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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/29 20060101AFI20230920BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230920BHJP
   H01Q 5/40 20150101ALI20230920BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01Q21/29
H01Q1/32 Z
H01Q5/40
H01Q1/22 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019161804
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040275
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】寺下 典孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 元久
(72)【発明者】
【氏名】小池 亨
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓也
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/027036(WO,A1)
【文献】特開2009-135741(JP,A)
【文献】特開2019-080096(JP,A)
【文献】特開2006-211289(JP,A)
【文献】特表2012-503382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/29
H01Q 1/32
H01Q 5/40
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースとアンテナベースとで囲まれた収容空間内に複数のアンテナを有し、車両外面に取り付けられた際の車両外面からの高さが70mm以下の車載用アンテナ装置であって、
第1パッチアンテナが搭載された第1基板と、
第2パッチアンテナが搭載された第2基板と、
を備え、前記第1基板は、前記第2基板よりも高い位置に設けられており、
前記第1基板は、前記第2パッチアンテナで受信した受信信号を復調してデジタル信号として出力する受信回路部を搭載する、
車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1パッチアンテナは、前記第2パッチアンテナよりも、受信周波数が低い、
請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記第1パッチアンテナは、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星波を受信するためのアンテナである、
請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第2パッチアンテナは、所定のデジタル放送を受信するためのアンテナである、
請求項1~3の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
車両への取り付け前後方向が定められており、
前記第2基板は、前記第1基板よりも前方に設けられている、
請求項1~4の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記第1基板は、上面が、前記第2パッチアンテナの上面よりも高い位置に設けられている、
請求項1~5の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記第1基板は、上面が、前記車両外面に取り付けられた際の前記車両外面からの高さが25mm以下となる位置に設けられ、
前記第2基板は、上面が、前記車両外面に取り付けられた際の前記車両外面からの高さが15mm以下となる位置に設けられている、
請求項1~6の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
車両への取り付け前後方向が定められており、
前記第1基板における前記受信回路部の搭載位置は、前記第1パッチアンテナの給電点よりも後方である、
請求項1~7の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項9】
前記第1基板は、第1アンテナエレメントおよび第2アンテナエレメントを有する移動通信用アンテナを搭載し、
前記第1パッチアンテナは、前記第1アンテナエレメントと前記第2アンテナエレメントとの間に搭載されている、
請求項1~8の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項10】
前記車両外面は、車両のルーフである、
請求項1~9の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項11】
ケースとアンテナベースとで囲まれた収容空間内に複数のアンテナを有し、車両外面に取り付けられた際の車両外面からの高さが70mm以下の車載用アンテナ装置であって、
第1パッチアンテナが搭載された第1基板と、
第2パッチアンテナが搭載された第2基板と、
を備え、
前記第1基板は、前記車両外面への取り付け前後方向において前記第2基板よりも後方であり、且つ、前記第2基板よりも高い位置に設けられており、
前記第1基板は、上面に前記第1パッチアンテナを搭載し、下面のうち、前記車両外面への取り付け前後方向において前記第1パッチアンテナの給電点よりも後方に受信回路部を搭載し、
前記受信回路部は、前記第2パッチアンテナとケーブルで接続され、前記第2パッチアンテナで受信した受信信号を復調してデジタル信号として出力する、
車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャークフィンアンテナやドルフィンアンテナと呼ばれる自動車のルーフ上に取り付けられる車載用アンテナ装置が開発されており、1つの車載用アンテナ装置内に複数のアンテナを搭載したものも知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-186407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用アンテナ装置には、外部環境に耐える耐環境性能に関する要望、小型化やデザイン性などの形状や大きさに関する要望、等が求められる。これらの要望をできるだけ叶えながら、アンテナ本来の特性向上を図ることができる車載用アンテナ装置の開発が求められている。車載用アンテナ装置に複数のアンテナを搭載する場合には、車載用アンテナ装置内の配置構成には改良の余地があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数のアンテナを搭載する車載用アンテナ装置において、各々のアンテナの特性に好適な構成となる新たな車載用アンテナ装置の技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、ケースとアンテナベースとで囲まれた収容空間内に複数のアンテナを有し、車両外面に取り付けられた際の車両外面からの高さが70mm以下の車載用アンテナ装置であって、第1パッチアンテナが搭載された第1基板と、第2パッチアンテナが搭載された第2基板と、を備え、前記第1基板は、前記第2基板よりも高い位置に設けられている車載用アンテナ装置である。
【0007】
前記第1パッチアンテナは、前記第2パッチアンテナよりも、受信周波数が低くてもよい。
【0008】
前記第1パッチアンテナは、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星波を受信するためのアンテナであってもよい。
【0009】
前記第2パッチアンテナは、所定のデジタル放送を受信するためのアンテナであってもよい。
【0010】
本態様によれば、搭載する2つのパッチアンテナのうちの一方(第1パッチアンテナ)を、他方(第2パッチアンテナ)よりも高い位置に配置することができる。例えば、GNSSの衛星波を受信するためのアンテナを、所定のデジタル放送を受信するためのアンテナよりも高い位置に配置した車載用アンテナ装置を実現できる。これによれば、低位置に配置した第2パッチアンテナについては低仰角に比べて中仰角~高仰角の特定の範囲で高い利得が要求されるアンテナとして好適であり、高位置に配置した第1パッチアンテナについては低仰角から高仰角まで満遍なく広い仰角範囲で一定程度の利得が得られるアンテナとして好適な構成とすることが可能となる。
【0011】
また、前記車載用アンテナ装置において、車両への取り付け前後方向が定められており、前記第2基板が、前記第1基板よりも前方に設けられていることとしてもよい。
【0012】
前記第1基板は、上面が、前記第2パッチアンテナの上面よりも高い位置に設けられていることとしてもよい。
【0013】
前記第1基板は、上面が、前記車両外面に取り付けられた際の前記車両外面からの高さが25mm以下となる位置に設けられ、前記第2基板は、上面が、前記車両外面に取り付けられた際の前記車両外面からの高さが15mm以下となる位置に設けられている、であるとしてもよい。
【0014】
前記第1基板は、前記第2パッチアンテナで受信した受信信号を復調してデジタル信号として出力する受信回路部を搭載することとしてもよい。
【0015】
前記車載用アンテナ装置において、車両への取り付け前後方向が定められており、前記第1基板における前記受信回路部の搭載位置は、前記第1パッチアンテナの給電点よりも後方であるとしてもよい。
【0016】
前記第1基板は、第1アンテナエレメントおよび第2アンテナエレメントを有する移動通信用アンテナを搭載し、前記第1パッチアンテナは、前記第1アンテナエレメントと前記第2アンテナエレメントとの間に搭載されることとしてもよい。
【0017】
前記車両外面は、車両のルーフとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車載用アンテナ装置の斜視内部構造図。
図2】車載用アンテナ装置の分解斜視図。
図3】車載用アンテナ装置の側面視内部構造図。
図4】パッチアンテナの指向性パターンを模式的に示す図。
図5】車両外面(ルーフ)からの高さとパッチアンテナの利得との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0020】
先ず、以下の説明における方向を次の通り定義する。本実施形態の車載用アンテナ装置1は、乗用車等の車両の外面(本実施形態では、例えば車両のルーフ上)に取り付けられて使用される低背型のアンテナ装置であり、シャークフィンアンテナやドルフィンアンテナ等と呼ばれるアンテナ装置である。低背型の具体的な数値として、本実施形態の車載用アンテナ装置1は、車両外面に取り付けられた際の車両外面からの高さが70mm以下である。本実施形態の車載用アンテナ装置1は、車両への取り付け前後方向が定められている。車載用アンテナ装置1の前後・左右・上下の方向は、車両への取り付け時における車両の前後・左右・上下の方向と同じとする。この直交3軸の方向が分かり易いように、各軸方向に平行な方向を示す参照方向を各図に付記した。参照方向としているのは、その交点が座標原点を意味するものではないことによる。本実施形態の車載用アンテナ装置1の外観は、前方が先細りで、且つ車両への取付面から上方へ向かって徐々に左右の幅が細くなるようにデザインされているので、デザインの特徴を方向の理解の助けとすることができる。
【0021】
図1は、本実施形態における車載用アンテナ装置1の斜視内部構造図であり、アウターケース10の手前半分を切り欠いて装置内部を示している。図2は、車載用アンテナ装置1の分解斜視図である。図3は、図1の車載用アンテナ装置1を左側面から見た側面視内部構造図であり、アウターケース10の手前半分を切り欠いて装置内部を示している。
【0022】
車載用アンテナ装置1は、アウターケース10と、アンテナベース20と、インナーケース30と、第1基板41と、第2基板43と、防水リング50と、パッド60と、シール部材70と、取付部80とを備え、アンテナベース20とアウターケース10とで囲まれた収容空間内に、複数のアンテナエレメントが収容されて構成される。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System:全世界的航法衛星システム)アンテナ91と、TELアンテナ92と、DSRC(Dedicated Short Range Communications)/BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)アンテナ93と、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)アンテナ94とが収容される。
【0023】
アウターケース10は、電磁波透過性を有する合成樹脂製のケースであり、上部外郭を形成する。例えば、アウターケース10は、前方が低く、後方中央部の高さが70mm以下で上方に突出したシャークフィン形状を有する。インナーケース30は、同じく電磁波透過性を有する合成樹脂製のケースであり、アウターケース10の内側を区画して収容空間を形成する。したがって、各種アンテナエレメントは、アンテナベース20とアウターケース10とで囲まれた収容空間の更に内側の、アンテナベース20とインナーケース30とで囲まれた限られた収容空間内に配置されているとも言える。
【0024】
アンテナベース20は、金属製のシールド部材であって、後方側の領域で第1基板41を保持し、前方側の領域で第2基板43を保持する。具体的には、アンテナベース20は、後方側の第1基板41を保持する領域において、その外縁部分に沿う壁状の支持部21と、第1基板41のコネクタ部411が挿通されるコネクタ挿通孔23とを有する。そして、前方側の領域に第2基板43がねじで固定される一方、後方側の領域において支持部21の上端に第1基板41が載置され、ねじで固定される。これにより、第1基板41はアンテナベース20に電気的に接続されるとともに、第1基板41は、アンテナベース20の下方にコネクタ部411を露出させた状態で、第2基板43よりも高い位置に設けられる。
【0025】
第1基板41は、第1パッチアンテナとしてのGNSSアンテナ91と、TELアンテナ92と、DSRC/BLEアンテナ93とを搭載する。また、第1基板41は、下面に受信回路部101を搭載するとともに、下面の前方寄りに配置されたコネクタ部411を有する。
【0026】
一方、第2基板43は、第2パッチアンテナとしてのSDARSアンテナ94を搭載する。第2基板43は、ケーブル431を介して、第1基板41の下面に配置された受信回路部101と接続され、SDARSアンテナ94の受信信号を受信回路部101へ出力する。
【0027】
GNSSアンテナ91は、GPS衛星等の測位用衛星から送信される衛星波を受信するためのパッチアンテナである。測位システムはGPS以外にも、GalileoやGLONASS等を採用することも可能である。その場合には、GNSSアンテナ91は、これらの測位用衛星からの衛星波(約1.1GHz~1.7GHzの周波数帯)を受信する。
【0028】
TELアンテナ92は、移動通信用アンテナであり、第1アンテナエレメントである第1TELアンテナ921と、第2アンテナエレメントである第2TELアンテナ923とで構成される。第1TELアンテナ921と第2TELアンテナ923とは、アイソレーションを取るために所定距離離して配置する必要がある。そこで、本実施形態では、第1TELアンテナ921および第2TELアンテナ923はその間にコネクタ部411およびGNSSアンテナ91を配置し離間距離を確保できる構成とした。さらに、第1基板41上の配置を、前方側から第2TELアンテナ923、コネクタ部411、GNSSアンテナ91、第1TELアンテナ921の順に並べた配置としている。
【0029】
DSRC/BLEアンテナ93は、DSRC通信と、BLE通信の2つの通信方式に対応したアンテナであり、双方向通信アンテナである。
【0030】
受信回路部101は、SDARSアンテナ94で受信した受信信号を復調し、デジタル信号として出力する。
【0031】
受信回路部101とアンテナ91~93の何れかとは、受信回路部101が第1基板41の下面側に配置されることで、上面視において一部又は全部が重なる位置に搭載されている。具体的には、壁状の支持部21の上部に第1基板41を載置したことで第1基板41の下側に空いたスペースを利用し、第1基板41の下面側に受信回路部101を搭載する。その搭載位置は、GNSSアンテナ91の給電点よりも後方位置とするとよい。本実施形態では、受信回路部101は、GNSSアンテナ91よりも後方の第1TELアンテナ921のさらに後方であって、DSRC/BLEアンテナ93の前方に配置される。これによれば、収容空間内のスペースを有効活用し、SDARSアンテナ94の受信回路部101を内蔵した車載用アンテナ装置1が実現できる。
【0032】
また、受信回路部101は、アンテナにとって高周波のノイズ信号を発生し得る。そこで、アンテナ91~93が配置された第1基板41の上面とは逆の下面に受信回路部101を搭載する構成とすることにより、アンテナへのノイズ流入を防止することができる。これによれば、アンテナの特性に好適な配置構成の車載用アンテナ装置1が実現できる。
【0033】
SDARSアンテナ94は、例えば、2.3GHz帯のシリウスXMラジオ等の衛星を使用したデジタル放送を受信するためのパッチアンテナであり、その上部を覆うように無給電素子941が配置・固定される。
【0034】
なお、車載用アンテナ装置1が備えるアンテナエレメントの種類や数、組合せは、特に限定されるものではない。例えば、WiFi(Wireless Fidelity(登録商標))、LTE(Long Term Evolution(登録商標))、V2X(Vehicle to Everything)、DSRC(Dedicated Short Range Communications(登録商標))といった各種無線通信規格に対応したアンテナエレメント等を適宜搭載することもできる。
【0035】
防水リング50は、エラストマーやゴム等で形成された環状の弾性部材である。防水リング50は、インナーケース30がアンテナベース20にねじで固定される際、インナーケース30の下端面とアンテナベース20との間に挟み込まれて、インナーケース30とアンテナベース20との間を水密封止する。これにより、収容空間の防塵性や防水性が確保される。
【0036】
パッド60は、エラストマーやゴム等で形成された環状の弾性部材であり、アウターケース10の下端内周縁部と、インナーケース30の下端外周縁部との間に配置される。パッド60は、アウターケース10の下端周縁部と車両のルーフ(車両外面)との隙間を目隠しするとともに、水や塵等の浸入を防止する。
【0037】
シール部材70は、エラストマーやゴム等で形成された環状の弾性部材であり、アンテナベース20と車両のルーフとの間に配置されて両者の間を水密封止する。
【0038】
取付部80は、車載用アンテナ装置1を車両のルーフに取り付けるためのものであり、アンテナベース20の下部に設けられる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の車載用アンテナ装置1によれば、GNSSアンテナ91を、SDARSアンテナ94よりも高い位置に配置することができる。アンテナの用途特性において、GNSSアンテナ91は、測位精度の向上の観点から、中仰角~高仰角にある衛星だけでなく、低仰角の衛星からの電波受信が求められる。このため、GNSSアンテナ91は、低仰角から高仰角まで満遍なく一定程度の利得が得られることが要求される。SDARSアンテナ94は、低仰角に比べて中仰角~高仰角の利得が要求される。
【0040】
パッチアンテナの指向性は、収容空間内の配置位置の高さによって変化する知見が得られた。図4は、パッチアンテナの高さを変えた場合の指向性パターンの違いを模式的に示す図であり、パッチアンテナの高さを低位置(例えばSDARSアンテナ94の高さ)とした場合の指向性パターンを実線で示し、高位置(例えばGNSSアンテナ91の高さ)とした場合の指向性パターンを一点鎖線で示している。
【0041】
図4に示すように、パッチアンテナを収容空間内の高位置に配置した場合、低位置に配置した場合に比べて中仰角(斜め上方)の利得は若干低下するものの、低仰角の利得を向上させることが可能となる。高位置に配置したことによりパッチアンテナと車両のルーフとの間にも電界成分が発生し、低仰角の利得を高める効果をもたらすと考えられる。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置1によれば、SDARSアンテナ94については、低仰角に比べて中仰角~高仰角の利得が要求されるパッチアンテナとして好適な低位置に配置した。SDARSアンテナ94の上部を覆うように無給電素子941を配置することで、さらに中仰角~高仰角の利得を向上させることができる。一方、SDARSアンテナ94よりも受信周波数の低いGNSSアンテナ91については、低仰角から高仰角まで満遍なく一定程度の利得が要求されるパッチアンテナとして好適な高位置に配置した。これにより、GNSSアンテナ91を、利得が所定値以上となる範囲がSDARSアンテナ94よりも広くなるように配置でき、アンテナの用途特性に適した配置となった。
【0042】
2つのパッチアンテナの配置位置の高さ違いを、より具体的に説明する。図5は、車両外面であるルーフ100が取付部80の上面と接する位置からの高さと、パッチアンテナの利得との関係を示す図であり、低仰角の利得と、中仰角の利得と、天頂方向の利得とをそれぞれ線種を変えて示している。図5において実線のグラフが示すように、ルーフ100からの高さが25mmまでは、低仰角の利得が向上傾向にあり、25mm~30mm程度の高さでは低仰角の利得に有意な差が生じなかった。そこで、図3に示すように、GNSSアンテナ91を搭載する第1基板41は、上面が、車両のルーフ100に取り付けられた際の当該ルーフ100からの高さh1が高くても25mmでよく、25mm以下となる位置に設けると好適である。一方、高仰角の利得はルーフ100からの高さが高くなっても大きな変化が見られなかったが、中仰角の利得は、ルーフ100からの高さが15mmを超えると、0mmの場合に対する低下量が1.0[dBic]を超えてくる。SDARSアンテナ94を搭載する第2基板43は、上面が、ルーフ100に取り付けられた際の当該ルーフ100からの高さh2が15mm以下となる位置に設けると好適であると言える。2つのパッチアンテナの配置位置の高さ違いは、例えば支持部21の高さの設定で決めることができる。
【0043】
また、シャークフィンアンテナやドルフィンアンテナ等と呼ばれる車載用アンテナ装置には、小型化やデザイン性などの観点から、アンテナ収容空間の形状や大きさに制約がある。本実施形態では、前方側の領域に高さ位置の低い第2基板43を設けてSDARSアンテナ94を配置し、後方側の領域に高さ位置の高い第1基板41を設けてGNSSアンテナ91を配置した。これによれば、前方の高さ空間の狭いアンテナ収容空間のスペースを有効活用したアンテナ配置が実現できる。
【0044】
また、本実施形態では、第1基板41に、GNSSアンテナ91の他に、TELアンテナ92(第1TELアンテナ921および第2TELアンテナ923)と、DSRC/BLEアンテナ93とを搭載した。これによれば、伝送損失の影響の低減やノイズ抑制の観点から、伝送路の長さを短くしたいアンテナを同一基板に搭載することができる。
【0045】
また、本実施形態では、SDARSアンテナ94の受信回路部101を車載用アンテナ装置1に内蔵した。搭載するアンテナの種類が増えればその分受信信号を伝送する同軸ケーブルの本数も増え、配線スペースも必要となる。さらに、搭載するアンテナの高周波化・広帯域化に伴い、伝送損失が低い線径の太いケーブルを選定する必要がある。本実施形態では、第1基板41の配置高さを高く設けていることにより、線径の太いケーブルを配線でき、同軸ケーブルの本数増加にも対応できる構造となり、スペースの有効活用が可能となる。また、SDARSアンテナ94の受信信号に係るデータについてはデジタル信号にして車両側ユニットとやり取りすることができるため、同軸ケーブルの本数を減らすことができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1TELアンテナ921と第2TELアンテナ923との間にコネクタ部411およびGNSSアンテナ91を配置した。これにより、第1TELアンテナ921と第2TELアンテナ923との相互のアイソレーションを確保しつつ、スペースを有効活用した配置が可能となる。
【0047】
なお、アンテナベース20のコネクタ挿通孔23よりも後方に、第1基板41に搭載されたLNA(Low noise amplifier)や受信回路部101が発する熱を放熱するための通気口となる孔を設けてもよい。例えば、アンテナベース20の後方において、受信回路部101と対向する位置等に通気口を設けるとしてもよい。通気口は1つ又は幾つかの孔(開口)としてもよいし、複数の小孔でメッシュ状に設けるとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…車載用アンテナ装置
10…アウターケース
20…アンテナベース
21…支持部
23…コネクタ挿通孔
30…インナーケース
41…第1基板
411…コネクタ部
43…第2基板
50…防水リング
60…パッド
70…シール部材
80…取付部
91…GNSSアンテナ
92…TELアンテナ
921…第1TELアンテナ
923…第2TELアンテナ
93…DSRC/BLEアンテナ
94…SDARSアンテナ
941…無給電素子
101…受信回路部
図1
図2
図3
図4
図5