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特許7351683吐出ノズルの設計方法、吐出ノズルの製造方法、および吐出ノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】吐出ノズルの設計方法、吐出ノズルの製造方法、および吐出ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/02 20060101AFI20230920BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B05B1/02
B05C5/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019166468
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021041358
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】横手 英幸
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-098575(JP,U)
【文献】特表2008-543541(JP,A)
【文献】特開2016-182535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00- 3/18
7/00- 9/08
B05C5/00- 5/04
7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルの設計方法であって、
前記切欠部として、正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線をなす仮定の切欠部を有する吐出ノズルをテストノズルとして用い、所定の塗布条件で、前記テストノズルを移動させながら前記吐出口より粘性材料を吐出させて塗布することでテスト用ビードを形成するステップと、
前記テスト用ビードの横断面視形状について、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺からのはみ出し部分の形状を、前記三角形状の傾斜辺が結ぶ頂点同士を結ぶ湾曲線として計測するステップと、
前記湾曲線を、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺に対して反転させた形状を、前記切欠部の正面視形状とするように、前記切欠部の形状を決定するステップと、を含む
ことを特徴とする吐出ノズルの設計方法。
【請求項2】
前記湾曲線は、円弧であり、
前記切欠部の正面視形状は、正面視で円弧状をなす湾曲線を内側に膨出させた形状として決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出ノズルの設計方法。
【請求項3】
一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルの製造方法であって、
前記切欠部として、正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線をなす仮定の切欠部を有する吐出ノズルをテストノズルとして用い、所定の塗布条件で、前記テストノズルを移動させながら前記吐出口より粘性材料を吐出させて塗布することでテスト用ビードを形成するステップと、
前記テスト用ビードの横断面視形状について、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺からのはみ出し部分の形状を、前記三角形状の傾斜辺が結ぶ頂点同士を結ぶ湾曲線として計測するステップと、
前記湾曲線を、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺に対して反転させた形状を、前記切欠部の正面視形状とするように、前記切欠部の形状を決定するステップと、
決定した前記切欠部の形状に基づき、前記切欠部を形成するステップと、を含む
ことを特徴とする吐出ノズルの製造方法。
【請求項4】
前記湾曲線は、円弧であり、
前記切欠部の正面視形状は、正面視で円弧状をなす湾曲線を内側に膨出させた形状として決定される
ことを特徴とする請求項3に記載の吐出ノズルの製造方法。
【請求項5】
一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルであって、
前記切欠部は、正面視で略三角形状に沿う一対の傾斜辺部により形成されており、前記傾斜辺部は、全体として前記切欠部の内側を凸側として湾曲した形状をな
ことを特徴とする吐出ノズル。
【請求項6】
前記傾斜辺部は、全体として前記切欠部の内側を凸側とした円弧状をなすように形成されてい
ことを特徴とする請求項5に記載の吐出ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシーラ等の粘性材料を吐出しながら三角形状の横断面形状を有するビードを形成するように塗布するための吐出ノズルの設計方法、吐出ノズルの製造方法、および吐出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の製造ラインにおいて、フロントウィンド等をなすガラス(ウィンドガラス)を車体に取り付ける工程では、粘性材料であるシーラ(シーリング剤)が接着剤として用いられ、ガラスを車体の枠部分に接着することが行われている。シーラは、例えば、ロボット等を含むシーラ塗布装置により、ガラスの外縁部に自動的に塗布される。
【0003】
シーラ塗布装置においては、ロボットのアームの先端部に、シーラの吐出ノズルが取り付けられる。そして、ロボットの動作によって吐出ノズルが移動させられ、吐出ノズルから吐出されるシーラがガラスに塗布され、吐出ノズルの移動経路に沿ったビードが形成される。
【0004】
このようにシーラの塗布工程においてガラス上に形成されるビードについては、シーラがガラスと車体との間に挟まれて圧縮された状態でもシーラの塗布幅を保持させること等を目的として、三角形状の横断面形状が採用されている。すなわち、ビードは、ガラスに対する接触側を底辺側、その反対側となる上側を頂点側とした三角形状の横断面形状をなすように形成される。ビードは、ガラスと車体に挟まれて押し潰されることで、シーラの塗布幅として横断面形状である三角形状の底側の幅を保持しつつ、横断面形状を台形状ないし四角形状とするように変形し、接着部としてガラスと車体との間に介在する。
【0005】
このように横断面形状を三角形状とするビードを形成するため、シーラの吐出ノズルとして、開口端を吐出口とするパイプ状をなす周壁部の下端部に、三角形状の切欠部を有する構成のものがある(例えば、特許文献1参照。)。このような構成の吐出ノズルによれば、吐出ノズルが、その進行方向の後側に切欠部を向けた状態で移動しながらシーラを塗布することで、切欠部の三角形状にならって、横断面三角形状のビードがガラス上に形成される。なお、特許文献1には、ガラス等のワークの表面にシーラを確実に塗布すべく、塗布ノズルにおける下端開口の開口縁部を、ワークの表面の傾斜に倣う態様で鉛直軸に対して傾斜させた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-15456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吐出ノズルにより塗布されたシーラにより形成されたビードについては、ガラスと車体との間に介在した状態での接着幅および厚さの制御のしやすさ等の観点から、ビードの横断面形状が、吐出ノズルの切欠部が沿う三角形状に一致することが理想的である。そこで、従来、ロボットによる吐出ノズルの移動速度、シーラの吐出流量、吐出ノズルの先端とガラスの表面との間のクリアランス等の調整により、ビードの横断面形状を理想的な(純粋な)三角形状、つまり吐出ノズルの切欠部が沿う三角形状に近付けることが行われている。
【0008】
確かに、吐出ノズルの移動速度等の調整により、ある程度はビードの横断面形状を理想的な三角形状に近付けることができる。しかしながら、吐出ノズルの移動速度等の調整によってビードの横断面形状を理想的な三角形状に近付ける手法では限界がある。
【0009】
例えば、車体に対するガラスの取付工程の時間短縮のためには、ロボットによる吐出ノズルの移動速度を速くし、短時間で所定量のシーラを吐出するためにシーラの吐出流量(単位時間当たりの吐出量)を多くする必要がある。シーラの吐出流量が多くなると、シーラの吐出圧が大きくなり、吐出ノズルから吐出されたシーラは、吐出圧によりノズル外に押し出されることで、ノズル内における圧縮状態から解放されるために膨張変形し、吐出ノズルの切欠部の開口形状に対してはみ出した横断面形状をなすようにビードを形成する。この場合、ビードは、その横断面形状において、吐出ノズルの切欠部が沿う三角形状に対して膨出状にはみ出した張出部を有することになる。
【0010】
ビードに横断面の三角形状に対する張出部が存在することは、シーラによる接着部の接着幅および厚さの制御の妨げとなり、シーラによる接着部についての仕上がりの品質を低下させる原因となる。また、ビードにおける張出部は本来余分な部分であるため、材料費を低減させる観点から、張出部は極力小さい方が望ましい。特に、生産性向上を図るべく、ガラスの取付工程の時間を短縮させるためには、ロボットによる吐出ノズルの移動速度の上昇にともなってシーラの吐出流量を増大させる必要が生じるが、これにより、ビードにおける張出部発生の問題は顕著となる。
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、粘性材料の塗布部分についての品質を向上させることができるとともに、材料費の低減を図ることができる吐出ノズルの設計方法、吐出ノズルの製造方法、および吐出ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る吐出ノズルの設計方法は、一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルの設計方法であって、前記切欠部として、正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線をなす仮定の切欠部を有する吐出ノズルをテストノズルとして用い、所定の塗布条件で、前記テストノズルを移動させながら前記吐出口より粘性材料を吐出させて塗布することでテスト用ビードを形成するステップと、前記テスト用ビードの横断面視形状について、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺からのはみ出し部分の形状を、前記三角形状の傾斜辺が結ぶ頂点同士を結ぶ湾曲線として計測するステップと、前記湾曲線を、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺に対して反転させた形状を、前記切欠部の正面視形状とするように、前記切欠部の形状を決定するステップと、を含むものである。
【0013】
本発明に係る吐出ノズルの設計方法の他の態様は、前記吐出ノズルの設計方法において、前記湾曲線は、円弧であり、前記切欠部の正面視形状は、正面視で円弧状をなす湾曲線を内側に膨出させた形状として決定されるものである。
【0014】
本発明に係る吐出ノズルの製造方法は、一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルの製造方法であって、前記切欠部として、正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線をなす仮定の切欠部を有する吐出ノズルをテストノズルとして用い、所定の塗布条件で、前記テストノズルを移動させながら前記吐出口より粘性材料を吐出させて塗布することでテスト用ビードを形成するステップと、前記テスト用ビードの横断面視形状について、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺からのはみ出し部分の形状を、前記三角形状の傾斜辺が結ぶ頂点同士を結ぶ湾曲線として計測するステップと、前記湾曲線を、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺に対して反転させた形状を、前記切欠部の正面視形状とするように、前記切欠部の形状を決定するステップと、決定した前記切欠部の形状に基づき、前記切欠部を形成するステップと、を含むものである。
【0015】
本発明に係る吐出ノズルの製造方法の他の態様は、前記吐出ノズルの製造方法において、前記湾曲線は、円弧であり、前記切欠部の正面視形状は、正面視で円弧状をなす湾曲線を内側に膨出させた形状として決定されるものである。
【0016】
本発明に係る吐出ノズルは、一端側を粘性材料の吐出口として開口させた筒状のノズル本体部を有し、前記吐出口の開口端部の周壁に前記吐出口と連続した切欠部を有する吐出ノズルであって、前記切欠部は、正面視で略三角形状に沿う一対の傾斜辺部により形成されており、前記傾斜辺部は、全体として前記切欠部の内側を凸側とした円弧状をなすように形成されているものである。
【0017】
本発明に係る吐出ノズルの他の態様は、前記吐出ノズルにおいて、前記傾斜辺部は、前記切欠部として正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線をなす仮定の切欠部を有する吐出ノズルを用いて前記吐出口より粘性材料を吐出させて形成したビードの横断面視形状について、前記仮定の切欠部が沿う前記三角形状の傾斜辺からのはみ出し部分の膨出形状に基づく湾曲形状を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粘性材料の塗布部分についての品質を向上させることができるとともに、材料費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るシーラ塗布装置の構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルとウィンドガラスとの位置関係等を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係るウィンドガラス上のダムラバーの取付け状態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルによるビードの形成状態を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルのノズル本体部の正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルのノズル本体部の側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルのノズル本体部の平面図(横断面図)である。
図8】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルのノズル本体部の底面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るビードの張出部についての説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルの先端部を示す正面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルの先端部を示す側面図である。
図12図10におけるA-A断面である。
図13】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルの設計方法および製造方法の手順の一例を示すフロー図である。
図14】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルの設計方法および製造方法についての説明図である。
図15】本発明の一実施形態に係る吐出ノズルにより形成されるビードについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、粘性材料によって三角形状の横断面形状を有するビードを形成するための吐出ノズルにおいて、略三角形状に沿う切欠部の傾斜辺部の形状を工夫することにより、粘性材料の塗布部分の品質の向上、および原価の低減を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、吐出ノズルによって塗布される粘性材料を、接着剤等として用いられるシーラ(シーリング剤)を例にとって説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る吐出ノズル10は、自動車の製造ラインにおいて用いられるシーラ塗布装置1に備えられている。シーラ塗布装置1は、フロントウィンド等をなす板状のガラス部材であるウィンドガラス2を自動車の車体に取り付ける工程において、接着剤としてのシーラ3を、ウィンドガラス2に塗布する。つまり、シーラ塗布装置1は、シーラ3の塗布対象であるワークをウィンドガラス2とする。
【0022】
シーラ3は、ウレタン系接着剤である。具体的には、シーラ3は、例えば、ウレタンを主原料とした1液の常温湿気硬化型のウレタン接着剤である。ただし、粘性材料は、ワークに塗布された状態で形態が保持できる程度の粘性を有する比較的粘度の高い粘性材料(高粘度流体)であればよい。粘性材料は、例えば、エポキシ系やシリコン系の接着剤等であってもよく、また、接着剤のほか、プライマ等の接着補助剤等の他の塗布剤であってもよい。
【0023】
シーラ塗布装置1は、吐出ノズル10からシーラ3を吐出させながら、ロボット4により吐出ノズル10を所定の経路に沿って移動させることで、ウィンドガラス2の外縁部に吐出ノズル10の移動経路に沿ったビード5を形成するようにシーラ3を塗布する。ビード5は、例えば、ウィンドガラス2の外縁部に沿って環状に形成される。シーラ3の塗布を受けたウィンドガラス2は、車体の枠部分に接着固定される。シーラ塗布装置1は、吐出ノズル10を移動させるロボット4と、吐出ノズル10にシーラ3を供給するシーラ供給部6とを備える。
【0024】
ロボット4は、吐出ノズル10を保持し、所定の経路に沿って吐出ノズル10を移動させる移動手段として機能する。ロボット4は、床上に設置されたベース部4aと、ベース部4aに設けられたアーム7とを有し、様々な位置および角度に姿勢制御されるフレキシブルなロボットアーム(多関節ロボット)として構成されている。ロボット4は、例えば、6つの関節を有する6軸ロボットである。なお、ロボット4は、本実施形態のように床設置型のものに限定されるものではなく、例えば、天吊り型のロボットや壁掛け型のロボットや棚置き型のロボット等であってもよい。
【0025】
ロボット4において、アーム7の先端部に設けられたノズル取付部8を介して、吐出ノズル10が取り付けられている。ノズル取付部8は、シーラ3の供給を受ける中空状の部分であり、その内部空間を吐出ノズル10内と連通させた状態で吐出ノズル10を支持する。ロボット4は、その可動範囲において吐出ノズル10を三次元方向に移動させる。
【0026】
図1に示す例では、ワークとしてのウィンドガラス2は、支持装置9により、シーラ3の塗布を受ける塗布面2a側を上側に向けた姿勢で、固定状態で支持されている。支持装置9は、基台9aと、基台9a上に設けられた複数の支持柱9bとを有し、複数の支持柱9bによりウィンドガラス2を所定の姿勢で所持する。支持柱9bの上端部には、ゴムやスポンジ等の弾性部材からなる吸着部9cが設けられており、ウィンドガラス2は、複数の支持柱9b上において、吸着部9cにより吸着された状態で固定される。支持装置9により支持されたウィンドガラス2に対し、ロボット4は、ウィンドガラス2の上側において、吐出ノズル10をその吐出側を下側とした向きでシーラ3の塗布面2aに沿って移動させる。
【0027】
ロボット4は、ロボット制御盤に接続されており、ロボット制御盤からの制御信号を受けて動作する。ロボット制御盤は、ロボット4の制御部であり、ティーチングにより設定された所定の動作をロボット4に行わせる。ロボット4の動作により、ウィンドガラス2上における所定のシーラ3の塗布経路に沿って吐出ノズル10が移動する。
【0028】
シーラ供給部6は、ドラム缶やタンク等の貯留部と、ポンプ等の駆動源とを有し、貯留部内のシーラ3を、駆動源によって供給ホース11を介して吐出ノズル10に供給する。供給ホース11は、その中途部を、アーム7に設けられたホース支持部12によりアーム7に支持させるとともに、下流側の端部を、ノズル取付部8に対して連通接続させている。シーラ供給部6によれば、貯留部内のシーラ3が、所定の送出圧で供給ホース11からノズル取付部8を介して吐出ノズル10に供給され、吐出ノズル10から所定の吐出流量で吐出される。シーラ供給部6に関しては、例えば、ロボット4のティーチングにおいて、吐出ノズル10に対するシーラ3の送出動作(例えば送出タイミング等)が設定される。
【0029】
以上のような構成を備えたシーラ塗布装置1の構成に関し、ロボット4の配置構成や、ウィンドガラス2を支持するための構成や、吐出ノズル10にシーラ3を供給するための構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0030】
吐出ノズル10は、一端側をシーラ3の吐出口21として開口させた筒状のノズル本体部22を有し、吐出口21の開口端部の周壁に吐出口21と連続した切欠部23を有する(図2図4参照)。なお、吐出ノズル10においては、その長手方向(図5における上下方向)について、吐出口21側を下側、その反対側を上側とする。
【0031】
図5から図8に示すように、ノズル本体部22は、一定の外径および内径を有する両端開口の直線管状の部分であり、その内部空間がシーラ3の流路となる。ノズル本体部22は、シーラ3の流路を形成する円筒状の内周面22aと、ノズル本体部22の横断面において内周面22aと同心円をなす円筒状の外周面22bとを有する。
【0032】
吐出ノズル10は、ノズル本体部22の一端側(下側)の開口部を吐出口21とする。また、ノズル本体部22は、吐出口21の開口端面として、ノズル本体部22の中心軸方向に垂直な面に沿う下端面22cを有する。吐出口21をなす周壁部の一部が切り欠かれた態様で、切欠部23が形成されている。切欠部23により、ノズル本体部22の下端面22cは、吐出ノズル10の下面視において略「C」字状をなす面となっている。
【0033】
切欠部23は、三角形状の横断面形状を有するビード5を形成するため、略三角形状に沿う形状を有する。つまり、切欠部23は、開口幅を上側から下側にかけて徐々に広げた末広がりの形状を有する。具体的には、切欠部23は、下側を開放側として、左右方向について対称な逆「V」字状をなし、略二等辺三角形状に沿う形状を有する。したがって、切欠部23は、一対の傾斜辺部25を有する。図5に示すように、切欠部23に正対する方向視を、吐出ノズル10の正面視(以下「ノズル正面視」という。)とする。
【0034】
ノズル本体部22の他端側(上側)には、ノズル取付部8に対して吐出ノズル10を所定の向きで装着させるための取付部分が設けられている。この取付部分は、ノズル本体部22とともに直線状のシーラ3の流路を形成し、吐出ノズル10に対するシーラの流入口となる供給口を上側に開口させる。
【0035】
吐出ノズル10は、例えば真鍮等の金属材料あるいはABS樹脂やプラスチック等の樹脂材料により、一体の部材として形成されている。
【0036】
図1から図3に示すように、ウィンドガラス2の塗布面2aにおいては、環状に形成されるビード5の内周側に、矩形状の横断面形状を有する紐状のダムラバー13が環状に設けられている。ダムラバー13は、粘着テープ14により塗布面2aに貼着されている。
【0037】
また、図2および図3に示すように、ウィンドガラス2の外縁部には、シーラ3によるビード5の形成領域およびダムラバー13の貼着領域を含む領域として、例えば黒色のセラミックインクで印刷されたマスク部15が設けられている。マスク部15は、太陽光の紫外線によるビード5の劣化防止のための部分であり、装飾部分を兼ねている。マスク部15の内縁側の部分の上に、粘着テープ14を介してダムラバー13が設けられており、マスク部15の外縁側の部分の上に、ビード5が形成されている。マスク部15上のビード5の塗布領域には、シーラ3の接着性向上のため、例えばシラン系のプライマ16が塗布されている(図2参照)。
【0038】
ウィンドガラス2は、ダムラバー13の貼着およびプライマ16の塗布を受けた状態で、支持装置9にセットされる。支持装置9にセットされたウィンドガラス2に対し、シーラ塗布装置1は、ロボット4により、吐出ノズル10を、吐出口21側を下側として略鉛直状態とし、切欠部23側を吐出ノズル10の進行方向(矢印A1参照)の後方側とする向きで、ダムラバー13の外周側に沿って移動させる。
【0039】
ロボット4は、プライマ16の剥離防止等のため、ウィンドガラス2の塗布面2aと吐出ノズル10の下端(下端面22c)との間に隙間として所定の間隔B1が空くように、塗布面2aに対して平行状に吐出ノズル10を移動させる(図2参照)。間隔B1の大きさは、吐出ノズル10の径等により適宜設定されるものであって特に限定されるものではないが、例えば、吐出ノズル10の内径(切欠部23の下端開口幅)が8mmの場合、間隔B1の大きさは2mm程度に設定される。
【0040】
シーラ3の塗布に関しては、ウィンドガラス2の塗布面2a上における所定の塗布開始位置に吐出ノズル10がセットされた後、シーラ供給部6によってシーラ3が吐出ノズル10に対して圧送され、吐出ノズル10の吐出口21からのシーラ3の吐出が開始される。シーラ3の吐出開始とともに、ロボット4による吐出ノズル10の移動が開始される。これにより、シーラ3が、吐出口21から塗布面2aに押し当てられながら後側の切欠部23から押し出される態様で吐出され、吐出ノズル10の移動軌跡に沿って、ダムラバー13に対して平行状に、三角形状の横断面形状を有するビード5が形成される。なお、ビード5は、例えば、その塗布面2a上の高さがダムラバー13よりも高くなるように形成される。
【0041】
シーラ3の塗布を受けたウィンドガラス2は、シーラ3の塗布後から所定の時間内(例えば数分内)に、ビード5の形状を保持した状態で、車体の枠部分に接着固定される。ここで、ビード5は、三角形状の横断面形状の頂点側つまりビード5の稜線部5a側を車体の枠部分の接着面側として、ウィンドガラス2と車体との間に挟まれて押し潰される。これにより、ビード5は、シーラ3の塗布幅として横断面形状である三角形状の底側の幅を保持しつつ、横断面形状を四角形状とするように変形し、接着部としてウィンドガラス2と車体との間に介在する。
【0042】
また、ダムラバー13により、シーラ3がマスク部15を超えて透明なガラス部分にはみ出ることが防止される。なお、車体の枠部分の接着面には塗装が施されており、その塗装面の接着領域には、シーラ3の接着性向上のため、例えばウレタン系のプライマが適宜塗布される。また、車体の枠部分とウィンドガラス2との間には、ウィンドガラス2を囲繞するように紐状の樹脂モールが装着される。
【0043】
以上のように車体に取り付けられるウィンドガラス2に対して吐出ノズル10から吐出されるシーラ3が塗布される工程において、例えば、工程の時間短縮のためには、ロボット4による吐出ノズル10の移動速度を速くし、短時間で所定量のシーラ3を吐出するためにシーラ3の吐出流量(以下「シーラ吐出流量」という。)を多くする必要がある。シーラ吐出流量が多くなると、次のような現象が生じる。
【0044】
すなわち、シーラ吐出流量が多くなると、シーラ3の吐出圧が大きくなり、吐出ノズル10から吐出されたシーラ3は、吐出圧によりノズル外に押し出されることで、ノズル内における圧縮状態から解放されるために膨張変形し、吐出ノズル10の切欠部23の開口形状に対してはみ出した横断面形状をなすようにビード5を形成する。具体的には次のとおりである。
【0045】
図9(a)に示すように、吐出ノズルとして、三角形状に沿う形状を有する切欠部23Xを有する吐出ノズル10Xを仮想する。切欠部23Xは、ノズル正面視で直線L1をなす傾斜辺部25Xを有し、これらの傾斜辺部25Xにより二等辺三角形状に沿うように左右対称な逆「V」字状をなしている。つまり、ノズル正面視において切欠部23Xが沿う三角形状は、左右の傾斜辺部25Xが沿う直線L1を等辺とし、下端面22cが沿う直線を底辺とする二等辺三角形状となっている。
【0046】
図9(a)に示すような切欠部23Xを有する吐出ノズル10Xが用いられた場合、上述したようなシーラ3の膨張変形により、図9(b)に示すように、ビード5Xは、その横断面形状において、吐出ノズル10Xの切欠部23Xが沿う三角形状に対して膨出状にはみ出した張出部5Xaを有することになる。図9(b)では張出部5Xaを着色部分で示している。
【0047】
図9(b)に示すように、張出部5Xaは、ビード5Xの横断面視において、ノズル正面視で切欠部23Xの左右の傾斜辺部25Xがなす直線L1に対応する切欠部形状仮想線L2からの外側への膨出状のはみ出し部分である。つまり、張出部5Xaは、ビード5Xの横断面視において、切欠部形状仮想線L2と、外側に凸の湾曲面であるビード5Xの外側面5Xbとにより囲まれた扁平な蒲鉾形状の部分である。また、ビード5Xは、ウィンドガラス2の塗布面2aに対する接触面として、塗布面2aに沿う水平状な底面5Xcを有する。
【0048】
なお、図9(b)では、ノズル正面視での下端面22cの高さ位置をウィンドガラス2の塗布面2aに一致させ、ノズル正面視で傾斜辺部25Xがなす直線L1を切欠部形状仮想線L2としてビード5Xの横断面形状に重ねて二点鎖線で示している。つまり、切欠部23Xのノズル正面視での形状を、ビード5Xの横断面視形状に重ね、ビード5Xにおける切欠部23Xのノズル正面視形状からのはみ出し部分を表している。
【0049】
また、例えば、吐出ノズル10Xの切欠部23Xの下端開口幅D1が8mm、切欠部23Xの高さD2が13mmの場合、張出部5Xaの厚さE1は、0.5mm程度となる。ここで、張出部5Xaの厚さE1は、張出部5Xaの切欠部形状仮想線L2に垂直な方向の最大寸法である。
【0050】
このように、図9(a)に示すような吐出ノズル10Xを用いた場合、張出部5Xaにより、ビード5Xの横断面形状が、全体として丸みを帯びた三角形状となる。ビード5Xに張出部5Xaが存在することは、シーラ3による接着部の接着幅および厚さの制御の妨げとなり、シーラ3による接着部についての仕上がりの品質を低下させる原因となる。また、ビード5Xにおける張出部5Xaは本来余分な部分であるため、材料費を低減させる観点から、張出部5Xaは極力小さい方が望ましい。特に、生産性向上を図るべく、ウィンドガラス2の取付工程の時間を短縮させるためには、ロボット4による吐出ノズル10の移動速度の上昇にともなってシーラ吐出流量を増大させる必要が生じるが、これにより、ビード5Xにおける張出部5Xa発生の問題は顕著となる。
【0051】
以上のように、吐出ノズル10により塗布されたシーラ3により形成されたビード5については、ウィンドガラス2と車体との間に介在した状態での接着幅および厚さの制御のしやすさ等の観点から、ビード5の横断面形状が、吐出ノズル10Xの切欠部23Xが沿うような三角形状に一致することが理想的である。
【0052】
そこで、本実施形態に係る吐出ノズル10においては、切欠部23の形状について工夫が施されている。すなわち、吐出ノズル10において、切欠部23は、ノズル正面視で略三角形状に沿う一対の傾斜辺部25により形成されており、傾斜辺部25は、全体として切欠部23の内側を凸側とした円弧状をなすように形成されている。
【0053】
図10から図12に示すように、切欠部23は、各傾斜辺部25をなす一対の切欠部端面27により形成されている。切欠部端面27は、ノズル本体部22の円筒状の周壁を略三角形状に切り欠いた端面である。一対の切欠部端面27は、ノズル正面視において左右対称に形成されており、下端面22cを底辺として下端面22cとともに略二等辺三角形状をなす。
【0054】
詳細には、図8および図10に示すように、切欠部端面27は、吐出ノズル10の前後方向(図11において左右方向)について、切欠部23のノズル正面視の形状・寸法が一定となるように形成されている。つまり、切欠部端面27は、前後方向に平行な面となっており、一対の切欠部端面27は、左右方向に対向している(図8参照)。言い換えると、切欠部23は、その正面視形状(ノズル正面視での形状)をノズル本体部22の周壁部に対する投影形状とし、その投影部分を切除した態様で形成されている。
【0055】
また、切欠部23は、その下端の開口幅を、ノズル本体部22の内径に一致ないしは略一致させている。したがって、図8に示す底面図において、切欠部端面27の後端は、前後方向(図8において左右方向)について、ノズル本体部22の中心軸に対応する中心位置C1を通る左右方向(図8において上下方向)の直線C2と同一または略同一の位置に位置している。
【0056】
このように形成された切欠部23において、切欠部端面27は、ノズル本体部22の周壁部の円筒形状にならって、前後方向の寸法となる幅寸法を、上側から下側にかけて徐々に大きくするとともに、側面視で湾曲した形状を有する(図12参照)。また、切欠部23を有することにより、ノズル本体部22は、側面視において、下端部の前側の角部分を、周壁部の円筒形状による直角形状に対して面取状の丸め形状としている(図11参照)。
【0057】
以上のように切欠部23を形成する一対の切欠部端面27は、ノズル正面視において、全体として一定または略一定の曲率をもって、切欠部23の内側を凸側として円弧状に湾曲した形状をなす。すなわち、切欠部端面27は、ノズル正面視において、下端面22c上に位置する下端点27aから、切欠部23の頂点の位置に対応した上端点27bまで一定または略一定の曲率の湾曲形状をなし、内側に膨出した形状を有する。ノズル正面視において左右の切欠部端面27は、上端点27bの位置を互いに一致させており、前後方向に平行な谷線27cを形成している(図8参照)。
【0058】
また、本実施形態の吐出ノズル10において、切欠部23をなす切欠部端面27は、ノズル正面視で、図9(b)に示すようなビード5Xの横断面形状における外側面5Xbの湾曲形状を転写した形状を有する。すなわち、ノズル正面視において、切欠部端面27は、ビード5Xの横断面形状において外側面5Xbを表す曲線を、切欠部形状仮想線L2を中心として反転させた形状となっている。言い換えると、図10に示すように、ノズル正面視において、切欠部端面27は、外側面5Xbを表す曲線に対応する曲線M1に対し、下端点27aと上端点27bとを結ぶ直線M2について線対称の形状となっている。
【0059】
したがって、切欠部端面27の湾曲形状は、図9(a)に示すようなノズル正面視で直線L1をなす傾斜辺部25Xを有する吐出ノズル10Xを用いて形成されたビード5Xの横断面形状に基づいて設定される。すなわち、切欠部23の傾斜辺部25は、切欠部23としてノズル正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線L1をなす仮定の切欠部23Xを有する吐出ノズル10Xを用いて吐出口21よりシーラ3を吐出させて形成したビード5Xの横断面視形状について、仮定の切欠部23Xが沿う三角形状の傾斜辺である切欠部形状仮想線L2からのはみ出し部分である張出部5Xaの膨出形状に基づく湾曲形状を有する。
【0060】
このような形状を有する切欠部端面27により形成された切欠部23は、ノズル正面視において、上部については、下側から上側にかけて絞るように徐々に開口幅を狭めており、下部については、上側から下側にかけてラッパ状に開口幅を広げている。
【0061】
以上のような形状を有する本実施形態に係る吐出ノズル10の設計方法および製造方法の一例について説明する。
【0062】
吐出ノズル10の設計方法および製造方法では、図9(a)に示すように、切欠部23として、正面視で所定の三角形状に沿う一対の直線L1をなす仮定の切欠部23Xを有する吐出ノズル10Xがテストノズル10Yとして用いられる。テストノズル10Yの切欠部23Xにおいて、ノズル正面視で傾斜辺部25Xがなす直線L1は、図10に示すように、切欠部端面27の下端点27aと上端点27bとを結ぶ直線M2に対応している。
【0063】
図13に示すように、まず、テストノズル10Yを用いてテスト用ビード5Yを形成するステップが行われる(S10)。すなわち、図14(a)に示すように、テストノズル10Yが用いられ、所定の塗布条件で、テストノズル10Yを移動させながら吐出口21よりシーラ3を吐出させて塗布することでテスト用ビード5Yが形成される。テスト用ビード5Yは、例えばテスト用のウィンドガラスが用いられることで、ウィンドガラス2の塗布面2aと同様の所定の塗布面2Ya上に形成される。図14(a)は、テストノズル10Yによるテスト用ビード5Yの形成状態を示す正面図である。
【0064】
テスト用ビード5Yは、テストノズル10Yを用いて形成されるビードであり、図9(b)に示すような態様のものとなる。すなわち、図14(b)に示すように、テスト用ビード5Yは、図9(b)に示すビード5Xと同様に、切欠部形状仮想線L2からの外側への膨出状のはみ出し部分である張出部5Xaを有する。図14(b)は、テスト用ビード5Yの横断面形状を示す図であり、張出部5Xaを着色部分で示している。
【0065】
テスト用ビード5Yの形成におけるシーラ3の塗布条件は、本実施形態に係る吐出ノズル10を用いてウィンドガラス2上にビード5を形成する際のシーラ3の塗布条件と同じ条件である。塗布条件には、ロボット4等によるテストノズル10Yの移動速度およびシーラ吐出流量が含まれる。また、テスト用ビード5Yの形成においては、シーラ3自体についても、吐出ノズル10を用いてウィンドガラス2に塗布するシーラ3と同じものが用いられる。また、テスト用ビード5Yの形成において、シーラ3の塗布面2Yaは、プライマ16の塗布状態等を含め、吐出ノズル10によりシーラ3が塗布されるウィンドガラス2の塗布面2aと同じ状態とされる。
【0066】
次に、図13に示すように、テスト用ビード5Yにおける張出部5Xaの膨出形状を計測するステップが行われる(S20)。このステップでは、テスト用ビード5Yの張出部5Xaの膨出形状として、外側面5Xbの形状が計測される。つまり、切欠部23Xのノズル正面視での形状を、テスト用ビード5Yの横断面視形状に重ね、テスト用ビード5Yにおける切欠部23Xのノズル正面視形状からのはみ出し部分の形状が計測される。
【0067】
具体的には、図14(b)に示すようなテスト用ビード5Yの横断面視形状について、張出部5Xaの形状が、三角形状の切欠部形状仮想線L2が結ぶ頂点同士を結ぶ湾曲線30として計測される。湾曲線30は、図14(c)に示すように、切欠部形状仮想線L2が結ぶ頂点P1,P2同士を結ぶ曲線であり、図14(b)に示す張出部5Xaの外側面5Xbを示す曲線に一致する。頂点P1は、切欠部形状仮想線L2の下端の点であり、頂点P2は、切欠部形状仮想線L2の端の点であり、左右の切欠部形状仮想線L2の頂点P2の位置は互いに一致している。
【0068】
湾曲線30の計測は、例えば、テスト用ビード5Yの横断面の撮影画像に基づく画像処理等の適宜の方法により行われる。湾曲線30の計測の方法は、湾曲線30の形状を取得できるものであれば特に限定されない。
【0069】
続いて、図13に示すように、湾曲線30を用いて吐出ノズル10の切欠部23の形状を決定するステップが行われる(S30)。すなわち、このステップでは、ステップS20で求めた湾曲線30の形状が、切欠部23において傾斜辺部25をなす切欠部端面27のノズル正面視における形状として適用され、切欠部23の形状が決定される。
【0070】
具体的には、図14(d)に示すように、湾曲線30を、仮定の切欠部23Xが沿う切欠部形状仮想線L2に対して反転させた形状が、切欠部23の正面視形状となるように、切欠部23の形状が決定される。すなわち、ノズル正面視において、頂点P1,P2同士を結ぶ湾曲線30に対し、頂点P1,P2同士を結ぶ切欠部形状仮想線L2について線対称の形状が、切欠部端面27の形状として採用される。なお、切欠部23の形状の決定において、切欠部23X(23)とテスト用ビード5Yの寸法の関係は、1対1での対応となる。
【0071】
また、本実施形態では、切欠部23の形状を決定するステップ(S30)において、湾曲線30は、円弧であり、切欠部23の正面視形状は、ノズル正面視で円弧状をなす湾曲線30を内側に膨出させた形状として決定される。すなわち、ノズル正面視における切欠部端面27の形状を規定する湾曲線30として、全体として一定の曲率を有する円弧形状が採用される。
【0072】
具体的には、湾曲線30として、例えば、頂点P1,P2と、張出部5Xaの膨出形状の頂点P3とを通る円周の一部形状が採用される(図14(c)参照)。そして、円弧形状の湾曲線30が、切欠部端面27の形状となり、凸側を内側とした左右の切欠部端面27により、切欠部23の形状が決定される。また、円弧形状としての湾曲線30を決定する方法としては、例えば、頂点P1,P2の2点を通る円弧形状のうち、張出部5Xaの膨出形状に近似する円弧形状を適宜採用する方法であってもよい。
【0073】
以上のような各手順を含む設計方法により設計された切欠部23の形状が用いられ、吐出ノズル10の製造方法においては、切欠部23を形成する工程が行われる。すなわち、図13に示すように、吐出ノズル10の製造方法としては、上述したステップS10からS30が行われた後、決定した切欠部23の形状に基づき、切欠部23を形成するステップが行われる(S40)。
【0074】
切欠部23は、例えば、ノズル本体部22をなす円筒状の周壁部分に対し、切欠部23の正面視形状を投影させ、その投影部分を切削すること等によって切除することで形成される。これにより、吐出ノズル10において、図8図10から図12に示すような切欠部23が形成される。
【0075】
以上のような手順により、本実施形態に係る吐出ノズル10が製造される。なお、上述した切欠部23の形状を決定するステップ(S30)に関し、湾曲線30の形状は、円弧形状に限定されるものではない。湾曲線30は、例えば、部分的に曲率を異ならせた滑らかな曲線であってもよい。
【0076】
以上のような本実施形態に係る吐出ノズル10並びにその設計方法および製造方法によれば、シーラ3の塗布部分についての品質を向上させることができるとともに、材料費の低減を図ることができる。
【0077】
本実施形態に係る吐出ノズル10によれば、図15に示すように、ビード5の横断面形状を、理想的な三角形状、つまりビード5の横断面形状において幅方向両側の傾斜辺部5bを直線とした三角形に近付けることができ、張出部5Xaの発生を抑制することができる。具体的には次のとおりである。
【0078】
吐出ノズル10から吐出されたシーラ3は、吐出圧によりノズル外に押し出されることで、ノズル内における圧縮状態から解放されるために膨張変形し、吐出ノズル10の切欠部23の開口形状に対してはみ出した横断面形状をなすようにビード5を形成する。ここで、切欠部23の切欠部端面27が、ビード5の横断面視に対応するノズル正面視において、ビード5の傾斜辺部5bに対する外側への膨出分を傾斜辺部5bに対して抉った態様の凹形状を有するため、切欠部23から吐出されたシーラ3の膨出変形は、切欠部端面27による直線M2に対する凹形状を埋める態様の変形となる。
【0079】
すなわち、ノズル正面視における切欠部端面27の内側に凸の湾曲形状は、ビード5X(5Y)の横断面形状において下端点27aと上端点27bとを結ぶ直線M2に対応する切欠部形状仮想線L2からの膨出形状である湾曲線30を反転させた形状である。このため、ノズル正面視において、切欠部端面27の直線M2からの内側への突出部分の形状・面積は、切欠部端面27による切欠部23の開口形状に対するシーラ3の膨出部分の形状・面積に近似したものとなる。したがって、切欠部23から吐出されたシーラ3が膨出変形することで、切欠部端面27の内側への膨出形状が相殺され、ビード5の傾斜辺部5bが直線M2に近付き直線状となる。
【0080】
これにより、図15に示すように、ビード5の横断面形状を、塗布面2aに対する接触面である底辺5cと、左右の傾斜辺部5bとにより、二等辺三角形状に極めて近い形状にすることができる。なお、図15では、ノズル正面視での下端面22cの高さ位置をウィンドガラス2の塗布面2aに一致させ、ノズル正面視で切欠部端面27がなす曲線を切欠部形状仮想線N2としてビード5の横断面形状に重ねて二点鎖線で示している。
【0081】
吐出ノズル10とビード5の寸法関係の一例として、図10に示すように、ノズル本体部22の内径に相当する切欠部23の下端開口幅F1が8mm、切欠部23の高さF2が13mmであり、図2に示すような吐出ノズル10と塗布面2aとの間の間隔B1が2mmである場合を想定する。この場合、図15に示すように、例えば、ビード5の幅寸法G1は、切欠部23の下端開口幅F1の寸法と略同じの約8mmとなり、ビード5の高さ寸法G2は、切欠部23の高さF2の寸法よりわずかに小さい約12mmとなる。つまり、図15に示すビード5の幅寸法と高さの比は、略2:3となっている。このような寸法のビード5の場合、ウィンドガラス2と車体との間に挟まれて押し潰されることで、ビード5はその高さを例えば6mm程度としながら、横断面形状を四角形状とするように変形する。
【0082】
ビード5の横断面形状を理想的な三角形状に近付けることができることにより、シーラ3がウィンドガラス2と車体との間に接着部として介在した状態での接着幅および厚さを制御しやすくなる。これにより、シーラ3のはみ出し等の不具合を改善することができ、シーラ3による接着部についての仕上がりの品質を向上させることができる。また、シーラ3のはみ出し等の不具合が生じた場合、はみ出し部分の拭き取り等、不具合を直したり塗布をやり直したりする手間が生じるが、シーラ3の塗布の不具合が解消できることで、このような手間をなくすことができ、生産効率を向上させることができる。
【0083】
また、ビード5において張出部5Xaの発生を抑制することができるので、シーラ3の使用量を少なくすることができ、シーラ3の材料費を低減させることが可能となる。これにより、コスト面で高い効果を得ることができる。シーラ3の低減量に関しては、本実施形態に係る吐出ノズル10を用いることで、例えば、図9(a)に示すような吐出ノズル10Xを用いた場合との比較において、シーラ3の量を8割程度の量(体積)に低減することができるという結果が得られている。
【0084】
さらに、ビード5における張出部5Xaの発生は、シーラ吐出流量が多いほど顕著となるが、シーラ吐出流量の多さに応じて切欠部端面27の湾曲形状を調整することにより、比較的多いシーラ吐出流量にも対応することができ、ビード5の横断面形状を理想的な三角形状に近付けることができる。これにより、生産性を向上させるべく、ロボット4による吐出ノズル10の移動速度の上昇にともなってシーラ吐出流量を増大させることが可能となり、ウィンドガラス2に対するシーラ3の塗布工程の時間を短縮することができる。なお、切欠部端面27の湾曲形状を調整に関し、例えば、ノズル正面視における切欠部端面27の湾曲形状が円弧形状である場合、シーラ吐出流量が多くなるほど、その円弧形状についての曲率を大きくする(曲率半径を小さくする)ことになる。
【0085】
また、ビード5の横断面形状を理想的な三角形状に近付けることができることにより、ウィンドガラス2と車体との間に挟まれて押し潰された状態での横断面形状を四角形状に近付けることができる。これにより、シーラ3による接着部についての接着面積の確保が容易となり、接着部の品質向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態において、ノズル正面視における切欠部23の切欠部端面27の湾曲形状として、円弧形状が採用されている。これにより、切欠部端面27の湾曲形状を単純な形状とすることができるので、切欠部端面27の形状を容易に決定することが可能となる。結果として、吐出ノズル10の製造を容易に行うことができる。
【0087】
そして、本実施形態に係る吐出ノズル10によれば、切欠部23の傾斜辺部25をなす切欠部端面27が、ノズル正面視で全体として切欠部23の内側を凸側とした円弧状をなすように形成されている。このような構成によれば、単純な切欠き形状により、ビード5における張出部5Xaの発生を抑制することができ、ビード5の横断面形状を三角形状に近付けることができる。これにより、上述のとおりシーラ3の塗布部分の品質向上および材料費の低減を図ることができる。
【0088】
以上のように、本実施形態に係る吐出ノズル10並びにその設計方法および製造方法は、切欠部23から吐出されたシーラ3が膨張変形することで、ビード5の横断面形状において切欠部23の切欠き形状からはみ出た張出部5Xaが生じることに着目し、張出部5Xaの発生を見込んで切欠部23の形状に工夫を施すものである。すなわち、ビード5における膨出部分の形状を見越し、その膨出部分の形状を切欠部23の切欠き形状においてあらかじめ差し引く(内側に突出させる)ことで、ビード5においていわば膨らみ代を作り、膨出変形したビード5において張出部5Xaの発生を抑制し、最終的なビード5の横断面形状を理想的な三角形状に近付けようとするものである。
【0089】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る吐出ノズル並びにその設計方法および製造方法は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0090】
上述した実施形態では、吐出ノズル10によりシーラ3が塗布されるワークは、ウィンドガラス2であるが、本発明に係る粘性材料の塗布の対象は、ウィンドガラス2に限られるものではなく、他の自動車部品や、自動車部品以外の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 シーラ塗布装置
2 ウィンドガラス
3 シーラ(粘性材料)
5 ビード
5a 稜線部
5c 底辺
5Y テスト用ビード
5b 傾斜辺部
5Xa 張出部
5Xb 外側面
10 吐出ノズル
10Y テストノズル
21 吐出口
22 ノズル本体部
23 切欠部
23X 切欠部
25 傾斜辺部
25X 傾斜辺部
27 切欠部端面
27a 下端点
27b 上端点
30 湾曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15