(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】化粧料繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20230920BHJP
A45D 40/06 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A45D40/20 D
A45D40/06 A
(21)【出願番号】P 2019231537
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中平 悠
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-048706(JP,A)
【文献】特開昭63-031609(JP,A)
【文献】実開平01-079410(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00 - 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外筒と、
この外筒の一端から一部が突出した状態にして該外筒内に配置され、該外筒と相対移動不可能に一体化された内筒と、
この内筒内に、該内筒と筒軸方向に相対移動自在に配置されて、棒状の化粧料の基端部を収容し、この化粧料の先端部が前記外筒の他端と反対側に向かって延びるように該化粧料を収容保持する化粧料容器と、
を備えた化粧料繰出容器において、
円筒状部材の内周面に、周方向に延びて筒軸方向に繰り返す螺旋溝が形成されてなり、前記外筒と前記内筒との間に配置された中間筒と、
前記化粧料容器の一部から突出して前記螺旋溝に係合する係合部と、
前記外筒の他端から突出するノック操作片、およびこのノック操作片のノック操作に連動して前記中間筒を回転させる回転カム機構からなる操作部と、
を有し、
前記ノック操作片のノック操作に連動する前記回転カム機構によって前記中間筒を回転させて、前記化粧料容器を、前記外筒の他端と反対側に移動させるように構成された化粧料繰出容器。
【請求項2】
前記回転カム機構が、前記ノック操作片のノック操作に連動して前記中間筒を回転させると共に、該中間筒を前記内筒に対して筒軸方向に相対移動させるように構成された請求項1記載の化粧料繰出容器。
【請求項3】
前記内筒に、該内筒の筒壁を貫通して筒軸方向に延びたガイド孔が設けられ、
前記係合部がこのガイド孔を通過している、
請求項2記載の化粧料繰出容器。
【請求項4】
前記係合部が、前記化粧料容器の中心を挟んで互いに反対方向に延びる状態にして2個設けられている、
請求項2または3記載の化粧料繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料繰出容器、より詳しくは、円筒状の外筒と、この外筒内に配置された内筒と、この内筒内に配置された化粧料容器とを備えてなる化粧料繰出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されているように、外筒内に回転カム機構によって回転される回転子を配し、ノック機構で回転カム機構を操作して回転子を回転させ、この回転の力を受けて回転する化粧料ホルダーを螺旋の作用で筒軸方向に直線移動させて、棒状の化粧料を外筒から繰り出させるようにした化粧料繰出容器が知られている。
【0003】
この種の化粧料繰出容器は、ノック機構を片手だけで簡単に操作することによって、例えば口紅等の化粧料を外筒から繰り出すことができるので、操作性の点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種の従来の化粧料繰出容器は、回転カム機構と化粧料ホルダーとの間に回転棒等の要素が組み付けられるので、繰り出し量の調整や繰り戻し等の操作性の点で改善の余地が残されている。またこの種の従来の化粧料繰出容器は、回転棒等の要素が組み付けられるために、操作の確実性の点でも改善の余地が残されている。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、しかも繰り出し量の調整や繰り戻し等の操作性にも優れたノック操作型の化粧料繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による化粧料繰出容器は、
円筒状の外筒と、
この外筒の一端から一部が突出した状態にして該外筒内に配置され、該外筒と相対移動不可能に一体化された内筒と、
この内筒内に、該内筒と筒軸方向に相対移動自在に配置されて、棒状の化粧料の基端部を収容し、この化粧料の先端部が外筒の他端と反対側に向かって延びるように該化粧料を収容保持する化粧料容器と、
を備えた化粧料繰出容器において、
円筒状部材の内周面に、周方向に延びて筒軸方向に繰り返す螺旋溝が形成されてなり、外筒と内筒との間に配置された中間筒と、
化粧料容器の一部から突出して上記螺旋溝に係合する係合部と、
外筒の他端から突出するノック操作片、およびこのノック操作片のノック操作に連動して中間筒を回転させる回転カム機構からなる操作部と、
を有し、
ノック操作片のノック操作に連動する回転カム機構によって中間筒を回転させて、化粧料容器を、外筒の他端と反対側に移動させるように構成された、
ことを特徴とするものである。
【0007】
なお上記の回転カム機構は、ノック操作片のノック操作に連動して中間筒を回転させると共に、該中間筒を内筒に対して筒軸方向に相対移動させるように構成されていることが望ましい。
【0008】
また、回転カム機構がそのような構成とされる場合は、内筒に、該内筒の筒壁を貫通して筒軸方向に延びたガイド孔が設けられ、係合部がこのガイド孔を通過していることが特に好ましい。
【0009】
さらに上記の係合部は、化粧料容器の中心を挟んで互いに反対方向に延びる状態にして2個設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧料繰出容器は、ノック操作により回転カム機構によって回転される中間筒によって、化粧料容器を直接的に化粧料繰出し方向に移動させるように構成したので、構成が簡単で、しかも繰り出し量の調整や繰り戻し等の操作性にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態による化粧料繰出容器を示す側面図
【
図2】
図1の化粧料繰出容器を示す側断面図(a)と正断面図(b)
【
図3】
図1の化粧料繰出容器の一部を外側から示す斜視図(a)と内部から示す部分側断面図(b)、およびこの一部と組み合う別の部分を示す破断斜視図(c)
【
図5】
図1の化粧料繰出容器の
図2とは異なる状態を示す側断面図(a)と正断面図(b)
【
図6】
図1の化粧料繰出容器のさらに異なる状態を示す側断面図(a)と正断面図(b)
【
図7】
図1の化粧料繰出容器の相異なる3つの状態を示す概略図
【
図8】
図1の化粧料繰出容器の要部の一状態を示す部分正面図
【
図9】
図1の化粧料繰出容器の要部の、
図8とは異なる状態を示す部分正面図
【
図10】
図1の化粧料繰出容器の要部の、さらに異なる状態を示す部分正面図
【
図11】
図1の化粧料繰出容器の要部の、さらに異なる状態を示す部分正面図
【
図12】
図1の化粧料繰出容器の概略側面図(a)と、この概略側面図中のB-B線に沿った部分を示す断面図(b)と、この断面図に示す部分の異なる状態を示す断面図(c)
【
図13】
図1の化粧料繰出容器を、構成部品毎に分けて示す分解斜視図
【
図14】
図1の化粧料繰出容器を構成する主要な部品を示す斜視図
【
図15】本発明の第2の実施形態による化粧料繰出容器を示す側面図
【
図16】
図15の化粧料繰出容器を示す側断面図(a)と正断面図(b)
【
図17】
図15の化粧料繰出容器の一部を外側から示す斜視図(a)と内部から示す部分側断面図(b)、およびこの一部と組み合う別の部分を示す破断斜視図(c)
【
図18】
図15の化粧料繰出容器の相異なる3つの状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による化粧料繰出容器10の外観を示す側面図であり、
図2はこの化粧料繰出容器10の一状態を示す縦断面図である。なお
図2では、(a)、(b)においてそれぞれ、化粧料繰出容器10の側断面形状、正断面形状を示している。図示のようにこの化粧料繰出容器10は、概略円筒状の外筒1と、この外筒1の一端(図中の上端)から一部が突出した状態にしてこの外筒1内に配置された概略円筒状の内筒2と、外筒1と内筒2との間に配置された概略円筒状の中間筒3と、上記内筒2内に、該内筒2と筒軸方向(図中の上下方向)に相対移動自在に配置された概略有底円筒状の部分を有する化粧料容器4と、外筒1の他端つまり図中の下端から突出するノック操作片5とを備えている。なお、上述した
図2の(a)、(b)に示す側断面形状、正断面形状はそれぞれ、外筒1の中心軸を含んで、互いに直交する面内の断面形状である。また
図13には、この化粧料繰出容器10を分解して上記外筒1以下の構成部品1~9および11の各斜視形状を示す。
【0013】
上記内筒2は、
図2の(b)に示されるように、一例として互いに180度(°)の角度ピッチで配されて下方に延びる2本の部分的な延長部2aを有している。これらの延長部2aには、外筒1の下部から筒中心側に延びた接続部1aが連結されている。それにより内筒2は、外筒1に対して相対移動不可能にして、該外筒1と一体化されている。また内筒2には、その筒軸と平行な方向に延びて筒部を貫通するガイド孔2bが、一例として互いに180度の角度ピッチで合計2本設けられている。なお、
図2の(b)において、「2b」なる表記が指し示している箇所は、ガイド孔2bの上端縁である。
【0014】
一方、内筒2内に配置された化粧料容器4は、棒状の化粧料6の基端部(図中の下端部)を収容し、この化粧料6の先端部(図中の上端部)が外筒1の他端と反対側、つまり図中の上端に向かって延びるように該化粧料6を収容保持している。化粧料容器4の下部には、
図2の(b)に示されるように、2つの部分的な延長部4aが設けられている。これらの延長部4aにはそれぞれ、径外方に突出した係合部4bが設けられ、各係合部4bは内筒2の上記ガイド孔2bを通過している。それにより化粧料容器4は、内筒2の筒軸方向には直線移動可能である一方、内筒2の中で筒軸周りに相対回転することは不可能となっている。
【0015】
化粧料容器4の下方には、上記2つの延長部4aに挟持された状態にして、スライドガイド7が固定されている。このスライドガイド7の下方には、スライド部品8が配設されている。なお上記スライドガイド7およびスライド部品8の斜視形状および詳細な位置関係を、
図13のほぼ下方側から見た状態として
図14に示す。なおこの
図14では、後述するコイルバネ9は省いている。ここに示される通りスライドガイド7は、上部板7cと、そこから下方に延びる2つの縦部材7dとを有している。上部板7cの中央部には、そこを貫通して上下方向に延びる案内孔7aが形成されている。また各縦部材7dの上部板7c側の端部には、それぞれ該縦部材7dを挟む形にして2つの凸部7bが設けられている。一方スライド部品8は、基部8dと、この基部8dと一体化されて上方側に(スライドガイド7側に)延びる2つの組付け部8eとを有する。基部8dの中央部には上方に突出した細長い凸部8aが形成され、この凸部8aが上記スライドガイド7の案内孔7aに収められている。また2つの組付け部8eは、互いに離間して、スライドガイド7の2つの縦部材7dを摺動可能にして間に挟み付けるように配設されている。以上によりスライド部品8は案内孔7aに案内されて、スライドガイド7に対して、つまり化粧料容器4に対して上下方向に相対移動可能となっている。
【0016】
スライド部品8には、ノック操作片5の上部が嵌合固定されている。スライド部品8とスライドガイド7との間には、コイルバネ9が圧縮状態にして配設されている。このコイルバネ9により、スライド部品8およびノック操作片5は下方に弾力付勢されている。しかし、
図2の(a)に示されるように、スライド部品8の左右端上部に形成された外向きの凸部8bが、中間筒3の下部に内向きに形成された受部3bに上方から当接することにより、付勢されているスライド部品8およびノック操作片5が中間筒3から下方に抜け出ることが防止されている。
【0017】
なお棒状の化粧料6としては、例えば口紅が挙げられるが、特にそれに限定されるものではない。この化粧料6は、上端が内筒2から露出した状態となるので、一般には、取り外し自在にして外筒1と嵌合する有底円筒状の蓋11が設けられる。
【0018】
円筒状部材からなる中間筒3の内周面には、周方向に巻回して筒軸方向に繰り返す螺旋溝3Rが形成されている。前述した化粧料容器4の係合部4bは、この螺旋溝3Rに係合している。ここで
図3の(a)、(b)にそれぞれ、中間筒3の下端近傍部を外側から見た斜視形状、該下端近傍部を一部切り取って内側から見た形状を示す。またこの
図3の(c)には、中間筒3の外側に配される外筒1を一部切り取って、その内周面の斜視形状を示している。同図の(a)、(b)に示すように中間筒3の下端には、一例として互いに90度の角度ピッチで配置された4つの山形状のカム凸部3aが、下方に突出して形成されている。このカム凸部3aは、より詳しくは、中間筒3の軸方向に延びた直線部と、この直線部の下端から上方に向かう傾斜面とを有するものである。また中間筒3の下端近傍部には、その内周面から所定の均一な厚みで筒中心側に張り出た山形のカム山部3cが複数形成されている。これらのカム山部3cは、一例として45度の角度ピッチで、筒全周に亘って合計8個形成されている。
【0019】
図3の(c)に示すように外筒1の内周面には、所定の均一な厚みで筒中心側に張り出たカム板20が形成されている。このカム板20は、上端から外筒1の軸方向に比較的深く直線状に切り込んだ溝部20aと、この溝部20aの一方の側縁の上端から斜め下方に延びた比較的横に長い第1の傾斜部20bと、この第1の傾斜部20bの最下部から直線状に立ち上がった位置から斜め下方に延びて溝部20aの他方の側縁に続く、比較的横に短い第2の傾斜部20cとを有している。これらの溝部20a、第1の傾斜部20bおよび第2の傾斜部20cは、同じもの同士が一例として
90度の角度ピッチで筒周方向に繰り返す状態にして、各々4個ずつ配置されている。なお、第2の傾斜部20cが立ち上がっている第1の傾斜部20bの最下部は、溝部20aの底面よりも十分高い所に位置している。
【0020】
図4には、中間筒3の下端近傍部と前述したスライド部品8とを共に外側から見た概略正面形状を示している。なおここでは、中間筒3とスライド部品8とが組み合っていない状態を示している。また同図では、上記4つのカム凸部3aのうちの2つのみを示し、それらの間にある2つのカム凸部3aは省略している。また、
図3の(b)に示したカム山部3cは破線で示している。この
図4に示すようにスライド部品8には、前述した
図3の(b)に示すカム山部3cと向かい合うカム凸部8cが設けられている。なお、後の説明のために、同図においてスライド部品8は特に斜線を付して示し、さらに、
図3の(c)に示した外筒1のカム板20を仮想線で示している。
【0021】
以下、上記構成を有する本実施形態の化粧料繰出容器10の作用について説明する。
図2の(a)および(b)は、化粧料容器4に保持された化粧料6が、内筒2から上方に飛び出すことなく、この内筒2内に収納された状態を示している。以下、この状態を「化粧料収納時」の状態と称する。一方、後述する操作がなされて、化粧料6が内筒2から上方に少し飛び出して、使用に供される状態とされることもある。以下、この状態を「化粧料突出し時」の状態と称する。
図5の(a)および(b)はそれぞれ、上記化粧料収納時から化粧料突出し時に移行する途中における化粧料繰出容器10の側断面形状、正断面形状を示しており、
図6の(a)および(b)はそれぞれ、上記化粧料突出し時における化粧料繰出容器10の側断面形状、正断面形状を示している。なお、
図5および
図6の(a)に示す断面は
図2の(a)に示す断面と同じであり、
図5および
図6の(b)に示す断面は
図2の(b)に示す断面と同じである。
【0022】
また
図7は、上記
図2、
図5および
図6の各状態における、化粧料繰出容器10の概略側形状(1)、(3)、(5)と側断面形状(2)、(4)、(6)とを示している。なお、上記(2)、(4)、(6)に示す断面は
図2の(a)に示す断面と同じである。この
図7中(1)および(2)が
図2の状態に、(3)および(4)が
図5の状態に、そして(5)および(6)が
図6の状態に対応している。また
図8~
図11には、上記化粧料収納時から化粧料突出し時に移行する際の、中間筒3とスライド部品8との位置関係を、
図4と同じ表示部分に関して順を追って示している。
図12は、前述したスライドガイド7の凸部7bを主に示すための図であり、(a)はこの凸部7bが存在する一つの断面B-Bを示しており、(b)はその断面部分の形状を示し、(c)はこの断面部分が(b)とは異なる状態にあるところを示している。なおこの
図12では、前述したコイルバネ9は省略している。
【0023】
化粧料収納時、
図3に示した中間筒3の下部のカム凸部3aは、カム板20の溝部20a内に入り込んだ状態となっている。また、スライド部品8は中間筒3より下方に離れている。
図2および
図8は、このときの状態を示している。この状態から化粧料使用者が、コイルバネ9の弾力に抗しながらノック操作片5をノック操作(上方に押し込む操作)すると、スライド部品8およびスライドガイド7を介して化粧料容器4が押し上げられる。それにより化粧料容器4は内筒2内で摺動して上方に移動する。このとき、化粧料容器4の係合部4bは内筒2のガイド孔2b内を移動する。また、この係合部4bを螺旋溝3R内に受け入れて係合している中間筒3も、化粧料容器4と共に上方に移動する。
【0024】
こうして中間筒3は、そのカム凸部3aがカム板20の溝部20aから上方に抜け出る程度まで上昇するが(
図9に示す状態)、ここまで上昇すると、
図12の(
c)に示すように中間筒3の下端部内周面に突設されたストッパ部3dが、スライドガイド7に形成されている凸部7bに当接して(
図12の(c)参照)、それ以上の中間筒3の上昇は阻止される。なお
図5は、このようにして中間筒3が、つまりは化粧料6が最高位置まで上昇
したときの状態を示している。その後、コイルバネ9の弾力に抗しながらさらにノック操作片5が上方に押されると、それと共にスライド部品8が上昇して、その上部に形成されているカム凸部8cが、中間筒3のカム山部3cを下から押圧する(
図10に示す状態)。すると、カム山部3cがカム凸部8cに沿って
図10中で右方に移動して、この向きに中間筒3が回転する。こうして中間筒3が回転すると、中間筒3の螺旋溝3Rに係合している係合部4bが、つまりは化粧料容器4が上方に移動する。そこで、化粧料容器4に保持されている化粧料6が、さらに内筒2から上方に突出する。
【0025】
化粧料使用者は、上記カム山部3cがカム凸部8cに沿って動いたことを体感して、あるいは化粧料6が内筒2から突出したことを確認して、そこでノック操作片5を解放させる。すると中間筒3が降下して、そのカム凸部3aがカム板20の第2の傾斜部20cを通り過ぎて、第1の傾斜部20bの上に乗った状態(より詳しくはカム凸部3aの直線部が第2の傾斜部20cの直線部と整合した状態)になって、中間筒3が静止する(
図11に示す状態)。この状態が、先に述べた化粧料突出し時の状態であって、
図6に示す状態である。またこのとき、
図12の(b)に示した断面部分は同図の(c)に示す状態となる。この状態では化粧料6が内筒2から突出しているので、化粧料使用者は、この口紅等の化粧料6を使用して化粧をすることができる。
【0026】
ここで、化粧料突出し時における化粧料6の内筒2からの突出量(高さ)は、中間筒3のカム凸部3aがカム板20の第1の傾斜部20b上に乗ることによって、化粧料収納時よりも高い位置に中間筒3が上昇することによる突出量を例えば2mmに設定し、また、中間筒3の回転により化粧料容器4が上方移動することによる突出量を例えば0.5mmに設定して、合計2.5mm等とするとよい。化粧料6が口紅である場合は、この突出量がちょうど1回の化粧で使い切るような量であることが好ましい。
【0027】
なお本実施形態では、中間筒3を
図5や
図9に示す状態、つまりカム凸部3aがカム板20の溝部20aから上方に抜け出た状態にすると、化粧料使用者が自由に中間筒3を回転させることができる。そこで、中間筒3をどちらの方向にも随意に回転させて、化粧料容器4を上下動させ、化粧料6の内筒2からの突出量をより大きくしたり、反対に、突出させ過ぎた化粧料6を内筒2の中に繰り戻すことも可能となる。
【0028】
本実施形態では、ノック操作片5の1回のノック操作により、中間筒3が筒軸周りに45度ずつ回転する。そこで、化粧料突出し時の状態からもう1回ノック操作がなされると、以上と同様にして中間筒3が45度回転して、化粧料収納時の状態に戻る。
【0029】
前述したように
図7は、
図2、
図5および
図6の各状態における、化粧料繰出容器10の
側断面形状を示している。図中、各部の高さ位置を比較するために、ノック操作によって動くことのない内筒2の上端位置および外筒1の下端位置を、それぞれ線HおよびLで示すように互いに揃えて表示している。
【0030】
なお、
図3と
図4に示した機構は、本発明における回転カム機構を構成するものであるが、この種の回転カム機構そのものは公知のものである。また、以上説明した回転カム機構におけるカム要素の配設角度や、それに対応した各カム要素の数はあくまでも一例であって、本実施形態のものに限定されないことは勿論である。
【0031】
次に本発明の第2の実施形態による化粧料繰出容器30について説明する。
図15は、本実施形態の化粧料繰出容器30の外観を示す側面図である。この
図15以降の図において、先に説明した
図1~
図14中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する。
図16はこの化粧料繰出容器30の一状態を示す断面図である。なお
図16では、(a)、(b)においてそれぞれ、化粧料繰出容器30の側断面形状、正断面形状を示している。また
図17には、中間筒3の外側に配される外筒1を一部切り取って、その内周面を示している。図示のように外筒1の内周面には、所定の均一な厚みで筒中心側に張り出たカム板20Fが形成されている。
【0032】
本実施形態の化粧料繰出容器30は基本的に、このカム板20Fが
図3に示したカム板20と異なっている点で第1の実施形態の化粧料繰出容器10と相違している。すなわちこのカム板20Fにおいては、
図3に示したカム板20におけるものと同様の第1の傾斜部20bが、45度の角度ピッチで筒周方向に繰り返す状態にして、8個配されている。また本実施形態において、中間筒3の下端近傍部とスライド部品8との相互位置関係も、
図4に示した構成と同様とされている。
【0033】
したがって本実施形態では、ノック操作片5が1回ノック操作される毎に、中間筒3の下端に形成された4つのカム凸部3aが、順次次の第1の傾斜部20bに乗り移るようにして、中間筒3が45度ずつ回転する。4つのカム凸部3aが、それぞれ第1の傾斜部20bに乗っている状態を初期状態とすれば、ノック操作片5の1回のノック操作毎に初期状態が設定される。なおこの場合も、初期状態と初期状態との間においてノック操作片5が押し切られると、スライド部品8のカム凸部8cが中間筒3のカム山部3cを最も高い位置まで押し上げ、それに応じて中間筒3および化粧料容器4が(つまりは化粧料6が)最高位置に達する。その後ノック操作片5が解放されると、中間筒3および化粧料容器4は最高位置からやや下降して、初期状態になる。
図18には、上記初期状態と、中間筒3および化粧料容器4が最高位置になる状態と、その後の初期状態とを(1)、(2)、(3)として示している。なお(3)は、ノック操作5回後の状態を示している。
【0034】
以上の説明から明らかな通りこの第2実施形態では、第1実施形態と異なって、回転カム機構を利用して中間筒3を内筒2に対して直接的に筒軸方向に相対移動させることはない。つまりこの第2実施形態では、中間筒3の回転並びに螺旋溝3Rの作用だけを利用して化粧料6を内筒2から繰り出すようにしている。このようにする場合は、化粧料使用者がノック操作を勢い良く連続的に行って、過剰な量の化粧料6を繰り出してしまうことも有り得る。したがって、1回のノック操作によって化粧料6が内筒2から突出する量は、比較的少なくしておくのが望ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 外筒
2 内筒
2a 内筒の延長部
2b 内筒のガイド孔
3 中間筒
3a 中間筒のカム凸部
3b 中間筒の受部
3c 中間筒のカム山部
3d 中間筒のストッパ部
4 化粧料容器
4a 化粧料容器の延長部
4b 化粧料容器の係合部
5 ノック操作片
6 化粧料
7 スライドガイド
7a スライドガイドの案内孔
7b スライドガイドの凸部
7c スライドガイド上部板
7d スライドガイドの縦部材
8 スライド部品
8a スライド部品のスライド部
8b スライド部品の凸部
8c スライド部品のカム凸部
8d スライド部品の基部
8e スライド部品の組付け部
9 コイルバネ
10、30 化粧料繰出容器
11 蓋
20、20F カム板
20a カム板の溝部
20b カム板の第1の傾斜部
20c カム板の第2の傾斜部