(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両の窓開閉装置
(51)【国際特許分類】
B60J 1/17 20060101AFI20230920BHJP
E05F 11/38 20060101ALI20230920BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20230920BHJP
【FI】
B60J1/17 A
E05F11/38 A
E05F15/689
(21)【出願番号】P 2019233188
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 涼
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138472(JP,A)
【文献】特開2014-125287(JP,A)
【文献】特開2013-184810(JP,A)
【文献】特開2003-312253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00- 1/20
E05F 11/00- 11/54
E05F 15/689-15/697
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員によって指示される窓の指示開度の設定または選択を可能にする表示および前記窓の現在開度の表示が可能な表示画面を備えた表示装置を備え、前記指示開度として、
前記窓の全閉状態および全開状態それぞれの開度以外の複数の開度が規定され、指示された前記指示開度に従って前記窓の自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置において、
前記規定された複数の指示開度それぞれに対して、当該指示開度を含む所定の開度範囲が割り当てられており、
前記窓の開度を検知する開度検知部と、
前記開度検知部が検知した前記窓の開度が属する前記開度範囲に含まれている前記指示開度を現在開度として決定する現在開度決定部とを備え、
前記複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている前記開度範囲の下限値は当該開度範囲に含まれる前記指示開度よりも所定値だけ小さく、
前記複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている前記開度範囲の上限値は当該開度範囲に含まれる前記指示開度よりも所定値だけ大きく設定されて
おり、
前記窓が停止した際、前記開度検知部が検知した前記窓の開度が前記指示開度からずれている場合に、この検知された開度が属する前記開度範囲が割り当てられている前記指示開度を前記現在開度として前記表示装置の表示画面に表示する構成となっていることを特徴とする車両の窓開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の窓開閉装置において、
前記窓は、昇降範囲のうち最も上昇した状態が前記全閉状態であり、最も下降した状態が前記全開状態となるものであって、
前記開度範囲の下限値と、該下限値が属する開度範囲が割り当てられている前記指示開度との差は、前記開度範囲の上限値と、該上限値が属する開度範囲が割り当てられている前記指示開度との差よりも大きく設定されていることを特徴とする車両の窓開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の窓開閉装置に係る。特に、本発明は、指示開度に従って窓の自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、乗員の窓開閉指示操作(例えば車室内の表示画面の操作)によって指示された窓の開度(指示開度)に従って窓の自動開閉動作を行う窓開閉装置(パワーウィンド装置)が知られている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、窓(パワーウィンド)の開度を開放率で示すようにし、窓の全閉状態を開度0%とし、窓の全開状態を開度100%とし、この0%から100%の間を等間隔に区切って、開度(開放率)を規定することが開示されている。
【0004】
また、特許文献1にあっては、車室内に設置された表示画面(カーナビゲーション装置等の画面)上に現在の窓の開度を表示するようになっており、例えば
図4に示すように各指示開度に対して開度範囲が割り当てられている場合、窓の実際の開度が30%以上40%未満の範囲にある場合には、表示画面上に窓の開度が30%である旨の表示が行われ、窓の実際の開度が40%以上50%未満の範囲にある場合には、表示画面上に窓の開度が40%である旨の表示が行われるようになっている。これにより、車両の乗員が、窓を直接目視することなく、表示画面上の表示によって窓の開度を確認できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術にあっては、窓の閉鎖動作(上昇動作)が行われる場合と、窓の開放動作(下降動作)が行われる場合とで、窓の停止位置にずれが発生することに起因し、指示開度と表示画面上に表示される開度(以下、表示開度という場合もある)とが一致しない状況を招いてしまう可能性があった。
【0007】
このような状況を招く原因は、同じ指示開度であっても、窓の閉鎖動作が行われる場合と、窓の開放動作が行われる場合とで、窓の停止位置にずれが発生するためである。つまり、窓の閉鎖動作にあっては、窓の開度が指示開度に達した時点で窓の停止動作が開始され、その後、窓の慣性によって僅かに上昇移動(閉鎖方向へ移動)した後、窓が停止することになる。これに対し、窓の開放動作にあっては、窓の開度が指示開度に達した時点で窓の停止動作が開始され、その後、窓の慣性によって僅かに下降移動(開放方向へ移動)した後、窓が停止することになる。このように、指示開度に達してからの僅かな窓の移動に起因し、同じ指示開度であっても(窓の閉鎖動作での指示開度と窓の開放動作での指示開度とが同じであっても)実際の窓の停止位置が互いに異なって、各停止位置(実際の開度)が属する開度範囲が互いに異なるものとなっている場合には、窓の閉鎖動作および窓の開放動作の何れかにおいて指示開度とは異なる開度が表示画面上に表示される場合があった。言い替えると、同じ指示開度で窓の開閉動作が行われて窓が停止した場合に、略同じ開度(前記ずれ分だけ開度が異なる場合)であるにも拘わらず、窓の閉鎖動作が行われた場合と窓の開放動作が行われた場合とで、表示開度が異なるものとなってしまう可能性があった。このような状況は、乗員に違和感を与えてしまうことになり、好ましくない。
【0008】
具体的には、例えば、
図4に示すように各指示開度と各開度範囲との関係が規定されている場合には、指示開度が40%である閉鎖動作が行われた際、停止後の窓の開度が39%となって表示画面上に30%と表示されてしまう場合がある。このような状況が発生した場合、その後、開度を40%とするように窓の開閉指示操作(開放側への指示操作)を行ったとしても窓が殆ど動かない状況を招いてしまうことになり、このような状況も乗員に違和感を与えてしまうことになる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗員に違和感を与えてしまうことを抑制する窓の自動開閉動作を実現できる車両の窓開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、乗員によって指示される窓の指示開度の設定または選択を可能にする表示および前記窓の現在開度の表示が可能な表示画面を備えた表示装置を備え、前記指示開度として、前記窓の全閉状態および全開状態それぞれの開度以外の複数の開度が規定され、指示された前記指示開度に従って前記窓の自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置を前提とする。そして、この車両の窓開閉装置は、前記規定された複数の指示開度それぞれに対して、当該指示開度を含む所定の開度範囲が割り当てられており、前記窓の開度を検知する開度検知部と、前記開度検知部が検知した前記窓の開度が属する前記開度範囲に含まれている前記指示開度を現在開度として決定する現在開度決定部とを備え、前記複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている前記開度範囲の下限値は当該開度範囲に含まれる前記指示開度よりも所定値だけ小さく、前記複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている前記開度範囲の上限値は当該開度範囲に含まれる前記指示開度よりも所定値だけ大きく設定されており、前記窓が停止した際、前記開度検知部が検知した前記窓の開度が前記指示開度からずれている場合に、この検知された開度が属する前記開度範囲が割り当てられている前記指示開度を前記現在開度として前記表示装置の表示画面に表示する構成となっていることを特徴とする。
【0011】
この特定事項により、窓の閉鎖動作が行われる場合と窓の開放動作が行われる場合とで窓の停止位置にずれが発生する状況であっても、規定された複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の下限値は当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ小さく、前記開度範囲の上限値は当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ大きく設定されているため、窓の閉鎖動作および窓の開放動作の何れにおける指示開度に対する開度のずれ量も当該指示開度に割り当てられている開度範囲内に収めることが可能となり、現在開度決定部によって決定される現在開度(検知した窓の開度が属する開度範囲に含まれている指示開度として決定された現在開度)は指示開度に一致することになる。例えば、現在開度を表示画面上に表示させるものにあっては、この表示画面上に表示される開度は指示開度に一致することになる。このため、乗員に違和感を与えてしまうことを抑制する窓の自動開閉動作を実現することができる。
また、前記窓は、昇降範囲のうち最も上昇した状態が前記全閉状態であり、最も下降した状態が前記全開状態となるものであって、前記開度範囲の下限値と、該下限値が属する開度範囲が割り当てられている前記指示開度との差は、前記開度範囲の上限値と、該上限値が属する開度範囲が割り当てられている前記指示開度との差よりも大きく設定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、規定された複数の指示開度それぞれに対して、当該指示開度を含む所定の開度範囲を割り当てておき、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の下限値を当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ小さく設定し、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の上限値を当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ大きく設定している。これにより、窓の閉鎖動作が行われる場合と窓の開放動作が行われる場合とで窓の停止位置にずれが発生する状況であっても、現在開度決定部によって決定される現在開度を指示開度に一致させることができ、乗員に違和感を与えてしまうことを抑制する窓の自動開閉動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る窓開閉装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】パワーウィンド操作時における表示装置の画面上での表示の一例を示す図である。
【
図3】実施形態における各指示開度それぞれに対して割り当てられた開度範囲を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、4枚のドアそれぞれに設けられた窓(以下、パワーウィンドという場合もある)の自動開閉動作、および、屋根部分に設けられたルーフシェードの自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置として本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
-窓開閉装置の概略構成-
図1は、本実施形態に係る窓開閉装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。この
図1に示すように、窓開閉装置100は、4枚のドアそれぞれに設けられた窓操作部101,102,103,104、車両制御ECU(Electronic Control Unit)200、各窓毎およびルーフシェードそれぞれに対応して配設されたモータ制御ECU301,302,303,304,305、カーナビゲーション装置やインストルメントパネルに備えられた表示装置(ディスプレイ)400を備えている。これら窓操作部101~104、車両制御ECU200、モータ制御ECU301~305、表示装置400は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる車載ネットワークを介して接続されている。
【0016】
窓操作部101~104は、自動車の各ドア(運転席側ドア、助手席側ドア、右後部座席側ドア、左後部座席側ドア)それぞれに備えられる操作スイッチを有している。これら窓操作部101~104は、操作スイッチの操作(乗員による操作)を検知すると、車両制御ECU200に対して操作検知信号を出力する。
【0017】
窓操作部としては、運転席側窓操作部101、助手席側窓操作部102、右後部座席側窓操作部103、左後部座席側窓操作部104を備えている。
【0018】
運転席側窓操作部101は、運転席側ドアの窓、助手席側ドアの窓、右後部座席側ドアの窓、左後部座席側ドアの窓、ルーフシェードそれぞれを操作可能な操作スイッチを備えている。この運転席側窓操作部101は、操作された操作スイッチに応じた操作検知信号を車両制御ECU200に送信する。つまり、操作された操作スイッチの種類およびその操作方向(開放操作方向または閉鎖操作方向)の情報を操作検知信号として車両制御ECU200に送信する。
【0019】
助手席側窓操作部102は、助手席側ドアの窓を操作可能な操作スイッチを備えている。この助手席側窓操作部102は、操作スイッチの操作に応じた操作検知信号(開放操作方向または閉鎖操作方向の情報)を車両制御ECU200に送信する。
【0020】
右後部座席側窓操作部103は、右後部座席側ドアの窓を操作可能な操作スイッチを備えている。この右後部座席側窓操作部103は、操作スイッチの操作に応じた操作検知信号(開放操作方向または閉鎖操作方向の情報)を車両制御ECU200に送信する。
【0021】
左後部座席側窓操作部104は、左後部座席側ドアの窓を操作可能な操作スイッチを備えている。この左後部座席側窓操作部104は、操作スイッチの操作に応じた操作検知信号(開放操作方向または閉鎖操作方向の情報)を車両制御ECU200に送信する。
【0022】
車両制御ECU200は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されており、車両に搭載された各種アクチュエータを制御するための各種制御ECUに制御信号を出力する。
図1では、制御ECUとして前記モータ制御ECU301~305のみを示している。
【0023】
車両制御ECU200は、前記各窓操作部101~104のうちの何れかから操作検知信号を受信した場合、その操作検知信号に従って、当該操作検知信号に対応したモータ制御ECU301~305に対して開閉指示信号を送信する。例えば、運転席側窓操作部101から運転席側ドアの窓に対する操作検知信号を受信した場合には、運転席側窓に対応するモータ制御ECU301に対し、この操作検知信号に応じた開閉指示信号を送信する。
【0024】
また、本実施形態では、前記表示装置400の表示画面上において乗員が指示開度を設定または選択できるようになっている。つまり、ディスプレイとタッチパネルを用い、ディスプレイ上に開度指示用のGUI(Graphical User Interface)を構築し、このGUIの画面操作によって窓やルーフシェードの指示開度を設定または選択するようにしたものである。表示装置400の表示画面上において乗員が指示開度を設定または選択すると、前記表示装置400から車両制御ECU200に指示開度信号が送信され、車両制御ECU200が、この指示開度信号に対応するモータ制御ECU301~305に対して当該指示開度信号を送信することになる。この表示装置400の表示画面の表示については後述する。
【0025】
なお、ここでいう指示開度の設定とは、表示装置400の表示画面上での乗員の操作によって開度の数値(百分率)が入力される場合を想定する。また、ここでいう指示開度の選択とは、表示装置400の表示画面上に選択可能な複数の開度の数値(百分率)が表示され、その中から乗員の操作によって選択される場合を想定する。この場合、選択された数値に応じ車両制御ECU200によって指示開度(開度の百分率)が設定されることになる。
【0026】
モータ制御ECU301~305は、自動車の各ドア(運転席側ドア、助手席側ドア、右後部座席側ドア、左後部座席側ドア)およびルーフシェードそれぞれに備えられるレギュレータ用のモータ501~505を制御するためのECUである。
【0027】
モータ制御ECUとしては、運転席側窓のモータ制御ECU301、助手席側窓のモータ制御ECU302、右後部座席側窓のモータ制御ECU303、左後部座席側窓のモータ制御ECU304、ルーフシェードのモータ制御ECU305を備えている。
【0028】
各モータ制御ECU301~305それぞれには、モータ501~505が接続されており、各モータ制御ECU301~305からの駆動指令信号に従って、対応するモータ501~505が作動し、これによって各窓およびルーフシェードのうちの何れかが自動開閉動作を行うようになっている。
【0029】
また、各モータ制御ECU301~305は、実際の窓の開度やルーフシェードの開度を検出する機能を備えており、その窓やルーフシェードの開度の情報(開度検知信号)が車両制御ECU200に出力されるようになっている。この実際の窓やルーフシェードの開度を検出するための手段としては、周知のロータリエンコーダを使用したり、ステッピングモータを使用した場合のパルス信号に基づいて検出することが可能であるが、特に限定されるものではない。このような窓の開度やルーフシェードの開度を検出する機能部分によって、本発明でいう開度検知部(窓の開度を検知する開度検知部)が構成されている。
【0030】
表示装置400は、現在の各窓およびルーフシェードの開度を開放率によって表示する。具体的には、窓の全閉状態を開度0%とし、窓の全開状態を開度100%とし、この0%から100%の間を10%間隔に区切って、開度(開放率)を表示するようになっている。
【0031】
具体的には、後述するように10%間隔に区切られて規定された複数の指示開度それぞれに対して、当該指示開度を含む所定の開度範囲が割り当てられている。そして、前記モータ制御ECU301~305それぞれから車両制御ECU200が開度検知信号(実際の開度の情報)を受信し、この開度検知信号に基づいて検知された各窓およびルーフシェードの開度(実際の開度)が属する開度範囲が割り当てられている指示開度を現在の開度とし、その開度情報が車両制御ECU200から表示装置400に送信されることによって該表示装置400に、現在の各窓およびルーフシェードの開度が開放率によって表示されるようになっている。
【0032】
この表示装置400における各窓およびルーフシェードの開度の表示は、割り込み表示によって行われる。つまり、通常時においては、カーナビゲーション装置またはAV(Audio Visual)装置からの出力信号に基づく通常表示をその表示画面に表示するが、車両制御ECU200からの開度情報が表示装置400に送信されることに伴い、表示画面において少なくとも部分的に開度情報の割り込み表示が行われる。なお、表示装置400における開度情報の割り込み表示は、表示開始後、所定時間の経過後に消去される。
【0033】
次に、表示装置400におけるパワーウィンド操作状態の表示例を説明する。
図2は、パワーウィンド操作時における表示装置400の画面上での表示の一例を示す図である。この
図2に示すように、表示装置400の表示画面には、運転席側窓の開度を表示する運転席側窓開度表示部401、助手席側窓の開度を表示する助手席側窓開度表示部402、右後部座席側窓の開度を表示する右後部座席側窓開度表示部403、左後部座席側窓の開度を表示する左後部座席側窓開度表示部404が設けられている。つまり、各窓操作部101~104のうちの何れかが操作された場合や、表示装置400の表示画面の画面操作によって窓の指示開度が設定または選択される場合に、これら開度表示部401~404を表示する画面に切り替えられる。なお、図示していないが、ルーフシェードの開度を表示する開度表示部も併せて表示するようにしてもよい。また、このルーフシェードの開度を表示する開度表示部は、運転席側窓操作部101におけるルーフシェードを操作する操作スイッチが操作された場合や、表示装置400の表示画面の画面操作によってルーフシェードの指示開度が設定または選択される場合のみに表示するようになっていてもよい。
【0034】
図2に示す状態は、現在の窓の開度として、運転席側窓の開度が20%、助手席側窓の開度が50%、右後部座席側窓の開度が50%、左後部座席側窓の開度が0%の状態から、右後部座席側窓操作部103の操作スイッチが開放操作方向に操作された場合や、表示装置400の表示画面の画面操作によって右後部座席側窓の指示開度が設定された場合を示している。このような操作が行われた場合、右後部座席側窓開度表示部403が、他の開度表示部401,402,404に比べて拡大表示され、また、窓の移動方向(
図2の場合には下降方向)の矢印が表示されるようになっている。
【0035】
-開度範囲の割り当て-
前述したように前記指示開度それぞれに対して所定の開度範囲が割り当てられている。
図3は、各指示開度それぞれに対して割り当てられた開度範囲を説明するための図である。
【0036】
この
図3に示すように、本実施形態にあっては、指示開度に対して開度範囲が割り当てられている。具体的には、指示開度0%に対して開度範囲0%~4%(0%以上4%未満)が割り当てられ、指示開度10%に対して開度範囲5%~14%(5%以上14%未満)が割り当てられ、指示開度20%に対して開度範囲15%~24%(15%以上24%未満)が割り当てられ、指示開度30%に対して開度範囲25%~34%(25%以上34%未満)が割り当てられ、指示開度40%に対して開度範囲35%~44%(35%以上44%未満)が割り当てられ、指示開度50%に対して開度範囲45%~54%(45%以上54%未満)が割り当てられ、指示開度60%に対して開度範囲55%~64%(55%以上64%未満)が割り当てられ、指示開度70%に対して開度範囲65%~74%(65%以上74%未満)が割り当てられ、指示開度80%に対して開度範囲75%~84%(75%以上84%未満)が割り当てられ、指示開度90%に対して開度範囲85%~94%(85%以上94%未満)が割り当てられ、指示開度100%に対して開度範囲95%~100%(95%以上)が割り当てられている。
【0037】
つまり、指示開度0%および指示開度100%を除く各指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の下限値が当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ小さく(本実施形態では5%だけ小さく)設定されており、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の上限値が当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ大きく(本実施形態では4%だけ大きく)設定されている。このため、本発明でいう「規定された複数の指示開度」は、前記10%~90%の各指示開度が相当することになる。なお、各指示開度と各開度範囲とは一対一の対応関係で規定されている。つまり、一つの指示開度が決定されればそれに応じた開度範囲も一つに特定され、また、一つの開度範囲に対しては一つの指示開度が対応することになる。
【0038】
そして、窓の実際の開度が何れの範囲に属するものであるかに応じて現在の窓の開度(表示装置400の表示画面上に表示する現在開度)を決定するようにしている。つまり、窓の実際の開度が0%~4%の範囲内となっている場合には現在開度(表示装置400の表示画面上に表示される現在開度)を0%とし、窓の実際の開度が5%~14%の範囲内となっている場合には現在開度を10%とし、窓の実際の開度が15%~24%の範囲内となっている場合には現在開度を20%とし、窓の実際の開度が25%~34%の範囲内となっている場合には現在開度を30%とし、窓の実際の開度が35%~44%の範囲内となっている場合には現在開度を40%とし、窓の実際の開度が45%~54%の範囲内となっている場合には現在開度を50%とし、窓の実際の開度が55%~64%の範囲内となっている場合には現在開度を60%とし、窓の実際の開度が65%~74%の範囲内となっている場合には現在開度を70%とし、窓の実際の開度が75%~84%の範囲内となっている場合には現在開度を80%とし、窓の実際の開度が85%~94%の範囲内となっている場合には現在開度を90%とし、窓の実際の開度が95%~100%の範囲内となっている場合には現在開度を100%として決定するようにしている。このようにして窓の実際の開度に応じて現在開度を決定する機能部分(例えば車両制御ECU200において構築される機能部分)によって、本発明でいう現在開度決定部(開度検知部が検知した窓の開度が属する開度範囲に含まれている指示開度を現在開度として決定する現在開度決定部)が構成されている。
【0039】
実際の窓の開閉動作にあっては、窓の閉鎖動作(上昇動作)が行われる場合と、窓の開放動作(下降動作)が行われる場合とで、窓の停止位置にずれが発生することになる。具体的には、窓の閉鎖動作にあっては、窓の開度が指示開度に達した時点で窓の停止動作が開始され、その後、窓の慣性によって僅かに上昇移動(閉鎖方向へ移動)した後、窓が停止することになる。これに対し、窓の開放動作にあっては、窓の開度が指示開度に達した時点で窓の停止動作が開始され、その後、窓の慣性によって僅かに下降移動(開放方向へ移動)した後、窓が停止することになる。このような状況はルーフシェードの開閉動作においても同様に生じる。
【0040】
従来技術にあっては、指示開度に達してからの僅かな窓の移動に起因し、同じ指示開度であっても(窓の閉鎖動作での指示開度と窓の開放動作での指示開度とが同じであっても)実際の窓の停止位置が互いに異なって、各停止位置(実際の開度)が属する開度範囲が互いに異なるものとなっている場合には、窓の閉鎖動作および窓の開放動作の何れかにおいて指示開度とは異なる開度が表示画面上に表示される場合があった。このような状況は、乗員に違和感を与えてしまうことになり、好ましくない。
【0041】
具体的には、例えば、
図4に示すように各指示開度と各開度範囲との関係が規定されている場合(指示開度と開度範囲の下限値とを一致させた従来技術の場合)には、指示開度が40%である閉鎖動作が行われた際、停止後の窓の開度が39%となって表示画面上に30%と表示されてしまう場合がある。このような状況が発生した場合、その後、開度を40%とするように窓の開閉指示操作(開放側への指示操作)を行ったとしても窓が殆ど動かない状況を招いてしまうことになり、このような状況も乗員に違和感を与えてしまうことになる。
【0042】
これに対し、本実施形態にあっては、窓の閉鎖動作が行われる場合と窓の開放動作が行われる場合とで窓の停止位置にずれが発生する状況であっても、前述したように規定された複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の下限値は当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値(本実施形態にあっては5%)だけ小さく、前記開度範囲の上限値は当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値(本実施形態にあっては4%)だけ大きく設定されている。このため、窓の閉鎖動作および窓の開放動作の何れにおける指示開度に対する開度のずれ量も当該指示開度に割り当てられている開度範囲内に収めることが可能となり、現在開度決定部によって決定される現在開度(検知した窓の開度が属する開度範囲に含まれている指示開度として決定された現在開度)は指示開度に一致することになる。つまり、乗員が指示した指示開度と表示装置400の表示画面上に表示される開度とが一致することになる。
【0043】
例えば、指示開度が40%に指示された窓の閉鎖動作が行われた場合に、窓の停止位置が38%にずれた(2%のずれが発生した)場合であっても、現在開度決定部によって決定される現在開度は40%となり、この現在開度が表示装置400の表示画面上に表示されることになって、指示開度に一致する。また、指示開度が40%に指示された窓の開放動作が行われた場合に、窓の停止位置が42%にずれた(2%のずれが発生した)場合であっても、現在開度決定部によって決定される現在開度は40%となり、この現在開度が表示装置400の表示画面上に表示されることになって、この場合も指示開度に一致する。このように、窓の閉鎖動作が行われる場合と窓の開放動作が行われる場合とで窓の停止位置にずれが発生する状況であっても、窓の閉鎖動作および窓の開放動作の何れにおける指示開度に対する開度のずれ量も当該指示開度に割り当てられている開度範囲内に収めることが可能となり、乗員が指示した指示開度と表示装置400の表示画面上に表示される開度とが一致することになる。
【0044】
そして、このように指示開度と表示装置400の表示画面上に表示される開度とが一致することにより、この状態から更に窓の開閉指示操作を行った場合に、窓が殆ど動かないといった状況を招くこともなくなり、乗員に違和感を与えてしまうことを抑制する窓の自動開閉動作を実現することができる。
【0045】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0046】
例えば、前記実施形態では、4枚のドアそれぞれに設けられた窓の自動開閉動作、および、屋根部分に設けられたルーフシェードの自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ドアに設けられた窓の自動開閉動作のみを行う車両の窓開閉装置として適用することも可能である。また、自動開閉動作が行われる窓の枚数は4枚に限定されるものではない。
【0047】
また、前記実施形態にあっては、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲としては
図3に示すものとした。つまり、指示開度0%および指示開度100%を除く各指示開度に対して5%だけ小さい値を開度範囲の下限値とし、当該各指示開度に対して4%だけ大きい値を開度範囲の上限値とした。本発明はこれに限定されるものではなく、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の下限値が当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ小さく、複数の指示開度それぞれに対して割り当てられている開度範囲の上限値が当該開度範囲に含まれる指示開度よりも所定値だけ大きく設定されておればよい。
【0048】
また、前記実施形態では、指示開度を10%間隔に区切った開度として規定していた。本発明は、これに限らず、指示開度を10%未満の間隔に区切った開度として規定してもよいし、10%を超える間隔に区切った開度として規定してもよい。
【0049】
また、前記実施形態にあっては、窓の閉鎖動作および開放動作に関わりなく指示開度を目標開度として窓の開閉動作を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、指示開度が同じであっても、窓の閉鎖動作と開放動作とで目標開度を異ならせるようにしてもよい。例えば、窓の閉鎖動作が行われる場合には、指示開度に対して所定量(例えば2%程度)だけ加算した開度(大きめの開度)を目標開度として設定し、窓の開放動作が行われる場合には、指示開度に対して所定量(例えば2%程度)だけ減算した開度(小さめの開度)を目標開度として設定するようにしてもよい。これにより、指示開度に対する開度のずれ量をより小さくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、乗員の操作による指示開度に従って窓の自動開閉動作を行う車両の窓開閉装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
100 窓開閉装置
101 運転席側窓操作部
102 助手席側窓操作部
103 右後部座席側窓操作部
104 左後部座席側窓操作部
200 車両制御ECU
301 運転席側窓のモータ制御ECU
302 助手席側窓のモータ制御ECU
303 右後部座席側窓のモータ制御ECU
304 左後部座席側窓のモータ制御ECU
305 ルーフシェードのモータ制御ECU