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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】露出柱脚の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20230920BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020015713
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123874
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】柳田 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】寺内 将貴
(72)【発明者】
【氏名】新井 佑一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第6140209(JP,B2)
【文献】特開2019-124024(JP,A)
【文献】特開2003-343119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0222662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
E04H 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出柱脚の下端部に接合された上面視略正方形状のベースプレートにアンカーボルトが挿通されて基礎に固定されている露出柱脚の接合構造であって、
前記ベースプレートは、
柱下端部が接合する第1ベースプレートと、
四隅に位置し、頂角部、頂角部に対向する対辺部および頂角部を形成する2つの短辺部を備えた上面視略直角二等辺三角形状の第2ベースプレートと、
を有し、
前記第2ベースプレートは、前記頂角部および前記短辺部が外側に位置しており、
前記第1ベースプレートは、前記第2ベースプレートの内側に位置し、かつ、前記第2ベースプレートの前記対辺部と接合しており、
さらに、前記第1ベースプレートは、前記第2ベースプレートよりも強い降伏強度を有し、
隣接する前記第2ベースプレート同士の間に位置する前記第1ベースプレートの柱幅領域に第1アンカーボルトが挿通されており、
前記第2ベースプレートに、前記第1アンカーボルトよりも強い降伏強度を有する第2アンカーボルトが挿通されており、
地震発生時に、前記第2ベースプレートと前記第1アンカーボルトとが降伏可能とされていることを特徴とする露出柱脚の接合構造。
【請求項2】
前記第1ベースプレートの平面外形輪郭は、対向する2組の短辺と対向する2組の長辺とからなる略八角形であり、
前記第1ベースプレートの前記短辺と前記第2ベースプレートの前記短辺部が、前記ベースプレートの外縁において同一直線状に接合していることを特徴とする請求項1の露出柱脚の接合構造。
【請求項3】
前記第1ベースプレートの平面外形輪郭は略正方形であり、
隣接する前記第2ベースプレートの前記短辺部同士が前記ベースプレートの外縁において接合していることを特徴とする請求項1の露出柱脚の接合構造。
【請求項4】
前記第2ベースプレートの前記対辺部の位置が降伏線と一致していることを特徴とする請求項1から3のいずれかの露出柱脚の接合構造。
【請求項5】
対向する前記第2ベースプレートの前記頂角部同士を結ぶ対角線上付近に、前記第1アンカーボルトが存在しないことを特徴とする請求項1から4のいずれかの露出柱脚の接合構造。
【請求項6】
前記第2ベースプレートの降伏強度が、15~500kNmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかの露出柱脚の接合構造。
【請求項7】
前記第2アンカーボルトの降伏強度が、15~900kNであることを特徴とする請求項1から6のいずれかの露出柱脚の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露出柱脚の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、露出柱脚の下端部に略矩形のベースプレートを接合し、そのベースプレートにアンカーボルトを挿通して基礎に固定する露出柱脚が知られている。この露出柱脚においては、地震に対応するための降伏形態として、アンカーボルト降伏型、柱降伏型、ベースプレート降伏型、複合型(アンカーボルト降伏型+ベースプレート降伏型)が提案されている。
【0003】
アンカーボルト降伏型は、ベースプレートを強固にして、アンカーボルトを先に降伏させる形態であり、伸び能力に優れている。柱降伏型は、ベースプレートとアンカーボルトを強固にして、柱に変形能力を負担させる形態であり、地震エネルギー吸収能力に優れている。ベースプレート降伏型は、柱とアンカーボルトを強固にして、ベースプレートを降伏させる形態である。
【0004】
複合型は、降伏するアンカーボルトとベースプレートを並列に配置し、降伏させないアンカーボルトとベースプレートとが存在する形態であり、優れた変形能力と地震エネルギー吸収能力があるとされている。一方で、複合型の降伏メカニズム(耐荷機構)は複雑であり、変形制御の観点から設計に用いることが難しい。
【0005】
本出願人は、複合型の降伏形態の接合構造として、ベースプレートとして露出柱脚の下端部が接合する第1のベースプレートと、この第1のベースプレートから外側に広がる第2のベースプレートとを設けた露出柱脚の接合構造を提案している(特許文献1)。この接合構造では、予め、第1のベースプレートと第2のベースプレート及び、第1のベースプレートを固定する第1のアンカーボルトと、第2のベースプレートを固定する第2のアンカーボルトの降伏強度を特定の関係に設定することにより地震エネルギーを吸収するようにしている。この接合構造によれば、優れた地震エネルギーの吸収能力を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6140209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の接合構造においても、エネルギー吸収能力を十分に発揮するための更なる改善が望まれていた。また、特許文献1の接合構造の場合、第2のベースプレートが第1のベースプレートの周囲から外側に拡がっている構造であるため、第2のベースプレートが大きくなり、これに伴って基礎柱型も大きくなってしまうという問題があった。さらに、特許文献1の接合構造の場合、第1のアンカーボルトの位置によっては、軸力の作用が複雑化し、ベースプレートの設計に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、複合型の露出柱脚の接合構造であって、地震エネルギーの吸収効率に優れ、ベースプレートの大きさを縮小化することができ、設計も簡素化できる露出柱脚の接合構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、露出柱脚の下端部に接合された上面視略正方形状のベースプレートにアンカーボルトが挿通されて基礎に固定されている露出柱脚の接合構造であって、
前記ベースプレートは、
柱下端部が接合する第1ベースプレートと、
四隅に位置し、頂角部、頂角部に対向する対辺部および頂角部を形成する2つの短辺部を備えた上面視略直角二等辺三角形状の第2ベースプレートと、
を有し、
前記第2ベースプレートは、前記頂角部および前記短辺部が外側に位置しており、
前記第1ベースプレートは、前記第2ベースプレートの内側に位置し、かつ、前記第2ベースプレートの前記対辺部と接合しており、
さらに、前記第1ベースプレートは、前記第2ベースプレートよりも強い降伏強度を有し、
隣接する前記第2ベースプレート同士の間に位置する前記第1ベースプレートの柱幅領域に第1アンカーボルトが挿通されており、
前記第2ベースプレートに、前記第1アンカーボルトよりも強い降伏強度を有する第2アンカーボルトが挿通されており、
地震発生時に、前記第2ベースプレートと前記第1アンカーボルトとが降伏可能とされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の露出柱脚の接合構造は、地震エネルギーの吸収効率に優れ、ベースプレートの大きさを縮小化することができ、設計も簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の露出柱脚の接合構造の一実施形態を例示した断面図である。
図2図1に示した露出柱脚の接合構造の上面図である。
図3図1および図2の露出柱脚の接合構造において、地震が発生した際の降伏状態を例示した断面図である。
図4図1および図2の露出柱脚の接合構造において、地震が発生した際の降伏状態を例示した断面図である。
図5】本発明の露出柱脚の接合構造の別の実施形態を例示した上面図である。
図6】本発明の露出柱脚の接合構造の別の実施形態を例示した断面図である。
図7】本発明の露出柱脚の接合構造において、第2ベースプレートに降伏ヒンジラインを形成した実施形態を示す上面図である。
図8】本発明の露出柱脚の接合構造における第1ベースプレートと第2ベースプレートの接続形態のバリエーションを例示した断面図である。
図9】本発明の露出柱脚の接合構造における第1ベースプレートと第2ベースプレートの接続形態のバリエーションを例示した断面図である。
図10】本発明の露出柱脚の接合構造におけるベースプレート(第1ベースプレートと第2ベースプレート)のバリエーションを例示した上面図である。
図11】本発明の露出柱脚の接合構造におけるベースプレート(第1ベースプレートと第2ベースプレート)の別のバリエーションを例示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の露出柱脚の接合構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明の露出柱脚の接合構造の一実施形態を例示した断面図である。図2は、図1に示した露出柱脚の接合構造の上面図である。図3および図4は、図1図2に例示した露出柱脚の接合構造において、地震が発生した際の降伏状態を例示した断面図である。
【0013】
本発明の露出柱脚の接合構造は、露出柱脚1の下端部に接合されたベースプレート2にアンカーボルト3が挿通されて、コンクリートの基礎4に固定されている。
【0014】
露出柱脚1は、角形鋼管柱や丸形鋼管柱などの形態を例示することができる。
【0015】
ベースプレート2は、上面視略正方形状であり、第1ベースプレート21と第2ベースプレート22とによって構成されている。図1に示したように、第2ベースプレート22の下側にはベースモルタル41が構築されている。
【0016】
第1ベースプレート21には、柱下端部が接合する。この実施形態では、第1ベースプレート21の平面外形輪郭は略八角形であり、対向する2組の短辺21aと対向する2組の長辺21bとを備えている。それぞれの短辺21aの長さは互いに等しく設計されている。また、それぞれの長辺21bの長さも等しく設計されている。
【0017】
第2ベースプレート22は、ベースプレート2の四隅に位置しており、第1ベースプレート21は、この第2ベースプレート22の内側に位置している。この実施形態では、第2ベースプレート22は、第1ベースプレート21よりも一段低く形成されている。
【0018】
四隅に位置するそれぞれの第2ベースプレート22は、上面視略直角二等辺三角形状であり、頂角部22a、頂角部22aに対向する対辺部22b、および、頂角部22aを形成する2つの短辺部22cを備えている。頂角部22aおよび短辺部22cはベースプレート2の外側に位置している。
【0019】
そして、この実施形態では、第1ベースプレート21の長辺21bと、第2ベースプレート22の対辺部22bの長さが等しく設計されており、互いに接合している。また、第1ベースプレート21の短辺21aと第2ベースプレート22の短辺部22cは、ベースプレート2の外縁において同一直線状に接合している。
【0020】
そして、第1ベースプレート21は、第2ベースプレート22よりも強い降伏強度を有している。これにより、地震発生時に、第2ベースプレート22が相対的に弾性変形または塑性変形しやすく、地震エネルギーを吸収することができる。
【0021】
第1ベースプレート21および第2ベースプレート22の降伏強度は、想定される地震の規模や建物の構造等により適宜設定することができるが、例えば、一応の目安として、第2ベースプレート22の降伏強度は15~500kNmであることが好ましい。また、第1ベースプレート21と第2ベースプレート22の降伏強度の差は、20~300kNm程度であることが好ましい。これにより、より効果的に地震エネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0022】
第1ベースプレート21および第2ベースプレート22の降伏強度を調整する方法は特に限定されないが、例えば、第1ベースプレート21および第2ベースプレート22の材質を同等のものとした場合には、第1ベースプレート21の厚さを第2ベースプレート22よりも厚くする方法などを例示することができる。
【0023】
この接合構造では、第2ベースプレート22の短辺部22cと対辺部22bがなす角度は略45°であり、第2ベースプレート22の対辺部22bの位置(第1ベースプレート21と第2ベースプレート22の境界)が降伏線と一致しているため、地震エネルギーの吸収効率が向上している。ここで、「降伏線」とは、第2ベースプレートが曲げ変形を生じ、降伏した際に表れる線をいう。
【0024】
第1ベースプレート21の短辺21aの長さなどは露出柱脚1の大きさなどに応じて適宜設計することができる。具体的には、設計の目安としては、例えば、ベースプレート1辺の長さをBとした場合、第1ベースプレート21の短辺21aの長さeは、0<e≦B/2であることが好ましい。
【0025】
ベースプレート1辺の長さ(mm)は、300≦B≦900の範囲を例示することができる。これにより、地震エネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0026】
露出柱脚1からベースプレート2の外縁までの長さをbとした場合、第2ベースプレート22の短辺部22cの長さcは、b≦c<B/2であることが好ましい。これにより、地震エネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0027】
柱中心線からベースプレートの外縁までの長さb2(mm)は、150≦b2≦450の範囲を例示することができる。
【0028】
第1ベースプレート21は、露出柱脚1が回転する際の影響を受けやすいが、例えば厚みを厚く設計することで、変形しにくく、塑性化し難くなる。一方、第2ベースプレート22は、露出柱脚1が回転する際の影響を受け難いが、例えば、厚みを薄く設計することで、塑性化しやすくなる。
【0029】
アンカーボルト3は、第1アンカーボルト31と第2アンカーボルト32とを含んでいる。
【0030】
第1アンカーボルト31は、隣接する第2ベースプレート22同士の間に位置する第1ベースプレート21の柱幅領域Dに挿通されている。この実施形態では、第1ベースプレート21の柱幅領域Dに2本ずつ、合計8本の第1アンカーボルト31が挿通されており、8本の第1アンカーボルト31は、柱中心線に対して対称に配置されている。なお、第1ベースプレート21には、第1アンカーボルト挿通孔211が設けられており、第1アンカーボルト31を第1アンカーボルト挿通孔211に挿通させてナットで締結されている。
【0031】
第2アンカーボルト32は、第2ベースプレート22に挿通されている。この実施形態では、第2アンカーボルト32は、それぞれの第2ベースプレート22の頂角部22aの内側に1本ずつ挿通されている。第2ベースプレート22には、第2アンカーボルト32を挿通するための第2アンカーボルト挿通孔221が設けられており、第2アンカーボルト32を第2アンカーボルト挿通孔221に挿通させてナットで締結されている。
【0032】
また、柱中心線から第2アンカーボルト32までの長さa(mm)は、150≦a≦400の範囲を例示することができる。 これにより、地震エネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0033】
そして、第2アンカーボルト32は、第1アンカーボルト31よりも強い降伏強度を有している。これにより、地震発生時に、第1アンカーボルト31が相対的に塑性変形しやすく、地震エネルギーを吸収することができる。
【0034】
第1アンカーボルト31および第2アンカーボルト32の降伏強度は、想定される地震の規模や建物の構造等により適宜設定することができるが、例えば、一応の目安として、例えば、15~900kNであることが好ましい。また、第2アンカーボルト32と第1アンカーボルト31の降伏強度の差は、20~800kN程度であることが好ましい。これにより、より効果的に地震エネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0035】
また、第1アンカーボルト31および第2アンカーボルト32の降伏強度は、例えば、太さ(径)や本数などを調整することで、所望の降伏強度に設定することができる。
【0036】
なお、第1アンカーボルト31および第2アンカーボルト32の形態は特に限定されず、例えば、特許文献1に例示されているような従来知られた形態のものを適宜使用することができる。
【0037】
第1アンカーボルト31は、露出柱脚1からの距離が近い。このため、第1ベースプレート21が塑性化せず、第2ベースプレート22が塑性化することで、第1アンカーボルト31は、露出柱脚1が回転する際の影響を受けやすく、塑性化しやすくなる。
【0038】
第2アンカーボルト32は、露出柱脚1からの距離が遠い。このため、第1アンカーボルト31が塑性化し、第2ベースプレート22が塑性化することで、第2アンカーボルト32は、露出柱脚1が回転する際の影響を受け難く、塑性化し難くなる。
【0039】
したがって、図9に示したように、想定された規模の地震の力が加わると、第2ベースプレート22と第1アンカーボルト31は弾塑性変形し、降伏する。
【0040】
また、図4に示したように、第2ベースプレート22は、角部を中心に回転することで曲げ変形を生じ、第1ベースプレート21が柱外面を中心に回転することで、第1アンカーボルト31が弾塑性変形を生じる。互いに逆向きに回転しようとすることで、第1ベースプレート21に引張力が生じることにより、大変形領域においても強度が上昇する。従って、変形が大きくなるに従い鉛直荷重による付加曲げモーメントによって生じる耐力低下を補うことができる。
【0041】
そして、この露出柱脚1の接合構造では、第1ベースプレート21は、第2ベースプレート22の内側に位置し、かつ、第2ベースプレート22の対辺部22bと第1ベースプレート21の長辺21bとが接続している。また、第1ベースプレート21の短辺21aと第2ベースプレート22の短辺部22cが、ベースプレート2の外縁において同一直線状に接合している。このため、ベースプレート2の大きさを縮小化することができる。
【0042】
さらに、第2ベースプレート22の対辺部22bは、ベースプレート2の外縁に対して略45°の角度に形成されており、第2ベースプレート22の対辺部22b(第1ベースプレート21と第2ベースプレート22の境界)が降伏線と一致しているため、地震エネルギーの吸収効率に優れている。
【0043】
また、第1アンカーボルト31は、隣接する第2ベースプレート22同士の間に位置する第1ベースプレート21の柱幅領域Dに挿通されており、対向する第2ベースプレート22の頂角部22a同士を結ぶ対角線上(図4に示すのA-A線)付近には、第1アンカーボルト31が存在していない。このため、ベースプレート2の設計に際し、第1アンカーボルト31の軸力のみを考慮して設計することができるため、設計作業の簡素化が図られ、製作コストを抑えることができる。
【0044】
図5は、本発明の露出柱脚の接合構造の別の実施形態を例示した上面図である。図6は、本発明の露出柱脚の接合構造の別の実施形態を例示した断面図である。図1図4で示した実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0045】
図5に示した実施形態の露出柱脚の接合構造では、第2アンカーボルト32が挿通される第2ベースプレート22の頂角部22aの内側に第1ベースプレート21と同じ厚さとなる肉厚部24が形成されている。肉厚部24は、上面視略五角形状であり、第2ベースプレート22の対辺部22b(第1ベースプレート21の長辺21b)と平行な起立面24aを備えている。肉厚部24がこのような形態であると、相対変位によって生じる第2ベースプレート22の変形領域fが長くなるため、第2アンカーボルト32の局部変形が生じ難くなり、地震によるエネルギーを効率的に吸収することができる。
【0046】
図6に示した実施形態の露出柱脚の接合構造では、第2アンカーボルト32が挿通される第2ベースプレート22に第1ベースプレート21と同じ厚さとなる厚座金25が配設されている。この厚座金25は、図5に示した肉厚部24と同様に、上面視略五角形状であり、第2ベースプレート22の対辺部22b(第1ベースプレート21の長辺21b)と平行な起立面を備えている。この実施形態においても、第2アンカーボルト32の局部変形が生じ難くなり、地震によるエネルギーを効率的に吸収することができる。
【0047】
なお、図5に示した肉厚部24および図6に示した厚座金25は、頂角部22aを中心とした円弧状に形成することもできる。
【0048】
図7は、本発明の露出柱脚の接合構造において、第2ベースプレートに降伏ヒンジラインを形成した実施形態を示す上面図である。
【0049】
図7に例示したように、この実施形態では、所定の間隔で離間し、互いに平行な第1降伏ヒンジラインL1と第2降伏ヒンジラインL2との間に、弾塑性領域Tが形成されている。
【0050】
第1降伏ヒンジラインL1は、第2ベースプレート22の対辺部22b(図2などに図示)上に形成されており、第2降伏ヒンジラインL2は、第2アンカーボルト32を通る直線状に形成されている。第1降伏ヒンジラインL1および第2降伏ヒンジラインL2は、ベースプレート2の外縁に対して略45°の角度で形成されている。
【0051】
弾塑性領域Tは、第2ベースプレート22の他の部分に対して、部分的に降伏強度が低く形成されている。したがって、地震発生時に、この弾塑性領域Tにおいて弾性変形あるいは塑性変形させることができる。
【0052】
図8および図9は、本発明の露出柱脚の接合構造における第1ベースプレートと第2ベースプレートの接続形態のバリエーションを例示した断面図である。図8(a)~(i)および図9(j)~(p)では、降伏ヒンジラインによる弾塑性領域Tを斜線で示している。
【0053】
図8(a)~(c)に例示したように、第2ベースプレート22は第1ベースプレート21よりも薄く形成されている。また、第2ベースプレート22の鉛直方向の位置は特に限定されない。具体的には、第2ベースプレート22は、第1ベースプレート21の下側に接合させることができ(図8(a))、第2ベースプレート22の上面が第1ベースプレート21の上面に一致するように接合させることができ(図8(b))、第1ベースプレート21の鉛直方向の中央付近に接合させることもできる(図8(c))。
【0054】
図8(d)~(f)に例示したように、第2ベースプレート22は、第1ベースプレート21側に、厚さが薄い弾塑性領域Tが形成されている。弾塑性領域Tは、第1ベースプレート21あるいは第2ベースプレート22の厚みよりも薄い断面の種々の形状とすることができる。
また、図8(d)~(f)に例示したように、第1ベースプレート21と、角部に肉厚部24が一体成型された第2ベースプレート22とを別部材として、互いを接合させることができる。
【0055】
図8(g)~(i)に例示したように、第1ベースプレート21、第2ベースプレート22、肉厚部24をそれぞれ別部材として、互いを接合させることができる。
【0056】
図9(j)~(l)に例示したように、第1ベースプレート21および第2ベースプレート22を一体成形することができる。
【0057】
図9(m)~(o)に例示したように、第1ベースプレート21、第2ベースプレート22、肉厚部24を一体成形することができる。
【0058】
図9(p)に例示したように、第1ベースプレート21、第2ベースプレート22および厚座金25をそれぞれ別部材として、第1ベースプレート21と第2ベースプレート22とを互いを接合させ、第2ベースプレート22の角部に厚座金25を配設することができる。
【0059】
図10は、本発明の露出柱脚の接合構造におけるベースプレート(第1ベースプレート21と第2ベースプレート22)のバリエーションを例示した上面図である。
【0060】
図10(A)~(D)に例示したベースプレートは、第1ベースプレート21が略八角形からなる形態であり、第1ベースプレート21の柱幅領域の1または2か所に第1アンカーボルト挿通孔211が設けられている。また、第2ベースプレート22に1または2か所に第2アンカーボルト挿通孔221が設けられている。
【0061】
図10(E)~(H)に例示したベースプレートは、第1ベースプレート21の平面外形輪郭は略正方形であり、隣接する第2ベースプレート22の短辺部22c同士がベースプレート2の外縁において接合している。この実施形態においても、第1ベースプレート21は、第2ベースプレート22の内側に位置し、かつ、第2ベースプレート22の対辺部22bと第1ベースプレート21の一辺21cとが接続している。また、第1ベースプレート21の角部21dが、ベースプレート2の外縁に位置している。この実施形態においても、ベースプレート2の大きさを縮小化することができる。
【0062】
また、この実施形態においても、ベースプレート2の外縁に対する対辺部22bの角度は略45°であり、第2ベースプレート22の対辺部22bの位置(第1ベースプレート21と第2ベースプレート22の境界)が降伏線(降伏ヒンジライン)と一致しているため、地震エネルギーの吸収効率に優れている。
【0063】
さらに、この実施形態においても、隣接する第2ベースプレート22同士の間に位置する第1ベースプレート21の柱幅領域Dに第1アンカーボルト挿通孔211が設けられており、対向する第2ベースプレート22の頂角部22a同士を結ぶ対角線上付近には、第1アンカーボルト挿通孔211が設けられていない。このため、ベースプレートの設計に際し、第1アンカーボルト31の軸力のみを考慮して設計することができるため、設計作業の簡素化が図られ、製作コストを抑えることができる。
【0064】
図10(I)(J)に例示したベースプレート2は、第2ベースプレート22の頂角部22aの内側に、上面視略五角形状の肉厚部24が設けられており、図5を用いて説明した実施形態と対応している。
【0065】
図10(K)(L)に例示したベースプレート2は、第2ベースプレート22の頂角部22aの内側に、頂角部22aを中心とした上面視円弧状の肉厚部24が設けられている。
【0066】
図11は、本発明の露出柱脚の接合構造におけるベースプレート(第1ベースプレートと第2ベースプレート)の別のバリエーションを例示した上面図である。
【0067】
図11(M)~(U)に例示したベースプレート2は、第1ベースプレート21の第1アンカーボルト31を囲むようにリブプレート5を設けられている。具体的には、リブプレート5は、露出柱脚1の各側面から第1ベースプレート21の外縁側に向かって2つずつ延びている。露出柱脚1の各側面において、隣接するリブプレート5は互いに平行であり、このリブプレート5同士の間に第1アンカーボルト31が位置している。リブプレート5を設けることにより、第1ベースプレート21の降伏強度・剛性を高め、第1ベースプレート21と第2ベースプレート22との相対的な降伏強度の差を出すことが可能となる。このため、第1ベースプレート21に対して第2ベースプレート22の降伏強度を相対的に低く調整することができる。
【0068】
本発明の露出柱脚の接合構造は、以上の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、第1ベースプレートの形状や第2ベースプレートの大きさなどは適宜設計することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 露出柱脚
2 ベースプレート
21 第1ベースプレート
21a 短辺
21b 長辺
22 第2ベースプレート
22a 頂角部
22b 対辺部
22c 短辺部
3 アンカーボルト
31 第1アンカーボルト
32 第2アンカーボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11