(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】レバー誤操作防止機構
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20230920BHJP
G05G 5/04 20060101ALI20230920BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G5/04 B
G05G1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019224257
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】仁田原 博明
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182127(JP,A)
【文献】特開2000-20154(JP,A)
【文献】特開昭62-185698(JP,A)
【文献】特開昭51-62295(JP,A)
【文献】実開平2-39926(JP,U)
【文献】実開昭58-82943(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0146385(US,A1)
【文献】特開2018-52350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
G05G 5/04
G05G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部に立設した運転部メインフレー
ムの左右側方に突設したハンドル
を備え、
前記ハンドルの前後方向位置にロックレバーと前記運転部メインフレームから延出したアクセルレバーとを配設し、
前記ロックレバーは、基部をスライド体の一端に枢支し、
前記スライド体の他端にアクセルレバーガイド片を立設し、
前記スライド体は前記アクセルレバー方向に引張り付勢し、
前記アクセルレバーガイド片の作用辺部には前記アクセルレバーを当接し、
前記アクセルレバーは前記作用辺部に沿って摺動自在に構成し、
前記ロックレバーをグリップ
しないときには、前記スライド体は
付勢により前記アクセルレバー方向に
変位し、前記アクセルレバーガイド片を介してアクセル操作不能と
し、
前記ロックレバーをグリップしたときには、前記スライド体は付勢に抗し前記アクセルレバーと反対方向にスライド摺動し、前記アクセルレバーは、前記アクセルレバーガイド片の前記作用辺部に沿ってアクセル操作可能に構成し、
前記作用辺部は、前記アクセルレバーをロックするための凹部と、前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接する傾斜部とを備える
ことを特徴とするレバー誤操作防止機構。
【請求項2】
前記傾斜部
として、前記凹部の両側に隣接する第1傾斜部及び第2傾斜部を含み、
前記第1傾斜部は、前記レバー誤操作防止機構を備える搬送車両を前進させるための前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接し、
前記第2傾斜部は、前記搬送車両を後進させるための前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接する
ことを特徴とする請求項
1に記載のレバー誤操作防止機構。
【請求項3】
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の傾斜角が異なることを特徴とする請求項
2に記載のレバー誤操作防止機構。
【請求項4】
運転部に立設した運転部メインフレー
ムの左右側方に突設したハンドル
を備え、
前記ハンドルの前後方向位置にロックレバーと前記運転部メインフレームから延出したアクセルレバーとを配設し、
前記ロックレバーは、基部をスライド体の一端に枢支し、
前記スライド体の他端にアクセルレバーガイド片を立設し、
前記スライド体は前記アクセルレバー方向に引張り付勢し、
前記アクセルレバーガイド片の作用辺部には前記アクセルレバーを当接し、
前記アクセルレバーは前記作用辺部に沿って摺動自在に構成し、
前記ロックレバーをグリップ
しないときには、前記スライド体は
付勢により前記アクセルレバー方向に
変位し、前記アクセルレバーガイド片を介してアクセル操作不能と
し、
前記ロックレバーをグリップしたときには、前記スライド体は付勢に抗し前記アクセルレバーと反対方向にスライド摺動し、前記アクセルレバーは、前記アクセルレバーガイド片の前記作用辺部に沿ってアクセル操作可能に構成し、
前記ロックレバーは、くの字形状の棒状体であり、前記ロックレバーをグリップする際に用いられる操作部を備え、
前記操作部をグリップしたときには、前記くの字形状の棒状体の折曲部が前記ハンドルのグリップ部に当接し、前記折曲部を支点として前記操作部の移動方向とは反対方向に前記基部を移動させて前記スライド体をスライドさせる
ことを特徴とするレバー誤操作防止機構。
【請求項5】
前記ハンドルと、前記ロックレバーと、前記アクセルレバーとは、略同一平面状に位置するように配置されることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか一項に記載のレバー誤操作防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両のレバー誤操作防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場内では、回動式のアクセルレバーを備えた搬送車両(電動車両)を利用して組立に必要な部品を搬送することが多い。このような搬送車両として、例えば、立位状態で利用される牽引車両が多く使用されている。この搬送車両は、立位状態で利用されるため、運転者が体勢を崩すおそれもある。このように、運転者が体勢を崩したような場合でも、アクセルレバーの誤操作を防止し、搬送車両の予期せぬ誤発進を防止するのが重要となる。
【0003】
アクセルレバーの誤操作を防止する技術として、例えば、回動式のアクセルレバーの上方をカバーで覆う技術(例えば、特許文献1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、回動式のアクセルレバーの上方をカバーで覆うことによりアクセルレバーの上方から不意に力がかかることを防止することができる。しかしながら、回動式のアクセルレバーの上方がカバーで覆われるため、カバーの下側に手を入れてアクセルレバーの操作を行う必要がある。このため、アクセルレバーの上方に設けられるカバーがアクセルレバーの操作性を低下させるおそれがある。
【0006】
また、上述の従来技術では、アクセルレバーの上方に設けられるカバーが透明あるいは半透明の樹脂製プレートで構成される。このため、例えば、運転者が体勢を崩したような場合には、樹脂製プレートが破損し、アクセルレバーの誤操作を防止することが困難となることも想定される。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、搬送車両におけるアクセルレバーの誤操作を防止するレバー誤操作防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、運転部に立設した運転部メインフレームと、前記運転部メインフレームの左右側方に突設したハンドルと、前記ハンドルの前後方向位置にロックレバーと前記運転部メインフレームから延出したアクセルレバーとを配設し、前記ロックレバーは、基部をスライド体の一端に枢支し、前記スライド体の他端にアクセルレバーガイド片を立設し、前記スライド体は前記アクセルレバー方向に引張り付勢し、前記アクセルレバーガイド片の作用辺部には前記アクセルレバーを当接し、前記アクセルレバーは前記作用辺部に沿って摺動自在に構成し、前記ロックレバーをグリップせずにロック位置に変位操作したときには、前記スライド体は前記アクセルレバー方向に付勢されて前記アクセルレバーガイド片を介してアクセル操作不能となり、前記ロックレバーをグリップしたときには、前記スライド体は付勢に抗し前記アクセルレバーと反対方向にスライド摺動し、前記アクセルレバーは、前記アクセルレバーガイド片の前記作用辺部に沿ってアクセル操作可能に構成し、前記ロックレバーをグリップしない状態のときには、前記スライド体は付勢により前記アクセルレバー方向に変位し、前記アクセルレバーガイド片を介して前記アクセルレバーは操作不可状態となることを特徴とするレバー誤操作防止機構である。
【0009】
また、この第1の態様において、前記作用辺部は、前記アクセルレバーをロックするための凹部と、前記凹部に隣接する傾斜部であって前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接する傾斜部とを備えるようにしてもよい。
【0010】
また、この第1の態様において、前記傾斜部は、前記凹部の両側に隣接する第1傾斜部及び第2傾斜部を含み、前記第1傾斜部は、前記レバー誤操作防止機構を備える搬送車両を前進させるための前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接し、前記第2傾斜部は、前記搬送車両を後進させるための前記アクセル操作が行われる際に前記アクセルレバーが当接するようにしてもよい。
【0011】
また、この第1の態様において、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の傾斜角が異なるようにしてもよい。
【0012】
また、この第1の態様において、前記ロックレバーは、くの字形状の棒状体であり、前記ロックレバーをグリップする際に用いられる操作部を備え、前記操作部をグリップしたときには、前記くの字形状の棒状体の折曲部が前記ハンドルのグリップ部に当接し、前記折曲部を支点として前記操作部の移動方向とは反対方向に前記基部を移動させて前記スライド体をスライドさせるようにしてもよい。
【0013】
また、この第1の態様において、前記ハンドルと、前記ロックレバーと、前記アクセルレバーとは、略同一平面状に位置するように配置されるようにしてもよい。
【0014】
このような態様を採ることにより、ロックレバーをグリップしたときには、スライド体は付勢に抗しアクセルレバーと反対方向にスライド摺動し、アクセルレバーは、アクセルレバーガイド片の作用辺部に沿ってアクセル操作可能に構成し、一方、ロックレバーをグリップしない状態のときには、スライド体は付勢によりアクセルレバー方向に変位し、アクセルレバーガイド片を介してアクセルレバーは操作不可状態となるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送車両におけるアクセルレバーの誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構を備える搬送車両のハンドル部分の外観構成例を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す平面図(上面図)である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す背面図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構の外観構成例を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構によりアクセルレバーのロックが解除された状態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構によりアクセルレバーのロックが解除された状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構によりアクセルレバーのロックが解除された状態を示す側面図である。
【
図11】本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構によりアクセルレバーのロックが解除された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)を説明する。
【0018】
[レバー誤操作防止機構の構成例]
図1は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100を備える搬送車両のハンドル部分の外観構成例を示す平面図である。
【0019】
レバー誤操作防止機構100は、例えば、自動車製造工場や自動車部品製造工場において、部品を搬送する搬送車両に備えられる。この搬送車両は、例えば、電動構内運搬車、牽引車、牽引台車、電動牽引車とも称される。これらの搬送車両は、例えば、牽引車両を利用して組立に必要な部品を搬送する搬送車両である。また、これらの搬送車両は、例えば、運転者が立った状態(立位状態)で利用することが可能な車両であり、車体フレームに設けられる前輪と、左右一対の後輪とにより走行が可能となる。また、運転者が立った状態(立位状態)のみで利用する搬送車両の場合には、座席を設ける必要がない。
【0020】
レバー誤操作防止機構100は、運転部メインフレーム10の左右方向(搬送車両の左右方向)の両端部に設けられる。具体的には、レバー誤操作防止機構100は、ハンドル120と、アクセルレバー130と、ロックレバー140と、スライド体150と、アクセルレバーガイド片160とを備える。なお、これらの各部は、アルミニウム等の部材を用いることができる。また、これらの各部は、レバー誤操作防止機構100が備えられる搬送車両の左右(
図1における
左右)において、一対に設けられるものであり、各部は左右で共通する。このため、以下では、主に右側に設けられる各部について説明し、左側に設けられる各部についての説明を省略する。なお、
図1では、搬送車両の左右(
図1における
左右)にレバー誤操作防止機構100を備える例を示すが、搬送車両の左右(
図1における
左右)のうちの一方(例えば、右側)のみにレバー誤操作防止機構100を備えるようにしてもよい。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す平面図(上面図)である。
図2には、
図1に示すハンドル部分のうちの右側(
図1における
左右方向の
右側)のレバー誤操作防止機構100を拡大して示す。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す側面図である。
図3には、
図2に示すレバー誤操作防止機構100を矢印A方向から見た場合の構成例を示す。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す背面図である。
図4には、
図2に示すレバー誤操作防止機構100を矢印B方向から見た場合の構成例を示す。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す断面図である。
図5には、
図2に示すレバー誤操作防止機構100の背面の断面(C-C断面)を示す。
【0025】
図6は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す断面図である。
図6には、
図2に示すレバー誤操作防止機構100の側面の断面(D-D断面)を示す。
【0026】
図7は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100の外観構成例を示す斜視図である。
図7には、
図2に示すレバー誤操作防止機構100を矢印E方向から見下ろした場合の構成例を示す。
【0027】
図8乃至
図11は、本発明の実施の形態におけるレバー誤操作防止機構100によりアクセルレバー130のロックが解除された状態を示す図である。なお、
図8は、
図7に示す斜視図に対応し、
図9は、
図2に示す平面図に対応し、
図10は、
図3に示す側面図に対応し、
図11は、
図6に示す断面図に対応する。
【0028】
このように、
図1乃至
図7には、レバー誤操作防止機構100によりアクセルレバー130がロックされた状態を示し、
図8乃至
図11には、アクセルレバー130のロックが解除された状態を示す。
【0029】
運転部メインフレーム10は、搬送車両の運転部に立設されるメインフレームである。また、運転部メインフレーム10の左右方向(搬送車両の左右方向)の両端部には、上面視においてコの字形状のフレーム110が設けられる。また、運転部メインフレーム10の左右方向の両端部の孔11(
図7に示す)を介して、運転部メインフレーム10の内部からアクセルレバー130の基部132が延出して設けられる。また、運転部メインフレーム10は、搬送車両の前輪を操作するためのステアリングシャフト(図示せず)の上端に回転可能に取り付けられる。
【0030】
フレーム110は、運転部メインフレーム10の左右方向の両端部に取り付けられる支持枠であり、スライドレール113、ハンドル120が固定部材114、115により固定される。また、フレーム110の前後方向(搬送車両の前後方向)の両端部には、レバー誤操作防止機構100を覆うように、コの字形状のカバー111(
図7に示す)が固定部材116、117等により固定される。なお、固定部材114~117として、例えば、ねじ(例えば、ボルト、ナット)を用いることができる。
【0031】
スライドレール113は、スライド体150を搬送車両の前後方向にスライド可能とするためのレール(搬送車両の前後方向に延びるレール)である。また、スライドレール113は、スライド体150の長さ(搬送車両の前後方向の長さ)よりも長い部材で構成される。また、スライドレール113は、ハンドル支持体112を間に挟むようにしてフレーム110に固定される。このように、スライドレール113は、スライド体150を搬送車両の前後方向にガイドするためのガイドレールである。また、
図5に示すように、搬送車両の後側から見た場合(アクセルレバー130からハンドル120方向を見た場合)には、スライドレール113は、中空の矩形の一部が欠けた形状(ロの字形状の一辺の中心部が欠けた形状)となる。
【0032】
ハンドル120は、運転部メインフレーム10の左右側方に突設されるハンドルであり、フレーム110に固定されるハンドル支持体112に設けられる。また、ハンドル120は、搬送車両を運転する運転者が把持するグリップ部121を有する。
【0033】
アクセルレバー130は、搬送車両の前後方向において、ハンドル120の後側の位置に設けられる回動式のアクセルレバーであり、運転部メインフレーム10からクランク形状に延出して設けられる。すなわち、アクセルレバー130は、基部132に接続される略L字形状の棒状体である。なお、基部132は、ハンドル120の軸と略同一の回転軸により回動する回転体である。
【0034】
また、アクセルレバー130は、搬送車両を前後方向に走行させる操作を行うための棒状の操作部131を有する。操作部131は、ハンドル120のグリップ部121と略平行となるように配置される。
【0035】
例えば、アクセルレバー130の操作部131の中心軸が、ハンドル120のグリップ部121の中心軸と略同一平面上に位置する場合には、搬送車両は停止状態となる。また、例えば、運転者がアクセルレバー130の操作部131を矢印51(
図4に示す)方向に移動させることにより搬送車両を前進させることができる。また、例えば、運転者がアクセルレバー130の操作部131を矢印52(
図4に示す)方向に移動させることにより搬送車両を後退させることができる。このように、ハンドル120、基部132を回転軸としてアクセルレバー130の操作部131を移動させることにより、搬送車両を前後方向に走行させる操作を行うことができる。
【0036】
なお、運転者がアクセルレバー130の操作部131から手を離すと、アクセルレバー130は、スライド体150の付勢手段153によりアクセルレバーガイド片160の作用辺部161の傾斜部(第1傾斜部163、第2傾斜部164)に沿って停止位置に戻る。
【0037】
また、搬送車両の停止状態では、ハンドル120のグリップ部121の中心軸と、アクセルレバー130の操作部131の中心軸と、ロックレバー140の操作部141の中心軸とは、略同一平面上に配置される。
【0038】
なお、矢印51または矢印52(
図4に示す)方向へのアクセルレバー130の回動により、アクセル装置(図示せず)の走行制御部(例えば、CPU(Central Processing Unit))に制御信号が出力される。そして、走行制御部は、その出力信号に基づいて、電動モータ(図示せず)の回転を制御し、搬送車両の前後方向の移動を制御する。
【0039】
ロックレバー140は、搬送車両の前後方向において、ハンドル120の前側の位置に設けられる、くの字形状のレバーである。また、ロックレバー140は、くの字形状の端部(基部142)がスライド体150の一端(搬送車両の前後方向の前側の端部151)に枢支(すうし)される。すなわち、ロックレバー140は、基部142がスライド体150の端部151に回転自在に支持される。なお、ロックレバー140は、アクセルレバー130のロック及び解除を行うレバーであるため、解除レバーと称することもできる。
【0040】
また、ロックレバー140は、搬送車両を前後方向に走行させる操作を行う際に、アクセルレバー130のロックを解除するための棒状の操作部141を有する。
図2に示すように、アクセルレバー130がロック状態である場合には、操作部141は、ハンドル120のグリップ部121に対して、上面視において傾いた状態となるように配置される。また、アクセルレバー130のロックを解除する場合には、
図8に示すように、ハンドル120のグリップ部121に運転者が右手をかけた状態で、ロックレバー140の操作部141をグリップ部121側に引き寄せる。これにより、
図9に示すように、ロックレバー140の操作部141がハンドル120のグリップ部121に近づくのに応じて、ロックレバー140の基部142が搬送車両の前側に移動する。すなわち、くの字形状のロックレバー140の頂点に相当する折曲部143を支点として、ロックレバー140の操作部141と、ロックレバー140の基部142とが反対方向に移動する。この操作により、ロックレバー140の基部142に接続されているスライド体150が搬送車両の前側に移動する。
【0041】
このように、アクセルレバー130及びロックレバー140は、搬送車両の前後方向において、ハンドル120の前後に配置される。
【0042】
スライド体150は、搬送車両の前後方向にスライドする部材(搬送車両の前後方向に延びる断面L字型の部材)である。また、
図5に示すように、搬送車両の後側から見た場合(アクセルレバー130からハンドル120方向を見た場合)には、スライド体150は、スライドレール113を覆うようなL字型の形状となる。
【0043】
また、
図5に示すように、スライド体150のスライドレール113に接する面(付勢手段153が取り付けられる面の反対側の面)には、凸部154が設けられ、凸部154には、スライドレール113の内部の形状よりも小さい(スライドレール113のロの字形状の欠けた部分のサイズよりも大きい)サイズの樹脂155(例えば、搬送車両の前後方向に延びる板状の樹脂)が取り付けられる。なお、樹脂155は、例えば、ねじ等の固定部材により凸部154に固定される。
【0044】
このように、スライドレール113の内部の形状よりも小さく、スライドレール113のロの字形状の欠けた部分のサイズよりも大きい樹脂155を、スライドレール113の内部に設けることにより、スライド体150が搬送車両の左右方向に外れることを防止することができる。すなわち、スライドレール113及びスライド体150は、カーテンの上に取り付けられるレールのような構造を有し、スライドレール113(ガイドレール)の内部においてスライド体150の樹脂155が移動する構造となる。
【0045】
なお、スライドレール113及びスライド体150の構造については、これに限定されない。例えば、搬送車両の前後方向にスライド体150をスライドさせることが可能な機構であれば、他の構成を採用するようにしてもよい。
【0046】
また、
図6に示すように、スライド体150において、搬送車両の前後方向の前側の端部151の上側には、ロックレバー140を枢支するための基台156が設けられる。また、
図6に示すように、スライド体150の他の端部152(搬送車両の前後方向の後側の端部)には、アクセルレバーガイド片160が立設される。また、スライド体150のスライドレール113に接する面の反対側の面(樹脂155(
図5に示す)が取り付けられる面の反対側の面)には、付勢手段153の一端部が固定部材157により取り付けられる。また、
図6に示すように、付勢手段153の他の端部は、フレーム110にスライドレール113を固定させる固定部材115に取り付けられる。このように、付勢手段153が取り付けられるため、スライド体150はアクセルレバー130方向(搬送車両の前後方向の後側)に引張り付勢される。なお、付勢手段153として、例えば、コイルスプリング(円筒コイルバネ)を用いることができる。
【0047】
アクセルレバーガイド片160は、アクセルレバー130をガイドする部材であり、スライド体150に固定されてスライド体150の移動(搬送車両の前後方向への移動)に応じて移動する。また、アクセルレバーガイド片160は、アクセルレバー130が当接する作用辺部161を有する。なお、
図5に示すように、搬送車両の後側から見た場合(アクセルレバー130からハンドル120方向を見た場合)には、アクセルレバーガイド片160は、略L字型となる。また、アクセルレバーガイド片160の下面は、スライド体150の上面に固定部材で固定される。
【0048】
作用辺部161は、
図3に示すように、アクセルレバー130をロック状態にするための凹部(溝)162と、凹部162から拡がるように延びる第1傾斜部163及び第2傾斜部164とを有する。第1傾斜部163は、凹部162から上側後方に延びる傾斜部であり、第2傾斜部164は、凹部162から下側後方に延びる傾斜部である。また、アクセルレバー130は、作用辺部161に沿って摺動自在に構成される。すなわち、アクセルレバー130は、作用辺部161の凹部(溝)162に位置する場合には、ロック状態となる。また、アクセルレバー130が、作用辺部161の第1傾斜部163に位置する場合には、搬送車両を前進させるための操作を行うことができる。また、アクセルレバー130が、作用辺部161の第2傾斜部164に位置する場合には、搬送車両を後進させるための操作を行うことができる。
【0049】
なお、第1傾斜部163及び第2傾斜部164の傾斜角は異なるようにすることができる。例えば、後進についてはスピードを出すことが少ないため、アクセルレバー130の回動角度も小さく、第2傾斜部164の傾斜が大きくなっている。このように、第2傾斜部164の傾斜が大きいため、アクセルレバー130をニュートラルに戻す反応スピードは後進時の方が大きくなる。
【0050】
[レバー誤操作防止機構の作用例]
次に、レバー誤操作防止機構100によるアクセルレバー130のロック及び解除について図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
上述したように、
図1乃至
図7には、レバー誤操作防止機構100によりアクセルレバー130がロックされた状態を示す。
【0052】
具体的には、運転者がロックレバー140をグリップしない状態の時には、スライド体150は、付勢手段153によりアクセルレバー130方向に付勢されている。この場合には、
図3、
図6、
図7に示すように、アクセルレバーガイド片160の作用辺部161の凹部(溝)162にアクセルレバー130が嵌るため、アクセルレバー130の回動操作を行うことができず、アクセルレバー130はロック状態となる。
【0053】
このように、ロックレバー140をグリップせずにロック位置に変位操作したときには、スライド体150はアクセルレバー130方向に付勢されてアクセルレバーガイド片160を介してアクセル操作不能となる。言い換えると、ロックレバー140をグリップしない状態の時には、スライド体150は、付勢手段153によりアクセルレバー130方向に変位し、アクセルレバーガイド片160を介してアクセルレバー130は操作不可状態となる。
【0054】
また、上述したように、
図8乃至
図11には、レバー誤操作防止機構100によるアクセルレバー130のロックが解除された状態を示す。
【0055】
アクセルレバー130がロックされた状態において、アクセルレバー130のロックを解除する場合には、
図8に示すように、ハンドル120のグリップ部121を把持している運転者がロックレバー140の操作部141をグリップする。すなわち、
図9に示すように、ロックレバー140の操作部141をハンドル120側に移動させる。
【0056】
このように、ロックレバー140をグリップした時には、ロックレバー140に接続されているスライド体150が付勢手段153に抗し、アクセルレバー130と反対方向にスライド摺動する。この場合には、
図8、
図10、
図11に示すように、アクセルレバーガイド片160の作用辺部161の凹部(溝)162からアクセルレバー130が抜けるため、アクセルレバー130は、アクセルレバーガイド片160の作用辺部161に沿ってアクセル操作可能となる。
【0057】
また、ロックレバー140をグリップしてアクセルレバー130のロックを解除した後には、運転者はロックレバー140を握り続けなくても、アクセルレバー130によるアクセル操作が可能である。すなわち、ロックレバー140のグリップによりアクセルレバーガイド片160の作用辺部161の凹部(溝)162からアクセルレバー130が抜けた後に、運転者がアクセルレバー130を前進側(
図4、
図10に示す矢印51)または後進側(
図4、
図10に示す矢印52)に回動させることにより、アクセルレバー130は、アクセルレバーガイド片160の作用辺部161の第1傾斜部163または第2傾斜部164に当接することになる。
【0058】
このように、アクセルレバー130が作用辺部161の凹部(溝)162を抜けて、作用辺部161の第1傾斜部163または第2傾斜部164に当接していれば、ロックレバー140を握り続ける必要はない。すなわち、ロックレバー140のロックを一旦解除すれば、ロックレバー140に触らなくても、アクセルレバー130を自由に動かすことが可能である。
【0059】
また、運転者がアクセルレバー130から手を放すと、作用辺部161の第1傾斜部163または第2傾斜部164に当接しているアクセルレバー130が、その傾斜に沿って作用辺部161の凹部(溝)162に戻るため、アクセルレバー130が自動でニュートラルに戻ることになる。
【0060】
また、ハンドル120のグリップ部121を中心に、ロックレバー140及びアクセルレバー130が配置されるため、
図8に示すように、運転者がアクセルレバー130のロックの解除を右手で容易に行うことができる。
【0061】
また、運転者が立った状態(立位状態)で利用する搬送車両において、運転者が体勢を崩してロック状態のアクセルレバー130に当たるようなことがあっても、アクセルレバーガイド片160の作用辺部161の凹部(溝)162にアクセルレバー130が嵌っているため、アクセルレバー130の回動を阻止することができる。これにより、搬送車両の予期せぬ誤発進を防止することができる。
【0062】
このように、本発明の実施の形態によれば、アクセルレバー130自体を回動不能とする機械的な回動規制機構を実現することができる。また、運転者の体の一部がアクセルレバー130に接触したとしても搬送車両が発進することを規制するレバー誤操作防止機構を実現することができる。すなわち、搬送車両におけるアクセルレバー130の誤操作を防止することができる。
【0063】
また、ロックレバー140によりアクセルレバー130のロック状態を解除しなければ、アクセルレバー130が回動することができないため、確実に誤操作を防止することができる。また、ロックレバー140をグリップするだけの簡単操作によりアクセルレバー130の回動規制を解除できるため、アクセルレバー130のロック機構が電動車両を操作する上で何ら支障とならない。
【0064】
なお、本発明の実施の形態では、搬送車両の前後方向において、ハンドル120の前側にロックレバー140を配置し、ハンドル120の後側にアクセルレバー130を配置する例を示した。ただし、本発明は、これに限定されない。例えば、搬送車両の前後方向において、ハンドル120の前側にアクセルレバー130を配置し、ハンドル120の後側にロックレバー140を配置する場合についても本発明の実施の形態を適用することができる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0066】
10 運転部メインフレーム
100 レバー誤操作防止機構
110 フレーム
112 ハンドル支持体
113 スライドレール
114~117、157 固定部材
120 ハンドル
121 グリップ部
130 アクセルレバー
131 操作部
132 基部
140 ロックレバー
141 操作部
142 基部
143 折曲部
150 スライド体
151、152 端部
153 付勢手段
154 凸部
155 樹脂
156 基台
160 アクセルレバーガイド片
161 作用辺部
163 第1傾斜部
164 第2傾斜部