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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】多用途汚水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20230920BHJP
   C02F 3/30 20230101ALI20230920BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230920BHJP
【FI】
C02F3/12 M
C02F3/12 H
C02F3/30 A
C02F1/44 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019150803
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021030125
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502217539
【氏名又は名称】株式会社アイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲史
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-254673(JP,A)
【文献】特開2007-245002(JP,A)
【文献】特開2014-094322(JP,A)
【文献】特開2002-096087(JP,A)
【文献】特開2000-334439(JP,A)
【文献】特開2013-208535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/30
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注水口及び排水口を備え運搬が可能なコンテナに、
複数の汚水処理ユニットを収納する汚水処理ゾーンと、
前記汚水処理ユニットに対して配管を介して気体を供給するためのエアポンプ、バクテリア供給装置、及び電気制御装置を収納する制御ゾーンと、が区画配置され、
前記汚水処理ユニットの少なくとも一つには、汚水の流れの上流側の前記汚水処理ユニットから下流側の前記汚水処理ユニットへ前記汚水を供給する連通管が設けられ、
前記汚水処理ゾーンに複数の前記汚水処理ユニットを順次連接配置することによって、前記注水口から供給される前記汚水が複数の前記汚水処理ユニットを通って前記排水口から排水される一連の汚水処理流路を構成した多用途汚水処理システムであって、
前記汚水処理ゾーンは、複数の前記汚水処理ユニットを所定数配置可能にする内寸を備え、かつ前記エアポンプから前記気体を供給する前記配管を上部に備え、
さらに複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つは、前記汚水を蓄えるタンク及び前記タンク内の前記汚水にエアを供給し前記汚水に含まれる有機物質を微細分解するとともにバクテリアを用いた酸化分解を行うエアレーション装置を備えた好気汚水処理槽であって、
さらに複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つを、前段からの前記汚水が流れ込まないようにバイパス菅を設けることにより泡回収槽とした
多用途汚水処理システム。
【請求項2】
複数の前記汚水処理ユニットは
少なくとも、流量調整槽、ろ過槽、沈殿槽、嫌気性汚水処理槽
のうちいずれか1つを含む、請求項1に記載の多用途汚水処理システム。
【請求項3】
複数の前記汚水処理ユニットは、相互に互換性を有する同一の外形寸法の筐体として構成された、請求項1または請求項2に記載の多用途汚水処理システム。
【請求項4】
複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つは、前記タンク内の前記汚水の流量を制御する流量制御ポンプを備えた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多用途汚水処理システム。
【請求項5】
前記汚水処理ユニット内部の空気圧を可変にする開閉可能な開口部を前記汚水処理ユニットまたは前記コンテナに設け、前記泡回収槽の上部の開口部を解放した構成を有する請求項1に記載の多用途汚水処理システム。
【請求項6】
前記泡回収槽は、泡同士が凝縮し溜まった前記汚水を下流側に流す流量制御ポンプを前記泡回収槽に設けた、請求項1または請求項5に記載の多用途汚水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工排水、鉱物系含有排水等の産業排水処理、または塗装等に必要な循環水浄化処理等の多用途に適用できる多用途汚水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が取り沙汰されている中で、産業排水・浄化処理に対するニーズが高まっている。これに対応するため汚水浄化装置が種々開発されている。 技術の進歩に伴い処理を必要とする排水の種類や量が多様化し、排水の処理装置も質・量ともに多様化し、処理装置自体が複雑化し、大きさも大小様々となり特別の工事を必要とすることで建設費も高価なものとなってきている。
【0003】
浄化装置をトラック等に積載できるコンテナの形態に構成することで、設置工事費の低減を図る取り組みが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000ー254673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の汚水浄化装置は、汚水が発生する場所の近くに浄化装置を容易に設置できるが、多様な汚水に対応するために多種の機能をコンテナ内に配置するため、浄化装置全体の構造が複雑になって装置全体が高価となり、能力が低下しても浄化装置の全体を一から作り直す必要があり、浄化能力を所定水準に維持するコストが比較的高いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本願発明の多用途汚水処理システムは、注水口及び排水口を備え運搬が可能なコンテナに、複数の汚水処理ユニットを収納する汚水処理ゾーンと、前記汚水処理ユニットに対して配管を介して気体を供給するためのエアポンプ、バクテリア供給装置、及び電気制御装置を収納する制御ゾーンと、が区画配置され、前記汚水処理ユニットの少なくとも一つには、前記汚水の流れの上流側の汚水処理ユニットから下流側の前記汚水処理ユニットへ前記汚水を供給する連通管が設けられ、前記汚水処理ゾーンに複数の前記汚水処理ユニットを順次連接配置することによって、前記注水口から供給される前記汚水が複数の前記汚水処理ユニット通って前記排水口から排水される一連の汚水処理流路を構成した多用途汚水処理システムであって、前記汚水処理ゾーンは、複数の前記汚水処理ユニットを所定数配置可能にする内寸を備え、かつ前記エアポンプから前記気体を供給する前記配管を上部に備え、さらに複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つは、前記汚水を蓄えるタンク及び前記タンク内の前記汚水にエアを供給し前記汚水に含まれる有機物質を微細分解するとともにバクテリアを用いた酸化分解を行うエアレーション装置を備えた好気汚水処理槽であって、さらに複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つを、前段からの前記汚水が流れ込まないようにバイパス菅を設けることにより泡回収槽としたことを特徴とする構成である。
【0007】
さらに、複数の前記汚水処理ユニットは、複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも1つは、前記タンク内の前記汚水の流量を制御する流量制御ポンプを備えた多用途汚水処理システムであってよい。
【0008】
また、複数の前記汚水処理ユニットは、少なくとも、流量調整槽、ろ過槽、沈殿槽、及び嫌気性汚水処理槽のうちいずれか1つを含む構成としてよい。さらに、前記汚水処理ユニットは、前記汚水処理ユニット内部の空気圧を調整可能な開口部を有する構成としてよい。また、複数の前記汚水処理ユニットは、相互に互換性を有する同一の外形寸法の筐体として構成されてもよい。さらに、複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも一つは、前記タンク内の汚水の流量を制御する流量制御ポンプを備えてよく、前記汚水処理ユニットは、汚水処理ユニット内部の空気圧を調整可能な開口部を有する構成としてよい。前記汚水処理ユニット内部の空気圧を可変にする開閉可能な開口部を前記汚水処理ユニットまたは前記コンテナに設け、泡回収槽の上部の開口部を解放しても良い。
【0009】
また、複数の前記汚水処理ユニットは、相互に互換性を有する同一の外形寸法の筐体として構成されてもよい。さらに、複数の前記汚水処理ユニットの内の少なくとも一つは、前記タンク内の汚水の流量を制御する流量制御ポンプを備えてよく、前記汚水処理ユニットは、前記汚水処理ユニット内部の空気圧を調整可能な開口部を有する構成としてよい。また、前記泡回収槽は、泡同士が凝縮し溜まった前記汚水を下流側に流す流量制御ポンプを前記泡回収槽に設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
このような構成では、複数の汚水処理ユニットを、ニーズに合わせて多機能なユニットを適宜選択してコンテナ内に所定数が配置され、かつ、万一浄化不良や、浄化能力不足となっても、適宜汚水処理ユニットの機能を変更・交換できるという、作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る排気浄化システムを示す斜視断面図
図2】本発明の別の実施形態の多用途汚水処理システムの汚水処理ゾーンの正面断面図
図3】本発明のさらに別の実施形態の多用途汚水処理システムの汚水処理ゾーンの正面断面図
図4】(a)エアレーション装置の正面図、(b)同上面図
図5】汚水処理ユニットの構成の例を示す設計説明フロー図
図6】本発明のさらに別の実施形態に係る排気浄化システムを示す斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態の多用途汚水処理システムについて説明する。図1は本発明の実施形態の多用途汚水処理システムの斜視断面図である。多用途汚水処理システム101は、全体を運搬が可能なコンテナ1に、処理を行う汚水の注水口2及び排水口3を備えている。
コンテナ1内は、汚水処理ゾーン1Aと制御ゾーン1Bとに区画している。汚水処理ゾーン1Aはコンテナ1の一端側に配置し、制御ゾーン1Bはコンテナ1の他端側に配置する。
汚水処理ゾーン1Aは汚水処理室として構成され、汚水処理ゾーン1Aには、複数の汚水処理ユニット10を収納する(6ユニット)。
制御ゾーン1Bは機械室として構成され、制御ゾーン1Bには、エアポンプ21、バクテリア供給装置22、及び電気制御装置23を収納する。
エアポンプ21にはエア供給配管4の一端が接続され、エア供給配管4は汚水処理ゾーン1Aの上部の位置に水平に配置する。エア供給配管4によって、それぞれの汚水処理ユニット10には、エアポンプ21から送出される気体を供給することができる。
【0013】
汚水処理ユニット10の少なくとも一つには、例えば汚水の流れの上流側の汚水処理ユニット10から下流側の汚水処理ユニット10へ汚水を供給する連通管11が設けられている。
連通管11は、上流側の汚水処理ユニット10に汚水導入口11aを配置し、下流側の汚水処理ユニット10に汚水導出口11bを配置することで、2つの汚水処理ユニット10を連通させる。汚水導入口11aは汚水処理ユニット10の下部に配置し、汚水導出口11bは汚水処理ユニット10の上部に配置する。
このように、汚水処理ゾーン1Aでは、複数の汚水処理ユニット10を連通管11によって順次連接することによって、注水口2から供給される汚水が、複数の汚水処理ユニット10を通って排水口3から排水される一連の汚水処理流路が構成される。
【0014】
複数の汚水処理ユニット10は、所定の外形寸法(幅W、長さL、高さH)に構成され、汚水処理ゾーン1Aは、複数の汚水処理ユニット10を所定数(例えば6ユニット分)配置可能にする内寸を備えている。複数の汚水処理ユニット10を同一の外形寸法にすれば、汚水処理ユニット10は相互に互換でき、汚水処理ユニット10にそれぞれ備える機能(後述する)を多種組合せることが可能であり、故障時の取り替えや機能変更、処理能力の調整が行える構成となる。
【0015】
汚水処理ユニット10に汚水処理機能を持たせるため、少なくとも一つの汚水処理ユニット10は、汚水を蓄えるタンク12、及びタンク12内の汚水にエアを供給し汚水に含まれる有機物質を微細分解するとともに好気バクテリアを用いた酸化分解を行うエアレーション装置13を備えた好気汚水処理槽Eとしている。汚水処理ユニット10に異なる機能を持たせるため、汚水処理ユニット10のそれぞれを、流量調整槽C、泡回収槽B、ろ過槽F、沈殿槽P、嫌気性汚水処理槽Aを含む構成としてもよい。特に、汚水浄化処理の途中に生じる泡については従来回収することが困難とされており、泡回収槽Bを設けることで泡回収が可能となる。
汚水処理ユニット10のそれぞれの上面には開口部14を設けている。開口部14は、汚水処理ユニット10内の点検を可能とする。開口部14には蓋14aを設けている。また、機械室として機能する制御ゾーン1Bにはメンテナンスを作業員が行えるように出入口5が設けられている(コンテナ1の背面)。
【0016】
図1における6つの汚水処理ユニット10は、上流側から順に、好気汚水処理槽E、好気汚水処理槽E、嫌気性汚水処理槽A、好気汚水処理槽E、ろ過槽F、及び好気汚水処理槽Eとしている。
上流から3段目の汚水処理ユニット10は、嫌気性汚水処理槽Aとして構成されている。汚水の中に含まれる汚染物質には、好気バクテリアでは分解できない難分解性の物質も存在している。このために酸素の欠乏した中で活動する嫌気性のバクテリアによって、難分解性の物質の分解が可能なように、上流から3段目の汚水処理ユニット10を嫌気性汚水処理槽Aとして構成している。本実施形態では、嫌気性汚水処理槽Aにおいては、エアレーション装置13を配置していないが、エアレーション装置13を配置して汚水の攪拌機能を持たせる機能調整をしてもよい。
上流から5段目の汚水処理ユニット10は、ある程度の汚水処理が、上流から4段目までの汚水処理ユニット10により行われた汚水をろ過するためにろ過槽Fとして構成され、ろ過に用いられるろ過材15としては、一般的に使用される炭素、砂、ろ過用浸透膜、メッシュ等を何層か重ねて構成される。
【0017】
図2は、本発明の別の実施形態の多用途汚水処理システムの汚水処理ゾーンを示す正面断面図である。図2では、制御ゾーンについては図示を省略し、図1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の多用途汚水処理システム102における汚水処理ゾーン1Aには、上流側から順に、2つの流量調整槽C、及び4つの好気汚水処理槽Eとした汚水処理ユニット10が設置されている。
2つの流量調整槽Cにも、エアレーション装置13が配置され汚水の分解処理機能を有しているが、主な機能は流量調整槽Cとしての機能である。流量調整槽Cとしての機能は、注水口2から注入される汚水を貯蔵して所定の量の汚水が溜まった段階(水位センサ等(図示せず)で上限水位Hと下限水位Lが制御される。)でこれを検知し、電気制御装置23により制御される流量制御ポンプ16が、下流側の汚水処理ユニット10に汚水を移動させる。なお、2つの流量調整槽Cは連通している。流量調整槽Cを上流に設けることで、下流側にある汚水処理ユニット10に所定量の汚水が流れ、排水口3へ至る汚水の流量が調整される。
【0018】
このように、複数の汚水処理ユニット10の内の幾つか(本実施形態では1台)が汚水の流量を制御する流量制御ポンプ16を備えることで、システム全体の汚水処理能力が調整される。複数の汚水処理ユニット10のいずれかを、流量調整槽Cの他に、沈殿槽P(precipitation)とすることができる。沈殿槽Pの機能は、エアレーション装置13で分解されない物質や重金属等を沈殿させることである。沈殿槽Pのタンク12の上澄みをさらに次の汚水処理ユニット10に流量制御ポンプ16を用いて移動させ、タンク12の底に溜まった重金属は別途定期的に回収処理する。
【0019】
汚水処理ユニット10の各槽の機能の組み合わせとしては、泡回収槽Bを配置することが好ましい。
図3は、本発明のさらに別の実施形態の多用途汚水処理システムの汚水処理ゾーンの正面断面図である。図3では、制御ゾーンについては図示を省略し、図1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の多用途汚水処理システム103における汚水処理ゾーン1Aには、上流側から順に、2つの流量調整槽C、1つの泡回収槽B、及び3つの好気汚水処理槽Eとした汚水処理ユニット10が設置されている。
エアレーション装置13を使用すると汚水の分解中に泡が発生するが、一般的に泡回収は困難なものとされている。しかし少なくとも1つの汚水処理ユニット10を、泡回収槽Bとすることで泡の解消を図ることができる。泡回収槽Bでは、前段からの汚水が流れ込まないようにバイパス菅17を設けて汚水を次の汚水処理ユニット10にバイパスしている。泡回収槽Bでは、前段の汚水処理ユニット10(流量調整槽C)に設けた連通管11からの汚水を、下流側の汚水処理ユニット10(好気汚水処理槽E)へバイパスする。泡回収槽Bでは、上部の開口部14の蓋14aを解放し、隣接する汚水処理ユニット10では開口部14を蓋で閉状態のままとする。
蓋14aで開口部14を閉塞状態とした汚水処理ユニット10では、エアレーション装置13によって加圧されるため、開口部14の蓋14aを解放した泡回収槽Bよりも高い圧力状態となる。従って、蓋14aで開口部14を閉塞状態とした汚水処理ユニット10で発生する汚染された空気の泡は、泡回収槽Bに流れ込む。泡回収槽Bに流入した泡は、泡回収槽B内において泡同士が凝縮して汚水に戻る。泡回収槽B内に溜まった汚水は、流量制御ポンプ16によって下流側の汚水処理ユニット10に流すことができる。なお、泡回収槽B内に溜まった汚水は、流量制御ポンプ16を用いることなく、開口部14から排出してもよい。
【0020】
次に、本発明の多用途汚水処理システムに用いるエアレーション装置について説明する。
図4(a)はエアレーション装置の要部正面図、図4(b)は同装置の要部上面図である。
エアレーション装置13は、エア配管30と気泡粉砕装置40とから構成される。
エア配管30の一端はエア供給配管4に接続され、エア配管30の他端はノズル31を形成する。
気泡粉砕装置40は、筒状の装置本体41と円柱体42とから構成される。円柱体42は装置本体41の上部に積載される。ノズル31は、装置本体41の仮想中心軸に沿って配置され、装置本体41の上部には、複数の円柱体42が積載される。ノズル31は、円柱体42よりも低い位置に配置される。
気泡粉砕装置40は、タンク12の下部に配置されている。エアレーション装置13は、タンク12内の汚水に対して空気を送り、空気中の酸素の働きにより、汚水中に含まれる有機物を酸化分解する機能を持つ。汚水に含まれる有機物は、タンク12内でエアレーション装置13から供給された空気に含まれる酸素によって酸化反応を起こし、分解される。この場合、好気性及び嫌気性バクテリア(酵素)がバクテリア供給装置22(タンク12内で自然に発生する場合も含む)により汚水中に供給され、タンク12内で拡散して作用し、汚水が分解される。このようにして汚水中の臭気及び油分が分解処理される。
【0021】
空気は、エアポンプ21からエア供給配管4及びエア配管30を通じてタンク12内に供給される。タンク12内に供給される高圧の空気は、ノズル31より吐出される。
エアレーション装置13は、ノズル31から吐出される空気を、微細な泡に粉砕し、同時に汚水に含まれる汚染物質を微粒化する機能を有する。このためノズル31より吐出される空気を微細化するための円柱体42がノズル31より上方に配置されている。汚水中に配置される気泡粉砕装置40には、円柱体42が空気の吐出方向(X軸方向)に複数個重ねて配置されている。
【0022】
円柱体42は、円筒状の本体42aと、本体42aから中心に向かって突き出た複数の突起部42bとから構成され、突起部42bには孔42cを多数設けている。複数の突起部42bの先端には、中央にX軸を中心とする開口部43が構成されるように、突起部42bの長さが調整されている。円柱体42は空気の吐出方向(X軸方向)に複数個重ねて配置されており、さらに開口部43とノズル31に設けた空気の吐出口31aとは、軸方向に同軸となるように位置合せされている。以上の構成により、吐出口31aより上方に高速で吐出される空気は、開口部43を高速で通過するとともに、複数の突起部42bと衝突し、エアポンプ21からの空気は微細な泡に粉砕され、同時に汚水に含まれる汚染物質を微粒化する。
【0023】
特に、エアポンプ21の空気出力圧が、空気と汚水との気液混合体となって速度が毎秒5m以上となるよう調整されることによって、汚染物質をより微粒化することができ、好気性バクテリアが作用(代謝作用)し、汚水(鉱物油含有排水等)中の汚染物質を分解(代謝作用)し、ノルマルヘキサン値を5mg/l(パーリットル)以下にすることが可能となる。
【0024】
また、気泡粉砕装置40は、一つのタンク12内で6か所に配置されるが、設置個数は求められる処理能力により調整可能である。互いに隣接する円柱体42は、軸方向に見た状態で突起部42bが互いに重ならないように、回転方向に22.5度ずらせて配置される。
【0025】
以上のような構成では、コンテナ1に配置される所定数(本実施形態では6ユニット、ただしユニット数は変更可能)において、エアレーション装置13を備えた好気汚水処理槽Eを基本構成とした上で、それぞれの汚水処理ユニット10に異なる機能を持たせる。また、汚水処理ユニット10を、流量調整槽C、泡回収槽B、ろ過槽F、沈殿槽P、嫌気性汚水処理槽Aを含む構成として、適宜組合せることが可能となる。
図5は、汚水処理ユニットの構成の例を示す設計フロー図であり、それぞれの汚水処理ユニット10には、流量調整槽Cを設けるか否かを含め、その後の汚水の各処理槽の構成を選択することができ、多種の処理ができる構成の例を示す。
【0026】
次に、本発明のさらに別の実施形態の多用途汚水処理システムについて、図6を参照しながら説明する。
図6は本発明のさらに別の実施形態の多用途汚水処理システム104の斜視断面図で、図1から図3と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の多用途汚水処理システム104においては、汚水の注水口2及び排水口3を備えたコンテナ1に設けた汚水処理ゾーン1Aには、複数の汚水処理ユニット10を収納する(6ユニット)。複数の汚水処理ユニット10は、それぞれ相互に互換性を有する同一の外形寸法(幅Wa、長さLa、高さHa)の筐体10Aを備えている。筐体10Aは、汚水処理ユニット10内に収納可能な外形寸法である。
【0027】
コンテナ1の側面には、筐体10Aを出し入れ交換可能にする扉6が設けられている。コンテナ1の汚水処理ゾーン1Aは、複数の汚水処理ユニット10を所定数(例えば6ユニット分)配置可能にする内寸を備えている。エアポンプ21から気体を供給するエア供給配管4は、汚水処理ユニット10間で公知の連結ユニット(図示せず)を用いて相互に連結される。汚水処理ユニット10は、それぞれ流量調整槽C、泡回収槽B、ろ過槽F、沈殿槽P、嫌気性汚水処理槽Aが筐体10Aとして構成される。
【0028】
複数の汚水処理ユニット10は、それぞれ相互に互換性を有する同一の外形寸法の筐体10Aを備えているので、流量調整槽C、泡回収槽B、ろ過槽F、沈殿槽P、嫌気性汚水処理槽Aを多種組合せることが可能であり、かつ故障時の取り替えや機能変更、処理能力の調整が必要になった時は、扉6を開閉し側面から筐体10Aの交換が行える。
【0029】
本実施形態の多用途汚水処理システム104では、複数の汚水処理ユニッット10を相互に互換性を有するように同一の外形寸法(幅Wa、長さLa、高さHa)の筐体10Aに構成し、コンテナ1に設けた汚水処理ゾーン1Aでは、複数の汚水処理ユニット10を所定数(例えば6ユニット分)配置可能にする内寸を備え、複数の汚水処理ユニット10を、ニーズに合わせて多機能な槽を適宜選択することができる。当初の設計から事情変更が生じ、浄化不良や、浄化能力不足となっても、適宜汚水処理ユニット10を追加、交換できる。
【0030】
特に汚水処理ユニット10を泡回収槽Bとして使用する場合には、上部の開口部14の蓋14aを解放し、隣接する汚水処理ユニット10の開口部14の蓋14aを閉状態のままとすることで、泡回収槽Bと、泡回収槽Bに隣接する汚水処理ユニット10との間で、泡回収槽Bが低圧となるように空気圧の差を作ることができる。このために、それぞれの汚水処理ユニット10の上方に、それぞれの汚水処理ユニット10に対応して、開口部14と蓋14aとを備えている。なお、開口部14と蓋14aは、汚水処理ユニット10に設けても良いし、コンテナ1に設けても良いが、要は少なくとも2つの汚水処理ユニット10の間で、空気圧の差異が生じるように開口部14を蓋14aで開閉する。汚水処理ユニット10を泡回収槽Bとして使用する場合、どの位置に配置しても、泡回収槽Bに対応する上方の開口部14を解放することで、蓋14aで開口部14を閉状態とする汚水処理ユニット10より泡回収槽Bの空気圧を低くできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
産業上の利用可能性としては、農業用水、養殖施設、ビルジ排水、工場排水等の産業排水だけでなく河川、池、循環水、生活排水等において、多様な量の汚水への適応能力が増大し、汚水に含まれていた汚染物質に対して幅広く対応が可能となり、ノルマルヘキサン値を3mg/(リットル)とすることが可能となり、下水として排出可能となるばかりでなく、飲料水とするための準備水浄としての水処理が可能となった。
【符号の説明】
【0032】
101~104 多用途汚水処理システム
1 コンテナ
1A 汚水処理ゾーン
1B 制御ゾーン
2 注水口
3 排水口
4 エア供給配管
5 出入口
10 汚水処理ユニット
10A 筺体
11 連通管
11a 汚水導入口
11b 汚水導出口
12 タンク
13 エアレーション装置
14 開口部
14a 蓋
15 ろ過材
16 流量制御ポンプ
17 バイパス菅
21 エアポンプ
22 バクテリア供給装置
23 電気制御装置
30 エア配管
31 ノズル
31a 吐出口
40 気泡粉砕装置
41 装置本体
42 円柱体
42a 本体
42b 突起部
42c 孔
43 開口部
A 嫌気性汚水処理槽
B 泡回収槽
C 流量調整槽
E 好気汚水処理槽、
F ろ過槽
P 沈殿槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6