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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20230920BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230920BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20230920BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G01N21/956 A
G01N21/956 B
G01N21/84 E
G01B11/30 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012529
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117185
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石渡 研志
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-277399(JP,A)
【文献】特開2013-210383(JP,A)
【文献】特開2003-59817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0115473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
G01B 11/00-G01B 11/30
H01L 21/64-H01L 21/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状に並んだ複数の光源を有し、前記複数の光源から生成された光を含む照明光で、基板と前記基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含む基準試料、及び、検査試料を照明する照明装置と、
ライン状に並んだ複数の画素を有し、前記照明光が、前記基準試料及び前記検査試料で反射した反射光を受光し、各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の出力値を出力するラインセンサと、
前記照明光または前記反射光の波長を、前記ラインセンサの出力の変化がリニアである波長変動範囲においてシフトさせる波長シフト手段と、
前記検査試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を、前記基準試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を用いて補正し、補正した出力値から前記検査試料を検査する処理部と、
を備え
前記ラインセンサは、
前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記照明光が前記基準試料で反射した前記反射光を受光した場合に、前記各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の第1出力値及び第2出力値を出力し、
前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記照明光が前記検査試料で反射した前記反射光を受光した場合に、前記各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の第3出力値及び第4出力値を出力し、
前記処理部は、
前記各画素における所定の出力値と前記第1出力値との第1差、に対する、前記所定の出力値と前記第2出力値との第2差、の比を算出するとともに、
前記第3出力値及び前記第4出力値を、前記比を用いて補正することにより、均一な波長の前記照明光で前記検査試料を照明した場合の前記各画素の前記補正した出力値を導出する、
検査装置。
【請求項2】
前記波長シフト手段は、前記照明光の光路上のバンドパスフィルタに取り付けられた支持部、前記光源の温度を調整する温度調整器、及び、前記光源に流れる電流値を変化させる電流調整器のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
ライン状に並んだ複数の光源を有し、前記複数の光源から生成された光を含む照明光で、基板と前記基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含む基準試料、及び、検査試料を照明する照明装置と、
ライン状に並んだ複数の画素を有し、前記照明光が、前記基準試料及び前記検査試料で反射した反射光を受光し、各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の出力値を出力するラインセンサと、
前記照明光または前記反射光の波長を、前記ラインセンサの出力の変化がリニアである波長変動範囲においてシフトさせる波長シフト手段と、
前記検査試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を、前記基準試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を用いて補正し、補正した出力値から前記検査試料を検査する処理部と、
を備え
前記複数の画素は、第1ライン状画素であり、
前記ラインセンサは、前記第1ライン状画素に平行にライン状に並んだ複数の画素を含む第2ライン状画素をさらに有し、
前記波長シフト手段は、前記照明光の反射角度を変える前の前記反射光を受光する前記第1ライン状画素と、前記照明光の反射角度を変えた後の前記反射光を受光する前記第2ライン状画素と、の間の間隔であり、
前記第1ライン状画素は、前記照明光が前記基準試料及び前記検査試料で反射した前記反射角度を変える前の前記反射光を受光した場合に、前記各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の第1出力値及び第3出力値を出力し、
前記第2ライン状画素は、前記照明光が前記基準試料及び前記検査試料で反射した前記反射角度を変えた後の前記反射光を受光した場合に、前記各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の第2出力値及び第4出力値を出力し
前記処理部は、
前記各画素における所定の出力値と前記第1出力値との第1差、に対する、前記所定の出力値と前記第2出力値との第2差、の比を算出するとともに、
前記第3出力値及び前記第4出力値を、前記比を用いて補正することにより、均一な波長の前記照明光で前記検査試料を照明した場合の前記各画素の前記補正した出力値を導出する、
検査装置。
【請求項4】
前記第1ライン状画素の前記各画素の配置は、前記第2ライン状画素の前記各画素の配置に対して、ハーフピッチずれている、
請求項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1出力値、前記第2出力値、前記第3出力値、前記第4出力値、及び、前記比を記憶するメモリをさらに備えた、
請求項1~4のいずれか1項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関するものであり、例えば、半導体ウェハのマクロ検査及び分光撮像検査における検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単色光LEDを一方向にライン状に複数個並べたライン型照明装置を備える検査装置が知られている。ライン型照明装置では、用いる複数個の単色光LEDを、その単色光LEDが生成する光の波長によって選別し、ライン型照明装置の照明光の波長を均一化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-161909号公報
【文献】特表2014-513399号公報
【文献】特表2001-518208号公報
【文献】特開2015-127653号公報
【文献】特開2015-102442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライン型照明装置を用いたマクロ検査装置では、照明光の波長の僅かな差(1nm以下)が検出誤差を生じさせ、検査の課題となっている。ライン型照明装置に用いる単色光LEDを、生成される光の波長によって選別しても、±1nm以下の範囲の選別は、単色光LEDの生産数が限られているため、現実的には行えない。
【0005】
ライン型照明装置の複数の単色光LEDが生成する光の波長のバラツキにより、検査試料を照明する照明光は、波長のバラツキを有している。そして、検査試料であるパターン構造もしくは薄膜構造が設けられたウェハは、僅かな波長の違いにより反射率が異なる。このため、照明光で検査試料を照明した場合に、波長のばらつきの影響を受けた画像が出力される。
【0006】
図1(a)は、検査試料を照明する照明光を例示したグラフであり、横軸は、検査試料の試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示し、(b)は、照明光が検査試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
【0007】
図1(a)に示すように、検査試料を照明する照明光は、照明装置における複数の光源が生成する光の波長のばらつきにより、検査試料の試料面において、波長のばらつきを示している。検査試料は、照明光の僅かな波長の違いにより反射率が異なるため、図1(b)に示すように、ラインセンサにおける複数の画素の出力値は、照明光の波長のばらつきの影響を受けた出力となる。なお、図1(b)に示すような出力のばらつきは、シェーディング補正等の明るさの補正で除去することは意味をなさない。その理由は、例えば、1種類の薄膜構造が設けられたウェハを用いて、明るさ補正を行ったとしても、出力ばらつきの原因が波長のバラツキであるため、異なる薄膜構造を持ったウェハでは、再び出力ばらつきが発生するためである。
【0008】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、照明光における波長のばらつきを補正し、波長のばらつきを低減させた照明光で照明した場合の検査試料を検査することができる検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査装置は、ライン状に並んだ複数の光源を有し、前記複数の光源から生成された光を含む照明光で、基板と前記基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含む基準試料、及び、検査試料を照明する照明装置と、ライン状に並んだ複数の画素を有し、前記照明光が、前記基準試料及び前記検査試料で反射した反射光を受光し、各画素が受光した前記反射光の反射率に基づいて、前記各画素の出力値を出力するラインセンサと、前記照明光または前記反射光の波長をシフトさせる波長シフト手段と、前記検査試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を、前記基準試料における前記波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の前記出力値を用いて補正し、補正した出力値から前記検査試料を検査する処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、照明光における波長のばらつきを補正し、波長のばらつきを低減させた照明光で照明した場合の検査試料を検査することができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、検査試料を照明する照明光を例示したグラフであり、横軸は、検査試料の試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示し、(b)は、照明光が検査試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
図2】実施形態1に係る検査装置を例示した図である。
図3】(a)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の基準試料を照明する照明光を例示したグラフであり、横軸は、試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示し、(b)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光が基準試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
図4】実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の検査試料を照明する照明光、並びに、導出された均一な照明光を例示したグラフであり、横軸は、試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示し、(b)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光が基準試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力、並びに、均一な照明光が基準試料で反射した反射光を受光した場合のラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
図5】実施形態1に係る検査装置において、照明光の波長が変化した場合の基準試料に形成された膜の膜厚と、反射光の輝度差を例示した図である。
図6】実施形態1に係る検査装置において、波長シフトに対するラインセンサの出力の変化を例示した図であり、横軸は、波長のシフトを示し、縦軸は、反射光の反射率を示し、(a)は、基準試料が52nmの均一な膜厚の窒化シリコンを含む場合であり、(b)は、基準試料が60nmの均一な膜厚の窒化シリコンを含む場合である。
図7】実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
図8】(a)は、実施形態1の検査方法を例示した概念図であり、(b)は、実施形態2の検査方法を例示した概念図である。
図9】(a)~(c)は、シリコンウェハ上に窒化シリコンの薄膜が形成されたウェハにおいて、窒化シリコンの膜厚を変化させたときの反射率を薄膜干渉の原理に基づいて計算したグラフであり、横軸は、窒化シリコンの膜厚を示し、縦軸は反射率を示す。
図10】(a)~(c)は、シリコンウェハ上に窒化シリコンの薄膜が形成されたウェハにおいて、窒化シリコンの膜厚を変化させたときの反射率を薄膜干渉の原理に基づいて計算したグラフであり、横軸は、窒化シリコンの膜厚を示し、縦軸は反射率を示す。
図11】実施形態2に係る検査装置を例示した図である。
図12】実施形態2に係る検査装置において、ラインセンサを例示した図である。
図13】実施形態2に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1に係る照明装置を説明する。図2は、実施形態1に係る検査装置を例示した図である。図2に示すように、検査装置1は、照明装置10、結像レンズ20、波長シフト手段30、ラインセンサ40、処理部50、メモリ60を備えている。検査装置1は、照明装置10から生成された照明光で検査試料80を照明し、検査試料80を検査する。
【0014】
ここで、検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。照明光の光軸、及び、照明光が検査試料80で反射した反射光の光軸を含む面をYZ面とする。YZ面に直交する方向をX軸方向とする。
【0015】
照明装置10は、複数の光源を有している。複数の光源は、例えば、LED(Light Emitting Diode)である。複数の光源は、ライン状に並んでいる。例えば、複数の光源は、X軸方向にライン状に並んでいる。照明装置10は、複数の光源から生成された光を含む照明光で、基準試料70及び検査試料80を照明する。
【0016】
検査試料80は、検査の対象となる試料である。検査試料80は、例えば、ウェハである。なお、検査試料80は、パターンが形成されたウェハでもよいし、パターンが形成されないウェハでもよい。また、プリント基板等のウェハ以外の試料でもよい。
【0017】
基準試料70は、検査試料80を検査する際の基準となる試料である。基準試料70は、例えば、基板と基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含んでいる。基準試料70の基板は、例えば、シリコンであり、基板上に形成された均一な膜厚の膜は、例えば、窒化シリコン膜(SiN)または酸化シリコン膜(SiO)である。なお、基板は、シリコンに限らず、他の材料を含むものでもよいし、均一な膜厚の膜は、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜に限らず、他の材料を含むものでもよい。また、均一な膜厚とは、照明光が照明される部分において、測定限界の範囲で均一な膜厚を意味する。
【0018】
結像レンズ20は、照明光が基準試料70または検査試料80で反射した反射光をラインセンサ40上に結像する。
【0019】
波長シフト手段30は、照明光または反射光の波長をシフトさせる。波長シフト手段30は、例えば、照明光の光路上のバンドパスフィルタ31に取り付けられた支持部である。支持部は、照明光の光軸に対するバンドパスフィルタ31の傾きを変える。これにより、照明光の波長をシフトさせる。
【0020】
波長シフト手段30は、光源の温度調整器でもよい。温度調整器は、例えば、複数の光源を加熱または冷却するペルチェ素子でもよいし、複数の光源の周囲に加熱流体または冷却流体を流すチラーでもよい。温度調整器は、光源の温度を調整する。これにより、照明光の波長をシフトさせる。また、波長シフト手段30は、複数の光源に流れる電流値を変化させる電流調整器でもよい。電流調整器は光源に流れる電流値を調整することにより、照明光の波長をシフトさせる。なお、波長シフト手段30が電流調整器の場合には、照明光の光量も変わるので、露光時間の調整等も合わせて行ってもよい。
【0021】
図3(a)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の基準試料を照明する照明光を例示したグラフであり、横軸は、基準試料の試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示す。
【0022】
図3(a)に示すように、基準試料70を照明する照明光は、波長をシフトさせる前及び波長をシフトさせた後の両方とも、照明装置10における複数の光源が生成する光の波長のばらつきにより、基準試料70の試料面において、波長のばらつきを示している。波長シフト手段30は、照明光の波長を、例えば、短波長側にシフトさせる。
【0023】
ラインセンサ40は、複数の画素を有している。複数の画素は、ライン状に並んでいる。例えば、複数の画素は、X軸方向に並んで配置されている。ラインセンサ40は、照明光が、基準試料70及び検査試料80で反射した反射光を受光する。ラインセンサ40は、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の出力値を出力する。
【0024】
例えば、波長シフト手段30が照明光の波長をシフトさせた場合には、ラインセンサ40は、照明光の波長をシフトさせる前及び照明光の波長をシフトさせた後の照明光が、基準試料70及び検査試料80で反射した反射光を受光する。また、波長シフト手段30が反射光の波長をシフトさせた場合には、ラインセンサ40は、照明光が基準試料70及び検査試料80で反射した反射光であって、波長がシフトする前及び波長がシフトした後の反射光を受光する。
【0025】
図3(b)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光が基準試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
【0026】
図3(b)に示すように、ラインセンサ40における複数の画素の出力値は、照明光の波長をシフトさせる前及び波長をシフトさせた後の両方とも、照明光の波長のばらつきの影響を受けた出力となる。
【0027】
具体的には、ラインセンサ40は、波長をシフトさせる前の照明光が基準試料70で反射した反射光を受光した場合に、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第1出力値を出力する。また、ラインセンサ40は、波長をシフトさせた後の照明光が基準試料70で反射した反射光を受光した場合に、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第2出力値を出力する。
【0028】
また、ラインセンサ40は、波長をシフトさせる前の照明光が検査試料80で反射した反射光を受光した場合に、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第3出力値を出力する。さらに、ラインセンサ40は、波長をシフトさせた後の照明光が検査試料80で反射した反射光を受光した場合に、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第4出力値を出力する。
【0029】
処理部50は、検査試料80における波長をシフトさせる前及び波長をシフトさせた後の出力値を、基準試料70における波長をシフトさせる前及び波長をシフトさせた後の出力値を用いて補正する。そして、処理部50は、補正した出力値から検査試料80を検査する。以下で、処理部50の補正処理を説明する。
【0030】
図4(a)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の検査試料を照明する照明光、並びに、導出された均一な照明光を例示したグラフであり、横軸は、検査試料の試料面の位置を示し、縦軸は、照明光の波長を示し、(b)は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフト手段により照明光の波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光が基準試料で反射した反射光を受光したラインセンサの出力、並びに、均一な照明光が基準試料で反射した反射光を受光した場合のラインセンサの出力を例示したグラフであり、横軸は、ラインセンサの画素番号を示し、縦軸は、ラインセンサの出力値を示す。
【0031】
図4(b)に示すように、処理部50は、所定の出力値Reを設定する。所定の出力値Reは、例えば、均一な波長の照明光が均一な膜厚の膜を有する基準試料70で反射した場合を仮定した反射光の反射率の値であり、一定値である。均一な膜厚の膜が形成された基準試料70では、照明光の波長が均一であれば、ラインセンサ40の出力値も均一な一定値になると考えられる。よって、図4(b)に示すように、所定の出力値Reを一定値とする。
【0032】
処理部50は、各画素における所定の出力値Reと第1出力値との差として、第1差(a1、a2、・・・)を算出する。また、処理部50は、所定の出力値Reと第2出力値との差として、第2差(b1、b2、・・・)を算出する。そして、処理部50は、第1差に対する第2差の比(a1:b1、a2:b2、・・・)を算出する。このように、処理部50は、均一な膜厚の膜が形成された基準試料70における均一な出力値を、図4(b)に示すような所定の出力値Reとして設定し、比(a1:b1、a2:b2、・・・)を画素毎の補正データとして、メモリ60に記憶させる。
【0033】
そして、図4(a)に示すように、処理部50は、実際に測定を行いたい検査試料80に対して、波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光による2回の撮像により、第3出力値及び第4出力値を得る。ここで、後述するように、波長の変化によるラインセンサ40の出力の変化は、微小な波長変動範囲において、リニアである。よって、処理部50は、検査試料80における第3出力値及び第4出力値を、第1差に対する第2差の比を用いて補正することにより、均一な波長の照明光で検査試料80を照明した場合の各画素の補正した出力値を導出することができる。例えば、405.0[nm]の波長の均一な照明光で検査試料80を照明した場合の補正した出力値を導出することができる。
【0034】
このように、処理部50は、基準試料70及び検査試料80について、波長をシフトさせる前及び後の2つの出力値による2枚の画像を取得し、ソフトウェア的な補正処理により、照明光の波長のばらつきを低減し、均一な波長の照明光で照明した場合の画像を得ることができる。これにより、処理部50は、補正した出力値を含む画像から検査試料80を検査することができる。
【0035】
メモリ60は、ラインセンサ40における複数の画素の各出力値を記憶する。具体的には、メモリ60は、ラインセンサ40における各画素が出力した第1出力値、第2出力値、第3出力値、第4出力値を記憶する。また、メモリ60は、各画素における所定の出力値Reと第1出力値との第1差及び所定の出力値Reと第2出力値との第2差を記憶する。さらに、メモリ60は、第1差に対する第2差の比を記憶する。処理部50が第1差、第2差、比を算出する際には、メモリ60に記憶された第1出力値、第2出力値、第3出力値、第4出力値、第1差及び第2差を用いてもよい。
【0036】
次に、波長の変化に対するラインセンサ40の出力の変化は、微小な波長変動範囲において、リニアであることを説明する。図5は、実施形態1に係る検査装置において、照明光の波長が変化した場合について、基準試料に形成された膜の膜厚と、反射光の輝度差を例示した図である。図5に示すように、所定の膜厚においては、照明光の波長の変化(403nm~407nm)に対して、反射光の輝度差は等間隔である。このことは、ラインセンサ40の出力の変化が、微小な波長変動範囲において、リニアであることを示す。
【0037】
図6は、実施形態1に係る検査装置において、波長シフトに対するラインセンサの出力の変化を例示した図であり、横軸は、波長のシフトを示し、縦軸は、反射光の反射率を示し、(a)は、基準試料が52nmの均一な膜厚の窒化シリコンを含む場合であり、(b)は、基準試料が60nmの均一な膜厚の窒化シリコンを含む場合である。図6(a)及び(b)に示すように、波長シフトに対するラインセンサ40の出力の変化は、微小な波長変動範囲において、リニアである。
【0038】
次に、実施形態1に係る検査装置を用いた検査方法を説明する。図7は、実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0039】
図7のステップS11に示すように、まず、波長をシフトさせる前の照明光で基準試料70を照明する。具体的には、ライン状に並んだ複数の光源から生成された光を含む照明光であって、波長をシフトさせる前の照明光で、基準試料70を照明する。基準試料70は、基板と基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含む。例えば、基準試料70として、均一な膜厚のノンパターンウェハを使用する。図3(a)に示すように、波長シフト手段により、波長をシフトさせる前の照明光で基準試料70を照明する。
【0040】
次に、ステップS12に示すように、基準試料70で反射した反射光を受光し、第1出力値を出力する。具体的には、ライン状に並んだ複数の画素を含むラインセンサ40で、波長をシフトさせる前の照明光が基準試料70で反射した反射光を受光する。そして、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第1出力値を出力する。すなわち、図3(b)に示すように、波長をシフトさせる前の1回目の撮像により、第1出力値を得る。
【0041】
次に、ステップS13に示すように、照明光の波長をシフトさせる。具体的には、第1出力値を出力した後で、波長シフト手段30により、照明光の波長をシフトさせる。例えば、図3(a)に示すように、照明光の波長を短波長側にシフトさせる。
【0042】
次に、ステップS14に示すように、波長をシフトさせた後の照明光で基準試料70を照明する。
【0043】
次に、ステップS15に示すように、基準試料70で反射した反射光を受光し、第2出力値を出力する。具体的には、波長をシフトさせた後の照明光が基準試料70で反射した反射光をラインセンサ40で受光する。そして、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第2出力値を出力する。すなわち、図3(b)に示すように、波長をシフトさせた後の2回目の撮像により、第2出力値を得る。
【0044】
次に、ステップS16に示すように、第1差に対する第2差の比を算出する。具体的には、処理部50は、各画素における所定の出力値Reと第1出力値との差として、第1差を算出する。それとともに、所定の出力値Reと第2出力値との差として、第2差を算出する。所定の出力値Reは、例えば、均一な波長の照明光が均一な膜厚の膜を有する基準試料70で反射した反射光の反射率の値であり、一定値である。例えば、図4(b)に示すように、各画素における所定の出力値Reと第1出力値との差として、第1差(a1、a2、・・・)を算出する。それとともに、所定の出力値Reと第2出力値との差として、第2差(b1、b2、・・・)を算出する。そして、処理部50は、第1差に対する第2差の比(a1/b1、a2/b2、・・・)を算出する。
【0045】
次に、ステップS17に示すように、波長をシフトさせる前の照明光で検査試料80を照明する。検査試料80についても、基準試料70と同様に、図3(a)に示すように、波長シフト手段により、波長をシフトさせる前の照明光で検査試料80を照明する。
【0046】
次に、ステップS18に示すように、検査試料80で反射した反射光を受光し、第3出力値を出力する。具体的には、波長をシフトさせる前の照明光が検査試料80で反射した反射光をラインセンサ40で受光する。そして、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第3出力値を出力する。すなわち、図3(b)の基準試料70の場合と同様に、波長をシフトさせる前の検査試料80の1回目の撮像により、第3出力値を得る。
【0047】
次に、ステップS19に示すように、照明光の波長をシフトさせる。具体的には、第3出力値を出力した後で、波長シフト手段30により、照明光の波長をシフトさせる。例えば、図3(a)に示すように、照明光の波長を短波長側にシフトさせる。
【0048】
次に、ステップS20に示すように、波長をシフトさせた後の照明光で検査試料80を照明する。
【0049】
次に、ステップS21に示すように、検査試料80で反射した反射光を受光し、第4出力値を出力する。具体的には、波長をシフトさせた後の照明光が検査試料80で反射した反射光をラインセンサ40で受光する。そして、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第4出力値を出力する。すなわち、図3(b)の基準試料70の場合と同様に、波長をシフトさせた後の検査試料80の2回目の撮像により、第4出力値を得る。
【0050】
次に、ステップS22に示すように、検査試料80の第3出力値及び第4出力値を、基準試料70の第1出力値及び第2出力値を用いて補正する。具体的には、処理部50は、第3出力値及び第4出力値を、第1差に対する第2差の比を用いて補正する。これにより、均一な波長の照明光で検査試料80を照明した場合の各画素の補正した出力値を算出する。例えば、図4(a)に示すように、第3出力値及び第4出力値を、第1差に対する第2差の比を用いて補正する。そうすると、検査試料80に対して、均一な波長の照明光で照明した場合の各画素の出力値が算出される。
【0051】
次に、ステップS23に示すように、補正した出力値から検査試料80を検査する。このようにして、検査装置1を用いて、検査試料80を検査する。
【0052】
次に、本実施形態の効果を説明する。検査装置1は、照明光の波長をシフトさせる波長シフト手段30を備えている。これにより、波長をシフトさせる前及びシフトさせた後の照明光を用いて基準試料70を照明した場合に、反射光による第1出力値及び第2出力値を出力することができる。よって、照明光における波長のばらつきの影響を補正する際の基準となる照明光を求めることができる。したがって、これを用いれば波長のばらつきを精度よく補正することができる。
【0053】
また、処理部50は、各画素における所定の出力値Reと第1出力値との第1差、及び、所定の出力値Reと第2出力値との第2差を算出し、第1差に対する第2差の比を算出する。よって、第3出力値及び第4出力値を、基準試料70から求めた第1差に対する第2差の比を用いて補正することができる。これにより、均一な波長の照明光で検査試料80を照明した場合の各画素の補正した出力値を導出することができる。
【0054】
本実施形態の検査装置1は、このようにして補正した出力値から検査試料80を検査する。よって、照明光における波長のばらつきを補正し、波長のばらつきを低減させた照明光で照明した場合の出力を得ることができ、検査精度を向上させることができる。
【0055】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る検査装置を説明する。まず、実施形態1と実施形態2との違いを説明する。図8(a)は、実施形態1の検査方法を例示した概念図であり、(b)は、実施形態2の検査方法を例示した概念図である。図8(a)に示すように、実施形態1では、波長をシフトさせる前及び波長をシフトさせた後の照明光で基準試料及び検査試料を照明する。
【0056】
一方、図8(b)に示すように、実施形態2では、照明光の光軸をシフトさせる前及び光軸をシフトさせた後の照明光で基準試料及び検査試料を照明する。光軸をシフトさせた照明光で照明した反射光を得るために、本実施形態の検査装置では、ラインセンサにおける複数の画素が2列のライン状に並んでいる。つまり、2列のライン状の画素列に間隔を設けることにより、光軸角度すなわち反射角度を変えている。反射角度を変えると、薄膜構造等を有するウェハの反射率が変化する。この反射率の変化の傾向は、実施形態1の波長をシフトした時の傾向と同等である。よって、この傾向を利用して、照明光の波長ばらつきを補正するというのが実施形態2の概要である。
【0057】
図8(a)及び(b)において、反射率変化の傾向が同じである理由は、薄膜構造を有するウェハを例にすると、以下のように説明できる。図8(a)に示すように、照明光の波長がシフトした場合には、波長のシフト量に応じて薄膜の上下面で反射した光の干渉、すなわち光の位相差が変化するため、試料の反射率が変化する。一方、図8(b)に示すように、照明光の反射角度が変化した場合も同様に、反射角度の差に応じて、薄膜の上下面で反射した光の位相差が変化するため、試料の反射率が変化する。以上から、図8(a)及び(b)において、入力量は、それぞれ波長、反射角度(光軸角度)と異なるが、共に光の位相差の変化によるものであり同一の現象である。このことは、次に示す図によっても確かめられる。
【0058】
図9(a)~(c)及び図10(a)~(c)は、シリコンウェハ上に窒化シリコンの薄膜が形成されたウェハにおいて、窒化シリコンの膜厚を変化させたときの反射率を薄膜干渉の原理に基づいて計算したグラフであり、横軸は、窒化シリコンの膜厚を示し、縦軸は反射率を示す。図9(a)~(c)は、照明光の波長の変化量がそれぞれ、0.1、0.5、1.0[nm]であり、図10(a)~(c)は、照明光の反射角度の変化量がそれぞれ、0.1、0.5、1.0[°]である。また、カメラの出力差分も示している。図9及び図10に示すように、照明光の波長がシフトした場合と、照明光の反射角度が変化した場合とでは、膜厚に対する反射率は同様の変化を示す。このように、照明光の波長の変化及び反射角度の変化は、反射率変化の傾向に関して同等であるため、実施形態2では、反射角度(光軸)の変化量を利用して、波長の変化量すなわち照明光の波長を補正する。
【0059】
図11は、実施形態2に係る検査装置を例示した図である。図12は、実施形態2に係る検査装置において、ラインセンサを例示した図である。
【0060】
図11及び図12に示すように、本実施形態の検査装置2は、照明装置10、結像レンズ20、波長シフト手段30、ラインセンサ41、処理部50、メモリ60を備えている。検査装置2において、ラインセンサ41及び波長シフト手段30が実施形態1の検査装置1と異なっている。
【0061】
ラインセンサ41は、複数の画素を有している。ラインセンサ41は、2列のライン状に並んだ複数の画素を含んでいる。2列のライン状に並んだ複数の画素うち、1列のライン状の画素を、第1ライン状画素41aと呼び、もう1列のライン状の画素を、第2ライン状画素41bと呼ぶ。第2ライン状画素41bは、第1ライン状画素41aに平行にライン状に並んでいる。よって、ラインセンサ41は、第1ライン状画素41aと、第1ライン状画素41aに平行にライン状に並んだ複数の画素を含む第2ライン状画素41bをさらに有している。例えば、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bにおいて、複数の画素はX軸方向にライン状に並んでいる。
【0062】
本実施形態の波長シフト手段30は、第1ライン状画素41aと第2ライン状画素41bとの間の間隔Dである。すなわち、検査装置2は、第1ライン状画素41aと第2ライン状画素41bとの間に間隔Dを設けることにより、反射角度を変えた光を受光することができる。これにより、反射率を変化させる。このことは、結果的に、実施形態1の波長のシフトと同等の機能を有している。
【0063】
基準試料70を照明光で照明した場合には、ラインセンサ41における第1ライン状画素41aは、照明光が基準試料70で反射した反射光であって、反射角度を変える前の反射光を受光し、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第1出力値を出力する。
【0064】
それと同時に、第2ライン状画素41bは、照明光が基準試料70で反射した反射光であって、反射角度を変えた後の反射光を受光し、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第2出力値を出力する。
【0065】
例えば、検査装置2の光学系の配置と照明光の波長にもよるが、図9図10で示す通り、薄膜が形成されたウェハの反射率の変化において、反射光の光軸の反射角度1[°]の変化は、反射光の波長が1[nm]程度シフトした場合と同様の効果を有する。また、幾何学的な配置の例として、レンズ20からラインセンサ41の画素までの距離を300[mm]、第1ライン状画素41aと第2ライン状画素41bとの間の間隔Dを5[mm]とすると、その場合には、第1ライン状画素41aが受光する反射光の基準試料70の試料面における反射角と、第2ライン状画素41bが受光する反射光の基準試料70の試料面における反射角の差は約1[°]となる。これにより、第1ライン状画素41aが受光する反射光の反射率は、第2ライン状画素41bが受光する反射光の波長よりも1[nm]程度シフトした場合と同様の反射率を有する。これにより、基準試料70の試料面において、反射角αで反射した反射光の波長は、反射角α+1[°]で反射した反射光の波長に対して1[nm]程度シフトするのと同様の効果がある。この特性を用いて、反射角度を変える前及び反射角度を変えた後の反射光として、基準試料70については、第1出力値及び第2出力値を出力する。このような手法を用いることにより、1回のスキャンで、反射角度を変える前及び反射角度を変えた後の出力を得ることができる。
【0066】
なお、上記した第1ライン状画素41aと第2ライン状画素41bとの間の間隔D、レンズ20からラインセンサ41の画素までの距離、反射光の反射角α、波長のシフト量は例示であって、上記の値に限らず、光学系の配置等にもよる。
【0067】
検査試料80の場合も、基準試料70の場合と同様である。すなわち、検査試料80を照明光で照明した場合には、第1ライン状画素41aは、照明光が検査試料80で反射した反射光であって、反射角度を変える前の反射光を受光し、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第3出力値を出力する。
【0068】
それと同時に、第2ライン状画素41bは、照明光が検査試料80で反射した反射光であって、反射角度を変えた後の反射光を受光し、各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第4出力値を出力する。
【0069】
このように、本実施形態では、波長シフト手段は、第1ライン状画素41aと第2ライン状画素41bとの間の間隔Dであるので、実施形態1のように、支持部の角度、光源の温度、光源の電流値等を切り替える必要がない。よって、反射角度を変える前及び反射角度を変えた後の出力値を、基準試料70及び検査試料80のいずれの場合でも同時に取得することができる。
【0070】
なお、シャインプルーフの原理に従い、カメラの取り付け角度βを、光軸角度αに対して適切に設定することで、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bの両方にフォーカスを合わせることができる。ただし、その場合には、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bの水平方向の倍率に違いが生じるため、ハードウェハ回路またはソフトウェハで補正する。
【0071】
図12に示すように、第1ライン状画素41aにおける各画素を配置するピッチPと、第2ライン状画素41bにおける各画素を配置するピッチPを同じピッチとする。例えば、各ピッチPを10[nm]のピッチとする。そして、第1ライン状画素41aにおける各画素を、第2ライン状画素41bにおける各画素に対して、X軸方向にハーフピッチ(P/2)ずらして配置させる。すなわち、第1ライン状画素41aの各画素の配置は、第2ライン状画素41bの各画素の配置に対して、ハーフピッチずれている。このように配置することにより、ラインセンサ41の分解能を向上させることができる。例えば、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bがそれぞれ8K画素の場合には、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bを合わせて、16K画素のセンサとすることができる。なお、複数の光源の列を、3列以上に増やしてもよい。そして、各列の配置のずれをP/2よりも小さくすることによって、さらに分解能を向上させてもよい。
【0072】
次に、本実施形態の検査装置を用いた検査方法を説明する。図13は、実施形態2に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0073】
図13のステップS31に示すように、まず、照明光で基準試料70を照明する。具体的には、ライン状に並んだ複数の光源から生成された光を含む照明光で、基準試料70を照明する。基準試料70は、基板と基板上に形成された均一な膜厚の膜とを含む。
【0074】
次に、ステップS32に示すように、基準試料70で反射した反射光であって、反射角度を変える前の反射光を受光し、第1出力値を出力する。具体的には、ラインセンサ41における第1ライン状画素41aで、照明光が基準試料70で反射した反射光を受光する。第1ライン状画素41aが受光した反射光は、反射角度を変える前の反射光である。そして、第1ライン状画素41aの各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第1出力値を出力する。
【0075】
また、基準試料70で反射した反射光であって、反射角度を変えた後の反射光を受光し、第2出力値を出力する。具体的には、ラインセンサ41における第2ライン状画素41bで、照明光が基準試料70で反射した反射光を受光する。第2ライン状画素41bが受光した反射光は、反射角度を変えた後の反射光である。そして、第2ライン状画素41bの各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第2出力値を出力する。
【0076】
次に、ステップS33に示すように、処理部50は、所定の出力値Reと第1出力値との差として、第1差を算出する。また、所定の出力値Reと第2出力値との差として、第2差を算出する。所定の出力値Reは、実施形態1と同様に、均一な波長の照明光が均一な膜厚の膜を有する基準試料70で反射した反射光の反射率の値であり、一定値である。そして、処理部50は、第1差に対する第2差の比を算出する。
【0077】
次に、ステップS34に示すように、照明光で検査試料80を照明する。
【0078】
次に、ステップS35に示すように、検査試料80で反射した反射光であって、反射角度を変える前の反射光を受光し、第3出力値を出力する。具体的には、ラインセンサ41における第1ライン状画素41aで、照明光が検査試料80で反射した反射光を受光する。第1ライン状画素41aが受光した反射光は、反射角度を変える前の反射光である。そして、第1ライン状画素41aの各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第3出力値を出力する。
【0079】
また、検査試料80で反射した反射光であって、反射角度を変えた後の反射光を受光し、第4出力値を出力する。具体的には、ラインセンサ41における第2ライン状画素41bで、照明光が検査試料80で反射した反射光を受光する。第2ライン状画素41bが受光した反射光は、反射角度を変えた後の反射光である。そして、第2ライン状画素41bの各画素が受光した反射光の反射率に基づいて、各画素の第4出力値を出力する。
【0080】
次に、ステップS36に示すように、検査試料80の第3出力値及び第4出力値を、基準試料70の第1出力値及び第2出力値を用いて補正する。具体的には、処理部50は、第3出力値及び第4出力値を、第1差に対する第2差の比を用いて補正する。これにより、均一な波長の照明光で検査試料80を照明した場合の各画素の補正した出力値を導出する。
【0081】
次に、ステップS37に示すように、補正した出力値から検査試料80を検査する。このようにして、検査装置2を用いて、検査試料80を検査する。
【0082】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の検査装置2では、間隔Dを空けて配置した第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bにより、反射角度を変えることができる。よって、基準試料70及び検査試料80のそれぞれにおいて、1回のスキャンで、反射角度を変える前及び反射角度を変えた後の出力を得ることができる。これにより、出力値を得る時間及び処理を短縮化することができる。
【0083】
第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bの各画素の配置をずらすことにより、分解能を向上させることができる。例えば、第1ライン状画素41a及び第2ライン状画素41bの各画素の配置をハーフピッチずらすことにより、分解能を2倍にすることができる。分解能を向上させることにより、検査精度を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0085】
1、2 検査装置
10 照明装置
20 結像レンズ
30 波長シフト手段
31 バンドパスフィルタ
40、41 ラインセンサ
41a 第1ライン状画素
41b 第2ライン状画素
50 処理部
60 メモリ
70 基準試料
80 検査試料
Re 所定の出力値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13