(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】流体圧送装置
(51)【国際特許分類】
F04B 15/02 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
F04B15/02 Z
(21)【出願番号】P 2020016143
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505182904
【氏名又は名称】パイルスジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田坂 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】阿比留 邦実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章司
(72)【発明者】
【氏名】浦志 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】原 桂
(72)【発明者】
【氏名】徳永 智弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 直輝
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0039978(US,A1)
【文献】特開2018-127905(JP,A)
【文献】実開昭56-105676(JP,U)
【文献】特開平11-006476(JP,A)
【文献】特開2019-183749(JP,A)
【文献】米国特許第10518988(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を貯留したタンク内に挿入され前記流体に対して加圧力を付与すると共に前記流体を前記タンク内から汲み上げるための開口を有するフォロワプレートと、該フォロワプレートの前記開口に連通するポンプ内部空間を有すると共に前記タンク内と前記ポンプ内部空間との間で往復移動して前記タンク内の流体を前記ポンプ内部空間に汲み上げるプライマプレートを有するポンプとを備えた流体圧送装置において、
前記プライマプレートの外形形状は前記フォロワプレートの前記開口の形状に略合致しており、
前記往復移動の範囲内での前記プライマプレートの位置を制御可能な位置制御部を備えており、
前記位置制御部は、前記タンクの交換作業時において前記フォロワプレートを前記タンク内から取り出す際、前記プライマプレートを前記フォロワプレートの前記開口に位置させる構成となっており、
前記フォロワプレートには、交換後の新たなタンク内への挿入作業時に当該タンク内のエアを抜くためのエア抜き孔が設けられており、
前記プライマプレートが前記フォロワプレートの前記開口に位置した状態で当該プライマプレートにおいて前記タンク側を向く端面は、当該端面の中央側に向かうに従って前記タンク側に突出する曲面形状となっていることを特徴とする流体圧送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の製造ライン等においてタンク内に貯留されている接着剤等の粘性流体(以下、単に流体という場合もある)をワークに向けて圧送する流体圧送装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、車両の製造ラインにおいて、ワークに対して接着剤等の流体(粘性流体)を塗布するべく、タンク(ドラム缶)から流体を押し出してワークに向けて圧送する流体圧送装置が知られている。
【0003】
図13は従来の流体圧送装置aの一部を断面で示した図である。この図に示すように、流体圧送装置aは、タンクb内の流体cに対して上側から加圧力を付与するフォロワプレートdを備えている。このフォロワプレートdは、エレベータeに支持されて昇降可能となっている。また、このフォロワプレートdには、その外周部に、タンクbの内面との間のシール性を確保するためのシールホースhが装着されている。更に、フォロワプレートdの中央部の上面には、流体経路(図示省略)に繋がるドラムポンプgが取り付けられている。このドラムポンプgは、フォロワプレートdの中央部に形成された開口fに連通されていると共に、上下移動(タンクb内とドラムポンプg内との間で上下移動)可能なプライマプレートiを備えている。このプライマプレートiの上下移動によってタンクb内の流体cをドラムポンプgの内部に汲み上げるようになっている。
【0004】
流体経路への流体cの圧送動作にあっては、フォロワプレートdが下降移動しながらタンクb内の流体cに対して下向きの加圧力を付与すると共に、ドラムポンプgが作動することによって前記プライマプレートiが上下移動し、これによって、タンクb内の流体cが、フォロワプレートdの開口fを通過してドラムポンプg内に汲み上げられ、流量が調整されて流体経路に圧送される。そして、この流体経路は、図示しない塗布ロボットに接続されており、この塗布ロボットに達した流体cが該塗布ロボットの吐出口からワークに向けて塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タンクb内の流体cの残量が少なくなるとタンクbを交換する必要がある。
図13の仮想線は、タンクb内の流体cの残量が少なくなってフォロワプレートdがタンクb内の底部付近に達し、タンクbの交換が必要となった状態を示している。
【0007】
タンクbの交換作業としては、タンクb内からのフォロワプレートdの取り出し作業、フォロワプレートdに付着している流体cの除去作業、空となったタンクbの搬出作業、新たなタンク(流体cが充填されているタンク)bの搬入作業、この新たなタンクb内へのフォロワプレートdの挿入作業、タンクb内からのエア抜き取り作業等が必要となる。
【0008】
図14は、このタンクbの交換作業においてタンクb内から取り出されるフォロワプレートdおよびドラムポンプgの一部を示す断面図である。
【0009】
この
図14に示すように、タンクb内からフォロワプレートdが取り出される際には、一般に、ドラムポンプgのプライマプレートiがフォロワプレートdから引き込まれた(上方に移動した)状態となっている。つまり、プライマプレートiの往復動範囲(移動ストローク)のうち最も上側(以下、上死点という場合もある)に位置される。このプライマプレートiの上死点への移動は、作業者の手動操作(流体圧送装置aの操作盤のスイッチ操作等)によって行われる。
【0010】
このような状態では、ドラムポンプgの内部(プライマプレートiの下側の領域;
図14における領域A)やフォロワプレートdの開口fの内側に空気が入り込む状況を招いてしまう。
【0011】
図15は、この空気が入り込む状況を説明するための図である。
図15(a)に示す状態(フォロワプレートdがタンクb内の底部付近に達したことでタンクbの交換が必要となった状態)から
図15(b)に示すようにフォロワプレートdが上昇すると、流体cの粘性によって、ドラムポンプgの内部の流体(上死点にあるプライマプレートiの下側の流体)cがタンクb側に引きずられ、このドラムポンプgの内部やフォロワプレートdの開口fの内側に空気kが入り込む場合がある(
図15(b),(c)を参照)。この状態で、
図15(d)に示すように、新たなタンクb内へのフォロワプレートdの挿入作業が行われ、その後に、フォロワプレートdに形成されたエア抜き孔jからのエア抜き取り作業を行ったとしても、
図15(e)に示すように空気kが残存することがある。このような空気kが残存する理由の一つとしては、ドラムポンプgの内部やフォロワプレートdの開口fの内側とエア抜き孔jとの間に流体cが存在し、空気kが存在する領域が流体cによって閉ざされた空間となる(空気kがエア抜き孔jに連通しない状態となる)ことが挙げられる。
【0012】
このように空気kが残存した状態では、タンクbの交換作業後の再稼動時に、ドラムポンプgおよび流体経路を経て塗布ロボットに空気が送り込まれることになり、塗布ロボットの吐出口から空気が噴出してしまって流体cの塗布作業に支障を来してしまう可能性がある。このため、この再稼動前に、残存している空気kが排出されるまでドラムポンプgを作動させる(所謂、ドラムポンプgの空打ちを行う)ことが必要であり、流体の廃棄量が多くなってしまうといった課題があった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タンクの交換作業に伴う流体の廃棄量を少なくすることができる流体圧送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、流体を貯留したタンク内に挿入され前記流体に対して加圧力を付与すると共に前記流体を前記タンク内から汲み上げるための開口を有するフォロワプレートと、該フォロワプレートの前記開口に連通するポンプ内部空間を有すると共に前記タンク内と前記ポンプ内部空間との間で往復移動して前記タンク内の流体を前記ポンプ内部空間に汲み上げるプライマプレートを有するポンプとを備えた流体圧送装置を前提とする。そして、この流体圧送装置は、前記プライマプレートの外形形状が前記フォロワプレートの前記開口の形状に略合致しており、前記往復移動の範囲内での前記プライマプレートの位置を制御可能な位置制御部を備えており、前記位置制御部は、前記タンクの交換作業時において前記フォロワプレートを前記タンク内から取り出す際、前記プライマプレートを前記フォロワプレートの前記開口に位置させる構成となっており、前記フォロワプレートには、交換後の新たなタンク内への挿入作業時に当該タンク内のエアを抜くためのエア抜き孔が設けられており、前記プライマプレートが前記フォロワプレートの前記開口に位置した状態で当該プライマプレートにおいて前記タンク側を向く端面は、当該端面の中央側に向かうに従って前記タンク側に突出する曲面形状となっていることを特徴とする。
【0019】
このようなプライマプレートの端面の構成によれば、交換後の新たなタンク内へのフォロワプレートの挿入作業に際し、タンク内のエアを、プライマプレートの端面付近に残存させることなくエア抜き孔からタンク外に排出することが可能になる。このため、タンクの交換作業後の再稼動前に所謂ポンプの空打ちを行う必要が無くなり、タンクの交換作業に伴う流体の廃棄量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、タンク内とポンプ内部空間との間で往復移動してタンク内の流体をポンプ内部空間に汲み上げるプライマプレートの位置を制御可能な位置制御部を備えさせ、タンクの交換作業時においてフォロワプレートをタンク内から取り出す際、この位置制御部がプライマプレートをフォロワプレートの開口に位置させるようにしている。このため、フォロワプレートをタンク内から取り出す際に、ポンプ内部空間やフォロワプレートの開口の内側から流体が流出してしまって該ポンプ内部空間やフォロワプレートの開口の内側に空気が入り込むといった状況を回避でき、タンクの交換作業後の再稼動前に所謂ポンプの空打ちを行う必要が無くなり、タンクの交換作業に伴う流体の廃棄量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る流体圧送装置の一部を断面で示した図である。
【
図2】フォロワプレートおよびその周辺部を示す断面図である。
【
図4】ドラムポンプのエアモータを作動させるエア供給回路の概略構成を示す図である。
【
図5】タンクの交換作業においてタンク内から取り出される際のフォロワプレートおよびドラムポンプの一部を示す断面図である。
【
図6】タンクの交換作業においてタンク内からのフォロワプレートの取り出し開始時の状態を示す断面図である。
【
図7】タンクの交換作業においてタンク内でフォロワプレートが所定位置まで上昇した状態を示す断面図である。
【
図8】タンクの交換作業においてタンクの搬出作業後の状態を示す
図1相当図である。
【
図9】エア抜き取り作業を説明するためのフォロワプレートおよびその周辺部を示す断面図である。
【
図10】プライマプレートの下面が平坦面である場合に当該下面付近にエアが残存している状態を示す図である。
【
図11】プライマプレートをポンプロッドの下部にボルト止めした構成の場合にボルトの頭部の下面付近にエアが残存している状態を示す図である。
【
図12】変形例に係るプライマプレートの周辺を示す断面図である。
【
図13】従来の流体圧送装置の一部を断面で示した図である。
【
図14】従来のタンクの交換作業においてタンク内から取り出されるフォロワプレートおよびドラムポンプの一部を示す断面図である。
【
図15】従来技術においてポンプ内部空間等に空気が入り込む状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両の製造ラインにおいて、ワークであるウィンドガラスに塗布されるウレタン接着剤(ウィンドガラスを車体に接着するための接着剤;流体)を塗布ロボットに向けて圧送する流体圧送装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
-流体圧送装置の構成-
図1は、本実施形態に係る流体圧送装置1の一部を断面で示した図である。この図に示すように、流体圧送装置1は、タンク2、フォロワプレート3、エレベータ4、ドラムポンプ5等を備えて構成されている。
【0024】
この流体圧送装置1におけるウレタン接着剤Uの圧送動作の概略としては、
図1に示すようにタンク2にウレタン接着剤Uが貯留された状態で、ウレタン接着剤Uに対してフォロワプレート3により上側から加圧し、該フォロワプレート3の中央部に設けられている開口31からドラムポンプ5に向けてウレタン接着剤Uを押し出しながら、所定量(図示しない塗布ロボットが要求する量)のウレタン接着剤Uをドラムポンプ5によって流体経路を経て塗布ロボットに向けて圧送するようになっている。
【0025】
以下、この流体圧送装置1を構成している各構成部材について説明する。
【0026】
タンク2は、ウレタン接着剤Uが貯留(充填)されたドラム缶であって、その内部におけるウレタン接着剤Uの残量が少なくなった時点で交換される。流体圧送装置1は、ベースプレート11上にエレベータ4のシリンダ41,41が立設されており、タンク2は、このシリンダ41,41同士の間に配置される。シリンダ41,41は、エアシリンダで構成されており、そのピストンロッド42,42が上方に延在されている。このピストンロッド42,42の上端は、水平方向に沿って延在するタイバー43に取り付けられている。
【0027】
タンク2は、上部が開放されており、その開放部分がフォロワプレート3によって閉鎖されている。このフォロワプレート3の上面と前記タイバー43との間はタイロッド44,44によって連結されている。
【0028】
この構成により、シリンダ41,41の作動によってタイバー43が昇降すると、それに伴って、タイロッド44,44を介してタイバー43に連結されているフォロワプレート3も昇降するようになっている。シリンダ41,41の作動により、フォロワプレート3は、タンク2内のウレタン接着剤Uに対して上側から加圧力を付与している。この加圧力により、タンク2内のウレタン接着剤Uはフォロワプレート3に設けられている開口31を通過してドラムポンプ5に押し出されるようになっている。このタンク2内からのウレタン接着剤Uの押し出しに伴ってタンク2内のウレタン接着剤Uの残量が少なくなっていく。それに従い、フォロワプレート3がタンク2内を下降していくことになる。
【0029】
シリンダ41,41の作動によるタイバー43の昇降範囲として、該タイバー43が最上昇位置にある状態では、フォロワプレート3がタンク2の上端よりも所定寸法だけ上側に位置するようになっている。これにより、フォロワプレート3がタンク2の上端から退避することでタンク2の交換(タンク2の搬出および搬入)を可能にする。また、タイバー43が最下降位置にある状態では、フォロワプレート3がタンク2内の底部付近に達する位置となる(
図1の仮想線を参照)。
【0030】
フォロワプレート3は、前述したようにタンク2上部の開放部分を閉鎖している。この状態で、フォロワプレート3は、タンク2内のウレタン接着剤Uに対して上側から加圧力を付与している。この加圧力は、タンク2内のウレタン接着剤Uをドラムポンプ5に向けて押し出すための力として作用する。なお、この加圧力は、後述するドラムポンプ5のチェックバルブ53を開弁させない程度の値に設定されている。
【0031】
図2はフォロワプレート3およびその周辺部を示す断面図である。この
図2に示すように、フォロワプレート3は、前記ドラムポンプ5がボルト止めされる円筒形状の中央部32と、該中央部32の外周囲から外側に向かって斜め下方に傾斜する傾斜板部33と、該傾斜板部33の外周縁から所定寸法だけ上方に延在する外縁部34とが一体形成されて成っている。
【0032】
また、フォロワプレート3における傾斜板部33にはエア抜き孔38が形成されており、このエア抜き孔38にはエア抜きプラグ35が装着されている。このエア抜きプラグ35は、例えば手動操作によって開弁および閉弁が切り替え可能となっている。このエア抜きプラグ35の開弁状態では、フォロワプレート3の下側の空間と上側の空間とがエア抜き孔38によって連通される。このため、フォロワプレート3がタンク2に挿入された状態で、エア抜きプラグ35が開弁状態になると、タンク2の内部空間を大気に連通させることになる。また、このエア抜きプラグ35の閉弁状態では、フォロワプレート3の下側の空間と上側の空間とが遮断される。このため、フォロワプレート3がタンク2に挿入された状態で、エア抜きプラグ35が閉弁状態になると、タンク2の内部空間を大気から遮断することになる。なお、前記エア抜き孔38は、フォロワプレート3の傾斜板部33における周方向の複数箇所に形成されている。また、前記エア抜きプラグ35には図示しない真空引きポンプが接続されており、後述するタンク交換作業時のエア抜き取り作業では、この真空引きポンプの作動によってタンク2内の空気が真空引きされることになる。
【0033】
更に、フォロワプレート3の傾斜板部33には、ウレタン接着剤Uの硬化を抑制するために電気ヒータ36が埋設されている。また、フォロワプレート3の外縁部34の外周面には、フォロワプレート3の周方向に亘って2本のシールホース37,37が取り付けられている。このシールホース37,37は、フォロワプレート3の外周縁とタンク2の内面との間のシールを確保するためのものである。
【0034】
また、フォロワプレート3の傾斜板部33の下面には補助プレート6が装着されている。この補助プレート6は、略円錐形状の板材で成り、その頂部には開口61が形成されている。この開口61はフォロワプレート3の開口31に対向している。また、補助プレート6の上面は、フォロワプレート3の傾斜板部33の下面と略対応するように傾斜している。なお、補助プレート6は、フォロワプレート3の下面に設けられた図示しない磁石によって当該フォロワプレート3に装着されている。そして、フォロワプレート3の傾斜板部33の下面と補助プレート6の上面との間には、後述するエア抜き取り作業時に、タンク2内に存在する空気をフォロワプレート3の前記エア抜き孔38に導くための導通路62が形成されている(この導通路62を利用したエア抜き取り作業については後述する)。
【0035】
ドラムポンプ5は、タンク2内に貯留されているウレタン接着剤Uを抜き取り、そのウレタン接着剤Uを、所定量だけ流体経路を経て塗布ロボットに向けて圧送するものである。
【0036】
図3はドラムポンプ5の断面図である。また、
図4は、ドラムポンプ5に備えられたエアモータAMを作動させるエア供給回路7の概略構成を示す図である。
図3に示すように、ドラムポンプ5は、ポンプケーシング51の内部にポンプロッド52が往復移動可能に挿入されて構成されている。
【0037】
ポンプケーシング51の下部には、ドラムポンプ5をフォロワプレート3に取り付けるためのフランジ51aが設けられており、このフランジ51aがフォロワプレート3の中央部32にボルト止めされる。これにより、フォロワプレート3を介して(フォロワプレート3の中央部32の開口31を介して)、ポンプケーシング51の内部とタンク2の内部とが連通している。
【0038】
また、ポンプケーシング51の内部には、チェックバルブ53が配設されており、このチェックバルブ53によってポンプケーシング51の内部は上側空間51bと下側空間51cとに仕切られている。このチェックバルブ53は、前記上側空間51bと下側空間51c(本発明でいうポンプ内部空間)との圧力差に応じて開閉する。具体的には、下側空間51cの圧力が上側空間51bの圧力に対して所定値だけ高くなった場合にチェックバルブ53が開放され、下側空間51cから上側空間51bへウレタン接着剤Uが流入される。これに対し、上側空間51bの圧力が下側空間51cの圧力に対して高い場合や、下側空間51cの圧力が上側空間51bの圧力に対して高くなっていてもその差が所定値未満である場合にはチェックバルブ53は閉鎖され、上側空間51bと下側空間51cとの間でのウレタン接着剤Uの流通は行われないようになっている。ポンプケーシング51には、上側空間51bに連通する接着剤導出管54が接続されている。また、ポンプケーシング51の上部には、このポンプケーシング51とポンプロッド52との間をシールするパッキンシールナット55が装着されている。
【0039】
前記ポンプロッド52は、上側空間51bに位置すると共に該上側空間51bの内径寸法に対して僅かに小径とされた大径部52aと、前記チェックバルブ53に挿通され且つ前記大径部52aよりも外径寸法が小さく設定された小径部52bとを備えている。また、このポンプロッド52はエアモータAM(
図4を参照)の作動によって、ポンプケーシング51の内部を昇降(上下移動)可能となっている。
【0040】
また、小径部52bの下端部には円盤形状のプライマプレート52cが取り付けられている。このプライマプレート52cは外径寸法がポンプケーシング51の下側空間51cの内径寸法に略一致している。このため、ポンプロッド52が上昇移動してプライマプレート52cが下側空間51cに位置する状態では、この下側空間51cの下側が閉塞されることになる。
【0041】
なお、このプライマプレート52cの外径寸法は前記フォロワプレート3の開口(円形の開口)31の内径寸法よりも僅かに小さくなっている。つまり、このプライマプレート52cの外形形状はフォロワプレート3の開口31の形状に略合致している。このため、
図5に示すように、ポンプロッド52の移動に伴ってプライマプレート52cがフォロワプレート3の開口31に位置する状態では、この開口31はプライマプレート52cによって略閉塞されることになる。実際には、プライマプレート52cの外周面とフォロワプレート3の開口31の内周面との間には僅かな隙間が存在している。
【0042】
このようにしてドラムポンプ5が構成されているため、ポンプロッド52が上昇移動してプライマプレート52cが下側空間51cに位置する状態で、ポンプロッド52が更に上昇移動して、プライマプレート52cとチェックバルブ53との間の空間が小さくなっていくと、この空間の圧力が上昇し、この圧力と上側空間51bの圧力との差が所定値に達した時点でチェックバルブ53が開放してウレタン接着剤Uが上側空間51bに流入する。
【0043】
そして、
図3に仮想線で示すようにプライマプレート52cがチェックバルブ53近傍に達するまでポンプロッド52が上昇移動すると、ポンプロッド52の大径部52aの大部分はポンプケーシング51から上側へ抜け出た状態となり、このポンプケーシング51の上側空間51bの大部分に小径部52bが存在することになる。この状態では、上側空間51bにおけるポンプケーシング51の内周面と小径部52bの外周面との間の間隔が比較的大きいことから、上側空間51bに比較的多量のウレタン接着剤Uが存在した(流入された)状態となっている。
【0044】
この状態からポンプロッド52が下降移動すると、ポンプロッド52の大径部52aがポンプケーシング51の上側空間51bに入り込むことになる。これにより、上側空間51bから下側空間51cに移動した小径部52bの体積と、上側空間51bに入り込んだ大径部52aの体積との差分だけ、ウレタン接着剤Uが接着剤導出管54に向けて押し出されることになる。つまり、ポンプロッド52の下降移動量を調整することによって、ポンプケーシング51からのウレタン接着剤Uの押し出し量が調整でき、流体経路を経て塗布ロボットに向けて圧送されるウレタン接着剤Uの量を調整することが可能である。
【0045】
ここで、ポンプケーシング51の内部でポンプロッド52を昇降させるエアモータAMを作動させるエア供給回路7の概略構成について説明する。
図4に示すように、ポンプケーシング51の上部に取り付けられたエアモータAMには、第1エア供給回路71および第2エア供給回路72が接続されている。
【0046】
第1エア供給回路71は、下側空間51cへのウレタン接着剤Uの汲み上げ動作や、流体経路を経た塗布ロボットへのウレタン接着剤Uの圧送動作を行うに際してエアモータAMへのエアの供給および非供給を切り替えるものである。一方、第2エア供給回路72は、タンク2の交換に際してポンプロッド52の位置調整(開口31をプライマプレート52cによって略閉塞する位置への調整)を行うためにエアモータAMへのエアの供給および非供給を切り替えるものである。
【0047】
具体的に、第1エア供給回路71は、チェックバルブ71a、ソレノイド型の2位置方向制御弁で成る第1エア供給切替バルブ71b、仕切弁71cを備えた周知の回路である。第1エア供給切替バルブ71bが非励磁位置(
図4に示す右側へ移動した位置)にある場合には、図示しないエアポンプから供給されるエアが放出されることでエアモータAMにはエア供給が行われない。一方、後述する第2エア供給切替バルブ72cが
図4に示す位置にある状態で第1エア供給切替バルブ71bが励磁位置(
図4において左側へ移動した位置)に切り替えられると、エアポンプから供給されるエアがエアモータAMに供給され、エアモータAMの作動によってポンプロッド52の昇降が行われる。このような第1エア供給切替バルブ71bの切り替え動作により、前述した下側空間51cへのウレタン接着剤Uの汲み上げ動作や、流体経路を経た塗布ロボットへのウレタン接着剤Uの圧送動作が行われることになる。エアモータAMの具体構成および該エアモータAMの作動によってポンプロッド52を昇降させる機構については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
一方、第2エア供給回路72は、チェックバルブ72a、仕切弁72b、ソレノイド型の2位置方向制御弁で成る第2エア供給切替バルブ72cを備えている。この仕切弁72bと第2エア供給切替バルブ72cとの間のエア配管に前記第1エア供給切替バルブ71bが配管を介して接続されている。また、第2エア供給切替バルブ72cとエアモータAMとの間にはエアフィルタAFが介在されている。第1エア供給切替バルブ71bが
図4に示す位置にある状態で第2エア供給切替バルブ72cが励磁位置(
図4において左側へ移動した位置)にある場合には、エアポンプから供給されるエアが放出されることでエアモータAMにはエア供給が行われない。一方、第2エア供給切替バルブ72cが非励磁位置(
図4に示す右側へ移動した位置)に切り替えられると、エアポンプから供給されるエアがエアモータAMに供給され、エアモータAMの作動によってポンプロッド52の昇降が行われる。
【0049】
ドラムポンプ5には、ポンプロッド52の昇降位置を検出することでプライマプレート52cが開口31を略閉塞した位置に達したことを推定するための近接スイッチSWが備えられている、この近接スイッチSWは、ポンプケーシング51内を昇降するポンプロッド52の特定の部位を検出するものであって、タンク2の交換に際して、当該部位の位置が、プライマプレート52cが開口31を略閉塞した位置に対応する位置に達した時点で、後述するコントローラ100(
図3を参照)に検知信号を発信するようになっている。
【0050】
このため、タンク2の交換に際して、ポンプロッド52の昇降位置が、プライマプレート52cによって開口31が略閉塞される位置となった時点で近接スイッチSWから検知信号が発信され、それに伴って第2エア供給切替バルブ72cを切り替えてエアモータAMを停止することにより、プライマプレート52cによって開口31が略閉塞されることになる。
【0051】
前述した第1エア供給切替バルブ71bの動作は、塗布ロボットが要求するウレタン接着剤Uの量の情報をコントローラ100が受け、このコントローラ100が第1エア供給切替バルブ71bの切り替え動作を行うことでポンプロッド52の下降移動量を調整することによって行われる。また、前述した第2エア供給切替バルブ72cの動作も、タンク2の交換要求情報をコントローラ100が受け、このコントローラ100が第2エア供給切替バルブ72cの切り替え動作を行うことで、プライマプレート52cによって開口31が略閉塞される位置にポンプロッド52を停止させることによって行われる。このように、プライマプレート52cによって開口31が略閉塞される位置にポンプロッド52を停止させるための第2エア供給切替バルブ72cを備えさせたことにより、比較的安価な構成で、プライマプレート52cによって開口31を略閉塞させることが可能になる。
【0052】
このため、コントローラ100には、ポンプロッド52の位置を調整する機能部として位置制御部101が設けられている。この位置制御部101は、前述したウレタン接着剤Uの圧送量の調整のためのポンプロッド52の位置調整だけでなく、タンク2の交換時におけるポンプロッド52の位置調整(プライマプレート52cの位置調整)も行うようになっている。
【0053】
なお、フォロワプレート3の昇降に伴ってドラムポンプ5が昇降してもウレタン接着剤Uの圧送が良好に行われるように前記流体経路は可撓性を有する配管8を備えた構成となっている。
【0054】
-流体圧送装置の動作-
次に、前述の如く構成された流体圧送装置1の動作について説明する。
図1は、タンク2にウレタン接着剤Uが満充填された状態を示している。この状態からウレタン接着剤Uの圧送が開始されると、エレベータ4のシリンダ41,41の作動によってタイバー43が下降し、これによってフォロワプレート3が、タンク2内のウレタン接着剤Uに対して上側から加圧力を付与する。この加圧力に起因してタンク2内のウレタン接着剤Uの一部がドラムポンプ5に向けて流動する。
【0055】
一方、ドラムポンプ5のポンプロッド52は、プライマプレート52cを上下移動させることによってタンク2内のウレタン接着剤Uをドラムポンプ5の下側空間51cに汲み上げる。このプライマプレート52cの上昇移動によって該プライマプレート52cが下側空間51cに位置する状態で、ポンプロッド52が更に上昇移動すると、プライマプレート52cとチェックバルブ53との間の空間が小さくなっていき、この空間の圧力が上昇し、この圧力と上側空間51bの圧力との差が所定値に達した時点でチェックバルブ53が開放してウレタン接着剤Uが上側空間51bに流入する。そして、その後、ポンプロッド52が下降移動すると、その下降移動量に応じてポンプケーシング51から接着剤導出管54に所定量だけウレタン接着剤Uが押し出され、そのウレタン接着剤Uが、流体経路を経て塗布ロボットに向けて圧送される。このウレタン接着剤Uは塗布ロボットによってウィンドガラスに塗布される。このポンプロッド52の下降移動(ポンプケーシング51から接着剤導出管54へのウレタン接着剤Uの押し出し動作)は、ウィンドガラスに対するウレタン接着剤Uの塗布動作が実施される度に間欠的に行われる。
【0056】
このようなタンク2からドラムポンプ5へのウレタン接着剤Uの流入動作、および、ドラムポンプ5による流体経路へのウレタン接着剤Uの圧送動作が継続されるに従って、タンク2内のウレタン接着剤Uが消費されていく。それに伴い、タンク2内のウレタン接着剤Uの残量が少なくなっていくことでフォロワプレート3がタンク2内を下降していく。
【0057】
そして、
図1に仮想線で示すようにフォロワプレート3がタンク2内の底部付近に達すると、タンク2の交換が必要となる。前記タイバー43の昇降位置は図示しないセンサによってセンシングされており、このタイバー43の昇降位置が所定位置(フォロワプレート3がタンク2内の底部付近に達する位置)に達すると、作業者にタンク2の交換を促すための情報が発信される。例えば図示しない操作盤に備えられたランプの点灯や、音声の発信等が行われる。
【0058】
-タンク交換作業-
次に、タンク2の交換時の作業について説明する。このタンク2の交換時の作業としては、先ず、タンク2内の底部付近に達しているフォロワプレート3をタンク2から取り出す作業が行われる。この作業では、エア抜きプラグ35が開弁状態とされ、タンク2の内部空間をエア抜き孔38を介して大気に連通させた状態でエレベータ4のシリンダ41,41を作動させてフォロワプレート3を引き上げる。この際、エア抜き孔38からタンク2内に空気が流入し、このフォロワプレート3の引き上げを容易に行うことができる。
【0059】
そして、本実施形態の特徴は、このフォロワプレート3をタンク2から取り出す作業が行われる際のプライマプレート52cの位置制御にある。前述したように、プライマプレート52cの位置は、コントローラ100に設けられた位置制御部101によって制御される。具体的には、このフォロワプレート3をタンク2から取り出す作業が行われる際、位置制御部101は、前記第2エア供給切替バルブ72cを切り替え制御してポンプロッド52の位置を調整し、プライマプレート52cをフォロワプレート3の開口31に位置させる(
図5を参照)。例えばプライマプレート52cの下面とフォロワプレート3の中央部32の下面とが面一となる位置にプライマプレート52cの位置調整が行われる。これにより、フォロワプレート3の開口31はプライマプレート52cによって略閉塞される。
【0060】
図6は、タンク2の交換作業においてタンク2内からのフォロワプレート3の取り出し開始時の状態を示す断面図である。この
図6に示すように、プライマプレート52cがフォロワプレート3の開口31に位置され、このフォロワプレート3の開口31をプライマプレート52cによって略閉塞した状態でフォロワプレート3の取り出しが開始される。
【0061】
そして、
図7に示すように、タンク2内でフォロワプレート3が所定位置まで上昇した状態にあっては、ウレタン接着剤Uの粘性によって、タンク2内に残存するウレタン接着剤Uの一部が、プライマプレート52cの下面に付着した状態のままフォロワプレート3が上昇していくことになるが、フォロワプレート3の開口31はプライマプレート52cによって略閉塞されているため、ドラムポンプ5の下側空間51c内のウレタン接着剤Uおよびフォロワプレート3の開口31の内側のウレタン接着剤Uがタンク2側に引きずられるといった状況は生じず、ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側に空気が入り込むことが阻止される。
【0062】
前述したように、フォロワプレート3の開口31がプライマプレート52cによって略閉塞された状態にあっては、プライマプレート52cの外周面とフォロワプレート3の開口31の内周面との間には僅かな隙間が存在している。この隙間は、ウレタン接着剤Uの粘性によって該ウレタン接着剤Uが流れ落ちない程度の隙間として設定される。つまり、ウレタン接着剤Uの粘性が高いほど、この隙間を大きくする許容範囲が拡大する。この隙間(プライマプレート52cの外径寸法に応じて決定される隙間)は、ウレタン接着剤Uの粘性を考慮し、実験またはシミュレーションによって予め決定されている。
【0063】
このため、この状態でフォロワプレート3を更に上昇させても、ドラムポンプ5の下側空間51cおよびフォロワプレート3の開口31の内側の全体にウレタン接着剤Uが充填された状態が維持されることになる。つまり、フォロワプレート3をタンク2内から取り出した際に、ドラムポンプ5の下側空間51cおよびフォロワプレート3の開口31の内側からウレタン接着剤Uが流出してしまって該下側空間51cおよびフォロワプレート3の開口31の内側に空気が入り込む状況を回避できる。
【0064】
このような状態において、フォロワプレート3をタンク2の上端よりも所定寸法だけ上側に位置させて、タンク2の上端から退避させ、フォロワプレート3に付着しているウレタン接着剤Uの除去作業を行うと共に、空となったタンク2の搬出作業を行う。
図8は、タンク2の搬出作業後の状態を示す
図1相当図である。
【0065】
その後、新たなタンク(ウレタン接着剤Uが貯留されているタンク)2の搬入作業を行う。つまり、この新たなタンク2をベースプレート11上に配置する。その後、シリンダ41,41を作動させてフォロワプレート3を下降させ、タンク2の内部に挿入していく。
図9に示すように、フォロワプレート3をタンク2の内部に挿入した時点では、フォロワプレート3とウレタン接着剤Uとの間に空気が存在しているので、この空気を排出する作業(エア抜き取り作業)を行う。このエア抜き取り作業では、エア抜きプラグ35(
図9では図示省略)を開放して前記真空引きポンプを作動させると共に、フォロワプレート3を下降させていき、これによってエア抜き孔38から空気を排出していく。
【0066】
具体的に、このエア抜き取り作業では、エア抜き孔38から空気を排出しながらフォロワプレート3を下降させていくに従ってウレタン接着剤Uの上面が補助プレート6の下面に接触する状態となる。この状態では、フォロワプレート3の下面と補助プレート6の上面との間に前記導通路62が確保されているため、この導通路62を通って、タンク2内の空気はエア抜き孔38を経て排出されることになる(
図9における破線の矢印を参照)。つまり、タンク2内の空気とエア抜き孔38との間が導通路62によって連通された状態が維持されることで効果的に空気が排出される。そして、タンク2内の空気が外部に排出されると、真空引きポンプを停止させると共にエア抜きプラグ35を閉鎖し、これによってエア抜き取り作業が完了する。なお、タンク2内の空気が外部に排出されたことを検知するための手段の一例としては、真空引きポンプに備えられた真空計によって計測されている真空度が予め設定された閾値を超えた場合にタンク2内の空気が外部に排出されたと判断する。
【0067】
このようにしてタンク2内の空気が外部に排出されると、該タンク2内のウレタン接着剤Uと、ドラムポンプ5の下側空間51cおよびフォロワプレート3の開口31の内側の全体に充填されていたウレタン接着剤Uとが合体し、タンク2内、ドラムポンプ5の下側空間51cおよびフォロワプレート3の開口31の内側の全体に亘って空気が残存しない状態で流体圧送装置1の再稼動が可能となる。
【0068】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、タンク2内とドラムポンプ5の下側空間51cとの間で往復移動してタンク2内のウレタン接着剤Uを下側空間51cに汲み上げるプライマプレート52cの位置を制御可能な位置制御部101を備えさせ、フォロワプレート3をタンク2内から取り出す際、この位置制御部101がプライマプレート52cをフォロワプレート3の開口31に位置させるようにしている。このため、フォロワプレート3をタンク2内から取り出した際に、ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側からウレタン接着剤Uが流出してしまって該ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側に空気が入り込む状況を回避でき、タンク2の交換作業後の再稼動前に所謂ポンプの空打ちを行う必要が無くなり、ウレタン接着剤Uの廃棄量を少なくすることができる。
【0069】
特に、ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側からウレタン接着剤Uが流出してしまうことを防止する手段として、フォロワプレート3の開口31にチェック弁を設けることも考えられるが、本実施形態では、ドラムポンプ5のプライマプレート52cを有効利用してウレタン接着剤Uの流出を防止しているため、チェック弁等の特別な手段を必要とすることがなく、流体圧送装置1の構成の複雑化を招くこともない。
【0070】
-プライマプレートの変形例-
次に、プライマプレート52cの変形例について説明する。前述した実施形態におけるプライマプレート52cは、その下面が平坦面であった。この場合、エア抜き取り作業(タンク交換作業時のエア抜き取り作業)において、このプライマプレート52cの下面付近にエアが残存してしまう可能性があった。
図10は、プライマプレート52cの下面の全体を平坦面とした場合に、エア抜き取り作業の終了時点でプライマプレート52cの下面付近にエアAiが残存している状態を示している。
【0071】
また、
図11に示すように、プライマプレート52cをポンプロッド52の下部にボルト止めした構成(下側からボルト止めした構成)の場合にあっても、ボルトBの頭部の下面(平坦面)付近やプライマプレート52cの下面付近にエアAiが残存してしまう可能性があった。
【0072】
このようなエアAiが残存している状態にあっては、このエアAiがドラムポンプ5に流れ込んでしまう虞がある。
【0073】
本変形例は、エア抜き取り作業においてプライマプレート52cの下面付近にエアが残存してしまうことを抑制するために、プライマプレート52cの下面の形状を改良したものである。
【0074】
図12は、本変形例に係るプライマプレート52cの周辺を示す断面図である。この
図12に示すように、本変形例に係るプライマプレート52cは、その下面が、当該下面の中央側に向かうに従って下側に膨出するような曲面形状となっている。
【0075】
より具体的に、当該下面の中央部分は下側に凸状とされた略球面状の中央曲面部52dとなっているのに対し、この中央曲面部52dよりも外周側の部分は、当該中央曲面部52dに滑らかに連続し且つ僅かに凹状の曲面の外側曲面部52eとなっている。そして、中央曲面部52dの曲率(下側に凸状とされた曲率)が外側曲面部52eの曲率(凹状とされた曲率)に比べて大きくなっている。このように本変形例におけるプライマプレート52cの下面は下側に凸状とされた所謂陣笠のような形状とされている。
【0076】
このようなプライマプレート52cの下面の形状が、本発明でいう、「プライマプレートがフォロワプレートの開口に位置した状態で当該プライマプレートにおいてタンク側を向く端面は、当該端面の中央側に向かうに従ってタンク側に突出する曲面形状となっている」構成に相当する。
【0077】
このような構成により、交換後の新たなタンク2内へのフォロワプレート3の挿入作業にあっては、タンク2内のウレタン接着剤Uが、図中の矢印で示すように、フォロワプレート3の下面(より具体的には、補助プレート6の下面)およびプライマプレート52cの下面に沿うように流動する。つまり、フォロワプレート3の下面とプライマプレート52cの下面との間の領域に集まるように流動する。これにより、補助プレート6の下面とウレタン接着剤Uとの間や、プライマプレート52cの下面(中央曲面部52dおよび外側曲面部52e)とウレタン接着剤Uとの間に空気を残存させることなく、タンク2内の空気を導通路62を経てエア抜き孔38(
図12では図示省略)に送り出すことが可能となっている。特に、プライマプレート52cはフォロワプレート3の開口31に位置されているため、フォロワプレート3の挿入作業に伴ってフォロワプレート3の下面がウレタン接着剤Uを押しのける動作と、プライマプレート52cの下面(補助プレート6の下面)がウレタン接着剤Uを押しのける動作とが同時に行われることになる。このため、タンク2内のエアを、プライマプレート52cの端面付近に残存させることなくエア抜き孔38からタンク2外に排出することが可能になる。
【0078】
特に、タンク2内へのフォロワプレート3の挿入作業に際し、ウレタン接着剤Uの上面が水平とはなっていない状況であっても(例えばウレタン接着剤Uの上面の一部が上側に凸状となっていたり、上面が一方側に向けて傾斜していたりする状況であっても)、プライマプレート52cの端面付近にエアを残存させないようにウレタン接着剤Uを流動させることができ、効果的にエア抜き孔38からタンク2外にエアを排出することが可能である。
【0079】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態および前記変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0080】
例えば、前記実施形態および前記変形例では、車両の製造ラインにおいて、ウィンドガラスに塗布されるウレタン接着剤Uを塗布ロボットに向けて圧送する流体圧送装置1に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ウレタン接着剤U以外の流体を流体経路に向けて圧送する流体圧送装置に対して適用することも可能である。
【0081】
また、前記実施形態では、フォロワプレート3をタンク2から取り出す作業の際、プライマプレート52cの下面とフォロワプレート3の中央部32の下面とが面一となる位置にプライマプレート52cの位置調整を行っていた。本発明はこれに限らず、ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側からウレタン接着剤Uが流出しない位置にプライマプレート52cを位置調整すればよく、プライマプレート52cの下面をフォロワプレート3の中央部32の下面よりも僅かに下側の位置としたり、僅かに上側の位置としたりするものであってもよい。
【0082】
また、前記実施形態および前記変形例では、フォロワプレート3が、タンク2内のウレタン接着剤Uに対して上側から加圧力を付与するものとしていた。本発明はこれに限らず、フォロワプレートが、タンク内のウレタン接着剤に対して横方向(水平方向)から加圧力を付与するものとしてもよい。
【0083】
また、前記実施形態および前記変形例では、タンク2の交換作業後の再稼動前に所謂ポンプの空打ちを行わないものとしたが、本発明はこのポンプの空打ちを完全に排除するものではなく、必要に応じてポンプの空打ちを行うようにしてもよい。但し、この場合にも、ドラムポンプ5の下側空間51cやフォロワプレート3の開口31の内側に空気が入り込んでいないことから、ポンプの空打ちの回数を削減でき、ウレタン接着剤Uの廃棄量を少なくすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車両の製造ラインにおいて、ウィンドガラスに塗布されるウレタン接着剤を塗布ロボットに向けて圧送する流体圧送装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 流体圧送装置
2 タンク
3 フォロワプレート
31 開口
38 エア抜き孔
5 ドラムポンプ(ポンプ)
51c 下側空間(ポンプ内部空間)
52c プライマプレート
52d 中央曲面部
52e 外側曲面部
72c 第2エア供給切替バルブ
101 位置制御部
U ウレタン接着剤(流体)
AM エアモータ