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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-19
(45)【発行日】2023-09-27
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20230920BHJP
【FI】
B21D26/033
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020036992
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137834
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/078356(WO,A1)
【文献】特開平10-156429(JP,A)
【文献】特開2002-011529(JP,A)
【文献】特開2000-271664(JP,A)
【文献】国際公開第2021/29392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプ材料を成形する成形装置であって、
前記金属パイプ材料を成形する複数セットの成形部と、
前記金属パイプ材料に流体を供給する流体供給部を少なくとも備えるユニットと、を備え、
前記ユニットは、複数セットの前記成形部に対して相対的に移動可能であり、
前記複数セットの成形部の各々では、配置された前記金属パイプ材料に対する加熱、前記流体供給部の前記流体の供給による膨張、及び成形が行われる、成形装置。
【請求項2】
複数セットの前記成形部は固定されており、
前記ユニットが移動可能である、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
複数セットの前記成形部は、水平方向に並べられており、
前記ユニットは前記水平方向に移動可能である、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記ユニットは、更に、高さ方向に移動可能である、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記ユニットは、更に、前記成形部の奥行方向に移動可能である、請求項3又は4に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この成形装置は、金属パイプを成形する一セットの成形金型と、金属パイプに流体を供給する一セットの流体供給部と、を備える。成形装置が成形を行う場合、流体供給部が金属パイプ材料に流体を供給し、成形金型と接触させることで、金属パイプ材料の形状を成形金型の成形面の形状とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-220141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の特許文献1に記載の成形装置において、複数の形状の金属パイプを成形しようとする場合、複数セットの成形金型を準備すると共に、同セット数の流体供給部を準備する必要がある。この場合、流体供給部を複数セット設ける必要があり、装置製造コストが上昇する。また、金型交換時には複数セットの流体供給部も全て交換する必要があるため、交換に要する手間や時間が増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、装置製造コストを低減し、金型交換時の作業の容易性を向上できる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形装置は、金属パイプ材料を成形する成形装置であって、金属パイプ材料を成形する複数セットの成形部と、金属パイプ材料に流体を供給する流体供給部を少なくとも備えるユニットと、を備え、ユニットは、複数セットの成形部に対して相対的に移動可能である。
【0007】
成形装置は、複数セットの成形部を備える。これに対し、流体供給部を少なくとも備えるユニットは、複数セットの成形部に対して相対的に移動可能である。ある成形部が成形を行うとき、ユニットは当該成形部に対してセットされる。そして、他の成形部が成形を行うとき、ユニットは、他の成形部の方へ移動することができる。これにより、複数セットの成形部に対して、同じセット数のユニットを設ける必要がなくなる。これにより、ユニットの数を低減することで装置製造コストを低減することができる。また、成形部を構成する成形金型を交換するときには、少ない数のユニットを交換すればよいため、交換作業に要する手間や時間を抑制できる。以上より、装置製造コストを低減し、金型交換時の作業の容易性を向上できる。
【0008】
複数セットの成形部は固定されており、ユニットが移動可能であってよい。ユニットは成形部よりも重量が軽いため、ユニットを相対的に移動させるための機構を簡素化することができる。
【0009】
複数セットの成形部は、水平方向に並べられており、ユニットは水平方向に移動可能であってよい。ユニットを水平方向に移動させて成形部を切り替えるための機構は、例えば高さ方向に成形部を切り替えるよりも簡素化できる。
【0010】
ユニットは、更に、高さ方向に移動可能であってよい。この場合、各成形部にセットされた金属パイプ材料に対し、高さ方向の位置調整を行うことができる。
【0011】
ユニットは、更に、成形部の奥行方向に移動可能であってよい。この場合、各成形部にセットされた金属パイプ材料に対し、奥行き方向の位置調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置製造コストを低減し、金型交換時の作業の容易性を向上できる成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の本実施形態に係る成形装置の概略図である。
図2】2(a)は、保持部、加熱部、及び流体供給部の構成要素をユニット化した加熱膨張ユニットを示す概略側面図であり、(b)は、ノズルが金属パイプ材料をシールした時の様子を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る成形装置の概略平面図である。
図4】金属パイプ材料の端部付近の様子を示す拡大断面図である。
図5】加熱膨張ユニットの位置調整機構の一例を示す概念図である。
図6】変形例に係る成形装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る成形装置1の概略図である。図1に示すように、成形装置1は、ブロー成形によって中空形状を有する金属パイプを成形する装置である。本実施形態では、成形装置1は、水平面上に設置される。成形装置1は、成形金型2と、駆動機構3と、保持部4と、加熱部5と、流体供給部6と、冷却部7と、制御部8と、を備える。なお、本明細書において、金属パイプは、成形装置1での成形完了後の中空物品を指し、金属パイプ材料40(金属材料)は、成形装置1での成形完了前の中空物品を指す。金属パイプ材料40は、焼入れ可能な鋼種のパイプ材料である。また、水平方向のうち、成形時において金属パイプ材料40が延びる方向を「長手方向」と称し、長手方向と直交する方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0016】
成形金型2は、金属パイプ材料40を金属パイプに成形する型であり、上下方向に互いに対向する下型11(第1の金型)及び上型12(第2の金型)を備える。下型11及び上型12は、鋼鉄製ブロックで構成される。下型11及び上型12のそれぞれには、金属パイプ材料40が収容される凹部が設けられる。下型11と上型12は、互いに密接した状態(型閉状態)で、各々の凹部が金属パイプ材料を成形すべき目標形状の空間を形成する。従って、各々の凹部の表面が成形金型2の成形面となる。下型11は、ダイホルダ等を介して基台13に固定される。上型12は、ダイホルダ等を介して駆動機構3のスライドに固定される。
【0017】
駆動機構3は、下型11及び上型12の少なくとも一方を移動させる機構である。図1では、駆動機構3は、上型12のみを移動させる構成を有する。駆動機構3は、下型11及び上型12同士が合わさるように上型12を移動させるスライド21と、上記スライド21を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ22と、スライド21を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ23と、メインシリンダ23に駆動力を付与する駆動源24と、を備えている。
【0018】
保持部4は、下型11及び上型12の間に配置される金属パイプ材料40を保持する機構である。保持部4は、成形金型2の長手方向における一端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、成形金型2の長手方向における他端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、を備える。長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27は、金属パイプ材料40の端部付近を上下方向から挟み込むことによって、当該金属パイプ材料40を保持する。なお、下側電極26の上面及び上側電極27の下面には、金属パイプ材料40の外周面に対応する形状を有する溝部が形成される。下側電極26及び上側電極27には、図示されない駆動機構が設けられており、それぞれ独立して上下方向へ移動することができる。
【0019】
加熱部5は、金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、金属パイプ材料40へ通電することで当該金属パイプ材料40を加熱する機構である。加熱部5は、下型11及び上型12の間にて、下型11及び上型12から金属パイプ材料40が離間した状態にて、当該金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、上述の長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27と、これらの電極26,27を介して金属パイプ材料へ電流を流す電源28と、を備える。
【0020】
流体供給部6は、下型11及び上型12の間に保持された金属パイプ材料40内に高圧の流体を供給するための機構である。流体供給部6は、加熱部5で加熱されることで高温状態となった金属パイプ材料40に高圧の流体を供給して、金属パイプ材料40を膨張させる。流体供給部6は、成形金型2の長手方向の両端側に設けられる。流体供給部6は、金属パイプ材料40の端部の開口部から当該金属パイプ材料40の内部へ流体を供給するノズル31と、ノズル31を金属パイプ材料40の開口部に対して進退移動させる駆動機構32と、ノズル31を介して金属パイプ材料40内へ高圧の流体を供給する供給源33と、を備える。駆動機構32は、流体供給時及び排気時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部にシール性を確保した状態で密着させ、その他の時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部から離間させる。なお、流体供給部6は、流体として、高圧の空気や不活性ガスなどの気体を供給してよい。
【0021】
冷却部7は、成形金型2を冷却する機構である。冷却部7は、成形金型2を冷却することで、膨張した金属パイプ材料40が成形金型2の成形面と接触したときに、金属パイプ材料40を急速に冷却することができる。冷却部7は、下型11及び上型12の内部に形成された流路36と、流路36へ冷却水を供給して循環させる水循環機構37と、を備える。
【0022】
制御部8は、成形装置1全体を制御する装置である。制御部8は、駆動機構3、保持部4、加熱部5、流体供給部6、及び冷却部7を制御する。制御部8は、金属パイプ材料40を成形金型2で成形する動作を繰り返し行う。
【0023】
具体的に、制御部8は、例えば、ロボットアーム等の搬送手段を制御して、開いた状態の下型11及び上型12の間に金属パイプ材料40を配置する。あるいは、制御部8は、作業者が手動で下型11及び上型12の間に金属パイプ材料40を配置することを待機してよい。また、制御部8は、長手方向の両側の下側電極26で金属パイプ材料40を支持し、その後に上側電極27を降ろして当該金属パイプ材料40を挟むように、保持部4のアクチュエータ等を制御する。また、制御部8は、加熱部5を制御して、金属パイプ材料40を通電加熱する。これにより、金属パイプ材料40に軸方向の電流が流れ、金属パイプ材料40自身の電気抵抗により、金属パイプ材料40自体がジュール熱によって発熱する。
【0024】
制御部8は、駆動機構3を制御して上型12を降ろして下型11に近接させ、成形金型2の型閉を行う。その一方、制御部8は、流体供給部6を制御して、ノズル31で金属パイプ材料40の両端の開口部をシールすると共に、流体を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料40が膨張して成形金型2の成形面と接触する。そして、金属パイプ材料40は、成形金型2の成形面の形状に沿うように成形される。なお、フランジ付きの金属パイプを形成する場合、下型11と上型12との間の隙間に金属パイプ材料40の一部を進入させた後、更に型閉を行って、当該進入部を押しつぶしてフランジ部とする。金属パイプ材料40が成形面に接触すると、冷却部7で冷却された成形金型2で急冷されることによって、金属パイプ材料40の焼き入れが実施される。
【0025】
図2を参照して、保持部4、加熱部5、及び流体供給部6の構成について更に詳細に説明する。図2(a)は、保持部4、加熱部5、及び流体供給部6の構成要素をユニット化した加熱膨張ユニット50を示す概略側面図である。図2(b)は、ノズル31が金属パイプ材料40をシールした時の様子を示す断面図である。なお、図2では、金属パイプ材料40の長手方向における一方の端部に対する加熱膨張ユニット50が示されているが、他方の端部に対する加熱膨張ユニット50も同趣旨の構成を有している。
【0026】
図2(a)に示すように、加熱膨張ユニット50は、上述の下側電極26及び上側電極27と、各電極26,27を搭載した電極搭載ユニット51、上述のノズル31及び駆動機構32と、昇降ユニット52と、ユニットベース53と、を備える。なお、以降の説明においては、電極26,27で保持する箇所における金属パイプ材料40の中心線の位置に基準線SL1を設定して説明を行う。なお、当該基準線SL1が延びる方向を軸方向と称する場合がある。また、各電極26,27の対向方向及び軸方向と直交する方向を昇降方向と称する場合がある。
【0027】
下側電極26と上側電極27は、いずれも絶縁板で板状導体を挟むことによって構成される、矩形の平板状電極である。下側電極26の中央上端部と上側電極27の中央下端部とには、それぞれ、平板面を垂直に貫通するように半円状の溝部が形成されている。そして、下側電極26と上側電極27とを同一平面上に配置して、下側電極26の上端部と上側電極27の下端部とを密接させると、相互の半円状の溝部が合致して円形の貫通孔となる。この円形の貫通孔は、基準線SL1を中心線とし、金属パイプ材料40の端部の外径と略一致している。金属パイプ材料40への通電の際には、金属パイプ材料40の端部は、円形の貫通孔に嵌合された状態で下側電極26と上側電極27とにより把持される。このとき、下側電極26及び上側電極27の板状導体の溝部の内周面26a,27aは、金属パイプ材料40に対する接触面であり、且つ、通電面となる(図3も参照)。なお、金属パイプ材料40の端部の外形は、円形に限られない。従って、下側電極26と上側電極27のそれぞれの溝部は、それぞれ、金属パイプ材料40の端部の外形を半割した形状とされる。
【0028】
電極搭載ユニット51は、昇降ユニット52によってユニットベース53の上面に対して垂直な方向に沿って昇降動作が付与される昇降フレーム54と、昇降フレーム54に設けられて下側電極26を保持する下側電極フレーム56と、下側電極フレーム56の上側に設けられ、上側電極27を保持する上側電極フレーム57とを備えている。各電極フレーム56,57は、図示されないアクチュエータ及びガイド機構を備えており、各電極26,27を保持した状態でユニットベース53に対して軸方向及び昇降方向にスライド可能に構成されている。従って、各電極フレーム56,57は、各電極26,27を移動させる駆動機構60の一部として機能する。
【0029】
ノズル31は、金属パイプ材料40の端部を挿入可能な円筒部材である。ノズル31は、当該ノズル31の中心線が基準線SL1と一致するように、駆動機構32に支持されている。金属パイプ材料40側のノズル31の端部(供給口31a(図2(b)参照)と称する)の内径は、膨張成形後の金属パイプ材料40の外径に略一致している。
【0030】
駆動機構32は、昇降ユニット52に搭載されている。従って、昇降ユニット52による昇降動作が行われた場合には、駆動機構32は電極搭載ユニット51と一体的に昇降する。駆動機構32は、電極搭載ユニット51の下側電極26と上側電極27とが金属パイプ材料40の端部を把持した状態において、当該金属パイプ材料40の端部とノズル31とが同心となる位置にノズル31を支持する。
【0031】
駆動機構32は、ノズル31を軸方向に沿って移動させるノズル移動用アクチュエータとして、油圧シリンダ機構を有している。この油圧シリンダ機構は、ノズル31を保持するピストン61(支持部の一例)と、ピストン61に進退移動を付与するシリンダ62とを備えている。シリンダ62は、ピストン61を軸方向に平行に進退移動させる向きで昇降フレーム54に固定されている。このシリンダ62は、図示されない油圧回路に接続され、内部に作動流体である圧油の供給と排出が行われる。油圧回路は、制御部8によってシリンダ62への圧油の供給と排出が制御される。
【0032】
ピストン61は、シリンダ62内に格納された本体部61aと、シリンダ62の左端部(下側電極26及び上側電極27側)から外部に突出する頭部61bと、シリンダ62の後端部から外部に突出する管状部61cとを備えている。本体部61aと頭部61bと管状部61cとは、いずれも円筒状であって、同心で一体的に形成されている。本体部61aは、外径がシリンダ62の内径に略一致している。そして、シリンダ62内では、本体部61aの両側に油圧が供給されて、ピストン61の進退移動が行われる。頭部61bの先端部にはノズル31が同心で固定装備されている。ノズル31及びピストン61には、基準線SL1の位置において全長にわたって貫通する圧縮気体の流路63が形成されている。
【0033】
昇降ユニット52は、ユニットベース53の上面に取り付けられる昇降フレームベース64と、これらの昇降フレームベース64によって、電極搭載ユニット51の昇降フレーム54に対して昇降動作を付与する昇降用アクチュエータ66とを備えている。昇降フレームベース64は、昇降フレーム54をユニットベース53の上面に対して昇降方向に昇降可能に支持している。昇降フレームベース64は、ユニットベース53に対する昇降フレーム54の昇降動作をガイドするガイド部64a,64bを有する。昇降用アクチュエータ66は、ユニットベース53に対する駆動力を昇降フレーム54に付与する直動式のアクチュエータであり、例えば、油圧シリンダ等を使用することが出来る。なお、昇降ユニット52は、保持部4の駆動機構60の一部として機能する。
【0034】
ユニットベース53は、昇降ユニット52を介して電極搭載ユニット51及び駆動機構32を上面に支持する平面視で矩形の板状ブロックである。ユニットベース53は、水平面である基台13(図1参照)の上面にボルト等の固定手段により取り付けられ、取り外しが可能となっている。加熱膨張ユニット50は、上面の傾斜角度が異なる複数のユニットベース53を有し、これらを交換することにより、下側電極26及び上側電極27、ノズル31、電極搭載ユニット51、駆動機構32、昇降ユニット52の傾斜角度を一括的に変更調節することを可能としている。例えば、端部における金属パイプ材料40の中心線が傾斜している場合、ユニットベース53は、当該傾斜に応じて基準線SL1が傾斜するように、各構成要素を傾斜させる。
【0035】
次に、図3図5を参照して、成形装置1の更に詳細な構成について説明する。図3は、本実施形態に係る成形装置1の概略平面図である。図3では、上型12が省略されている。図4は、金属パイプ材料40の端部付近の様子を示す拡大断面図である。図5は、加熱膨張ユニット50の位置調整機構70の一例を示す概念図である。
【0036】
図3に示すように、成形装置1は、二セットの成形部100A,100Bを有する。一つの下型11及び一つの上型12を有する成形金型2によって一セット目の成形部100Aが構成され、別の下型11及び別の上型12を有する成形金型2によって二セット目の成形部100Bが構成される。成形部100A,100Bは、水平方向に並べられている。以降の説明では、成形部100Aに配置される金属パイプ材料40を「金属パイプ材料40A」と称し、成形部100Bに配置される金属パイプ材料40を「金属パイプ材料40B」と称する。成形部100A,100Bは、金属パイプ材料40A,40Bの長手方向が互いに平行な状態で、幅方向に互いに隣り合うように並べられる。図3に示す例では、成形部100Aの下型11と、成形部100Bの下型11とは、互いに別体の鋼鉄製ブロックで構成されている。互いに別体となった成形部100Aの下型11、及び成形部100Bの下型11が、互いに並べられた状態で基台13に固定される。また、互いに別体となった成形部100Aの上型12、及び成形部100Bの上型12が、互いに並べられた状態でスライド21に固定される(図1参照)。なお、成形金型2Aの下型11と成形金型2Bの下型11とは、一体の鋼鉄製ブロックで構成されていてもよい。すなわち、一つの大きな鋼鉄製ブロックに、金属パイプ材料40Aに対する成形面、及び金属パイプ材料40Bに対する成形面が形成されていてもよい。上型12も同様である。このような場合であっても、成形部は二セットとカウントされる。なお、成形部100Aの上型12と成形部100Bの上型12とは、共通の駆動源24によって駆動してもよく、互いに独立した駆動源24によって個別に駆動してもよい。
【0037】
成形装置1は、二セットの成形部100A,100Bに対して、一セットの加熱膨張ユニット50を備えている。一セットの加熱膨張ユニット50とは、金属パイプ材料40の一方の端部に対する加熱膨張ユニット50と、他方の端部に対する加熱膨張ユニット50とによって構成される。加熱膨張ユニット50は、二セットの成形部100A,100Bに対して相対的に移動可能である。本実施形態では、二セットの成形部100A,100Bは固定されており、移動が規制されている。その一方、加熱膨張ユニット50は、水平方向に移動可能である。
【0038】
具体的に、成形部100Aにて金属パイプ材料40Aの成形を行う場合(図3に示す状態)、一対の加熱膨張ユニット50は、金属パイプ材料40Aの各端部と対向する位置に配置される。なお、成形部100Aに対する加熱膨張ユニット50の配置位置を「第1の位置PG1」と称する。成形部100Bにて金属パイプ材料40Bの成形を行う場合、一対の加熱膨張ユニット50は、金属パイプ材料40Bの各端部と対向する位置に配置される。なお、成形部100Bに対する加熱膨張ユニット50の配置位置を「第2の位置PG2」と称する。一対の加熱膨張ユニット50は、第1の位置PG1と第2の位置PG2との間を水平方向である幅方向に移動可能である。
【0039】
なお、加熱膨張ユニット50は、ノズル31(図2参照)から供給するための流体を輸送するチューブや、電極26,27への電流を流す電線などで構成される供給ライン150と接続されている。上述のように、加熱膨張ユニット50が移動するため、供給ライン150も、当該移動に追従するように配置されている。例えば、供給ライン150は、不動部150aと、可動部150bと、を有してよい。不動部150aは、加熱膨張ユニット50の移動に追従することなく、移動しない部分である。不動部150aは、例えば固定台151などで固定される。不動部150aは、供給ラインの上流側の部分で構成される。可動部150bは、加熱膨張ユニット50の移動に追従して移動する部分である。可動部150bは、加熱膨張ユニット50と、固定台151との間の部分によって構成される。可動部150bは、加熱膨張ユニット50が第1の位置PG1に配置されているときは、当該第1の位置PG1に向かうように延びる(図3の実線を参照)。可動部150bは加熱膨張ユニット50が第2の位置PG2に配置されているときは、当該第2の位置PG2に向かうように延びる(図3の仮想線を参照)。可動部150bの長さは、チューブや電線が曲がることによってダメージを受けないような長さに設定される。また、可動部150bの各チューブや各電線には、移動に伴ってダメージを受けないように保護部材などが設けられてもよい。また、可動部150bの可動域には、障害物などを配置しないようにする。
【0040】
成形部100Aによって成形される成形品の形状と、成形部100Bによって成形される成形品の形状とは、互いに異なっていてもよく、互いに同じであってもよい。ただし、成形部100Aの成形品と成形部100Bの成形品の形状が異なる場合であっても、成形時における金属パイプ材料40の端部の位置関係は同じであることが好ましい。すなわち、第1の位置PG1において加熱膨張ユニット50のノズル31及び電極26,27の角度、奥行(金属パイプ材料40の長手方向に対する位置)、及び高さの設定を行った場合、加熱膨張ユニット50は、同様の設定にて第2の位置PG2においても成形を行えることが好ましい。具体的には、図4(a)に示すように、金属パイプ材料40Aの端部の基準線SL1が所定の高さ位置及び所定の奥行において、所定の角度で傾斜している場合、ノズル31及び電極26,27は、第1の位置PG1において、当該端部に合わせた高さ位置、奥行、及び角度に設定される。図4(b)に示すように、金属パイプ材料40Bの端部の基準線SL1は、金属パイプ材料40Aの端部と同様の高さ位置、奥行、及び角度に配置されている。従って、金属パイプ材料40Bの成形を行うために加熱膨張ユニット50が第2の位置PG2に移動するとき、ノズル31及び電極26,27の位置調整を行う必要はなく、第1の位置PG1での設定をそのまま流用することができる。
【0041】
次に、図5を参照して、加熱膨張ユニット50の位置調整を行うための位置調整機構70について説明する。位置調整機構70は、前述のように第1の位置PG1と第2の位置PG2との間で加熱膨張ユニット50を幅方向に移動させる。また、位置調整機構70は、加熱膨張ユニット50を高さ方向に移動させる。そのため、加熱膨張ユニット50は、高さ方向に移動可能である。位置調整機構70は、加熱膨張ユニット50を成形部100A,100Bの奥行方向に移動可能である。そのため、加熱膨張ユニット50は、成形部100A,100Bの奥行方向に移動可能である。なお、図5は、位置調整機構70の一例を示しているだけであり、同様の機能を発揮することができる限り、構成は適宜変更可能である。
【0042】
位置調整機構70は、ベース部71と、第1ガイド部72と、第2ガイド部73と、昇降部74と、を備える。ベース部71は、加熱膨張ユニット50を載せる部材である。ベース部71は、幅方向において、第1の位置PG1から第2の位置PG2にわたって延びている。第1ガイド部72は、ベース部71上において、加熱膨張ユニット50を幅方向へ移動可能に支持する部材である。第1ガイド部72は、ベース部71上に設けられ、幅方向に延びている。第2ガイド部73は、加熱膨張ユニット50を奥行方向に移動可能に支持する部材である。第2ガイド部73は、ベース部71の下方において、ベース部71を奥行方向に移動可能に支持する。これにより、第2ガイド部73は、ベース部71を介して、加熱膨張ユニット50を奥行方向に移動可能に支持することができる。第2ガイド部73は、奥行方向に延びている。なお、図5においては、位置調整機構70は、一対の第1ガイド部72、及び一対の第2ガイド部73を有しているが、ガイド部72,73の数は限定されない。昇降部74は、加熱膨張ユニット50を高さ方向に移動させる部材である。昇降部74は、ベース部71を下方から支持することで、ベース部71を介して加熱膨張ユニット50を高さ方向に移動させる。昇降部74は、例えばジャッキなどで構成されてよい。なお、図5では、昇降部74は、ベース部71と共に第2ガイド部73に沿って奥行方向に移動するようになっているが、第2ガイド部73ごと加熱膨張ユニット50を昇降させてもよく、ベース部71に設けられて加熱膨張ユニット50だけを昇降させてもよい。
【0043】
次に、本実施形態に係る成形装置1の作用・効果について説明する。
【0044】
まず、比較例に係る成形装置について説明する。比較例に係る成形装置は、二セットの成形部100A,100Bに対して、それぞれ個別に一対の加熱膨張ユニット50を有している。すなわち、比較例に係る成形装置は、二セットの加熱膨張ユニット50を有している。このように、比較例に係る成形装置は、複数セットの加熱膨張ユニット50を有することで、装置製造コストが上昇するという問題を有する。また、成形部100A,100Bの成形金型2を交換する時には二セットの加熱膨張ユニット50も全て交換する必要があるため、交換に要する手間や時間が増加するという問題がある。
【0045】
これに対し、本実施形態に係る成形装置1は、加熱膨張ユニット50は、二セットの成形部100A,100Bに対して相対的に移動可能である。成形部100Aが成形を行うとき、加熱膨張ユニット50は当該成形部100Aに対してセットされる。そして、成形部100Bが成形を行うとき、加熱膨張ユニット50は、成形部100Bの方へ移動することができる。これにより、二セットの成形部100A,100Bに対して、同じセット数の加熱膨張ユニット50を設ける必要がなくなる。これにより、加熱膨張ユニット50の数を低減することで装置製造コストを低減することができる。また、成形部100A,100Bを構成する成形金型2を交換するときには、少ない数の加熱膨張ユニット50を交換すればよいため、交換作業に要する手間や時間を抑制できる。以上より、装置製造コストを低減し、金型交換時の作業の容易性を向上できる。
【0046】
二セットの成形部100A,100Bは固定されており、加熱膨張ユニット50が移動可能であってよい。加熱膨張ユニット50は成形部100A,100Bよりも重量が軽いため、加熱膨張ユニット50を相対的に移動させるための機構を簡素化することができる。
【0047】
二セットの成形部100A,100Bは、水平方向に並べられており、加熱膨張ユニット50は水平方向に移動可能であってよい。加熱膨張ユニット50を水平方向に移動させて成形部100A,100Bを切り替えるための機構は、例えば高さ方向に成形部100A,100Bを切り替えるよりも簡素化できる。
【0048】
二セットの加熱膨張ユニット50は、更に、高さ方向に移動可能であってよい。この場合、各成形部100A,100Bにセットされた金属パイプ材料40に対し、高さ方向の位置調整を行うことができる。
【0049】
加熱膨張ユニット50は、更に、成形部100A,100Bの奥行方向に移動可能であってよい。この場合、各成形部100A,100Bにセットされた金属パイプ材料40に対し、奥行き方向の位置調整を行うことができる。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、図6に示す成形装置200を採用してもよい。この成形装置200では、加熱膨張ユニット50の位置が固定され、成形部100A,100Bが水平方向に移動可能である。具多的には、図6(a)に示すように、成形部100Aが成形を行う場合、当該成形部100Aが加熱膨張ユニット50に対してセットされる。次に、図6(b)に示すように、成形部100Bが成形を行う場合、成形部100A,100B全体が移動し、成形部100Bが加熱膨張ユニット50に対してセットされる。
【0052】
例えば、上述の実施形態では、成形装置は、二セットの成形部を有していたが、三セット以上の成形部を有していてもよい。
【0053】
上述の成形装置は、水平方向に複数の成形部が並ぶ構造を有していたが、例えば高さ方向に複数の成形部が並び、加熱膨張ユニットが上下方向に移動することで成形部を切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,200…成形装置、6…流体供給部、40,40A,40B…金属パイプ材料、50…加熱膨張ユニット(ユニット)、100A,100B…成形部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6