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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/512 20060101AFI20230920BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230920BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61F13/512 100
A61F13/511 300
A61F13/512 300
A61F13/537 210
A61F13/537 310
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174485
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049193
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-006002(JP,A)
【文献】特許第6507282(JP,B1)
【文献】特開2009-061026(JP,A)
【文献】特開平02-193663(JP,A)
【文献】特開2016-013198(JP,A)
【文献】特表2008-518734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面を形成する表面シートが、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合されて構成されるか、セルロース系繊維からなる不織布の1層構造又は肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合された2層構造とされた表面シートの非肌側に合成繊維からなるセカンドシートが配設され、
前記セルロース系繊維からなる不織布がスパンレース不織布で構成され、
前記セルロース系繊維からなる不織布の繊維が、吸収性物品の長手方向に沿って配向されており、
前記表面シートの着用者の体液排出部に対応する領域に、前記表面シートを貫通するとともに、吸収性物品の長手方向中心線を幅方向に横断して延びるスリットが、長手方向に間隔をあけて複数形成され
前記非肌側の不織布層又は前記セカンドシートに、前記スリットを跨ぐように前記スリットの両側の合成繊維同士を部分的に融着する融着部が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記スリットの長さは10~60mmである請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの非肌側に合成繊維からなるセカンドシートが配設され、前記スリットが前記表面シート及び前記セカンドシートを貫通して形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記スリットの周縁に、非肌側に突出するバリが形成されている請求項1~いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スリットの平面形状は、直線又は着用者の体液排出部に対応する領域の中央に対して外側に膨出する曲線からなる請求項1~いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁パッド、パンティライナー、生理用ナプキンなどに使用される吸収性物品に係り、詳しくは肌当接面を形成する表面シートがセルロース系繊維からなるとともに、着用者の体液排出部に対応する領域にスリットが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、失禁パッド、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、表面シートとの間に粉砕パルプ等の紙綿からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
前記表面シートは肌当接面を形成するものであるため、柔軟であることや、排泄液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られること、肌に対して刺激が少ないこと等が要求される。このような要求を満たす素材として、合成繊維の不織布や樹脂製メッシュシートが吸収性物品の分野で広く採用されている。しかし、合成繊維の不織布からなる表面シートは、痒みやかぶれ等が生じやすい点で充分に満足できるものではなかった。
【0004】
これを解決するものとして、コットン繊維(綿繊維)を素材とした表面シートが提案されている。コットン繊維からなる表面シートは、下着のような柔らかい肌触りを実現できる利点を有しているが、吸収性物品においては、表面シートが高い透液性を有し、素早く液を吸収体に移行させることが望まれるのに対し、通常の脱脂綿繊維を表面シートに含有させた場合、表面シート自体が高い保液性を有し、表面にべたつき感が残り易いという問題があった。
【0005】
このような表面シートの液残りによるべたつき感を防止する技術として、下記特許文献1には、トップシートが2枚の液透過性の不織布シートから構成され、身体側最上層の不織布シートには、吸収性物品の長手方向に沿って、前記不織布シートを貫通する直線状のスリットが間欠的に設けられ、下層に位置する不織布シートには、吸収性物品の幅方向に沿って、前記不織布シートを貫通する直線状のスリットが間欠的に設けられ、上下に積層した不織布シートのそれぞれに設けられたスリットは、上下方向に重なっていない吸収性物品が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、表面シートは、内部空洞の複数の凸部を有しており、該凸部は、頂部を通るスリットを有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-209306号公報
【文献】特開2005-124854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常の表面シートは、吸収性物品の長手方向に沿って繊維が配向されているが、上記特許文献1記載の吸収性物品では、身体側最上層の不織布シートに設けられたスリットが繊維配向と平行する方向に延びているため、繊維配向に沿って拡散する体液がスリットを通って下層側に移行しにくく、表面の体液の拡散面積が大きくなって、表面のべたつき感が生じやすい。
【0009】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、内部空洞を有する凸部の頂部にスリットが設けられているため、凸部の頂部に沿って拡散する体液を下層側に移行しやすくなっているが、凹部に沿って拡散する体液が下層側に移行しにくく、表面のべたつき感が生じやすい。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、肌当接面層を構成する繊維としてセルロース系繊維を用いた吸収性物品において、下層側に体液を移行しやすくし、表面のべたつき感を低減した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために第1の態様として、肌当接面を形成する表面シートが、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合されて構成されるか、セルロース系繊維からなる不織布の1層構造又は肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合された2層構造とされた表面シートの非肌側に合成繊維からなるセカンドシートが配設され、
前記セルロース系繊維からなる不織布がスパンレース不織布で構成され、
前記セルロース系繊維からなる不織布の繊維が、吸収性物品の長手方向に沿って配向されており、
前記表面シートの着用者の体液排出部に対応する領域に、前記表面シートを貫通するとともに、吸収性物品の長手方向中心線を幅方向に横断して延びるスリットが、長手方向に間隔をあけて複数形成され
前記非肌側の不織布層又は前記セカンドシートに、前記スリットを跨ぐように前記スリットの両側の合成繊維同士を部分的に融着する融着部が形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記第1の態様では、肌当接面を形成する表面シートが、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合されて構成されるか、セルロース系繊維からなる不織布の1層構造又は肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって結合された2層構造とされた表面シートの非肌側に合成繊維からなるセカンドシートが配設された吸収性物品において、前記表面シートの着用者の体液排出部に対応する領域に、前記表面シートを貫通するとともに、吸収性物品の長手方向中心線を幅方向に横断して連続的に延びるスリットが、長手方向に間隔をあけて複数形成されているため、通常、吸収性物品の長手方向に沿って繊維が配向された表面シートにおいて、繊維配向に沿って拡散する体液が、この繊維配向とほぼ直交する吸収性物品幅方向に延びる前記スリットに入り込みやすくなり、このスリットを通じて下層側に体液が移行しやすく、表面シートに体液が残りにくくなる結果、表面のべたつき感が低減できるようになる。
【0013】
上記第の態様では、前記表面シートとして、セルロース系繊維からなる不織布の1層構造のものを用いるか、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層と、非肌側の合成繊維からなる不織布層とが繊維の交絡によって接合された2層構造のものを用いている。いずれにしても肌当接面がセルロース系繊維からなるため、肌触りが柔らかくなる。また、2層構造のものは、非肌側に接合された合成繊維からなる不織布層によって、セルロース系繊維のみからなるものに比べて、スリット端部の裂けが生じにくくなる。
【0014】
上記第の態様では、セルロース系繊維からなる不織布の繊維が吸収性物品の長手方向に沿って配向され、この繊維配向と直交する吸収性物品の幅方向にスリットが延びているため、繊維が配向された方向に沿って拡散する体液がスリットに入り込みやすくなる。
【0015】
上記第の態様では、肌当接面側のセルロース系繊維からなる層の非肌側に合成繊維からなる層が設けられた形態において、この合成繊維からなる層に、前記スリットを跨ぐように前記合成繊維の融着部を形成しているため、スリット部における肌当接面側のセルロース系繊維からなる層の剥がれやめくれが防止でき、装着感が悪化するのが抑制できる。
【0016】
第2の態様として、前記スリットの長さは10~60mmである吸収性物品が提供される。
【0017】
上記第2の態様では、スリットの長さが短すぎると体液がスリットの両端を回り込んで外側に拡散しやすくなり、スリットの長さが長すぎると表面シートのめくれによる装着感の悪化や逆戻りが生じやすくなるため、スリットの長さを所定の長さとしている。
【0018】
の態様として、前記表面シートの非肌側に合成繊維からなるセカンドシートが配設され、前記スリットが前記表面シート及び前記セカンドシートを貫通して形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記第の態様では、セルロース系繊維からなる表面シートと合成繊維からなるセカンドシートとを積層し、これら表面シート及びセカンドシートに前記スリットを形成している。前記合成繊維からなるセカンドシートを表面シートの非肌側に配置することによって、セルロース系繊維のみからなるものに比べて、スリット端部の裂けが生じにくくなる。
【0020】
の態様として、前記スリットの周縁に、非肌側に突出するバリが形成されている請求項1~いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記第の態様では、表面シートの肌当接面側から非肌側に向けてカッターによる切断加工を施して前記スリットを形成することにより、加工時にスリット周縁に形成されるバリが、非肌側に突出するようにしている。このため、このバリを伝って非肌側に体液が移行しやすくなる。
【0022】
の態様として、前記スリットの平面形状は、直線又は着用者の体液排出部に対応する領域の中央に対して外側に膨出する曲線からなる請求項1~いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記第の態様では、スリットの平面形状を直線又は体液排出部の中央側に向けて凹形状の曲線で形成している。特に後者の曲線で形成した場合には、曲線の凹部に溜まった体液がスリットに入り込んで非肌側に移行しやすくなり、スリットの両端を回り込んで外側に拡散する体液が減少する。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、肌当接面層を構成する繊維としてセルロース系繊維を用いた吸収性物品において、下層側に体液が移行しやすくなり、表面のべたつき感が低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る軽失禁パッド1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】表面シート3の断面図である。
図5】表面シート3の拡大平面図である。
図6】スリット20の斜視図である。
図7図6のVII-VII線矢視図である。
図8】変形例に係る軽失禁パッド1の平面図である。
図9】変形例に係る軽失禁パッド1の平面図である。
図10】変形例に係る軽失禁パッド1の平面図である。
図11】変形例に係る軽失禁パッド1の平面図である。
図12】スリット20の斜視図である。
図13図12のXIII-XIII線矢視図である。
図14】変形例に係る軽失禁パッド1の平面図である。
図15】変形例に係るスリット20の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
<軽失禁パッド1の基本構造の一例>
本発明に係る軽失禁パッド1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、肌当接面をなし、尿などの体液を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4の少なくとも肌側面及び非肌側面を覆うクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、必要に応じて前記表面シート3と吸収体4との間に介在されたセカンドシート6と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する領域を含む前後方向の所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2とサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されている。図示例においては、吸収体4は1層構造となっているが、中高部を形成する多層構造としてもよく、また、同一の大きさ、形状の吸収体を重ねた多層構造としてもよい。
【0028】
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年ではムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。裏面シート2の下着当接面(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に軽失禁パッド1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
前記吸収体4は、体液を吸収・保持し得るものであり、フラッフ状のパルプ繊維中に粉粒状の高吸水性ポリマーを分散混入したもの、又は、肌側に配置された上層シートと非肌側に配置された下層シートとの間の所定領域に高吸水性ポリマーが介在されたポリマーシートを用いることができる。
【0030】
前記パルプ繊維としては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記パルプ繊維の目付は、150~500g/m、好ましくは250~400g/mとするのがよく、前記高吸水性ポリマーの目付は、70~470g/m、好ましくは140~240g/mとするのがよい。
【0031】
前記高吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
【0032】
図示例では、表面シート3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、表面シート3の幅方向外側は、表面シート3の両側部表面から延在するサイド不織布7(表面シート3とは別の部材)により覆われている。前記サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を15~23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0033】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着している。
【0034】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の弾性伸縮部材8、8が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されることにより、前記弾性伸縮部材8、8の収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーBSが形成されている。この二重シート部分は前後端部では、図3に示されるように、折り畳まれた状態で表面シート3側に固定されている。
【0035】
<表面シート>
前記表面シート3は、吸収体4の肌側を覆う失禁パッド1の肌当接面を形成するものであり、少なくとも肌当接面層がセルロース系繊維からなる不織布によって構成されている。前記表面シート3は、図4(A)に示されるように、セルロース系繊維からなる不織布の1層構造としてもよいし、図4(B)に示されるように、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと、非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとが繊維の交絡によって結合された2層構造としてもよい。いずれにしても、表面シート3の肌当接面は、親水性のセルロース系繊維によって構成されている。
【0036】
前記親水性のセルロース系繊維としては、コットン繊維(綿繊維)やパルプ繊維などの天然由来のものや、レーヨン繊維、アセテート繊維、リヨセル繊維などの人工セルロース系繊維が挙げられる。前記コットン繊維としては、木綿の原綿、精錬・漂白した綿繊維あるいは精錬・漂白後、染色を施した綿繊維、精錬・漂白した脱脂綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆるコットン繊維を使用できるが、下層側のシートにおける液の吸収スピード及び拡散性を高めるため、特にコットン繊維の表面に付着しているコットンワックスの天然油脂を脱脂した脱脂綿繊維を使用するのが好ましい。
【0037】
前述のセルロース系繊維からなる不織布は、特に、コットン繊維100重量%からなるスパンレース不織布で構成するのが望ましい。コットン繊維のみで構成することによって、柔らかい肌触りが得られ、長時間装着しても痒みやかぶれ等装着時の肌トラブルを生じ難くできる。また、スパンレース不織布は、接着剤を使用しない、柔軟性を有する等の利点を有する。
【0038】
セルロース系繊維からなる不織布の目付としては、セルロース系繊維の柔軟性や風合いが発揮できるように、10~30g/m、好ましくは15~20g/mとするのがよい。不織布の目付は50mm×50mm(±2mm)の寸法の試料を切り取って重量を測定し、1m当たりの重さに換算して求めたものである。
【0039】
非肌側の合成繊維からなる不織布層3bは、有孔または無孔の不織布が用いられる。不織布の繊維素材には、熱融着性繊維が含有されている。前記熱融着性繊維としては、たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性の合成繊維単体の他、これら合成繊維に、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を含めることができるし、これら合成繊維を含む芯鞘構造などからなる複合繊維とすることもできる。セルロース系繊維からなる不織布層3aの非肌側に合成繊維からなる不織布層3bを設けることにより、熱融着性繊維の熱溶融によって接合性を高めることができ、且つ合成繊維からなる不織布層3bが液保持しにくく、下層側への通液性が良好になるとともに、合成繊維からなる不織布層3bに体液が保持されて肌側に逆戻りする現象を抑えることができる。
【0040】
肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aから非肌側の合成繊維からなる不織布層3bに体液を移行しやすくするため、合成繊維からなる不織布層3bに親水剤を外添塗布してもよい。前記合成繊維からなる不織布層3bに対する親水剤の塗布は、肌側の不織布層3aと非肌側の不織布層3bとの接合が水流交絡による場合には、水流交絡時に親水剤が流れ落ちるのを防止するため、水流交絡によるこれらの接合後、合成繊維からなる不織布層3bの外面に施すのが好ましいが、両不織布層3a、3bの接合が針の突き刺しによる場合には、肌側の不織布層3aとの接合前でも接合後でもよい。
【0041】
前記合成繊維からなる不織布層3bは、非熱融着性の繊維、具体的には上述のセルロース系繊維を含まない構成とすることも可能であり、熱融着性繊維、具体的には合成繊維のみによって構成してもよい。
【0042】
非肌側の合成繊維からなる不織布層3bの目付としては、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aの目付より小さいのが好ましく、具体的には8~25g/m、好ましくは13~20g/mとするのがよい。肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aを非肌側の合成繊維からなる不織布層3bの目付より大きくすることにより、セルロース系繊維からなる不織布層3aに合成繊維が飛び出しにくくなり、肌触りが良好となる。
【0043】
肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとは、所定の接合法によって接合するのが望ましい。仮に、各層3a、3bを接合しないで単に積層しただけの状態とした場合には、セルロース系繊維からなる不織布層3aの強度が弱く、破れやすくなるので好ましくない。すなわち、不織布層3a、3bを接合することにより、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aが非肌側の合成繊維からなる不織布層3bによって補強され、表面シート3の破れが防止できる点で好ましい。また、表面シートを同じ目付とした場合、セルロース系繊維からなる不織布のみで構成した1層構造のものと比べて、不織布層3a、3bの2層構造とすることにより、合成繊維に比べて高価なセルロース系繊維の使用量を低減できるため、表面シート3のコストを抑えることができる点でも、不織布層3a、3bを接合した2層構造とするのが好ましい。
【0044】
肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとの接合は、接着剤などによるのではなく、互いの繊維を交絡させて接合するのが好ましい。これらの繊維を互いに交絡させて接合することにより、接着剤などによって接合した場合に比べて、これら不織布層3a、3bの間に接着剤などの体液の移行を阻害しやすい部材が介在しないため、肌側の不織布層3aから非肌側の不織布層3bに体液が移行しやすくなるとともに、互いに交絡した繊維を通じて肌側の不織布層3aから非肌側の不織布層3bに体液が移行しやすくなる。また、繊維の交絡による接合は接合強度がそれほど強くならないので、合成繊維からなる不織布層3bを加熱・圧搾した際に、セルロース系繊維からなる不織布層3aへの加熱や圧搾の影響が少なくて済むという利点も有する。このような繊維の交絡による接合法としては、高圧水流を噴射して繊維同士を絡み合わせる水流交絡法や、針の突き刺しにより機械的に繊維同士を絡み合わせる突き刺し法などがある。
【0045】
セルロース系繊維からなる不織布層3aの非肌側に、繊維の交絡によって合成繊維からなる不織布層3bを結合することにより、後段で詳述するスリット20を形成してもセルロース系繊維からなる不織布層3aが破れにくくなる。
【0046】
ところで、前記表面シート3のセルロース系繊維からなる不織布は、図5に示されるように、透液性を高めるため、少なくとも体液排出部Hに対応する領域に表裏を貫通する多数の開孔12、12…を設けるのが好ましい。具体的には、前記開孔12は、スパンレース製造時の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることで形成することができる。この場合、使用するメッシュの条件を変更することで、個々の開孔サイズ、開孔率を調整することが可能である。もちろん、製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施して開孔を形成しても良い。前記開孔12は、表面シート全体に設けても良いが、少なくとも体液排出部Hに対応する領域に設けるのがよい。好ましくは、体液排出部Hに対応する領域を含み、製品長さ方向に吸収体長さの15%以上、製品幅方向に吸収体幅の50%以上、さらに好ましくは、体液排出部Hに対応する領域を含み、製品長さ方向に吸収体長さの50%以上、製品幅方向に吸収体幅の70%以上の領域に設けるようにする。開孔12の形成領域が、製品長さ方向に吸収体長さの15%未満でかつ製品幅方向に吸収体幅の50%未満である場合には、体液排出範囲をカバーすることができない事態が発生し、表面シート3に体液が残りべたつき感を感じるようになるとともに、痒みやかぶれ等装着時の肌トラブルが生じ易くなる。前記開孔12は、セルロース系繊維からなる不織布にのみ設けてもよいし、表面シート3が肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとの2層構造からなる場合、前記不織布層3a、3bの両方に設けてもよい。
【0047】
前記開孔12は、図5に示されるように、軽失禁パッド1の長手方向に長い縦長の形状で形成されている。このため、円形の開孔よりも液体が透過しやすくなるので、この開孔12を通じて体液が表面シート3を通過しやすくなり、表面シート3への保水が低減する。また、体液が開孔12を通過する際、液体が縦長に変形しながら通り抜けるため、体液の拡散方向がナプキン長手方向に制御でき、横方向への拡散が抑えられ、横漏れしづらくなる。なお、スパンレースの場合は、開孔形状が一様にはなりずらいが、前記開孔12の形状は、概ね矩形状~角の取れた長孔形状若しくは楕円形状のような形状となる。
【0048】
前記開孔12の寸法としては、軽失禁パッド1の長手方向の長さL1が、0.5~4.0mm、好ましくは1.0~3.0mmとするのがよく、軽失禁パッド1の幅方向の長さL2が、0.5~1.5mm、好ましくは0.5~1.0mmとするのがよい。開孔12の寸法が0.5mm未満では体液が通過しにくいとともに、繊維の毛羽立ちにより明確な開孔が形成されにくく、開孔12の最大寸法が4.0mmを超えると開孔12からの液の逆戻り、吸収体4構成素材の表面露出の要因となる。また、前記L1とL2との比(L1/L2)は、1.2~5.0、好ましくは2.0~3.0とするのがよい。前記開孔12の面積Aは、0.3~3.0mm、好ましくは0.4~2.5mmとするのがよい。更に、開孔率は15~45%、好ましくは17~30%、より好ましくは18~25%とするのがよい。前記開孔12の寸法は、全体に亘って一様である必要はなく、上記の範囲内であれば任意の大きさで形成することができる。
【0049】
前記表面シート3のセルロース系繊維からなる不織布は、図5に示されるように、前記綿繊維によって、軽失禁パッド1の長手方向に沿って延びるとともに幅方向に間隔をあけて形成された多数の縦筋13、13…と、軽失禁パッド1の幅方向に沿って延びるとともに長手方向に間隔をあけて形成された隣接する前記縦筋13、13間を繋ぐ多数の横筋14、14…とが形成されるとともに、前記縦筋13と横筋14とで囲まれた部分に前記開孔12が形成された構造を有しているのが好ましい。
【0050】
前記縦筋13の幅W1は、0.3~2.5mm、好ましくは0.4~2.3mmとするのがよく、前記横筋14の幅W2は、0.1~1.6mm、好ましくは0.1~1.4mmとするのがよい。また、前記幅W1とW2との比(W1/W2)は、1.2~3.0、好ましくは1.5~2.0とするのがよい。前記縦筋13の幅W1を横筋14の幅W2より大きくすることによって、縦筋13に沿った軽失禁パッド1の長手方向への液拡散が生じやすくなる。
【0051】
前記縦筋13は、横筋14より、繊維量が多く、かつ高密度に形成されている。これによって、前記縦筋13部分のみが肌に接触するようになり、肌への接触面積の低減により、長時間着用しても痒みやかぶれ等装着時の肌トラブルを生じ難くできると同時に、排液後においてもべたつき感が軽減されるようになる。また、体液が表面シート3を通過する際、繊維の毛細管現象により相対的に高密度の前記縦筋13に沿った軽失禁パッド1の長手方向への拡散が生じやすくなる。更に、前記開孔12を通過する体液と表面シート3を浸透する体液の拡散方向が軽失禁パッド1の長手方向で一致するため、前記開孔13を通過する体液に引き込まれるようにして表面シート3の縦筋13を浸透するので、表面シート3の液残りが極力抑制されるようになる。
【0052】
前記繊維量の測定は、JIS P8207:2009の「パルプ-ふるい分け試験方法」に従い行うことができる。また、前記密度の測定は、自動厚み測定器(カトーテック社製のハンディー圧縮試験機、KES-G5)を用いて厚みT(荷重:0.5gf/cm)を自動測定し、目付/Tから算出することができる。
【0053】
前記表面シート3のセルロース系繊維からなる不織布には少なくとも体液排出部Hに対応する領域に撥水剤が外添塗布されるのが好ましい。撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができる。
【0054】
前記セルロース系繊維からなる不織布に対する撥水剤の塗布は、前記表面シート3が肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとの2層構造からなる場合であって、前記不織布層3a、3bの接合が水流交絡による場合には、水流交絡時に撥水剤が流れ落ちるのを防止するため、水流交絡によるこれらの接合後、肌側の不織布層3aの外面に施すのが好ましいが、前記不織布層3a、3bの接合が針の突き刺しによる場合には、非肌側の不織布層3bの接合前でも接合後でもどちらでもよい。
【0055】
前記撥水剤は、前記セルロース系繊維からなる不織布の肌当接面及び非肌当接面(吸収体4側の面)のうち、肌当接面のみに塗布しても、肌当接面と吸収体4側の面との両面に塗布してもよいが、少なくとも後述の吸水量試験から求めた吸水量が、0.03g以下、好適には0.02g以下となるようにするのが好ましい。
【0056】
前記表面シート3の吸水量は、次の手順により求めたものである。(1)10cm角の試料を準備し重量を測定する(A)。(2)10cm角の濾紙を表面が平滑な側を上にして3枚重ね、その上に前記試料をセットする。(3)セットした試料の上に常温の水道水を3ml滴下し、5分間放置する。(4)5分間放置後の試料の重量を測定する(B)。(5)(B)-(A)=吸水量(g)により表面シート3の吸水量(保水量)を求める。
【0057】
前記撥水剤の塗布方法は、転写、噴霧、刷毛塗り、含浸、ディッピング等の既知の方法を適宜使用できる。シートの両面の吸水度に差異を持たせる場合には、転写による塗布方法を好ましく使用できる。
【0058】
前記撥水剤は、製造効率の観点から、全面塗布することが好ましいが、少なくとも体液排出部Hに対応する領域に塗布してあればよく、排泄液を受ける部分のみに塗布してもよい。
<セカンドシート>
必要に応じて配設される前記セカンドシート6は、前記表面シート3と吸収体4との間であって、前記表面シート3の非肌側に隣接して配設されている。つまり、表面シート3の非肌側面と、セカンドシート6の肌側面とが対面して配設されている。これらの間は、間欠的な塗布パターンで塗布された接着剤によって接合するのが好ましい。前記セカンドシート6は、表面シート3とほぼ同形状の平面形状を有しているのが好ましい。
【0059】
前記セカンドシート6は、有孔または無孔の不織布が用いられる。不織布の繊維素材としては、合成繊維が含有されている。たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性の合成繊維の他、これら合成繊維に、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を含めることができる。前記不織布としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。
【0060】
前記セカンドシート6は、前記表面シート3より低目付かつ低密度で形成するのが好ましい。これによって、表面シート3の繊維の一部がセカンドシート6の繊維間に入り込み、表面シート3からセカンドシート6に体液が移行しやすくなる。前記セカンドシート6の目付としては、13~35g/m、好ましくは13~18g/mとするのがよい。
【0061】
前記セカンドシート6は、体液に対して親水性を有する素材繊維を用いるのが好ましい。具体的には、合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。前記セカンドシート6は、表面シート3より親水性を高くするのが好ましい。
【0062】
<スリット>
本軽失禁パッド1では、前記表面シート3の着用者の体液排出部Hに対応する領域に、前記表面シート3の表裏を貫通するとともに、軽失禁パッド1の長手方向中心線CLを幅方向に横断して延びるスリット20、20…が、長手方向に間隔をあけて複数形成されている。前記スリット20は、軽失禁パッド1の長手方向中心線CLを境にして左側領域及び右側領域に跨がって延び、軽失禁パッド1の幅方向中央部に幅方向に沿って形成されている。前記表面シート3にスリット20を設けるには、予めスリットが設けられた表面シート3を使用してもよいし、軽失禁パッド1の製造工程においてカッターでの切断加工によって設けてもよい。
【0063】
前記スリット20を形成することにより、通常、上述のように軽失禁パッド1の長手方向に沿って繊維が配向された表面シート3において、この繊維配向に沿って拡散する体液が、繊維配向とほぼ直交する幅方向に延びる前記スリット20に入り込みやすくなり、このスリット20を通じて下層側に体液が移行しやすく、表面シート3に体液が残りにくくなる結果、表面のべたつき感が低減できるようになる。すなわち、前記スリット20によって表面シート3の繊維が切断されているため、スリット20で表面シート3の繊維に沿った体液の拡散が著しく抑えられ、スリット20より外側に体液が拡散しにくくなり、体液の拡散面積が小さく抑えられるようになる。このため、表面シート3のセルロース系繊維からなる不織布に残留する体液の量が少なく、表面のべたつき感が低減するようになる。
【0064】
図1に示されるように、前記スリット20が延びる方向に沿ったスリット20の長さXは、10~60mm、好ましくは20~60mm、より好ましくは40~60mmとするのがよい。スリット20の長さXが短すぎると、体液がスリット20の両端を回り込んで外側に拡散しやすくなる。また60mmより長くすると、スリット20部分における表面シート3のめくれが発生し、装着時の違和感が生じやすくなるとともに、体液が逆戻りしやすくなる。前記スリット20の長さXは、前記の範囲内であれば、長手方向に複数配置された全てのスリット20、20…をほぼ同じ長さで形成してもよいし、異なる長さで形成してもよく、任意である。図1に示される例では、全てのスリット20…をほぼ同じ長さで形成している。異なる長さで形成する場合、体液排出部Hの中央に位置するスリット20よりその外側に位置するスリット20の方が長くなるように形成するのが好ましい。これにより、体液排出部Hの中央側に配置されたスリット20の両端を回り込んで外側に拡散する体液を、これより長く形成された外側のスリット20で下層側に移行させることが可能となる。
【0065】
前記スリット20の長さXは、両側のサイド不織布7、7の幅方向の離隔幅より小さく、着用者の体液排出部Hに対応する領域より外側に延在する長さで形成するのが好ましい。具体的には、図1に示されるように、両側のサイド不織布7、7の離隔幅Mに対して、0.3~0.7倍、好ましくは0.4~0.6倍程度の長さで形成するのがよい。
【0066】
軽失禁パッド1の長手方向に隣り合う前記スリット20、20の間隔Pは、前記スリット20の長さXより短くするのが好ましく、具体的には、5~50mm、好ましくは10~50mm、より好ましくは30~50mmとするのがよい。前記間隔Pは、図1に示される例では、ほぼ等間隔であるが、異なる間隔としてもよい。異なる間隔で配置する場合、体液排出部Hの中央側より外側の方が広い間隔とするのが好ましい。
【0067】
図6に示されるように、前記スリット20の幅C(スリット20の最大幅)は、3mm以下、好ましくは0.1~3mmであるのが好ましい。前記スリット20は、ロールカッターで切断加工等されたものであり、スリット自体ほとんど幅を有さないものであり、スリット20が繊維配向を断裂することによって体液拡散の抑制効果があるので、スリット20を所定の幅に広げなくてもよいが、スリット20が所定の離隔幅を有するように、表面シート3を吸収体4側に接合する際に、表面シート3を長手方向に引っ張った状態で接合した方が体液拡散の抑制効果が助長されるため好ましい。スリット20の幅を大きくし過ぎると、スリット20部分においてセルロース系繊維の柔軟性がなくなり、装着感を低下させるおそれがあるとともに、スリット20からの逆戻りが生じやすくなる。
【0068】
前記表面シート3が、図4(B)に示されるように、肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとが繊維の交絡によって接合された2層構造からなる場合、前記スリット20は、これら不織布層3a、3bを一体的に貫通して形成するのが好ましい。
【0069】
また、前記表面シート3の非肌側に前記セカンドシート6が配設される場合、前記スリット20は、これら表面シート3及びセカンドシート6を一体的に貫通して形成するのが好ましい。これにより、スリット20に入り込んだ体液が吸収体4に移行しやすくなる。
【0070】
図7に示されるように、前記スリット20の周縁に、非肌側に突出するバリ21が形成されるようにするのが好ましい。このバリ21は、カッターロール等による前記スリット20の切断加工を表面シート3の表面側から施すことにより、スリット20周縁の繊維端が非肌側に引き伸ばされて突出したものである。前記バリ21を非肌側に突出させることにより、このバリ21を伝って非肌側に体液が移行しやすくなり、表面シート3の液残りが更に減少する。
【0071】
次に、前記スリット20の変形例について説明すると、図8に示されるように、幅方向に沿って配置された前記スリット20…の両側にそれぞれ離隔して、長手方向に沿う第2スリット22、22を形成してもよい。前記第2スリット22を設けることにより、前記スリット20の両側を回り込んで外側に拡散する体液の流れを阻止することができ、下層側への体液の移行がより促進される。前記第2スリット22は、幅方向に延びる複数のスリット20…の配置範囲より、軽失禁パッド1の長手方向外側に延在する長さで形成するのが、前記スリット20の両側縁を回り込んで外側に拡散するのを阻止する観点から好ましい。前記第2スリット22は、図示例のように、軽失禁パッド1の長手方向に連続する連続線としてもよいし、隣接するスリット20、20間の中央部で間欠する間欠線としてもよい。間欠線としたときの第2スリット22に沿った間欠長さは、隣接するスリット20、20の間隔Pの0.1~0.3倍程度とするのが、前記第2スリット22より幅方向外側に体液が拡散するのを防止する観点から好ましい。前記スリット20と第2スリット22との失禁パッド1の幅方向の離隔幅は、2~10mmとするのが好ましい。
【0072】
図9に示されるように、幅方向に沿って配置された前記スリット20…のうち、前後端に配置されたスリット20、20の両端部の前後にそれぞれ離隔して、軽失禁パッド1の幅方向に延びる第3スリット23、23…を配置してもよい。前記第3スリット23を配置することによって、前後端部に配置されたスリット20、20の両端部を回り込んで外側に体液が拡散するのを阻止することができる。前記第3スリット23は、図示例では前後端のスリット20、20の外側のみに配置しているが、その中間のスリット20、20の外側に(即ち隣り合うスリット20、20の中間部に)配置してもよい。
【0073】
また、他の変形例として、図10に示されるように、前記スリット20の平面形状を、着用者の体液排出部Hに対応する領域の中央に対して外側に膨出する曲線形状で形成してもよい。すなわち、着用者の体液排出部Hの中央に向けて凹形状となる曲線で形成している。これにより、体液が曲線の凹部に溜まってスリット20を通じて非肌側に移行しやすくなり、スリット20の両端を回り込んで外側に拡散する体液を減少することができる。
【0074】
11~図13に示されるように、前記表面シート3が肌側のセルロース系繊維からなる不織布層3aと非肌側の合成繊維からなる不織布層3bとが接合された2層構造からなる場合、又は前記表面シート3の非肌側に合成繊維からなる前記セカンドシート6が積層された場合、前記合成繊維からなる不織布層3b又は前記セカンドシート6の前記スリット20を跨ぐ位置に、前記スリット20の両側の合成繊維同士を部分的に融着した融着部24を形成してもよい。前記融着部24は、図13に示されるように、前記不織布層3b又はセカンドシート6側の面を肌側に窪ませた凹部である。前記融着部24を設けることによって、融着部24で融着した合成繊維の一部がセルロース系繊維からなる不織布層3a又は表面シート3に入り込んだ状態で固化するため、スリット20の非肌側が部分的に接合されて、スリット20の口開きやめくれが防止でき、装着感が低下するのが抑制できる。前記融着部24においては、非肌側の合成繊維からなる不織布のみが熱融着し、肌当接面側のセルロース系繊維からなる不織布は融着しないため、表面層を通じてスリット20の一方側から他方側に体液が拡散するのは抑えられている。前記融着部24は、スリット20が延びる方向に対して、1又は所定の間隔をあけて複数配置することができる。
【0075】
また、図14に示されるように、スリット20の端部の裂けを防止するため、前記合成繊維からなる不織布層3b又は前記セカンドシート6の前記スリット20の端部と重なる位置に、合成繊維を部分的に融着した融着部25を形成してもよい。前記融着部25を設けることによってスリット20の端部が補強されるため、肌との擦れによって引き裂き方向の外力が作用してもスリット20の端部の裂けが防止できるようになる。
【0076】
前記スリット20は、図1などに示されるように、該スリット20の全長に亘って連続して切断された連続線によって形成してもよいし、図15に示されるように、スリット20が延びる方向に沿って1又は複数の非切断部27を設けることによって複数の切断部26…が間欠的に配置された間欠線によって形成してもよい。前記非切断部27を備えた間欠線とすることによって、スリット20が口開きするのが抑えられ、装着感の悪化や逆戻りがより確実に防止できるようになる。前記スリット20が延びる方向に沿った非切断部27の長さDは、スリット20の長さXに対して0.02~0.25倍、好ましくは0.05~0.1倍とするのがよい。前記非切断部27の具体的な長さDとしては、1~8mm、好ましくは1~4mmとするのがよい。前記Dが小さすぎると装着時の肌との擦れによって非切断部27が裂けやすくなる。逆に大きすぎると、非切断部27を通ってスリット20より外側に体液が拡散しやすくなる。
【実施例
【0077】
スリット長さXと体液の拡散面積Sとの関係を求める試験を行った。試験方法は以下の通りである。
【0078】
(1)裏面シート2、吸収体4及び2本のスリット20、20を平行に形成したセルロース系繊維からなる表面シート3を積層した試験サンプルを作製する。なお、2本のスリット20、20の離隔幅は20mmである。
(2)前記試験サンプルの表面シート3の上面であって、前記スリット20、20間の中央部に注入筒を縦向きに配置し、この注入筒の上端開口部から人工尿0.2mlを注入する。前記人工尿は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度37度で使用する。
(3)注入後10分間は、前記注入筒を試験サンプルに載置したまま静置し、10分経過後、試験サンプルから表面シート3のみを単離する。
(4)単離した表面シート3の表面の画像を撮影してコンピュータに取り込み、前記人工尿の拡散面積を測定する。
【0079】
測定結果を表1に示す。
【表1】
【0080】
表1において、拡散面積Sは、スリット長さXが0mmの場合(スリット20が形成されない場合)を100とした比率で表している。本試験において、手で試験サンプルの表面全体を触れた際に濡れ感が明確に認識できる拡散面積の最低ラインが90%程度であったので、スリット20による最低限効果がある範囲を90%以下に設定した。拡散面積Sが小さくなるほど、濡れ感の度合いが低減する。
【0081】
以上の結果から、スリット長さXが10~60mmの場合、前記拡散面積Sが90%以下となり、スリット20を通じて下層側に体液が移行しやすく、表面シート3に体液が残りにくく、表面のべたつき感が低減できるようになる。
【符号の説明】
【0082】
1…軽失禁パッド、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…セカンドシート、7…サイド不織布、8…糸状弾性伸縮部材、12…開孔、13…縦筋、14…横筋、20…スリット、21…バリ、22…第2スリット、23…第3スリット、24…融着部、25…融着部、26…切断部、27…非切断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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