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  • 特許-密度測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】密度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 9/26 20060101AFI20230920BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01N9/26 Z
E02D3/00 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019201126
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021076400
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀岳
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-019060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0262387(US,A1)
【文献】特開2004-163219(JP,A)
【文献】特開2001-182095(JP,A)
【文献】特開2012-047451(JP,A)
【文献】特開2010-071672(JP,A)
【文献】特開2018-076648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 9/00 - 9/36
E02D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁流体材料が貯留される貯留槽と、
前記懸濁流体材料内において異なる高さ位置に配設される複数の圧力計と、
下端が前記貯留槽の底面に当接した状態で前記貯留槽の側壁に沿って立設された棒状部材と、を備える密度測定装置であって、
前記貯留槽は、前記懸濁流体材料を攪拌するための攪拌手段および材料を投入可能となるように上面が開口しており、
複数の前記圧力計は、上下に間隔をあけて前記棒状部材に配設されていて、前記貯留槽の底面からの高さが既知であり、
前記棒状部材は、上下方向に連続した溝部が形成された本体部と、前記溝部の側面の開口を遮蔽する蓋材と、前記溝部の下端の開口を遮蔽する底部と、を備えており、
前記本体部の上端は開口されていて、
前記蓋材には、上下方向に間隔をあけて複数の貫通孔が形成されていて、
複数の前記圧力計は、圧力感知部が前記貫通孔を介して前記棒状部材の外側に露出するように、前記棒状部材の内部に配設されていることを特徴とする密度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁流体材料の密度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設分野においては、セメントミルク、グラウト、泥水、流動化処理土等の懸濁流体材料を地盤改良材、埋め戻し材、充填材等として用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。また、トンネル掘削時や縦孔の削孔時において、地山の安定を図ることを目的として、懸濁流体材料を注入する場合がある(例えば、特許文献2参照)。懸濁流体材料は、施工時に必要な流動性や施工後の強度など、目的に応じた性能品質を確保するにあたり、懸濁流体材料の密度が所定の範囲になるように管理する必要がある。そのため、懸濁流体材料は、密度の測定を適宜行う必要がある。
懸濁流体材料の密度の測定方法として、懸濁流体材料の一部を採取し、これを定量容器に収めて重量を測定した後、この重量を容積で除することにより密度を算出する場合がある。ところが、前記密度の測定方法は、試料を採取してから、密度を算出するまでに手間と時間がかかる。また、深さ方向の密度分布を確認するためには、複数の試料を採取して、試料ごとに密度を算出する必要があるため、さらに手間と時間がかかる。
また、特許文献3には、懸濁流体材料が貯留された貯留槽の底部に圧力計を設置し、懸濁流体材料の深さと圧力計による測定値とを利用して密度を算出する懸濁流体材料の密度の測定方法が開示されている。ところが、この方法は、懸濁流体材料の全体的な平均値を算出することを目的とするものであり、深さ方向の密度分布を確認することを目的とするものではない。また、密度を算出する際には、圧力計から懸濁流体材料の上面(液面)までの高さを測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-027134号公報
【文献】特開2015-086535号公報
【文献】特開2010-216205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、深さ方向の密度分布を簡易に特定することを可能とした密度測定装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の密度測定装置は、懸濁流体材料が貯留される貯留槽と、前記懸濁流体材料内において異なる高さ位置に配設される複数の圧力計と、下端が前記貯留槽の底面に当接した状態で前記貯留槽の側壁に沿って立設された棒状部材とを備えている。前記貯留槽は、前記懸濁流体材料を攪拌するための攪拌手段および材料を投入可能となるように上面が開口している。複数の前記圧力計は、上下に間隔をあけて前記棒状部材に配設されていて、前記貯留槽の底面からの高さが既知である。
かる密度測定装置によれば、懸濁流体材料内の深さ位置の異なる複数の圧力計の測定結果により懸濁流体材料の密度を算出するため、深さ方向の密度分布を確認することができる。また、密度の確認にあたって懸濁流体材料を採取する必要が無いため、作業性に優れている。また、圧力分布を利用して懸濁流体材料の上面高さを算出することができるため、懸濁流体材料の上面高さを別途測定する手間を省略することができる。
【0006】
また、複数の前記圧力計が、前記貯留槽内に立設された棒状部材に、上下に間隔をあけて配設されているため、下端を貯留槽の底面に当接させた状態で棒状部材を貯留槽内に立設することで、各圧力計を所定の位置に簡易に配置することができる。そのため、貯留槽内の懸濁流体材料を攪拌する際に圧力計を撤去する作業や、攪拌後に圧力計を設置する作業が容易である。
なお、前記棒状部材、上下方向に連続した溝部が形成された本体部と、前記溝部の側面の開口を遮蔽する蓋材と、前記溝部の下端の開口を遮蔽する底部とを備えていて、前記本体部の上端は開口されており、前記蓋材に上下方向に間隔をあけて複数の貫通孔が形成されてい、複数の前記圧力計は、圧力感知部が前記貫通孔を介して前記棒状部材の外側に露出するように、前記棒状部材の内部に配設されている。そのため、圧力計および圧力計などから延びるケーブルを保護した状態で、貯留槽内に圧力計を配設することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の密度測定装置によれば、深度方向の密度分布および液面高さを簡易に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る密度測定装置の概略図である。
図2】棒状部材の分解斜視図である。
図3】実験装置の概要を示す断面図である。
図4】(a)~(c)は、測定実験におけるケース毎の底面からの距離と圧力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、懸濁流体材料Wに必要な流動性や硬化後の強度等、懸濁流体材料Wの使用目的に見合った性能・品質を確保することを目的として、懸濁流体材料Wの密度を所定範囲に管理するための密度測定装置1とこれを利用した密度測定方法について説明する。ここで、懸濁流体材料Wとは、泥水、グラウト、モルタル、流動化処理土等の地盤改良等に用いる流動性を有した材料をいう。
【0010】
本実施形態の密度測定装置1は、図1に示すように、懸濁流体材料Wが貯留される貯留槽2と、懸濁流体材料W内において異なる高さ位置に配設される複数の圧力計3とを備えている。
貯留槽2は、金属製の容器からなる。貯留槽2の上面は、貯留物(懸濁流体材料W)を攪拌するための攪拌手段(例えば、バックホウのバケット)や材料等の投入が可能となるように開口している。本実施形態の貯留槽2は、直方体状を呈している。
複数の圧力計3は、貯留槽2内の底面21に立設された棒状部材4に、上下に所定の間隔をあけて配設されている。圧力計3の数および圧力計3同士の間隔は、懸濁流体材料W内に2つ以上配置されていれば限定されるものではなく、適宜決定すればよい。棒状部材4は、その下端が貯留槽2の底面21に当接した状態で貯留槽2の側壁に沿って垂直に立設されている。したがって、各圧力計3は、貯留槽2の底面21からの高さが既知な状態で鉛直方向に並べられている。
【0011】
棒状部材4は、図2に示すように、上下方向に連続した溝部42が形成された本体部41と、溝部42の開口を遮蔽する蓋材43とを備えている。棒状部材4の下端は底部44により遮蔽されている。溝部42の側面の開口と溝部42の下端開口とを塞ぐことで、懸濁流体材料Wが棒状部材4の内部に浸入することが防止されている。一方、棒状部材4の上端は開口されていて、圧力計3のケーブル32等の配線が可能に構成されている(図1参照)。本体部41は、断面コ字状のアルミニウム合金製部材(いわゆるアルミチャンネル材)により構成されている。なお、本体部41を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、ステンレス製や塩化ビニル製であってもよい。また、本体部41の断面形状は、必ずしもコ字状である必要はなく、例えば、C字状であってもよい。蓋材43は、アルミニウム合金製の板材からなる。蓋材43を構成する材料は、本体部41と同じ材料とする。蓋材43は、本体部41に対して、着脱可能である。また、蓋材43と本体部41との当接部(蓋材43の縁)には、棒状部材4の内部への懸濁流体材料Wの流入を防止するためのシール材(図示せず)が介設されている。シール材には、例えばグリス、エポキシ樹脂、シリコンゴム等を使用すればよい。蓋材43には、圧力計3と同数の貫通孔45が上下方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、蓋材43の下端部に形成された最下段の貫通孔45を基点として、8個の貫通孔45が所定の間隔をあけて形成されている。各圧力計3は、圧力感知部31が貫通孔45を介して棒状部材4の外側に露出するように、棒状部材4の内部(溝部42)に配設されている。圧力計3のケーブル32は、溝部42を通って、棒状部材4の上端から引き出されている。
【0012】
以下、密度測定装置1を利用した懸濁流体材料Wの密度測定方法について説明する。密度測定方法は、圧力測定工程と密度算出工程とを備えている。
圧力測定工程では、貯留槽2の底面21からの高さが異なる複数の圧力計3により貯留槽2に貯留された懸濁流体材料Wの圧力を測定する。
密度算出工程では、複数の圧力計3により測定された懸濁流体材料Wの圧力分布により密度を算出する。密度算出工程では、まず、圧力分布を線形近似して圧力がゼロとなる高さ位置を懸濁流体材料Wの上面高さとみなして貯留槽2内における懸濁流体材料Wの深さを特定する。次に、上下に配設された圧力計3の測定値の圧力差を高低差で除することにより懸濁流体材料Wの単位体積重量を算出し、これを重力加速度(9.81)で除することで密度を算出する。懸濁流体材料Wの密度の算出は、各圧力計3同士の間を層と仮定して、各層毎に行う。
【0013】
測定の結果、測定密度(密度算出工程において算出された密度)が目標密度に対して過大な場合は、その乖離を縮小するために加水を行う。このとき、加水量は、液面高さと貯留槽2の内面積とをかけ合わせることで特定された液量(懸濁流体材料Wの体積)を利用して算出した目標密度を得るために必要な量とする。なお、貯留槽2への加水は、加水制御装置(図示せず)を利用して、自動的に行ってもよい。すなわち、懸濁流体材料Wの液面高さ、懸濁流体材料Wの密度分布等に基づいて加水量を算出し、算出した加水量に達するまで加水制御装置により自動的に水を供給することで、加水調整作業の合理化を図ってもよい。
【0014】
以上、本実施形態の密度測定装置1およびこれを利用した懸濁流体材料Wの密度測定方法によれば、懸濁流体材料W内の深さ位置の異なる複数の圧力計3の測定結果を利用して懸濁流体材料Wの密度を算出するため、深さ方向の密度分布を確認することができる。すなわち、懸濁流体材料Wを複数個所から採取せずとも、深さ方向の密度分布を確認することができるため、懸濁流体材料Wの密度管理の合理化・効率化を図ることができる。
【0015】
また、圧力分布を利用して懸濁流体材料Wの上面高さを算出することができるため、懸濁流体材料Wの上面高さを別途測定する手間を省略することができる。
さらに、圧力計3が、貯留槽2の底面21に立設された棒状部材4に、上下に間隔をあけて配設されているため、圧力計3を所定の深さ位置に簡易に配置することができる。そのため、貯留槽2内の懸濁流体材料Wを攪拌する際に圧力計3を撤去する場合や、攪拌後に圧力計3を再設置する場合に作業が容易である。また、圧力計3は、棒状部材4の内部に配設されているため、圧力計3およびケーブル32を保護した状態で、貯留槽2内に圧力計3を配設することができる。また、圧力計3は、蓋材43の貫通孔45から圧力感知部31が露出するため、確実に懸濁流体材料Wの圧力を感知できる。
【0016】
次に、室内実験装置を利用して行った、懸濁流体材料Wの密度の測定実験結果について説明する。
本実験では、図3に示すように、貯留槽2として、直径300mm、高さ1000mmの円筒容器を利用した。懸濁流体材料Wは、粘土粉体を水で溶いた泥水である。この泥水を貯留槽2に投入し、一様に攪拌した上で圧力を測定した。
棒状部材4の下端部から、250mmピッチで四つの圧力計3を設けた。圧力計3による測定間隔は、1秒間隔とし、時系列で記録した。棒状部材4には、本体部41として幅50mm、長さ2000mmのアルミチャンネルを使用し、蓋材43として幅50mm、長さ2000mmのアルミ板を使用した。
懸濁流体材料W中に四つ(三つ以上)の圧力計3a~3dを配置し、圧力計3同士の間の層毎に密度を算出するものとした。
実験(圧力測定)を3回行った(ケース1~3)。なお、ケース2は、ケース1の測定後、一部の泥水(懸濁流体材料W)を貯留槽2内から排出した上で加水した懸濁流体材料Wに対して行い、ケース3は、ケース2の測定後、一部の泥水(懸濁流体材料W)を貯留槽2内から排出した上で加水した懸濁流体材料Wに対して行った。ケース毎の底面21からの距離と圧力との関係を図4(a)~(c)に示す。また、実験結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
図4(a)~(c)に示すように、各圧力計3a~3dの測定値の近似直線により求まる懸濁流体材料Wの液面高さ(深さ)は、ケース1は878.93mm(直線y=-58.684x+878.93)、ケース2は931.01mm(直線y=-66.479x+931.01)、ケース3は938.21mm(直線y=-70.338x+938.21)となった。また、表1に示すように、ケース1の平均の密度は1.73g/cmであったのに対し、ケース2は1.53g/cm、ケース3は1.45g/cmであった。したがって、ケース2,3において加水により懸濁流体材料Wの密度が低下することが確認できた。
【0019】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、複数の圧力計3が棒状部材4を介して上下に列状に配設されている場合について説明したが、貯留槽2の底面21からの高さが既知であれば圧力計3の配置および設置方法は限定されるものではない。
圧力計3の数は複数であれば限定されるものではなく、適宜決定すればよい。例えば、懸濁流体材料Wの密度や体積を算出する場合には、2つ以上設置すればよい。また、貯留槽2内において、深さ毎(層毎)の密度を算出する場合には、3つ以上の圧力計3を設置すればよい。
前記実施形態では、棒状部材4を垂直に設けるものとしたが、棒状部材4は傾斜していてもよい。
貯留槽2の形状寸法は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0020】
1 密度測定装置
2 貯留槽
21 底面
3 圧力計
31 圧力感知部
4 棒状部材
41 本体部
42 溝部
43 蓋材
44 底部
45 貫通孔
W 懸濁流体材料
図1
図2
図3
図4