(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
F24F 11/35 20180101AFI20230920BHJP
F24F 3/048 20060101ALI20230920BHJP
F24F 13/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
F24F11/35
F24F3/048
F24F13/00
(21)【出願番号】P 2020006093
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】加茂 英
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204873(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154718(WO,A1)
【文献】特開2013-133945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 3/044、3/048
F24F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の屋内空間を空調対象として空調を行う全館空調システムを備え、
前記全館空調システムは、空調空気を生成する空調装置と、その空調装置により生成された空調空気を前記各屋内空間へ分配供給する複数の給気通路とを有しており、
停電時には自家発電装置により発電される発電電力が前記空調装置に供給され、その発電電力により前記空調装置が運転されるようになっている建物であって、
前記複数の屋内空間のうち一部の屋内空間は、停電時における前記空調装置による空調対象として定められた停電時空調空間となっており、それ以外の屋内空間は停電時非空調空間となっており、
前記各給気通路のうち少なくとも前記停電時非空調空間に通じる給気通路に対して設けられ、その給気通路を通じた空調空気の供給を遮断する遮断手段と、
停電時において、前記停電時非空調空間への空調空気の供給を遮断するよう前記遮断手段を制御するとともに、その遮断状態において前記空調装置を運転させることで前記停電時空調空間にのみ空調空気を供給させる制御手段と、
を備えることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記空調装置には、分岐チャンバを介して複数の空調ダクトが接続されており、
前記複数の空調ダクトにより前記各給気通路がそれぞれ形成されており、
前記遮断手段は、前記分岐チャンバの内部に設けられ、前記分岐チャンバ内から前記給気通路への空調空気の流入口を閉鎖する閉鎖手段であることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記遮断手段は、前記各給気通路ごとに設けられており、
前記各屋内空間のうち、いずれを前記停電時空調空間とするか設定するための設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全館空調システムを備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物には、共通の空調装置により複数の部屋の空調を行う全館空調システムが設けられている場合がある(例えば、特許文献1参照)。全館空調システムでは、空調装置により生成される空調空気が空調対象である各部屋に常時ダクトを通じて供給されるようになっており、それにより、それら供給される空調空気により各部屋の空調が常時行われるようになっている。このため、全館空調システムが設けられた建物では、建物内全体を常時快適な温度に保つことが可能となっている。
【0003】
ところで、建物には、ソーラパネル等の自家発電装置が設けられている場合がある。かかる建物では、商用電源から供給される商用電力に加え、自家発電装置による発電電力により、建物内の各機器、すなわち空調装置を含む各機器が運転されるようになっている。
【0004】
また、かかる建物では、停電が発生した場合、つまり建物への商用電力の供給が停止された場合、建物内の各機器が自家発電装置の発電電力(のみ)により運転(つまり自立運転)されることになる。したがって、停電発生時には、空調装置(ひいては全館空調システム)が自家発電装置の発電電力によって運転されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、全館空調システムでは、共通の空調装置により複数の部屋の空調が行われるため、空調装置の運転に伴う電力消費が比較的大きくなることが想定される。このため、停電時において、自家発電装置による発電電力により空調装置を運転させ全館空調を行う場合には、電力不足が生じて空調装置の運転が早く停止してしまうことが想定される。したがって、全館空調システムが設けられた建物では、停電が発生した場合、長期にわたり快適な温度で過ごすのが難しいと考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、全館空調システムが設けられた建物において、停電時に、比較的長期間にわたり快適な温度で過ごすことを可能とすることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物は、複数の屋内空間を空調対象として空調を行う全館空調システムを備え、前記全館空調システムは、空調空気を生成する空調装置と、その空調装置により生成された空調空気を前記各屋内空間へ分配供給する複数の給気通路とを有しており、停電時には自家発電装置により発電される発電電力が前記空調装置に供給され、その発電電力により前記空調装置が運転されるようになっている建物であって、前記複数の屋内空間のうち一部の屋内空間は、停電時における前記空調装置による空調対象として定められた停電時空調空間となっており、それ以外の屋内空間は停電時非空調空間となっており、前記各給気通路のうち少なくとも前記停電時非空調空間に通じる給気通路に対して設けられ、その給気通路を通じた空調空気の供給を遮断する遮断手段と、停電時において、前記停電時非空調空間への空調空気の供給を遮断するよう前記遮断手段を制御するとともに、その遮断状態において前記空調装置を運転させることで前記停電時空調空間にのみ空調空気を供給させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、複数の屋内空間のうち、一部の屋内空間が停電時における空調対象として定められた停電時空調空間となっており、それ以外の屋内空間は停電時非空調空間となっている。また、各屋内空間へ空調空気を供給する複数の給気通路のうち、少なくとも停電時非空調空間に通じる給気通路に対しては、当該給気通路を通じた空調空気の供給を遮断する遮断手段が設けられている。そして、停電時においては、停電時非空調空間への空調空気の供給が遮断手段により遮断され、その遮断状態において空調装置が運転される。この場合、空調装置より停電時空調空間にのみ空調空気が供給されるため、停電時において一部の屋内空間(停電時空調空間)のみ空調を行うことが可能となる。そのため、停電時において空調負荷の低減を図ることができ、その結果、停電時において空調に伴う電力消費の低減を図ることができる。これにより、停電時において自家発電装置の発電電力により長期にわたり空調を行うことが可能となる。そのため、停電時において停電時空調空間にて過ごすことで、比較的長期にわたり快適な温度で過ごすことが可能となる。
【0010】
第2の発明の建物は、前記空調装置には、分岐チャンバを介して複数の空調ダクトが接続されており、前記複数の空調ダクトにより前記各給気通路がそれぞれ形成されており、前記遮断手段は、前記分岐チャンバの内部に設けられ、前記分岐チャンバ内から前記給気通路への空調空気の流入口を閉鎖する閉鎖手段であることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、遮断手段を分岐チャンバ内部に設けることができる。この場合、遮断手段を複数備える場合に、それら複数の遮断手段を分岐チャンバ内に集約して配置することができる。そのため、遮断手段の設置作業を容易とすることができる等の利点を得ることができる。
【0012】
第3の発明の建物は、前記遮断手段は、前記各給気通路ごとに設けられており、前記各屋内空間のうち、いずれを前記停電時空調空間とするか設定するための設定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
停電時に居住者が過ごすことになる屋内空間は、居住者の暮らし方等によって異なることが考えられる。その点、上記の構成によれば、停電時に空調を行う屋内空間を設定することが可能であるため、停電時において居住者の滞在する屋内空間に合わせて空調を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】建物に設けられた全館空調システムの構成を示す図。
【
図5】寝室及び廊下に通じる各空調ダクトのダクト接続口が閉鎖された状態における分岐チャンバの内部構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1は、建物における給電経路を示す図である。
【0016】
図1に示すように、住宅等の建物10には、分電盤11が設けられている。分電盤11には、商用電源(系統電源)から引き込み線12を介して商用電力が供給される。
【0017】
建物10には、太陽光発電装置14(ソーラパネル)が設けられている。太陽光発電装置14は、建物10の屋根上に設置され、太陽光が照射されることにより発電を行うものである。この太陽光発電装置14が自家発電装置に相当する。太陽光発電装置14により発電された直流電力はパワーコンディショナ15において交流電力に変換される。
【0018】
太陽光発電装置14は電力線16を介して切替装置17と接続されている。切替装置17には、2つの電力線18,19が接続されている。これら各電力線18,19のうち、電力線18には分電盤11が接続され、電力線19には建物10内の電気機器Eが接続されている。
【0019】
切替装置17は、電力線16を各電力線18,19のうちいずれの電力線と接続するかを切り替えるものである。つまり、切替装置17は、電力線16を電力線18と接続する第1状態と、電力線16を電力線19と接続する第2状態とに切替可能となっている。切替装置17が第1状態とされている場合には、電力線16と電力線18とが接続されるため、太陽光発電装置14により発電された発電電力が各電力線16,18を介して分電盤11に供給される。したがって、この場合、分電盤11には、商用電源からの商用電力に加え、太陽光発電装置14による発電電力が供給される。なお、切替装置17は、通常は第1状態とされている。
【0020】
分電盤11には、複数の分岐電力線21が接続されている。それら各分岐電力線21には建物10内に設けられた各電気機器Eが接続されている。これにより、切替装置17が第1状態とされている場合には、分電盤11に供給される商用電力及び太陽光発電装置14による発電電力が分電盤11より分岐電力線21を介して各電気機器Eに供給される。なお、各電気機器Eには、照明機器や家電機器、空調装置31等が含まれている。
【0021】
切替装置17が第2状態とされている場合には、電力線16が電力線19と接続されるため、太陽光発電装置14により発電された発電電力が各電力線16,19を介して電気機器Eに供給される。詳しくは、電力線19には、建物10内の各電気機器Eのうち一部の電気機器E(のみ)が接続されており、そのため、太陽光発電装置14による発電電力は当該一部の電気機器Eにのみ供給される。また、当該一部の電気機器Eには空調装置31が含まれている。
【0022】
また、切替装置17が第2状態とされている場合には、太陽光発電装置14と分電盤11との接続が遮断された状態となっており、ひいては太陽光発電装置14と商用電源との接続が遮断された状態となっている。
【0023】
本建物10では、通常時においては切替装置17が第1状態とされている一方、停電が発生した場合、つまり商用電源から分電盤11への商用電力の供給が停止された場合には、切替装置17が第2状態とされるようになっている。そのため、本建物10では、停電時に、太陽光発電装置14による発電電力を電力線16,19を介して一部の電気機器Eに供給することで、それら一部の電気機器Eを運転(稼働)させることが可能となっている。つまり、一部の電気機器Eについては太陽光発電装置14の発電電力による自立運転が可能となっている。
【0024】
また、切替装置17が第2状態とされている場合に、太陽光発電装置14による発電電力を上記一部の電気機器Eに供給するための各電力線16,19により自立給電ラインが構成されている。
【0025】
建物10には、コントローラ23が設けられている。コントローラ23は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。コントローラ23には、分電盤11が接続されている。分電盤11には、当該分電盤11に商用電力が供給されているか否かを検知する検知手段(図示略)が設けられている。この検知手段は、要するに、建物10において停電が発生しているか否かを検知する停電検知手段となっている。コントローラ23には、停電検知手段による検知結果が分電盤11より逐次入力される。
【0026】
コントローラ23には、切替装置17が接続されている。コントローラ23は、分電盤11から入力される停電検知手段の検知結果に基づき、切替装置17を第1状態又は第2状態に切り替える。
【0027】
ここで、本建物10には、空調装置31を有して構成される全館空調システム30が設けられている。全館空調システム30は、共通の空調装置31により複数の屋内空間の空調を行う空調システムである。そこで、以下では、全館空調システム30の構成について
図2に基づいて説明する。
図2は、建物10に設けられた全館空調システム30の構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、建物10には、屋内空間として、リビング25と、寝室26と、廊下27と、空調装置31が設置される機械室28(空調機械室)とが設けられている。これらの屋内空間25~28はいずれも建物10の一階部分に設けられている。また、これらの屋内空間25~28の床部の下方には床下空間29が形成されている。
【0029】
全館空調システム30は、建物10の一階部分に設けられ、各屋内空間25~28のうち、リビング25、寝室26及び廊下27を空調対象として空調を行うものとなっている。したがって、これらの屋内空間25~27が「空調対象となる複数の屋内空間」に相当する。全館空調システム30は、空調空気(冷気及び暖気)を生成する空調装置31と、空調装置31に接続された分岐チャンバ32と、分岐チャンバ32に接続された複数の空調ダクト33とを備えている。
【0030】
空調装置31は、冷房及び暖房機能を有する室内機として構成されている。空調装置31は、機械室28の空気を取り込んで、その取り込んだ空気を温度調整することで空調空気を生成する。分岐チャンバ32は、床下空間29に設置され、空調装置31の真下に配置されている。空調装置31は、この分岐チャンバ32を介して各空調ダクト33と接続されている。
【0031】
各空調ダクト33は、床下空間29に配設され、床下空間29において各屋内空間25~27に向けて延びている。各空調ダクト33は、各屋内空間25~27の床部に設けられた吹出口34とそれぞれ接続されている。本実施形態では、吹出口34がリビング25及び寝室26においては複数設けられ、廊下27においては1つだけ設けられている。
【0032】
上記の構成によれば、空調装置31により生成された空調空気が分岐チャンバ32と各空調ダクト33とを通じて各吹出口34にそれぞれ供給される。そして、それら供給された空調空気が各吹出口34より屋内空間25~27に吹き出され、その吹き出された空調空気により各屋内空間25~27の空調(冷房及び暖房)が行われるようになっている。
【0033】
上述したように、全館空調システム30では、空調装置31により生成された空調空気が複数の屋内空間25~27にそれぞれ供給されるようになっている。換言すると、共通の空調装置31により複数の屋内空間25~27がそれぞれ空調されるようになっている。そのため、全館空調システム30では、空調装置31の運転に伴う消費電力が比較的大きくなることが想定される。
【0034】
その一方で、本建物10では、上述したように、停電時に、太陽光発電装置14による発電電力により空調装置31を運転させることとしている。このため、停電時に、空調装置31により各屋内空間25~27の空調をそれぞれ行うとなると、電力不足が生じて空調装置31の運転が早く停止してしまうことが想定される。その場合、長期にわたって空調装置31による空調を行うことが難しくなってしまう。
【0035】
そこで、本実施形態では、そのような点に鑑み、停電時において、太陽光発電装置14による発電電力により空調装置31を運転させる場合には、空調対象である各屋内空間25~27のうち一部の屋内空間にのみ空調空気を供給し、その一部の屋内空間のみ空調を行う停電時空調を実施することとしている。この場合、空調負荷の低減を図ることができるため、停電時において空調に伴う電力消費の低減を図ることができる。そのため、停電時において太陽光発電装置14による発電電力により比較的長期にわたり空調を行うことが可能となる。そこで、以下では、停電時空調を行うための構成について
図3に基づいて説明する。
図3は、分岐チャンバ32の内部構成を示す断面図である。
【0036】
図3に示すように、分岐チャンバ32には、各空調ダクト33が接続されるダクト接続口38が設けられている。これら各ダクト接続口38には空調ダクト33がそれぞれ接続されている。また、分岐チャンバ32には、空調装置31に接続される接続口39も設けられている。なお、ダクト接続口38は、分岐チャンバ32内から空調ダクト33内(給気通路)への空調空気の流入口に相当する。
【0037】
分岐チャンバ32には、各ダクト接続口38ごとに、ダクト接続口38を閉鎖可能なシャッタ装置36が設けられている。シャッタ装置36は、分岐チャンバ32に回転可能に軸支されたシャッタ板36aと、シャッタ板36aを回転駆動する駆動部(図示略)とを有している。シャッタ装置36では、駆動部によりシャッタ板36aを回転させることでダクト接続口38を開閉するようになっている。なお、シャッタ装置36が遮断手段及び閉鎖手段に相当する。
【0038】
上記の構成では、シャッタ装置36によりダクト接続口38が開放された状態では、空調装置31より接続口39を通じて分岐チャンバ32に流れ込む空調空気が分岐チャンバ32から上記開放されたダクト接続口38を通じて空調ダクト33内に流れ込む。そして、その空調空気は当該空調ダクト33を通じて吹出口34へ供給され、その吹出口34より屋内空間25~27に吹き出される(供給される)。
【0039】
その一方、シャッタ装置36によりダクト接続口38が閉鎖された状態では、空調装置31より分岐チャンバ32に流れ込む空調空気が分岐チャンバ32から空調ダクト33に流れ込むことが禁止されている。この場合、当該空調ダクト33を通じて空調空気が吹出口34へ供給されることが禁止され、ひいてはその吹出口34より屋内空間に吹き出される(供給される)ことが禁止される。
【0040】
このように、シャッタ装置36によりダクト接続口38が開閉されることで、空調ダクト33を通じた空調空気の屋内空間25~27への供給が許可又は遮断(禁止)されるようになっている。また、通常時においては、各シャッタ装置36によりすべてのダクト接続口38が開放された状態となっている(
図3の状態)。このため、通常時においては、すべての空調ダクト33を通じて空調空気が各屋内空間25~27に供給され、それら各屋内空間25~27がそれぞれ(すべて)空調されるようになっている。つまり、全館空調されるようにされている。
【0041】
空調装置31は、上述したコントローラ23と接続されている(
図1参照)。コントローラ23は、空調装置31の運転制御を行う。また、コントローラ23には各シャッタ装置36が接続されている。コントローラ23は、建物10において停電が発生しているか否かに基づき、各シャッタ装置36を開閉制御する。なお、コントローラ23が制御手段に相当する。
【0042】
コントローラ23には空調装置31用のリモコン24が接続されている。リモコン24は、空調装置31の運転に関する各種設定を行うものである。リモコン24により設定された情報は逐次コントローラ23に入力される。また、本全館空調システム30では、上述したように、停電時に一部の屋内空間のみ空調を行う停電時空調が実施されるようになっている。そして、この停電時空調の際、各屋内空間25~27のうちいずれの屋内空間を空調するか、つまり空調対象の屋内空間(停電時空調空間)をいずれにするかをリモコン24により設定することが可能となっている。リモコン24により設定された停電時空調空間の情報はコントローラ23に入力され、内蔵メモリ等に記憶される。また、本実施形態では、各屋内空間25~27のうちいずれか1つの屋内空間を停電時空調空間として設定可能となっている。
【0043】
続いて、コントローラ23により実行される制御処理の内容について
図4に示すフローチャートに基づき説明する。なお、本処理は所定の周期で繰り返し実行される。
【0044】
図4に示すように、まずステップS11では、分電盤11から入力される停電検知手段の検知結果に基づいて、建物10において停電が発生しているか否かを判定する。停電が生じていない場合にはステップS12に進み、切替装置17を第2状態から第1状態に切り替える。これにより、電力線16と電力線18とが接続された状態となる。この場合、商用電源からの商用電力と太陽光発電装置14による発電電力とがそれぞれ分電盤11を介して空調装置31に供給される。
【0045】
続くステップS13では、各シャッタ装置36すべてに開信号を出力することで、それらシャッタ装置36により分岐チャンバ32の各ダクト接続口38をすべて開放させる。
【0046】
ステップS14では、空調装置31の空調運転を実行させる。この場合、空調装置31により生成された空調空気は空調装置31から分岐チャンバ32を介して各空調ダクト33に流れ込み、それら各空調ダクト33を通じて各屋内空間25~27にそれぞれ供給される。これにより、各屋内空間25~27がそれぞれ空調される(全館空調される)。なお、すでに空調装置31の運転が実行されている場合には、その運転をそのまま継続する。その後、本処理を終了する。
【0047】
先のステップS11において、建物10にて停電が発生している場合にはステップS14に進み、切替装置17を第1状態から第2状態に切り替える。これにより、電力線16と電力線19とが接続された状態となる。この場合、太陽光発電装置14による発電電力が分電盤11を介さず、電力線19を通じて空調装置31に供給される。
【0048】
ステップS15では、停電時空調モード(個別空調モード)が設定されているか否かを判定する。ここで、本全館空調システム30では、停電時における空調モードとして、通常空調モードと、停電時空調モードとが用意されており、停電時においてこれら各モードのうちいずれのモードで空調装置31を実行させるか予め設定することが可能となっている。停電時空調モードが設定されていない場合、つまり通常時空調モードが設定されている場合には、ステップS13及びステップS14の各処理を行う。つまり、この場合、通常時における全館空調を行う。その後、本処理を終了する。
【0049】
停電時空調モードが設定されている場合にはステップS16に進み、停電時空調を行う屋内空間(停電時空調空間)を特定する。この特定は、コントローラ23の内蔵メモリに記憶されている停電時空調空間の情報に基づき行う。ここでは、例えば停電時空調空間(の情報)としてリビング25が記憶されているものとする。その場合、停電時空調を行う屋内空間としてリビング25が特定される。なお、各屋内空間25~27のうち、停電時空調空間以外の屋内空間は非停電時空調空間である。ここでは、リビング25が停電時空調空間に相当するため、寝室26及び廊下27がそれぞれ非停電時空調空間に相当する。
【0050】
ステップS17では、分岐チャンバ32の各ダクト接続口38のうち、非停電時空調空間に通じる各空調ダクト33のダクト接続口38に設けられるシャッタ装置36に対して閉信号を出力する。これにより、それらシャッタ装置36によりダクト接続口38が閉鎖される。この場合、上記各空調ダクト33を通じた空調空気の非停電時空調空間への供給が遮断(禁止)される。また、ここでは、寝室26及び廊下27が非停電時空調空間となっているため、それら寝室26及び廊下27に通じる各空調ダクト33のダクト接続口38がシャッタ装置36により閉鎖された状態となる。
図5には、かかる状態における分岐チャンバ32の内部構成が示されている。
【0051】
ステップS18では、空調装置31の運転を実行させる。停電した直後は空調装置31の運転が停止されることがあり、その場合には、空調装置31の運転が再開されることになる。また、すでに空調装置31の運転が実行されている場合には、その運転がそのまま継続されることになる。ここで、上述したステップS17の処理により、寝室26及び廊下27に通じる各空調ダクト33のダクト接続口38がシャッタ装置36により閉鎖された状態となっている。そのため、この場合、空調装置31により生成された空調空気は空調装置31から分岐チャンバ32を介してリビング25に通じる各空調ダクト33に流れ込む。そして、その流れ込んだ空調空気は各空調ダクト33を通じてリビング25に供給される。つまり、この場合、空調空気は各屋内空間25~27のうちリビング25にのみ供給され、リビング25のみが空調(停電時空調)される。その後、本処理を終了する。
【0052】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
複数の屋内空間25~27のうち、一部の屋内空間が停電時における空調対象として定められた停電時空調空間(上記の実施形態ではリビング25)となっており、それ以外の屋内空間は停電時非空調空間(上記の実施形態では寝室26及び廊下27)となっている。また、各屋内空間25~27へ空調空気を供給する複数の給気通路(空調ダクト33)ごとに、当該給気通路を通じた空調空気の供給を遮断するシャッタ装置36が設けられている。そして、停電時においては、停電時非空調空間への空調空気の供給がシャッタ装置36により遮断され、その遮断状態において空調装置31が運転される。この場合、空調装置31より停電時空調空間にのみ空調空気が供給されるため、停電時において一部の屋内空間(停電時空調空間)のみ空調を行うことが可能となる。そのため、停電時において空調負荷の低減を図ることができ、その結果、停電時において空調に伴う電力消費の低減を図ることができる。これにより、停電時において太陽光発電装置14の発電電力により長期にわたり空調を行うことが可能となる。そのため、停電時において停電時空調空間にて過ごすことで、比較的長期にわたり快適な温度で過ごすことが可能となる。
【0054】
シャッタ装置36を分岐チャンバ32内に設け、そのシャッタ装置36により、分岐チャンバ32内から空調ダクト33内(給気通路)への空調空気の流入口となるダクト接続口38を閉鎖するようにした。そして、その閉鎖により、空調ダクト33内を通じた屋内空間25~27への空調空気の供給を遮断するようにした。この場合、複数のシャッタ装置36を分岐チャンバ32内に集約して配置することができる。そのため、シャッタ装置36の設置作業を容易とすることができる等の利点を得ることができる。
【0055】
停電時に居住者が過ごすことになる屋内空間は、居住者の暮らし方等によって異なることが考えられる。その点、停電時に空調を行う屋内空間(つまり停電時空調空間)をリモコン24により設定可能としたため、停電時において居住者の滞在する屋内空間に合わせて空調を行うことが可能となる。
【0056】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、遮断手段としてのシャッタ装置36を分岐チャンバ32内部に設けたが、遮断手段は空調ダクト33内や吹出口34に設けるようにしてもよい。要するに、空調ダクト33内を通じた空調空気の供給が遮断できるのであれば、その設置箇所は任意であってよい。
【0058】
・上記実施形態では、空調対象である各屋内空間25~27のうち、いずれの屋内空間を停電時空調空間とするかをリモコン24により設定可能としたが、かかる設定を不能な構成としてもよい。この場合、例えば、各屋内空間25~27のうちリビング25を停電時空調空間として固定することが考えられる。また、この場合には、寝室26及び廊下27が停電時非空調空間として固定されるため、シャッタ装置36をこれら寝室26及び廊下27に通じる空調ダクト33に対してのみ設けるようにしてもよい。つまり、リビング25に通じる空調ダクト33に対してはシャッタ装置36を不具備としてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、停電時に発電を行う自家発電装置として太陽光発電装置14を用いた場合について説明したが、自家発電装置として、燃料電池等、太陽光発電装置以外のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…建物、14…自家発電装置としての太陽光発電装置、23…制御手段としてのコントローラ、24…設定手段としてのリモコン、25…屋内空間としてのリビング、26…屋内空間としての寝室、27…屋内空間としての廊下、30…全館空調システム、31…空調装置、32…分岐チャンバ、33…空調ダクト、36…遮断手段及び閉鎖手段としてのシャッタ装置。