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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ソケットおよび締付け工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/02 20060101AFI20230920BHJP
   B25B 13/10 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B25B13/02 B
B25B13/10 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019192321
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021065957
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】長船 勝己
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3183689(JP,U)
【文献】登録実用新案第3219779(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0122304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00 - 13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向における一方側の端部に第1ソケット孔を有し、かつ前記軸方向における他方側の端部に第2ソケット孔を有する筒状のアウターソケット部と、
第3ソケット孔を有し、かつ前記アウターソケット部に対して前記軸方向に相対的に移動可能に前記第1ソケット孔に嵌め込まれた筒状の第1インナーソケット部と、
第4ソケット孔を有し、かつ前記アウターソケット部および前記第1インナーソケット部に対して前記軸方向に相対的に移動可能に前記第2ソケット孔に嵌め込まれた筒状の第2インナーソケット部と、
前記アウターソケット部内において前記第1インナーソケット部と前記第2インナーソケット部との間に設けられた弾性部材と、
前記第1インナーソケット部に外力が加えられていない場合に、前記軸方向において前記第1インナーソケット部が前記アウターソケット部に対して所定の第1基準位置よりも前記一方側に移動することを防止する第1防止機構と、
前記第2インナーソケット部に外力が加えられていない場合に、前記軸方向において前記第2インナーソケット部が前記アウターソケット部に対して所定の第2基準位置よりも前記他方側に移動することを防止する第2防止機構と、を備え、
前記第1インナーソケット部は、前記軸方向において、前記第1基準位置から前記弾性部材を圧縮しつつ前記第2インナーソケット部に近付くように移動でき、
前記第2インナーソケット部は、前記軸方向において、前記第2基準位置から前記弾性部材を圧縮しつつ前記第1インナーソケット部に近付くように移動でき
前記第1防止機構は第1移動防止部材を有し、前記軸方向において、前記第2インナーソケット部が前記第2基準位置から前記一方側へ移動した場合に、前記第1移動防止部材を介して前記第1インナーソケット部が前記アウターソケット部に係止されることによって、前記第1インナーソケット部が前記第1基準位置よりも前記一方側に移動することが防止され、
前記第2防止機構は第2移動防止部材を有し、前記軸方向において、前記第1インナーソケット部が前記第1基準位置から前記他方側へ移動した場合に、前記第2移動防止部材を介して前記第2インナーソケット部が前記アウターソケット部に係止されることによって、前記第2インナーソケット部が前記第2基準位置よりも前記他方側に移動することが防止される、ソケット。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記第1インナーソケット部を前記軸方向における前記一方側に付勢し、前記第2インナーソケット部を前記軸方向における前記他方側に付勢する、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記第1ソケット孔、前記第2ソケット孔、前記第3ソケット孔および前記第4ソケット孔の寸法または角数が互いに異なる、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記弾性部材は、コイルばねである、請求項1から3のいずれかに記載のソケット。
【請求項5】
前記第1インナーソケット部は、前記第1基準位置では前記第1ソケット孔の内側に位置付けられ、
前記第2インナーソケット部は、前記第2基準位置では前記第2ソケット孔の内側に位置付けられる、請求項1から4のいずれかに記載のソケット。
【請求項6】
前記第1インナーソケット部を前記第1基準位置から前記他方側へ移動させることによって前記第1ソケット孔が露出し、前記第2インナーソケット部を前記第2基準位置から前記一方側へ移動させることによって、前記第2ソケット孔が露出する、請求項5に記載のソケット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のソケットを備えた締付け工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットおよびそれを備えた締付け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトまたはナット等の締結部材を締め付けたり緩めたりするために、先端部にソケットを備えた締付け工具が用いられている。このような締付け工具として、例えば、特許文献1には、寸法が異なる4つのソケット孔を有するソケットを備えたラチェットレンチが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたラチェットレンチのソケットは、レンチヘッドに取り付けられる筒状のアウターソケットと、アウターソケット内に挿入されるインナーソケットとを有している。アウターソケットの両端部およびインナーソケットの両端部にそれぞれ、ソケット孔が形成されている。また、アウターソケット内においてインナーソケットの外周には、2つのばねが設けられている。
【0004】
特許文献1に開示されたソケットでは、上記2つのばねによって、アウターソケットに対するインナーソケットの位置が中間位置で保持される。中間位置では、アウターソケットの一端面とインナーソケットの一端面とが略面一となり、アウターソケットの他端面とインナーソケットの他端面とが略面一となっている。中間位置では、インナーソケットの両端部に形成されたソケット孔を使用することができる。
【0005】
また、特許文献1に開示されたソケットでは、中間位置に保持されたインナーソケットの一端部を押し込むことによって、アウターソケットの一端部に形成されたソケット孔が使用可能となる。また、中間位置に保持されたインナーソケットの他端部を押し込むことによってアウターソケットの他端部に形成されたソケット孔が使用可能となる。インナーソケットに加えられていた力が除かれると、上記の2つのばねによって、インナーソケットは中間位置に戻される。
【0006】
以上のような構成により、特許文献1に開示されたソケットを用いる場合、1つのソケットによって4つの寸法のソケット孔を利用することができる。すなわち、1つのソケットによって、複数の寸法の締結部材に対応することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-062331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されたソケットでは、インナーソケットの一端部を押し込んだ場合には、インナーソケットの他端部がアウターソケットの他端部から突出する。同様に、インナーソケットの他端部を押し込んだ場合には、インナーソケットの一端部がアウターソケットの一端部から突出する。すなわち、アウターソケットの両端部に形成されたソケット孔を使用する場合には、ソケット自体の軸方向における長さが大きくなる。このため、例えば、作業対象となる締結部材の周辺に十分なスペースがない場合には、円滑に作業を行うことができない。
【0009】
そこで、本発明は、使用時に軸方向における長さが大きくならないソケットおよびそれを備えた締付け工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記のソケットおよび締付け工具を要旨とする。
【0011】
(1)軸方向における一方側の端部に第1ソケット孔を有し、かつ前記軸方向における他方側の端部に第2ソケット孔を有する筒状のアウターソケット部と、
第3ソケット孔を有し、かつ前記アウターソケット部に対して前記軸方向に相対的に移動可能に前記第1ソケット孔に嵌め込まれた筒状の第1インナーソケット部と、
第4ソケット孔を有し、かつ前記アウターソケット部および前記第1インナーソケット部に対して前記軸方向に相対的に移動可能に前記第2ソケット孔に嵌め込まれた筒状の第2インナーソケット部と、
前記アウターソケット部内において前記第1インナーソケット部と前記第2インナーソケット部との間に設けられた弾性部材と、
前記軸方向において前記第1インナーソケット部が前記アウターソケット部に対して所定の第1基準位置よりも前記一方側に移動することを防止する第1防止機構と、
前記軸方向において前記第2インナーソケット部が前記アウターソケット部に対して所定の第2基準位置よりも前記他方側に移動することを防止する第2防止機構と、を備え、
前記第1インナーソケット部は、前記軸方向において、前記第1基準位置から前記弾性部材を圧縮しつつ前記第2インナーソケット部に近付くように移動でき、
前記第2インナーソケット部は、前記軸方向において、前記第2基準位置から前記弾性部材を圧縮しつつ前記第1インナーソケット部に近付くように移動できる、ソケット。
【0012】
(2)前記弾性部材は、前記第1インナーソケット部を前記軸方向における前記一方側に付勢し、前記第2インナーソケット部を前記軸方向における前記他方側に付勢する、上記(1)に記載のソケット。
【0013】
(3)前記第1ソケット孔、前記第2ソケット孔、前記第3ソケット孔および前記第4ソケット孔の寸法または角数が互いに異なる、上記(1)または(2)に記載のソケット。
【0014】
(4)前記弾性部材は、コイルばねである、上記(1)から(3)のいずれかに記載のソケット。
【0015】
(5)前記第1インナーソケット部は、前記第1基準位置では前記第1ソケット孔の内側に位置付けられ、
前記第2インナーソケット部は、前記第2基準位置では前記第2ソケット孔の内側に位置付けられる、上記(1)から(4)のいずれかに記載のソケット。
【0016】
(6)前記第1インナーソケット部を前記第1基準位置から前記他方側へ移動させることによって前記第1ソケット孔が露出し、前記第2インナーソケット部を前記第2基準位置から前記一方側へ移動させることによって、前記第2ソケット孔が露出する、上記(5)に記載のソケット。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載のソケットを備えた締付け工具。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用時に軸方向長さが大きくならないソケットおよびそれを備えた締付け工具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るソケットおよびそれを備えた締付け工具を示す概略斜視図である。
図2図2は、ソケットを示す図である。
図3図3は、ソケットの分解図である。
図4図4は、アウターソケット部の概略断面図である。
図5図5は、第1および第2インナーソケット部を示す図である。
図6図6は、Cリングが取り付けられた状態の第1および第2インナーソケット部を示す図である。
図7図7は、ソケットの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るソケットおよびそれを備えた締付け工具について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るソケットおよびそれを備えた締付け工具を示す概略斜視図である。
【0021】
図1に示すように、締付け工具100は、ハンドル部101と、本実施形態に係るソケット10とを備えている。ソケット10は、ハンドル部101のヘッド部102に取り付けられている。本実施形態では、締付け工具100は、ラチェットレンチであり、ヘッド部102に設けられた爪部103を操作することによって、ソケット10の回転可能な方向を切り替えられるように構成されている。なお、締付け工具100のうちソケット10以外の構成としては、公知のラチェットレンチの構成を利用できるので、詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係るソケット10は、ラチェットレンチのソケットとしての利用に限定されず、ハンドル部に固定されて利用されてもよい。以下、ソケット10について詳細に説明する。
【0022】
図2は、ソケットを示す図である。具体的には、図2(a)は、ソケットの外観を示す側面図であり、図2(b)は、図2(a)のb-b部分を示す概略断面図である。また、図3は、ソケットの分解図であり、図4は、アウターソケット部の概略断面図(図2(a)のb-b部分を示す図)である。なお、図2(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、後述する弾性部材18については、断面ではなく外観を示している。また、図4において、アウターソケット部の軸心を一点鎖線で示している。
【0023】
図2および図3に示すように、ソケット10は、筒状のアウターソケット部12と、筒状の第1インナーソケット部14と、筒状の第2インナーソケット部16と、弾性部材18と、Cリング20,22とを備えている。図2図4に示すように、アウターソケット部12の軸方向における中央部24の外周面には、複数の歯(外歯)からなる歯部12aが形成されている。なお、以下においては、アウターソケット部12の軸方向を単に軸方向とも記載する。
【0024】
図1を参照して、歯部12a(図2参照)は、ハンドル部101の爪部103に接触するように、ヘッド部102に取り付けられている。締付け工具100では、爪部103を操作することによって、爪部103に対して歯部12aが回転できる方向を切り替えることができる。これにより、ソケット10の回転可能な方向を切り替えることができる。なお、歯部12aおよび爪部103の構成としては、公知のラチェットレンチの構成を利用できるので詳細な説明は省略する。
【0025】
図2図4に示すように、アウターソケット部12の中央部24の外周面にはさらに、軸方向において歯部12aに並ぶように環状の突出部12bが形成されている。突出部12bは、歯部12aから軸方向における一方側に離隔して設けられており、歯部12aと突出部12bとの間に溝12cが形成されている。溝12cは、ソケット10をヘッド部102(図1参照)に取り付けるために形成されている。具体的には、図示しないCリングを溝12cに嵌め込んだ状態でソケット10をヘッド部102に挿入することで、ソケット10をヘッド部102に取り付けることができる。なお、ソケット10のヘッド部102への取付け方法としては、公知のラチェットレンチの構成を利用できるので詳細な説明は省略する。
【0026】
図4に示すように、アウターソケット部12の軸方向における一方側の端部26(以下、第1端部26と記載する。)の内面には、第1ソケット孔26aおよび壁面部26bが形成されている。第1ソケット孔26aは、軸方向における一方側に向かって開口するように形成されている。また、本実施形態では、第1ソケット孔26aは、中央部24の内面24aよりも、アウターソケット部12の軸心側に形成されている。壁面部26bは、第1ソケット孔26aの軸方向における他方側の縁と中央部24の内面24aの軸方向における一方側の縁とを接続するように形成されている。本実施形態では、壁面部26bは、アウターソケット部12の軸心に交差する方向に延びるようにリング状に形成されている。
【0027】
アウターソケット部12の軸方向における他方側の端部28(以下、第2端部28と記載する。)の内面には、第2ソケット孔28aおよび壁面部28bが形成されている。第2ソケット孔28aは、軸方向における他方側に向かって開口するように形成されている。また、本実施形態では、第2ソケット孔28aは、中央部24の内面24aよりも、アウターソケット部12の軸心側に形成されている。壁面部28bは、第2ソケット孔28aの軸方向における一方側の縁と中央部24の内面24aの軸方向における他方側の縁とを接続するように形成されている。本実施形態では、壁面部28bは、アウターソケット部12の軸心に交差する方向に延びるようにリング状に形成されている。
【0028】
本実施形態では、第1ソケット孔26aおよび第2ソケット孔28aはそれぞれ、十二角のソケット孔である。また、本実施形態では、第1ソケット孔26aの寸法(口径)は、第2ソケット孔28aの寸法(口径)よりも大きい。
【0029】
図2(b)に示すように、アウターソケット部12の第1ソケット孔26aに、第3ソケット孔14aを有する第1インナーソケット部14が嵌め込まれている。第3ソケット孔14aは、軸方向における一方側に向かって開口するように第1インナーソケット部14の内面に形成されている。第1インナーソケット部14は、アウターソケット部12および第2インナーソケット部16に対して、軸方向に相対的に移動可能に設けられている。
【0030】
アウターソケット部12の第2ソケット孔28aに、第4ソケット孔16aを有する第2インナーソケット部16が嵌め込まれている。第4ソケット孔16aは、軸方向における他方側に向かって開口するように第2インナーソケット部16の内面に形成されている。第2インナーソケット部16は、アウターソケット部12および第1インナーソケット部14に対して、軸方向に相対的に移動可能に設けられている。
【0031】
本実施形態では、第3ソケット孔14aおよび第4ソケット孔16aはそれぞれ、六角のソケット孔である。また、本実施形態では、第3ソケット孔14aの寸法(口径)は、第2ソケット孔28aの寸法(口径)よりも小さく、第4ソケット孔16aの寸法(口径)よりも大きい。
【0032】
図5は、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16を示す図である。具体的には、図5(a)は、図2(b)に示す第1インナーソケット部14を軸方向における他方側から見た図であり、図5(b)は、図2(b)に示す第2インナーソケット部16を軸方向における一方側から見た図である。
【0033】
図2(b)、図3および図5に示すように、第1インナーソケット部14の外面は、アウターソケット部12の軸方向における一方側から順に形成された、断面多角形状(本実施形態では、断面六角形)の多角形部14b、断面円形状の円形部14c、断面多角形状(本実施形態では、断面六角形)の多角形部14d、および断面円形状の円形部14eを含む。本実施形態では、多角形部14b,14dは、円形部14c,14eに対して外側に突出している。
【0034】
同様に、第2インナーソケット部16の外面は、アウターソケット部12の軸方向における他方側から順に形成された、断面多角形状(本実施形態では、断面六角形)の多角形部16b、断面円形状の円形部16c、断面多角形状(本実施形態では、断面六角形)の多角形部16d、および断面円形状の円形部16eを含む。本実施形態では、多角形部16b,16dは、円形部16c,16eに対して外側に突出している。
【0035】
図2(b)に示すように、Cリング20は、第1インナーソケット部14に取り付けられ、Cリング22は、第2インナーソケット部16に取り付けられている。図6(a),(b)に、Cリング20が取り付けられた状態の第1インナーソケット部14を示し、図6(c),(d)に、Cリング22が取り付けられた状態の第2インナーソケット部16を示す。なお、図6(b)は、第1インナーソケット部14およびCリング20を、円形部14e側から見た図であり、図6(d)は、第2インナーソケット部16およびCリング22を円形部16e側から見た図である。
【0036】
図2(b)および図6に示すように、本実施形態では、Cリング20は、第1インナーソケット部14の多角形部14bと多角形部14dとの間に嵌め込まれ、Cリング22は、第2インナーソケット部16の多角形部16bと多角形部16dとの間に嵌め込まれている。
【0037】
図2(b)および図6(a),(b)に示すように、アウターソケット部12の軸方向から見て、Cリング20の一部は、第1インナーソケット部14の多角形部14b,14dに重なっている。これにより、Cリング20が第1インナーソケット部14から外れることを防止できる。
【0038】
また、アウターソケット部12の軸方向から見て、Cリング20の他の一部は、第1インナーソケット部14の多角形部14b,14dよりも外側に突出し、かつアウターソケット部12の第1端部26の壁面部26bに重なっている。
【0039】
上記の構成により、図2(b)に示すように、Cリング20と壁面部26b(第1端部26)とが接触した状態では、第1インナーソケット部14がアウターソケット部12に対して軸方向における一方側へ移動することが防止される。これにより、第1インナーソケット部14がアウターソケット部12の第1端部26から抜け落ちることを防止することができる。
【0040】
本実施形態では、図2(b)に示した第1インナーソケット部14の位置(アウターソケット部12に対して軸方向における一方側へ移動できなくなる位置)を、第1インナーソケット部14の第1基準位置と称する。第1インナーソケット部14は、第1基準位置では、第1ソケット孔26aを塞ぐように第1ソケット孔26aの内側に位置付けられる。本実施形態では、第1インナーソケット部14がアウターソケット部12から軸方向における一方側に突出しないように、第1基準位置が設定されている。
【0041】
なお、本実施形態では、上記のように、第1インナーソケット部14の外周面に形成された溝(多角形部14bと多角形部14dとの間)にCリング20が嵌め込まれ、当該Cリング20が、アウターソケット部12の内周面に形成された段差(壁面部26b)および上記溝に係止されることによって、第1インナーソケット部14の軸方向における一方側への移動が防止されている。すなわち、本実施形態では、Cリング20を移動防止部材として用い、Cリング20、第1インナーソケット部14の外周面の溝およびアウターソケット部12の内周面の段差を、軸方向において第1インナーソケット部14がアウターソケット部12に対して第1基準位置よりも一方側に移動することを防止する第1防止機構として機能させている。
【0042】
図2(b)および図6(c),(d)に示すように、アウターソケット部12の軸方向から見て、Cリング22の一部は、第2インナーソケット部16の多角形部16b,16dに重なっている。これにより、Cリング22が第2インナーソケット部16から外れることを防止できる。
【0043】
また、アウターソケット部12の軸方向から見て、Cリング22の他の一部は、第2インナーソケット部16の多角形部16b,16dよりも外側に突出し、かつアウターソケット部12の第2端部28の壁面部28bに重なっている。
【0044】
上記の構成により、図2(b)に示すように、Cリング22と壁面部28b(第2端部28)とが接触した状態では、第2インナーソケット部16がアウターソケット部12に対して軸方向における他方側へ移動することが防止される。これにより、第2インナーソケット部16がアウターソケット部12の第2端部28から抜け落ちることを防止することができる。
【0045】
本実施形態では、図2(b)に示した第2インナーソケット部16の位置(アウターソケット部12に対して軸方向における他方側へ移動できなくなる位置)を、第2インナーソケット部16の第2基準位置と称する。第2インナーソケット部16は、第2基準位置では、第2ソケット孔28aを塞ぐように第2ソケット孔28aの内側に位置付けられる。本実施形態では、第2インナーソケット部16がアウターソケット部12から軸方向における他方側に突出しないように、第2基準位置が設定されている。
【0046】
なお、本実施形態では、上記のように、第2インナーソケット部16の外周面に形成された溝(多角形部16bと多角形部16dとの間)にCリング22が嵌め込まれ、当該Cリング22が、アウターソケット部12の内周面に形成された段差(壁面部28b)および上記溝に係止されることによって、第2インナーソケット部16の軸方向における他方側への移動が防止されている。すなわち、本実施形態では、Cリング22を移動防止部材として用い、Cリング22、第2インナーソケット部16の外周面の溝およびアウターソケット部12の内周面の段差を、軸方向において第2インナーソケット部16がアウターソケット部12に対して第2基準位置よりも軸方向における他方側に移動することを防止する第2防止機構として機能させている。
【0047】
図2(b)および図3に示すように、本実施形態では、弾性部材18として、コイルばねが用いられる。以下、弾性部材18をコイルばね18と記載する。図2(b)に示すように、コイルばね18は、アウターソケット部12内において、第1インナーソケット部14と第2インナーソケット部16との間に設けられる。
【0048】
本実施形態では、コイルばね18の一端部に第1インナーソケット部14の円形部14eが嵌め込まれ、コイルばね18の他端部に第2インナーソケット部16の円形部16eが嵌め込まれる。コイルばね18の軸方向における一端は、第1インナーソケット部14の多角形部14dに当接し、コイルばね18の軸方向における他端は、第2インナーソケット部16の多角形部16dに当接している。
【0049】
本実施形態では、コイルばね18は、第1インナーソケット部14を軸方向における一方側に付勢し、第2インナーソケット部16を軸方向における他方側に付勢している。これにより、通常時には、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16はそれぞれ、コイルばね18の付勢力によって、図2(b)に示す位置(第1基準位置および第2基準位置)に位置付けられる。この場合、第1ソケット孔26aおよび第2ソケット孔28aは露出していない。このため、第3ソケット孔14aおよび第4ソケット孔16aは使用できるが、第1ソケット孔26aおよび第2ソケット孔28aは使用できない。
【0050】
図7(a)に示すように、第1インナーソケット部14を第1基準位置から軸方向における他方側に押し込むと、第1インナーソケット部14は、コイルばね18を圧縮しつつ第2インナーソケット部16に近付くように移動する。これにより、第1ソケット孔26aが露出し、第1ソケット孔26aが使用可能になる。このとき、Cリング22が第2端部28に係止されることによって、第2インナーソケット部16が第2基準位置から軸方向における他方側へ移動することが防止される。すなわち、第1インナーソケット部14を押し込んでも、第2インナーソケット部16がアウターソケット部12から突出するように移動することはない。したがって、第1ソケット孔26aを使用する際に、ソケット10の外径寸法(軸方向長さ)が大きくならない。第1インナーソケット部14に加えられていた外力が除かれると、コイルばね18の付勢力によって、第1インナーソケット部14は、再び図2(b)に示す第1基準位置に戻る。
【0051】
また、図7(b)に示すように、第2インナーソケット部16を第2基準位置から軸方向における一方側に押し込むと、第2インナーソケット部16は、コイルばね18を圧縮しつつ第1インナーソケット部14に近付くように移動する。これにより、第2ソケット孔28aが露出し、第2ソケット孔28aが使用可能になる。このとき、Cリング20が第1端部26に係止されることによって、第1インナーソケット部14が第1基準位置から軸方向における一方側へ移動することが防止される。すなわち、第2インナーソケット部16を押し込んでも、第1インナーソケット部14がアウターソケット部12から突出するように移動することはない。したがって、第2ソケット孔28aを使用する際に、ソケット10の外径寸法(軸方向長さ)が大きくならない。第2インナーソケット部16に加えられていた外力が除かれると、コイルばね18の付勢力によって、第2インナーソケット部16は、再び図2(b)に示す第2基準位置に戻る。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るソケット10では、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16は互いに独立して移動できるように設けられている。さらに、第1インナーソケット部14が第1基準位置から軸方向における一方側に移動すること、および第2インナーソケット部16が第2基準位置から軸方向における他方側に移動することが防止されている。これにより、第1ソケット孔26aを使用するために第1インナーソケット部14を押し込んだ場合でも、第2インナーソケット部16は、アウターソケット部12から突出するように移動しない。また、第2ソケット孔28aを使用するために第2インナーソケット部16を押し込んだ場合でも、第1インナーソケット部14は、アウターソケット部12から突出するように移動しない。このように、本実施形態に係るソケット10では、アウターソケット部12のソケット孔26a,28aを使用する場合でも、ソケット10自体の軸方向における長さが大きくならない。
【0053】
また、本実施形態では、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16が互いに独立して移動できるように設けられているので、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16を別個の弾性部材によって付勢しなくてもよい。すなわち、本実施形態では、1つの弾性部材(コイルばね)18によって、第1インナーソケット部14および第2インナーソケット部16を付勢することができる。これにより、部品点数を低減でき、ソケット10をさらに小型化できる。また、ソケット10の製造コストを低減できる。
【0054】
なお、第1ソケット孔、第2ソケット孔、第3ソケット孔および第4ソケット孔の寸法または角数は互いに異なることが好ましいが、各ソケット孔の寸法および角数は上述の例に限定されず、作業対象となる締結部材の寸法および角数に応じて適宜変更すればよい。例えば、第1ソケット孔および第2ソケット孔のいずれかが六角のソケット孔であってもよい。また、第3ソケット孔および第4ソケット孔のいずれかが十二角のソケット孔であってもよい。また、例えば、第3ソケット孔の寸法が第4ソケット孔の寸法よりも小さくてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、弾性部材が1つのばねによって構成される場合について説明したが、本発明は、弾性部材が2つ以上のばね(例えば、コイルばね)によって構成される場合を除外するものではない。具体的には、第1インナーソケット部を付勢するばねおよび第2インナーソケット部を付勢するばねをそれぞれ設けてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、Cリング20、第1インナーソケット部14の外周面の溝およびアウターソケット部12の内周面の段差によって第1防止機構を構成しているが、第1防止機構の構成は上述の例に限定されず、アウターソケット部12に対する第1インナーソケット部14の移動を防止できる公知の種々の技術を利用して第1防止機構を構成してもよい。例えば、アウターソケット部12の内周面において、第1ソケット孔26aよりも軸方向における他方側(図4において壁面部26bの近傍の部分)に溝を形成し、当該溝に、軸方向へ移動できないようにCリング(移動防止部材)を嵌め込む。さらに、第1インナーソケット部14の外周面に、軸方向における他方側からCリングに当接できる段差(壁面部)を形成する。この場合、Cリングが第1インナーソケット部14の外周面の段差およびアウターソケット部12の内周面の溝に係止されることによって、第1インナーソケット部14の軸方向における一方側への移動を防止することができる。なお、この場合、第1インナーソケット部14のうち上記段差よりも軸方向における一方側の部分は、Cリング内を通過できる大きさに形成する。これにより、第1ソケット孔26aを使用する際に、第1インナーソケット部14を軸方向における他方側に押し込むことが可能になる。
【0057】
また、上述の実施形態では、Cリング22、第2インナーソケット部16の外周面の溝およびアウターソケット部12の内周面の段差によって第2防止機構を構成しているが、第2防止機構の構成は上述の例に限定されず、アウターソケット部12に対する第2インナーソケット部16の移動を防止できる公知の種々の技術を利用して第2防止機構を構成してもよい。例えば、アウターソケット部12の内周面において、第2ソケット孔28aよりも軸方向における一方側(図4において壁面部28bの近傍の部分)に溝を形成し、当該溝に、軸方向へ移動できないようにCリング(移動防止部材)を嵌め込む。さらに、第2インナーソケット部16の外周面に、軸方向における一方側からCリングに当接できる段差(壁面部)を形成する。この場合、Cリングが第2インナーソケット部16の外周面の段差およびアウターソケット部12の内周面の溝に係止されることによって、第2インナーソケット部16の軸方向における他方側への移動を防止することができる。なお、この場合、第2インナーソケット部16のうち上記段差よりも軸方向における他方側の部分は、Cリング内を通過できる大きさに形成する。これにより、第2ソケット孔28aを使用する際に、第2インナーソケット部16を軸方向における他方側に押し込むことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、使用時に軸方向長さが大きくならないソケットおよびそれを備えた締付け工具が得られる。
【符号の説明】
【0059】
10 ソケット
12 アウターソケット部
14 第1インナーソケット部
16 第2インナーソケット部
16a 第4ソケット孔
18 コイルばね
20,22 Cリング
26a 第1ソケット孔
28a 第2ソケット孔
100 締付け工具

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7