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、走行用の駆動力源としてエンジンを備えるエンジン駆動車両、走行用の駆動力源としてエンジンの他に走行用回転機すなわち駆動用電動機を有するハイブリッド車両や、電気自動車等に適用される。
【0022】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明が適用された車両用回転電機10(以下、回転電機10という)の要部の一部を示す断面図である。本発明が適用される車両12は、たとえば走行用駆動力源として機能する図示しないエンジンおよび回転電機10を備えたハイブリッド車両である。車両12は、上記エンジンと回転電機10との間の動力伝達経路に摩擦クラッチ14を備えている。上記エンジンおよび回転電機10からの動力は、図示しないトルクコンバータ、自動変速機、左右一対の車軸をそれぞれ介して左右一対の駆動輪に伝達される。車両12は、摩擦クラッチ14の係合または開放によって、上記エンジンおよび回転電機10の両方あるいは少なくとも一方により駆動される。摩擦クラッチ14は、湿式多板型のクラッチであって、たとえば上記エンジンと回転電機10との間の動力伝達経路を断接する油圧式摩擦係合装置である。
【0024】
回転電機10は、走行用の駆動力源であって、駆動力を出力する走行用電動機として機能するためのモータ機能を備えるとともに発電機能を少なくとも備える。
【0025】
回転電機10は、内部の空間に摩擦クラッチ14が収容された円筒状のハブ20と、ハブ20に外嵌めされた円筒状のロータコア22とを有している。図1の一点鎖線は、回転電機10の中心軸線Cであって、且つハブ20の中心軸線Cを示している。ロータコア22は、中心軸線C方向の一端側すなわち図1の紙面左側に設けられる円環状プレート24と、中心軸線C方向の他端側すなわち図1の紙面右側に設けられるエンドプレート26とによって挟まれるように配設されている。円環状プレート24およびエンドプレート26は、円環状に成形された板状部材である。ロータコア22は、複数枚の円環状の電磁鋼板82が中心軸線C方向に積層された円筒状に構成されている。ロータコア22内には、たとえば回転電機10が交流式同期電動機として機能するように図示しない永久磁石が埋設されている。回転電機10は、ロータコア22とハブ20と円環状プレート24とエンドプレート26とを含むロータ30と、ロータ30の外周外側すなわちロータ30の径方向の外側に配設される図示しないステータとを含んで構成されている。
【0026】
ハブ20は、中心軸線C方向に伸びる円筒状のロータ支持部40と、ロータ支持部40の中心軸線C方向の両端部のうちの一端部すなわち図1の紙面左側の端部をハブ20の径方向外側に向かって突き出すように形成されたフランジ部42と、ロータ支持部40の他端部からハブ20の径方向に伸びてロータ支持部40の内周面40aに一体的に連結するハブ支持壁44とを含んでいる。中心軸線C方向において、フランジ部42とロータコア22との間に円環状プレート24が配設されている。
【0027】
ロータ支持部40は、中心軸線C方向すなわち長手方向における長さ寸法がロータコア22よりも長く形成されている。ロータコア22がハブ20に嵌め着けられた状態すなわちロータコア22がロータ支持部40に外嵌めされてロータコア22の両端に円環状プレート24とエンドプレート26とがそれぞれ配設された状態において、中心軸線C方向におけるロータ支持部40の他端部には、ロータ30に対して中心軸線C方向に突出するかしめ突部46が形成されている。たとえば図示しないかしめ用冶具がハブ20の内周すなわちロータ支持部40の内周に押し入れられると、かしめ突部46がハブ20の径方向外側すなわちロータ支持部40の径方向外側に折り曲げられて塑性変形させられる。これにより、かしめ突部46によってハブ20とロータ30とがかしめられて固定されている。
【0028】
ハブ支持壁44は、ロータ支持部40の中心軸線C方向の他端部側、たとえばロータ支持部40の長手方向の略中央よりも他端部側に設けられている。ハブ支持壁44は、中心軸線C方向に直交する方向であるハブ20の径方向に内側に向かって伸びロータ支持部40の内周面40aから突出するように形成されている。ハブ支持壁44は、ロータ支持部40の内周面40aから所定の長さ寸法を有して形成されている。
【0029】
ハブ20には、内周側に空間Sが形成されている。空間Sには、摩擦クラッチ14が収容されている。さらに、空間Sには、図示しないロータ軸に嵌め着けられるボス部材50が配設されている。ボス部材50は、中心軸線C方向に伸びる円筒状の円筒部52と円筒部52の外周面から径方向外側に向かって伸びるボス支持壁54とを一体に備えている。上記ロータ軸には、円筒部52が嵌め着けられる。ボス部材50は、たとえばハブ支持壁44の内周部とボス支持壁54とが溶接あるいは圧入されることによってハブ20に一体的に固定されている。ボス部材50は、中心軸線Cに対して略同心に形成されている。
【0030】
ハブ20の内部の空間Sに収容される摩擦クラッチ14は、図示しないエンジンの動力が伝達される入力回転部材60と、出力回転部材であるハブ20とを断接するための摩擦係合要素62とを備えている。さらに、摩擦クラッチ14は、摩擦係合要素62を押圧するためのピストン64と、ピストン64を摩擦係合要素62の非押圧側すなわちピストン64が摩擦係合要素62から離れる方向に常時付勢するためのリターンスプリング66とを含んで構成されている。
【0031】
摩擦係合要素62は、入力回転部材60の外周面に相対回転不能且つ中心軸線C方向への移動可能にスプライン嵌合されている複数枚の内側摩擦プレート76と、ハブ20のロータ支持部40の内周面40aに相対回転不能且つ中心軸線C方向への移動可能にスプライン嵌合されている複数枚の外側摩擦プレート78とを備えている。また、摩擦係合要素62は、中心軸線C方向への移動不能に固定されているスナップリング80をロータ支持部40の内周面40aに備えている。複数枚の内側摩擦プレート76および外側摩擦プレート78は、中心軸線C方向で交互に積層されている。摩擦係合要素62は、たとえば外側摩擦プレート78がスナップリング80に当接することで、外側摩擦プレート78の軸線方向への移動が規制されている。
【0032】
ピストン64とボス支持壁54との間には、係合側油圧室70が形成されている。たとえば係合側油圧室70に調圧された作動油が供給された場合には、ピストン64が中心軸線C方向において摩擦係合要素62側すなわち押圧側に移動させられる。これにより、摩擦クラッチ14は係合状態になる。このとき、摩擦係合要素62を押圧するピストン64の押圧力に応じて、摩擦クラッチ14は半係合から完全係合の間で制御される。ピストン64の中心軸線C方向の一端側すなわちピストン64の摩擦係合要素62側には、環状壁72が設けられている。ピストン64と環状壁72との間には、遠心油圧キャンセル室74が形成されている。たとえば係合側油圧室70に調圧された潤滑油が供給されない場合には、遠心油圧キャンセル室74収容されたリターンスプリング66の付勢力にしたがってピストン64が中心軸線C方向において摩擦係合要素62から離れる側すなわち非押圧側に移動させられる。これにより、摩擦クラッチ14は開放状態になる。
【0033】
図2は、ハブ20とハブ20に外嵌めされるロータコア22とを概略的に示した概略図であって、ロータ支持部40の要部の形状を概略的に拡大して示している。ロータコア22は、ロータ支持部40の外周外側に配設されるようにロータ支持部40に外嵌めされており、たとえば締り嵌めによってロータ支持部40に外嵌めされる。締り嵌めは、たとえばまずロータコア22を加熱してロータコア22の内周径すなわちロータコア22を構成する円環状の電磁鋼板82の内周径をロータ支持部40の最大外径すなわち後述する第1外径部86の外径寸法よりも大きくなるように拡径させて、ロータコア22をロータ支持部40に嵌め入れる。その後、ロータコア22を冷却して電磁鋼板82の内周径を縮径させることによってロータコア22を熱収縮によりロータ支持部40に嵌め着けるものである。図2は、加熱により電磁鋼板82の内周径が拡径されて、ロータコア22がロータ支持部40に嵌め入れられた状態を概略的に示した概略図である。すなわち図2は、ロータ支持部40の後述する第2外径部88の外周外側に位置するロータコア22すなわち電磁鋼板82の内周径が冷却によって縮径されずに、ロータコア22がロータ支持部40に完全に嵌め着けられていない状態を示している。図2では、たとえばエンドプレート26などは省略した状態を示している。
【0034】
図2に示すように、ロータ支持部40には、段差部84が形成されている。段差部84は、ロータ支持部40の外周側に形成されている。ロータ支持部40は、外径寸法が異なる第1外径部86と第2外径部88とを有する段付き状に形成されている。具体的には、ロータ支持部40は、第1外径部86と、第1外径部86よりも外径寸法が小さい第2外径部88とを含んで形成されている。第1外径部86は、ロータ支持部40において段差部84よりも一端部側に形成され、第2外径部88は、ロータ支持部40において段差部84よりも他端部側に形成されている。図2のD1は、第1外径部86の外径D1を示している。図2のD2は、第2外径部88の外径D2を示している。図2のdは、第1外径部86の外径D1と第2外径部88の外径D2との外径寸法差dであって、ロータ支持部40の段差dを示している。すなわち、円筒状に形成されたロータ支持部40は、第2外径部88の肉厚が第1外径部86の肉厚よりも外径寸法差d分小さくなるように形成されている。
【0035】
段差部84は、中心軸線C方向において、たとえばハブ支持壁44と、ロータコア22の両端部のうちのハブ支持壁44からの距離が大きい方の端部側すなわちロータ30の一端部側の端部との間に形成されている。段差部84には、第1外径部86と第2外径部88とが連続的に形成されるように第1外径部86の外周面86aと第2外径部88の外周面88aとの間に段差面90が形成されている。段差部84は、ロータ支持部40の周方向全周に形成されている。具体的には、ロータ支持部40には、段差dがロータ支持部40の周方向全周に均一に形成されるように段差面90が形成されている。段差面90は、たとえば内側に向かって湾曲したR状に形成されている。
【0036】
第1外径部86は、段差部84の一端部側すなわちハブ支持壁44からの距離が段差部84よりも大きくなるロータ支持部40の端部側に形成されている。第1外径部86は、ロータ支持部40の最大外径となっている。
【0037】
第2外径部88は、ロータ支持部40において段差部84の他端部側に形成されている。第2外径部88は、ハブ支持壁44の径方向外側に位置するロータ支持部40の外周部分40bを含んで形成されている。すなわち第2外径部88は、少なくとも中心軸線C方向に直交する方向であってハブ支持壁44の径方向外側に位置するように形成されている。図2に示すように、第2外径部88は、ハブ支持壁44の中心軸線C方向の長さ寸法すなわちハブ支持壁44の厚さ寸法tよりも中心軸線C方向の長さ寸法が大きくなるように形成されている。ロータ支持部40の外周部分40bは、中心軸線C方向にハブ支持壁44の厚さ寸法tと同じ長さ寸法範囲である。
【0038】
図3は、ロータ支持部100に段差部84が形成されていない従来のハブ102とハブ102に外嵌めされたロータコア22とを概略的に示した概略図である。図3に示すように、従来のハブ102は、ロータ支持部100に外径寸法差が形成されずに、中心軸線C方向において均一な外径寸法を有している。
【0039】
図2および図3に示す矢印R1および矢印R2は、ロータ支持部40、100にロータコア22が外嵌めされた場合すなわちロータ支持部40、100にロータコア22が締り嵌めされた場合に、ハブ20、102の剛性いわゆるハブ剛性に応じてロータコア22に入力される反力いわゆる締り嵌め反力R1、R2の大きさを概略的に示したものである。ロータコア22がハブ20、102に締り嵌めされた際に、たとえばロータコア22が当接する部分におけるハブ剛性が大きい場合には締り嵌め反力が大きくなり、ハブ剛性が小さい場合には締り嵌め反力が小さくなる。
【0040】
ハブ剛性は、ハブ20、102の形状に基づいて大きさが異なり、たとえばロータ支持部40、100に連結して設けられるハブ支持壁44の位置などに基づいて大きさが異なる。具体的には、ハブ剛性は、中心軸線C方向において、ハブ支持壁44から離れた位置では小さくなり、ハブ支持壁44に近い位置では大きくなる。したがって、たとえば図3に示すように、従来のロータ支持部100にロータコア22が締り嵌めされた場合には、中心軸線C方向において、ハブ支持壁44に近い位置の高剛性部A1における矢印R1で示す締り嵌め反力R1は、ハブ支持壁44から離れた位置の低剛性部A2における矢印R2で示す締り嵌め反力R2よりも大きくなる。そのため、図3に示す従来のハブ102では、中心軸線C方向において締り嵌め反力差が大きく、たとえばロータコア22がロータ支持部100に締り嵌めされた場合にロータコア22の強度不足すなわちロータコア22のロータ支持部100に対する締結力が弱まることが問題となる可能性があった。
【0041】
本実施例では、図2に示すように、ロータ支持部40は、たとえば中心軸線C方向においてハブ剛性が大きくなる部分すなわち高剛性部A1の外径寸法が低剛性部A2の外径寸法よりも小さくなるように形成されている。すなわち、ロータ支持部40は、高剛性部A1に第2外径部88が形成され、低剛性部A2に第1外径部86が形成されている。したがって、図2に示すように、ロータ支持部40にロータコア22が嵌め入れられた状態において、ロータ支持部40の径方向外側すなわちロータ支持部40とロータコア22との間には段差dに相当する隙間94が形成される。本実施例において、隙間94すなわち逃げ部94がロータ支持部40に形成されることによってたとえば高剛性部A1におけるハブ剛性が小さくなり、ロータ支持部40におけるハブ剛性のばらつきすなわち高剛性部A1および低剛性部A2における締り嵌め反力の差が抑制され、締り嵌め反力が均一に近づけられる。そのため、本実施例において、ロータ支持部40にロータコア22が締り嵌めされた場合には、たとえば図2の矢印R1および矢印R2に示すように、ロータコア22に入力される締り嵌め反力R1、R2の大きさのばらつきが抑制される。
【0042】
図4は、ロータコア22を構成する複数枚の電磁鋼板82のうちの1枚の電磁鋼板82の内周部82aを拡大して示す図である。電磁鋼板82は、たとえばプレスによる打ち抜き加工などによって円環状に成形される。一例として、たとえば材料としての電磁鋼板82が図示しないプレス加工機のダイとパンチとの間に挟まれる状態で設置されて、電磁鋼板82の厚さ方向に図示しないパンチ側すなわち図4における電磁鋼板82よりも紙面左側から力が加えられて電磁鋼板82の打ち抜き加工が為される。打ち抜き加工が為されると、成形品としての電磁鋼板82のせん断部すなわち電磁鋼板82の内周部82aは変形させられ、たとえば図4の一点鎖線で囲むF部に示すように打ち抜き加工による破断によって形成されるプレスダレ110、および図4の一点鎖線で囲むG部に示すように図示しないパンチが圧下されることによってせん断ダレ112が形成される。
【0043】
図4に示すように、打ち抜き加工によって形成された電磁鋼板82の内周部82aには、図4における紙面左側の一端面82b側にプレスダレ110が形成され、図4における紙面右側の他端面82c側にせん断ダレ112が形成される。プレスダレ110は、たとえば電磁鋼板82の内周面82dから電磁鋼板82の外周側すなわち図4における紙面上側に向かうに従って一端面82bよりも紙面左側に突出するように盛り上がる凸状に形成されている。プレスダレ110は、一端面82bから突出する突出部分の突出長さが最も大きい突出部114を電磁鋼板82の内周面82dから電磁鋼板82の外周側に所定の距離daを隔てた位置に含んで形成されている。所定の距離daは、段差dよりも小さい長さ寸法である。突出部114は、一端面82bに対して図示しないパンチ側すなわち紙面左側に所定の距離ta分突出するように形成されている。プレスダレ110は、突出部114から電磁鋼板82の外周側に向かうに従って一端面82bからの突出部分が小さくなるように形成されている。
【0044】
せん断ダレ112は、たとえば電磁鋼板82の一端面82bに図示しないパンチが圧下されることによって、切刃すなわち電磁鋼板82の他端面82c側に配置される図示しないダイにより他端面82cにおける内周側の角部が周方向全周に面取りされるように内周部82aに形成されている。
【0045】
図5は、図1の二点鎖線で囲むE部を拡大して示す拡大図である。図5は、ロータ支持部40に締り嵌めされたロータコア22において、複数枚の電磁鋼板82のうちの隣り合う2枚の電磁鋼板82A、82Bがロータ支持部40に嵌め着けられた状態を拡大して示している。図5に示すように、電磁鋼板82Aはロータ支持部40の第1外径部86に嵌め着けられ、電磁鋼板82Bは第2外径部88に嵌め着けられている。電磁鋼板82A、82Bは、それぞれ略同じ形状に形成された電磁鋼板82であって、打ち抜き加工によってプレスダレ110およびせん断ダレ112がそれぞれ形成されている。
【0046】
図5に示すように、ロータ支持部40にロータコア22が締り嵌めされた場合に、電磁鋼板82Bの内周部82aは、段差部84に沿って段差面90およびロータ支持部40すなわち第2外径部88の外周面88aに当接させられる。たとえば電磁鋼板82Bの内周面82dは、第2外径部88の外周面88aに当接させられ、且つ電磁鋼板82Bの一端面82b側に形成されたプレスダレ110は段差面90に当接させられる。ロータ支持部40に段差部84が形成されていることによって、ロータ支持部40にロータコア22が締り嵌めされる際に、電磁鋼板82Bは、電磁鋼板82Aよりも段差d分多く縮径させられる。段差部84は、段差dが所定の距離daよりも大きく形成され、且つ電磁鋼板82の内周面82dに当接させられる面積が大きくなるように形成されている。したがって、ロータ支持部40にロータコア22が締り嵌めされた場合に、たとえば従来のロータ支持部100にロータコア22が締り嵌めされた場合に比べて、電磁鋼板82とロータ支持部40とが接触する面積は大きくなるので、ロータ支持部40に対するロータコア22のすべりが抑制される。そのため、ロータコア22は、従来に比べてトルク保持が有利になる。
【0047】
このように、本実施例の回転電機10によれば、ハブ20は、外周面86a、88aにロータコア22が嵌め付けられるロータ支持部40と、ハブ20の径方向に伸びてロータ支持部40の内周面40aに一体的に連結し、空間Sを形成するハブ支持壁44と、を含んでいる。ロータ支持部40は、第1外径部86と、第1外径部86よりも外径寸法が小さい第2外径部88と、第1外径部86と第2外径部88との間の段差部84と、を有する段付き状に形成されている。第2外径部88は、ハブ支持壁44の径方向外側に位置するように形成されている。これにより、ロータコア22が外嵌めされるロータ支持部40の外径寸法に差が設けられるので、たとえばハブ20の形状すなわちハブ支持壁44の位置に起因する締り嵌め反力のばらつきが抑制され締り嵌め反力が均一に近づけられる。そのため、ロータ支持部40にロータコア22が締り嵌めされる場合に、ハブ剛性に応じてロータコア22に入力される反力のばらつきが抑制されるので、ロータコア22のハブ20に対する締結力が弱まることを抑制できる。
【0048】
また、本実施例の回転電機10によれば、段差部84は、中心軸線C方向において、ロータコア22の両端部のうちのハブ支持壁44からの距離が大きい方の端部とハブ支持壁44との間に形成されている。これにより、ロータ支持部40におけるハブ支持壁44からの距離が大きい側すなわちハブ剛性が小さい側に第1外径部86が形成されるので、ハブ20からロータコア22に入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0049】
また、本実施例の回転電機10によれば、第2外径部88は、ハブ支持壁44がロータ支持部40の内周面40aに連結されている部分の中心軸線C方向の長さ寸法よりも長く形成されている。これにより、ハブ20は、たとえばハブ支持壁44からの距離が大きく剛性が小さい部分に比べて剛性が大きい部分に第2外径部88が形成されるので、ハブ20からロータコア22に入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0050】
また、本実施例の回転電機10によれば、ロータコア22は、内周径の加熱後の縮径によって、ロータ支持部40の外周面86a、88aに締り嵌めされている。これにより、ロータコア22は、加熱によって拡径させられた内周径が冷却によって縮径させられて、ロータ支持部40の外周面86a、88aに確実に嵌め着けられる。
【0051】
また、本実施例の回転電機10によれば、段差部84は、ロータ支持部40の周方向全周に形成されている。これにより、ロータ支持部40の周方向全周に第1外径部86と第2外径部88との外径寸法差dが形成されるので、たとえばハブ20の周方向において、ハブ20からロータコア22に入力される反力のばらつきがより抑制できる。
【0052】
また、本実施例の回転電機10によれば、ロータコア22は、第1外径部86、第2外径部88および段差部84に当接してロータ支持部40に嵌め着けられる。これにより、ロータコア22は、ロータ支持部40に第1外径部86、第2外径部88および段差部84が形成されていない場合に比べて、ロータ支持部40に当接する面積が増大した状態でロータ支持部40に嵌め着けられる。そのため、ロータ支持部40にロータコア22が外嵌めされる場合に、たとえばロータコア22のすべりが抑制されるので、ロータコア22のハブ20に対する締結力が弱まることを抑制できる。
【0053】
また、本実施例の回転電機10によれば、ロータコア22は、ロータ支持部40の中心軸線C方向の端部から径方向外側へ塑性変形されたかしめ突部46によって中心軸線C方向の摺動が規制されている。これにより、ロータコア22は、中心軸線C方向の摺動が抑制されてハブ20に固定されるので、ロータ支持部40にロータコア22が外嵌めされる場合に、ロータコア22のハブ20に対する締結力が弱まることをより抑制できる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0055】
たとえば、ロータ支持部40に複数個の段差部84が設けられていてもよい。すなわち、段差部84は、ハブ20の剛性が均一に近づくように、ハブ20の形状に基づき段差部84による隙間94すなわち逃げ部94がロータ支持部40に形成されていればよい。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:回転電機(車両用回転電機)
14:摩擦クラッチ
20:ハブ
22:ロータコア
30:ロータ
40:ロータ支持部
40a:内周面
44:ハブ支持壁
46:かしめ突部
82:電磁鋼板
84:段差部
86:第1外径部
88:第2外径部
C:中心軸線
S:空間
図1
図2
図3
図4
図5