(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20230920BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01M10/0562
C01G25/00
(21)【出願番号】P 2019223611
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 潤
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006005(JP,A)
【文献】特開2018-156940(JP,A)
【文献】特開2018-160445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01G 11/00-11/86
C01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
Li
aLa
bZr
cM
1
dM
2
eM
3
fO
g・・・(1)
(式(1)中、M
1はCa、Ba又はSrを示し、M
2はAl、Ga又はCrを示し、M
3はHf、Nb又はTaを示す。a、b、c、d、e、f、gは、3≦a≦7.5、0<b≦3、0<c≦2、0≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2、11≦g≦12.5を満たす数を示す。)
で表されるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子が鎖状に集結してなる固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法であって、次の工程(I)~(IV):
(I)ランタン化合物及びジルコニウム化合物と、或いはランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物(Mは、式(1)中のM
1、M
2及びM
3から選ばれる1種又は2種以上を示す)と、
リグノセルロースナノファイバーと、水とを混合した混合液(a1)
を撹拌し、そのまま撹拌を継続して混合液(a1)に水酸化リチウムと水とを混合した混合液(a2)を
滴下して混合し
、さらに撹拌を継続して混合液(A)を調製する工程
(II)得られた混合液(A)を100℃以上の水熱反応に付した後、得られた水熱反応生成物を洗浄及び乾燥して、
リグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物(B)を得る工程
(III)得られた前駆体混合物(B)と、リチウム化合物と、前駆体混合物(B)に含有されるランタン1モルに対して0.2モル~0.8モルのランタン化合物と、水とを混合した後、
凍結乾燥して前駆体混合物(C)を得る工程
(IV)得られた前駆体混合物(C)を
大気雰囲気下又は酸素雰囲気下にて400℃~1000℃で焼成する工程
を備える、固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法。
【請求項2】
工程(I)において、混合液(a1)100質量部に対し、1質量部~85質量部の混合液(a2)を混合する請求項1に記載の固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法。
【請求項3】
混合液(a2)中における水酸化リチウムの含有量が、混合液(a2)中における水100質量部に対し、0.1質量部~50質量部である請求項1又は2に記載の固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法。
【請求項4】
工程(I)において得られる混合液(A)の25℃におけるpHが、8~13である請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法。
【請求項5】
固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体のBET比表面積が、15m
2/g以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池に用いるための、固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているリチウムイオン二次電池は、電解液に可燃性の有機溶媒を用いているため、液漏れや発火等に対する安全対策を充分に講じる必要があり、また電池の小型化や薄膜化の難易度も高い。一方、酸化物系や硫化物系の固体電解質を備えた全固体リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高い上に可燃物を用いることなく製造することができるため、安全対策を講じる負担が軽減され、製造コストや生産性を容易に高めることが可能となる。こうしたことから、高い有用性に期待がかかる固体電解質材料については、種々の開発が活発化しつつある。なかでも、Li7La3Zr2O12等のガーネット型結晶構造を有するリチウムランタンジルコニウム酸化物は、高いリチウムイオン伝導性を有しており、大いに期待される固体電解質材料の一つである。
【0003】
このようなリチウムランタンジルコニウム酸化物の製造方法として、固相法、共沈法、ゾルゲル法が知られている。例えば、特許文献1では、乳鉢等の混合機を用いてランタン源、ジルコニウム源、リチウム源を混合・粉砕した、いわゆる固相法に基づくリチウムランタンジルコニウム酸化物の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、ランタン硝酸塩とジルコニウム硝酸塩を溶解させた水溶液を共沈殿させ、得られた沈殿物とリチウム源を混合・粉砕した、いわゆる共沈法に基づくリチウムランタンジルコニウム酸化物粒子である固体電解質の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-143785号公報
【文献】特表2016-526771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のような固相法や共沈法に基づく技術であると、高温での焼成を要するため、リチウムが不要に揮発してしまうおそれがあり、或いはリチウムランタンジルコニウム酸化物粒子が肥大化しやすいため、成形する際に粒子間の接触が不充分となって粒界抵抗が高まるおそれもあり、これらが成形品のリチウムイオン伝導性を低める要因となってしまう。このように、有用性の高い固体電解質材料としてのリチウムランタンジルコニウム酸化物粒子を得るには、依然として改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子の微細化・高結晶化を図りつつリチウムイオン伝導性を有効に高め、全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質として高い有用性を有するリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体を得ることのできる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、水熱法に基づき、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーを用いて特定の混合液を調製しつつ特定の工程を経る製造方法であれば、微細化かつ高結晶化を実現したリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子の集合体が得られることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、下記式(1):
LiaLabZrcM1
dM2
eM3
fOg・・・(1)
(式(1)中、M1はCa、Ba又はSrを示し、M2はAl、Ga又はCrを示し、M3はHf、Nb又はTaを示す。a、b、c、d、e、f、gは、3≦a≦7.5、0<b≦3、0<c≦2、0≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2、11≦g≦12.5を満たす数を示す。)
で表されるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子が鎖状に集結してなる固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法であって、次の工程(I)~(IV):
(I)ランタン化合物及びジルコニウム化合物と、或いはランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物(Mは、式(1)中のM1、M2及びM3から選ばれる1種又は2種以上を示す)と、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合した混合液(a1)に、水酸化リチウムと水とを混合した混合液(a2)を混合して、混合液(A)を調製する工程
(II)得られた混合液(A)を100℃以上の水熱反応に付した後、得られた水熱反応生成物を洗浄及び乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物(B)を得る工程
(III)得られた前駆体混合物(B)と、リチウム化合物と、前駆体混合物(B)に含有されるランタン1モルに対して0.2モル~0.8モルのランタン化合物と、水とを混合した後、乾燥して前駆体混合物(C)を得る工程
(IV)得られた前駆体混合物(C)を400℃~1000℃で焼成する工程
を備える、固体電解質用リチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リチウムイオン伝導性に優れるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子の集合体を簡便な方法で容易に得ることができ、これを固体電解質として用いることにより、優れた充放電特性を発揮するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体の表面構造を示すTEM写真である。
【
図2】実施例1で得られたリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体(以下、「LLZO結晶粒子集合体」とも称する)を構成するリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子(以下、「LLZO結晶粒子」とも称する)は、ガーネット型結晶構造を有する粒子であり、下記式(1)で表される。
LiaLabZrcM1
dM2
eM3
fOg・・・(1)
(式(1)中、M1はCa、Ba又はSrを示し、M2はAl、Ga又はCrを示し、M3はHf、Nb又はTaを示す。a、b、c、d、e、f、gは、3≦a≦7.5、0<b≦3、0<c≦2、0≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2、11≦g≦12.5を満たす数を示す。)
【0012】
このように、本発明の製造方法により得られるLLZO結晶粒子集合体は、上記式(1)で表されるLLZO結晶粒子が鎖状に集結してなる集合体である。後述するとおり、本発明の製造方法において用いるセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが繊維の形状を呈するため、水熱反応生成物の核生成や結晶成長の場として機能した後に焼成により熱分解されて、かかる繊維の形状に誘導された、特異な形状を呈するLLZO結晶粒子集合体が得られることとなる。
本発明の製造方法を経ることにより、最終的には熱分解により除去されることとなるセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーは、最終生成物であるLLZO結晶粒子集合体には、ほぼ残存することはない。したがって、LLZO結晶粒子自体は電子伝導性を有さないことから、LLZO結晶粒子集合体をリチウムイオン二次電池の固体電解質として用いた際、正極-負極間に生じる不要な短絡を有効に防止することができる。
【0013】
式(1)中、dは0≦d≦1であるのが好ましく、0≦d≦0.5であるのがさらに好ましい。eは0≦e≦1であるのが好ましく、0≦e≦0.5であるのがさらに好ましい。fは0≦f≦1.5であるのが好ましく、0≦f≦1であるのがさらに好ましい。
なお、上記式(1)中におけるM1、M2、M3は、いわゆるドープ金属と称されるものであり、各々Li、La、Zrの結晶サイトのいずれかにドープされる。
上記式(1)で表されるLLZO結晶粒子としては、具体的には、例えば、Li7La3Zr2O12、Li6.25La3Zr2Al0.25O12、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12、Li6.75La3Zr1.75Ta0.25O12、Li6.25La3Zr2Ga0.25O12、Li6.45La2.95Zr1.4Ca0.05Ta0.6O12が好ましい。
【0014】
本発明の製造方法は、次の工程(I)~(IV):
(I)ランタン化合物及びジルコニウム化合物と、或いはランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物(Mは、式(1)中のM1、M2及びM3から選ばれる1種又は2種以上を示す)と、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合した混合液(a1)に、水酸化リチウムと水とを混合した混合液(a2)を混合して、混合液(A)を調製する工程
(II)得られた混合液(A)を100℃以上の水熱反応に付した後、得られた水熱反応生成物を洗浄及び乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物(B)を得る工程
(III)得られた前駆体混合物(B)と、リチウム化合物と、前駆体混合物(B)に含有されるランタン1モルに対して0.2モル~0.8モルのランタン化合物と、水とを混合した後、乾燥して前駆体混合物(C)を得る工程
(IV)得られた前駆体混合物(C)を400℃~1000℃で焼成する工程
を備える。
【0015】
本発明の製造方法が備える工程(I)は、ランタン化合物及びジルコニウム化合物と、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合した混合液(a1)に、水酸化リチウムと水との混合液(a2)を混合して、混合液(A)を調製する工程であるか、或いは
ランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物(Mは、式(1)中のM1、M2及びM3から選ばれる1種又は2種以上を示す)と、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合した混合液(a1)に、水酸化リチウムと水との混合液(a2)を混合して、混合液(A)を調製する工程である。
【0016】
このように、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)の複合粒子を形成させるにあたり、ランタン化合物及びジルコニウム化合物等の原料化合物とともに、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと水を用いて予め調製した混合液(a1)に、別途調製した混合液(a2)を混合して混合液(A)を調製することにより、得られる混合液(A)中には、LaとZrとセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーとの混合物が含有されることとなり、次工程(II)における水熱反応生成物の微細化及びLaとZrの複合粒子の化学組成の均質性を高め、ひいては工程(IV)において、LLZO結晶粒子集合体を構成するLLZO結晶粒子の微細化を効果的に図ることができる。
【0017】
原料化合物としては、ランタン化合物及びジルコニウム化合物を用いるか、或いはランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物(Mは、式(1)中のM1、M2及びM3から選ばれる1種又は2種以上を示す)を用いればよい。
【0018】
ランタン化合物としては、水溶性であれば特に限定されず、ハロゲン化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、六ホウ化ランタン、塩化ランタン、炭酸ランタン、硫酸ランタン、セレン酸ランタン、ギ酸ランタン、酢酸ランタン、シュウ酸ランタン、臭素酸ランタン及び硝酸ランタンから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
【0019】
ジルコニウム化合物としては、水溶性であれば特に限定されず、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及び硝酸ジルコニルから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
【0020】
金属(M)化合物、すなわちM1(M1はCa、Ba又はSrを示す)化合物、M2(M2はAl、Ga又はCrを示す)化合物、又はM3(M3はHf、Nb又はTaを示す)化合物は、ドープ金属(M)が存在するLLZO結晶粒子集合体を得る際に用いればよい。かかる金属(M)化合物としては、ハロゲン化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
具体的には、例えば、アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。また、ガリウム化合物としては、例えば、塩化ガリウム、硝酸ガリウム及び硫酸ガリウムから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
ニオブ化合物としては、塩化ニオブ及びフッ化ニオブから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
タンタル化合物としては、塩化タンタル及びフッ化タンタルから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
カルシウム化合物としては、硝酸カルシウム、塩化カルシウム及び酢酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
【0021】
これら原料化合物の量としては、具体的には、原料化合物としてランタン化合物及びジルコニウム化合物のみを用いる場合、La:Zr=2:3~3:2のモル比で用いるのが好ましい。また、原料化合物としてランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物を用いる場合、(La+M):Zr=20:1~1:20のモル比で用いるのが好ましい。
なお、水は、原料化合物を混合した後に添加してもよく、或いは各々の原料化合物を水に添加したのち、これらを混合してもよい。
【0022】
混合液(a1)を得るにあたって用いるセルロースナノファイバー(x1)及び/又はリグノセルロースナノファイバー(x2)(以下、これらを「CNF(X)」とも総称する。)は、後述する工程(II)での水熱反応において、水熱反応生成物の核生成や結晶成長の場として機能する。そして、かかる工程(II)において、化学組成の均質性が高い微細な水熱反応生成物(LLZO結晶粒子の前駆体)を生成させた後、後述する工程(IV)の焼成による熱分解によりCNF(X)が有効に除去されるため、本発明の製造方法により得られるLLZO結晶粒子集合体中には、CNF(X)がほぼ残存しないこととなる。
すなわち、ここでCNF(X)を用いることによって、微細なLLZO結晶粒子の前駆体が得られ、かかるLLZO結晶粒子の焼結を抑制することが可能となることが起因となり、微細な粒子の集合体でありながらリチウムイオン伝導性の高いLLZO結晶粒子集合体が得られるものと推定される。
【0023】
セルロースナノファイバー(x1)は、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維である。また、リグノセルロースナノファイバー(x2)は、リグニンを除去せずに解繊して得られたセルロースナノファイバーである。
セルロースナノファイバー(x1)とリグノセルロースナノファイバー(x2)は、共に優れた水への分散性を有している。工程(I)では、これらセルロースナノファイバー(x1)及びリグノセルロースナノファイバー(x2)を一方のみ用いてもよく、双方併用してもよい。
【0024】
CNF(X)の平均繊維径は、50nm以下であり、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。下限値については特に制限はないが、通常1nm以上である。また、CNF(X)の平均長さは、ハンドリングの観点から、100nm~100μmであり、好ましくは1μm~100μmであり、より好ましくは5μm~100μmである。
【0025】
混合液(a1)は、ランタン化合物及びジルコニウム化合物をCNF(X)とともに水に混合することにより、或いはランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物をCNF(X)とともに水に混合することにより、調製する。かかる混合液(a1)におけるこれらランタン化合物、ジルコニウム化合物及び金属(M)化合物の合計含有量は、混合液(a2)との混合によって生じる反応生成物の化学組成の均質性を高める観点から、混合液(a1)中の水100質量部に対し、好ましくは0.1質量部~40質量部であり、より好ましくは0.5質量部~30質量部であり、さらに好ましくは1質量部~20質量部である。
CNF(X)の含有量は、混合液(a1)中の水100質量部に対し、好ましくは0.01質量部~45質量部であり、より好ましくは0.1質量部~40質量部であり、さらに好ましくは1質量部~35質量部である。
【0026】
混合液(a1)は、各成分をより均一に分散させる観点から、混合液(a2)と混合する前に、予め撹拌してもよい。攪拌時間は、各成分を良好に溶解又は分散させればよく、適宜調整すればよい。
【0027】
混合液(a2)は、水酸化リチウム及び水を混合することにより調製する。ここで水酸化リチウムを用いることにより、好適なpH調整を可能にしつつ、最終生成物であるLLZO結晶粒子集合体に不純物等が混在又は残存するのを有効かつ効果的に回避することができるため、充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現する固体電解質材料としてのLLZO結晶粒子集合体の有用性を高めることができる。
かかる混合液(a2)における水酸化リチウムの含有量は、混合液(a2)中の水100質量部に対し、好ましくは0.1質量部~50質量部であり、より好ましくは0.5質量部~40質量部であり、さらに好ましくは1質量部~30質量部である。
【0028】
混合液(a2)の25℃におけるpHは、得られる混合液(A)のpHを好適な範囲に調整し、LLZO結晶粒子の微細化及び高結晶化を有効に図る観点から、好ましくは10~13であり、より好ましくは10.5~13であり、さらに好ましくは11~13である。なお、混合液(a2)のpHを上記範囲に調整するにあたり、さらにアンモニア水溶液等のpH調整剤を用いてもよい。
【0029】
混合液(a2)は、各成分をより均一に溶解又は分散させる観点から、混合液(a1)と混合する前に、予め撹拌してもよい。攪拌時間は、各成分を良好に溶解又は分散させればよく、適宜調整すればよい。
【0030】
上記混合液(a1)に混合液(a2)を混合することによって、LaとZrの水酸化物、或いはLaとZrと金属(M)の水酸化物とともに、CNF(X)を含有する混合液(A)が得られる。具体的には、混合液(a1)100質量部に対し、混合液(a2)を 1質量部~85質量部混合するのが好ましく、5質量部~80質量部混合するのがより好ましく、10質量部~40質量部混合するのがさらに好ましい。
【0031】
かかる混合液(A)中におけるLaとZrと金属(M)の水酸化物の合計含有量は、混合液(A)中に、0.1質量%~30質量%であり、好ましくは0.5質量%~25質量%であり、より好ましくは1質量%~20質量%である。CNF(X)の含有量は、混合液(A)中に、0.01質量%~30質量%であり、好ましくは0.1質量%~25質量%であり、より好ましくは0.2質量%~20質量%である。
【0032】
混合液(A)の25℃におけるpHは、好ましくは8~13であり、より好ましくは8.5~12.5であり、さらに好ましくは9~12である。なお、混合液(A)のpHを上記範囲に調整するにあたり、さらにアンモニア水溶液等のpH調整剤を用いてもよい。
【0033】
本発明の製造方法が備える工程(II)は、工程(I)で得られた混合液(A)を100℃以上の水熱反応に付した後、得られた水熱反応生成物を洗浄及び乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物(B)を得る工程である。かかる工程(II)における水熱反応は、混合液(A)を圧力容器等に投入して行う。
なお、工程(II)へ移行する前に、予め工程(I)で得られた混合液(A)を撹拌する場合、撹拌は反応容器内で行えばよく、次いで反応容器ごと圧力容器等に格納すればよい。かかる撹拌は、CNF(X)を含む前駆体混合物(B)を効率的に生成させる観点から、圧力容器等に格納された反応容器内において工程(II)における水熱反応が完了するまで継続するのが好ましい。
【0034】
水熱反応に付すときの混合液(A)の温度(反応温度)は、100℃以上であればよく、水熱反応生成物の化学組成等に応じて適宜選択し得るが、好ましくは150℃~250℃であり、より好ましくは160℃~240℃である。
次いで、混合液(A)を水熱反応に付した後、得られた水熱反応生成物を洗浄し、乾燥する。洗浄は、水熱反応に付した後の混合液(A)を固液分離することにより行えばよい。水熱反応生成物を洗浄することにより、原料由来のアニオン成分等の水溶性不純物を効果的に除去することができる。かかる水熱反応生成物には、具体的には、ランタンジルコニウム酸化物La2Zr2O7と、CNF(X)を含む前駆体混合物(B)が含まれている。
固液分離に用いる装置としては、例えば、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的に水熱反応生成物を得る観点から、フィルタープレス機を用いるのが好ましい。
【0035】
洗浄する際には、水を用いる。かかる水の量は、水熱反応生成物の乾燥質量1質量部に対し、好ましくは5質量部~50質量部であり、より好ましくは7質量部~50質量部であり、さらに好ましくは9質量部~50質量部である。かかる水の温度は、水溶性不純物を効果的に除去する観点から、好ましくは5℃~70℃であり、より好ましくは20℃~70℃である。
【0036】
本発明の製造方法が備える工程(III)は、工程(II)で得られた前駆体混合物(B)と、リチウム化合物と、前駆体混合物(B)に含有されるランタン1モルに対して0.2モル~0.8モルのランタン化合物と、水とを混合した後、乾燥して前駆体混合物(C)を得る工程である。本発明の製造方法では、上記工程(I)において必要なランタン化合物のほぼ全量を用いて反応を進行させているため、かかる工程(III)においてランタン化合物を補足的に用いるのみで、得られるLLZO結晶粒子の微細化及び高結晶化を一層確実に図ることができる。
【0037】
工程(III)において用いるリチウム化合物としては、水酸化物、塩化物、炭酸塩及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム及びシュウ酸リチウムから選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。
工程(III)において用いるリチウム化合物の量は、前駆体混合物(B)100質量部に対し、好ましくは40質量部~120質量部であり、より好ましくは50質量部~110質量部である。
【0038】
工程(III)において用いるランタン化合物としては、工程(I)で用いるランタン化合物と同様のものを選択することができる。
工程(III)において用いるランタン化合物の量は、前駆体混合物(B)に含有されるランタン1モルに対して0.2モル~0.8モルであって、好ましくは0.25モル~0.75モルであり、より好ましくは0.3モル~0.7モルであり、さらに好ましくは0.4モル~0.6モルである。
【0039】
工程(III)では、より具体的には、予めリチウム化合物と、ランタン化合物と、水とを混合して混合液(c1)を調製した後、かかる混合液(c1)と工程(II)で得られた前駆体混合物(B)全量とを混合して混合液(c2)を得る。次いで、かかる混合液(c2)を乾燥させて前駆体混合物(C)を得るのがよい。
【0040】
工程(III)で用いるランタン化合物及びリチウム化合物の合計含有量は、混合液(c2)中の水100質量部に対し、好ましくは0.1質量部~40質量部であり、より好ましくは0.5質量部~30質量部であり、さらに好ましくは1質量部~20質量部である。また、混合液(c2)中におけるランタン化合物の含有量とリチウム化合物の含有量との質量比は、モル比(Li:La)で、好ましくは9:1~4:1であり、より好ましくは8.5:1~4:1であり、さらに好ましくは8:1~4:1である。
【0041】
乾燥手段としては、噴霧乾燥、恒温乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等が挙げられる。なかでも、後述する工程(IV)における焼成を経ることによって得られるLLZO結晶粒子が、必要以上に成長するのを有効に制御して充分に微細化を図る観点から、凍結乾燥とするのが好ましい。
【0042】
本発明の製造方法が備える工程(IV)は、工程(III)で得られた前駆体混合物(C)を400℃~1000℃で焼成する工程である。かかる工程(IV)を経ることにより、前駆体混合物(C)中に含まれるCNF(X)を熱分解により除去できるため、極めて微細な粒子であって高純度である、固体電解質として非常に有用なLLZO結晶粒子集合体を得ることができる。
【0043】
工程(IV)における焼成温度は、LLZO結晶粒子の結晶性を高めつつ、有効に粒子の微細化を図る観点から、400℃~1000℃であって、好ましくは450℃~900℃であり、より好ましくは500℃~800℃である。また焼成時間は、同様の観点から、好ましくは0.5時間~48時間であり、より好ましくは1時間~24時間であり、さらに好ましくは1時間~18時間である。
【0044】
上記焼成における雰囲気は、CNF(X)を熱分解により有効に除去させる観点から、大気雰囲気下又は酸素雰囲気下が好ましい。かかる焼成に用いる装置としては、上記雰囲気下において温度の調整が可能な物であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式のものも使用することができ、例えば、外熱キルンやローラーハース等の焼成炉が挙げられる。
【0045】
CNF(X)が熱分解により除去されたことは、炭素・硫黄分析装置を用いて測定した炭素量により確認することができる。本発明のLLZO結晶粒子集合体の炭素量は、電子伝導性を低くしてリチウムイオン二次電池の固体電解質として用いても正極-負極間に短絡を生じさせない観点から、炭素・硫黄分析装置による測定値で、好ましくは0質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0046】
LLZO結晶粒子集合体を構成するLLZO結晶粒子の平均粒径は、優れたリチウムイオン伝導性を発現させる観点から、好ましくは0.5nm~100nmである。ここで、LLZO結晶粒子の平均粒径とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡を用いた観察における、数十個のLLZO結晶粒子の粒径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
【0047】
LLZO結晶粒子集合体のBET比表面積は、LLZO結晶粒子同士又はLLZO結晶粒子と電極材料間の接触確率を充分に確保する観点から、好ましくは15m2/g以上であり、より好ましくは20m2/g~100m2/gである。
【0048】
このように、本発明の製造方法によれば、粒径が数十nmのLLZO結晶粒子がCNF(X)に誘導されて直線的に連続して配列してなり、高いBET比表面積を有し、かつ水溶性不純物の含有量が十分に低減されてなる、高結晶度のLLZO結晶粒子集合体を得ることができる。このように本発明の製造方法は、優れた充放電特性を発現し得る全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質を簡便に製造することができる製造方法である。
【0049】
本発明の製造方法により得られるLLZO結晶粒子集合体を固体電解質として適用できるリチウムイオン二次電池としては、正極と負極と固体電解質を必須構成とするものであって、正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層の順に積層配置された積層体が形成されるものであれば、特に限定されない。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
[製造例1](LiMn1.5Ni0.5O4正極活物質粒子の製造)
MnSO4・H2O 25.35g、NiSO4・6H2O 13.14g、及び水100mLを混合して、スラリー(s1)を得た。得られたスラリー(s1)を25℃の温度に保持しながら撹拌しつつ、48質量%のNaOHを滴下して、pHが11のスラリー(s2)を得た。次に、得られたスラリー(s2)を1時間撹拌して前駆体(j)を得た後、得られた前駆体(j)1質量部に対して12質量部の水で洗浄した。
前駆体(j)全量、LiOH・H2O 4.20g、及び水100mLを混合した後、遊星型ボールミル(P-5、フリッチェジャパン株式会社製)を用いて15分間混合して、スラリー(s3)を得た。次に、得られたスラリー(s3)を80℃で12時間乾燥した後、得られた乾燥物を大気雰囲気下800℃×1時間焼成して、二次粒子であるLiMn1.5Ni0.5O4正極活物質粒子(一次粒子の平均粒径100nm)を得た。
【0052】
[実施例1](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)1を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.03gを溶解して、混合液(a2)1を得た。得られた(a2)1の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)1を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)1に、混合液(a2)1の全量(混合液(a1)1100質量部に対して17.57質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)1を得た。かかる混合液(A)1の25℃におけるpHは9であった。
【0053】
得られた混合液(A)1をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)1を得た。
前駆体混合物(B)1全量と、予めLiNO3 1.63g、La(NO3)3・6H2O 1.30g(前駆体混合物(B)1中のランタン1モルに対して0.50モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)1とを混合してスラリー(c2)1を得た。得られたスラリー(c2)1を凍結乾燥して前駆体混合物(C)1を得た。前駆体混合物(C)1を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X1を得た。
【0054】
得られたLLZO結晶粒子集合体X
1は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m
2/gであった。得られたLLZO結晶粒子X
1のTEM写真を
図1に、X線回折パターンを
図2に示す。
【0055】
[実施例2](Li6.25La3Zr2Al0.25O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、Al(NO3)3・9H2O 0.29g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)2を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.64gを溶解して、混合液(a2)2を得た。得られた(a2)2の25℃におけるpHは13であった。
得られた混合液(a1)2を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)2に、混合液(a2)2の全量(混合液(a1)2100質量部に対して18.04質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)2を得た。かかる混合液(A)2の25℃におけるpHは10であった。
【0056】
得られた混合液(A)2をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)2を得た。
前駆体混合物(B)2全量と、予めLiNO3 1.45g、La(NO3)3・6H2O 1.30g(前駆体混合物(B)2中のランタン1モルに対して0.50モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)2とを混合してスラリー(c2)2を得た。得られたスラリー(c2)2を凍結乾燥して前駆体混合物(C)2を得た。前駆体混合物(C)2を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li6.25La3Zr2Al0.25O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X2を得た。
【0057】
得られたLLZO結晶粒子集合体X2は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は90nm、BET比表面積は16m2/gであった。
【0058】
[実施例3](Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.97g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、NbCl5 0.24g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)3を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.17gを溶解して、混合液(a2)3を得た。得られた(a2)3の25℃におけるpHは10であった。
得られた混合液(a1)3を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)3に、混合液(a2)3の全量(混合液(a1)3100質量部に対して17.60質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)3を得た。かかる混合液(A)3の25℃におけるpHは9であった。
【0059】
得られた混合液(A)3をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)3を得た。
前駆体混合物(B)3全量と、予めLiNO3 1.79g、La(NO3)3・6H2O 1.49g(前駆体混合物(B)3中のランタン1モルに対して0.50モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)3とを混合してスラリー(c2)3を得た。得られたスラリー(c2)3を凍結乾燥して前駆体混合物(C)3を得た。前駆体混合物(C)3を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X3を得た。
【0060】
得られたLLZO結晶粒子集合体X3は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は75nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0061】
[実施例4](Li6.45La2.95Zr1.4Ta0.6Ca0.05O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 3.62g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、Ca(NO3)2・4H2O 0.05g、TaCl5 1.02g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)4を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.47gを溶解して、混合液(a2)4を得た。得られた(a2)4の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)4を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)4に、混合液(a2)4の全量(混合液(a1)4100質量部に対して17.63質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)4を得た。かかる混合液(A)4の25℃におけるpHは10であった。
【0062】
得られた混合液(A)4をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)4を得た。
前駆体混合物(B)4全量と、予めLiNO3 2.14g、La(NO3)3・6H2O 1.86g(前駆体混合物(B)4中のランタン1モルに対して0.51モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)4とを混合してスラリー(c2)4を得た。得られたスラリー(c2)4を凍結乾燥して前駆体混合物(C)4を得た。前駆体混合物(C)4を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li6.45La2.95Zr1.4Ta0.6Ca0.05O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X3を得た。
【0063】
得られたLLZO結晶粒子集合体X4は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は75nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0064】
[実施例5](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びリグノセルロースナノファイバー(モリマシナリー製、含水率90%)3.24gを混合して、混合液(a1)1を得た以外、実施例1と同様にしてLLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X5を得た。
【0065】
得られたLLZO結晶粒子集合体X5は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0066】
[実施例6](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.34g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)6を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.03gを溶解して、混合液(a2)6を得た。得られた(a2)6の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)6を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)6に、混合液(a2)6の全量(混合液(a1)6100質量部に対して17.61質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)6を得た。かかる混合液(A)6の25℃におけるpHは9であった。
【0067】
得られた混合液(A)6をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)6を得た。
前駆体混合物(B)6全量と、予めLiNO3 1.63g、La(NO3)3・6H2O 1.56g(前駆体混合物(B)6中のランタン1モルに対して0.67モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)6とを混合してスラリー(c2)6を得た。得られたスラリー(c2)6を凍結乾燥して前駆体混合物(C)6を得た。前駆体混合物(C)6を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X6を得た。
【0068】
得られたLLZO結晶粒子集合体X6は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0069】
[実施例7](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.86g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)7を得た。
次いで、水20mLにLiOH・H2O 1.03gを溶解して、混合液(a2)7を得た。得られた(a2)7の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)7を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)7に、混合液(a2)7の全量(混合液(a1)7100質量部に対して17.53質量部の量)を滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで10分間撹拌して混合液(A)7を得た。かかる混合液(A)7の25℃におけるpHは9であった。
【0070】
得られた混合液(A)7をオートクレーブに投入し、180℃、1.0MPaでの水熱反応を3時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄し前駆体混合物(B)7を得た。
前駆体混合物(B)7全量と、予めLiNO3 1.63g、La(NO3)3・6H2O 1.04g(前駆体混合物(B)1中のランタン1モルに対して0.36モル)及び水200mLを混合して得られたスラリー(c1)7とを混合してスラリー(c2)7を得た。得られたスラリー(c2)7を凍結乾燥して前駆体混合物(C)7を得た。前駆体混合物(C)7を大気雰囲気下850℃で4時間焼成することにより、セルロースナノファイバーを熱分解させつつ除去して、LLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X7を得た。
【0071】
得られたLLZO結晶粒子集合体X7は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0072】
[実施例8](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)8を得た。
次いで、水10mLにLiOH・H2O 1.54gを溶解して、混合液(a2)8を得た。得られた(a2)8の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)8を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)8に、混合液(a2)8の全量(混合液(a1)8100質量部に対して9.64質量部の量)を滴下して混合した以外、実施例1と同様にしてLLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X8を得た。
【0073】
得られたLLZO結晶粒子集合体X8は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0074】
[実施例9](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)9を得た。
次いで、水90mLにLiOH・H2O 0.51gを溶解して、混合液(a2)9を得た。得られた(a2)9の25℃におけるpHは12であった。
得られた混合液(a1)9を撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a1)9に、混合液(a2)9の全量(混合液(a1)9100質量部に対して75.63質量部の量)を滴下して混合した以外、実施例1と同様にしてLLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体X9を得た。
【0075】
得られたLLZO結晶粒子集合体X9は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0076】
[比較例1](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水500mLにLa(NO3)3・6H2O 38.97g、ZrO(NO3)2・2H2O 16.53gを混合して、水溶液(L)1を得た。得られた水溶液(L)1に、28%のアンモニア水を36.4g滴下した。その後、pHを11に調整するために1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて沈殿させた。得られた沈殿物を分離、水洗浄後に、200℃×12時間乾燥して沈殿物(M)1を得た。
次いで、水10mLに、得られた沈殿物(M)1全量と、LiOH 7.06gを遊星型ボールミルで混合した後、前駆体混合物(N)1を得た。
【0077】
得られた前駆体混合物(N)1を、大気雰囲気下850℃×2時間焼成して、一次粒子の集合体であるLLZO結晶粒子Y1(二次粒子)を得た。得られたLLZO結晶粒子Y1は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、一次粒子の平均粒径は330nm、BET比表面積は3m2/gであった。
【0078】
[比較例2](Li7La3Zr2O12結晶粒子の製造)
水100mLにLa(NO3)3・6H2O 2.60g、ZrO(NO3)2・2H2O 1.65g、及びセルロースナノファイバー(BINIFI-s-IMa-10002、スギノマシン製、含水率97.9%)15.43gを混合して、混合液(a1)1を得た。
次いで、水20mLにNaOH 0.99gを溶解して、混合液(a2)1を得た以外、実施例1と同様にしてLLZO結晶粒子(Li7La3Zr2O12)が鎖状に集結してなるリチウムランタンジルコニウム酸化物結晶粒子集合体Y2を得た。
【0079】
得られたLLZO結晶粒子集合体Y2は、ガーネット相に相当するX線回折パターンを示す単相であり、平均粒径は70nm、BET比表面積は20m2/gであった。
【0080】
《全固体リチウムイオン二次電池における放電容量の評価》
実施例1~9及び比較例1~2で得られたLLZO結晶粒子集合体X1~X9、Y2及びLLZO結晶粒子Y1を用い、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、製造例1で得られたLiMn1.5Ni0.5O4正極活物質粒子を用い、正極活物質粒子:固体電解質:アセチレンブラック(質量比)を75:20:5で混合した後、プレス用冶具に投入して正極活物質層とした。さらに、その層上にLLZO結晶粒子集合体X1又はLLZO結晶粒子Y1のみを投入して、固体電解質層を形成・積層させた後、ハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、φ14mmの円盤状の正極を得た。次いで、負極としてリチウム箔を固体電解質層側に取り付け、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
作製した全固体リチウムイオン二次電池を用いて、充電条件を13mA/g、電圧5.0Vの定電流充電、放電条件を13mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とした場合の放電容量を求めた。なお、充放電試験は全て60℃で行った。
結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
微細かつ高結晶度のLLZO結晶粒子の集合体である実施例1を固体電解質として用いた全固体リチウムイオン二次電池は、優れた充放電特性を発揮することがわかる。